(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163507
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ヘッドユニット及び液体噴射装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 123
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079195
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小林 航海
(72)【発明者】
【氏名】森山 恵多
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA23
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA07
2C056HA22
2C056HA37
2C056HA42
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】ミストによるノズル詰まり対策のため、反応液のみを噴射する反応液専用の液体噴射ヘッドを用意する必要があり、液体噴射ヘッドの数が増加してヘッドユニットが大型化してしまう。
【解決手段】液体噴射ヘッドH1及び液体噴射ヘッドH2の夫々は、複数のヘッドチップHcを有し、+Y方向の端に配置されたノズル列L1aと、-Y方向の端に配置されたノズル列L4bとの間隔は第1間隔D1であり、ノズル列L4bと、ノズル列L5aとの第2間隔D2は、第1間隔D1よりも長く、液体噴射ヘッドH1は、第1液体を噴射するノズル列Lを有する複数のヘッドチップHc1~Hc4を有し、液体噴射ヘッドH2は、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bを有するヘッドチップHc8及び処理液を噴射するノズル列L5a、L5bを有するヘッドチップHc5を有する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液体と、前記第1液体を凝集させる反応液と、前記第1液体に比べて前記反応液に対して凝集しにくい処理液と、を噴射するヘッドユニットであって、
前記ヘッドユニットは、第1方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドを備え、
前記複数の液体噴射ヘッドの夫々は、1以上のノズル列を有する複数のヘッドチップを有し、
前記液体噴射ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち、前記第1方向の端に配置されたノズル列と、前記第1方向とは反対の第2方向の端に配置されたノズル列との前記第1方向に関する間隔は、第1間隔であり、
前記複数の液体噴射ヘッドは、互いに隣り合う第1ヘッド及び第2ヘッドを含み、
前記第1ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第2ヘッドに近いノズル列と、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第1ヘッドに近いノズル列との前記第1方向に関する第2間隔は、前記第1間隔よりも長く、
前記第1ヘッドは、前記第1液体を噴射する1以上の第1ノズル列を有する複数の第1ヘッドチップを有し、
前記第2ヘッドは、前記反応液を噴射する1以上の第2ノズル列を有する1以上の第2ヘッドチップ及び前記処理液を噴射する1以上の第3ノズル列を有する1以上の第3ヘッドチップを有する、
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記第1ヘッドは、前記第2ヘッドに対して前記第1方向に配置され、
前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップに対して前記第2方向に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記第2ヘッドは、前記複数の液体噴射ヘッドのうち、前記第2方向の端に配置された液体噴射ヘッドである、
ことを特徴とする請求項2に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち、前記第2方向の端に配置されたヘッドチップであり、
前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち、前記第1方向の端に配置されたヘッドチップである、
ことを特徴とする請求項3に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記ヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち、隣り合うノズル列同士の前記第1方向に関する間隔は、第3間隔であり、
前記液体噴射ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち隣り合う2つのヘッドチップにおいて、一方のヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も他方のヘッドチップに近いノズル列と、前記他方のヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記一方のヘッドチップに近いノズル列との前記第1方向に関する間隔は、第4間隔であり、
前記第4間隔は、前記第3間隔よりも長く、
前記第2ヘッドの前記第2ノズル列と前記第2ヘッドの前記第3ノズル列とは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち同じヘッドチップに配置されない、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記第2ヘッドの前記第2ノズル列と前記第2ヘッドの前記第3ノズル列との前記第1方向に関する最短の第5間隔は、前記第4間隔よりも長い、
ことを特徴とする請求項5に記載のヘッドユニット。
【請求項7】
前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップは、前記第1方向に関して前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップと前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップとの間に配置された液体を噴射しないダミーヘッドチップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項8】
