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2024-163483光検出装置、および光検出方法、並びにプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163483
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】光検出装置、および光検出方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/707 20230101AFI20241115BHJP
【FI】
H04N25/707
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079115
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】稲本 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100168686
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 勇介
(72)【発明者】
【氏名】衣川 洋史
(72)【発明者】
【氏名】松浦 幸治
(72)【発明者】
【氏名】仁科 有貴
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024CX03
5C024EX52
5C024GX02
(57)【要約】
【課題】イベント信号検出センサにより生じるレイテンシを低減できるようにする。
【解決手段】2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント信号検出センサの近傍に設けるCMOSイメージセンサにより検出される諧調信号に基づいて、イベント検出画素の受光量を算出し、イベント検出画素の受光量に基づいて、イベントデータのレイテンシに係る情報を補正する。HybridEVSセンサに適用することができる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント検出部と、
前記イベント検出画素の受光量を算出する受光量算出部と、
前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するレイテンシ補正部と
を備えた光検出装置。
【請求項2】
前記レイテンシ補正部は、前記受光量と、前記レイテンシとの関係が登録されたテーブルを有し、前記受光量算出部により算出された前記受光量と対応する前記レイテンシを前記テーブルより読み出して、読み出した前記レイテンシからなるレイテンシ補正量だけ前記イベントデータを補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項3】
前記イベントデータは、前記イベント検出部において前記イベントが検出された時刻情報を含み、
前記レイテンシ補正部は、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記イベントデータの前記時刻情報を補正する
請求項2に記載の光検出装置。
【請求項4】
前記イベントデータは、前記イベント検出部の前記イベント検出画素のそれぞれの画素位置を表す座標情報をさらに含み、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標情報と対応付けて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記イベントデータの前記時刻情報を補正する
請求項3に記載の光検出装置。
【請求項5】
前記イベントデータは、前記イベント検出部の前記イベント検出画素のそれぞれの画素位置を表す座標情報をさらに含み、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標情報と対応付けて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記時刻情報を補正した補正後時刻情報を追加する、または、前記レイテンシ補正量を追加することで、前記イベントデータを補正する
請求項3に記載の光検出装置。
【請求項6】
前記イベントデータは、前記イベントが、前記イベント検出部において検出される前記電気信号の正方向へと変化するプラスイベントであるか、または、負方向へと変化するマイナスイベントであるかを示す前記イベントの種別の情報をさらに含み、
前記テーブルには、前記イベントの種別の情報毎の、前記受光量と、前記レイテンシとの関係が登録されており、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標位置と対応付けて、前記イベントの種別に応じて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記時刻情報を補正した補正後時刻情報を追加する、または、前記レイテンシ補正量を追加することで、前記イベントデータを補正する
請求項3に記載の光検出装置。
【請求項7】
前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍において可視光の前記受光量を検出し、検出した前記受光量と対応する出力信号を出力する可視光検出部をさらに含み、
前記受光量算出部は、前記出力信号に基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項8】
前記可視光検出部は、前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍の1点における可視光の前記受光量を検出し、対応する前記出力信号として出力し、
前記受光量算出部は、前記出力信号に基づいて、全ての前記イベント検出画素の前記受光量が同一の受光量であるものとして算出し、
前記レイテンシ補正部は、全ての前記イベント検出画素の前記イベントデータを、同一の前記受光量と対応するレイテンシ補正量だけ補正する
請求項7に記載の光検出装置。
【請求項9】
前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍において、入射光の光量に応じた諧調信号を検出して出力する、2次元平面に配置された複数の撮像画素からなる諧調信号検出部をさらに含み、
前記受光量算出部は、前記撮像画素毎の前記諧調信号に基づいて、前記イベント検出画素毎の前記受光量を算出する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項10】
前記受光量算出部は、前記撮像画素毎に前記受光量を算出し、前記撮像画素の位置と対応する位置の前記イベント検出画素の前記受光量として当てはめ、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの前記イベントデータを、前記イベント検出画素毎に当てはめられた前記受光量と対応するレイテンシ補正量だけ補正する
請求項9に記載の光検出装置。
【請求項11】
前記受光量算出部は、所定のスペクトルと、前記諧調信号とに基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
請求項10に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記所定のスペクトルは、前記諧調信号から推定されるスペクトルである
請求項11に記載の光検出装置。
【請求項13】
前記諧調信号検出部を構成する複数の前記撮像画素には、透過する前記入射光を、複数の波長帯域にフィルタリングする複数のフィルタが、前記撮像画素毎に所定の配列でそれぞれの前段に設けられており、前記受光量算出部は、前記諧調信号に基づいた、前記複数のフィルタ毎の前記受光量の比からスペクトルを推定し、推定したスペクトルと、前記諧調信号とに基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
請求項12に記載の光検出装置。
【請求項14】
前記受光量算出部は、前記撮像画素毎に前記受光量を算出し、前記撮像画素の位置と対応する位置の前記イベント検出画素の前記受光量として当てはめ、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの前記イベントデータに、前記イベント検出画素毎に当てはめられた前記受光量を追加することで補正する
請求項9に記載の光検出装置。
【請求項15】
前記イベント検出画素と、前記撮像画素とが同一の2次元平面上に配置され、前記イベント検出部、および前記諧調信号検出部が一体化した構成とされる
請求項9に記載の光検出装置。
【請求項16】
前記イベント検出部、および前記諧調信号検出部に加えて、前記受光量算出部が一体化した構成とされる
請求項15に記載の光検出装置。
【請求項17】
前記イベント検出部、前記諧調信号検出部、および前記受光量算出部に加えて、前記レイテンシ補正部が一体化した構成とされる
請求項16に記載の光検出装置。
【請求項18】
前記レイテンシ補正部は、前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、後段に出力する時系列の所定数の前記イベントデータからなるイベントデータ群を、前記レイテンシに相当するイベントデータ数だけシフトして出力することにより、前記イベントデータの前記レイテンシに係る情報を補正する
請求項1に記載の光検出装置。
【請求項19】
2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力し、
前記イベント検出画素の受光量を算出し、
算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正する
ステップを含む光検出方法。
【請求項20】
2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント検出部と、
前記イベント検出画素の受光量を算出する受光量算出部と、
前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するレイテンシ補正部と
してコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検出装置、および光検出方法、並びにプログラムに関し、特に、イベント信号検出センサにより生じるレイテンシを低減できるようにした光検出装置、および光検出方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画素の単位時間当たりの受光量の変化と所定の閾値との比較結果からイベントを検出し、イベントデータとして出力するイベント信号検出センサが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-136958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、イベント信号検出センサは、「転送レートの制約」や「画素の単位時間当たりの受光量に依存する回路の反応遅れ」により、取り出したイベントデータに記録されたイベントの発生時刻が、実際の事象が発生した時刻に対して遅れる、いわゆるレイテンシが生じることが知られている。
【0005】
