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2024-163490計算機システム及びITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163490
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】計算機システム及びITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 8/20 20180101AFI20241115BHJP
【FI】
G06F8/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079130
(22)【出願日】2023-05-12
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.AWS
2.MySQL
3.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 渚紗
(72)【発明者】
【氏名】柿田 将幸
(72)【発明者】
【氏名】受田 賢知
【テーマコード(参考)】
5B376
【Fターム(参考)】
5B376BC02
5B376DA16
5B376DA20
(57)【要約】
【課題】ITシステムのアーキテクチャ設計を支援する。
【解決手段】計算機システムは、非機能要件を実装するための設計情報である要素を管理する要素データベースと、過去の非機能要件の実装履歴を格納する履歴データベースとを保持する。計算機システムは、ベースとなるアーキテクチャによって実現されるITシステムに実装する非機能要件の情報を取得し、要素データベースを参照して要素の組合せを複数生成し、複数の要素の組合せについて、複数の要素の組合せの推薦順位を表す優先度を付与する。制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、実装履歴を用いて代替案を生成する。計算機システムは、優先度に基づいてソートされた要素の組合せ及び代替案の少なくともいずれかを出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ITシステムのアーキテクチャの設計を支援する計算機システムであって、
非機能要件及び前記非機能要件を実装するための設計情報である要素を対応づけたデータを格納する要素データベースと、過去の前記非機能要件の実装履歴を格納する履歴データベースとを保持し、
ベースとなるアーキテクチャによって実現されるITシステムに実装する前記非機能要件の情報を取得し、
前記要素データベースを参照して、前記非機能要件を実装するための前記要素の組合せを複数生成し、
前記複数の要素の組合せについて、推薦順位を決定するために用いる評価指標を算出し、
前記評価指標に基づいて、前記複数の要素の組合せの推薦順位を表す優先度を付与し、
制約条件を満たす前記要素の組合せが存在するか否かを判定し、
前記制約条件を満たす前記要素の組合せが存在しない場合、前記実装履歴を解析することによって、前記要素の組合せに含まれる少なくとも一つの前記要素の変更方法を特定し、
特定された前記変更方法に基づいて前記要素の組合せを修正することによって代替案を生成し、
前記優先度に基づいてソートされた前記要素の組合せ及び前記代替案の少なくともいずれかを出力することを特徴とする計算機システム。
【請求項2】
請求項1に記載の計算機システムであって、
前記実装履歴を解析することによって、実装の実績が少ない前記要素、又は過去の実装履歴と比較して要素が満たす要件が過剰若しくは不足している前記要素を、変更可能な前記要素として特定し、
前記変更可能な要素の変更方法を特定することを特徴とする計算機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記実装履歴を解析することによって、前記非機能要件の実装傾向を特定し、
前記非機能要件の実装傾向に基づいて、前記要素の組合せに含まれる前記要素の変更方法を特定することを特徴とする計算機システム。
【請求項4】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記評価指標は、金銭的なコスト、実装に要するコスト、及び運用に要するコストの少なくともいずれかであり、
前記制約条件は、前記金銭的なコスト、前記実装に要するコスト、及び前記運用に要するコストの少なくともいずれかに関する制約条件であることを特徴とする計算機システム。
【請求項5】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記制約条件は、実装に関する制約条件あり、
前記評価指標は、前記制約条件の合致の程度を表す数値であることを特徴とする計算機システム。
【請求項6】
請求項2に記載の計算機システムであって、
前記履歴データベースは、過去の前記非機能要件のユーザによる採用の可否に関する実装判断履歴を格納し、
前記実装判断履歴は、前記要素、前記要素の実装可否、及び前記要素の実装の判断基準となる前記評価指標の種類を含み、
前記計算機システムは、
複数種類の前記評価指標を算出し、
前記実装判断履歴に基づいて、前記非機能要件の実装の判断に用いる前記評価指標の種類を特定し、
特定された種類の前記評価指標に基づいて、前記優先度を付与することを特徴とする計算機システム。
【請求項7】
請求項6に記載の計算機システムであって、
出力した前記要素の組合せ及び前記代替案を利用した実装結果をフィードバックとして取得し、
取得した前記フィードバックを前記実装履歴又は前記実装判断履歴として蓄積することを特徴とする計算機システム。
【請求項8】
計算機システムが実行するITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記計算機システムは、非機能要件及び前記非機能要件を実装するための設計情報である要素を対応づけたデータを格納する要素データベースと、過去の前記非機能要件の実装履歴を格納する履歴データベースとを保持し、
前記ITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法は、
前記計算機システムが、ベースとなるアーキテクチャによって実現されるITシステムに実装する前記非機能要件の情報を取得する第1のステップと、
前記計算機システムが、前記要素データベースを参照して、前記非機能要件を実装するための前記要素の組合せを複数生成する第2のステップと、
前記計算機システムが、前記複数の要素の組合せについて、推薦順位を決定するために用いる評価指標を算出する第3のステップと、
前記計算機システムが、前記評価指標に基づいて、前記複数の要素の組合せの推薦順位を表す優先度を付与する第4のステップと、
前記計算機システムが、制約条件を満たす前記要素の組合せが存在するか否かを判定する第5のステップと、
前記制約条件を満たす前記要素の組合せが存在しない場合、前記計算機システムが、前記実装履歴を解析することによって、前記要素の組合せに含まれる少なくとも一つの前記要素の変更方法を特定する第6のステップと、
前記計算機システムが、特定された前記変更方法に基づいて前記要素の組合せを修正することによって代替案を生成する第7のステップと、
前記計算機システムが、前記優先度に基づいてソートされた前記要素の組合せ及び前記代替案の少なくともいずれかを出力するする第8のステップと、を含むことを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記第6のステップは、
前記計算機システムが、前記実装履歴を解析することによって、実装の実績が少ない前記要素、又は過去の実装履歴と比較して要素が満たす要件が過剰若しくは不足している前記要素を、変更可能な前記要素として特定するステップと、
前記計算機システムが、前記変更可能な要素の変更方法を特定するステップと、を含むことを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項10】
請求項9に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記第6のステップは、
前記計算機システムが、前記実装履歴を解析することによって、前記非機能要件の実装傾向を特定するステップと、
前記計算機システムが、前記非機能要件の実装傾向に基づいて、前記要素の組合せに含まれる前記要素の変更方法を特定するステップと、を含むことを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項11】
請求項9に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記評価指標は、金銭的なコスト、実装に要するコスト、及び運用に要するコストの少なくともいずれかであり、