前記複数の液体噴射ヘッドは、複数の前記第1ヘッドチップを有する第3ヘッドを含み、
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドと前記第3ヘッドとの間に配置され、
前記第1ヘッドに含まれる複数の前記第1ノズル列と、前記第3ヘッドに含まれる複数の前記第1ノズル列とは、前記第1方向に直交する対称軸に対して線対称に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項9】
前記第2ヘッドに含まれる複数の前記第2ノズル列と、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記第3ノズル列とは、前記対称軸に対して線対称に配置され、
前記第2ヘッドに含まれる前記複数の第2ノズル列は、前記第2ヘッドに含まれる前記複数の第3ノズル列の間に配置される、
ことを特徴とする請求項8に記載のヘッドユニット。
【請求項10】
前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドチップを含まない、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項11】
前記第2間隔は、前記液体噴射ヘッドの前記第1方向に関する寸法よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項12】
前記処理液は、柔軟剤を含む液体である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項13】
請求項1~12の何れか一項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットを前記第1方向及び前記第2方向に往復移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする液体噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を噴射するヘッドユニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、媒体に対するインクの定着性を向上するために、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体を凝集させる凝集剤を含む反応液とを噴射する液体噴射ヘッドを備えたヘッドユニットが開示されている。例えば、特許文献1には、反応液の一例であるプレコート液を噴射するプレコートヘッドと、インクを噴射するインクヘッドとの配置間隔が複数のインクヘッド間の配置間隔よりも大きくなるように配置されたヘッドユニットが開示されている。プレコートヘッドとインクヘッドとをそのように配置することで、プレコートヘッドからプレコート液を噴射する際に発生したミストがインクヘッドのノズルに付着してノズル詰まりが発生する可能性を低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ミストによるノズル詰まり対策のため、反応液のみを噴射する反応液専用の液体噴射ヘッドを用意する必要があり、液体噴射ヘッドの数が増加してヘッドユニットが大型化してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の態様は、第1液体と、前記第1液体を凝集させる反応液と、前記第1液体に比べて前記反応液に対して凝集しにくい処理液と、を噴射するヘッドユニットであって、前記ヘッドユニットは、第1方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドを備え、前記複数の液体噴射ヘッドの夫々は、1以上のノズル列を有する複数のヘッドチップを有し、前記液体噴射ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち、前記第1方向の端に配置されたノズル列と、前記第1方向とは反対の第2方向の端に配置されたノズル列との前記第1方向に関する間隔は、第1間隔であり、前記複数の液体噴射ヘッドは、互いに隣り合う第1ヘッド及び第2ヘッドを含み、前記第1ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第2ヘッドに近いノズル列と、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第1ヘッドに近いノズル列との前記第1方向に関する第2間隔は、前記第1間隔よりも長く、前記第1ヘッドは、前記第1液体を噴射する1以上の第1ノズル列を有する複数の第1ヘッドチップを有し、前記第2ヘッドは、前記反応液を噴射する1以上の第2ノズル列を有する1以上の第2ヘッドチップ及び前記処理液を噴射する1以上の第3ノズル列を有する1以上の第3ヘッドチップを有する、ことを特徴とするヘッドユニットにある。
【0006】
上記目的を達成するための本発明の他の態様は、上記態様のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを前記第1方向及び前記第2方向に往復移動させる移動機構と、を備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの平面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの平面図である。
【
図6】本発明の実施形態1に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態1に係るヘッドチップの断面図である。
【
図8】本発明の実施形態1に係るヘッドユニットの平面図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図10】本発明の実施形態1の変形例1に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図11】本発明の実施形態1の変形例2に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図12】本発明の実施形態1の変形例3に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図13】本発明の実施形態1の変形例4に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図14】本発明の実施形態1の変形例5に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図15】本発明の実施形態1の変形例6に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図16】比較例1に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図17】比較例2に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【