レイテンシのうち、転送レートの制約に起因して生じるレイテンシについては、転送するデータ量自体を少なくすることで低減することができるが、それ以外のレイテンシは低減できていないのが実情である。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、特に、イベント信号検出センサにおけるレイテンシを低減するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面の光検出装置、およびプログラムは、2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント検出部と、前記イベント検出画素の受光量を算出する受光量算出部と、前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するレイテンシ補正部とを備えた光検出装置、およびプログラムである。
【0008】
本開示の一側面の光検出方法は、2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力し、前記イベント検出画素の受光量を算出し、算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するステップを含む光検出方法である。
【0009】
本開示の一側面においては、2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータが出力され、前記イベント検出画素の受光量が算出され、算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報が補正される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】イベント信号検出センサを有する信号処理装置の構成例を説明する図である。
図2図1のイベント信号検出センサの画素回路の構成例を説明する図である。
図3】イベントの検出を説明する図である。
図4】レイテンシの発生原理を説明する図である。
図5】受光量に応じて変化するレイテンシを説明する図である。
図6】受光量の多い画像におけるレイテンシと受光量が少ない画像におけるレイテンシとの比較を説明する図である。
図7】本開示の第1の実施の形態の信号処理装置の構成例を説明する図である。
図8】可視光センサとイベント信号検出センサの前段のレンズの光軸との位置関係を説明する図である。
図9】受光量と対応するレイテンシとのテーブルを説明する図である。
図10図7の信号処理装置による信号処理を説明するフローチャートである。
図11】本開示の第2の実施の形態の信号処理装置の構成例を説明する図である。
図12】CMOSイメージセンサの前段の集光レンズとイベント信号検出センサの前段の集光レンズとの光軸の位置関係を説明する図である。
図13】CMOSイメージセンサの受光量を対応するイベント信号検出センサ上の画素の受光量に当てはめる例を説明する図である。
図14】CMOSイメージセンサのRGB画素の受光量の比でスペクトルを推定する例を説明する図である。
図15】オリジナルのイベントデータとレイテンシ補正量に応じて時刻情報であるタイムスタンプが補正されたイベントデータとを説明する図である。
図16】オリジナルのイベントデータとレイテンシ補正量に応じた補正後の時刻情報が付加されたイベントデータとを説明する図である。
図17図11の信号処理装置による信号処理を説明するフローチャートである。
図18】オリジナルのイベントデータと受光量の情報が付加されたイベントデータとを説明する図である。
図19】本開示の第3の実施の形態の信号処理装置の構成例を説明する図である。
図20図19の信号処理装置による信号処理を説明するフローチャートである。
図21】CMOSイメージセンサとHybridEVSセンサとを説明する図である。
図22】HybridEVSセンサと集光レンズの光軸との関係を説明する図である。
図23】本開示の第4の実施の形態のHybridEVSセンサを用いた信号処理装置の第1の構成例を説明する図である。
図24】本開示の第4の実施の形態のHybridEVSセンサを用いた信号処理装置の第2の構成例を説明する図である。
図25】本開示の第4の実施の形態のHybridEVSセンサを用いた信号処理装置の第3の構成例を説明する図である。
図26】本開示の第5の実施の形態の信号処理装置の構成例を説明する図である。
図27】本開示の応用例におけるレイテンシに応じたイベントデータ群のシフト例を説明する図である。
図28】本開示の変形例を実現する信号処理を説明するフローチャートである。
図29】レイテンシに応じたイベントデータ群のシフト例の第1の変形例を説明する図である。
図30】レイテンシに応じたイベントデータ群のシフト例の第2の変形例を説明する図である。
図31】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図32】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
以下、本技術を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
【0013】
1.本開示の概要
2.第1の実施の形態
3.第2の実施の形態
4.第3の実施の形態
5.第4の実施の形態
6.第5の実施の形態
7.応用例
8.移動体への応用例
<<1.本開示の概要>>
<イベント信号検出センサ>
本開示は、特に、イベント信号検出センサにおけるレイテンシを低減するものである。
【0014】
そこで、まず、イベント信号検出センサについて説明する。図1は、イベント信号検出センサを備えた信号処理装置の構成例を示している。
【0015】
図1の信号処理装置1は、イベント信号検出センサ11、および後段アプリケーション12より構成される。
【0016】
イベント信号検出センサ11は、入射光の光電変換を行って電気信号を生成する画素31を含む複数の画素回路21が2次元平面上に格子状に配置された、いわゆる画素アレイからなる構成とされる。イベント信号検出センサ11は、画素31において、入射光の光電変換を行って電気信号を生成し、電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを生成し、後段アプリケーション12に出力する。
【0017】
後段アプリケーション12は、イベント信号検出センサ11より供給されるイベントデータに基づいて各種の処理を実行するアプリケーションプログラムである。
【0018】
ここで、イベント信号検出センサ11において、複数の画素回路21が配置された部分は、全体として、入射光を受光して、光電変換を行う部分であるので、受光部ともいう。
【0019】
<画素回路の構成例>
図2は、図1の画素回路21の構成例を示すブロック図である。
【0020】
画素回路21は、画素31、およびイベント検出部32より構成される。
【0021】
画素31は、光電変換素子としてのPD(Photo Diode)51を備えている。画素31は、PD51において、PD51に入射する光を受光し、光電変換を行って、電気信号としての光電流(Iph)を生成して流す。
【0022】
イベント検出部32は、画素31の光電変換によって生成される光電流に所定の閾値を超える変化(閾値以上の変化を必要に応じて含む)が発生した場合に、その光電流の変化をイベントとして検出する。イベント検出部32は、イベント(の検出)に対して、イベントデータを出力する。
【0023】
ここで、画素31で生成される光電流の変化は、画素31に入射する光の光量変化とも捉えることができるので、イベントは、画素31の光量変化(閾値を超える光量変化)であるともいうことができる。
【0024】
イベントデータについては、少なくとも、イベントとしての光量変化が発生した画素31(画素回路21)の位置を表す位置情報(座標等)を特定することができる。その他、イベントデータについては、光量変化の極性(正負)に応じて、プラスイベントとマイナスイベントとを特定する情報を含む。
【0025】
イベント検出部32が、イベントを検出したタイミングで出力するイベントデータの系列については、イベントデータどうしの間隔がイベントの発生時のまま維持されている限り、イベントが発生した(相対的な)時刻を表す時刻情報を特定することができる。但し、イベントデータがメモリに記憶されること等により、イベントデータどうしの間隔がイベントの発生時のままには維持されなくなると、時刻情報が失われる。そのため、イベントデータについては、イベントデータどうしの間隔がイベントの発生時のまま維持されなくなる前に、イベントデータに、タイムスタンプ等の、イベントが発生した(相対的な)時刻を表す時刻情報が付加される。イベントデータに時刻情報を付加する処理は、イベントデータ同士の間隔がイベントの発生時のままには維持されなくなる前であれば、イベント検出部32で行ってもよいし、イベント検出部32の外部で行ってもよい。
【0026】
イベント検出部32は、電流電圧変換部41、差分検出部42、及び、比較器43を有する。
【0027】
電流電圧変換部41は、画素31からの光電流を、その光電流の対数に対応する電圧(以下、光電圧ともいう)Voに変換し、差分検出部42に出力する。
【0028】
差分検出部42は、電流電圧変換部41からの光電圧Voについて、現在の光電圧と、現在と微小時間だけ異なるタイミングの光電圧との差分を演算し、その差分信号Voutを、比較器43に出力する。
【0029】
比較器43は、差分検出部42が出力する差分信号Voutと、イベントの検出に用いられる所定の閾値(電圧)+Vth及び-Vthとを比較する。比較器43は、差分信号Voutが閾値+Vth以上である場合、又は、閾値-Vth以下である場合、イベントとしての光量変化が検出された(発生した)として、イベントデータを出力する。
【0030】
例えば、比較器43は、差分信号Voutが閾値+Vth以上である場合に、正極性のイベントが検出されたとして、プラスイベントのイベントデータを出力する。一方、差分信号Voutが閾値-Vth以下である場合、比較器43は、負極性のイベントが検出されたとして、マイナスイベントのイベントデータを出力する。
【0031】
<イベント信号検出センサのレイテンシについて>
イベント信号検出センサ11は、上述したように、画素31の受光量変化をイベントとして検出し、その時の画素の座標、時刻、および、プラスイベントまたはマイナスイベントを示す情報をイベントデータとして出力する。
【0032】
イベント信号検出センサ11が、イベントデータを出力する際、イベントが現実に発生したタイミングに対して、レイテンシが生じると、イベントを検出したタイミングに、遅れが生じ、イベントデータの時刻情報が、現実にイベントが発生した時刻に対して遅れた時刻とされる。
【0033】
例えば、図3の左部で示されるように、灰色の背景に対して、白色の物体が存在する領域が、点線で示される領域WZ1から、領域WZ2へと矢印で示されるように、左方向に移動している場合について考える。
【0034】
この場合、白色の物体の領域WZ2の左端部となる境界BZ2においては、図3の中央上部で示されるように、灰色から白色へと変化することで、受光量が立上るように変化することにより、プラスイベントが検出される。
【0035】
一方、白色の物体の領域WZ2の右端部となる境界BZ1においては、図3の右上部で示されるように、白色から灰色へと変化することで、受光量が立下るように変化することにより、マイナスイベントが検出される。
【0036】
境界BZ1において検出されるマイナスイベントと、境界BZ2において検出されるプラスイベントとは、同一の時刻で検出されることになるが、遅延(レイテンシ)が生じることにより、現実にイベントが発生した時刻に対して遅れた時刻の情報がイベントデータに記録される。
【0037】
すなわち、図3における中央上部および右上部で示されるプラスイベントおよびマイナスイベントが、現実には、時刻t11において発生していたとしても、例えば、所定の遅延時間からなるレイテンシTL1分だけ遅れた時刻t12がイベントデータの時刻の情報として記録される。
【0038】
