(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163505
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ヘッドユニット及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241115BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20241115BHJP
B41J 2/15 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 123
B41J2/165 301
B41J2/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079193
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】大和久 健
(72)【発明者】
【氏名】森山 恵多
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA14
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA42
2C056HA44
2C056JB03
2C057AF21
2C057AF71
2C057AG15
2C057AG44
2C057AN01
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズルから液体の噴射不良を抑制したヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】媒体の搬送方向に沿う第1軸に直交する第2軸に沿って往復移動しながら媒体に向かって液体を噴射するヘッドユニットUであって、前記ヘッドユニットUは、複数の液体噴射ヘッドHを有し、前記複数の液体噴射ヘッドHは、第1液体を噴射する第1ヘッドH4、H6と、前記第1液体を凝集させる反応液を噴射する反応液ヘッドH5と、柔軟剤を含む処理液を噴射する処理液ヘッドH10、H11と、を含み、前記第1ヘッドH4、H6と前記反応液ヘッドH5とは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、前記処理液ヘッドH10、H11は、前記第1ヘッドH4、H6と前記第1軸に沿って並ぶ。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の搬送方向に沿う第1軸に直交する第2軸に沿って往復移動しながら媒体に向かって液体を噴射するヘッドユニットであって、
前記ヘッドユニットは、複数の液体噴射ヘッドを有し、
前記複数の液体噴射ヘッドは、
第1液体を噴射する第1ヘッドと、
前記第1液体を凝集させる反応液を噴射する反応液ヘッドと、
柔軟剤を含む処理液を噴射する処理液ヘッドと、を含み、
前記第1ヘッドと前記反応液ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、
前記処理液ヘッドは、前記第1ヘッドと前記第1軸に沿って並ぶ、
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記第1液体は、色材を含むインクである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記第1液体は、無機顔料を含むインクである、
ことを特徴とする請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する第2液体を噴射する第2ヘッドを含み、
前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、
前記第1軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記処理液ヘッドとの第1間隔は、前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの第2間隔よりも短い、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する第2液体を噴射する第2ヘッドを含み、
前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、
前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記反応液ヘッドとの第3間隔は、前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの第2間隔よりも長い、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する後処理液を噴射する第3ヘッドを含み、
前記第3ヘッドは、前記第2軸に沿う方向に前記第1ヘッド及び前記反応液ヘッドと並んで配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項7】
前記複数の液体噴射ヘッドは、前記後処理液を噴射する第4ヘッドを含み、
前記第4ヘッドは、前記第2軸に沿う方向に前記処理液ヘッドと並んで配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドユニット。
【請求項8】
前記第3ヘッドの前記後処理液を噴射するノズル列の数は、前記第4ヘッドの前記後処理液を噴射するノズル列の数よりも少ない、
ことを特徴とする請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
前記第3ヘッドは、前記反応液によって凝集する、色材を含むインクを噴射する、
ことを特徴とする請求項7に記載のヘッドユニット。
【請求項10】
前記第1ヘッドは、前記反応液ヘッドと前記第3ヘッドとの間に配置されている、
ことを特徴とする請求項6に記載のヘッドユニット。
【請求項11】
前記処理液は、前記第1液体に比べて、前記反応液に対して凝集し難い、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項12】
前記第1ヘッドの噴射面の形状、及び、前記処理液ヘッドの噴射面の形状のそれぞれは、第1部分と、前記第1部分に隣接すると共に前記第1部分から前記搬送方向に突出する第2部分と、前記第1部分に隣接すると共に前記第1部分から前記第2部分とは反対方向に突出する第3部分と、を含み、
前記第2部分の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記第1部分の前記第2軸に沿う方向の寸法の半分未満であり、前記第2部分は、前記第1部分の前記第2軸に沿う方向の中心を通過する前記第1部分の中心線であって前記搬送方向に延びる第1中心線に対して、前記第2軸に沿う方向に位置し、
前記第3部分の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記第2軸に沿う方向の寸法の半分未満であり、前記第2部分と前記第3部分とは、前記第1中心線を挟んで反対側に位置し、
前記第1ヘッド及び前記反応液ヘッドの少なくとも一方の前記噴射面の一部と、前記処理液ヘッドの前記噴射面の一部とは、前記第2軸に沿う方向に見て、重なる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のヘッドユニットと、
前記処理液ヘッドの噴射面、及び、前記第1ヘッドの噴射面を、前記第1軸に沿ってこの順に払拭する払拭部材と、を備える、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備するヘッドユニット及びヘッドユニットを具備する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク等の液体を布や紙などの媒体に噴射するノズル列を有する液体噴射ヘッドが知られている。媒体に対する液体の定着性を向上するため、例えば、特許文献1には、インク等の液体と、液体を凝集させる凝集剤を含む反応液とを噴射する液体噴射ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1等では、反応液の噴射時に微細なミストが生じ、このミストがインク等の液体を噴射するノズル及びその周辺に付着して、ノズル付近の液体が凝集し、この凝集体によってノズルの目詰まりや液体の飛翔方向にずれが生じるなどの噴射不良が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する本発明の態様は、媒体の搬送方向に沿う第1軸に直交する第2軸に沿って往復移動しながら媒体に向かって液体を噴射するヘッドユニットであって、前記ヘッドユニットは、複数の液体噴射ヘッドを有し、前記複数の液体噴射ヘッドは、第1液体を噴射する第1ヘッドと、前記第1液体を凝集させる反応液を噴射する反応液ヘッドと、柔軟剤を含む処理液を噴射する処理液ヘッドと、を含み、前記第1ヘッドと前記反応液ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、前記処理液ヘッドは、前記第1ヘッドと前記第1軸に沿って並ぶ、ことを特徴とするヘッドユニットにある。
【0006】
また、本発明の他の態様は、上記態様に記載のヘッドユニットと、前記処理液ヘッドの噴射面、及び、前記第1ヘッドの噴射面を、前記第1軸に沿ってこの順に払拭する払拭部材と、を備える、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成を示す図。
【
図2】実施形態1に係るヘッドユニットの分解斜視図。
【
図4】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図。
【
図8】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの配置と噴射される液体との対応表。
【
図10】実施形態2に係る液体噴射ヘッドの配置と噴射される液体との対応表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、液体噴射装置1は、複数の液体噴射ヘッドHを有するヘッドユニットUを備え、媒体SをX軸方向に搬送すると共に、ヘッドユニットUをY軸方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドHから媒体Sに向かって+Z方向に液体を噴射することで印刷を行う、所謂、シリアル式プリンターである。なお、媒体Sとしては、布の他、記録用紙や樹脂フィルム等の任意の材質を用いることができる。また、液体噴射装置1が噴射する液体としては、色材を含むインク、インクを凝集させる凝集剤を含む反応液、柔軟剤を含む処理液、後処理液などである。本実施形態のインクは、染料及び顔料等の何らかの色材を有する液体である。なお、色材に用いる顔料としては、例えば、ブラックインクに用いられるカーボン、ホワイトインクに用いられる酸化チタン、シルバーメタリックインクに用いられるアルミナ等の無機顔料が挙げられる。