図18】本発明の実施形態2に係るヘッドユニットの平面図である。
【
図19】本発明の実施形態2に係る、各ノズル列と噴射される液体との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、正方向及び負方向を限定しない3つの空間軸の方向については、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向として説明する。
【0009】
<実施形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、液体噴射装置1は、複数の液体噴射ヘッドHを有するヘッドユニットUを備え、媒体SをX軸方向に搬送すると共に、ヘッドユニットUをY軸方向に往復移動させながら、液体噴射ヘッドHから媒体Sに向かって+Z方向に液体を噴射することで印刷を行う、所謂、シリアル式プリンターである。なお、媒体Sとしては、布の他、記録用紙や樹脂フィルム等の任意の材質を用いることができる。
【0010】
液体噴射装置1が噴射する液体としては、色材を含むインク、インクを凝集させる凝集剤を含む反応液、柔軟剤を含む処理液、後処理液などである。本実施形態のインクは、染料及び顔料等の何らかの色材を有する液体である。なお、色材に用いる顔料としては、例えば、ブラックインクに用いられるカーボン、ホワイトインクに用いられる酸化チタン、シルバーメタリックインクに用いられるアルミナ等の無機顔料が挙げられる。
【0011】
反応液を媒体Sに噴射した後に、反応液が媒体に着弾する位置にインクを噴射することにより、反応液とインクとが媒体S上、又は媒体Sの内部に浸透した位置で混合し、反応液によってインクが凝集することにより、媒体Sに対するインクの定着性を向上できる。なお、インクを媒体Sに噴射してから所定の期間の間に、インクが媒体Sに着弾する位置に反応液を噴射してもよい。所定期間は、例えば、後述する1つのパスの期間である。
【0012】
反応液は、インクを凝集させる凝集剤を含む液体である。色材を凝集させる凝集剤として、有機酸を含んでいてもよい。有機酸を含む反応液としては、少なくともグルタル酸、溶媒、及び活性剤を含む反応液が採用でき、クエン酸やリンゴ酸、マロン酸などの有機酸を含む反応液を用いることもできる。
【0013】
反応液とインクとの具体的な組み合わせとしては、例えば、以下に示す2つの組み合わせがある。第1の組み合わせは、塩基性ポリマーを凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。第2の組み合わせは、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。ただし、反応液とインクとの組み合わせは、上記2つの組み合わせに限らない。
【0014】
後処理液は、媒体S上に着弾した色材を含むインクを覆うオーバーコート液であり、色材を有さず、媒体S上に噴射されたインクの定着性を向上させる液体である。後処理液も反応液によって凝集する。
【0015】
処理液は、媒体Sに対して柔軟性を付与する柔軟剤を含む液体である。処理液は、例えば、主成分としてジメチルシリコーンやアミノ変性シリコーン(弱アニオン)、エーテルシリコーンを含むシリコーンオイルである。処理液は、他の例としては、主成分として、陽イオン(カチオン)界面活性剤、ポリエステル(ノニオン)の何れかを含む液体であってもよい。柔軟剤の塗布により、媒体Sの柔軟性、耐水性、発色性を向上することができる。ちなみに、柔軟剤による柔軟性は、柔軟剤が繊維に付着することで、滑り性を付与して繊維同士の摩擦を低減することで得られる柔軟効果のことである。また、柔軟剤による耐水性は、柔軟剤は表面張力が低く、油に近い性質を持つため、柔軟剤の性質によって得られる撥水性(耐水性)のことである。また、柔軟剤による発色性は、媒体Sをコーティングすることで屈折率が低下することで得られる艶出し(濃色化)効果のことである。処理液は、色材を含むインクに比べて反応液に対して凝集し難い。例えば、インクや後処理液は反応液に瞬時に反応するが、処理液は反応液に瞬時に反応しない。例えば、インクと反応液との反応が完了するまでの反応時間は長いものでも数秒程度である。また、本実施形態では、処理液と反応液とは、反応が完了して凝集体になるまでに24時間以上かかる。したがってここで言う「凝集し難い」とは、少なくとも反応が完了するまでに5分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは4時間以上かかるものを指す。また、「凝集し難い」とは、反応液に触れてから反応が完了するまでの時間が、定期的に行われるクリーニングの間隔よりも長いことを含んでもよい。定期的に行われるクリーニングとは、詳しくは後述する払拭部材9が定期的にヘッドユニットUの各噴射面120を払拭することであってもよいし、不図示のキャップによってノズル21に負圧を作用させることでノズル21から液体を排出させる所謂吸引クリーニングを定期的に行う間隔であってもよいし、圧力室12よりも上流の流路を加圧することでノズル21から液体を排出させる所謂加圧クリーニングを定期的に行う間隔であってもよい。
【0016】
このような液体噴射装置1は、ヘッドユニットUと、液体貯留部3と、制御部である制御ユニット4と、媒体Sを送り出す搬送機構5と、移動機構6と、を具備する。
【0017】
ヘッドユニットUは、Y方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドHと、複数の液体噴射ヘッドHを支持する支持体U1(
図2参照)と、を具備する。本実施形態では、2個の液体噴射ヘッドHが、共通する1個の支持体U1に支持されている。もちろん、複数の液体噴射ヘッドHが2個以上に分割された支持体U1に支持されていてもよいが、ヘッドユニットUは、支持体U1で規定されるため、支持体U1の数が、ヘッドユニットUの数に相当する。
【0018】
液体噴射ヘッドHは、液体を貯留する液体貯留部3から供給される液体を液滴として+Z方向に噴射する。
【0019】
液体貯留部3は、液体噴射ヘッドHから噴射される色や成分が異なる複数種類の液体を個別に貯留する。液体貯留部3としては、例えば、液体噴射装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、インクを補充可能なインクタンクなどが挙げられる。なお、