前記制約条件は、前記金銭的なコスト、前記実装に要するコスト、及び前記運用に要するコストの少なくともいずれかに関する制約条件であることを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項12】
請求項9に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記制約条件は、実装に関する制約条件あり、
前記評価指標は、前記制約条件の合致の程度を表す数値であることを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項13】
請求項9に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記履歴データベースは、過去の前記非機能要件のユーザによる採用の可否に関する実装判断履歴を格納し、
前記実装判断履歴は、前記要素、前記要素の実装可否、及び前記要素の実装の判断基準となる前記評価指標の種類を含み、
前記第3のステップは、
前記計算機システムが、複数種類の前記評価指標を算出するステップを含み、
前記第4のステップは、
前記計算機システムが、前記実装判断履歴に基づいて、前記非機能要件の実装の判断に用いる前記評価指標の種類を特定するステップと、
前記計算機システムが、特定された種類の前記評価指標に基づいて、前記優先度を付与するステップと、を含むことを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【請求項14】
請求項13に記載のITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法であって、
前記計算機システムが、出力した前記要素の組合せ及び前記代替案を利用した実装結果をフィードバックとして取得するステップと、
前記計算機システムが、取得した前記フィードバックを前記実装履歴又は前記実装判断履歴として蓄積するステップを、を含むことを特徴とするITシステムのアーキテクチャ設計の支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーキテクチャの設計を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ITシステムの開発において、ITシステムのアーキテクチャの設計は、ユーザがITシステムに期待する要求をコンピュータの構造及び形式に変換し、ITシステムの土台を形作るという観点で重要な役割を持つ。本明細書において、ITシステムのアーキテクチャとは、ITシステムの構成要素及び構成要素間の接続関係等を具体的な形式で表現した情報を意味する。
【0003】
ITシステムのアーキテクチャ設計には、ITシステム全般にわたる幅広い知識、アーキテクチャの構成要素の関係性及び実装方法等について深い知識が必要である。そのため、ゼロベースでのITシステムのアーキテクチャの設計は手間及び時間がかかる。これに対し、クラウドベンダ等は、ドメイン及びITシステムの目的に対応したリファレンスアーキテクチャを提供している。
【0004】
リファレンスアーキテクチャは、ドメインで頻出の構成又はアーキテクチャ設計時のベストプラクティスに基づいて作成され、ITシステムの目的を達成するための一般的なサービス及び最低限の機能から構成される。
【0005】
設計者は、類似するドメイン又は目的に対応したリファレンスアーキテクチャを、ITシステムのユーザ要求に応じて修正することで、ITシステムのアーキテクチャの設計を効率的に行うことができる。
【0006】
ユーザ要求は、一般的に、機能要件及び非機能要件に分類される。機能要件は、ITシステムによって提供される機能及び挙動に関する要件であり、非機能要件は、性能、セキュリティ、可用性等のITシステムの品質に関する要件である。非機能要件は、アーキテクチャを構成する要素の組合せによって実現されることが多いため、設計者は、非機能要件間の関連性及び影響を考慮した上でユーザ要求を満たすようにアーキテクチャを設計する必要がある。したがって、リファレンスアーキテクチャを用いたITシステムのアーキテクチャ設計においても幅広い知識及び経験が必要となる。
【0007】
そのため、従来技術では、設計者が十分な開発能力を有さない場合、ユーザ要求を満たすITシステムのアーキテクチャを設計することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-110325号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】情報処理推進機構、「非機能要求グレード」、[online]、2018年4月、[令和4年12月27日検索]、インターネット<URL:https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/std/ent03-b.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述の課題に対して特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、「システム設計支援装置180において、新規設計対象のシステムに関する複数の要件それぞれを実現する設計情報を第1のテーブルで特定し、当該特定の結果、いずれかの要件について複数の設計情報を特定した場合、複数の設計情報それぞれと他要件に関して特定された設計情報との組合せ利用の適性順位を第2のテーブルで参照して適性順位がより高い組合せとなる設計情報を特定し、複数の要件それぞれについて特定した設計情報を所定装置に出力する。」ことが記載されている。
【0011】
特許文献1に記載の技術を用いることによって、複数の要件を満たし、かつ、適正順位が高い設計情報を出力できる。しかし、特許文献1では以下のような課題がある。1つの課題は、ITシステムのアーキテクチャを実装する場合のコストを考慮した順位付けがされていないことである。他の課題は、適切な設計情報の組合せがない場合に生成される代替案の変更基準が明らかでないことである。
【0012】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、コストを考慮してITシステムのアーキテクチャの順位付けを行い、また、適切なアーキテクチャを生成できない場合にユーザに根拠を提示できる変更基準に基づいて代替案を生成するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、ITシステムのアーキテクチャの設計を支援する計算機システムであって、非機能要件及び前記非機能要件を実装するための設計情報である要素を対応づけたデータを格納する要素データベースと、過去の前記非機能要件の実装履歴を格納する履歴データベースとを保持し、ベースとなるアーキテクチャによって実現されるITシステムに実装する前記非機能要件の情報を取得し、前記要素データベースを参照して、前記非機能要件を実装するための前記要素の組合せを複数生成し、前記複数の要素の組合せについて、推薦順位を決定するために用いる評価指標を算出し、前記評価指標に基づいて、前記複数の要素の組合せの推薦順位を表す優先度を付与し、制約条件を満たす前記要素の組合せが存在するか否かを判定し、前記制約条件を満たす前記要素の組合せが存在しない場合、前記実装履歴を解析することによって、前記要素の組合せに含まれる少なくとも一つの前記要素の変更方法を特定し、特定された前記変更方法に基づいて前記要素の組合せを修正することによって代替案を生成し、前記優先度に基づいてソートされた前記要素の組合せ及び前記代替案の少なくともいずれかを出力する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態によれば、計算機システムは、適切なITシステムのアーキテクチャの設計を支援できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムの構成の一例を示す図である。
図2A】実施例1の要素DBのデータ構造の一例を示す図である。
図2B】実施例1の要素DBのデータ構造の一例を示す図である。
図3A】実施例1の履歴DBのデータ構造の一例を示す図である。
図3B】実施例1の履歴DBのデータ構造の一例を示す図である。
図4】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図5】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムによる非機能要件の要素の特定方法及び要素の組合せの生成方法の一例を説明する図である。
図6】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムによるコストの算出方法の一例を説明する図である。
