(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163506
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/15 20060101AFI20241115BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B41J2/15
B41J2/01 123
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079194
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】米山 一朗
(72)【発明者】
【氏名】森山 恵多
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EA16
2C056EA20
2C056FA10
2C056FC01
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA42
2C057AF27
2C057AF61
2C057AG14
(57)【要約】
【課題】液体の噴射不良を抑制して小型化した液体噴射装置を提供する。
【解決手段】被反応液を噴射する第1ノズル列L4a、L4bと、前記被反応液を凝集させる反応液を噴射する第2ノズル列L1a、L1bと、前記反応液を中和する中和液を噴射する第3ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bと、を備え、前記第3ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間に配置される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被反応液を噴射する第1ノズル列と、
前記被反応液を凝集させる反応液を噴射する第2ノズル列と、
前記反応液を中和する中和液を噴射する第3ノズル列と、
を備え、
前記第3ノズル列は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間に配置される、
ことを特徴とする液体噴射装置。
【請求項2】
前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列は、同じ液体噴射ヘッドに設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記液体噴射ヘッドは、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列が共に形成されたノズルプレートを有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記液体噴射ヘッドは、前記第1ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、前記第2ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、前記第3ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記第1ノズル列から前記被反応液を噴射している間、及び、前記第2ノズル列から前記反応液を噴射している間の少なくとも一方の間に、前記第3ノズル列から前記中和液を噴射する制御部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
1つの印刷ジョブにおいて、前記第3ノズル列から発生する前記中和液のミスト発生量は、前記第2ノズル列から発生する前記反応液のミスト発生量、及び、前記第1ノズル列から発生する前記被反応液のミスト発生量よりも多い、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記第3ノズル列から前記中和液を噴霧する、
ことを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
前記第1ノズル列から噴射される前記被反応液は、前記反応液によって凝集する色材を含むインクである、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項9】
前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列を1回の払拭動作で同時に払拭する払拭部材を具備する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項10】
前記中和液は、前記反応液に含まれる有機酸を中和する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク等の液体を布や紙などの媒体に噴射するノズル列を有する液体噴射ヘッドが知られている。媒体に対する液体の定着性を向上するため、例えば、特許文献1には、インク等の液体と、液体を凝集させる凝集剤を含む反応液とを噴射する液体噴射ヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、反応液と反応する液体を噴射することで発生するミストが反応液を噴射するノズルに付着し、または、反応液を噴射することで発生するミストが反応液と反応する液体を噴射するノズルに付着し、液体と反応液とが反応して凝集することでノズルの目詰まりや噴射される液体の飛翔方向のずれなどの噴射不良が発生する虞がある。このため、反応液を噴射するノズルを有するノズル列と、反応液に反応する液体を噴射するノズルを有するノズル列とを離して配置する必要があり、装置が大型化してしまうという問題がある。
【0005】
なお、反応液に反応する液体は、インクに限定されず、インク以外の液体、例えば、インクを覆うオーバーコート液等であっても同様の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の態様は、被反応液を噴射する第1ノズル列と、前記被反応液を凝集させる反応液を噴射する第2ノズル列と、前記反応液を中和する中和液を噴射する第3ノズル列と、を備え、前記第3ノズル列は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間に配置される、ことを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成図。
【
図2】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図。
【
図6】実施形態1および変形例1のノズル列と液体との対比を示す表。
【
図7】実施形態1に係る液体噴射ヘッドの液体の噴射状態を説明する図。
【
図8】実施形態1に係る液体噴射装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図9】他の実施形態に係るノズルプレートの平面図。
【
図10】他の実施形態に係る液体噴射装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0009】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。
【0010】
図1に示すように、液体噴射装置1は、複数の液体噴射ヘッドHを有する液体噴射ヘッドHを備え、媒体SをX軸方向に搬送すると共に、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドHから媒体Sに向かって+Z方向に液体を噴射することで印刷を行う、所謂、シリアル式プリンターである。なお、媒体Sとしては、布の他、記録用紙や樹脂フィルム等の任意の材質を用いることができる。また、液体噴射装置1が噴射する液体としては、色材を含むインク、インクを凝集させる凝集剤を含む反応液、柔軟剤を含む処理液、後処理液、反応液を中和する中和液などである。本実施形態のインクは、染料及び顔料等の何らかの色材を有する液体である。なお、色材に用いる顔料としては、例えば、ブラックインクに用いられるカーボン、ホワイトインクに用いられる酸化チタン、シルバーメタリックインクに用いられるアルミナ等の無機顔料が挙げられる。