図1では1個の液体貯留部3を例示している。ちなみに、液体貯留部3は、複数種類の液体を個別に貯留する分割された部屋を有する液体貯留部3であってもよく、複数種類の液体に応じて個別に設けられた複数の液体貯留部3であってもよい。また、液体貯留部3は、メインタンクとサブタンクとで分かれていてもよい。サブタンクが液体噴射ヘッドHに接続され、液体噴射ヘッドHから液滴を噴射することで消費した液体をメインタンクからサブタンクに補充する構成であってもよい。
【0020】
図1に示すように、制御ユニット4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはFPGA(Field Programmable Gate Array)等の制御装置と、半導体メモリー等の記憶装置と、を備えている。制御ユニット4は、不図示の外部配線を介して液体噴射ヘッドHと電気的に接続される。制御ユニット4は、記憶装置に記憶されたプログラムを制御装置が実行することで液体噴射装置1の各要素、すなわち、液体噴射ヘッドH、搬送機構5、移動機構6等を統括的に制御する。
【0021】
搬送機構5は、媒体SをX軸方向に搬送するものであり、搬送ローラー5aを有する。すなわち搬送機構5は、搬送ローラー5aが回転することで媒体SをX軸方向に搬送する。搬送ローラー5aは、図示しない搬送モーターの駆動により回転する。制御ユニット4は、媒体搬送モーターの駆動を制御することで、媒体Sの搬送を制御する。なお、媒体Sを搬送する搬送機構5は、搬送ローラー5aを備えるものに限られず、例えば、ベルトやドラムによって媒体Sを搬送するものであってもよい。
【0022】
移動機構6は、ヘッドユニットUをY軸方向に往復させるための機構であり、保持体7と搬送ベルト8とを具備する。保持体7は、ヘッドユニットUを保持する所謂、キャリッジであり、搬送ベルト8に固定される。搬送ベルト8は、Y軸方向に沿って架設された無端ベルトである。搬送ベルト8は、図示しない搬送モーターの駆動によって回転する。制御ユニット4は、搬送モーターの駆動を制御することで搬送ベルト8を回転させて、ヘッドユニットUを保持体7と共にY軸方向で往復移動させる。
【0023】
ヘッドユニットUに搭載された複数の液体噴射ヘッドHは、制御ユニット4による制御のもとで、液体貯留部3から供給された液体を複数のノズル21(
図4参照)のそれぞれから液滴として+Z方向に噴射する噴射動作を実行する。この液体噴射ヘッドHによる噴射動作が、搬送機構5による媒体Sの搬送や移動機構6による液体噴射ヘッドHの往復移動と並行して行われることにより、媒体Sに液体が塗布される、いわゆる印刷が行われる。
【0024】
印刷処理には、双方向印刷と単方向印刷との2つの態様がある。以降、ヘッドユニットUをY軸方向に1回移動させることを、1つのパス(略して1パス)と称する。1パスの期間とは、ヘッドユニットUをY軸方向に1回移動させることに要する期間である。双方向印刷において、液体噴射装置1は、+Y方向にヘッドユニットUを移動させながら液体を噴射して、1つ目のパスに対応するバンド幅分の部分画像を媒体Sに形成させる+Y方向印刷処理を実行する。次に、液体噴射装置1は、媒体SをX軸方向にバンド幅分移動させる移動処理を実行し、-Y方向にヘッドユニットUを移動させながら液体を噴射して2つ目のパスに対応するバンド幅分の部分画像を媒体Sに形成させる-Y方向印刷処理を実行する。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+Y方向印刷処理及び-Y方向印刷処理を繰り返す。なお、双方向印刷は、+Y方向印刷処理および-Y方向印刷処理を実行した後に移動処理を行うようにしてもよいし、+Y方向印刷処理および-Y方向印刷処理をそれぞれ複数回実行した後に移動処理を行うようにしてもよい。双方向印刷は、単方向印刷と比較して、媒体Sに画像が形成されるまでに要する時間を短縮できる。
【0025】
単方向印刷では、前述した+Y方向印刷処理を実行する。単方向印刷においては、複数回の+Y方向印刷処理を行うことで、1つ目のパスに対応するバンド幅分の部分画像を形成するようにしてもよい。+Y方向印刷処理を終えたら、液体を噴射させずにヘッドユニットUを媒体Sよりも-X方向側に移動させる移動処理を行う。このような+Y方向印刷処理を1回または複数回繰り返して部分画像を形成したのち、媒体SをX軸方向にバンド幅分移動させる。以降、液体噴射装置1は、媒体Sに画像が形成されるまで+Y方向印刷処理及び移動処理を繰り返す。また、単方向印刷は、+Y方向印刷処理の代わりに、-Y方向印刷処理を実行するようにしてもよい。つまり、単方向印刷は、-Y方向印刷処理及び移動処理を繰り返してもよい。
【0026】
液体噴射装置1は、液体噴射ヘッドHの噴射面120を払拭する払拭部材9を有する。払拭部材9は、例えば、ゴム等の弾性材料で形成された板状のブレード、織物、不織布、スポンジ等の多孔質材料などを用いることができる。払拭部材9は、詳しくは後述する液体噴射ヘッドHの噴射面に対して、相対的にX軸方向に沿って移動することで、噴射面をX軸方向に沿って払拭する。液体噴射ヘッドHと払拭部材9とのX軸方向に関する相対移動は、液体噴射ヘッドHを移動するようにしてもよく、払拭部材9を移動するようにしてもよく、両者を移動するようにしてもよい。本実施形態では、払拭部材9は、ヘッドユニットUに対して-X方向に向かって相対移動することで、液体噴射ヘッドHの各噴射面120を払拭する。
【0027】
特に図示しないが、払拭部材9は、Y軸方向に並ぶ液体噴射ヘッドH毎に独立して設けられていてもよく、Y軸方向に並ぶ複数の液体噴射ヘッドHで構成されるヘッド群に亘って連続して設けられていてもよい。本実施形態では、払拭部材9は、詳しくは後述するX軸方向に並ぶ最大数の液体噴射ヘッドH、すなわち、2個の液体噴射ヘッドHに亘って連続する大きさを有する。このため、払拭部材9がヘッドユニットUに対して-X方向に相対移動することで、Y軸方向に並んだ2個の液体噴射ヘッドHの噴射面120を払拭できる。
【0028】
ちなみに、払拭部材9は、ローラーに巻き付けられた織物又は不織布を用いて、噴射面を払拭した後、払拭部材9の使用した部分を巻き取ることで、常に新しい払拭部材9の面で噴射面を払拭する構造であってもよい。
【0029】
図2は、本発明の実施形態1に係るヘッドユニットUの平面図である。なお、ヘッドユニットUの各方向は液体噴射装置1に搭載された際の方向、すなわち、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に合わせて説明する。
【0030】