図7】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する優先度の決定処理の一例を説明するフローチャートである。
図8】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する優先度の決定処理の一例を説明するフローチャートである。
図9】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する優先度の決定処理の一例を説明するフローチャートである。
図10】実施例1の優先度の具体的な決定方法を示す図である。
図11A】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図11B】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図12A】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図12B】実施例1のアーキテクチャ設計支援システムが実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図13】実施例3のアーキテクチャ設計支援システムが実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
図14】実施例3のアーキテクチャ設計支援システムが実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
図15】実施例4のアーキテクチャ設計支援システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0017】
以下に説明する発明の構成において、同一又は類似する構成又は機能には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」等の表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数又は順序を限定するものではない。
【実施例0019】
図1は、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100の構成の一例を示す図である。
【0020】
実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100は、ITシステムのアーキテクチャの設計を支援する。後述するように、アーキテクチャ設計支援システム100は、コスト制約を考慮して非機能要件を実現するITシステムのアーキテクチャを生成する。
【0021】
本明細書では、ITシステムのアーキテクチャは、サービスの種類、サービス間の接続、物理的な機器の接続、及びパラメータ等を定義する情報を要素から構成される情報であるものとする。また、本明細書では、ユーザは、クラウドベンダ等によって提供されるITシステムのリファレンスアーキテクチャ(基本構成)に対して非機能要件を追加するユースケースを想定する。
【0022】
アーキテクチャ設計支援システム100は、組合せ決定部111、検証部112、代替案生成部113を備え、また、要素DB114及び履歴DB115を保持する。アーキテクチャ設計支援システム100はユーザと直接情報をやりとりしてもよいし、外部システムとの間で情報をやりとりしてもよい。
【0023】
要素DB114は、非機能要件を実装するための設定情報である要素を格納するデータベースである。なお、要素DB114は、アーキテクチャ設計支援システム100とは異なる外部サーバが保持してもよい。要素DB114の詳細は図2A及び図2Bを用いて説明する。
【0024】
履歴DB115は、ITシステムのアーキテクチャの実装の履歴を格納するデータベースである。履歴DB115の詳細は図3A及び図3Bを用いて説明する。
【0025】
組合せ決定部111は、要素DB114を参照して、指定された非機能要件を実現するための要素を抽出し、要素の組合せを決定する。
【0026】
検証部112は、組合せ決定部111が決定した要素の組合せについて、開発、実装、及び運用等の観点に基づいた評価指標であるコストを算出し、コストに基づいて要素の組合せの推薦順位(適用順位)を決定するための優先度を決定する。コストは、例えば、ITシステムの導入及び維持に要するコスト、実装に要する工数、ITシステムにおけるサービスの管理レベル等である。
【0027】
代替案生成部113は、履歴DB115を参照して、要素の変更方法を特定し、特定された変更方法に基づいて要素の組合せの要素を修正することによって代替案を生成する。ここで、要素の変更とは、要素の変数及びパラメータの修正、及び、要素そのものの変更を含む概念である。
【0028】
なお、アーキテクチャ設計支援システム100は、プロセッサ、メモリ、及びネットワークインタフェースを有する計算機を用いて実現される。
【0029】
図2A及び図2Bは、実施例1の要素DB114のデータ構造の一例を示す図である。
【0030】
要素DB114は、非機能要件を実現するための要素を管理するための情報として、例えば、図2Aに示すようなテーブル200を格納する。本実施例では、非機能要件は、非特許文献1の非機能要件グレード表に示される非機能要件の項目、及び対象に基づいて分類される。また、要件レベルは各要素が対応可能な非機能要件の範囲を相対的に示す数値として定義される。テーブル200は、ID201、項目202、対象203、要件レベル204、及び要素205から構成されるエントリを格納する。
【0031】
例えば「データベースを対象にした要件レベル3の耐障害性に関する非機能要件」を実現する要素は「RDS for Aurora」であることを示している。なお、項目、対象、及び要件レベルが同一である非機能要件を実現するための要素は複数存在してもよく、非機能要件の情報に対応する要素が1対1になるようにテーブル200に新たなフィールドを追加してもよい。
【0032】
要素205には、例えば、図2Bに示すようなデータ構造のデータ250が格納される。データ250は、非機能要件を実現するために必要な情報を含む。例えば、データ250には、非機能要件を実現するリソースの名称251、リソースの構造、パラメータ、及び設定を表すコード252、並びに、コストに関する変数253等が含まれる。なお、図2Bに示すデータ250は一例であってこれに限定されない。例えば、リソース間の詳細な構造をメインリソース及びサブリソースとして含んでもよいし、パラメータの重要度及び設定方法を含んでもよい。
【0033】
データ250は、例えば、クラウドベンダが提供するIaC(Infrastructure as Code)の形式で記述されてもよく、箇条書きのテキストでもよい。
【0034】
図3A及び図3Bは、実施例1の履歴DB115のデータ構造の一例を示す図である。
【0035】
履歴DB115は、非機能要件の実装履歴を格納する。履歴DB115は、例えば、図3Aに示すような履歴テーブル300及び図3Bに示すような採否結果テーブル310を格納する。なお、履歴DB115には、非機能要件の実装状況を管理するテーブル等が含まれてもよい。
【0036】
履歴テーブル300は、ITシステムに実装された非機能要件を実現するための要素を管理するためのエントリ(実装履歴)を格納する。エントリは、ID301、要素リスト302、及び基本構成303を含む。要素リスト302は、ITシステムに実装された要素のID(ID201)のリストを格納するフィールドである。基本構成303は、ITシステムのリファレンスアーキテクチャを格納するフィールドである。なお、基本構成303は、ITシステムの主目的、ドメイン、及び構成図等が格納されてもよい。
【0037】
要素は、要素DB114にて非機能要件と関連付けて管理される。そのため、履歴テーブル300から、ITシステムにどの非機能要件の要素が実装されているかを把握することができる。また、非機能要件の要素が実装されたITシステムのアーキテクチャの詳細を把握できる。
【0038】
採否結果テーブル310は、ユーザによる要素の実装の採否の判断結果を管理するためのエントリ(実装判断履歴)を格納する。エントリは、ID311、履歴ID312、要素ID313、採用種別314、コスト情報315、及び理由316を含む。コスト情報315は、実装可否の判断において着目したコストに関する情報を格納するフィールドである。例えば、コストの種別及び判定式等が格納される。理由316は、ユーザが要素の実装を採用しなかった理由を格納するフィールドである。理由は、プルダウン形式で選択できるようにしてもよいし、ユーザによる自由記述でもよい。
【0039】