この結果、時刻T1において、図4の最上段で示されるように白色の物体が存在する領域WZ1から、時刻T2において、図4の上から2段目で示されるような領域WZ2に移動した場合、レイテンシが存在せず、イベントが現実に発生される時刻が適切に反映されるときには、図4の上から3段目で示されるような領域Ze1において、プラスイベントが検出されることになる。
【0039】
しかしながら、レイテンシの影響を受けることで、現実のイベントが発生した時刻よりも遅れた時刻情報が記録されることにより、プラスイベントが検出される領域が、図4の最下段で示されるように、現実の領域Ze1に対して、レイテンシTL1に応じた分だけ距離Δdだけ図中の右方向にずれた、過去の領域Ze2となってしまう。
【0040】
このため、所定の遅延時間となるレイテンシT1分だけ、イベントデータの時刻情報を減算することで補正することが考えられる。
【0041】
しかしながら、レイテンシは、受光量が多い程短く、逆に、受光量が少ない程長くなることが知られており、レイテンシによる遅延時間を、特定の遅延時間として時刻情報から減算すると必ずしも適切に補正することはできない。
【0042】
すなわち、例えば、図3における場合と比較して、受光量が多い状態においてプラスイベントが発生した場合、図5の左部で示されるように、プラスイベントが現実には時刻t31において発生するとき、イベントデータの時刻情報は、時刻t31に対してレイテンシTL1よりも短い、レイテンシTL11だけ遅延した時刻t32とされる。
【0043】
これに対して、例えば、図3における場合と比較して、受光量が少ない状態においてプラスイベントが発生した場合、図5の右部で示されるように、プラスイベントが現実には時刻t41において発生するとき、イベントデータの時刻情報は、時刻t41に対して、レイテンシTL1よりも長いレイテンシTL12だけ遅延した時刻t42とされる。
【0044】
従って、例えば、図6の左上部で示されるように、受光量が比較的高い、薄い灰色で表現される背景領域LG1上において、背景領域LG1よりも薄い灰色の前景領域LG2が移動する場合に発生するレイテンシLLは、図6の右上部で示されるように、受光量が比較的低い、濃い灰色で表現される背景領域DG1上において、背景領域DG1よりも薄い灰色の前景領域DG2が移動する場合に発生するレイテンシDLよりも小さい。
【0045】
すなわち、レイテンシの長さは、受光量に応じて変化するため、時刻情報から特定の時間を減算することで、適切にレイテンシによる影響を低減させることはできない。
【0046】
そこで、本開示においては、イベント信号検出センサにおいて検出される受光量を検出し、検出された受光量に対応するレイテンシ分だけイベントデータにおける時刻情報を補正する。
【0047】
これにより、受光量に応じた長さのレイテンシを補正することができ、受光量に応じて適切にレイテンシによる影響が低減される。
【0048】
結果として、例えば、図4においてプラスイベントが検出される領域が、領域Za2から領域Za1へと近づけるような補正を実現することが可能となり、レイテンシによる影響を受光量に応じて適切に低減することが可能となる。
【0049】
<<2.第1の実施の形態>>
次に、図7を参照して、本開示の信号処理装置の構成例について説明する。図7の信号処理装置101は、イベント信号検出センサ111、可視光センサ112、後段ISP(Image Sensor Processor)/AP(Application Processor)113、および後段アプリケーション114を備えている。
【0050】
イベント信号検出センサ111は、図1におけるイベント信号検出センサ11と同一の構成であり、受光量の変化に応じて、プラスイベントまたはマイナスイベントを検出し、検出結果に対応するイベントデータを、後段ISP/AP113に出力する。
【0051】
可視光センサ112は、イベント信号検出センサ111における可視光の受光量を検出するセンサであり、検出した受光量に対応するセンサ出力信号を後段ISP/AP113に出力する。
【0052】
より詳細には、図8で示されるように、可視光センサ112は、イベント信号検出センサ111の前段に設けられる、イベント信号検出センサ111への入射光を集光するレンズ141の光軸AX1上ではないが、比較的光軸AX1の近傍に配置されている。
【0053】
このような配置により、可視光センサ112は、イベント信号検出センサ111の受光量に近似するものと見做せる受光量を検出し、センサ出力信号として後段ISP/AP113に出力する。可視光センサ112は、光軸AX1の近傍における1点の受光量を示すセンサ出力信号を検出するので、センサ出力信号に基づいて算出される受光量は、イベント信号検出センサ111に構成される全画素が同一の受光量であるものとして算出される。
【0054】
後段ISP/AP113は、ハードウェアからなるプロセッサから構成されており、可視光センサ112からのセンサ出力信号に基づいて、イベント信号検出センサ111における受光量を算出して、算出した受光量に応じて、イベントデータのレイテンシ補正量を特定する。
【0055】
そして、後段ISP/AP113は、特定したレイテンシ補正量で、イベント信号検出センサ111からのイベントデータのレイテンシを補正して、補正後のイベントデータを後段アプリケーション114に出力する。
【0056】
この際、後段ISP/AP113は、可視光センサ112より供給されるセンサ出力信号を後段アプリケーション114に出力する。
【0057】
より詳細には、後段ISP/AP113は、イベント検出画素受光量算出部121、およびレイテンシ補正部122を備えている。
【0058】
イベント検出画素受光量算出部121は、センサ出力信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素(図2の画素31に相当)の単位時間当たりの受光量を算出してレイテンシ補正部122に出力する。
【0059】
イベント検出画素受光量算出部121は、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の単位時間当たりの受光量として、例えば、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素1画素に入射する時間当たりの光子数、放射照度[W/m2]、または、照度[Lux]を、センサ出力信号に基づいて算出する。
【0060】
尚、図7図8においては、可視光センサ112が、イベント信号検出センサ1個に対して1個設けられる例が示されているが、イベント信号検出センサ1個に対して複数に設けられるような構成でもよい。イベント信号検出センサ1個に対して可視光センサ112が複数に設けられる場合については、複数の可視光センサ112のそれぞれとイベント信号検出センサ111との位置関係から補間を用いて各画素に対する受光量が算出されてもよい。
【0061】
レイテンシ補正部122は、イベント検出画素受光量算出部121より供給されるイベント信号検出センサ111を構成する画素の単位時間当たりの受光量に基づいて、レイテンシを特定し、特定したレイテンシを補正量(以下、レイテンシ補正量とも称する)としてイベントデータに含まれる時刻情報であるタイムスタンプを補正し、タイムスタンプが補正されたイベントデータを補正後のイベントデータとして出力する。
【0062】
尚、本実施の形態では、イベント信号検出センサ111が、イベントデータを生成する際に、時刻情報であるタイムスタンプの情報を付して出力するものとするが、レイテンシ補正部122がイベント信号検出センサ111より出力されるイベントデータにタイムスタンプを付すようにし、さらに、レイテンシに応じた補正を加えるようにしてもよい。
【0063】
より詳細には、レイテンシ補正部122は、例えば、図9で示されるように、受光量と対応するイベントごとのレイテンシが登録されたテーブルを記憶しており、イベント検出画素受光量算出部121より供給される受光量の近傍のレイテンシを読み出し、補間により対応するレイテンシを算出する。
【0064】
図9のテーブルにおいては、左から順に、受光量、プラスイベントである立上り検知におけるレイテンシ、マイナスイベントである立下り検知におけるレイテンシが登録されている。
【0065】
図9においては、受光量が1000である場合には、プラスイベントであるときにはレイテンシがA秒であり、マイナスイベントであるときにはレイテンシがW秒であることが登録されている。
【0066】
また、受光量が100である場合には、プラスイベントであるときにはレイテンシがB秒であり、マイナスイベントであるときにはレイテンシがX秒であることが登録されている。
【0067】
さらに、受光量が10である場合には、プラスイベントであるときにはレイテンシがC秒であり、マイナスイベントであるときにはレイテンシがY秒であることが登録されている。
【0068】
また、受光量が1である場合には、プラスイベントであるときにはレイテンシがD秒であり、マイナスイベントであるときにはレイテンシがZ秒であることが登録されている。
【0069】
図9で示されるようなテーブルは、予め実験やシミュレーション等で受光量と対応するプラスイベントおよびマイナスイベントにおいて求められたレイテンシが登録される。
【0070】
例えば、受光量が500で、プラスイベントであるような場合、レイテンシ補正部122は、受光量が500の近傍となる受光量が1000におけるプラスイベントにおけるA秒と、受光量が100におけるプラスイベントにおけるB秒とをテーブルから読み出して、例えば、対数平均などを用いた補間により受光量が500であるときのレイテンシを算出し、算出結果をレイテンシ補正量とし、時刻情報であるタイムスタンプをレイテンシ補正量分だけ補正する。
【0071】
後段アプリケーション114は、アプリケーションプログラムなどのソフトウェアからなり、レイテンシが補正された後のイベントデータおよびセンサ出力信号に基づいた信号処理を実行する。
【0072】
図7の信号処理装置101においては、上述したように可視光センサ112より受光量に応じたセンサ出力信号が出力され、センサ出力信号に基づいて、イベント検出画素の受光量が算出され、算出されたイベント検出画素の受光量に基づいて、予め実験等により測定されている受光量に対応するレイテンシ補正量に基づいて、タイムスタンプが補正される。
【0073】
結果として、イベント信号検出センサ111における受光量に応じたレイテンシ補正量が特定されて、時刻情報であるタイムスタンプが特定されたレイテンシ補正量分だけ補正されることにより、レイテンシによる影響を適切に低減させることが可能となる。
【0074】
図7の信号処理装置による信号処理>
次に、図10のフローチャートを参照して、図7の信号処理装置101による信号処理について説明する。
【0075】
ステップS31において、イベント信号検出センサ111は、イベントが検出されたか否かを判定する。ステップS31において、イベントが検出されたと判定された場合、処理は、ステップS32に進む。
【0076】
ステップS32において、イベント信号検出センサ111は、イベントデータを後段ISP/AP113のレイテンシ補正部122に出力する。
【0077】
ステップS33において、可視光センサ112は、可視光の受光量に応じたセンサ出力信号を後段ISP/AP113のイベント検出画素受光量算出部121に出力する。このとき、センサ出力信号は、後段アプリケーション114にも出力される。
【0078】
ステップS34において、イベント検出画素受光量算出部121は、可視光の受光量に応じたセンサ出力信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の単位時間当たりの受光量を算出し、算出結果である受光量をレイテンシ補正部122に出力する。
【0079】