【0010】
反応液を媒体Sに噴射した後に、反応液が媒体に着弾する位置にインクを噴射することにより、反応液とインクとが媒体S上、又は媒体Sの内部に浸透した位置で混合し、反応液によってインクが凝集することにより、媒体Sに対するインクの定着性を向上できる。なお、インクを媒体Sに噴射してから所定の期間の間に、インクが媒体Sに着弾する位置に反応液を噴射してもよい。所定期間は、例えば、後述する1つのパスの期間である。
【0011】
反応液は、インクを凝集させる凝集剤を含む液体である。色材を凝集させる凝集剤として、有機酸を含んでいてもよい。有機酸を含む反応液としては、少なくともグルタル酸、溶媒、及び活性剤を含む反応液が採用でき、クエン酸やリンゴ酸、マロン酸などの有機酸を含む反応液を用いることもできる。
【0012】
反応液とインクとの具体的な組み合わせとしては、例えば、以下に示す2つの組み合わせがある。第1の組み合わせは、塩基性ポリマーを凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。第2の組み合わせは、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。ただし、反応液とインクとの組み合わせは、上記2つの組み合わせに限らない。
【0013】
後処理液は、媒体S上に着弾した色材を含むインクを覆うオーバーコート液であり、色材を有さず、媒体S上に噴射されたインクの定着性を向上させる液体である。後処理液も反応液によって凝集する。
【0014】
処理液は、媒体Sに対して柔軟性を付与する柔軟剤を含む液体である。処理液は、例えば、主成分としてジメチルシリコーンやアミノ変性シリコーン(弱アニオン)、エーテルシリコーンを含むシリコーンオイルである。処理液は、他の例としては、主成分として、陽イオン(カチオン)界面活性剤、ポリエステル(ノニオン)の何れかを含む液体であってもよい。柔軟剤の塗布により、媒体Sの柔軟性、耐水性、発色性を向上することができる。ちなみに、柔軟剤による柔軟性は、柔軟剤が繊維に付着することで、滑り性を付与して繊維同士の摩擦を低減することで得られる柔軟効果のことである。また、柔軟剤による耐水性は、柔軟剤は表面張力が低く、油に近い性質を持つため、柔軟剤の性質によって得られる撥水性(耐水性)のことである。また、柔軟剤による発色性は、媒体Sをコーティングすることで屈折率が低下することで得られる艶出し(濃色化)効果のことである。処理液は、色材を含むインクに比べて反応液に対して凝集し難い。例えば、インクや後処理液は反応液に瞬時に反応するが、処理液は反応液に瞬時に反応しない。例えば、インクと反応液との反応が完了するまでの反応時間は長いものでも数秒程度である。したがってここで言う「凝集し難い」とは、反応が完了するまでに10秒以上かかるものを指す。また、「凝集し難い」とは、詳しくは後述する払拭部材9がヘッドユニットUの各噴射面120を払拭する際に、1回の払拭動作の間で反応が完了しない時間を含む。更に、「凝集し難い」とは、処理液と反応液とが触れてから反応が完了するまでの時間が24時間以上であるものを含んでもよい。
【0015】
このような液体噴射装置1は、ヘッドユニットUと、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0016】
図2に示すように、ヘッドユニットUは、複数の液体噴射ヘッドHと、複数の液体噴射ヘッドHを支持する支持体U1と、を具備する。本実施形態では、13個の液体噴射ヘッドHが、共通する1個の支持体U1に支持されている。もちろん、複数の液体噴射ヘッドHが2個以上に分割された支持体U1に支持されていてもよいが、ヘッドユニットUは、支持体U1で規定されるため、支持体U1の数が、ヘッドユニットUの数に相当する。
【0017】
液体噴射ヘッドHは、液体を貯留する液体貯留部3から供給される液体を液滴として+Z方向に噴射する。
【0018】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッドHから噴射される色や成分が異なる複数種類の液体を個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、
図1では1個の液体貯留部3を例示している。ちなみに、液体貯留部3は、複数種類の液体を個別に貯留する分割された部屋を有する液体貯留部3であってもよく、複数種類の液体に応じて個別に設けられた複数の液体貯留部3であってもよい。また、液体貯留部3は、メインタンクとサブタンクとで分かれていてもよい。サブタンクが液体噴射ヘッドHに接続され、液体噴射ヘッドHから液滴を噴射することで消費した液体をメインタンクからサブタンクに補充する構成であってもよい。
【0019】
制御ユニット4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御ユニット4は、不図示の外部配線を介して液体噴射ヘッドHと電気的に接続される。制御ユニット4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッドH、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0020】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。搬送ローラー5aは、図示しない搬送モーターの駆動により回転する。制御ユニット4は、媒体搬送モーターの駆動を制御することで、媒体Sの搬送を制御する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0021】
移動機構6は、ヘッドユニットUをY軸方向に往復させるための機構であり、保持体7と搬送ベルト8とを具備する。保持体7は、ヘッドユニットUを保持する所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト8は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト8を回転させて、ヘッドユニットUを保持体7と共にY軸方向で往復移動させる。なお、保持体7は、液体噴射ヘッドHと共に液体貯留部3を搭載する構成であってもよい。
【0022】
ヘッドユニットUに搭載された複数の液体噴射ヘッドHは、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給された液体を複数のノズル21(
図3参照)のそれぞれから液滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッドHによる噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッドHの往復移動と並行して行われることにより、媒体Sに液体が塗布される、いわゆる印刷が行われる。
【0023】
印刷処理には、双方向印刷と単方向印刷との2つの態様がある。以降、ヘッドユニットUをY軸方向に1回移動させることを、1つのパス(略して1パス)と称する。1パスの期間とは、ヘッドユニットUをY軸方向に1回移動させることに要する期間である。双方向印刷において、液体噴射装置1は、+Y方向にヘッドユニットUを移動させながら液体を噴射して、1つ目のパスに対応するバンド幅分の部分画像を媒体Sに形成させる+Y方向印刷処理を実行する。次に、液体噴射装置1は、媒体SをX軸方向にバンド幅分移動させる移動処理を実行し、-Y方向にヘッドユニットUを移動させながら液体を噴射して2つ目のパスに対応するバンド幅分の部分画像を媒体Sに形成させる-Y方向印刷処理を実行する。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+Y方向印刷処理及び-Y方向印刷処理を繰り返す。なお、双方向印刷は、+Y方向印刷処理および-Y方向印刷処理を実行した後に移動処理を行うようにしてもよいし、+Y方向印刷処理および-Y方向印刷処理をそれぞれ複数回実行した後に移動処理を行うようにしてもよい。双方向印刷は、単方向印刷と比較して、媒体Sに画像が形成されるまでに要する時間を短縮できる。
【0024】
単方向印刷では、前述した+Y方向印刷処理を実行する。次に、液体噴射装置1は、媒体SをX軸方向にバンド幅分移動させる移動処理を実行する。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+Y方向印刷処理及び移動処理を繰り返す。なお、単方向印刷は、+Y方向印刷処理を複数回実行した後に移動処理を行ってもよい。この際、ヘッドユニットUは-Y方向に移動する際に印刷処理は行わない。また、単方向印刷は、+Y方向印刷処理の代わりに、-Y方向印刷処理を実行するようにしてもよい。つまり、単方向印刷は、-Y方向印刷処理及び移動処理を繰り返してもよい。
【0025】
また、液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHの噴射面120(
図3参照)を払拭する払拭部材9を有する。払拭部材9は、例えば、織物、不織布、スポンジ等の多孔質材料など液体を吸収可能な材料であることが好ましいが、ゴム等の弾性材料で形成された板状のブレードであってもよい。払拭部材9は、液体噴射ヘッドHの噴射面120に接触しながら、噴射面120に対して相対的にX軸方向に沿って移動することで、噴射面120をX軸方向に沿って払拭する。液体噴射ヘッドHと払拭部材9とのX軸方向に関する相対移動は、液体噴射ヘッドHを移動するようにしてもよく、払拭部材9を移動するようにしてもよく、両者を移動するようにしてもよい。本実施形態では、払拭部材9は、ヘッドユニットUに対して-X方向に向かって相対移動することで、液体噴射ヘッドHの各噴射面120を払拭する。
【0026】
図3に示すように、払拭部材9は、Y軸方向に並ぶ液体噴射ヘッドH毎に独立して設けられていてもよく、Y軸方向に並ぶ複数の液体噴射ヘッドHで構成されるヘッド群に亘って連続して設けられていてもよい。本実施形態では、払拭部材9は、詳しくは後述するY軸方向に並ぶ最大数の液体噴射ヘッドH、すなわち、9個の液体噴射ヘッドHに亘って連続する大きさを有する。このため、払拭部材9がヘッドユニットUに対して-X方向に相対移動することで、Y軸方向に並んだ9個の液体噴射ヘッドHの噴射面120を払拭できる。
【0027】
ちなみに、払拭部材9は、ローラーに巻き付けられた織物又は不織布を用いて、噴射面120を払拭した後、払拭部材9の使用した部分を巻き取ることで、常に新しい払拭部材9の面で噴射面120を払拭する構造であってもよい。
【0028】
本実施形態において、X軸は「第1軸」の一例であり、X軸方向は「第1軸に沿った方向」又は「搬送方向」の一例である。また、Y軸は「第2軸」の一例であり、Y軸方向は「第2軸に沿った方向」の一例である。
【0029】
図2は、本発明の実施形態1に係るヘッドユニットUの分解斜視図である。
図3は、ヘッドユニットUを-Z方向に見た模式図である。なお、ヘッドユニットUの各方向について、液体噴射装置1に搭載された際に方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に基づいて説明する。