ヘッドユニットUは、複数の液体噴射ヘッドHと、複数の液体噴射ヘッドHを共通して支持する支持体U1と、を具備する。本実施形態のヘッドユニットUは、+Y方向側に配置された液体噴射ヘッドH1と、-Y方向側に配置された液体噴射ヘッドH2とを備えている。これらを区別しない場合は液体噴射ヘッドHと称する。本実施形態のヘッドユニットUは2個の液体噴射ヘッドHを備えているが2個に限定されない。すなわち、ヘッドユニットUは任意の複数個の液体噴射ヘッドHが配置されていてもよい。液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH2は互いに隣り合う液体噴射ヘッドである。ヘッドユニットUが3個以上の液体噴射ヘッドHを備える場合は、複数の液体噴射ヘッドHのうち、互いに隣り合う2個の液体噴射ヘッドが液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH2となる。
【0031】
支持体U1は、金属材料又は樹脂材料で形成された板状部材からなり、液体噴射ヘッドHを支持するための複数の不図示の取付孔が設けられている。複数の液体噴射ヘッドHは、取付孔に挿入された状態で、支持体U1に支持される。支持体U1に支持される液体噴射ヘッドHの配置については、詳しくは後述する。
【0032】
図3から
図5を参照して液体噴射ヘッドHについて説明する。
図3は、液体噴射ヘッドの分解斜視図であり、
図4は-Z方向に見た液体噴射ヘッドHの平面図であり、
図5は
図4のA-A線断面図である。
【0033】
図示するように、液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHcと、流路400を有する流路部材200と、中継基板210と、カバーヘッド220と、を具備する。
【0034】
流路部材200は、第1流路401が設けられた第1流路部材201と、第2流路402が設けられた第2流路部材202と、第1流路401と第2流路402とを液密な状態で接続するシール部材203と、を具備する。第1流路部材201と、シール部材203と、第2流路部材202とは、この順に+Z方向に積層されている。
【0035】
第1流路部材201は、本実施形態では、3つの部材がZ軸方向に積層されて構成されている。第1流路部材201は、液体が貯留された液体貯留部3に接続される接続部204を有する。本実施形態では、接続部204は、第1流路部材201の-Z方向の面に、-Z方向に筒状に突出して設けられる。この接続部204には、液体貯留部3が直接、接続されるものでもよく、チューブ等の供給管などを介して接続されてもよい。この接続部204の内部には、液体貯留部3からの液体が供給される第1流路401が設けられている。第1流路401は、Z軸方向に延びる流路や、積層された部材の積層界面に沿って延びる流路等で構成されている。また、第1流路401の途中には、他の域よりも内径が広く拡幅された液体溜まり部401aが設けられており、液体溜まり部401a内には、フィルター401bが設けられている。また、本実施形態では、1つの第1流路部材201は、8個の接続部204と、8個の独立した第1流路401と、を具備する。
【0036】
第2流路部材202は、複数の第1流路401の接続部204とは反対側の端部のそれぞれに連通する複数の第2流路402を有する。つまり、本実施形態では、1つの第2流路部材202は、8個の独立した第2流路402を具備する。第1流路401と第2流路402とは、シール部材203を介して液密に接続されている。シール部材203は、液体噴射ヘッドHに用いられる液体に対して耐液体性を有し、且つ弾性変形可能な材料、例えば、ゴムやエラストマー等を用いることができる。このようなシール部材203には、Z軸方向に貫通する接続流路403が設けられており、第1流路401と第2流路402とは、接続流路403を介して連通する。つまり、流路部材200には、第1流路401と第2流路402と接続流路403とを具備する流路400が8個独立して設けられている。
【0037】
また、第2流路部材202の+Z方向を向く面に、複数のヘッドチップHcが保持されている。具体的には、第2流路部材202は、+Z方向を向く面に開口する凹形状を有する収容部208を有し、この収容部208内にヘッドチップHcが収容される。本実施形態の液体噴射ヘッドHには、複数、本実施形態では、一例として4個のヘッドチップHcが保持されている。また、本実施形態では、4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に並設されている。
【0038】
なお、本実施形態では、全てのヘッドチップHcに共通して1個の収容部208を設ける構成を例示したが、特にこれに限定されない。例えば、収容部208は、ヘッドチップHc毎に独立して設けるようにしてもよく、2個以上の複数個のヘッドチップHcの群毎に独立して設けるようにしてもよい。ただし、収容部208を複数のヘッドチップHcに共通して設けることで、2つのヘッドチップHcの間に壁が存在せず、液体噴射ヘッドHをY軸方向に小型化できる。
【0039】
このようなヘッドチップHcの各導入口44に第2流路402が連通する。
【0040】
また、第2流路部材202には、各ヘッドチップHcの配線部材110を挿通するための配線挿通孔205が設けられている。本実施形態では、各ヘッドチップHcに対して1個の配線挿通孔205が設けられている。つまり、本実施形態では、4個のヘッドチップHcに対して合計4個の配線挿通孔205が設けられている。ヘッドチップHcの配線部材110は、配線挿通孔205を介して第2流路部材202の-Z方向を向く面側に導出される。
【0041】
また、Z軸方向において、第2流路部材202とシール部材203との間には、複数のヘッドチップHcの配線部材110が共通して接続される中継基板210が設けられている。中継基板210は、柔軟性のない硬質のリジット基板からなり、不図示の配線や電子部品等が実装されたものである。本実施形態では、電子部品として、液体噴射ヘッドHの外部に設けられる不図示の外部配線が接続されるコネクター211を図示している。そして、ヘッドチップHcを制御するための印刷信号等は、外部配線からコネクター211を介して中継基板210に入力され、中継基板210から各ヘッドチップHcに供給される。なお、流路部材200のコネクター211に対向する側壁には、コネクター211に接続される外部配線を挿通するための外部配線用開口部206が設けられている。外部配線は、外部配線用開口部206を介して流路部材200の内部に設けられた中継基板210のコネクター211に接続される。
【0042】
中継基板210には、ヘッドチップHcの配線部材110を-Z方向を向く面側に導出するための配線挿通孔212が設けられている。配線挿通孔212は、各ヘッドチップHcに対して1個、合計4個設けられている。
【0043】