【0011】
反応液を媒体Sに噴射した後に、反応液が媒体に着弾する位置にインクを噴射することにより、反応液とインクとが媒体S上、又は媒体Sの内部に浸透した位置で混合し、反応液によってインクが凝集することにより、媒体Sに対するインクの定着性を向上できる。なお、インクを媒体Sに噴射してから所定の期間の間に、インクが媒体Sに着弾する位置に反応液を噴射してもよい。所定期間は、例えば、後述する1つのパスの期間である。
【0012】
反応液は、インクを凝集させる凝集剤を含む液体である。色材を凝集させる凝集剤として、有機酸を含んでいてもよい。有機酸を含む反応液としては、少なくともグルタル酸、溶媒、及び活性剤を含む反応液が採用でき、クエン酸やリンゴ酸、マロン酸などの有機酸を含む反応液を用いることもできる。
【0013】
反応液とインクとの具体的な組み合わせとしては、例えば、以下に示す2つの組み合わせがある。第1の組み合わせは、塩基性ポリマーを凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。第2の組み合わせは、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。ただし、反応液とインクとの組み合わせは、上記2つの組み合わせに限らない。
【0014】
後処理液は、媒体S上に着弾した色材を含むインクを覆うオーバーコート液であり、色材を有さず、媒体S上に噴射されたインクの定着性を向上させる液体である。後処理液も反応液によって凝集する。
【0015】
処理液は、媒体Sに対して柔軟性を付与する柔軟剤を含む液体である。処理液は、例えば、主成分としてジメチルシリコーンやアミノ変性シリコーン(弱アニオン)、エーテルシリコーンを含むシリコーンオイルである。処理液は、他の例としては、主成分として、陽イオン(カチオン)界面活性剤、ポリエステル(ノニオン)の何れかを含む液体であってもよい。柔軟剤の塗布により、媒体Sの柔軟性、耐水性、発色性を向上することができる。ちなみに、柔軟剤による柔軟性は、柔軟剤が繊維に付着することで、滑り性を付与して繊維同士の摩擦を低減することで得られる柔軟効果のことである。また、柔軟剤による耐水性は、柔軟剤は表面張力が低く、油に近い性質を持つため、柔軟剤の性質によって得られる撥水性(耐水性)のことである。また、柔軟剤による発色性は、媒体Sをコーティングすることで屈折率が低下することで得られる艶出し(濃色化)効果のことである。処理液は、色材を含むインクに比べて反応液に対して凝集し難い。例えば、インクや後処理液は反応液に瞬時に反応するが、処理液は反応液に瞬時に反応しない。例えば、インクと反応液との反応が完了するまでの反応時間は長いものでも数秒程度である。したがってここで言う「凝集し難い」とは、反応が完了するまでに10秒以上かかるものを指す。
【0016】
中和液は、反応液に含まれる有機酸を中和する作用を有するアルカリ化合物を含む液体である。反応液に含まれる有機酸は、上述したように、グルタル酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸などが挙げられる。
【0017】
このような液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHと、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0018】
液体噴射ヘッドHは、液体を貯留する液体貯留部3から供給される液体を液滴として+Z方向に噴射する。
【0019】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッドHから噴射される色や成分が異なる複数種類の液体を個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、
図1では1個の液体貯留部3を例示している。ちなみに、液体貯留部3は、複数種類の液体を個別に貯留する分割された部屋を有する液体貯留部3であってもよく、複数種類の液体に応じて個別に設けられた複数の液体貯留部3であってもよい。また、液体貯留部3は、メインタンクとサブタンクとで分かれていてもよい。サブタンクが液体噴射ヘッドHに接続され、液体噴射ヘッドHから液滴を噴射することで消費した液体をメインタンクからサブタンクに補充する構成であってもよい。
【0020】
制御ユニット4は、詳しくは後述するが、液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッドH、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0021】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。搬送ローラー5aは、図示しない搬送モーターの駆動により回転する。制御ユニット4は、媒体搬送モーターの駆動を制御することで、媒体Sの搬送を制御する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0022】
移動機構6は、液体噴射ヘッドHをY軸方向に往復させるための機構であり、保持体7と搬送ベルト8とを具備する。保持体7は、液体噴射ヘッドHを保持する所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト8は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト8を回転させて、液体噴射ヘッドHを保持体7と共にY軸方向で往復移動させる。なお、保持体7は、液体噴射ヘッドHと共に液体貯留部3を搭載する構成であってもよい。
【0023】
液体噴射ヘッドHは、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給された液体を複数のノズル21(
図3参照)のそれぞれから液滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッドHによる噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッドHの往復移動と並行して行われることにより、媒体Sに液体が塗布される、いわゆる印刷が行われる。
【0024】
印刷処理には、双方向印刷と片方印刷との2つの態様がある。以降、液体噴射ヘッドHをY軸方向に1回移動させることを、1つのパス(略して1パス)と称する。1パスの期間とは、液体噴射ヘッドHをY軸方向に1回移動させることに要する期間である。双方向印刷において、液体噴射装置1は、+Y方向に液体噴射ヘッドHを移動させながら液体を噴射して、1つ目のパスに対応する部分画像を媒体Sに形成させる+X方向印刷処理を実行する。次に、液体噴射装置1は、媒体SをX軸方向に1パス分移動させ、-X方向に液体噴射ヘッドHを移動させながら液体を噴射して2つ目のパスに対応する部分画像を媒体Sに形成させる-X方向印刷処理を実行する。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+X方向印刷処理及び-X方向印刷処理を繰り返す。
【0025】
片方印刷では、前述した+X方向印刷処理を実行する。次に、液体噴射装置1は、媒体SをX軸方向に1パス分移動させる移動処理を実行する。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+X方向印刷処理及び移動処理を繰り返す。双方向印刷は、片方向印刷と比較して、媒体Sに画像が形成されるまでに要する時間を短縮できる。なお、片方印刷は、-X方向印刷処理を実行するようにしてもよい。つまり、片方印刷は、-X方向印刷処理及び移動処理を繰り返してもよい。
