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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016350
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】走行ドラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118394
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井原 航也
(57)【要約】
【課題】疑似路面を形成するシート状部材の剥がれを抑制できる走行ドラムを提供する。
【解決手段】ドラム本体と、前記ドラム本体に対して着脱自在に構成されている円筒状のプレートと、タイヤが押し当てられる環状の疑似路面を形成するシート状部材30と、を備え、前記プレートは、ドラム周方向に分割された複数の分割片22を環状に連ねて形成されており、シート状部材30は、タイヤに対向する分割片22の表面22fから周方向端面22eに到達するように折り曲げられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム本体と、前記ドラム本体に対して着脱自在に構成されている円筒状のプレートと、タイヤが押し当てられる環状の疑似路面を形成するシート状部材と、を備え、
前記プレートは、ドラム周方向に分割された複数の分割片を環状に連ねて形成されており、
前記シート状部材は、前記タイヤに対向する前記分割片の表面から周方向端面に到達するように折り曲げられている、走行ドラム。
【請求項2】
前記シート状部材は、砥粒が固着された研磨シートである、請求項1に記載の走行ドラム。
【請求項3】
前記シート状部材は、前記タイヤに対向する前記分割片の表面から周方向端面を覆って裏面に回り込むように折り曲げられている、請求項1に記載の走行ドラム。
【請求項4】
前記分割片は、前記分割片を前記ドラム本体に固定する固定具を装着するための貫通孔を有し、
前記シート状部材の折り曲げ端は、前記分割片の周方向端面に最も近い前記貫通孔よりも前記分割片の周方向中央に近い位置に配置されている、請求項3に記載の走行ドラム。
【請求項5】
前記分割片の裏面における前記シート状部材が配置されていない領域にシムが取り付けられている、請求項3又は4に記載の走行ドラム。
【請求項6】
前記分割片の裏面における前記シート状部材が配置されていない領域に、前記分割片の裏面における前記シート状部材が配置された領域よりも厚みの大きい肉厚部が設けられている、請求項3又は4に記載の走行ドラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤ性能試験で用いられる走行ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイヤ性能を評価するために、走行ドラムを備えた室内ドラム試験機による室内ドラム試験が実施されている。走行ドラムの外周面には、所定の路面性状を再現した疑似路面が設けられる。タイヤを押し当てた状態で走行ドラムを回転駆動させることにより、疑似路面上でタイヤを走行させることができる。疑似路面としては、研磨紙や研磨布などのシート状部材を走行ドラムに貼り付けて形成されたものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
かかる室内ドラム試験では、走行条件などに応じて種々の粗さの疑似路面が使い分けられる。しかし、走行ドラムの外周面にシート状部材を直接貼り付けていると、疑似路面の交換作業に時間がかかる。そこで、走行ドラムを、ドラム本体と、ドラム本体に対して着脱される円筒状のプレートとで構成し、そのプレートにシート状部材を貼り付けることが考えられる。これによれば、プレートの取り替えによって対応できるため、疑似路面の交換作業が短時間で済む。
【0004】
上記プレートは、ドラム周方向に分割された複数の分割片で構成され、その分割片の各々に対してシート状部材が個別に貼り付けられる。そのため、ドラム周方向に隣り合う分割片の継ぎ目において、その分割片の表面の周方向端にシート状部材の周方向端が配置される。その結果、疑似路面上を走行するタイヤの押圧と離隔がシート状部材に繰り返し作用することにより、そのシート状部材の周方向端から徐々に剥がれる可能性があり、特に長時間の走行を必要とする摩耗試験において不都合を生じる恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-170929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、疑似路面を形成するシート状部材の剥がれを抑制できる走行ドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の走行ドラムは、ドラム本体と、前記ドラム本体に対して着脱自在に構成されている円筒状のプレートと、タイヤが押し当てられる環状の疑似路面を形成するシート状部材と、を備え、前記プレートは、ドラム周方向に分割された複数の分割片を環状に連ねて形成されており、前記シート状部材は、前記タイヤに対向する前記分割片の表面から周方向端面に到達するように折り曲げられているものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】走行ドラムを備えた室内ドラム試験機の一例を示す概略構成図