ステップS35において、レイテンシ補正部122は、受光量と対応付けて登録されているレイテンシを、記憶しているテーブルから読み出し、必要に応じて補間するなどして、レイテンシ補正量を特定する。
【0080】
ステップS36において、レイテンシ補正部122は、イベントデータに登録されている時刻情報であるタイムスタンプをレイテンシ補正分だけ補正して、後段アプリケーション114に出力する。
【0081】
ステップS37において、後段アプリケーション114は、補正後のイベントデータとセンサ出力信号とに基づいた信号処理を実行し、実行結果を出力する。
【0082】
また、ステップS31において、イベントが検出されない場合、ステップS32乃至S37の処理がスキップされる。
【0083】
ステップS38において、処理の終了が指示されたか否かが判定され、終了が指示されない場合、処理は、ステップS31に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0084】
そして、ステップS38において、処理の終了が指示された場合、処理は、終了する。
【0085】
以上の処理により、受光量に応じてレイテンシ補正量が特定されて、特定されたレイテンシ補正量分だけイベントデータの時刻情報であるタイムスタンプが補正される。
【0086】
結果として、受光量に応じて変化するレイテンシに対して適切なレイテンシ補正量が設定されて時刻情報が補正されるので、レイテンシの影響を適切に低減させることが可能となる。
【0087】
<<3.第2の実施の形態>>
以上においては、可視光センサ112をイベント信号検出センサ111の近傍に設けて、可視光センサ112のセンサ出力信号に基づいて、イベント信号検出センサ111における受光量を算出して、算出された受光量に応じてレイテンシ補正量を求めて、受光量に応じたレイテンシ補正量分だけ時刻情報であるタイムスタンプを補正する例について説明してきた。
【0088】
しかしながら、イベント信号検出センサ111を構成する各画素を単位として受光量は異なるものであるため、従って、イベント信号検出センサ111を構成する各画素を単位としてイベントデータのレイテンシは異なる。
【0089】
そこで、可視光センサ112に代えて、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを設けるようにして、各画素の諧調信号から、イベント信号検出センサ111における各画素の受光量を特定し、画素を単位としてレイテンシを補正するようにしてもよい。
【0090】
図11は、可視光センサ112に代えて、CMOSイメージセンサを設けるようにして、各画素の諧調信号から、イベント信号検出センサ111における各画素の受光量を特定し、画素を単位としてレイテンシを補正するようにした信号処理装置の構成例を示している。
【0091】
図11の信号処理装置101Aにおいて、図7の信号処理装置101と同一の機能を備えた構成については、同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。また、図11の信号処理装置101Aにおいて、図7の信号処理装置101と類似した機能を備えた構成については、同一の符号を付した上で「A」を末尾に付している。
【0092】
図11の信号処理装置101Aにおいて、図7の信号処理装置101と異なる点は、可視光センサ112に代えて、CMOSイメージセンサ151が設けられ、後段ISP/AP113に代えて、後段ISP/AP113Aが設けられている点である。
【0093】
CMOSイメージセンサ151は、入射光の入射方向に対して垂直方向に対してアレイ状に配置された複数の画素からなり、入射光の光量に応じた諧調信号を、画素を単位として後段ISP/AP113に出力する。
【0094】
より詳細には、図12で示されるように、CMOSイメージセンサ151は、その前段に入射光を集光するレンズ141A-2が設けられている。また、イベント信号検出センサ111の前端にも、イベント信号検出センサ111への入射光を集光するレンズ141A-1が設けられている。
【0095】
レンズ141A-1,141A-2の両者の光軸AX11,AX12は、同一ではないが、両者が比較的近傍であって、双方が平行となるように配置されている。このため、CMOSイメージセンサ151の各画素と、イベント信号検出センサ111の各画素とは、両者から比較的近傍の範囲の物体に対しては視差が生じるが、概ねCMOSイメージセンサ151の各画素における諧調信号が、イベント信号検出センサ111の各画素の受光量に対応したものと考えることができる。
【0096】
そこで、CMOSイメージセンサ151は、画素を単位とした諧調信号を、イベント信号検出センサ111の各画素の受光量に近似するものと見做せる受光量を検出するための情報として、後段ISP/AP113Aに出力する。換言すれば、CMOSイメージセンサ151より出力される受光量を示す諧調信号は、イベント信号検出センサ111に構成される対応する位置の画素の受光量を示す情報として出力される。
【0097】
後段ISP/AP113Aは、基本的な機能は、図7の後段ISP/AP113と同一の機能を備えているが、イベント信号検出センサ111からのイベントデータと、CMOSイメージセンサ151からの諧調信号とに基づいて、イベント信号検出センサ111における各画素を単位とする受光量を算出して、算出した受光量に応じた画素を単位としたレイテンシ補正量を特定する。
【0098】
そして、後段ISP/AP113Aは、画素毎に特定したレイテンシ補正量で、イベントデータのレイテンシを補正して、補正後の画素を単位としたイベントデータを後段アプリケーション114に出力する。
【0099】
この際、後段ISP/AP113Aは、可視光センサ112より供給されるセンサ出力信号を後段アプリケーション114に出力する。
【0100】
より詳細には、後段ISP/AP113Aは、イベント検出画素受光量算出部121A、およびレイテンシ補正部122Aを備えている。
【0101】
イベント検出画素受光量算出部121Aは、イベント検出画素受光量算出部121と同一の機能を備えているが、画素を単位とした諧調信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素毎の単位時間当たりの受光量を算出してレイテンシ補正部122Aに出力する。
【0102】
イベント検出画素受光量算出部121Aは、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の画素毎の単位時間当たりの受光量を、CMOSイメージセンサ151の各画素の諧調信号に基づいて算出する。
【0103】
例えば、画素毎の単位時間当たりの受光量を放射照度[W/m2]として求める場合、以下の手順で算出される。
【0104】
まず、以下の式(1)により画素毎の単位時間当たりの電荷量が求められる。
【0105】
Qu=(Q_after-gain/gain)/Te
・・・(1)
【0106】
ここで、Quは、画素を単位とした単位時間当たりの電荷量であり、Q_after-gainは、CMOSイメージセンサ151の画素を単位としてゲインが掛けられた後の電荷量であり、以下の式(2)で表現される。また、gainは、掛けられているゲインの値であり、以下の式(3)で表現される。
【0107】
Q_after-gain=(Vs-OPB)/slope
slope=((210-1)-OPB)/Qs
・・・(2)
【0108】
gain=10^(Vg[dB]/20)
Vg[dB]=20log(gain)
・・・(3)
【0109】
ここで、Vsは、諧調信号の値であり、OPBは、オプティカルブラックと称される遮光画素の諧調信号(一般に64)であり、Qsは、画素の飽和電荷量であり、Vgは、ゲイン値[dB]である。また、「^」はべき乗を表している。
【0110】
そして、イベント検出画素受光量算出部121Aは、求められた画素毎の単位時間当たりの電荷量に基づいて、入射光のスペクトルが既知である場合、以下の式(4)を算出することにより、画素毎の単位時間当たりの受光量を放射照度[W/m2]として算出する。
【0111】
IRR=Qu1/Qg
・・・(4)
【0112】
ここで、IRRは、画素毎の単位時間当たりの受光量を放射照度[W/m2]であり、Qu1は、画素を単位とした1秒間に画素で生じた電荷量であり、Qgは、1[W/m2]の放射照度の光が光電変換で発生しうる1秒間の電荷量である。
【0113】
尚、1[W/m2]の放射照度の光が光電変換で発生しうる1秒間の電荷量Qgについては、スペクトルに応じて事前に実験や理論計算により求めておく必要がある。
【0114】
そして、イベント検出画素受光量算出部121Aは、CMOSイメージセンサ151の画素毎の単位時間当たりの受光量を求めると、画素毎に対応するイベント信号検出センサ111上の画素位置に座標変換して、対応する画素の受光量とする。
【0115】
より具体的には、イベント検出画素受光量算出部121Aは、図13で示されるように、CMOSイメージセンサ151の画素PCの単位時間当たりの受光量を求めると、対応するイベント信号検出センサ111上の画素PEに座標変換し、座標変換により得られた画素PEの受光量として当てはめる。
【0116】
また、以上においては、スペクトルが既知であることを前提としたが、CMOSイメージセンサ151が、RGB画素から構成される場合、イベント検出画素受光量算出部121Aは、RGB画素のそれぞれの電荷量の比から、イベント信号検出センサ111の各画素を単位としてスペクトルを予測し、画素毎のスペクトルの予測結果に基づいて、上述した式(1)乃至式(4)の演算により画素毎の単位時間当たりの受光量を算出するようにしてもよい。
【0117】
例えば、B画素の電荷量が、G画素、R画素の電荷量よりも多い場合、短波長領域にピークを持つスペクトルである可能性が高いので、例えば、図14で示される波形のうち、実線で示されるようなスペクトル分布が予測される。
【0118】
また、例えば、R画素の電荷量が、G画素、B画素の電荷量よりも多い場合、長波長領域にピークを持つスペクトルである可能性が高いので、例えば、図14で示される波形のうち、点線で示されるようなスペクトル分布が予測される。
【0119】
イベント検出画素受光量算出部121Aは、RGB画素のそれぞれの電荷量の比から、図14を参照して説明したような手法により、スペクトルを推定するようにしてもよい。
【0120】
尚、図14においては、縦軸が強度であり、横軸が波長を示しており、点線および実線で表現されるスペクトル分布の波形例が示されている。
【0121】
レイテンシ補正部122Aは、基本的な機能は、レイテンシ補正部122と同一であるが、イベント検出画素受光量算出部121Aより供給されるイベント信号検出センサ111を構成する画素毎の単位時間当たりの受光量に基づいて、画素毎にレイテンシ補正量を特定し、特定した画素毎のレイテンシ補正量に応じて、イベントデータに含まれる時刻情報であるタイムスタンプを画素毎に補正し、タイムスタンプが画素毎に補正されたイベントデータを補正後のイベントデータとして出力する。
【0122】
すなわち、レイテンシ補正部122が、全画素について共通のレイテンシ補正量でイベントデータの時刻情報を補正していたのに対して、レイテンシ補正部122Aは、画素毎のレイテンシ補正量で画素毎にイベントデータの時刻情報を補正する。
【0123】
例えば、図15の左部で示されるように、左から順に画素を単位として時刻情報であるタイムスタンプ、画素位置を表現する座標情報、およびプラスイベント(立上り)、または、マイナスイベント(立下り)を示すイベント種別の情報を示すイベントデータである場合、例えば、レイテンシが1秒であるとき、レイテンシ補正部122Aは、図15の右部で示されるように時刻情報を補正する。