【0030】
図示するように、ヘッドユニットUは、複数の液体噴射ヘッドHと、複数の液体噴射ヘッドHを共通して支持する支持体U1と、を具備する。
【0031】
支持体U1は、金属材料又は樹脂材料で形成された板状部材からなり、液体噴射ヘッドHを支持するための複数の取付孔U2が設けられている。複数の液体噴射ヘッドHは、取付孔U2に挿入された状態で、支持体U1に支持される。
【0032】
このような支持体U1には、複数、本実施形態では、13個の液体噴射ヘッドHが支持される。支持体U1に支持される液体噴射ヘッドHの配置については、詳しくは後述する。
【0033】
図4は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドHを-Z方向に見た分解斜視図である。
図5は、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見た平面図である。
図6は、
図5のA-A′線断面図である。
図7は、ヘッドチップHcのY軸方向に沿った断面図である。なお、液体噴射ヘッドH及びヘッドチップHcの各方向について、液体噴射装置1に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に基づいて説明する。
【0034】
図示するように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、ホルダー200と、流路部材210と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0035】
ホルダー200の+Z方向を向く面に複数のヘッドチップHcとカバーヘッド220とが固定され、ホルダー200の-Z方向を向く面に流路部材210が固定される。
【0036】
ヘッドチップHcは、
図7に示すように、複数のノズル21が形成された1つのノズルプレート20と、流路形成基板10と、連通板15と、保護基板30と、ケース部材40と、圧電アクチュエーター300と、配線部材110と、を具備する。
【0037】
流路形成基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。流路形成基板10には、複数の圧力室12がX軸方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に沿った直線上に配置されている。X軸方向で互いに隣り合う2つの圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。また、本実施形態では、圧力室12がX軸方向に沿って並設された圧力室列が、Y軸方向に2列設けられている。これら2列の圧力室列は、X軸方向において互いに圧力室12のピッチの半分、所謂半ピッチずれて配置される。つまり、2列の圧力室列の全ての圧力室12は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。
【0038】
流路形成基板10の+Z方向を向く面には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。流路形成基板10の-Z方向を向く面には、振動板50と圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。
【0039】
連通板15は、流路形成基板10の+Z方向を向く面に接合された板状部材からなる。連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向を向く面に開口して設けられている。さらに、連通板15には、圧力室12に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。
【0040】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向を向く面に接合されている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、X軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。また、本実施形態では、ノズル21がX軸方向に沿って並設されたノズル列Lが、Y軸方向に離れて2列設けられている。本実施形態では、2列のノズル列Lを+Y方向に順番にノズル列La、ノズル列Lbと称する。以降、ノズル列La、Lbを区別しない場合には、ノズル列Lと称する。このノズル列La、Lbは、X軸方向において、互いにノズル21のピッチの半分、所謂、半ピッチずれて配置される。つまり、ノズル列La、Lbの全てのノズル21は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。また、本実施形態では、
図5に示すように、ノズル列Laが、ノズル列Lbよりも-X方向に位置する。つまり、ノズル列Laの-X方向の端部のノズル21は、ノズル列Lbの-X方向の端部のノズル21よりも-X方向に位置する。
【0041】
このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。ノズルプレート20の+Z方向を向く面が液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部を構成する。
【0042】
振動板50は、本実施形態では、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51の-Z方向を向く面上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を有する。なお、振動板50は、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁体膜52のみで構成されていてもよく、弾性膜51と絶縁体膜52とに加えて他の膜を有する構成であってもよい。
【0043】
圧電アクチュエーター300は、振動板50上に-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、圧力室12毎に活性部310が形成されている。この複数の活性部310が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる「駆動素子」となっている。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60は、活性部310毎に切り分けられて活性部310の個別電極を構成し、第2電極80が複数の活性部310に亘って連続して設けられて複数の活性部310の共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。
【0044】
圧電体層70は、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。
【0045】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。また、第2電極80からは不図示の引き出し配線である共通リード電極が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル基板からなる配線部材110が接続されている。配線部材110は、活性部310の夫々を駆動させるための駆動信号COMを各活性部310に供給するか否かを選択する複数のスイッチング素子を有する駆動信号選択回路111が実装されている。つまり、本実施形態における配線部材110は、COF(Chip On Film)である。なお、配線部材110には、駆動信号選択回路111を設けなくてもよい。つまり、配線部材110は、FFC(Flexible Flat Cable)、FPC(Flexible Printed Circuits)等であってもよい。
【0046】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である収容部31を有する。収容部31は、X軸方向に並んで配置される圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、Y軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y軸方向に並んで配置される2つの収容部31の間にZ軸方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極92の端部は、この貫通孔32内に露出するように延在し、個別リード電極91及び共通リード電極92と配線部材110とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。このような保護基板30としては、例えば、流路形成基板10と同様にシリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。
【0047】
また、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画定するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。また、ケース部材40には、連通板15の第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、ノズル列La、Lb毎に、つまり、合計2個設けられている。このため、ノズル列La、Lbからは異なる液体を噴射することができる。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線部材110が挿通される接続口43が設けられており、配線部材110は、接続口43を介して液体噴射ヘッドHの-Z方向を向く面側に導出される。ケース部材40としては、金属材料、樹脂材料などを用いることができる。
【0048】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。固定基板47の+Z方向を向く面がカバーヘッド220の-Z方向を向く面に固定されることで、ヘッドチップHcは、カバーヘッド220に固定されている。
【0049】
このようなヘッドチップHcでは、液体を導入口44から取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動信号選択回路111からの信号に従い、圧力室12に対応する各活性部310に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力室12内の液体の圧力が高まり所定のノズル21から液滴が噴射される。
【0050】
ホルダー200は、金属材料や樹脂材料などからなり、ホルダー200の+Z方向を向く面には、ヘッドチップHcを収容する収容部208が設けられている。収容部208は、ホルダー200の+Z方向に向かって開口する凹形状を有し、ヘッドチップHc毎に独立して設けられている。本実施形態では、ホルダー200には、4個の収容部208が設けられ、4個のヘッドチップHcが収容される。もちろん、収容部208は、複数のヘッドチップHcで構成される群に亘って連続して設けられていてもよい。