採否結果テーブル310から、要素の採否の判断基準を把握することができる。実装履歴と関連付けて実装判断履歴を管理することによって、任意のITシステムにおける非機能要件の実装の優先順位を把握できる。
【0040】
図4は、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0041】
アーキテクチャ設計支援システム100は、ユーザから非機能要件を含む設計要求を受け付けた場合、以下で説明する処理を開始する。ユーザは、非機能要件を指定する情報とし、項目及び対象を入力すればよい。なお、要件レベルを含めてもよい。要件レベルは数値で指定してもよいし、範囲で指定してもよい。
【0042】
組合せ決定部111は、要素DB114を参照して、指定された非機能要件に対応する要素を特定する(ステップS101)。
【0043】
組合せ決定部111は、指定された全ての非機能要件の要素の組合せを生成する(ステップS102)。
【0044】
組合せ決定部111は、要素の組合せ毎に整合性を確認し、実装可能な要素の組合せを特定する(ステップS103)。
【0045】
例えば、非機能要件αに対応する要素1と要素2、及び非機能要件βに対応する要素3があると仮定する。なお、要素1はサービスAを、要素2と要素3はサービスBを対象としている。このとき、非機能要件αとβを同時に満たす組合せとして要素1と要素3の組合せ、及び要素2と要素3の組合せが考えられる。しかし、サービスAを対象とする要素1とサービスBを対象とする要素3を組み合わせることはITシステムの実装として適さない。そのため、組合せ決定部111は要素1と要素3の組合せを削除する。なお、実装可能な要素の組合せを特定するための情報として、ITシステムの基本構成を用いてもよい。
【0046】
検証部112は、各要素の組合せのコストを算出する(ステップS104)。例えば、以下のようなコストが考えられる。
【0047】
(パターン1)実装に要する金額をコストとして算出する場合、検証部112は、クラウドベンダが提示する料金情報に基づいてコストを算出する。また、要素の組合せの実装前後の基本情報の差分に基づいてコストが算出されてもよい。
【0048】
(パターン2)実装に要する工数をコストとして算出する場合、検証部112は、要素に含まれるリソースの数、及び定義が必要な変数の数等に基づいてコストを算出する。なお、コストは、要素又は要素の実装履歴に基づいて算出できる。
【0049】
(パターン3)実装したITシステムの運用の手間をコストとして算出する場合、検証部112は、要素の管理レベル及びサービスタイプ等に基づいてコストを算出する。なお、コストは、要素又は要素の実装履歴に基づいて算出できる。
【0050】
検証部112は、要素の組合せに含まれる各要素のコストの合計値、最大値、最小値、及び平均値を要素の組合せのコストとして算出する。なお、要素の重複する内容を考慮してコストが算出されてもよい。
【0051】
検証部112は、コストに基づいて、要素の組合せの優先度を決定する(ステップS105)。例えば、コストの低い順に優先度を高く設定する方法が考えられる。
【0052】
なお、複数種類のコストが算出されている場合、各種コストの合計値、又は任意のコストに基づいて優先度が決定されてもよい。また、検証部112は、履歴DB115に基づいて、着目するコストを特定してもよい。優先度の決定方法の詳細は後述する。
【0053】
アーキテクチャ設計支援システム100は、優先度に基づいて、要素の組合せをソートし、ユーザに提示する(ステップS106)。
【0054】
ユーザは、要素の組合せを確認し、コスト制約条件を決定し、アーキテクチャ設計支援システム100に入力する。コスト制約条件は、コスト又は優先度に関する条件式、及び選択する要素の組合せの数等である。
【0055】
検証部112は、ユーザからコスト制約条件を取得した場合、コスト制約条件を満たす要素の組合せが存在するか否かを判定する(ステップS107)。
【0056】
コスト制約条件を満たす要素の組合せが存在する場合、検証部112は、当該要素の組合せを出力し(ステップS108)、その後、処理を終了する。
【0057】
コスト制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、代替案生成部113は、代替案となる要素の組合せを生成する(ステップS109)。代替案は、1つでもよいし、複数でもよい。
【0058】
例えば、代替案生成部113は、履歴DB115に基づいて、ある要素の組合せにおいて実装頻度が低い要素を特定し、当該要素の要件レベル等を変更することによって代替案を生成する。このとき、代替案生成部113は、代替案のコストを算出し、コスト制約条件を満たすか否かを判定する。
【0059】
代替案生成部113は、コスト制約条件を満たす代替案を出力し(ステップS110)、その後、処理を終了する。
【0060】
なお、ステップS107において、コスト制約条件を満たす要素の組合せと、コスト制約条件を満たさない要素の組合せとが存在する場合、代替案生成部113はステップS109に進んでもよい。
【0061】
以下、図5から図12を用いて各処理を具体的について説明する。
【0062】
まず、図5を用いて要素の組合せの生成方法について説明する。図5は、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100による非機能要件の要素の特定方法及び要素の組合せの生成方法の一例を説明する図である。
【0063】
アーキテクチャ設計支援システム100は以下のような非機能要件を指定する情報を受け付けたものとする(図5(A)参照)。
【0064】
(非機能要件1)項目は耐障害性、対象はデータベース、要件レベルは2以上
(非機能要件2)項目はバックアップ、対象はデータベース、要件レベルは2以上
【0065】
ステップS101では、図5(B)に示すように、組合せ決定部111は、図2Aに示すテーブル200を参照し、非機能要件1を実現するための要素として「RDS for Aurora」及び「RDS(Multi)」を特定し、非機能要件2を実現するための要素として「AWS Backup」、「Lifecycle Manager」、「RDS(backup)」を特定する。
【0066】
ステップS102では、図5(C)に示すように、組合せ決定部111は6つの要素の組合せを生成する。
【0067】
「RDS for Aurora」及び「RDS(Multi)」の対象はRDSであるが、「Lifecycle Manager」の対象はEC2であり、対象が異なる。そのため、同一のデータベースに適用する要素としては同時に実装できない。したがって、ステップS103では、図5(D)に示すように、組合せ決定部111は、「RDS for Aurora、Lifecycle Manager」及び「RDS(Multi)、Lifecycle Manager」を含む要素の組合せを削除し、4つの要素の組合せを出力する。
【0068】
次に、図6を用いてコストの算出方法について説明する。図6は、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100によるコストの算出方法の一例を説明する図である。
【0069】
ここでは、要素の組合せ「RDS(Multi)、RDS(backup)」のコストの算出方法を説明する。
【0070】
まず、金銭コストの算出方法について説明する。本実施例では、要素に対して金銭コストの算出方法が事前に設定されているものとする。例えば、要素RDS(Multi)については式(1)に示すような算出方法が設定され、要素RDS(backup)については式(2)に示すような算出方法が設定される。
【0071】
【数1】
【0072】
【数2】
【0073】
上記のコストの算出式の変数は異なるため、検証部112は、式(1)及び式(2)の各々から得られる値の総和を金銭コストとして算出する。
【0074】
次に、実装/運用コストの算出方法について説明する。検証部112は、要素RDS(Multi)及び要素RDS(backup)から図6に示すような情報を得ることができる。検証部112は、2つの要素がいずれも同じ特徴をもち、管理レベルがマネージド、サービスタイプが単体、サブリソースが4つであることが分かる。また、要素RDS(Multi)は実装に必要な変数として変数1と変数2を合わせて2つの変数を含み、要素RDS(backup)は実装に必要な変数として変数1と変数2を合わせて3つの変数を含むことが分かる。
【0075】
検証部112は、要素から取得した情報を比較し、同時に実装する場合のコストを算出する。例えば、検証部112は、管理レベル、サービスタイプ、構成の数、及び変数の数を実装/運用コストとして算出する。図6に示す例では、サービスタイプは単体となり、変数1の数は3となり、変数2の数は要素間で変数が共通するため1となり、変数3の数は0となる。サブリソースの数は構成間で共通するため4つとなり、これに共通するメインリソースであるRDSを加えた5つが構成数となる。また、検証部112は、要素の組合せにおける管理レベルの組合せをコストに変換する。例えば、全ての要素の管理レベルがセルフマネージドの場合コスト小とし、セルフマネージド及びマネージドが混在する場合コスト中とし、全ての要素の管理レベルがマネージドの場合コスト大とする。