【0124】
尚、図15の左部のイベントデータにおいては、最上段において、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から2段目において、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から3段目において、時刻情報が00:00:11において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から4段目において、時刻情報が00:00:11において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。
【0125】
また、図15の右部のイベントデータにおいては、最上段において、時刻情報が00:00:09において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から2段目において、時刻情報が00:00:09において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から3段目において、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。上から4段目において、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出されたことが示されている。
【0126】
すなわち、図15の左部で示されるオリジナルのイベントデータにおける時刻情報が、図15の右部においては、レイテンシ補正量である1秒分だけ減算されるように補正されている。
【0127】
また、以上においては、イベントデータのうち、時刻情報がレイテンシ補正量分だけ補正される例について説明してきたが、補正後の時刻情報が追加されるようにしてもよい。
【0128】
例えば、図16の左部で示されるようなイベントデータに対して、図16の右部で示されるように、補正後の時刻情報が追加されるようにしてもよい。
【0129】
図16の左部は、図15の左部と同一であり、図16の右部は、図15の右部における時刻情報欄と座標情報の欄との間に、補正後時刻の情報の欄が追加されて記録されている。
【0130】
尚、レイテンシ補正量は、画素単位で異なるものであるので、図16の右部における補正後の時刻情報の欄に代えて、レイテンシに対応する遅延時間、すなわち、レイテンシ補正量が記録される欄とするようにして、実際には、オリジナルの時刻情報からレイテンシ補正量分だけ補正して使用するようにしてもよい。
【0131】
図11の信号処理装置による信号処理>
次に、図17のフローチャートを参照して、図11の信号処理装置101Aによる信号処理について説明する。
【0132】
ステップS51において、イベント信号検出センサ111は、イベントが検出されたか否かを判定する。ステップS51において、イベントが検出されたと判定された場合、処理は、ステップS52に進む。
【0133】
ステップS52において、イベント信号検出センサ111は、イベントデータを後段ISP/AP113Aのレイテンシ補正部122Aに出力する。
【0134】
ステップS53において、CMOSイメージセンサ151は、画素毎の諧調信号を後段ISP/AP113Aのイベント検出画素受光量算出部121Aに出力する。このとき、諧調信号は、後段アプリケーション114にも出力される。
【0135】
ステップS54において、イベント検出画素受光量算出部121Aは、画素を単位とする諧調信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の画素を単位とする単位時間当たりの受光量を算出し、算出結果である画素毎の受光量をレイテンシ補正部122Aに出力する。
【0136】
ステップS55において、レイテンシ補正部122Aは、画素毎に、受光量と対応付けて登録されているレイテンシを、記憶しているテーブルから読み出し、必要に応じて補間するなどして、画素毎のレイテンシ補正量を特定する。
【0137】
ステップS56において、レイテンシ補正部122Aは、イベントデータに登録されている時刻情報であるタイムスタンプをレイテンシ補正量分だけ画素毎に補正して、後段アプリケーション114に出力する。
【0138】
ステップS57において、後段アプリケーション114は、補正後のイベントデータと諧調信号とに基づいた信号処理を実行し、実行結果を出力する。
【0139】
また、ステップS51において、イベントが検出されない場合、ステップS52乃至S57の処理がスキップされる。
【0140】
ステップS58において、処理の終了が指示されたか否かが判定され、終了が指示されない場合、処理は、ステップS51に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0141】
そして、ステップS58において、処理の終了が指示された場合、処理は、終了する。
【0142】
以上の処理により、画素毎の受光量に応じて、画素毎のレイテンシ補正量が特定されて、特定された画素毎のレイテンシ補正量分だけ、画素毎のイベントデータの時刻情報であるタイムスタンプが補正される。
【0143】
結果として、画素を単位とした受光量に応じて変化するレイテンシに対して適切なレイテンシ補正量が設定されて、画素を単位として時刻情報が補正されるので、レイテンシの影響を適切に低減させることが可能となる。
【0144】
<<4.第3の実施の形態>>
以上においては、イベントデータにおける時刻情報であるタイムスタンプを、受光量に応じたレイテンシ補正量分だけ補正する例について説明してきたが、受光量の情報のみをイベントデータに付して、イベントデータを取得した後段アプリケーション114において受光量に応じたレイテンシの補正がなされるようにしてもよい。
【0145】
すなわち、例えば、図18の左部で示されるようなオリジナルのイベントデータに対して、図18の右部で示されるように受光量の情報を付して後段アプリケーション114に出力する。後段アプリケーション114においては、受光量が付されたイベントデータに基づいて、レイテンシを補正した後、処理を実行する。
【0146】
尚、図18の左部は、図15図16の左部と同様のオリジナルのイベントデータであり、図18の右部は、図18の左部における時刻情報であるタイムスタンプの欄と、画素位置を示す座標情報欄との間に、対応する画素における受光量の欄が設けられている。
【0147】
図18の右部の受光量の欄においては、上から順に、受光量として1111、1111、1112、1112が登録されている。
【0148】
すなわち、図18の右部の最上段においては、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出され、受光量が1111であることが示されている。上から2段目において、時刻情報が00:00:10において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出され、受光量が1111であることが示されている。上から3段目において、時刻情報が00:00:11において、座標位置(x,y)=(100,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出され、受光量が1112であることが示されている。上から4段目において、時刻情報が00:00:11において、座標位置(x,y)=(200,200)の画素において、プラスイベントである立上りが検出され、受光量が1112であることが示されている。
【0149】
後段アプリケーション114は、受光量の情報が付されることで補正されたイベントデータに基づいて、受光量に応じたレイテンシ補正量を求めて時刻情報であるタイムスタンプを補正して、処理を実行する。
【0150】
<イベントデータに受光量を登録するようにした信号処理装置の構成例>
図19は、イベントデータに受光量を登録するようにした信号処理装置の構成例を示している。
【0151】
図19の信号処理装置101Bにおいて、図7の信号処理装置101および図11の信号処理装置101Aと同一の機能を備えた構成については、同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。また、図19の信号処理装置101Bにおいて、図7の信号処理装置101および図11の信号処理装置101Aと類似した機能を備えた構成については、同一の符号を付した上で「B」を末尾に付している。
【0152】
図19の信号処理装置101Bにおいて、図7の信号処理装置101および図11の信号処理装置101Aと異なる点は、後段ISP/AP113,113A、および後段アプリケーション114に代えて、後段ISP/AP113Bおよび後段アプリケーション114Bが設けられている点である。
【0153】
より詳細には、後段ISP/AP113Bは、イベント検出画素受光量算出部121B、およびレイテンシ補正部122Bを備えている。
【0154】
イベント検出画素受光量算出部121Bは、イベント検出画素受光量算出部121Aと同一の機能を備えており、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素毎の単位時間当たりの受光量を算出してレイテンシ補正部122Bに出力する。
【0155】
レイテンシ補正部122Bは、イベント信号検出センサ111より供給されるイベントデータに対して、図18を参照して説明したように、イベント検出画素毎の受光量を付して補正後のイベントデータとして後段アプリケーション114Bに出力する。
【0156】
すなわち、レイテンシ補正部122Bは、レイテンシ補正部122,122Aと異なり、イベントデータに含まれる時刻情報であるタイムスタンプを補正せず、受光量の情報のみを付加するのみで出力する。
【0157】
尚、レイテンシ補正部122Bは、時刻情報であるタイムスタンプを補正しないが、イベントデータの時刻情報であるタイムスタンプを補正する上で必要となる受光量の情報を付与しているので、イベントデータを補正する機能を果たしているものとする。
【0158】
後段アプリケーション114Bは、基本的な機能においては、後段アプリケーション114と同一であるが、さらに、受光量の情報が付されたイベントデータに基づいて、レイテンシ補正量分だけ時刻情報であるタイムスタンプを補正して、処理を実行する。
【0159】
より詳細には、後段アプリケーション114Bは、レイテンシ補正部171を備えている。レイテンシ補正部171は、受光量と、対応するレイテンシ(レイテンシ補正量)とからなるテーブル(図9のテーブルと同様)を備えており、イベントデータに含まれる受光量の情報に基づいて、テーブルより対応するレイテンシ補正量を読み出して、時刻情報であるタイムスタンプを補正する。
【0160】
図19の信号処理装置による信号処理>
次に、図20のフローチャートを参照して、図19の信号処理装置101Bによる信号処理について説明する。
【0161】
ステップS71において、イベント信号検出センサ111は、イベントが検出されたか否かを判定する。ステップS71において、イベントが検出されたと判定された場合、処理は、ステップS72に進む。
【0162】
ステップS72において、イベント信号検出センサ111は、イベントデータを後段ISP/AP113Bのレイテンシ補正部122Bに出力する。
【0163】
ステップS73において、CMOSイメージセンサ151は、画素毎の諧調信号を後段ISP/AP113Bのイベント検出画素受光量算出部121Bに出力する。このとき、諧調信号は、後段アプリケーション114Bにも出力される。
【0164】