【0051】
ここで、ヘッドチップHcは、ホルダー200に対してX軸方向に沿って4個設けられている。4個のヘッドチップHcは、X軸方向に沿って千鳥状に配置されている。ここで複数のヘッドチップHcがX軸方向に沿って千鳥状に配置されているとは、X軸方向に並設されたヘッドチップHcを交互にY軸方向にずらして配置することである。すなわち、X軸に沿って並ぶヘッドチップHcの列が、Y軸に沿って2列並設され、2列のヘッドチップHcの列をX軸方向に半ピッチずらして配置することである。このように複数のヘッドチップHcをX軸方向に沿って千鳥状に配置することで、2つのヘッドチップHcのノズル列LをX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。
【0052】
また、ホルダー200には、収容部208に収容されたヘッドチップHcの導入口44に連通する第1流路201が設けられている。
【0053】
カバーヘッド220は、ホルダー200の+Z方向を向く面に固定される。カバーヘッド220によってヘッドチップHcを収容する収容部208の空間が画定される。また、カバーヘッド220は、収容部208に収容されたヘッドチップHcのコンプライアンス基板45に接合される。カバーヘッド220は、本実施形態では、4個のヘッドチップHcを覆う大きさを有する。また、カバーヘッド220には、ヘッドチップHcのノズル21を+Z方向に向かって露出する露出開口部221がヘッドチップHc毎に独立して設けられる。露出開口部221から露出されたノズル21から液体が+Z方向に向かって噴射する。カバーヘッド220の+Z方向を向く面が、液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部を構成する。つまり、液体噴射ヘッドHの噴射面120は、ノズルプレート20の露出開口部221によって露出されたノズルプレート20の表面と、カバーヘッド220の+Z方向を向く面と、を含む。
【0054】
流路部材210は、ホルダー200の-Z方向を向く面に固定される。流路部材210の内部には、ホルダー200の第1流路201に連通する第2流路211が設けられており、液体貯留部3から供給された液体は、第2流路211及び第1流路201を介して各ヘッドチップHcに供給される。なお、流路部材210の第2流路211には、液体に含まれるゴミや気泡などの異物を捕捉するフィルターや、下流側の流路の圧力に応じて開閉して下流側に供給する液体の圧力を調整する圧力調整弁等が設けられていてもよい。また、流路部材210には、ヘッドチップHcのノズル21から噴射されなかった流路内の液体を回収するための循環流路が設けられていてもよい。
【0055】
また、
図5に示すように、液体噴射ヘッドHの噴射面120は、-Z方向に見て、第1部分P1(ハッチングで示す部分)と、第2部分P2と、第3部分P3と、を備える。液体噴射ヘッドHの噴射面120を-Z方向に平面視した際に、液体噴射ヘッドHの噴射面120を内包する最小面積の長方形をRとしたとき、長方形Rの長辺E1は液体噴射ヘッドHの外周のX軸に沿う辺に平行し、長方形Rの短辺E2は液体噴射ヘッドHの外周のY軸に沿う辺に平行する。このような仮想的な長方形Rの長辺E1に平行な中心線をLCとする。
【0056】
第1部分P1は、中心線LCが通過する矩形状の部分である。第2部分P2は、第1部分P1から+X方向に突出する矩形状の部分である。第3部分P3は、第1部分P1から-X方向に突出する矩形状の部分である。つまり、第2部分P2と第1部分P1と第3部分P3とは、この順に-X方向に向かって配列する。
【0057】
第2部分P2と第3部分P3とは、Y軸に関して中心線LCを挟んで反対の方向に位置する。そして、例えば、X軸方向に2つの液体噴射ヘッドHを並べる場合、2つの液体噴射ヘッドHのうち一方の液体噴射ヘッドHの第2部分P2と他方の液体噴射ヘッドHの第3部分P3とが、Y軸方向で対向するように、複数の液体噴射ヘッドHがX軸方向に沿って配列される。このように、一方の液体噴射ヘッドHの第2部分P2と、他方の液体噴射ヘッドHの第3部分P3とがY軸方向で対向するように配置することで、X軸方向に沿って互いに隣り合う液体噴射ヘッドHのノズル21をX軸方向で部分的に重複させて、X軸方向に亘って連続したノズル21の列を形成できる。なお、第2部分P2と第3部分P3とは、Y軸方向の幅が、中心線LCを通らない幅を有する。このため、複数の液体噴射ヘッドHをX軸方向に沿って配列する際に、複数の液体噴射ヘッドHが占有するY軸方向の幅をさらに狭くできる。ちなみに、X軸方向に2個以上の液体噴射ヘッドHを並べずに1個の液体噴射ヘッドHを用いる場合には、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見て矩形状としてもよいが、X軸方向に並べる数が1個用の液体噴射ヘッドHと2個用の液体噴射ヘッドHとで作り分ける必要が生じる。このため、使用する数に制限がない本実施形態の液体噴射ヘッドHを用いることで、液体噴射ヘッドHを専用に作り分ける必要がなく、部品を共通化してコストを低減できる。
【0058】
このような1個の液体噴射ヘッドHに含まれる4個のヘッドチップHcのそれぞれの一方のノズル列Laは同一種類の液体を噴射し、1個の液体噴射ヘッドHに含まれる4個のヘッドチップHcのそれぞれの他方のノズル列Lbは同一種類の液体を噴射する。もちろん、1個の液体噴射ヘッドHに含まれる4個のヘッドチップHcのそれぞれのノズル列La及びノズル列Lbから同一種類の液体が噴射されてもよい。
【0059】
このような液体噴射ヘッドHが支持体U1に複数支持される。ここで、支持体U1には、
図3に示すように、Y軸に沿って並んで配置された9個の液体噴射ヘッドHの第1列と、Y軸に沿って並んで配置された4個の液体噴射ヘッドHの第2列と、がX軸方向に並んで配置される。本実施形態では、第1列を構成する9個の液体噴射ヘッドHを+Y方向に向かって順番に液体噴射ヘッドH1~H9と称し、第2列を構成する4個の液体噴射ヘッドHを+Y方向に向かって順番にH10~H13と称する。以降、液体噴射ヘッドH1~H13を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。
【0060】
ここで2つの液体噴射ヘッドHがY軸に沿って並んで配置されているとは、2つの液体噴射ヘッドHがX軸方向に関して同じ位置で、且つY軸方向に関して異なる位置となるように配置されていることを言う。また、2つの液体噴射ヘッドHがX軸方向に関して同じ位置に配置されているとは、一方の液体噴射ヘッドHの噴射面120と、他方の液体噴射ヘッドHの噴射面120とがX軸方向に関して同じ位置に配置されていることを含む。なお、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120がX軸方向に関して同じ位置に配置されていれば、一方の液体噴射ヘッドHのノズル列Lを構成する各ノズル21と、他方の液体噴射ヘッドHのノズル列Lを構成する各ノズル21とがX軸方向に関して同じ位置に配置されていないものも含む。また、2つの液体噴射ヘッドHがY軸方向に関して異なる位置に配置されているとは、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120のY軸方向の中心が、Y軸方向で異なる位置に配置されていることを言う。つまり、2つの液体噴射ヘッドHがY軸方向に異なる位置に配置されているとは、X軸方向に見て、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部が重なるものも含む。
【0061】
このような液体噴射ヘッドH1~H9で構成される第1列と、液体噴射ヘッドH10~H13で構成される第2列とは、X軸に沿って並んで配置される。本実施形態では、第2列は、第1列よりも+X方向に位置する。
【0062】
また、液体噴射ヘッドH1~H9のうち、2つの液体噴射ヘッドH(n)、H(n+1)(nは1~8の整数)は、Y軸方向に隣り合って配置される。ここで、2つの液体噴射ヘッドH(n)、H(n+1)が隣り合うとは、2つの液体噴射ヘッドH(n)、H(n+1)が間隔を空けて配置されており、2つの液体噴射ヘッドH(n)、H(n+1)の間隔に他の液体噴射ヘッドHが存在しないことを言う。同様に液体噴射ヘッドH10~H12のうち、2つの液体噴射ヘッドH(n)、H(n+1)(nは10又は11)は、Y軸方向に隣り合って配置される。
【0063】
そして、液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH10とは、X軸に沿って並んで配置され、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH11とは、X軸に沿って並んで配置される。また、液体噴射ヘッドH6と液体噴射ヘッドH12とは、X軸に沿って並んで配置され、液体噴射ヘッドH9と液体噴射ヘッドH13とは、X軸に沿って並んで配置される。
【0064】
ここで2つの液体噴射ヘッドHがX軸に沿って並んで配置されているとは、2つの液体噴射ヘッドHがY軸方向に関して同じ位置で、且つX軸方向に関して異なる位置となるように配置されていることを言う。また、2つの液体噴射ヘッドHがY軸方向に関して同じ位置に配置されているとは、一方の液体噴射ヘッドHの噴射面120と、他方の液体噴射ヘッドHの噴射面120とがY軸方向に関して同じ位置に配置されていることを含む。なお、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120がY軸方向に関して同じ位置に配置されていれば、一方の液体噴射ヘッドHのノズル列Lを構成する各ノズル21と、他方の液体噴射ヘッドHのノズル列Lを構成する各ノズル21とがY軸方向に関して同じ位置に配置されていないものも含む。また、2つの液体噴射ヘッドHがX軸方向に関して異なる位置に配置されているとは、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120のX軸方向の中心が、X軸方向で異なる位置に配置されていることを言う。つまり、2つの液体噴射ヘッドHがX軸方向に異なる位置に配置されているとは、Y軸方向に見て、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部が重なるものも含む。
【0065】
図8に示す表ta1は、各液体噴射ヘッドHの配置と噴射される液体との対応を示す。なお、1つの液体噴射ヘッドHに含まれる4個のヘッドチップHcがそれぞれ噴射する2種類の液体の組み合わせは全て同一であるため、表1ではヘッドチップHc毎の記載を省略している。
【0066】
表ta1に示すように、ヘッドユニットUにおいて、Y軸方向に関する中央に位置する液体噴射ヘッドH5のノズル列La、Lbは反応液を噴射する。
【0067】
また、液体噴射ヘッドH5に対して、-Y方向に位置する液体噴射ヘッドH4~H2のノズル列La、Lbと、-Y方向の端部に位置する液体噴射ヘッドH1のノズル列Lbと、は色材を含むインクを噴射する。また、-Y方向の端部に位置する液体噴射ヘッドH1のノズル列Laは後処理液を噴射する。