また、中継基板210には、Z軸方向に貫通して設けられた突起部挿通孔213が設けられている。第2流路部材202の-Z方向を向く面には、内部に第2流路402が設けられた突起部207が-Z方向に向かって突出して設けられており、突起部207は、突起部挿通孔213を介して中継基板210の-Z方向側に挿通されて、接続流路403と接続される。
【0044】
また、流路部材200の+Z方向を向く面には、カバーヘッド220が固定されている。カバーヘッド220によってヘッドチップHcを収容する収容部208の空間が画定される。カバーヘッド220は、本実施形態では、4個のヘッドチップHcを覆う大きさを有する。カバーヘッド220は、4個のヘッドチップHcの+Z方向を向く面に固定される共通の部材である。また、カバーヘッド220には、ヘッドチップHcのノズル21を+Z方向に向かって露出する露出開口部221がヘッドチップHc毎に独立して設けられている。露出開口部221から露出されたノズル21からインクが+Z方向に向かって噴射される。
【0045】
本実施形態のヘッドチップHcの一例について説明する。
図6はヘッドチップHcの分解斜視図であり、
図7はヘッドチップHcの断面図である。
図7ではヘッドチップHcの他にカバーヘッド220の一部を図示している。
【0046】
ヘッドチップHcは、複数のノズル21が形成された1つのノズルプレート20と、流路形成基板10と、連通板15と、保護基板30と、ケース部材40と、圧電アクチュエーター300と、配線部材110と、を具備する。
【0047】
流路形成基板10は、例えば、シリコン基板等からなる。流路形成基板10には、複数の圧力室12がX軸方向に沿って並んで配置されている。複数の圧力室12は、Y軸方向に関して同じ位置となるように、X軸方向に沿った直線上に配置されている。X軸方向で互いに隣り合う2つの圧力室12は、不図示の隔壁によって区画されている。また、本実施形態では、圧力室12がX軸方向に沿って並設された圧力室列が、Y軸方向に2列設けられている。これら2列の圧力室列は、X軸方向において互いに圧力室12のピッチの半分、所謂半ピッチずれて配置される。つまり、2列の圧力室列の全ての圧力室12は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。
【0048】
流路形成基板10の+Z方向を向く面には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。流路形成基板10の-Z方向を向く面には、振動板50と圧電アクチュエーター300とが順次積層されている。
【0049】
連通板15は、流路形成基板10の+Z方向を向く面に接合された板状部材からなる。連通板15には、圧力室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。また、連通板15には、複数の圧力室12が共通して連通する共通液室となるマニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と第2マニホールド部18とが設けられている。第1マニホールド部17は、連通板15をZ軸方向に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15をZ軸方向に貫通することなく、+Z方向を向く面に開口して設けられている。さらに、連通板15には、圧力室12に連通する供給連通路19が圧力室12の各々に独立して設けられている。供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力室12とを連通して、マニホールド100内のインクを圧力室12に供給する。このような連通板15としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板などを用いることができる。
【0050】
ノズルプレート20は、連通板15の流路形成基板10とは反対側、すなわち、+Z方向を向く面に接合されている。ノズルプレート20には、各圧力室12にノズル連通路16を介して連通するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、複数のノズル21は、X軸方向に沿って一列となるように並んで配置されている。また、本実施形態では、ノズル21がX軸方向に沿って並設されたノズル列Lが、Y軸方向に離れて2列設けられている。本実施形態では、2列のノズル列Lを+Y方向に順番にノズル列La、ノズル列Lbと称する。以降、ノズル列La、Lbを区別しない場合には、ノズル列Lと称する。このノズル列La、Lbは、X軸方向において、互いにノズル21のピッチの半分、所謂、半ピッチずれて配置される。つまり、ノズル列La、Lbの全てのノズル21は、X軸方向に沿って千鳥状に配置される。また、本実施形態では、
図7に示すように、ノズル列Laが、ノズル列Lbよりも-X方向に位置する。つまり、ノズル列Laの-X方向の端部のノズル21は、ノズル列Lbの-X方向の端部のノズル21よりも-X方向に位置する。
【0051】
このようなノズルプレート20としては、シリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板、ステンレス基板等の金属基板、ポリイミド樹脂のような有機物などを用いることができる。ノズルプレート20の+Z方向を向く面が液体噴射ヘッドHの噴射面120の一部を構成する。
【0052】
振動板50は、本実施形態では、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51の-Z方向を向く面上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を有する。なお、振動板50は、弾性膜51のみで構成されていてもよく、絶縁体膜52のみで構成されていてもよく、弾性膜51と絶縁体膜52とに加えて他の膜を有する構成であってもよい。
【0053】
圧電アクチュエーター300は、振動板50上に-Z方向に向かって順次積層された第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを具備する。このような圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とを含む部分を言う。また、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分を活性部310と称する。すなわち、活性部310は、圧電体層70が第1電極60と第2電極80とで挟まれた部分を言う。本実施形態では、圧力室12毎に活性部310が形成されている。この複数の活性部310が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせる「駆動素子」となっている。そして、一般的には、活性部310の何れか一方の電極を活性部310毎に独立する個別電極とし、他方の電極を複数の活性部310に共通する共通電極として構成する。本実施形態では、第1電極60は、活性部310毎に切り分けられて活性部310の個別電極を構成し、第2電極80が複数の活性部310に亘って連続して設けられて複数の活性部310の共通電極を構成している。もちろん、第1電極60が共通電極を構成し、第2電極80が個別電極を構成してもよい。