ステップS74において、イベント検出画素受光量算出部121Bは、画素を単位とする諧調信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の画素を単位とする単位時間当たりの受光量を算出し、算出結果である画素毎の受光量をレイテンシ補正部122Bに出力する。
【0165】
ステップS75において、レイテンシ補正部122Bは、画素毎に、受光量の情報をイベントデータに付与することで、イベントデータを補正する。
【0166】
ステップS76において、レイテンシ補正部122Bは、画素毎に、受光量の情報が付与されることで補正されたイベントデータを後段アプリケーション114Bに出力する。
【0167】
ステップS77において、後段アプリケーション114Bは、画素毎に、受光量の情報が付与されることで補正されたイベントデータを取得する。
【0168】
ステップS78において、後段アプリケーション114Bのレイテンシ補正部171は、イベントデータより画素毎に受光量の情報を読み出し、受光量に対するレイテンシが記録されたテーブルより対応するレイテンシ補正量を検索して特定する。
【0169】
ステップS79において、レイテンシ補正部171は、イベントデータについて、画素毎にレイテンシ補正量分だけ時刻情報であるタイムスタンプを補正する。
【0170】
ステップS80において、後段アプリケーション114Bは、時刻情報であるタイムスタンプが補正されたイベントデータと諧調信号とに基づいた信号処理を実行し、実行結果を出力する。
【0171】
また、ステップS71において、イベントが検出されない場合、ステップS72乃至S80の処理がスキップされる。
【0172】
ステップS81において、処理の終了が指示されたか否かが判定され、終了が指示されない場合、処理は、ステップS71に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0173】
そして、ステップS81において、処理の終了が指示された場合、処理は、終了する。
【0174】
以上の処理においても、画素毎の受光量に応じて、画素毎のレイテンシ補正量が特定されて、特定された画素毎のレイテンシ補正量分だけ、画素毎のイベントデータの時刻情報であるタイムスタンプが補正される。
【0175】
結果として、画素を単位とした受光量に応じて変化するレイテンシに対して適切なレイテンシ補正量が設定されて、画素を単位として時刻情報が補正されるので、レイテンシの影響を適切に低減させることが可能となる。
【0176】
<<5.第4の実施の形態>>
以上においては、CMOSイメージセンサ151とイベント信号検出センサ111とを用いた信号処理装置101,101A,101Bの構成例について説明してきたが、CMOSイメージセンサ151とイベント信号検出センサ111との双方の機能を持ち合わせたHybridEVS(EVS:Event-base Vision Sensor)センサを用いるようにしてもよい。
【0177】
HybridEVSセンサは、例えば、図21の右部で示されるような画素構造のものである。尚、図21の左部は、CMOSイメージセンサ151の画素構成を示しており、図21の右部におけるHybridEVS201との構成の違いを示している。
【0178】
すなわち、CMOSイメージセンサ151は、例えば、図21の左部で示されるように、2画素×2画素を1画素ユニットとして、RGB画素ユニットがベイヤ配列で配置された画素配置とされる。
【0179】
これに対して、HybridEVS201は、CMOSイメージセンサ151におけるR画素ユニットと、B画素ユニットとを構成するそれぞれの4画素のうち、垂直に並ぶ2画素が、イベント信号検出センサ111におけるイベント検出画素(図2の画素31に相当)EVSに代えて配置された構成とされる。
【0180】
このような構成により、HybridEVSセンサ201においては、RGB画素からCMOSイメージセンサ151における構成と同様に諧調信号が取得されると共に、イベント検出画素EVSからはイベントデータが取得される。
【0181】
また、HybridEVSセンサ201においては、図22で示されるように、集光用のレンズ141Bが前端に設けられる構成となるため、HybridEVS201において取得される諧調信号とイベントデータとは、レンズ141Bにおける軸AX21に対して配置上の視差等が発生しない適切な位置関係を維持した状態で取得可能とされる。尚、図21の右部におけるHybridEVS201の画素配列は一例であり、図示された画素配列以外の画素配列でもよい。
【0182】
<HybridEVSを用いた信号処理装置の第1の構成例>
図23は、HybridEVSセンサを用いた信号処理装置の第1の構成例を示している。図23の信号処理装置101Cは、HybridEVSセンサ201および後段アプリケーション114より構成される。
【0183】
HybridEVSセンサ201は、イベントデータ取得部221、諧調信号取得部222、イベント検出画素受光量算出部223、およびレイテンシ補正部224より構成される。
【0184】
イベントデータ取得部221は、図21におけるイベント検出画素EVSより出力されるイベントデータを取得してレイテンシ補正部224に出力する。
【0185】
諧調信号取得部222は、図21におけるRGB画素より出力される諧調信号を取得して、イベント検出画素受光量算出部223に出力する。
【0186】
イベントデータ取得部221は、イベント信号検出センサ111と同様に機能する。また、諧調信号取得部222は、CMOSイメージセンサ151と同様に機能する。
【0187】
また、イベント検出画素受光量算出部223、およびレイテンシ補正部224は、それぞれイベント検出画素受光量算出部121Aまたは121B、およびレイテンシ補正部122Aまたは122Bとして機能する。
【0188】
すなわち、図23の信号処理装置101Cは、実質的に図11の信号処理装置101A、または、図19の信号処理装置101Bとして機能することが可能となる。
【0189】
尚、それぞれの信号処理は同一であるので、その説明は省略する。
【0190】
<HybridEVSを用いた信号処理装置の第2の構成例>
以上においては、HybridEVSセンサ201が、イベントデータ取得部221、諧調信号取得部222、イベント検出画素受光量算出部223、およびレイテンシ補正部224を備える構成例について説明してきたが、イベントデータ取得部221、および諧調信号取得部222のみが設けられる構成でもよい。
【0191】
図24は、HybridEVSセンサ201にイベントデータ取得部221、および諧調信号取得部222のみが設けられる場合の信号処理装置の構成例を示している。
【0192】
図24の信号処理装置101Dは、HybridEVSセンサ201D、後段ISP/AP241、および後段アプリケーション114より構成される。
【0193】
HybridEVSセンサ201Dは、基本的な機能はHybridEVSセンサ201と同一であるが、イベントデータ取得部221、および諧調信号取得部222のそれぞれと同一の機能を備えたイベントデータ取得部221D、および諧調信号取得部222Dのみが設けられている。
【0194】
後段ISP/AP241は、イベント検出画素受光量算出部223、およびレイテンシ補正部224のそれぞれと同一の機能を備えたイベント検出画素受光量算出部223D、およびレイテンシ補正部224Dが設けられている。
【0195】
すなわち、図24の信号処理装置101Dにおいては、HybridEVSセンサ201Dと後段ISP/AP241とにより、図23のHybridEVSセンサ201の機能が実現されている。
【0196】
このような構成により、図24の信号処理装置101Dにおいても、実質的に図11の信号処理装置101A、または、図19の信号処理装置101Bとして機能が実現される。
【0197】
<HybridEVSを用いた信号処理装置の第3の構成例>
以上においては、HybridEVSセンサ201Dが、イベントデータ取得部221D、および諧調信号取得部222Dのみから構成される例について説明してきたが、さらに、イベント検出画素受光量算出部223の機能が設けられるようにしてもよい。
【0198】
図25は、HybridEVSセンサ201が、イベントデータ取得部221、諧調信号取得部222、および、イベント検出画素受光量算出部223により実現される場合の信号処理装置の構成例を示している。
【0199】
図25の信号処理装置101Eは、HybridEVSセンサ201E、後段ISP/AP241E、および後段アプリケーション114より構成される。
【0200】
HybridEVSセンサ201Eは、基本的な機能はHybridEVSセンサ201と同一であるが、イベントデータ取得部221、諧調信号取得部222、および、イベント検出画素受光量算出部223のそれぞれと同一の機能を備えたイベントデータ取得部221E、諧調信号取得部222E、および、イベント検出画素受光量算出部223Eが設けられている。
【0201】
後段ISP/AP241Eは、レイテンシ補正部224と同一の機能を備えたレイテンシ補正部224Eが設けられている。
【0202】
すなわち、図25の信号処理装置101Eにおいては、HybridEVSセンサ201Eと後段ISP/AP241Eとにより、図23のHybridEVSセンサ201の機能が実現されている。
【0203】
このような構成により、図25の信号処理装置101Eにおいても、実質的に図11の信号処理装置101A、または、図19の信号処理装置101Bとして機能が実現される。
【0204】
<<6.第5の実施の形態>>
以上においては、HybridEVSセンサ201を用いた信号処理装置の構成例について説明してきたが、CMOSイメージセンサ151を構成する画素アレイの画素信号から諧調信号とイベントデータとを切り替えて取得するようにしてもよい。
【0205】
図26は、CMOSイメージセンサ151を構成する画素アレイの画素信号から諧調信号とイベントデータとを切り替えて取得するようにした信号処理装置の構成例を示している。
【0206】
図26の信号処理装置101Fは、切替センサ261、後段ISP/AP113A、および後段アプリケーション114より構成される。
【0207】
切替センサ261は、CMOSイメージセンサ151を構成する画素アレイ270と、画素アレイ270より出力される信号に基づいてイベントデータを取得するイベントデータ検出部271と、諧調信号を検出する諧調信号検出部272とを備えている。
【0208】
画素アレイ270より出力される信号は、イベントデータ検出部271および諧調信号検出部272のいずれか一方にのみ切り替えて出力される。
【0209】
このため、イベントデータ検出部271は、画素アレイ270より信号が自らに出力されるタイミングにおいて、イベントデータを検出して後段ISP/AP113のレイテンシ補正部122Aに出力する。
【0210】
また、諧調信号検出部272は、画素アレイ270より信号が自らに出力されるタイミングにおいて、諧調信号を検出して後段ISP/AP113のイベント検出画素受光量算出部121Aに出力する。
【0211】
すなわち、切替センサ261は、上述したCMOSイメージセンサ151とイベント信号検出センサ111との機能を兼ね備えた構成として機能する。
【0212】
結果として、このような構成により、図26の信号処理装置101Fにおいても、実質的に図11の信号処理装置101A、または、図19の信号処理装置101Bとして機能が実現される。
【0213】
<<7.応用例>>
以上においては、受光量に応じてレイテンシ補正量を設定し、イベントデータにおける時刻情報であるタイムスタンプをレイテンシ補正量だけ補正することで、イベントデータを補正する例について説明してきた。
【0214】