【0068】
また、液体噴射ヘッドH5に対して+Y方向に位置する液体噴射ヘッドH6~H8のノズル列La、Lbと、+Y方向の端部に位置する液体噴射ヘッドH9のノズル列Laと、からは色材を含むインクを噴射する。また、+Y方向の端部に位置する液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbからは後処理液を噴射する。
【0069】
このように、液体噴射ヘッドH5のノズル列Lは反応液を噴射し、液体噴射ヘッドH4、H6のノズル列Lはインクを噴射することで、反応液とインクとを共通する噴射面120から噴射する場合に比べて、反応液を噴射するノズル列Lとインクを噴射するノズル列LとのY軸方向に関する距離を長くすることができる。したがって、噴射面120上で反応液とインクとが反応して凝集し、凝集体によってノズル21の目詰まりやノズル21から液体の飛翔方向がずれる等の噴射不良が生じるのを抑制することができる。
【0070】
ここで、液体噴射ヘッドH5の-Y方向に位置する液体噴射ヘッドH4~H1のノズル列La、Lbから噴射される液体と、液体噴射ヘッドH5の+Y方向に位置する液体噴射ヘッドH6~H9のノズル列La、Lbから噴射される液体とは、液体噴射ヘッドH5を基準として+Y方向と-Y方向とに向かって同じ順番となるように配置される。つまり、液体噴射ヘッドH5から-Y方向に並ぶノズル列La、Lbから噴射する液体の順番と、液体噴射ヘッドH5から+Y方向に並ぶノズル列La、Lbから噴射する液体の順番とは同じ順番となっている。
【0071】
具体的には、液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の1番目に、液体噴射ヘッドH4のノズル列Lbが配置され、+Y方向の1番目に、液体噴射ヘッドH6のノズル列Laが配置される。液体噴射ヘッドH4のノズル列Lbと液体噴射ヘッドH6のノズル列Laとは、同じ種類のインク、本実施形態では、ブラックインクを噴射する。
【0072】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の2番目に、液体噴射ヘッドH4のノズル列Laが配置され、+Y方向の2番目に、液体噴射ヘッドH6のノズル列Lbが配置される。液体噴射ヘッドH4のノズル列Laと液体噴射ヘッドH6のノズル列Lbとは、マゼンタインクを噴射する。
【0073】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の3番目に、液体噴射ヘッドH3のノズル列Lbが配置され、+Y方向の3番目に、液体噴射ヘッドH7のノズル列Laが配置される。液体噴射ヘッドH3のノズル列Lbと液体噴射ヘッドH7のノズル列Laとは、イエローインクを噴射する。
【0074】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の4番目に、液体噴射ヘッドH3のノズル列Laが配置され、+Y方向の4番目に、液体噴射ヘッドH7のノズル列Lbが配置される。液体噴射ヘッドH3のノズル列Laと液体噴射ヘッドH7のノズル列Lbとは、グリーンインクを噴射する。
【0075】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の5番目に、液体噴射ヘッドH2のノズル列Lbが配置され、+Y方向の5番目に、液体噴射ヘッドH8のノズル列Laが配置される。液体噴射ヘッドH2のノズル列Lbと液体噴射ヘッドH8のノズル列Laとは、レッドインクを噴射する。
【0076】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の6番目に、液体噴射ヘッドH2のノズル列Laが配置され、+Y方向の6番目に、液体噴射ヘッドH8のノズル列Lbが配置される。液体噴射ヘッドH2のノズル列Laと液体噴射ヘッドH8のノズル列Lbとは、シアンインクを噴射する。
【0077】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の7番目に、液体噴射ヘッドH1のノズル列Lbが配置され、+Y方向の7番目に、液体噴射ヘッドH9のノズル列Laが配置される。液体噴射ヘッドH1のノズル列Lbと液体噴射ヘッドH9のノズル列Laとは、オレンジインクを噴射する。
【0078】
液体噴射ヘッドH5に対して-Y方向の8番目に、液体噴射ヘッドH1のノズル列Laが配置され、+Y方向の8番目に、液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbが配置される。液体噴射ヘッドH1のノズル列Laと液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbとは、後処理液を噴射する。
【0079】
このように構成することにより、複数の液体噴射ヘッドHにおいて、Y軸方向に沿って並ぶノズル列Lは、液体噴射ヘッドH5から+Y方向への順番も、-Y方向への順番も同様にブラックインク、マゼンタインク、グリーンインク、レッドインク、シアンインク、オレンジインク、後処理液の順にノズル列Lが配置される。
【0080】
また、液体噴射ヘッドH5の2つのノズル列La、Lbは反応液を噴射する。このため、ヘッドユニットUが+Y方向に移動しても、-Y方向に移動しても同様に反応液、色材を含むインク、後処理液の噴射の順番を同じ順番にすることができる。
【0081】
また、液体噴射ヘッドH5に対して+Y方向に順番に並ぶノズル列La、Lbと、-Y方向に順番に並ぶノズル列La、Lbとは、略同一の距離に配置される。略同一とは、完全に同一である場合の他に、製造上の誤差を考慮すれば同一であると見做せる場合を含む。
【0082】
このため、ヘッドユニットをY軸方向に往復移動させて印刷を行う際に、+Y方向に移動して液体を噴射する順番と、-Y方向に移動して液体を噴射する順番とを同じ順番にして、媒体S上での液体の重なる順番を同様とすることができると共に、異なる種類の液体が着弾する時間差を同様にすることができる。したがって、走査方向の違いによる色の差及び走査方向の違いによるインクの凝集加減の差を抑制して、印刷品質を向上することができる。
【0083】
また、本実施形態では、Y軸に沿って並ぶ液体噴射ヘッドH1~H9からインク、反応液、後処理液を噴射することで、同一パス内でインク、反応液、後処理液を噴射することができる。したがって、パス毎にインク及び後処理液と反応液とを反応させることができるため、媒体Sに滲みが生じ難い。
【0084】
ここで、第1列における印刷処理を具体的に説明すると、+Y方向印刷処理を実行する場合、液体噴射ヘッドH5から反応液を媒体Sに噴射した後、液体噴射ヘッドH4、液体噴射ヘッドH3、液体噴射ヘッドH2、液体噴射ヘッドH1のノズル列Lbの順番でインクを媒体Sに噴射し、その後、液体噴射ヘッドH1のノズル列Laから後処理液を媒体Sに噴射する。一方、-Y方向印刷処理を実行する場合、液体噴射ヘッドH5から反応液を媒体Sに噴射した後、液体噴射ヘッドH6、液体噴射ヘッドH7、液体噴射ヘッドH8、液体噴射ヘッドH9のノズル列Laの順番でインクを媒体Sに噴射し、その後、液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbから後処理液を媒体Sに噴射する。第1列における印刷処理を終了したら、媒体SをX軸方向にバンド幅分移動させる移動処理を実行し、第2列における印刷処理を実行する。第2列における印刷処理は、液体噴射ヘッドH10、H13から後処理液を媒体Sに噴射した後、液体噴射ヘッドH12、H11から処理液を媒体Sに噴射する。
【0085】
また、Y軸方向の中央に反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5を配置するため、ヘッドユニットUの+Y方向への移動時の印刷も、-Y方向への移動時の印刷も、色材を含むインクと反応液とを噴射する順番を同じ順番として、ヘッドユニットUの移動方向による色差を抑制することができる。
【0086】
ちなみに、本実施形態の液体噴射ヘッドH1~H9の配置では、同じ種類の液体、例えば、ブラックインクを噴射する液体噴射ヘッドH4のノズル列Lbと液体噴射ヘッドH6のノズル列Laとは互いにX軸方向に半ピッチずれた位置に配置される。このため、媒体Sを搬送することなく、2パスでノズル列Lのノズル21のピッチの倍の解像度で印刷を行うことができる。したがって、高解像度の印刷を高速で行うことができる。なお、ブラックイングだけではなく、その他のインクについても同様であり、液体噴射ヘッドH1、H9から噴射される後処理液についても同様である。
【0087】
また、本実施形態では、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5の隣の液体噴射ヘッドH4、H6から色材を含むインクを噴射させることで、液体噴射ヘッドH4、H6から後処理液を噴射させる場合に比べて、媒体S上において色材を含むインクと反応液とが反応するまでの時間を短縮することができ、インクの滲みを抑制して画質を向上することができる。
【0088】
また、Y軸方向の両端部に位置する液体噴射ヘッドH1のノズル列Laと、液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbと、は後処理液を噴射する。このため、ヘッドユニットUを+Y方向に移動した場合、液体噴射ヘッドH1~H4によって色材を含むインクを媒体に着弾させた後に、媒体S上の色材を含むインクに対して後処理液を液体噴射ヘッドH1のノズル列Laから噴射することができる。そして、ヘッドユニットUを-Y方向に移動した場合、液体噴射ヘッドH6~H9によって色材を含むインクを媒体に着弾させた後に、媒体S上の色材を含むインクに対して後処理液を液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbから噴射することができる。したがって、後処理液を噴射するためにヘッドユニットUをY軸方向に無駄に往復移動する必要がない。つまり、ヘッドユニットUを+Y方向に移動した際にも、-Y方向に移動した際にも、色材を含むインク及び反応液と、後処理液との噴射の順番を変えることなく、噴射できるため、印刷時間を短縮できる。
【0089】
また、液体噴射ヘッドH11は、液体噴射ヘッドH4とX軸に沿って並び、液体噴射ヘッドH12は、液体噴射ヘッドH6とX軸に沿って並ぶ。これら液体噴射ヘッドH11、H12のノズル列La、Lbは、柔軟剤を含む処理液を噴射する。
【0090】