【0026】
また、液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHの噴射面120(
図3参照)を払拭する払拭部材9を有する。払拭部材9は、例えば、ゴム等の弾性材料で形成された板状のブレード、織物、不織布、スポンジ等の多孔質材料などを用いることができる。払拭部材9は、詳しくは後述する液体噴射ヘッドHの噴射面に対して、相対的にX軸方向に沿って移動することで、噴射面をX軸方向に沿って払拭する。液体噴射ヘッドHと払拭部材9とのX軸方向に関する相対移動は、液体噴射ヘッドHを移動するようにしてもよく、払拭部材9を移動するようにしてもよく、両者を移動するようにしてもよい。本実施形態では、払拭部材9は、液体噴射ヘッドHに対して-X方向に向かって相対移動することで、液体噴射ヘッドHの各噴射面120を払拭する。なお、払拭部材9の液体噴射ヘッドHに対する相対移動方向は、X軸方向に限定されず、Y軸方向に沿った方向であってもよく、X軸方向及びY軸方向の両方に対して傾斜した方向であってもよい。つまり、払拭部材9が払拭動作を行う際に液体噴射ヘッドHに対して相対的に移動する方向は、特に限定されない。
【0027】
図3に示すように、払拭部材9は、液体噴射ヘッドHの噴射面に設けられた複数のノズル列Lを共通して払拭する大きさを有する。このため、払拭部材9が液体噴射ヘッドHに対して-X方向に相対移動することで、Y軸方向に並んだ9個の液体噴射ヘッドHの噴射面120を払拭できる。
【0028】
ちなみに、払拭部材9は、ローラーに巻き付けられた織物又は不織布を用いて、噴射面を払拭した後、払拭部材9の使用した部分を巻き取ることで、常に新しい払拭部材9の面で噴射面を払拭する構造であってもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドHの分解斜視図である。
図3は、液体噴射ヘッドHを-Z方向に見た模式図である。
図4は、
図3のA-A′線断面図である。
図5は、ヘッドチップHcのY軸方向に沿った断面図である。
図6は、実施形態1及び変形例1のノズル列Lと噴射される液体との対比を示す表ta1である。
図7は、液体噴射ヘッドHの液体の噴射状態を説明する図である。なお、液体噴射ヘッドHの各方向について、液体噴射装置1に搭載された際に方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に基づいて説明する。
【0030】
図示するように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、流路400を有する流路部材200と、中継基板210と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0031】
流路部材200は、第1流路401が設けられた第1流路部材201と、第2流路402が設けられた第2流路部材202と、第1流路401と第2流路402とを液密な状態で接続するシール部材203と、を具備する。第1流路部材201と、シール部材203と、第2流路部材202とは、この順に+Z方向に積層されている。
【0032】
第1流路部材201は、本実施形態では、3つの部材がZ軸方向に積層されて構成されている。第1流路部材201は、液体が貯留された液体貯留部3に接続される接続部204を有する。本実施形態では、接続部204は、第1流路部材201の-Z方向の面に、-Z方向に筒状に突出して設けられる。この接続部204には、液体貯留部3が直接、接続されるものでもよく、チューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。この接続部204の内部には、液体貯留部3からの液体が供給される第1流路401が設けられている。第1流路401は、Z軸方向に延びる流路や、積層された部材の積層界面に沿って延びる流路等で構成されている。また、第1流路401の途中には、他の域よりも内径が広く拡幅された液体溜まり部401aが設けられており、液体溜まり部401a内には、液体に含まれるゴミや気泡などの異物を捕捉するフィルター401bが設けられている。また、本実施形態では、1つの第1流路部材201は、8個の接続部204と、8個の独立した第1流路401と、を具備する。
【0033】
第2流路部材202は、第1流路401の接続部204とは反対側で分岐された端部のそれぞれに連通する第2流路402を有する。つまり、第2流路402は、本実施形態では、8個設けられている。第1流路401と第2流路402とは、シール部材203を介して液密に接続されている。シール部材203は、液体噴射ヘッドHに用いられる液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。このようなシール部材203には、Z軸方向に貫通する接続流路403が設けられており、第1流路401と第2流路402とは、接続流路403を介して連通する。つまり、流路部材200の流路400は、第1流路401と第2流路402と接続流路403とを具備する。
【0034】
また、第2流路部材202の+Z方向を向く面に、複数のヘッドチップHcが保持されている。具体的には、第2流路部材202は、+Z方向を向く面に開口する凹形状を有する収容部208を有し、この収容部208内にヘッドチップHcが収容される。本実施形態の液体噴射ヘッドHには、複数、本実施形態では、一例として4個のヘッドチップHcが保持されている。また、本実施形態では、4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。本実施形態では、Y軸方向に並設された4個のヘッドチップHcを+Y方向に向かって順番にヘッドチップHc1、ヘッドチップHc2、ヘッドチップHc3、ヘッドチップHc4と称する。以降、ヘッドチップHc1~Hc4を区別しない場合には、ヘッドチップHcと称する。
【0035】
なお、本実施形態では、全てのヘッドチップHcに共通して1個の収容部208を設ける構成を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、収容部208は、ヘッドチップHc毎に独立して設けるようにしてもよく、2個以上の複数個のヘッドチップHcの群毎に独立して設けるようにしてもよい。ただし、収容部208を複数のヘッドチップHcに共通して設けることで、2つのヘッドチップHcの間に壁が存在せず、液体噴射ヘッドHをY軸方向に小型化できる。
【0036】
このようなヘッドチップHcの各導入口44に第2流路402が連通する。
【0037】
また、第2流路部材202には、各ヘッドチップHcの配線部材110を挿通するための配線挿通孔205が設けられている。本実施形態では、各ヘッドチップHcに対して1個の配線挿通孔205が設けられている。つまり、本実施形態では、4個のヘッドチップHcに対して合計4個の配線挿通孔205が設けられている。ヘッドチップHcの配線部材110は、配線挿通孔205を介して第2流路部材202の-Z方向を向く面側に導出される。
【0038】
また、Z軸方向において、第2流路部材202とシール部材203との間には、複数のヘッドチップHcの配線部材110が共通して接続される中継基板210が設けられている。中継基板210は、柔軟性のない硬質のリジット基板からなり、不図示の配線や電子部品等が実装されたものである。本実施形態では、電子部品として、液体噴射ヘッドHの外部に設けられる不図示の外部配線が接続されるコネクター211を図示している。そして、ヘッドチップHcを制御するための印刷信号等は、外部配線からコネクター211を介して中継基板210に入力され、中継基板210から各ヘッドチップHcに供給される。なお、流路部材200のコネクター211に対向する側壁には、コネクター211に接続される外部配線を挿通するための外部配線用開口部206が設けられている。外部配線は、外部配線用開口部206を介して流路部材200の内部に設けられた中継基板210のコネクター211に接続される。