図2】ドラム軸方向から見た走行ドラムを示す概略構成図
図3】プレートを構成する分割片の一つを示す斜視図
図4】ドラム軸方向から見た分割片を示す模式図
図5】シート状部材の折り曲げ端の位置に関する変形例を示す図
図6】分割片の裏面を示す斜視図
図7】分割片の裏面を示す斜視図
図8図7の分割片のX-X矢視断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、走行ドラムを備えた室内ドラム試験機の構成について簡単に説明する。図1は、摩耗試験などのタイヤ性能試験に使用される室内ドラム試験機の一例を示す。室内ドラム試験機1は、疑似路面3が設けられた走行ドラム2と、その疑似路面3に押し当てるようにしてタイヤTを支持するタイヤ支持体4とを備える。走行ドラム2は、水平に延びたドラム回転軸11により回転可能に支持されている。ドラム回転軸11には、走行ドラム2を回転駆動させるモータなどのドラム動力源12が接続されている。
【0010】
タイヤ支持体4は、水平に延びたタイヤ回転軸13によってタイヤTを支持している。タイヤ回転軸13には、タイヤ回転軸13に駆動力又は制動力を付与できるモータなどのタイヤ動力源14が接続されている。タイヤ動力源14としては、制動力を付与するためにブレーキを使用したり、モータとブレーキを併用したりしてもよい。タイヤ回転軸13には、トルクやタイヤTの前後方向力、左右方向力及び鉛直方向力の3方向の力を計測するロードセル15、及び、タイヤ回転軸13を押圧方向(図1の上下方向)において固定する固定部材16が取り付けられている。
【0011】
タイヤ支持体4は、タイヤTを走行ドラム2に押圧する押圧手段としての昇降装置17を備える。昇降装置17はタイヤ動力源14を昇降させる。これにより、タイヤ回転軸13に取り付けられたタイヤTを走行ドラム2に対して近付けたり遠ざけたりすることができる。押圧手段として、走行ドラム2を昇降可能に構成された昇降装置を採用してもよい。ロードセル15による鉛直方向力計測結果に基づき、昇降装置17によってタイヤTの荷重を所定の値に調整した後、固定部材16でタイヤ回転軸13を固定することにより、所定の荷重でタイヤTを疑似路面3に接地させることができる。
【0012】
室内ドラム試験機1は、室内ドラム試験機1の動作を制御する制御部18を備える。制御部18は、パーソナルコンピュータやPLC(プログラマブルロジックコントローラ)などのコンピュータを用いて構成できる。制御部18は、ドラム動力源12、タイヤ動力源14、ロードセル15、固定部材16、及び、昇降装置17に対して電気的に接続されており、これら各部の動作を制御可能に構成されている。
【0013】
図2は、ドラム軸方向から見た走行ドラム2を示す。走行ドラム2は、ドラム本体20と、円筒状のプレート21と、環状の疑似路面3を形成するシート状部材30とを備える。試験に供されるタイヤTは、走行ドラム2の外周面に設けられた疑似路面3に押し当てられる。ドラム本体20は、ドラム回転軸11に支持され、回転駆動可能に構成されている。ドラム本体20の外周面は、その全周に亘ってプレート21で覆われており、そのプレート21の外周面に疑似路面3が設けられている。
【0014】
プレート21は、ドラム本体20に対して着脱自在に構成されている。疑似路面3を交換する際には、プレート21の取り替えにより対応できるため作業が短時間で済む。プレート21は、アルミニウムやステンレス鋼などの金属材により形成されている。プレート21は、ドラム周方向に分割された複数の分割片22を環状に連ねて形成されている。プレート21は、例えば6~12個に分割され、本実施形態では9個に分割されているが、分割数は特に限定されるものではない。図3に示すように、分割片22は、ドラム周方向に沿って円弧状に湾曲した板材により形成されている。
【0015】
分割片22は、分割片22をドラム本体20に固定するボルト23(固定具に相当)を装着するための貫通孔22hを有する。貫通孔22hは、分割片22を厚み方向(ドラム径方向)に貫通し、例えばキリ穴、リーマ穴、ザグリ穴またはネジ穴などとして設けられる。貫通孔22hは、分割片22の幅方向(ドラム軸方向)の両端部において、それぞれドラム周方向に間隔を設けて複数形成されている。分割片22の周方向端面22eは、ドラム軸方向と平行に延びているが、これに限られず、ドラム軸方向に対して傾斜した方向に延びていても構わない。
【0016】
図4は、ドラム軸方向から見た分割片22の側面図である。分割片22は、その厚み方向の一方側に位置してタイヤT(図4では図示せず)に対向する表面22f(外周面)と、その厚み方向の他方側に位置する裏面22b(内周面)と、ドラム周方向の両端に位置する一対の周方向端面22eとを有する。疑似路面3は、その表面22fに貼り付けられたシート状部材30によって形成される。シート状部材30は、分割片22の各々に対して個別に取り付けられている。シート状部材30は、その基材に塗布された粘着剤によって、または別途に貼着した両面テープによって、分割片22に貼り付けられている。
【0017】
