(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163488
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】NDIRガスセンサとその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/61 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G01N21/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079128
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000112439
【氏名又は名称】フィガロ技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【弁理士】
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】境 浩司
(72)【発明者】
【氏名】宮路 祥太朗
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059CC04
2G059DD12
2G059EE01
2G059FF01
2G059GG02
2G059HH01
2G059KK01
2G059KK09
(57)【要約】
【構成】 NDIRガスセンサは、光源と受光素子及び駆動回路を搭載した基板と、ミラー付きのセルを備えている。ミラーは回転楕円体の一部を構成する形状をし、光源と受光素子は回転楕円体の2つの焦点位置に配置されている。セルは平面視で楕円形状の樹脂製のパイプと金属製のミラーとを備え、ミラーの外周端部がパイプの樹脂中に埋設されている。係合部材を係合孔に係合させ、接着剤で係合部材を固定することにより、セルと基板は固定されている。
【効果】 製造が容易で、基板とミラーとの位置合わせが容易なNDIRガスセンサを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と受光素子及び光源と受光素子の駆動回路を搭載した基板と、前記基板に固定したミラー付きのセルとを備える、NDIRガスセンサであって、
前記ミラーは回転楕円体の一部を構成する形状で平面視で楕円形であり、
光源と受光素子は、前記基板上の、前記回転楕円体の2つの焦点位置に配置され、
光源と受光素子の一方に対し、バンドパスフィルタが設けられ、
セルは、平面視で楕円形状の樹脂製のパイプと前記ミラーとを備え、
前記ミラーは金属製で、その外周端部が樹脂でパイプに固定され、
かつ前記セルと前記基板の一方に係合部材が、他方に係合孔が設けられ、係合部材は係合孔に係合し接着剤により固定されている、NDIRガスセンサ。
【請求項2】
光源と受光素子及び光源と受光素子の駆動回路を搭載した基板と、ミラー付きのセルと、中間基板とを備える、NDIRガスセンサであって、
前記ミラーは回転楕円体の一部を構成する形状で平面視で楕円形であり、
光源と受光素子は、前記基板上の、前記回転楕円体の2つの焦点位置に配置され、
セルは、平面視で楕円形状の樹脂製のパイプと前記ミラーとを備え、
前記ミラーは金属製で、その外周端部が前記パイプに樹脂で固定され、
前記セルと前記中間基板は一体であるか互いに結合され、
前記中間基板は、前記基板の光源と受光素子を搭載した面に平行で、かつ光源と受光素子を収容するように、基板に固定され、
中間基板は光源の上部と受光素子の上部に開口を備え、光源の上部の開口もしくは受光素子の上部に、バンドパスフィルタが設けられ、
前記中間基板と前記基板の一方に第2の係合部材が、他方に第2の係合孔が設けられ、第2の係合部材は第2の係合孔に係合し接着剤により固定されている、NDIRガスセンサ。
【請求項3】
請求項1または2のNDIRガスセンサの製造方法であって、
金属製のミラーを固定型に位置決めするようにセットし、可動型を固定型に接近させ、樹脂を固定型と可動型の隙間に射出することにより、前記ミラー付きのセルをインサート成型する工程を含むことを特徴とする、NDIRガスセンサの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2のNDIRガスセンサの製造方法であって、
前記セルの上端部に、平面視で楕円形状のフランジ面と、フランジ面の外周を取り囲む側壁とを設け、
セルの成型後に金属製のミラーをフランジ面に載置し、前記ミラーのフランジ面の反対側の面を樹脂によりセルに固定することを特徴とする、NDIRガスセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はNDIRガスセンサとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
NDIRガスセンサは、光源と、受光素子と、光源からの光を反射し受光素子へ導くミラー付きのセルとを備えている。ミラーを回転楕円体の一部を構成する形状とし、回転楕円体の2焦点に光源と受光素子とを配置すると、光源の光はミラーで反射し、受光素子へ導かれる(特許文献1:特表平5-503352)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セルを全金属製とすると、金型のコストが嵩む。またセルを樹脂製とし、内面にAl等の反射膜を蒸着等で形成すると、樹脂と金属の熱膨張率の違いにより、反射膜の耐久性に問題が生じる。