【0039】
中継基板210には、ヘッドチップHcの配線部材110を-Z方向を向く面側に導出するための配線挿通孔212が設けられている。配線挿通孔212は、各ヘッドチップHcに対して1個、合計4個設けられている。
【0040】
また、中継基板210には、Z軸方向に貫通して設けられた突起部挿通孔213が設けられている。第2流路部材202の-Z方向を向く面には、内部に第2流路402が設けられた突起部207が-Z方向に向かって突出して設けられており、突起部207は、突起部挿通孔213を介して中継基板210の-Z方向側に挿通されて、接続流路403と接続される。
【0041】
また、流路部材200の+Z方向を向く面には、カバーヘッド220が固定されている。カバーヘッド220によってヘッドチップHcを収容する収容部208の空間が画定される。カバーヘッド220は、本実施形態では、4個のヘッドチップHcを覆う大きさを有する。カバーヘッド220は、4個のヘッドチップHcの+Z方向を向く面に固定される共通の部材である。また、カバーヘッド220には、ヘッドチップHcのノズル21を+Z方向に向かって露出する露出開口部221がヘッドチップHc毎に独立して設けられている。露出開口部221から露出されたノズル21からインクが+Z方向に向かって噴射される。
【0042】
ヘッドチップHcは、
図5に示すように、複数のノズル21が形成された1つのノズルプレート20と、流路形成基板10と、連通板15と、保護基板30と、ケース部材40と、圧電アクチュエーター300と、配線部材110と、を具備する。
【0043】
流路形成基板10は、例えば、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。流路形成基板10には、複数の圧力室12がX軸方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に沿った直線上に配置されている。X軸方向で互いに隣り合う2つの圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。また、本実施形態では、圧力室12がX軸方向に沿って並設された圧力室列が、Y軸方向に2列設けられている。これら2列の圧力室列は、X軸方向において互いに圧力室12のピッチの半分、所謂半ピッチずれて配置される。つまり、2列の圧力室列の全ての圧力室12は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。
【0044】
流路形成基板10の+Z方向を向く面には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。流路形成基板10の-Z方向を向く面には、振動板50と圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。
【0045】
連通板15は、流路形成基板10の+Z方向を向く面に接合された板状部材からなる。連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向を向く面に開口して設けられている。さらに、連通板15には、圧力室12に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。
【0046】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向を向く面に接合されている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、X軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。また、本実施形態では、ノズル21がX軸方向に沿って並設されたノズル列Lが、Y軸方向に離れて2列設けられている。本実施形態では、2列のノズル列Lを+Y方向に順番にノズル列La、ノズル列Lbと称する。以降、ノズル列La、Lbを区別しない場合には、ノズル列Lと称する。このノズル列La、Lbは、X軸方向において、互いにノズル21のピッチの半分、所謂、半ピッチずれて配置される。つまり、ノズル列La、Lbの全てのノズル21は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。また、本実施形態では、
図5に示すように、ノズル列Laが、ノズル列Lbよりも-X方向に位置する。つまり、ノズル列Laの-X方向の端部のノズル21は、ノズル列Lbの-X方向の端部のノズル21よりも-X方向に位置する。
【0047】
このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。ノズルプレート20の+Z方向を向く面が液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部を構成する。
【0048】
振動板50は、本実施形態では、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51の-Z方向を向く面上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を有する。なお、振動板50は、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁体膜52のみで構成されていてもよく、弾性膜51と絶縁体膜52とに加えて他の膜を有する構成であってもよい。
【0049】
圧電アクチュエーター300は、振動板50上に-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、圧力室12毎に活性部310が形成されている。この複数の活性部310が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる「駆動素子」となっている。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60は、活性部310毎に切り分けられて活性部310の個別電極を構成し、第2電極80が複数の活性部310に亘って連続して設けられて複数の活性部310の共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。
【0050】
圧電体層70は、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。
【0051】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。また、第2電極80からは不図示の引き出し配線である共通リード電極が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル基板からなる配線部材110が接続されている。配線部材110は、活性部310の夫々を駆動させるための駆動信号COMを各活性部310に供給するか否かを選択する複数のスイッチング素子を有する駆動信号選択回路111が実装されている。つまり、本実施形態における配線部材110は、COF(Chip On Film)である。なお、配線部材110には、駆動信号選択回路111を設けなくてもよい。つまり、配線部材110は、FFC(Flexible Flat Cable)、FPC(Flexible Printed Circuits)等であってもよい。
【0052】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である収容部31を有する。収容部31は、X軸方向に並んで配置される圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、Y軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y軸方向に並んで配置される2つの収容部31の間にZ軸方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極(不図示)の端部は、この貫通孔32内に露出するように延在し、個別リード電極91及び共通リード電極と配線部材110とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。このような保護基板30としては、例えば、流路形成基板10と同様にシリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。