しかしながら、複数のイベントデータからなるイベントデータ群を単位としてイベントデータが後段アプリケーション114に送信される場合、受光量に応じて特定されたレイテンシ補正量だけシフトさせて構成されるイベントデータ群を、後段アプリケーション114に出力するようにしてもよい。
【0215】
より具体的には、図27の上段で示されるように、短冊状の枠が1つのイベントデータであり、図中右方向に時系列に生成されているものとし、レイテンシによる影響が、イベントデータ2個分に相当する時間だけ発生するものとする。
【0216】
ここで、図27の上段において、時系列に生成されたイベントデータが順次所定数だけバッファリングされた後、例えば、イベントデータD1乃至D14からなるイベントデータ群W1が、後段アプリケーション114に出力される場合について考える。
【0217】
この場合、そのままイベントデータ群W1が後段アプリケーション114に送信されると、後段アプリケーション114においては、イベントデータを取得したタイミングにおいて、既に過去のイベントデータとなっているイベントデータD1,D2がそのまま処理されることにより、レイテンシの影響が発生することになる。
【0218】
そこで、後段ISP/AP113のレイテンシ補正部122が、イベントデータ群を送信する際、図27の下段で示されるように、レイテンシの影響が発生することが予想される2つのイベントデータD1,D2をスキップさせるように、レイテンシ補正量SF21だけイベントデータ群をシフトさせ、後段のイベントデータD3乃至D16からなるイベントデータ群W2を後段アプリケーション114送信させるようにしてもよい。
【0219】
この処理により、イベントデータ群は、レイテンシ分だけ過去のイベントデータがスキップされた状態でシフトされて送信されることになる。これにより、後段アプリケーション114がイベントデータ群W2を取得するときには、レイテンシの影響が除去されたイベントデータ群W2として取得されることになるので、取得したイベントデータ群W2を構成するイベントデータを時系列に順次処理するだけで、レイテンシの影響が補正された処理が実現される。
【0220】
<応用例における信号処理>
次に、図28のフローチャートを参照して、応用例における信号処理について説明する。尚、ここでは、図7の信号処理装置101により、図27を参照した信号処理がなされる場合の処理について説明するものとし、全画素が同一の受光量であり、全画素のイベントデータが統一されたレイテンシ補正量で補正されるものとする。
【0221】
ステップS101において、イベント信号検出センサ111は、イベントが検出されたか否かを判定する。ステップS101において、イベントが検出されたと判定された場合、処理は、ステップS102に進む。
【0222】
ステップS102において、イベント信号検出センサ111は、イベントデータを後段ISP/AP113のレイテンシ補正部122に出力する。このとき、レイテンシ補正部122は、イベントデータをバッファリングする。
【0223】
ステップS103において、イベント信号検出センサ111は、バッファリングしているイベントデータ数が、所定の閾値以上であるか否かを判定し、所定の閾値以上ではない場合、処理は、ステップS101に戻る。
【0224】
尚、ここでいう所定の閾値は、例えば、図27を参照して説明したイベントデータ群として送信するイベントデータの数に、想定されるレイテンシ分のイベントデータの数が加算された値となる。
【0225】
したがって、図27の例においては、レイテンシがイベントデータ2個分であるので、所定の閾値は、16以上となる。
【0226】
ステップS103において、バッファリングしているイベントデータ数が、所定の閾値以上であると判定された場合、処理は、ステップS104に進む。
【0227】
ステップS104において、可視光センサ112は、可視光の受光量に応じたセンサ出力信号を後段ISP/AP113のイベント検出画素受光量算出部121に出力する。
【0228】
ステップS105において、イベント検出画素受光量算出部121は、可視光の受光量に応じたセンサ出力信号に基づいて、イベント信号検出センサ111を構成するイベント検出画素の単位時間当たりの受光量を算出し、算出結果である受光量をレイテンシ補正部122に出力する。
【0229】
ステップS106において、レイテンシ補正部122は、受光量と対応付けて登録されているレイテンシを、記憶しているテーブルから読み出し、必要に応じて補間するなどして、レイテンシ補正量を特定する。
【0230】
ステップS107において、レイテンシ補正部122は、バッファリングしているイベントデータのうち、レイテンシ補正量分だけイベントデータをシフトした上で、所定数のイベントデータからなるイベントデータ群を構成することで、レイテンシを補正して、後段アプリケーション114に出力する。
【0231】
ステップS108において、後段アプリケーション114は、レイテンシが補正されたイベントデータ群に基づいて、イベントデータ群を構成するイベントデータを順次処理することで信号処理を実行し、実行結果を出力する。
【0232】
また、ステップS101において、イベントが検出されない場合、ステップS102乃至S108の処理がスキップされる。
【0233】
ステップS109において、処理の終了が指示されたか否かが判定され、終了が指示されない場合、処理は、ステップS101に戻り、それ以降の処理が繰り返される。
【0234】
そして、ステップS109において、処理の終了が指示された場合、処理は、終了する。
【0235】
以上の処理により、受光量に応じてレイテンシ補正量が特定されて、特定されたレイテンシ補正量分だけイベントデータ群がシフトされて構成されることになるので、後段アプリケーション114においては、取得したイベントデータ群を構成するイベントデータを時系列に順次処理するだけで、レイテンシの影響が補正された処理を実現することが可能となる。
【0236】
結果として、受光量に応じて変化するレイテンシの影響を適切に低減させることが可能となる。
【0237】
尚、以上においては、図7の信号処理装置101により、図27を参照した信号処理がなされる場合の処理について説明してきたが、図11の信号処理装置101A、図23の信号処理装置101C、図24の信号処理装置101D、図25の信号処理装置101E、および図26の信号処理装置101Fのいずれにおいても、画素を単位として同様の処理を実現することが可能である。
【0238】
<イベントデータのシフト方法の第1の変形例>
以上においては、バッファリングしたイベントデータのうち、送信しようとするイベントデータ群を、レイテンシ補正量分だけシフトさせて、後段アプリケーション114に出力する例について説明してきた。
【0239】
しかしながら、送信されないようにしていたイベントデータD1,D2について参照する必要が発生するなどして、欠落することで処理に影響が出る可能性がある。
【0240】
そこで、当初のイベントデータ群に対して、レイテンシ補正量分だけ後段のイベントデータを増加させるようにして、後段アプリケーション114に出力するようにしてもよい。
【0241】
すなわち、図29の上段で示されるように、当初後段アプリケーション114に送信することが想定されるイベントデータ群W1からなるイベントデータD1乃至D14に対して、図29の下段で示されるように、レイテンシの影響分だけ後段のイベントデータD15,D16が追加されたイベントデータD1乃至D16からなるイベントデータ群W11が送信されるようにする。
【0242】
そして、後段アプリケーション114が、イベントデータD1乃至D16からなるイベントデータ群のうち、レイテンシの時間だけ過去のイベントデータD1,D2を排除したイベントデータD3乃至D16を選択的に使用して処理を実行するようにしてもよい。
【0243】
すなわち、図29の下段で示されるように、補正前のイベントデータD1乃至D14からなるイベントデータ群W1に対して、レイテンシの影響を受けてしまう分のシフト量SF21分だけイベントデータD15,S16を増加させるようにしたイベントデータ群W11が送信されるようにしてもよい。
【0244】
この場合、後段アプリケーション114は、イベントデータ群W11の先頭のイベントデータのうち、レイテンシの影響を受けた分のイベントデータD1,D2は、タイムスタンプなどから過去のイベントデータとして認識することは可能であるので、予め処理から除外して処理を実行することで、レイテンシの影響を受けない処理を実現することが可能となる。
【0245】
また、上述したように、処理内容に応じて過去のイベントデータD1,D2であっても参照の必要がある場合などは、イベントデータ群として欠落することなく送信されてくるので、後段アプリケーション114において参照することも可能となる。
【0246】
<イベントデータのシフト方法の第2の変形例>
レイテンシの影響を受ける過去のイベントデータのみを削除するようにしてイベントデータ群が構成されるようにしてもよい。
【0247】
すなわち、図30の下段で示されるように、図30の上段で示される補正前のイベントデータ群W1に対して、レイテンシの影響を受けてしまう分のシフト量SF21分のイベントデータD1,D2のみを削除させるようにしたイベントデータ群W21を送信するようにしてもよい。
【0248】
この場合、後段アプリケーション114は、イベントデータ群W21の先頭のイベントデータから順次処理を実行することで、レイテンシの影響を受けない処理を実現することが可能となる。この場合、当初のイベントデータ群W11に対して、時系列に後方のイベントデータには欠落が発生するが、レイテンシ分のイベントデータが欠落するのみであるので、影響は小さい。
【0249】
<<8.移動体への応用例>>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0250】
図31は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0251】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図31に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(Interface)12053が図示されている。
【0252】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0253】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0254】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0255】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0256】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0257】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0258】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0259】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12030に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0260】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図31の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0261】
図32は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0262】