【0076】
次に、図7から図10を用いて、優先度の決定方法について説明する。
【0077】
図7図8、及び図9は、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する優先度の決定処理の一例を説明するフローチャートである。図10は、実施例1の優先度の具体的な決定方法を示す図である。
【0078】
まず、図7の優先度の決定処理について説明する。検証部112は、各要素の組合せについて、金銭コストを、順位を表す数値に変換し、また、実装/運用コストを、順位を表す数値に変換する(ステップS201)。数値の変換方法は、予め設定されている。例えば、検証部112は、コストの小さい順に小さい数値を出力する。
【0079】
例えば、図5で示した各要素の組合せについて、図10(A)に示すようなコストが算出されている場合、検証部112は、図10(B)に示すように数値に変換する。
【0080】
検証部112は、各要素の組合せについて、各コストから算出された数値に基づいて、総合コストを算出する(ステップS202)。
【0081】
例えば、検証部112は、各コストから算出された数値の合計値を総合コストとして算出する。また、数値の重み付け和から総合コストが算出されてもよい。
【0082】
検証部112は、総合コストに基づいて、要素の組合せの優先度を決定する(ステップS203)。
【0083】
例えば、総合コストが小さい要素の組合せが優先的に表示されるように、優先度が付与される。なお、総合コストが同一の要素の組合せについては同一の優先度が付与されてもよいし、個別のコストの比較結果に基づいて一意な優先度が付与されてもよい。
【0084】
各コストの数値の合計値を総合コストとする場合、図7の決定方法では、図5(D)のIDが3、4の要素の組合せに高い優先度が付与され、図5(D)のIDが1、2の要素の組合せに低い優先度が付与される。高い優先度が付与された要素の組合せが優先的にユーザに提示される。
【0085】
次に、図8の優先度の決定方法について説明する。検証部112は、各要素の組合せの基準コストに基づいて、要素の組合せの優先度を決定する(ステップS301)。なお、基準コストが同一の要素の組合せについては同一の優先度が付与されてもよいし、他のコストの比較結果に基づいて一意な優先度が付与されてもよい。
【0086】
基準コストは、優先度を決定するために使用するコストであり、予め設定されてもよいし、ユーザが選択できるようにしてもよい。なお、基準コストは複数でもよい。
【0087】
構成数が基準コストである場合、図5(D)のIDが4の要素、IDが2の要素、IDが3の要素、IDが1の要素の順に高い優先度が付与される。
【0088】
次に、図9の優先度の決定方法について説明する。検証部112は、採否結果テーブル310を参照して、基準コストを特定する(ステップS401)。
【0089】
例えば、検証部112は、採否結果テーブル310の各エントリのコスト情報315に基づいて、各種コストの使用頻度を算出する。検証部112は、最も使用頻度が高い種別のコストを基準コストとして特定する。
【0090】
なお、要素又は基本構成が類似するエントリのみを用いて使用頻度が算出されてもよい。また、基準コストは複数でもよい。
【0091】
検証部112は、各要素の組合せの基準コストに基づいて、要素の組合せの優先度を決定する(ステップS402)。なお、基準コストが同一の要素の組合せについては同一の優先度が付与されてもよいし、他のコストの比較結果に基づいて一意な優先度が付与されてもよい。
【0092】
サービスタイプが基準コストとして特定された場合、図5(D)のIDが1、3の要素の組合せには高い優先度が付与され、図5(D)のIDが2、4の要素の組合せには低い優先度が付与される。
【0093】
次に、図11から図14を用いて代替案の生成方法について説明する。
【0094】
コスト制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、組合せ内の一部の要素を変更することで、コスト制約条件を満たす要素の組合せを生成できる。しかし、非機能要件の変更には知識及び経験を要する。実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100は、過去の非機能要件の実装履歴を用いて要素の変更方法を特定し、代替案を生成する。
【0095】
図11A及び図11Bは、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
【0096】
図11A及び図11Bに示す代替案の生成方法では、実装頻度に基づいて要素の変更が行われる。まず、代替案生成部113は、検証部112が出力した要素の組合せの優先度に基づいて、ベースとなる要素の組合せを選択する。ベースとなる要素の組合せは1つでもよいし、複数でもよい。ここでは、ベースとなる要素の組合せが1つ選択されたものとする。ベースとなる要素の組合せが複数選択された場合、各要素の組合せに対して以下で説明する処理が実行される。
【0097】
代替案生成部113は、履歴テーブル300を参照して、ベースとなる要素の組合せに対応した各非機能要件の実装頻度を算出する(ステップS501)。ここで、非機能要件の実装頻度は、非機能要件を実現するための要素が実装された回数を表す。
【0098】
具体的には、代替案生成部113は、非機能要件を実現するための要素を特定する。代替案生成部113は、特定された要素のIDを要素リスト302に格納するエントリの数を、非機能要件の実装頻度として算出する。
【0099】
なお、基本構成が類似するエントリのみを検索対象としてもよい。また、ユーザが実行頻度を算出する非機能要件を指定してもよい。
【0100】
代替案生成部113は、各非機能要件の実装頻度に基づいて、変更可能な非機能要件が存在するか否かを判定する(ステップS502)。
【0101】
具体的には、代替案生成部113は、ベースとなる要素の組合せに対応した非機能要件間の実装頻度差分を算出する。非機能要件間の実装頻度に差分が存在する場合、代替案生成部113は、変更可能な非機能要件が存在すると判定する。
【0102】
変更可能な非機能要件が存在しない場合、代替案生成部113はステップS512に進む。
【0103】
変更可能な非機能要件が存在する場合、代替案生成部113は、変更対象の非機能要件を選択する(ステップS503)。ここでは、実装頻度が小さい順に非機能要件が選択されるものとする。すなわち、実装の実績が低い非機能要件が変更対象の非機能要件として選択される。
【0104】
代替案生成部113は、選択した非機能要件に対応する要素が変更可能か否かを判定する(ステップS504)。
【0105】
例えば、要素の変数又はパラメータの修正に伴ってコストが変化しない場合、又は、現在の非機能要件のレベルと同一の他の要素又は当該レベルが異なる他の要素に変更してもコストが変化しない場合、選択した要素は変更可能でないと判定される。これは、要素の変更を行っても、コスト制約条件を満たすことがないためである。
【0106】
選択した非機能要件に対応する要素が変更可能ではない場合、代替案生成部113は、非機能要件の実装頻度が所定の閾値より小さいか否かを判定する(ステップS505)。これは、ITシステムのアーキテクチャに実装される機会が少ない非機能要件であるか否かを判定するものである。
【0107】
非機能要件の実装頻度が所定の閾値以上である場合、代替案生成部113はステップS507に進む。
【0108】
非機能要件の実装頻度が所定の閾値より小さい場合、代替案生成部113は、非機能要件に対応する要素を含む操作データにRemoveフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する(ステップS506)。その後、代替案生成部113はステップS507に進む。Removeフラグは、要素の削除操作を示すフラグである。
【0109】
ステップS507では、代替案生成部113は、選択可能な変更対象の要素が存在する否かを判定する(ステップS507)。
【0110】
選択可能な変更対象の要素がない場合、代替案生成部113はステップS512に進む。
【0111】
選択可能な変更対象の要素がある場合、代替案生成部113は、ステップS503に戻る。
【0112】
なお、ステップS505及びステップS506の処理は実行されなくてもよい。ステップS504の判定結果がNOである場合、代替案生成部113は、ステップS507に進む。