【0053】
また、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画定するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。また、ケース部材40には、連通板15の第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、ノズル列La、Lb毎に、つまり、合計2個設けられている。このため、ノズル列La、Lbからは異なる液体を噴射することができる。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線部材110が挿通される接続口43が設けられており、配線部材110は、接続口43を介して液体噴射ヘッドHの-Z方向を向く面側に導出される。ケース部材40としては、金属材料、樹脂材料などを用いることができる。
【0054】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。固定基板47の+Z方向を向く面がカバーヘッド220の-Z方向を向く面に接着剤等で固定されることで、ヘッドチップHcは、カバーヘッド220に固定されている。上述したように、カバーヘッド220は、複数、本実施形態では、4個のヘッドチップHcの固定基板47のそれぞれに固定される共通の部材である。このため、カバーヘッド220によって4個のヘッドチップHcは一体化されている。このようなカバーヘッド220の+Z方向を向く面は、噴射面120の一部を構成する。
【0055】
このようなヘッドチップHcでは、液体を導入口44から取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動信号選択回路111からの信号に従い、圧力室12に対応する各活性部310に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力室12内の液体の圧力が高まり所定のノズル21から液滴が噴射される。
【0056】
本実施形態の液体噴射装置1の電気的構成について
図8を参照して説明する。
図8は、液体噴射装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【0057】
図8に示すように、液体噴射装置は本実施形態の制御部である制御ユニット4と、プリントエンジン510と、を備えている。
【0058】
制御ユニット4は、液体噴射装置1の全体の制御をする要素である。また、制御ユニット4は、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等を含んで構成した制御処理部501と半導体メモリー等の記憶部502と駆動信号生成部503と外部I/F(interface)504と内部I/F505とを有する。媒体Sに印刷される画像を示す印刷ジョブのデータがホストコンピューターなどの外部装置520から外部I/F504に送信され、内部I/F505にはプリントエンジン510が接続される。プリントエンジン510は、制御ユニット4による制御のもとで媒体Sに画像を記録する要素であり、液体噴射ヘッドH、搬送機構5、移動機構6を有する。
【0059】
記憶部502は、制御プログラム等を記録するROMと、画像の印刷に必要な各種のデータを一時的に記録するRAMとを含む。制御処理部501は、記憶部502に記録された制御プログラムを実行することにより液体噴射装置1の各要素を統括的に制御する。また、制御処理部501は、外部装置から外部I/F504に送信される印刷データを、液体噴射ヘッドHの各ノズル21からの液体の噴射/非噴射を活性部310に指示するヘッド制御信号、例えば、クロック信号CLK、ラッチ信号LAT、チェンジ信号CH、画素データSI、設定データSP等に変換し、内部I/F505を介して液体噴射ヘッドHに送信する。また、駆動信号生成部503は、駆動信号COMを生成し内部I/F505を介して液体噴射ヘッドHに送信する。すなわち、ヘッド制御データや駆動信号COM等の噴射データは、送信部である内部I/F505を介して液体噴射ヘッドHに送信される。
【0060】
制御ユニット4からヘッド制御信号及び駆動信号COM等の噴射データが供給された液体噴射ヘッドHは、ヘッド制御信号及び駆動信号COMから駆動パルスを生成し、駆動パルスを活性部310に印加する。すなわち、駆動パルスとは、活性部310に印加する印加パルスのことである。
【0061】
さらに、制御ユニット4は、外部装置520から外部I/F504を介して受信した印刷データから搬送機構5及び移動機構6の移動制御信号を生成し、内部I/F505を介して搬送機構5及び移動機構6に送信し、搬送機構5及び移動機構6の制御を行う。
【0062】
液体噴射ヘッドHは、
図3に示すように、複数のヘッドチップHc、本実施形態では、4個のヘッドチップHcを有する。4個のヘッドチップHcは、上述したようにX軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に沿って並設されており、4個のヘッドチップHcを+Y方向に順番にヘッドチップHc1~Hc4と称している。このため、本実施形態では、ヘッドチップHc1のノズル列La、Lbをノズル列L1a、L1bと称し、ヘッドチップHc2のノズル列La、Lbをノズル列L2a、L2bと称する。同様に、ヘッドチップHc3のノズル列La、Lbをノズル列L3a、L3bと称し、ヘッドチップHc4のノズル列La、Lbをノズル列L4a、L4bと称する。つまり、
図3に示すように、液体噴射ヘッドHには、+Y方向に向かって順番にノズル列L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bの8列が並んで配置される。なお、ノズル列LがY軸方向に並んで配置されるとは、Y軸方向で隣り合う2つのノズル列Lにおいて、各ノズル列Lが設けられたX軸に沿う領域が、Y軸方向に見て少なくとも一部が重なっているなっていることを言う。ノズル列Lが設けられたX軸に沿う領域とは、X軸に沿って並ぶ複数のノズル21のうち+X方向の端部のノズル21から-X方向の端部のノズル21までの領域のことである。このため、Y軸方向で隣り合う2つのノズル列Lのうち、一方のノズル列Lのノズル21の一部が他方のノズル列Lの領域にY軸方向に見て重なっていないものも含む。
【0063】
図6の表ta1に示すように、ノズル列L1a、L1bは反応液を噴射する。また、ノズル列L4a、L4bは、反応液に反応して凝集する被反応液として処理液を噴射する。そして、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは、反応液を中和する中和液を噴射する。つまり、中和液を噴射するノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは、ノズル列L1a、L1bと、ノズル列L4a、L4bとの間に配置される。
【0064】
ここで、3つのノズル列Lを、ノズル列L1、L2、L3としたとき、ノズル列L3がノズル列L1とノズル列L2との間に配置されるとは、2つのノズル列L1とノズル列L2とに挟まれた領域にノズル列L3が配置されていることを言う。なお、ノズル列L1とノズル列L2とに挟まれた領域にノズル列L3が配置されているとは、この領域にノズル列L3のすくなくとも一部が配置されていることを含む。もちろん、ノズル列L3は、ノズル列L1とノズル列L2とに挟まれた領域に完全に一致するように配置されていることが好ましい。