【0054】
圧電体層70は、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト構造の複合酸化物からなる圧電材料を用いて構成されている。
【0055】
また、第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。また、第2電極80からは不図示の引き出し配線である共通リード電極が引き出されている。これら個別リード電極91及び共通リード電極の圧電アクチュエーター300に接続された端部とは反対側の端部には、可撓性を有するフレキシブル基板からなる配線部材110が接続されている。配線部材110は、活性部310の夫々を駆動させるための駆動信号COMを各活性部310に供給するか否かを選択する複数のスイッチング素子を有する駆動信号選択回路111が実装されている。つまり、本実施形態における配線部材110は、COF(Chip On Film)である。なお、配線部材110には、駆動信号選択回路111を設けなくてもよい。つまり、配線部材110は、FFC(Flexible Flat Cable)、FPC(Flexible Printed Circuits)等であってもよい。
【0056】
流路形成基板10の-Z方向を向く面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護する空間である収容部31を有する。収容部31は、X軸方向に並んで配置される圧電アクチュエーター300の列毎に独立して設けられたものであり、Y軸方向に2つ並んで形成されている。また、保護基板30には、Y軸方向に並んで配置される2つの収容部31の間にZ軸方向に貫通する貫通孔32が設けられている。圧電アクチュエーター300の電極から引き出された個別リード電極91及び共通リード電極(不図示)の端部は、この貫通孔32内に露出するように延在し、個別リード電極91及び共通リード電極と配線部材110とは、貫通孔32内で電気的に接続されている。このような保護基板30としては、例えば、流路形成基板10と同様にシリコン基板、ガラス基板、SOI基板、各種セラミック基板からなる。
【0057】
また、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通するマニホールド100を流路形成基板10と共に画定するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。このようなケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。また、ケース部材40には、連通板15の第1マニホールド部17に連通する第3マニホールド部42が設けられている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40に設けられた第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。マニホールド100は、ノズル列La、Lb毎に、つまり、合計2個設けられている。このため、ノズル列La、Lbからは異なる液体を噴射することができる。また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入口44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線部材110が挿通される接続口43が設けられており、配線部材110は、接続口43を介して液体噴射ヘッドHの-Z方向を向く面側に導出される。ケース部材40としては、金属材料、樹脂材料などを用いることができる。
【0058】
また、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する+Z方向側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18の+Z方向側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜46と、金属等の硬質の材料からなる固定基板47と、を具備する。固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。固定基板47の+Z方向を向く面がカバーヘッド220の-Z方向を向く面に接着剤等で固定されることで、ヘッドチップHcは、カバーヘッド220に固定されている。上述したように、カバーヘッド220は、複数、本実施形態では、4個のヘッドチップHcの固定基板47のそれぞれに固定される共通の部材である。このため、カバーヘッド220によって4個のヘッドチップHcは一体化されている。このようなカバーヘッド220の+Z方向を向く面は、噴射面120の一部を構成する。
【0059】
このようなヘッドチップHcでは、液体を導入口44から取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動信号選択回路111からの信号に従い、圧力室12に対応する各活性部310に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター300と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力室12内の液体の圧力が高まり所定のノズル21から液滴が噴射される。
【0060】
図8を用いて、ヘッドユニットUを詳細に説明する。
図8はヘッドユニットUの平面図である。なお、
図8は、ヘッドユニットUのうち液体噴射ヘッドH、ヘッドチップHc、ノズル列Lのみを図示しており、支持体U1など他の部材の図示を省略している。また、
図8には、液体噴射ヘッドHの外形を破線で示している。
【0061】
ヘッドユニットUは、+Y方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドHを備えている。本実施形態では、ヘッドユニットUは、2個の液体噴射ヘッドHを備える。具体的には液体噴射ヘッドH1は液体噴射ヘッドH2に対して+Y方向側に配置され、液体噴射ヘッドH2は、ヘッドユニットUに備わる複数の液体噴射ヘッドHのうち、-Y方向の端に配置されている。
【0062】