【0113】
ステップS504において、選択した非機能要件に対応する要素が変更可能である場合、代替案生成部113は、当該要素の変更方法を特定する(ステップS508)。
【0114】
具体的には、代替案生成部113はコストが変動する変更方法を抽出する。変更方法としては、要素の変数又はパラメータの修正又は要素の変更である。複数の変更方法が抽出された場合、代替案生成部113は、1つ又は任意の数の変更方法を選択してもよい。
【0115】
なお、代替案生成部113は、選択した非機能要件の実装履歴を参照し、現在の要素と実装履歴の要素とを比較して、変更方法を特定してもよい。
【0116】
代替案生成部113は、特定された変更方法による要素の変更に伴って他の要素へ影響を与えるか否かを判定する(ステップS509)。
【0117】
要素の変更に伴って、ステップS103で説明したように、他の要素と共存できなくなる等の影響がある。そのため、影響の有無が確認される。例えば、代替案生成部113は、特定された変更方法にしたがって要素の変更を実施し、変更後の要素と他の要素を比較し、他の要素についても変更が必要か否かを判定する。なお、基本構成への影響の有無を考慮してもよい。
【0118】
要素の変更に伴って他の要素へ影響を与えない場合、代替案生成部113は、現在の要素及び変更方法を対応づけた操作データにChangeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する(ステップS510)。その後、代替案生成部113はステップS512に進む。Changeフラグは、変更対象の要素の変更の実施を示すフラグである。
【0119】
要素の変更の実施に伴って他の要素へ影響を与える場合、代替案生成部113は、他の要素の変更方法を特定し、現在の要素、他の要素、及び変更方法を対応づけた操作データにLink-Changeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する(ステップS511)。その後、代替案生成部113はステップS512に進む。Link-Changeフラグは、変更対象の要素及び影響を受ける他の要素の変更の実施を示すフラグである。
【0120】
なお、他の要素の変更方法が存在しない場合、代替案生成部113はステップS512に進む。また、ステップS511の処理は省略してもよい。ステップS509がYESの場合、代替案生成部113はステップS512に進む。
【0121】
ステップS512では、代替案生成部113は、代替案候補スタックが空であるか否かを判定する(ステップS512)。
【0122】
代替案候補スタックが空ではない場合、代替案生成部113は、代替案候補スタックに格納される操作データの優先度を決定する(ステップS513)。
【0123】
具体的には、コスト制約条件を満たし、かつ、非機能要件が満たされる要素の組合せを実現する操作データに対して高い優先度が付与される。優先度の付与には、変更に伴うコストの差分、要件のレベル、他の要素への影響の程度等が考慮される。なお、優先度を決定するための要因は1つでもよいし、複数でもよい。
【0124】
代替案生成部113は、優先度が付与された操作データと、ベースとなる要素の組合せとに基づいて、代替案を生成する(ステップS514)。その後、代替案生成部113は処理を終了する。
【0125】
例えば、代替案生成部113は、優先度が最も高い操作データに基づいて、ベースとなる要素の組合せに含まれる要素の変更を実施することによって代替案を生成する。なお、代替案生成部113は、優先度に基づいて上位の操作データを複数選択し、選択した複数の操作データを組み合わせて代替案を生成してもよい。
【0126】
代替案候補スタックが空である場合、代替案生成部113は、代替案が生成できなかった旨を通知するメッセージを出力する(ステップS515)。その後、代替案生成部113は処理を終了する。
【0127】
なお、代替案生成部113は、基本構成に関する情報の追加、又は変更対象の非機能要件の選択条件の変更等によって、代替案を生成できる可能性を示唆するメッセージを出力してもよい。また、代替案生成部113は、実装履歴を参照することによって、代替案を生成できる可能性を示唆するメッセージを出力してもよい。
【0128】
ここで、代替案の具体的な生成について説明する。
【0129】
(ケース1)図5(D)のIDが3の要素の組合せがベースであり、ステップS503において「非機能要件1」が選択され、ステップS504において要素「RDS(Multi)」については要件レベルを下げることで金銭コストが下がることが分かったものとする。ステップS508において、代替案生成部113は、要素を「MySQL-MultiAz」に変更する変更方法を特定する。当該変更方法は、ベースとなる要素の組合せの他の要素「AWS Backup」に影響を与えない。そのため、代替案生成部113は、ステップS510において、要素「RDS(Multi)」及び前述の変更方法とを対応づけた操作データに、Changeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する。
【0130】
(ケース2)図5(D)のIDが4の要素の組合せがベースであり、ステップS503において「非機能要件1」が選択され、ステップS504において要素「RDS(Multi)」については要件レベルを下げることで金銭コストが下がることが分かったものとする。ステップS508において、代替案生成部113は、要素を「MySQL-MultiAz」に変更する変更方法を特定する。当該変更方法は、ベースとなる要素の組合せの他の要素「RDS(backup)」に影響を与えるため、要素「RDS(backup)」について変更が必要となる。ここでは、要素「RDS(backup)」を「Lifecycle Manager」に変更する変更方法が特定されたものとする。この場合、代替案生成部113は、ステップS510において、要素「RDS(Multi)」、要素「RDS(backup)」、及び前述の変更方法を対応づけた操作データにLink-Changeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する。
【0131】
要件レベルに基づいて優先度を付与する場合、ケース1の操作データに高い優先度が付与され、ケース2の操作データに低い優先度が付与される。
【0132】
ここで、実装/運用コストに基づく制約条件を満たさない場合の代替案の生成方法の一例を説明する。図5(D)のIDが1の要素の組合せがベースであり、ステップS503において「非機能要件1」が選択されたものとする。要素「RDS for Aurora」の運用コストを下げるためには、亜要件レベル又は管理レベルを上げる必要がある。ここで、要素を「Aurora Serverless」に変更することによって実装/運用コストが下がることが分かったものとする。ステップS508において、代替案生成部113は、要素を「Aurora Serverless」に変更する変更方法を特定する。当該変更方法は、ベースとなる要素の組合せの他の要素「AWS Backup」に影響を与えない。そのため、代替案生成部113は、ステップS510において、要素「RDS for Aurora」及び前述の変更方法を対応づけた操作データに、Changeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する。
【0133】
図12A及び図12Bは、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
【0134】
図12A及び図12Bに示す代替案の生成方法では、非機能要件のレベルに基づいて要素の変更を行う。まず、代替案生成部113は、検証部112が出力した要素の組合せの優先度に基づいて、ベースとなる要素の組合せを選択する。ベースとなる要素の組合せは1つでもよいし、複数でもよい。ここでは、ベースとなる要素の組合せが1つ選択されたものとする。ベースとなる要素の組合せが選択された場合、各要素の組合せに対して以下で説明する処理が実行される。
【0135】
代替案生成部113は、履歴テーブル300を参照して、ベースとなる要素の組合せに対応した非機能要件が過去に実装された際のレベルを算出する(ステップS601)。ここで、非機能要件のレベルは、要件レベル又は管理レベルである。
【0136】
具体的には、代替案生成部113は、履歴テーブル300を参照し、各構成要素のレベルを取得する。代替案生成部113は、要素DB114を参照し、同一の非機能要件を実現する要素のレベルを用いて、非機能要件のレベルを算出する。非機能要件のレベルは、最も頻出するレベルでもよいし、レベルの範囲でもよい。
【0137】
なお、基本構成が類似するエントリのみを検索対象としてもよい。また、ユーザが実行レベルを算出する非機能要件を指定してもよい。