【0065】
このようにノズル列L1a、L1bとノズル列L4a、L4bとの間に配置されるノズル列L2a、L2b、L3a、L3bから中和液を噴射することで、
図7に示すように、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bから+Z方向に向かって気流を生じさせることができる。この気流によって、ノズル列L1a、L1bから反応液を噴射することで発生した反応液のミストが、ノズル列L4a、L4bに向かって移動するのを抑制することができる。したがって、反応液のミストが、ノズル列L4a、L4b及びその周辺に付着するのを抑制し、ノズル列L4a、L4b及びその周辺で処理液と反応液が反応することにより凝集体が形成されるのを抑制して、凝集体によるノズル列L4a、L4bの目詰まり及び反応液の飛翔方向のずれ等の噴射不良を抑制することができる。同様に、中和液を噴射することで生じた気流によって、ノズル列L4a、L4bから処理液を噴射することで発生した処理液のミストが、ノズル列L1a、L1bに向かって移動するのを抑制することができる。したがって、処理液のミストが、ノズル列L1a、L1b及びその周辺に付着するのを抑制し、ノズル列L1a、L1b及びその周辺で処理液と反応液が反応することにより凝集体が形成されるのを抑制して、凝集体によるノズル列L1a、L1bの目詰まり及び処理液の飛翔方向のずれ等の噴射不良を抑制することができる。
【0066】
また、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは中和液を噴射するため、中和液を噴射することで発生した中和液のミストが、ノズル列L1a、ノズル列L1b、ノズル列L4a、ノズル列L4bに直接、または、反応液のミストと合わさった状態で付着してしまう場合もある。しかしながら、中和液は反応液を中和するため、中和液や反応液と中和液との混合液がノズル列L1a、ノズル列L1b、ノズル列L4a、ノズル列L4bに付着しても凝集体が形成されずに噴射不良が発生し難い。
【0067】
このようなノズル列L2a、L2b、L3a、L3bからの中和液の噴射は、ノズル列L1a、L1bから反応液を噴射している間、及び、ノズル列L4a、L4bから処理液を噴射している間の少なくとも一方の間に行うように制御ユニット4は制御する。つまり、制御ユニット4は、反応液及び処理液の少なくとも一方が噴射している間に、中和液を噴射するように制御することで、中和液による気流を生じさせて、ノズル列L1a、L1b及びノズル列L4a、L4bの噴射不良を抑制することができる。また、印刷ジョブを実行している間に、ノズル列La1、L2aから反応液が噴射されない期間や、ノズル列L4a、L4bから処理液が噴射されない期間が存在するが、印刷ジョブを実行している間は、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは常に中和液を噴射してもよい。これにより、印刷ジョブを実行している間は、常に中和液の噴射による気流を生じさせて、ノズル列L1a、L1b、ノズル列L4a、L4bの噴射不良を確実に抑制できる。ただし印刷ジョブを実行している間に、常に中和液を噴射することで、中和液の消費量が多くなるため、中和液の噴射は、反応液及び処理液の少なくとも一方が噴射している間に行うことが好ましい。これにより、中和液の消費量を低減してノズル列L1a、L1b、ノズル列L4a、L4bの噴射不良を抑制することができる。
【0068】
また、1つの印刷ジョブにおいて、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bから中和液を噴射することで発生するミスト発生量は、ノズル列L1a、L1bから反応液を噴射することで発生するミスト発生量、及び、ノズル列L4a、L4bから処理液を噴射することで発生するミスト発生量よりも多いことが好ましい。ここで印刷ジョブとは、外部装置520から入力されたデータに基づいて印刷を行うことであり、ここで印刷ジョブとは、液体噴射装置1に出された印刷命令のことであり、複数枚綴りの印刷物を連続印刷する毎の仕事数を言う。例えば、10枚綴りの文書を1回でプリントアウトする場合には、印刷物の印刷枚数は10枚であるが、ジョブ数は1回ということになる。また、ミスト発生量の測定は、例えば、液体噴射ヘッドHの近くに測定シートを配置し、1つの印刷ジョブを実行した際に発生した各液体のミストが測定シートに付着した際に、各液体のミストのそれぞれが測定シートを覆った面積を測定することで行うことができる。測定シートをミストが覆った面積が大きければミスト発生量が多く、測定シートをミストが覆った面積が小さければミスト発生量が小さい。なお、測定シートをミストが覆った面積は、例えば、画像処理等によって測定できる。
【0069】
このように、中和液のミスト発生量を、反応液のミスト発生量、及び、処理液のミスト発生量よりも多くすることで、中和液が媒体Sに着弾する量を低減して、中和液が媒体Sに着弾することで反応液と処理液等との凝集不良が生じるなどの悪影響を低減できる。
【0070】
また、一般的に1つのノズル21から噴射される液滴重量が小さければ、ミストが発生し易い。このため、1つのノズル21から噴射される中和液の液滴重量が、反応液及び処理液の液滴重量よりも小さいことが好ましい。このように中和液の液滴重量を、反応液及び処理液の液滴重量よりも小さくすることで、中和液のミストを発生し易くできる。したがって、上記のように中和液のミスト発生量を、反応液のミスト発生量、及び、処理液のミスト発生量よりも容易に多くすることができる。
【0071】
また、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bは、中和液を霧状に噴射、所謂、噴霧するのが好ましい。ここで、中和液の噴霧は、例えば、制御ユニット4が、中和液を噴射するノズル列L2a、L2b、L3a、L3bに対応する活性部310に供給する駆動信号COMを中和液が霧状に噴射されるように調整することで行うことができる。このような駆動信号COMの調整は、例えば、活性部310に印加する電圧を通常の液体を噴射する際に印加する電圧よりも小さくすることや、比較的早くにメニスカスが引きちぎられるように駆動信号COMを示す駆動波形の形状を変更することで行うことができる。また、中和液を噴霧するには、例えば、中和液の粘度を調整することで行うことができる。例えば、中和液の粘度を反応液等に比べて低くすることで、同じ駆動信号COMで活性部310を駆動しても反応液等に比べて中和液を噴霧し易くできる。
【0072】
なお、中和液の噴霧は、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bから噴射された中和液の容積又は重量の割合が、中和液がミスト化した分が、媒体Sに着弾した分よりも大きいことが好ましい。中和液がミスト化した分は、噴射面120に付着した分として算出することができ、媒体Sに着弾した分は、例えば、噴射面120に対向する位置に配置した容器内に中和液を噴射させることで算出することができる。
【0073】
また、中和液の噴霧は、媒体Sに中和液が着弾しないようにするのがより好ましい。つまり、中和液は、液滴として飛翔して媒体Sに着弾せずに、全てが霧状に噴射されるのがより好ましい。このように、中和液が媒体Sに着弾する量を低減することで、中和液が媒体Sに着弾することで反応液と処理液等との凝集不良が生じるなどの悪影響を低減できる。もちろん、少量であれば中和液が媒体Sに着弾しても、中和液として無色透明のものを用いることで反応液等に悪影響を及ぼすものではない。
【0074】
また、本実施形態では、ノズル列L1a、L1bとノズル列L4a、L4bとから噴射されるミストによる噴射不良を抑制することができるため、ノズル列L1a、L1bとノズル列L4a、L4Bとを比較的近接して配置することができる。特に、本実施形態では、ノズル列L1a~L4bは、同じ液体噴射ヘッドHに設けられる。このため、液体噴射ヘッドHをノズル列Lの並び方向であるY軸方向に小型化して、液体噴射装置1をY軸方向に小型化できる。