ここで、液体噴射ヘッドH5から噴射された反応液は、ミストとなって近くの色材を含むインクを噴射する液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120に付着する虞がある。液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120に反応液が付着すると、インクと反応液とが反応して凝集し、この凝集体によってノズル21の目詰まりや液体の飛翔方向のずれなどの噴射不良が生じる場合がある。しかしながら、液体噴射ヘッドH4、H6にX軸に沿って並ぶ位置のそれぞれに、処理液を噴射する液体噴射ヘッドH11、H12を配置し、払拭部材9を-X方向に相対移動して、液体噴射ヘッドH11、H12の噴射面120と、液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120とをこの順に連続して払拭することで、液体噴射ヘッドH4、H6のノズル21の噴射不良を抑制することができる。詳しくは、払拭部材9は、液体噴射ヘッドH11、H12の噴射面120を払拭した後、液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120を払拭する。このとき払拭部材9は、液体噴射ヘッドH11、H12の噴射面120を払拭することで、処理液が付着した状態で液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120を払拭する。処理液は、上述したように柔軟剤を含むため、噴射面120との摩擦を低減することができる。したがって、処理液が付着した払拭部材9を液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120に強く押しつけて、比較的強い力で払拭を行うことができる。このように液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120を払拭部材9によって比較的強い力で払拭することで、液体噴射ヘッドH4、H6のノズル21の噴射不良を容易に回復することができる。
【0091】
なお、払拭部材9によって噴射面120を払拭する際には、液体噴射ヘッドHのノズル列Lから媒体S以外の部分に噴射する所謂、フラッシングや、マニホールド100内の液体を加圧することでノズル21から液体を排出させる所謂、加圧クリーニングを行った後に実施するのが好ましい。このように、払拭部材9による払拭の前に、フラッシングや加圧クリーニングを行うことで、払拭部材9及び噴射面120の少なくとも一方に処理液を積極的に塗布しておくことができ、払拭部材9に十分な処理液を付着させた状態で払拭動作を行うことで、液体噴射ヘッドH4、H6のノズル21の噴射不良を回復し易くすることができる。
【0092】
また、色材として無機顔料を用いた場合、無機顔料は比較的、平均粒子径が大きいため払拭動作時に噴射面120を傷つけやすいが、処理液によって噴射面120と払拭部材9との摩擦を低減することができるため、顔料によって噴射面120に傷が生じ難い。つまり、本実施形態によれば、噴射面120においてインクと処理液とを混在させることで、噴射面120と払拭部材9との摩擦を低減して噴射面120に傷が生じるのを抑制することができるため、平均粒子径が比較的大きな無機顔料を含むインクを液体噴射ヘッドH4、H6から噴射させることができる。ちなみに、ブラックインクは、他の色のインクに比べて使用量が多く、噴射量が多くなるため、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5のY軸方向に関して隣の液体噴射ヘッドH4、H6からブラックインクを噴射させることで、媒体S上でブラックインクと反応液とが反応する時間を短縮して、媒体S上におけるブラックインクの滲みを抑制することができる。
【0093】
なお、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5からY軸方向の距離が遠い液体噴射ヘッドH7~H9、H3~H1の噴射面120には、ミスト化した反応液が付着し難く、噴射面120上でインクが反応液によって凝集し難いため、ノズル21の噴射不良が生じ難い。このため、液体噴射ヘッドH7~H9、液体噴射ヘッドH3~H1は、ミスト化した反応液が付着することによるノズル21の噴射不良が発生し難い。
【0094】
インクが反応液と未反応とならないように、一般的に液体噴射ヘッドH5からの反応液の噴射量は、液体噴射ヘッドH4、H6からのインクの噴射量よりも多い。また、Y軸方向において液体噴射ヘッドH5を中心として左右対称に噴射されるインクの色が並ぶようにノズル列Lが配置されている場合、噴射の順番を守るためには、液体噴射ヘッドH5に対して+Y方向に配置された液体噴射ヘッドH6~H9は、往路又は復路の一方のみで使用され、-Y方向に配置された液体噴射ヘッドH4~H1は、往路又は復路の他方のみで使用される。これに対して、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5は、往路と復路との両方で使用されるため、液体噴射ヘッドH5のノズル21から反応液を噴射する頻度は、液体噴射ヘッドH4、H6からインクを噴射する頻度よりも高い。これらの理由から、液体噴射ヘッドH4、H6からインクが噴射されることで生じるミストの量は少なく、液体噴射ヘッドH5の噴射面120に液体噴射ヘッドH4、H6から噴射されたインクのミストは付着し難い。また、仮に液体噴射ヘッドH5の噴射面120に液体噴射ヘッドH4、H6から噴射されたインクのミストが付着したとしても、液体噴射ヘッドH5から反応液を噴射する量が多く頻度が高いため、液体噴射ヘッドH5のノズル21内で反応液とインクミストとが凝集し難い。このため、液体噴射ヘッドH5の+X方向に処理液を噴射する液体噴射ヘッドHを配置する必要はない。また、処理液は長時間に亘って反応液と触れることで反応液と反応して凝集する虞があるため、液体噴射ヘッドH5の+X方向に処理液を噴射する液体噴射ヘッドHを配置すると、反応液のミストが処理液を噴射する液体噴射ヘッドHに付着したり、払拭部材9で払拭した際に液体噴射ヘッドH5の噴射面120で反応液と処理液とが反応したりする虞がある。このため、液体噴射ヘッドH5の+X方向に処理液を噴射する液体噴射ヘッドHを配置しない方が好ましい。つまり、液体噴射ヘッドH5は、+X方向に液体噴射ヘッドHを配置しないことで、液体噴射ヘッドH5の噴射面120は、単体で払拭部材9によって払拭される。したがって、液体噴射ヘッドH5の噴射面120で他の噴射面120に付着した液体が反応液と反応して凝集するのを抑制して、液体噴射ヘッドH5のノズル21の噴射不良を抑制することができる。
【0095】
また、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5のY軸方向に関して隣の液体噴射ヘッドH4、H6からは、反応液との反応時間が最も短いインクを噴射させるようにしてもよい。一般的にインクの色によって反応液との反応が完了するまでの反応時間が異なる。このため、反応液との反応時間が最も短いインクを液体噴射ヘッドH4、H6のノズル列Lから噴射させても、上述したように処理液が付着した払拭部材9によって液体噴射ヘッドH4、H6の噴射面120上の凝集体を除去することができ、ノズル21の噴射不良を回復できる。また、たとえ反応液のミストが液体噴射ヘッドH5から見て液体噴射ヘッドH4、H6よりも離れた位置に配置されて、反応液と反応する液体を噴射する液体噴射ヘッドH1~H3、H7~H9の噴射面120に付着しても、液体噴射ヘッドH1~H3、H7~H9から噴射されるインクは反応液との反応時間が長いため、噴射面120でインクが反応液によって凝集し難くすることができる。
【0096】
また、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH5のY軸方向に関して隣の液体噴射ヘッドH4、H6からは、反応液との反応時間が最も長いインクを噴射させるようにしてもよい。これによれば、反応液のミストの影響範囲が狭い場合などでは、液体噴射ヘッドH4、H6よりも液体噴射ヘッドH5でノズル21の噴射不良が発生し難いため、当該液体噴射ヘッドH5に対して処理液を含む払拭が不要となる。更に、より簡単に液体噴射ヘッドH4、H6の噴射不良を払拭により回復することができる。
【0097】
また、液体噴射ヘッドH10は、液体噴射ヘッドH1とX軸に沿って並び、液体噴射ヘッドH13は、液体噴射ヘッドH9とX軸に沿って並ぶ。これら液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列La、Lbは、後処理液を噴射する。
【0098】
このように、液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列Lは後処理液を噴射することで、後処理液を多く媒体S上に付与して画質を向上することができる。また、液体噴射ヘッドH1~H9によって後処理液を噴射するパスとは別のパスで液体噴射ヘッドH10、H13から後処理液を噴射することで、後処理液を付与する時間をずらすことができるため、同一パス内で後処理液を過度に付与することによって発生する滲みを抑制することができる。
【0099】
なお、本実施形態では、第1列において後処理液を噴射する液体噴射ヘッドH1、H9のノズル列Lの数は、第2列において後処理液を噴射する液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列Lの数よりも少ない。本実施形態では、後処理液を噴射する液体噴射ヘッドH1、H9のそれぞれのノズル列Lの数は4個であるのに対し、後処理液を噴射する液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列Lの数は8個である。このように後処理液を噴射する液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列Lの数を比較的多くすることで、画質を向上するために後処理液を多く噴射することができる。
【0100】
また、ヘッドユニットUによって、インク、反応液、後処理液を同一パス内で噴射する際には、過度の後処理液を付与する必要がないため、液体噴射ヘッドH10、H13を液体噴射ヘッドH1、H9とX軸に沿って並ぶ位置に配置することで、Y軸方向に関してヘッドユニットUを小型化できる。つまり、13個の液体噴射ヘッドHをY軸に沿って並べたヘッドユニットに比べて、液体噴射ヘッドH1~H9の列と、液体噴射ヘッドH10~H13の列とを、X軸に沿って並べることで、Y軸方向に関してヘッドユニットUを小型化できる。
【0101】
また、本実施形態では、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH11とのX軸方向に関する第1間隔d1は、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH3とのY軸方向に関する第2間隔d2よりも短い。つまり、d1<d2の関係を満たす。ここで、第1間隔d1及び第2間隔d2とは、2つの液体噴射ヘッドHの払拭部材9によって払拭される噴射面120同士の間隔である。このように第1間隔d1を第2間隔d2よりも短くすることで、払拭部材9が液体噴射ヘッドH11の噴射面120を払拭した際に回収した処理液を多く保持した状態でX軸に沿って液体噴射ヘッドH4の噴射面120を払拭することができる。
【0102】