図32では、撮像部12031として、撮像部12101、12102、12103、12104、12105を有する。
【0263】
撮像部12101、12102、12103、12104、12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102、12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0264】
なお、図32には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0265】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0266】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0267】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0268】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0269】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、撮像部12031および車外情報検出ユニット12030を組み合わせた構成に適用され得る。具体的には、図7の信号処理装置101、図11の信号処理装置101A、図19の信号処理装置101B、図23の信号処理装置101C、図24の信号処理装置101D、図25の信号処理装置101E、図26の信号処理装置101Fは、撮像部12031および車外情報検出ユニット12030を組み合わせた構成に適用することができる。撮像部12031および車外情報検出ユニット12030を組み合わせた構成に本開示に係る技術を適用することにより、物体検出処理又は距離検出処理において発生しうるレイテンシによる影響を低減させることが可能となる。
【0270】
尚、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0271】
また、本開示の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0272】
例えば、本開示は、1つの機能をネットワークを介して複数の装置で分担、共同して処理するクラウドコンピューティングの構成をとることができる。
【0273】
また、上述のフローチャートで説明した各ステップは、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0274】
さらに、1つのステップに複数の処理が含まれる場合には、その1つのステップに含まれる複数の処理は、1つの装置で実行する他、複数の装置で分担して実行することができる。
【0275】
尚、本開示は、以下のような構成も取ることができる。
<1> 2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント検出部と、
前記イベント検出画素の受光量を算出する受光量算出部と、
前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するレイテンシ補正部と
を備えた光検出装置。
<2> 前記レイテンシ補正部は、前記受光量と、前記レイテンシとの関係が登録されたテーブルを有し、前記受光量算出部により算出された前記受光量と対応する前記レイテンシを前記テーブルより読み出して、読み出した前記レイテンシからなるレイテンシ補正量だけ前記イベントデータを補正する
<1>に記載の光検出装置。
<3> 前記イベントデータは、前記イベント検出部において前記イベントが検出された時刻情報を含み、
前記レイテンシ補正部は、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記イベントデータの前記時刻情報を補正する
<2>に記載の光検出装置。
<4> 前記イベントデータは、前記イベント検出部の前記イベント検出画素のそれぞれの画素位置を表す座標情報をさらに含み、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標情報と対応付けて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記イベントデータの前記時刻情報を補正する
<3>に記載の光検出装置。
<5> 前記イベントデータは、前記イベント検出部の前記イベント検出画素のそれぞれの画素位置を表す座標情報をさらに含み、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標情報と対応付けて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記時刻情報を補正した補正後時刻情報を追加する、または、前記レイテンシ補正量を追加することで、前記イベントデータを補正する
<3>に記載の光検出装置。
<6> 前記イベントデータは、前記イベントが、前記イベント検出部において検出される前記電気信号の正方向へと変化するプラスイベントであるか、または、負方向へと変化するマイナスイベントであるかを示す前記イベントの種別の情報をさらに含み、
前記テーブルには、前記イベントの種別の情報毎の、前記受光量と、前記レイテンシとの関係が登録されており、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの座標位置と対応付けて、前記イベントの種別に応じて、前記受光量と対応する前記レイテンシ補正量だけ前記時刻情報を補正した補正後時刻情報を追加する、または、前記レイテンシ補正量を追加することで、前記イベントデータを補正する
<3>に記載の光検出装置。
<7> 前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍において可視光の前記受光量を検出し、検出した前記受光量と対応する出力信号を出力する可視光検出部をさらに含み、
前記受光量算出部は、前記出力信号に基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
<1>に記載の光検出装置。
<8> 前記可視光検出部は、前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍の1点における可視光の前記受光量を検出し、対応する前記出力信号として出力し、
前記受光量算出部は、前記出力信号に基づいて、全ての前記イベント検出画素の前記受光量が同一の受光量であるものとして算出し、
前記レイテンシ補正部は、全ての前記イベント検出画素の前記イベントデータを、同一の前記受光量と対応するレイテンシ補正量だけ補正する
<7>に記載の光検出装置。
<9> 前記イベント検出画素が2次元平面に配置されることで構成される撮像面の近傍において、入射光の光量に応じた諧調信号を検出して出力する、2次元平面に配置された複数の撮像画素からなる諧調信号検出部をさらに含み、
前記受光量算出部は、前記撮像画素毎の前記諧調信号に基づいて、前記イベント検出画素毎の前記受光量を算出する
<1>に記載の光検出装置。
<10> 前記受光量算出部は、前記撮像画素毎に前記受光量を算出し、前記撮像画素の位置と対応する位置の前記イベント検出画素の前記受光量として当てはめ、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの前記イベントデータを、前記イベント検出画素毎に当てはめられた前記受光量と対応するレイテンシ補正量だけ補正する
<9>に記載の光検出装置。
<11> 前記受光量算出部は、所定のスペクトルと、前記諧調信号とに基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
<10>に記載の光検出装置。
<12> 前記所定のスペクトルは、前記諧調信号から推定されるスペクトルである
<11>に記載の光検出装置。
<13> 前記諧調信号検出部を構成する複数の前記撮像画素には、透過する前記入射光を、複数の波長帯域にフィルタリングする複数のフィルタが、前記撮像画素毎に所定の配列でそれぞれの前段に設けられており、前記受光量算出部は、前記諧調信号に基づいた、前記複数のフィルタ毎の前記受光量の比からスペクトルを推定し、推定したスペクトルと、前記諧調信号とに基づいて、前記イベント検出画素の前記受光量を算出する
<12>に記載の光検出装置。
<14> 前記受光量算出部は、前記撮像画素毎に前記受光量を算出し、前記撮像画素の位置と対応する位置の前記イベント検出画素の前記受光量として当てはめ、
前記レイテンシ補正部は、前記イベント検出画素のそれぞれの前記イベントデータに、前記イベント検出画素毎に当てはめられた前記受光量を追加することで補正する
<9>に記載の光検出装置。
<15> 前記イベント検出画素と、前記撮像画素とが同一の2次元平面上に配置され、前記イベント検出部、および前記諧調信号検出部が一体化した構成とされる
<9>に記載の光検出装置。
<16> 前記イベント検出部、および前記諧調信号検出部に加えて、前記受光量算出部が一体化した構成とされる
<15>に記載の光検出装置。
<17> 前記イベント検出部、前記諧調信号検出部、および前記受光量算出部に加えて、前記レイテンシ補正部が一体化した構成とされる
<16>に記載の光検出装置。
<18> 前記レイテンシ補正部は、前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、後段に出力する時系列の所定数の前記イベントデータからなるイベントデータ群を、前記レイテンシに相当するイベントデータ数だけシフトして出力することにより、前記イベントデータの前記レイテンシに係る情報を補正する
<1>に記載の光検出装置。
<19> 2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力し、
前記イベント検出画素の受光量を算出し、
算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正する
ステップを含む光検出方法。
<20> 2次元平面に複数に配置され、光電変換を行って電気信号を生成するイベント検出画素において検出される、前記電気信号の変化であるイベントの発生を表すイベントデータを出力するイベント検出部と、
前記イベント検出画素の受光量を算出する受光量算出部と、
前記受光量算出部により算出された前記イベント検出画素の前記受光量に基づいて、前記イベントデータにおける、レイテンシに係る情報を補正するレイテンシ補正部と
してコンピュータを機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0276】
101,101A乃至101F 信号処理装置, 111 イベント信号検出センサ, 112 可視光センサ, 113,113A,113B 後段ISP/AP, 114,114B 後段アプリケーション, 121,121A,121B イベント検出画素受光量算出部, 122,122A,122B レイテンシ補正部, 141,141A-1,141A-2,141B レンズ, 151 CMOSイメージセンサ, 171 レイテンシ補正部, 201,201D,201E HybridEVSセンサ, 221,221D,221E イベントデータ取得部, 222,222D,222E 諧調信号取得部, 223,223D,223E イベント検出画素受光量算出部, 224,224D,224E レイテンシ補正部, 241,241E 後段ISP/AP, 261 切替センサ, 270 画素アレイ, 271 イベントデータ検出部, 272 諧調信号取得部
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