【0075】
また、払拭部材9は、本実施形態では、1回の払拭動作で噴射面120の全ての領域を払拭する。つまり、払拭部材9は、1回の払拭動作で、8列のノズル列Lの全てを同時に払拭する。ここで、払拭動作の回数とは、払拭部材9が液体噴射ヘッドHに対して特定の方向に1回往復移動することを言う。このように、払拭部材9は、1回の払拭動作で全てのノズル列Lを同時に払拭することで、払拭動作に必要な時間を短縮することができる。また、払拭部材9を複数設ける必要がなく、コストを低減することができる。また、払拭部材9が、反応液を噴射するノズル列L1a、L1b、処理液を噴射するノズル列L4a、L4bを同時に払拭しても、中和液を噴射するノズル列L2a、L2b、L3a、L3bを同時に払拭することで、払拭部材9に付着した状態及び噴射面120上において反応液と処理液とが中和液を介して混ざり合うため、反応液と処理液とが反応して凝集体が形成されるのを抑制することができる。したがって、凝集体を払拭部材9でノズル21に刷り込むのを抑制して、ノズル21の噴射不良を抑制することができる。
【0076】
なお、払拭部材9は、噴射面120を払拭する際に、反応液と中和液と処理液とを同時に払拭して反応液と処理液との反応による凝集を抑制することができるため、払拭部材9の液体噴射ヘッドHに対する相対移動方向は、Y軸方向に沿った方向であってもよい。
【0077】
本実施形態では、ノズル列L4a、L4bの何れかが「第1ノズル列」に相当し、処理液が「被反応液」に相当する。また、ノズル列L4a、L4bの何れかが「第2ノズル列」に相当する。また、ノズル列L2a、L2b、L3a、L3bの何れかが「第3ノズル列」に相当する。
【0078】
(変形例1)
実施形態1の8列のノズル列L1a~L4bからは、上述した実施形態1とは異なる液体を噴射するようにしてもよい。
【0079】
図6の表ta1に示すように、変形例1では、ノズル列L1a、L1bは処理液を噴射する。また、ノズル列L3a、ノズル列L3b、ノズル列L4a、ノズル列L4bは、それぞれブラックインク、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクを噴射する。そして、ノズル列L2a、ノズル列L2bは中和液を噴射する。このような構成であっても、ノズル列L1a、L1bとノズル列L3a~L4bとの間のノズル列L2a、L2bから中和液を噴射することで、両者の間に気流を発生させて、処理液を噴射することで発生したミストが、ノズル列L3a~L4b及びその近傍に付着するのを抑制できる。また、ノズル列L3aからL4bから噴射したインクが、ノズル列L1a、L1b及びその近傍に付着するのを抑制することができる。また、中和液を噴射することで発生したミストが、反応液のミストと合わさって噴射面120に付着しても、凝集するのを抑制することができる。したがって、ノズル列L1a、L1b、L3a、L3b、L4a、L4bに液体の噴射不良が発生するのを抑制することができる。したがって、ノズル列L1a、L1bと、ノズル列L3a~L4bと、をY軸方向に近接して設けることができ、液体噴射ヘッドHをY軸方向に小型化して、液体噴射装置1をY軸方向に小型化できる。
【0080】
本変形例では、ノズル列L3a、L3b、L4a、L4bの何れかが「第1ノズル列」に相当し、色材を含むインクが「被反応液」に相当する。また、ノズル列L1a、L1bの何れかが「第2ノズル列」に相当する。また、ノズル列L2a、L2bの何れかが「第3ノズル列」に相当する。
【0081】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態及び変形例を説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0082】
上述した実施形態1及び変形例1では、反応液と反応して凝集する被反応液として、処理液及び色材を含むインクを例示したが、特にこれに限定されず、被反応液は、オーバーコート液等の後処理液であってもよい。
【0083】
また、例えば、上述した実施形態1及び変形例1では、複数のヘッドチップHcのそれぞれのノズルプレート20にノズル列La1、L1bと、ノズル列L2a、L2bと、ノズル列L3a、L3bと、ノズル列L4a、L4bと、を設けた構成を例示したが、特にこれに限定されない。ここで、ノズルプレート20の一例を
図9に示す。
図9は、ノズルプレートを-Z方向に見た平面図である。
【0084】
図9に示すように、1枚のノズルプレート20に8列のノズル列Lが設けられている。8列のノズル列Lは、X軸方向に関して同じ位置で、Y軸方向に並んで配置される。本実施形態では、8列のノズル列Lを+Y方向に順番にノズル列L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bと称する。ノズル列L1a~L4bからは、上述した実施形態1又は変形例1と同様の液体が噴射される。つまり、液体噴射ヘッドHは、8列のノズル列Lが共に形成されたノズルプレート20を有する構成となっている。
【0085】
このような構成であっても上述した実施形態1及び変形例1と同様の効果を奏する。特に、
図9に示す例では、8列のノズル列Lが、共通するノズルプレート20に配置されているため、反応液を噴射するノズル列Lと被反応液を噴射するノズル列Lとをさらに近接させることができる。したがって、共通するノズルプレート20を用いることで、液体噴射ヘッドHをY軸方向にさらに小型化して、液体噴射装置1をY軸方向にさらに小型化できる。
【0086】
また、上述した実施形態1及び変形例1では、液体噴射装置1として、液体噴射ヘッドHがY軸方向に沿って移動するシリアル式プリンターを例示したが、特にこれに限定されない。
図10は、他の実施形態に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
【0087】
図10に示すように、液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHを固定し、媒体SをX軸方向に沿って移動させるだけで印刷を行う、所謂、ライン式プリンターである。
【0088】
具体的には、液体噴射装置1は、複数、
図10に示す例では3個の液体噴射ヘッドHを具備する。3個の液体噴射ヘッドHは、Y軸方向に関して同じ位置で、X軸方向に並んで配置される。本実施形態では、3個の液体噴射ヘッドHを+X方向に順番に液体噴射ヘッドH1、H2、H3と称する。以降、液体噴射ヘッドH1~H3を区別しない場合には、液体噴射ヘッドHと称する。また、液体噴射ヘッドHの各々には、Y軸方向に沿ってノズル21が並んで配置されたノズル列Lが設けられている。ノズル列Lは、媒体SのY軸方向の幅に亘って設けられている。本実施形態では、液体噴射ヘッドH1、H2、H3のそれぞれのノズル列Lをノズル列L1、L2、L3と称する。つまり、ノズル列L1、L2、L3は、Y軸方向に関して同じ位置で、+X方向に向かってこの順番に並んで配置されている。
【0089】
また、液体噴射装置1には、上述した実施形態1の移動機構6が設けられていなく、3個の液体噴射ヘッドHは、印刷中には、Y軸方向に沿って移動しないようになっている。
【0090】
このような液体噴射装置1では、ノズル列L1は、反応液を噴射し、ノズル列L2は中和液を噴射し、ノズル列L3は、反応液に反応して凝集する被反応液、例えば、色材を含むインク、処理液、後処理液などを噴射する。つまり、中和液を噴射するノズル列L2は、反応液を噴射するノズル列L1と、被反応液を噴射するノズル列L3との間に配置されている。
【0091】
このようにノズル列L2をノズル列L1とノズル列L3との間に配置することで、上述した実施形態1と同様に、ノズル列L1、L3の噴射不良を抑制することができる。したがって、液体噴射ヘッドH1、H2、H3をX軸方向に関して近接して配置することができ、液体噴射装置1をX軸方向に小型化することができる。