【0005】
この発明の課題は、製造が容易で、かつ基板とミラーとの位置合わせが容易なNDIRガスセンサと、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様でのNDIRガスセンサは、光源と受光素子及び光源と受光素子の駆動回路を搭載した基板と、前記基板に固定したミラー付きのセルとを備える、NDIRガスセンサであって、
前記ミラーは回転楕円体の一部を構成する形状で平面視で楕円形であり、
光源と受光素子は、前記基板上の、前記回転楕円体の2つの焦点位置に配置され、
光源と受光素子の一方に対し、バンドパスフィルタが設けられ、
セルは、平面視で楕円形状の樹脂製のパイプと前記ミラーとを備え、
前記ミラーは金属製で、その外周端部が前記パイプに樹脂により固定され、
かつ前記セルと前記基板の一方に係合部材が、他方に係合孔が設けられ、係合部材は係合孔に係合し接着剤により固定されている。
【0007】
この発明の第2の態様でのNDIRガスセンサは、光源と受光素子及び光源と受光素子の駆動回路を搭載した基板と、ミラー付きのセルと、中間基板とを備える、NDIRガスセンサであって、
前記ミラーは回転楕円体の一部を構成する形状で平面視で楕円形であり、
光源と受光素子は、前記基板上の、前記回転楕円体の2つの焦点位置に配置され、
セルは、平面視で楕円形状の樹脂製のパイプと前記ミラーとを備え、
前記ミラーは金属製で、その外周端部が前記パイプに樹脂により固定され、
前記セルと前記中間基板は一体であるか互いに結合され、
前記中間基板は、前記基板の光源と受光素子を搭載した面に平行で、かつ光源と受光素子を収容するように、基板に固定され、
中間基板は光源の上部と受光素子の上部に開口を備え、光源の上部の開口もしくは受光素子の上部に、バンドパスフィルタが設けられ、
前記中間基板と前記基板の一方に第2の係合部材が、他方に第2の係合孔が設けられ、第2の係合部材は第2の係合孔に係合し接着剤により固定されている。
【0008】
この発明では、光源と受光素子をミラーの2つの焦点に配置するので、受光素子へ入射する光量が多い。また樹脂製のパイプにより、光路長を容易に長くできる。光源と受光素子を基板の中央部に配置できるので、ガスセンサに熱変形などが生じても、受光素子への入射光量の変化が少ない。金属製のミラーは、端部が樹脂製のパイプに埋め込まれているので、ミラーをパイプに正確に取り付けることができ、またミラーと樹脂製のパイプを一体に成型できる。Alの反射膜などをセルに設けるのではなく、金属製のミラーを固定するので、熱応力で反射膜が損傷するなどの問題が無い。セルを係合部材で基板あるいは中間基板に固定するので、基板に対するセルの位置精度が高く、セルに対するミラーの位置精度が高いことと併せると、光源と受光素子をミラーの両焦点に正確に配置できる。
【0009】
この発明のNDIRガスセンサの製造方法では、金属製のミラーを固定型に位置決めするようにセットし、可動型を固定型に接近させ、樹脂を固定型と可動型の隙間に射出することにより、前記ミラー付きのセルをインサート成型する。NDIRガスセンサの製造では、これ以外に基板に光源と受光素子と駆動回路を取り付け、かつ基板とセルを係合部材と係合孔及び接着剤により互いに固定する。基板とセルを固定する代わりに、基板と中間基板を係合部材と係合孔及び接着剤により互いに固定しても良い。中間基板とセルを一体に成型しても、これらを係合部材と係合孔及び接着剤により互いに固定しても良い。
【0010】
この発明のNDIRガスセンサの第2の製造方法では、セルの上端部に、平面視で楕円形状のフランジ面と、フランジ面の外周を取り囲む側壁とが設けられ、セルの成型後に金属製のミラーをフランジ面に載置し、前記ミラーのフランジ面の反対側の面を樹脂によりセルに固定する。
【0011】
この製造方法では、特に限定するものではないが、ミラーによる制約がないので、中間基板をセルと一体に成型することができる。樹脂は熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂などを用いる。
【0012】
この発明では、金属製のミラーを樹脂のパイプに位置決めしたセルを、容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】実施例での、セルのインサート成型を模式的に示す図
【
図5】第2の実施例のNDIRガスセンサの断面図で、ミラーを取り付ける前の状態を示す
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例0015】
図1~
図6に実施例とその変形を示す。
図1,
図2は実施例のNDIRガスセンサ2を示し、ガスセンサ2は基板4とセル6を備えている。セル6は、樹脂製で平面視で楕円形のパイプ6と、パイプ6の頂部にインサート成型により固定された金属ミラー8とを備え、金属ミラー8は回転楕円体の一部の形状をし、平面視で楕円形である。金属ミラー8の外周端部9が、樹脂製パイプ内に埋設され、金属ミラー8をパイプ6に固定している。
【0016】
基板4上に光源10と受光素子12とが設けられ、これらは回転楕円体の一部を構成する金属ミラー8の2つの焦点に配置され、光源10からの光がミラー8で反射されると,受光素子12に入射する。光源10はMEMSヒータ、赤外線LED、赤外線ランプなどで、受光素子12はサーモパイル、熱電素子、フォトダイオードなどである。
【0017】