また、液体噴射ヘッドH5と液体噴射ヘッドH4とのY軸方向に関する第3間隔d3は、第2間隔d2よりも長いことが好ましい。つまり、d3>d2を満たすことが好ましい。第3間隔d3は、第1間隔d1及び第2間隔d2と同様に、2つの液体噴射ヘッドHの噴射面120同士の間隔である。このように第3間隔d3を第2間隔d2よりも長くすることで、液体噴射ヘッドH5から反応液が噴射されることで発生したミストが液体噴射ヘッドH4の噴射面120に付着し難く、液体噴射ヘッドH4におけるノズル21の噴射不良の発生を低減することができる。また、第2間隔d2を比較的短くすることで、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH3とから噴射されるインクの媒体S上での着弾位置精度を向上して、画質を向上することができる。
【0103】
なお、本実施形態では上述のように液体噴射ヘッドH5を中心としてY軸方向に関して液体噴射ヘッドH4~H1と、液体噴射ヘッドH6~H9とは線対称となるように配置されている。つまり、Y軸方向に関して液体噴射ヘッドH5と液体噴射ヘッドH3~H1とのそれぞれの間隔と、液体噴射ヘッドH5と液体噴射ヘッドH6~H9とのそれぞれの間隔とは略同じである。このため第1間隔d1は、液体噴射ヘッドH6と液体噴射ヘッドH12とのX軸方向に関する間隔と一致し、第2間隔d2は、液体噴射ヘッドH6と液体噴射ヘッドH7とのY軸方向に関する間隔と一致する。また、第3間隔d3は、液体噴射ヘッドH5と液体噴射ヘッドH6とのY軸方向に関する間隔と一致する。このため、液体噴射ヘッドH5、H6、H12においても上述したものと同じ効果を奏する。
【0104】
また、本実施形態では、Y軸方向に関して、液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH2との間隔、液体噴射ヘッドH2と液体噴射ヘッドH1との間隔、液体噴射ヘッドH7と液体噴射ヘッドH8との間隔、液体噴射ヘッドH8と液体噴射ヘッドH9との間隔は、第2間隔d2と同じである。このため、液体噴射ヘッドH1~H4、H6~H9から噴射されるインクの媒体S上での着弾位置精度を向上して画質を向上できる。
【0105】
また、本実施形態では、X軸方向に関して、液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH10との間隔、液体噴射ヘッドH9と液体噴射ヘッドH13との間隔は、第1間隔d1と同じである。このため、液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH10とを払拭部材9で同時に払拭できると共に、液体噴射ヘッドH9と液体噴射ヘッドH13とを払拭部材9で同時に払拭できる。したがって、払拭部材9が払拭動作を行う回数を低減して、メンテナンスに必要な時間を短縮することができ、印刷時間を短縮できる。
【0106】
また、上述した例では、第3間隔d3は、第2間隔d2よりも長くしたが、特にこれに限定されず、第3間隔d3と第2間隔d2とは同じでもよい。
【0107】
本実施形態の液体噴射ヘッドH4、H6が「第1ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH3、H7が「第2ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH1、H9が「第3ヘッド」に相当する。また、液体噴射ヘッドH10、H13が「第4ヘッド」に相当する。また、液体噴射ヘッドH5が「反応液ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH11、H12が「処理液ヘッド」に相当する。また、色材を含むインクのうちブラックインク又はマゼンタインクが「第1液体」に相当し、イエローインク又はグリーンインクが「第2液体」に相当する。
【0108】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るヘッドユニットUを-Z方向に見た平面図である。
図10は、各液体噴射ヘッドHの配置と噴射する液体との対応を示す表ta2である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。また、本実施形態においても、上述した実施形態と同様に、X軸は「第1軸」の一例であり、X軸方向は「第1軸に沿った方向」又は「搬送方向」の一例である。また、Y軸は「第2軸」の一例であり、Y軸方向は「第2軸に沿った方向」の一例である。
【0109】
図9に示すように、ヘッドユニットUは、Y軸に沿って並んで配置された5個の液体噴射ヘッドHで構成される第1列と、液体噴射ヘッドHがY軸に沿って5個並んで配置された第1列と、Y軸に沿って並んで配置された4個の液体噴射ヘッドHで構成される第2列と、Y軸方向に沿って並んで配置された4個の液体噴射ヘッドHで構成される第3列と、の3列がX軸に沿って並んで配置される。
【0110】
本実施形態では、第1列を構成する5個の液体噴射ヘッドHを+Y方向に向かって順番に液体噴射ヘッドH1~H5と称し、第2列を構成する4個の液体噴射ヘッドHを+Y方向に向かって順番にH6~H9と称し、第3列を構成する4個の液体噴射ヘッドHを+Y方向に向かって順番にH10~H13と称する。以降、液体噴射ヘッドH1~H13を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。第1列と第2列と第3列とは、この順に+X方向に並んで配置される。
【0111】
このようなヘッドユニットUでは、液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH2及びH4とは、隣り合い、且つY軸に沿って並んで配置される。
【0112】
また、液体噴射ヘッドH2と液体噴射ヘッドH7と液体噴射ヘッドH11とは、X軸に沿って並んで配置される。
【0113】
また、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH8と液体噴射ヘッドH12とは、X軸に沿って並んで配置される。
【0114】
図10の表ta2に示すように、ヘッドユニットUの第1列において、Y軸方向に関する中央に位置する液体噴射ヘッドH3のノズル列Lは反応液を噴射する。
【0115】
また、液体噴射ヘッドH3に対して、-Y方向に位置する液体噴射ヘッドH2、H1のノズル列Lと、+Y方向に位置する液体噴射ヘッドH4、H5のノズル列Lとは、色材を含むインクを噴射する。
【0116】
また、第2列において、液体噴射ヘッドH6のノズル列Lbと、液体噴射ヘッドH7、H8のノズル列Lと、液体噴射ヘッドH9のノズル列Laとは、色材を含むインクを噴射する。また、液体噴射ヘッドH6のノズル列Laと、液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbとは、後処理液を噴射する。
【0117】
また、第3列において、液体噴射ヘッドH11、H12のノズル列Lは、処理液を噴射する。また、液体噴射ヘッドH10、H13のノズル列Lは、後処理液を噴射する。
【0118】
このように、液体噴射ヘッドH3のノズル列Lは反応液を噴射し、液体噴射ヘッドH2、H4のノズル列Lはインクを噴射することで、反応液とインクとを共通する噴射面120から噴射する場合に比べて、反応液を噴射するノズル列Lとインクを噴射するノズル列LとのY軸方向に関する距離を長くすることができる。したがって、噴射面120上で反応液とインクとが反応して凝集し、凝集体によってノズル21の目詰まりやノズル21から液体の飛翔方向がずれる等の噴射不良が生じるのを抑制することができる。
【0119】
また、第1列において、液体噴射ヘッドH3の-Y方向に位置する液体噴射ヘッドH1、H2のノズル列La、Lbから噴射される液体と、液体噴射ヘッドH3の+Y方向に位置する液体噴射ヘッドH4、H5のノズル列La、Lbから噴射される液体とは、液体噴射ヘッドH3を基準として+Y方向と-Y方向とに向かって同じ順番となるように配置される。
【0120】
第2列においても同様に、液体噴射ヘッドH3の-Y方向に位置する液体噴射ヘッドH6、H7のノズル列La、Lbから噴射される液体と、液体噴射ヘッドH3の+Y方向に位置する液体噴射ヘッドH8、H9のノズル列La、Lbから噴射される液体とは、液体噴射ヘッドH3を基準として+Y方向と-Y方向とに向かって同じ順番となるように配置される。
【0121】
第3列においても同様である。
【0122】
このような配置とすることで、ヘッドユニットUが+Y方向に移動しても、-Y方向に移動しても同様に反応液、色材を含むインクの各色、後処理液の噴射の順番を同じ順番にすることができる。したがって、ヘッドユニットをY軸方向に往復移動させて印刷を行う際に、+Y方向に移動して液体を噴射する順番と、-Y方向に移動して液体を噴射する順番とを同じ順番にして、媒体S上での液体の重なる順番を同様とすることができると共に、異なる種類の液体が着弾する時間差を同様にすることができる。したがって、走査方向の違いによる色の差及び走査方向の違いによるインクの凝集加減の差を抑制して、印刷品質を向上することができる。
【0123】
また、第1列において、Y軸方向の中央に反応液を噴射する液体噴射ヘッドH3を配置するため、ヘッドユニットUの+Y方向への移動時の印刷も、-Y方向への移動時の印刷も、色材を含むインクと反応液とを噴射する順番を同じ順番として、ヘッドユニットUの移動方向による色差を抑制することができる。
【0124】
また、本実施形態では、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH3の隣の液体噴射ヘッドH2、H4から色材を含むインクを噴射させることで、液体噴射ヘッドH2、H4から後処理液を噴射させる場合に比べて、媒体S上において色材を含むインクと反応液とが反応するまでの時間を短縮することができ、インクの滲みを抑制して画質を向上することができる。
【0125】
また、第2列において、Y軸方向の両端部に位置する液体噴射ヘッドH6のノズル列Laと、液体噴射ヘッドH9のノズル列Lbと、は後処理液を噴射する。このため、ヘッドユニットUを+Y方向に移動した場合も、-Y方向に移動した場合も、液体噴射ヘッドH6~H9のノズル列Lによって色材を含むインクを媒体Sに着弾させた後に、媒体S上の色材を含むインクに対して後処理液を噴射することができる。したがって、後処理液を噴射するためにヘッドユニットUをY軸方向に無駄に往復移動する必要がない。つまり、ヘッドユニットUを+Y方向に移動した際にも、-Y方向に移動した際にも、色材を含むインクと、後処理液との噴射の順番を変えることなく、噴射できるため、印刷時間を短縮できる。
【0126】
さらに、本実施形態では、Y軸に沿って最大5個の液体噴射ヘッドHが並んで配置されるため、Y軸方向に関してヘッドユニットUをさらに小型化することができる。
【0127】
また、払拭部材9は、ヘッドユニットUに対して-X方向に相対移動することで第3列の液体噴射ヘッドHの噴射面120と、第2列の液体噴射ヘッドHの噴射面120と、第1列の液体噴射ヘッドHの噴射面120と、を連続して払拭することができる。したがって、払拭部材9による払拭動作を行う回数を低減することができる。
【0128】