【0092】
なお、
図10に示す例では、ノズル列L3が「第1ノズル列」に相当し、ノズル列L1が「第2ノズル列」に相当し、ノズル列L2が「第3ノズル列」に相当する。
【0093】
また、
図10では、液体噴射ヘッドHのそれぞれに1列のノズル列Lを設けた構成を例示したが、各液体噴射ヘッドHに設けられるノズル列Lの数は1列に限定されず、2列以上の複数列であってもよい。
【0094】
また、
図10では、3個の液体噴射ヘッドHのそれぞれにノズル列Lを設ける構成を例示したが、特にこれに限定されず、上述した実施形態1及び変形例1と同様に、1個の液体噴射ヘッドHにノズル列L1~L3を設けるようにしてもよい。ライン式プリンターである液体噴射装置1に用いる液体噴射ヘッドHに、複数列のノズル列Lを設けることで、さらに液体噴射装置1をX軸方向に小型化できる。
【0095】
また、上述した実施形態1及び変形例1では、圧力室12内の液体に圧力変化を生じさせる駆動素子として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されない。その他の駆動素子としては、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、その他の駆動素子としては、圧力室12内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル21から液体を噴射するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル21から液体を噴射させる、所謂、静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0096】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものである。その他の液体噴射装置に用いられる液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられる。
【0097】
(付記)
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0098】
好適な態様である態様1に係る液体噴射装置は、被反応液を噴射する第1ノズル列と、前記被反応液を凝集させる反応液を噴射する第2ノズル列と、前記反応液を中和する中和液を噴射する第3ノズル列と、を備え、前記第3ノズル列は、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との間に配置される。これにより、第3ノズル列から中和液を噴射することで、噴射方向に向かって気流を発生させて、第1ノズル列から噴射した被反応液のミストが第2ノズル列に付着するのを抑制すると共に、第2ノズル列から噴射した反応液のミストが第1ノズル列に付着するのを抑制することができる。したがって、第1ノズル列及び第2ノズル列において反応液と被反応液とが反応して凝集体が形成されるのを抑制することができる。また、反応液のミストが中和液のミストと合わさって中和されるため、たとえ反応液のミストが第1ノズル列に付着しても、反応液と被反応液とが反応し難く凝集体が形成され難い。このため、第1ノズル列及び第2ノズル列の凝集体によるノズルの目詰まりや飛翔方向のずれなどの噴射不良が発生するのを抑制することができる。さらに、第1ノズル列及び第2ノズル列の噴射不良を抑制することができるため、第1ノズル列及び第2ノズル列を近接して設けることができ、液体噴射装置を小型化できる。
【0099】
態様1の具体例である態様2において、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列は、同じ液体噴射ヘッドに設けられる。これによれば、液体噴射ヘッドの数を低減して液体噴射ヘッドを小型化し、液体噴射装置を小型化できる。
【0100】
態様2の具体例である態様3において、前記液体噴射ヘッドは、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列が共に形成されたノズルプレートを有する。これによれば、液体噴射ヘッドの数を低減して液体噴射ヘッドを小型化し、液体噴射装置を小型化できる。
【0101】
態様2の具体例である態様4において、前記液体噴射ヘッドは、前記第1ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、前記第2ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、前記第3ノズル列が形成されたノズルプレートを含むヘッドチップと、を有する。これによれば、液体噴射ヘッドの数を低減して液体噴射ヘッドを小型化し、液体噴射装置を小型化できる。
【0102】
態様1の具体例である態様5において、前記第1ノズル列から前記被反応液を噴射している間、及び、前記第2ノズル列から前記反応液を噴射している間の少なくとも一方の間に、前記第3ノズル列から前記中和液を噴射する制御部を有する。これによれば、反応液ミストが発生する間、及び、被反応液ミストが発生する間の少なくとも一方の期間において、中和液ミストを発生させることができる。したがって、常に中和液による気流が形成されるので、第1ノズル列及び第2ノズル列の噴射不良を抑制することができる。
【0103】
態様5の具体例である態様6において、1つの印刷ジョブにおいて、前記第3ノズル列から発生する前記中和液のミスト発生量は、前記第2ノズル列から発生する前記反応液のミスト発生量、及び、前記第1ノズル列から発生する前記被反応液のミスト発生量よりも多い。これによれば、媒体に着弾する中和液の量を低減して、中和液が媒体Sに着弾することで反応液と被反応液との反応不良による凝集不良が生じるなどの悪影響を低減できる。
【0104】
態様5の具体例である態様7において、前記第3ノズル列から前記中和液を噴霧する。これによれば、媒体に着弾する中和液の量を低減して、中和液が媒体Sに着弾することで反応液と被反応液との反応不良による凝集不良が生じるなどの悪影響を低減できる。
【0105】
態様1の具体例である態様8において、前記第1ノズル列から噴射される前記被反応液は、前記反応液によって凝集する色材を含むインクである。
【0106】
態様1の具体例である態様9において、前記第1ノズル列、前記第2ノズル列及び前記第3ノズル列を1回の払拭動作で同時に払拭する払拭部材を具備する。これによれば、払拭部材によって払拭しても、中和液があることで、払拭部材上及び噴射面上で反応液と被反応液との反応を抑制し、凝集体が形成されるのを抑制することができる。また、噴射部材の数を減らしてコストを低減することができる。
【0107】
態様1の具体例である態様10において、前記中和液は、前記反応液に含まれる有機酸を中和する。
【符号の説明】
【0108】
H、H1~H3…液体噴射ヘッド、Hc、Hc1~Hc4…ヘッドチップ、L、L1~L3、La1~L4b…ノズル列、S…媒体、1…液体噴射装置、3…液体貯留部、4…制御ユニット、5…搬送機構、5a…搬送ローラー、6…移動機構、7…保持体、8…搬送ベルト、9…払拭部材、10…流路形成基板、12…圧力室、20…ノズルプレート、21…ノズル、30…保護基板、40…ケース部材、45…コンプライアンス基板、50…振動板、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、100…マニホールド、110…配線部材、111…駆動信号選択回路、120…噴射面、200…流路部材、201…第1流路部材、202…第2流路部材、203…シール部材、208…収容部、210…中継基板、220…カバーヘッド、300…圧電アクチュエーター、310…活性部、400…流路、501…制御処理部、502…記憶部、503…駆動信号生成部、504…外部I/F、505…内部I/F、510…プリントエンジン、520…外部装置。