実施例では、樹脂製の中間基板14を設け、光源10の光に対するバンドパスフィルタ16を中間基板14に固定し、例えばCO2、メタン、冷媒等の検出波長の光を透過する。バンドパスフィルタ16は、光源10側ではなく、受光素子12側に設けても良い。またバンドパスフィルタと受光素子のペアを2組設け、一方のバンドパスフィルタの透過波長を検出波長から外し、光源10の光量強度を監視しても良い。
【0018】
図3に示すように、中間基板14を設けず、例えばパイプ状のホルダ24にバンドパスフィルタ16を取り付け、ホルダ24内に光源10あるいは受光素子12を配置しても良い。
【0019】
図1,
図2に戻り、駆動回路17は、光源10の駆動回路、受光素子12からの信号処理回路、CO
2などのガス濃度を求めるためのプロセッサ、及びメモリなどから成る。駆動回路17は、基板4の端部の図示しない端子、あるいは基板4の底面に設けた端子などを介し、図示しない外部回路と接続する。実施例では、NDIRガスセンサ2はCO
2濃度などのガス濃度を出力し、電源及びガス濃度の表示回路、関連する装置との通信インターフェースなどは外部回路側に設ける。電源と表示回路と通信インターフェースなどをNDIRガスセンサ2内に設けても良い。
【0020】
中間基板14は例えばピン18で基板4に固定し、例えばピン18を接着剤と共に基板4の位置決め用の係合孔にセットする。同様に、セル6に設けた係合孔に爪20を接着剤により固定し、基板4とセル6を固定する。爪20の代わりに、基板4の上面あるいはパイプ7の底面に立てた図示しないピンを、接着剤により反対側の部材の係合孔に固定することにより、基板4とセル6を固定しても良い。またピン18を基板4から立てて、中間基板14の係合孔に係合し、接着剤で固定しても良い。さらにピン18の代わりに、図示しない爪を基板4と中間基板14の一方に設け、他方に設けた係合孔に係合し、接着剤で固定しても良い。
【0021】
図4はセル6のインサート成型を模式的に示し、30は固定型で、適宜の手段により金属ミラー8を位置決めするようにセットし,可動型32を下降させ、樹脂注入孔34から樹脂を注入する。固定型30に予め位置決めした金属ミラー8を樹脂に固定するように、セル6を射出成型することを、ミラー8を備えたセル6をインサート成型するという。
【0022】
NDIRガスセンサ2の、サイズ例を示す。基板4は各辺が20~30mmの長方形ないしは正方形状で、セル6の全高(基板4からミラー8の外部頂面までの高さ)は例えば15~25mmである。回転楕円体の長軸方向でのセル6の長さは、駆動回路17の配置を妨げない範囲で長いことが好ましい。
【0023】
実施例には以下の特徴がある。
1) 光源10と受光素子12をミラー8の両焦点に配置する。光源10の光がミラー8で反射されると受光素子12に入射するので、受光素子12に入射する光量が大きい。
2) パイプ6を長くする(基板4からの高さを大きくする)ことにより、光源10から受光素子12への光路長を大きくできる。実施例では30mm以上50mm以下にできる。
3) 光源10と受光素子12間の距離は、これらをセルの両端に配置する場合に比べ小さい。また光源10と受光素子12は基板4の中央部にある。これらのため、パイプ7と基板4の熱膨張率の差などにより基板4がたわんでも、光源10からミラー8を介して受光素子12へ入射する光量の変化は比較的小さい。即ち、NDIRガスセンサ2の変形による検出誤差が小さい。
4) 金属ミラー8を樹脂製のパイプ7にインサート成型する。従ってセル6でのミラー8の位置精度は高く、セル6の製造が容易である。さらに、Al蒸着膜を樹脂製セルの頂部に設ける場合とは異なり、熱応力等によるミラーの破損が無い。
5) セル6を爪20により基板4あるいは中間基板14に固定するので、基板4に対するセル6の位置精度が高く、組み立ても容易である。なお中間基板14を用いる場合、セル6を中間基板14に固定した後に中間基板14を基板4に固定しても良く、逆に、中間基板14を基板4に固定した後にセル6を中間基板14に固定しても良い。
【0024】
第2の実施例
図5,
図6に第2の実施例を示す。なお
図1~
図4と同じ符号は同じものを示し、特に指摘する点以外は
図1,
図2の実施例と同様である。42は新たなNDIRガスセンサで、セル46はパイプ47と中間基板54とから成る。パイプ47と中間基板54は例えば一体に成型するが、別体に成型し、ピンと接着剤などにより互いに固定しても良い。セル46の上端には、平面視で楕円形状のフランジ面48とフランジ面48を取り囲む側壁49とが有る。フランジ面48は、金属製のミラー68の外周端部70の底面を成すスフランジ面71とフィットする形状である。
【0025】
パイプ47と中間基板54とから成る樹脂製のセル46を一体に成型した状態を、
図5に示す。中間基板54のピン18をピン孔19に挿入し、接着剤で固定する。この実施例では、光源10を開口55の下部に、受光素子12を開口56の下部に配置する。特に限定するものではないが、バンドパスフィルタ16を開口56を覆うように固定する。セル46を基板4に固定する前後に、金属製のミラー68をフランジ面48に載置し、ミラー68の外周端部70の位置を側壁49で規制する。そして外周端部70の上部に熱硬化性あるいは紫外線硬化性の樹脂72を滴下し、熱あるいは紫外線により樹脂72を硬化させ、ミラー68をセル46に固定する。
【0026】
この実施例では、インサート形成をしないためミラー68による制約がないので、パイプ47と中間基板54を一体に成型できる。またミラー68はフランジ面48と側壁49で高さ方向と水平方向とに位置決めし、樹脂72で固定する。