そして、払拭部材9は、液体噴射ヘッドH11、H12の噴射面120を払拭した後、液体噴射ヘッドH7、H8の噴射面120を払拭し、その後、液体噴射ヘッドH2、H4の噴射面120を払拭する。このとき払拭部材9は、液体噴射ヘッドH11、H12の噴射面120を払拭することで、処理液が付着した状態で液体噴射ヘッドH7、H8及びH2、H4の噴射面120を払拭する。処理液は、上述したように柔軟剤を含むため、噴射面120との摩擦を低減することができる。したがって、処理液が付着した払拭部材9を液体噴射ヘッドH2、H4の噴射面120に強く押しつけて、比較的強い力で払拭を行うことができる。このように液体噴射ヘッドH2、H4の噴射面120を払拭部材9によって比較的強い力で払拭することで、反応液を噴射する液体噴射ヘッドH3の隣に位置してノズル21の噴射不良が発生し易い液体噴射ヘッドH2、H4の噴射不良を容易に回復することができる。
【0129】
なお、本実施形態では、X軸方向に関して液体噴射ヘッドH2と液体噴射ヘッドH7との間隔、液体噴射ヘッドH7と液体噴射ヘッドH11との間隔、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH8との間隔、液体噴射ヘッドH8と液体噴射ヘッドH12との第4間隔は、全て同じ間隔である。また、Y軸方向に関して液体噴射ヘッドH2と液体噴射ヘッドH1との間隔、および、液体噴射ヘッドH4と液体噴射ヘッドH5との間隔が第2間隔d2に相当する。また、Y軸方向に関して液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH2との間隔、および、液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH4との間隔が第3間隔d3に相当する。本実施形態の第4間隔d4は、上述した実施形態1の第1間隔d1に代えて、第2間隔d2、第3間隔d3との関係が、上述した実施形態1と同じ条件を満たすことが好ましい。これにより、上述した実施形態1と同様の効果を奏する。
【0130】
また、本実施形態の液体噴射ヘッドH2、H4が「第1ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH1、H5が「第2ヘッド」に相当する。また、液体噴射ヘッドH5が「反応液ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH11、H12が「処理液ヘッド」に相当する。また、液体噴射ヘッドH6、H9が「第4ヘッド」に相当する。また、色材を含むインクのうちブラックインク又はマゼンタインクが「第1液体」に相当し、イエローインク又はグリーンインクが「第2液体」に相当する。
【0131】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0132】
例えば、上述した実施形態1において、液体噴射ヘッドH5のノズル列Lは反応液を噴射し、液体噴射ヘッドH4のノズル列Lb及び液体噴射ヘッドH6のノズル列Laは、後処理液を噴射してもよい。この場合、液体噴射ヘッドH4のノズル列La、液体噴射ヘッドH6~H9、H3~H1のノズル列La、Lb、液体噴射ヘッドH6のノズル列Lbは、色材を含むインクを噴射すればよい。この場合、液体噴射ヘッドH4、H6は「第1ヘッド」に相当し、後処理液が「第1液体」に相当する。このような構成であっても、後処理液は、反応液と反応して凝集するため、液体噴射ヘッドH4、H6にX軸に沿って隣り合う液体噴射ヘッドH11、H12のノズル列Lから処理液を噴射させて、払拭部材9によって払拭することで、液体噴射ヘッドH4、H6のノズル21の噴射不良を回復して、噴射不良を抑制できる。なお、上述した実施形態2についても同様である。
【0133】
さらに、上述した各実施形態では、圧力室12内の液体に圧力変化を生じさせる駆動素子として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されない。その他の駆動素子としては、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、その他の駆動素子としては、圧力室12内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル21から液体を噴射するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル21から液体を噴射させる、所謂、静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0134】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備するヘッドユニット全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドは、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッドが挙げられる。また、液体噴射ヘッドは、例えば、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、これらの液体噴射ヘッドを備えたヘッドユニットにも適用することができ、かかるヘッドユニットを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0135】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0136】
好適な態様である態様1に係るヘッドユニットは、媒体の搬送方向に沿う第1軸に直交する第2軸に沿って往復移動しながら媒体に向かって液体を噴射するヘッドユニットであって、前記ヘッドユニットは、複数の液体噴射ヘッドを有し、前記複数の液体噴射ヘッドは、第1液体を噴射する第1ヘッドと、前記第1液体を凝集させる反応液を噴射する反応液ヘッドと、柔軟剤を含む処理液を噴射する処理液ヘッドと、を含み、前記第1ヘッドと前記反応液ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、前記処理液ヘッドは、前記第1ヘッドと前記第1軸に沿って並ぶ、ことを特徴とするヘッドユニットである。
【0137】
態様1の具体例である態様2において、前記第1液体は、色材を含むインクである。
【0138】
態様2の具体例である態様3において、前記第1液体は、無機顔料を含むインクである。
【0139】
態様1の具体例である態様4において、前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する第2液体を噴射する第2ヘッドを含み、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、前記第1軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記処理液ヘッドとの第1間隔は、前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの第2間隔よりも短い。
【0140】
態様1の具体例である態様5において、前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する第2液体を噴射する第2ヘッドを含み、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとは、隣り合い、且つ、前記第2軸に沿って並び、前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記反応液ヘッドとの第3間隔は、前記第2軸に沿う方向に関する前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとの第2間隔よりも長い。
【0141】
態様1の具体例である態様6において、前記複数の液体噴射ヘッドは、前記反応液によって凝集する後処理液を噴射する第3ヘッドを含み、前記第3ヘッドは、前記第2軸に沿う方向に前記第1ヘッド及び前記反応液ヘッドと並んで配置される。
【0142】
態様6の具体例である態様7において、前記複数の液体噴射ヘッドは、前記後処理液を噴射する第4ヘッドを含み、前記第4ヘッドは、前記第2軸に沿う方向に前記処理液ヘッドと並んで配置される。
【0143】
態様7の具体例である態様8において、前記第3ヘッドの前記後処理液を噴射するノズル列の数は、前記第4ヘッドの前記後処理液を噴射するノズル列の数よりも少ない。
【0144】
態様7の具体例である態様9において、前記第3ヘッドは、前記反応液によって凝集する、色材を含むインクを噴射する。
【0145】
態様6の具体例である態様10において、前記第1ヘッドは、前記反応液ヘッドと前記第3ヘッドとの間に配置されている。
【0146】
態様1の具体例である態様11は、前記処理液は、前記第1液体に比べて、前記反応液に対して凝集し難い。
【0147】
態様1の具体例である態様12において、前記第1ヘッドの噴射面の形状、及び、前記処理液ヘッドの噴射面の形状のそれぞれは、第1部分と、前記第1部分に隣接すると共に前記第1部分から前記搬送方向に突出する第2部分と、前記第1部分に隣接すると共に前記第1部分から前記第2部分とは反対方向に突出する第3部分と、を含み、前記第2部分の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記第1部分の前記第2軸に沿う方向の寸法の半分未満であり、前記第2部分は、前記第1部分の前記第2軸に沿う方向の中心を通過する前記第1部分の中心線であって前記搬送方向に延びる第1中心線に対して、前記第2軸に沿う方向に位置し、前記第3部分の前記第2軸に沿う方向の寸法は、前記第2軸に沿う方向の寸法の半分未満であり、前記第2部分と前記第3部分とは、前記第1中心線を挟んで反対側に位置し、前記第1ヘッド及び前記反応液ヘッドの少なくとも一方の前記噴射面の一部と、前記処理液ヘッドの前記噴射面の一部とは、前記第2軸に沿う方向に見て、重なる。
【0148】
好適な態様である態様13の液体噴射装置は、上記態様に記載のヘッドユニットと、前記処理液ヘッドの噴射面、及び、前記第1ヘッドの噴射面を、前記第1軸に沿ってこの順に払拭する払拭部材と、を備える。
【符号の説明】
【0149】
1…液体噴射装置、3…液体貯留部、4…制御ユニット、5…搬送機構、5a…搬送ローラー、6…移動機構、7…保持体、8…搬送ベルト、9…払拭部材、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、40…ケース部材、45…コンプライアンス基板、50…振動板、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、91…個別リード電極、100…マニホールド、110…配線部材、111…駆動信号選択回路、120…噴射面、200…ホルダー、208…収容部、210…流路部材、220…カバーヘッド、300…圧電アクチュエーター、310…活性部、H、H1~H13…液体噴射ヘッド、Hc…ヘッドチップ、L、La、Lb…ノズル列、S…媒体、U…ヘッドユニット、U1…支持体。