図4のように、シート状部材30は、タイヤTに対向する分割片22の表面22fから周方向端面22eに到達するように折り曲げられている。これにより、シート状部材30の周方向端(折り曲げ端30e)は、分割片22の表面22fではなく、周方向端面22eまたは裏面22bに配置される。その結果、表面22fの周方向端にシート状部材30の周方向端が配置される場合に比べて、タイヤTの押圧と離隔がシート状部材30に繰り返し作用することによるシート状部材30の剥がれが抑制され、室内ドラム試験を精度良く実施することができる。
【0018】
本実施形態において、シート状部材30は、砥粒が固着された研磨シートである。研磨シートとしては、研磨布や研磨紙が例示される。例えば、JISR6251に規定される研磨布や、JISR6252に規定される研磨紙、3M Company製滑り止めテープなどを用いることが可能である。
【0019】
上述した研磨シートによれば摩擦係数の高い疑似路面3が形成され、かかる疑似路面3は摩耗試験に好適に供される。摩耗試験では、他のタイヤ性能試験に比べてタイヤTの走行時間が長いうえ、疑似路面3に対してタイヤTが強く押圧される傾向にある。また、スリップ角やキャンバ角が付与されたり、制駆動力が付与されたりすることが少なくない。このため、摩耗試験では、疑似路面3に対する負荷が大きく、シート状部材30の剥がれが特に問題になりやすい。したがって、シート状部材30の剥がれを抑制できる本開示の手法が特に有用である。
【0020】
図4のように、本実施形態では、シート状部材30が、タイヤTに対向する分割片22の表面22fから周方向端面22eを覆って裏面22bに回り込むように折り曲げられている。これにより、シート状部材30の折り曲げ端30eは、ボルト23の締め付けに応じて、分割片22の裏面22bとドラム本体20の外周面との間で堅固に挟持される。よって、シート状部材30の剥がれをより効果的に抑制することができる。
【0021】
シート状部材30の折り曲げ端30eは、分割片22の周方向端面22eに最も近い貫通孔22hよりも分割片22の周方向中央22cに近い位置に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、分割片22の裏面22bにおいて、ボルト23による締め付け箇所(即ち、貫通孔22hの形成箇所)を跨いでシート状部材30が配置されるため、より確実にシート状部材30の剥がれを抑制できる。折り曲げ端30eは、図4に示す位置から更に周方向中央22cに近付いてもよく、周方向中央22cに到達する位置にあっても構わない。
【0022】
図4では、シート状部材30の折り曲げ端30eが裏面22bに配置される例を示したが、これに限られるものではない。したがって、例えば、図5に示すように折り曲げ端30eが周方向端面22eに配置されていてもよい。かかる構成によれば、ドラム周方向に隣り合う分割片22の間で折り曲げ端30eを堅固に挟持して、シート状部材30の剥がれを抑制することができる。
【0023】
分割片22の裏面22bにシート状部材30を回り込ませた場合、そのシート状部材30の厚みに応じた段差が裏面22bに形成される。このため、ボルト23を強く締め付けて分割片22の幅方向両端部をドラム本体21に接近させたときに、分割片22の撓みや歪みを生じることがあり、ドラム本体20に対する分割片22の取り付け精度が低下する恐れがある。そこで、本実施形態では、そのような裏面22bの段差の低減を目的として、分割片22が、分割片22の裏面22bに一体に又は別体に設けられた厚み調整部24を有している。厚み調整部24の態様について、図6~8を参照して説明する。
【0024】
図6には、裏面22bに別体に設けられた厚み調整部24としてのシム24sが示されている。シム24sは、分割片22の裏面22bにおけるシート状部材30が配置されていない領域に取り付けられる。シム24sは、真鍮やステンレス鋼などの金属材で形成された板材である。シム24sは、例えば両面テープにより裏面22bに貼り付けられる。シム24sは、裏面22bの段差を低減できるよう、シート状部材30に対応した厚みを有している。シム24sは、一対の折り曲げ端30eの間、裏面22bの四隅、及び、貫通孔22hの間に配置されている。上述した分割片22の撓みや歪みの発生を抑える観点から、少なくともドラム周方向に隣り合う貫通孔22hの間にシム24sを配置することが好ましい。
【0025】
図7及び8には、裏面22bに一体に設けられた厚み調整部24としての肉厚部24tが示されている。肉厚部24tは、シート状部材30が配置される箇所に比べて、分割片22の厚みを相対的に大きくすることにより形成されている。換言すると、裏面22bにおけるシート状部材30が配置されていない領域に、裏面33bにおけるシート状部材30が配置された領域よりも厚みの大きい肉厚部24tが設けられている。図8のように、肉厚部24tにおける分割片22の厚みT1は、シート状部材30が配置された領域の厚みT2よりも大きい。この例では、シート状部材30が配置される箇所を除き、裏面22bの全域に肉厚部24tが形成されているが、これに限られず、例えば図6のシム24sの設置箇所において、シム24sの代わりに肉厚部24tを形成したものでもよい。
【0026】
分割片22の周方向端面22eにシート状部材30を到達させていることにより、そのシート状部材30の厚みに応じた段差が周方向端面22eにも形成される。しかし、上述のような分割片22の撓みや歪みを引き起こすものではないため、特段の対策は不要である。仮に、その段差によって支障を生じるとしても、シート状部材30の厚みを考慮して分割片22の周方向長さを設計することにより対応できる。また、必要であれば、周方向端面22eにおけるシート状部材30の設置箇所に、段差を低減するための窪みなどを設けても構わない。