【0138】
代替案生成部113は、各非機能要件のレベルに基づいて、変更可能な非機能要件が存在するか否かを判定する(ステップS602)。
【0139】
具体的には、代替案生成部113は、ユーザが指定した非機能要件のレベルが、算出した非機能要件のレベルと異なるか否かを判定する。2つのレベルが異なる場合、当該非機能要件は変更可能な非機能要件であると判定される。
【0140】
例えば、金銭コストに関するコスト制約条件を満たす代替案を生成する場合、ユーザが指定したレベルが算出したレベルより高い場合、レベルを変更することによって金銭コストが削減される可能性がある。そのため、前述のようなレベルの違いがある非機能要件は変更可能な非機能要件となる。
【0141】
例えば、実装/運用コストに関するコスト制約条件を満たす代替案を生成する場合、ユーザが指定したレベルが算出したレベルより低い場合、レベルを変更することによって実装/運用コストが削減される可能性がある。そのため、前述のようなレベルの違いがある非機能要件は変更可能な非機能要件となる。
【0142】
変更可能な非機能要件が存在しない場合、代替案生成部113はステップS610に進む。
【0143】
変更可能な非機能要件が存在する場合、代替案生成部113は、変更対象の非機能要件を選択する(ステップS603)。ここでは、レベルの差分が大きい順に非機能要件が選択されるものとする。すなわち、ユーザが指定した非機能要件のレベルが過去の実装履歴と比較して過剰又は不足している非機能要件が変更対象の非機能要件として選択される。
【0144】
代替案生成部113は、選択した非機能要件に対応する要素が変更可能か否かを判定する(ステップS604)。
【0145】
例えば、代替案生成部113は、要素の変数若しくはパラメータの修正に伴ってコストが変わらない場合、又は、現在の非機能要件のレベルと同一の他の要素若しくは当該レベルと異なる他の要素への変更に伴ってコストが変わらない場合、選択した要素は変更可能でないと判定される。これは、要素の変更を行っても、コスト制約条件を満たすことがないためである。
【0146】
選択した非機能要件に対応する要素が変更可能ではない場合、代替案生成部113は、全ての変更対象の要素の判定が完了したか否かを判定する(ステップS605)。
【0147】
全ての変更対象の要素の判定が完了していない場合、代替案生成部113はステップS603に戻る。
【0148】
全ての変更対象の要素の判定が完了した場合、代替案生成部113はステップS610に進む。
【0149】
ステップS604において、選択した非機能要件に対応する要素が変更可能である場合、代替案生成部113は、当該要素の変更方法を特定する(ステップS606)。ステップS606の処理はステップS508の処理と同一である。
【0150】
代替案生成部113は、特定された変更方法による要素の変更に伴って他の要素へ影響を与えるか否かを判定する(ステップS607)。ステップS607の処理はステップS509の処理と同一である。
【0151】
要素の変更に伴って他の要素へ影響を与えない場合、代替案生成部113は、現在の要素及び変更方法を対応づけた操作データにChangeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する(ステップS608)。その後、代替案生成部113はステップS610に進む。ステップS608の処理はステップS510の処理と同一である。
【0152】
要素の変更に伴って他の要素へ影響を与える場合、代替案生成部113は、他の要素の変更方法を特定し、現在の要素、他の要素、及び変更方法を対応づけた操作データにLink-Changeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する(ステップS609)。その後、代替案生成部113はステップS610に進む。ステップS609の処理はステップS511の処理と同一である。
【0153】
ステップS610では、代替案生成部113は、代替案候補スタックが空であるか否かを判定する(ステップS610)。ステップS610の処理はステップS512の処理と同一である。
【0154】
代替案候補スタックが空ではない場合、代替案生成部113は、代替案候補スタックに格納される操作データの優先度を決定する(ステップS611)。ステップS611の処理はステップS513の処理と同一である。
【0155】
代替案生成部113は、優先度が付与された操作データと、ベースとなる要素の組合せとに基づいて、代替案を生成する(ステップS612)。その後、代替案生成部113は処理を終了する。ステップS612の処理はステップS514の処理と同一である。
【0156】
ステップS610において、代替案候補スタックが空である場合、代替案生成部113は、代替案が生成できなかった旨を通知するメッセージを出力する(ステップS613)。その後、代替案生成部113は処理を終了する。ステップS613の処理はステップS515の処理と同一である。
【0157】
ここで、代替案の具体的な生成について説明する。
【0158】
(ケース1)図5(D)のIDが3の要素の組合せがベースであり、ステップS603において「非機能要件2」が選択されたものとする。ステップS604において、要素を「AWS Backup」に変更した場合、変更後の要素の組合せは、図5(D)のIDが4の要素の組合せと同一となる。そのため、ステップS604の判定結果はNOとなる。
【0159】
(ケース2)図5(D)のIDが4の要素の組合せがベースであり、ステップS603において「非機能要件2」が選択されたものとする。ステップS604において、要素「RDS(backup)」のパラメータを修正することによって、金銭コストが下がることが分かったものとする。ステップS606では、代替案生成部113は、要素「RDS(backup)」のパラメータを修正する変更方法を特定する。要素「RDS(backup)」のパラメータの修正は他の要素に影響を与えない。そのため、代替案生成部113は、要素「RDS(backup)」及び前述の変更方法を対応づけた操作データにChangeフラグを付与し、代替案候補スタックに追加する。
【0160】
実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100は、コストに基づいて要素の組合せの推薦順位を決定し、ユーザに提示する。これによって、ユーザは優先的に採用すべき要素の組合せを把握できる。また、実施例1のアーキテクチャ設計支援システム100は、コスト制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、履歴に基づいて代替案を生成する。これによって、アーキテクチャ設計の変更及び決定を効率的に支援できる。要素の変更は履歴に基づいて特定されるため、履歴を根拠となるデータとして提示できる。
【実施例0161】
実施例2のアーキテクチャ設計支援システム100の構成は実施例1と同一である。実施例2のアーキテクチャ設計支援システム100は、非機能要件とともに、コスト制約条件の入力を受け付ける。この場合、アーキテクチャ設計支援システム100は、ステップS106の処理が省略される。その他の処理は実施例1と同一である。
【0162】
予めコスト制約条件を受け付けることによって、要素の組合せ及びコスト制約条件の検証を自動的に実行することができる。
【0163】
実施例2のアーキテクチャ設計支援システム100は、実施例1と同様の効果を得ることができる。さらに、実施例2のアーキテクチャ設計支援システム100は、コスト制約条件の検証及び代替案の生成を迅速に行うことができる。
【実施例0164】
実施例3では、実装制約条件を満たす要素の組合せを提示する点が実施例1と異なる。以下、実施例1との差異を中心に実施例3について説明する。
【0165】
実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100の構成は実施例1と同一である。実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する処理は実施例1と一部異なる。
【0166】
図13は、実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する処理の一例を説明するフローチャートである。
【0167】
アーキテクチャ設計支援システム100は、ユーザから非機能要件を含む設計要求を受け付けた場合、以下で説明する処理を開始する。
【0168】
組合せ決定部111は、要素DB114を参照して、指定された非機能要件に対応する要素を特定する(ステップS701)。ステップS701の処理はステップS101の処理と同一である。
【0169】
組合せ決定部111は、指定された全ての非機能要件の要素の組合せを生成する(ステップS702)。ステップS702の処理はステップS102の処理と同一である。
【0170】
検証部112は、各要素の組合せについて、実装制約条件を満たすか否かを判定する(ステップS703)。
【0171】
実装制約条件は、非機能要件の関連性に関する制約条件、並びに、要素のパラメータ及び構造情報に関する制約条件等である。例えば、非機能要件の要件レベルの大小関係に関する条件等である。なお、基本構成に関する制約条件が含まれてもよい。
【0172】
また、実装制約条件は、データ保管場所等に関する制約条件でもよい。当該制約条件が設定されている場合、RDS(Multi)を含む要素の組合せは実装制約条件を満たさないと判定される。
【0173】
検証部112は、判定結果に基づいて、要素の組合せの優先度を決定する(ステップS704)。
【0174】
例えば、検証部112は、実装制約条件を満たす要素の組合せに高い優先度を付与し、実装制約条件を満たさない要素の組合せに低い優先度を付与する。
【0175】
検証部112は、実装制約条件を満たす要素の組合せが存在するか否かを判定する(ステップS705)。
【0176】
実装制約条件を満たす要素の組合せが存在する場合、検証部112は、当該要素の組合せを出力し(ステップS706)、その後、処理を終了する。
【0177】
実装制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、代替案生成部113は、代替案を生成する(ステップS707)。
【0178】
代替案生成部113は、代替案を出力し(ステップS708)、その後、処理を終了する。
【0179】
なお、ステップS705において実装制約条件を満たす要素の組合せと実装制約条件を満たさない要素とが存在する場合、検証部112は、ステップS707に進んでもよい。
【0180】
なお、アーキテクチャ設計支援システム100は、ステップS703の判定結果をユーザに提示してもよい。このとき、実装制約条件を満たさない箇所等を提示してもよい。また、要素の変更によって実装制約条件を満たす可能性を提示してもよい。
【0181】
図14は、実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100が実行する代替案の生成処理の一例を説明するフローチャートである。
【0182】
実装制約条件を満たさない要素の組合せに対して以下で説明する処理が実行される。
【0183】
代替案生成部113は、履歴テーブル300を参照し、実装制約条件を満たさない要素について、実装制約条件を満たさない要素に対応する非機能要件の実装傾向を分析する(ステップS801)。非機能要件の実装傾向は、例えば、採用される要素、又は、採用される要件レベルである。
【0184】
なお、複数の非機能要件の関連性に関する実装制約条件を満たさない場合、代替案生成部113は、1つの非機能要件の実装傾向を分析してもよいし、複数の非機能要件の実装傾向を分析してもよい。なお、実装傾向が不明な場合、代替案生成部113はステップS806に進む。
【0185】
代替案生成部113は、分析結果に基づいて、変更方法を特定する(ステップS802)。例えば、非機能要件の要件レベルを過去の要件レベルと同一にする変更方法が考えられる。
【0186】
ステップS803からステップS809の処理は、ステップS509からステップS515の処理と同一である。
【0187】
ここで、代替案の具体的な生成について説明する。
【0188】
以下の非機能要件2’と以下の非機能要件3が指定されたものとする。また、データ復旧に関する非機能要件の要件レベルがバックアップに関する非機能要件の要件レベル以下であることを実装制約条件とする。これはバックアップの適用範囲が運用時のデータ復旧の適用範囲よりも広くなければ、運用に係るデータ復旧の要件が満たされないことを示している。
【0189】
(非機能要件2’)項目はバックアップ、対象はデータベース、要件レベルは1
(非機能要件3)項目は運用に係るデータ復旧、対象はデータベース、要件レベルは2以上
【0190】
非機能要件2の要件レベルが1、非機能要件3の要件レベルが2である要件の組合せに対しては以下のような代替案が生成される。
【0191】
ステップS801において、非機能要件2及び非機能要件3の要件レベルが同一である実装傾向が特定されたものとする。この場合、ステップS802において、代替案生成部113は、非機能要件2の要件レベルを2に変更する変更方法を特定する。他の要素に影響を与えない場合、代替案生成部113は、Changeフラグを付与した操作データを代替案候補スタックに追加する。
【0192】
実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100は、実装/運用の制約の合致の度合いに基づいて要素の組合せの推薦順位を決定し、ユーザに提示する。これによって、ユーザは優先的に採用すべき要素の組合せを容易に把握できる。また、実施例3のアーキテクチャ設計支援システム100は、実装制約条件を満たす要素の組合せが存在しない場合、履歴に基づいて代替案を生成する。これによって、アーキテクチャ設計の変更及び決定を効率的に支援することができる。要素の変更は履歴に基づいて特定されるため、履歴を根拠となるデータとして提示できる。
【0193】
なお、実施例1及び実施例3を組み合わせることもできる。例えば、アーキテクチャ設計支援システム100は、ステップS103の後にステップS703の処理を実行し、ステップS104において、コスト制約条件及び実装制約条件に基づいて、コストを算出する。
【実施例0194】
実施例4のアーキテクチャ設計支援システム100は、提示したアーキテクチャに対するフィードバックを蓄積する点が実施例1と異なる。以下、実施例1との差異を中心に実施例4について説明する。
【0195】
図15は、実施例4のアーキテクチャ設計支援システム100の構成の一例を示す図である。
【0196】
実施例4のアーキテクチャ設計支援システム100は、フィードバック取得部151を含む点が実施例1と異なる。
【0197】
フィードバック取得部151は、出力した要素の組合せ及び代替案を利用した実装結果をフィードバックとして取得する。フィードバックは、履歴DB115に蓄積される。
【0198】
実施例4のアーキテクチャ設計支援システム100は、実施例1と同様の効果を奏する。さらに、出力した要素の組合せ及び代替案に対するフィードバックを蓄積することによって、より精度よく代替案を生成することができる。
【0199】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0200】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、本発明は、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードによっても実現できる。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体をコンピュータに提供し、そのコンピュータが備えるプロセッサが記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD-ROM、DVD-ROM、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、光ディスク、光磁気ディスク、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
【0201】
また、本実施例に記載の機能を実現するプログラムコードは、例えば、アセンブラ、C/C++、perl、Shell、PHP、Python、Java(登録商標)等の広範囲のプログラム又はスクリプト言語で実装できる。
【0202】
さらに、実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを、ネットワークを介して配信することによって、それをコンピュータのハードディスクやメモリ等の記憶手段又はCD-RW、CD-R等の記憶媒体に格納し、コンピュータが備えるプロセッサが当該記憶手段や当該記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行するようにしてもよい。
【0203】
上述の実施例において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0204】
100 アーキテクチャ設計支援システム
111 組合せ決定部
112 検証部
113 代替案生成部
114 要素DB
115 履歴DB
151 フィードバック取得部
200 テーブル
250 データ
300 履歴テーブル
310 採否結果テーブル
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15