【0027】
[1]
上記の通り、本実施形態の走行ドラム2は、ドラム本体20と、ドラム本体20に対して着脱自在に構成されている円筒状のプレート21と、タイヤTが押し当てられる環状の疑似路面3を形成するシート状部材30と、を備える。プレート21は、ドラム周方向に分割された複数の分割片22を環状に連ねて形成されている。シート状部材30は、タイヤTに対向する分割片22の表面22fから周方向端面22eに到達するように折り曲げられている。かかる構成によれば、シート状部材30の周方向端(折り曲げ端30e)が分割片22の周方向端面22eまたは裏面22bに配置されるため、シート状部材30の剥がれを抑制できる。
【0028】
[2]
上記[1]の走行ドラム2において、シート状部材30は、砥粒が固着された研磨シートであってもよい。研磨シートによれば摩擦係数の高い疑似路面3が形成され、かかる疑似路面3は摩耗試験に好適に供される。摩耗試験では、疑似路面3に対する負荷が大きく、シート状部材30の剥がれが特に問題になりやすいため、シート状部材30の剥がれを抑制できる本開示の手法が特に有用となる。
【0029】
[3]
上記[1]又は[2]の走行ドラム2において、シート状部材30は、タイヤTに対向する分割片22の表面22fから周方向端面22eを覆って裏面22bに回り込むように折り曲げられていることが好ましい。かかる構成によれば、シート状部材30の剥がれをより効果的に抑制することができる。
【0030】
[4]
上記[3]の走行ドラム2において、分割片22は、分割片22をドラム本体20に固定する固定具としてのボルト23を装着するための貫通孔22hを有し、シート状部材30の折り曲げ端30eは、分割片22の周方向端面22eに最も近い貫通孔22hよりも分割片22の周方向中央22cに近い位置に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、より確実にシート状部材30の剥がれを抑制できる。
【0031】
[5]
上記[3]又は[4]の走行ドラム2において、分割片22の裏面22bにおけるシート状部材30が配置されていない領域にシム24sが取り付けられていることが好ましい。かかる構成によれば、シート状部材30が配置されていない領域の厚みをシート状部材30が配置されている領域の厚みに近付けて、シート状部材30による裏面22bの段差を低減し、ドラム本体20に対する分割片22の取り付け精度の低下を抑制できる。
【0032】
[6]
上記[3]又は[4]の走行ドラム2において、分割片22の裏面22bにおけるシート状部材30が配置されていない領域に、分割片22の裏面22bにおけるシート状部材30が配置された領域よりも厚みの大きい肉厚部24tが設けられているものでもよい。かかる構成によれば、シート状部材30が配置されていない領域の厚みをシート状部材30が配置されている領域の厚みに近付けて、シート状部材30による裏面22bの段差を低減し、ドラム本体20に対する分割片22の取り付け精度の低下を抑制できる。
【0033】
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、更には特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0034】
前述の実施形態では、摩耗試験に好適に供される疑似路面3が走行ドラム2に設けられた例を示したが、これに限られない。即ち、走行ドラム2には、種々のタイヤ性能試験に供される疑似路面を設けることが可能であり、シート状部材30は、室内ドラム試験で再現しようとする路面性状に倣った疑似路面を形成するものであればよい。したがって、シート状部材30は、研磨シートに限定されず、例えばラバー路面や軟質樹脂路面、カーペット路面などを形成するシートであってもよい。
【0035】
また、前述の実施形態では、走行ドラム2が、その外周面にタイヤTを押し当てて走行させる外面ドラムである例を示したが、これに限られず、その内周面にタイヤを押し当てて走行させる内面ドラムであってもよい。その場合は、円筒状のドラム本体の内周面にプレートが装着され、そのプレートの内周面に疑似路面が設けられる。シート状部材は、タイヤに対向する分割片の表面(内周面)から周方向端面に到達するように折り曲げられ、より好ましくは周方向端面を覆って裏面(外周面)に回り込むように折り曲げられる。
【0036】
本開示の走行ドラムは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。また、上述した実施形態で採用されている各構成については、任意に組み合わせて採用することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 室内ドラム試験機
2 走行ドラム
3 疑似路面
20 ドラム本体
21 プレート
22 分割片
22b 裏面
22c 周方向中央
22e 周方向端面
22f 表面
22h 貫通孔
23 ボルト(固定具)
24 厚み調整部
24s シム
24t 肉厚部
30 シート状部材
30e 折り曲げ端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8