液体噴射ヘッドH1は、複数のヘッドチップHc、本実施形態では4個のヘッドチップHcを有する。4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に沿って並設されており、4個のヘッドチップHcを-Y方向に順番にヘッドチップHc1~Hc4と称している。
【0063】
液体噴射ヘッドH2は、複数のヘッドチップHc、本実施形態では4個のヘッドチップHcを有する。4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に沿って並設されており、4個のヘッドチップHcを-Y方向に順番にヘッドチップHc5~Hc8と称している。
【0064】
液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc8は、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5に対して-Y方向に配置されている。また、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc8は、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち、-Y方向の端に配置されている。また、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5は、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち、+Y方向の端に配置されている。
【0065】
ヘッドチップHc1のノズル列La、Lbをノズル列L1a、L1bと称し、ヘッドチップHc2のノズル列La、Lbをノズル列L2a、L2bと称し、ヘッドチップHc3のノズル列La、Lbをノズル列L3a、L3bと称し、ヘッドチップHc4のノズル列La、Lbをノズル列L4a、L4bと称する。つまり、液体噴射ヘッドH1には、-Y方向に向かって順番にノズル列L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bの8列が並んで配置されている。
【0066】
ヘッドチップHc5のノズル列La、Lbをノズル列L5a、L5bと称し、ヘッドチップHc6のノズル列La、Lbをノズル列L6a、L6bと称し、ヘッドチップHc7のノズル列La、Lbをノズル列L7a、L7bと称し、ヘッドチップHc8のノズル列La、Lbをノズル列L8a、L8bと称する。つまり、液体噴射ヘッドH2には、-Y方向に向かって順番にノズル列L5a、L5b、L6a、L6b、L7a、L7b、L8a、L8bの8列が並んで配置されている。
【0067】
なお、ノズル列LがY軸方向に並んで配置されるとは、Y軸方向で隣り合う2つのノズル列Lにおいて、各ノズル列Lが設けられたX軸に沿う領域が、Y軸方向に見て少なくとも一部が重なっていることを言う。ノズル列Lが設けられたX軸に沿う領域とは、X軸に沿って並ぶ複数のノズル21のうち+X方向の端部のノズル21から-X方向の端部のノズル21までの領域のことである。このため、Y軸方向で隣り合う2つのノズル列Lのうち、一方のノズル列Lのノズル21の一部が他方のノズル列Lの領域にY軸方向に見て重なっていないものも含む。
【0068】
図9の表ta1に示すように、ノズル列L1aはオーバーコート液を噴射し、ノズル列L1bはシアンインクを噴射する。ノズル列L2aはオレンジインクを噴射し、ノズル列L2bはレッドインクを噴射する。ノズル列L3aはグリーンインクを噴射し、ノズル列L3bはイエローインクを噴射する。ノズル列L4aはマゼンタインクを噴射し、ノズル列L4bはブラックインクを噴射する。ノズル列L5aとノズル列L5bとは処理液を噴射し、ノズル列L8aとノズル列L8bとは反応液を噴射する。
【0069】
本実施形態では、ノズル列L6a、L6b、L7a、L7bは液体を噴射しない未使用のノズル列Lである。すなわち、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcは、Y軸方向に関してヘッドチップHc5とヘッドチップHc8との間に配置された液体を噴射しないダミーのヘッドチップHc6、ヘッドチップHc7を含む。これらのヘッドチップHc6、Hc7は液体を噴射しないが、液体を噴射する他のヘッドチップHc1~5、Hc8と同じ構成である。また、本実施形態ではダミーのヘッドチップは2個設けられているが、個数に限定はない。
【0070】
このように液体噴射ヘッドH1は、オーバーコート液を噴射するノズル列L1a及びインクを噴射するノズル列L1bを有するヘッドチップHc1、及び、インクを噴射するノズル列L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bを有するヘッドチップHc2~Hc4を備えている。液体噴射ヘッドH2は、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bを有するヘッドチップHc8、及び処理液を噴射するノズル列L5a、L5bを有するヘッドチップHc5を備えている。
【0071】
また、反応液を噴射するノズル列Lと、処理液を噴射するノズル列Lとは、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち、同じヘッドチップHcに配置されていない。換言すれば、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bと、処理液を噴射するノズル列L5a、L5bとは別のヘッドチップHcに設けられている。
【0072】
このような構成のヘッドユニットUは、ノズル列L同士の間隔が次のように規定されている。
【0073】
第1間隔D1は、液体噴射ヘッドHに含まれる複数のノズル列Lのうち、Y軸方向に関して両端に配置された2つのノズル列Lの間隔である。液体噴射ヘッドH1で例えると、第1間隔D1は、液体噴射ヘッドH1に含まれる複数のノズル列Lのうち、+Y方向の端に配置されたノズル列L1aと、-Y方向の端に配置されたノズル列L4bとの+Y方向に関する間隔である。
【0074】
第2間隔D2は、液体噴射ヘッドH1に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH2に近いノズル列Lであるノズル列L4bと、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH1に近いノズル列Lであるノズル列L5aとの+Y方向に関する間隔である。
【0075】
第3間隔D3は、ヘッドチップHcに含まれる複数のノズル列Lのうち、隣り合うノズル列L同士の+Y方向に関する間隔である。本実施形態では、一つのヘッドチップHcは2列のノズル列La,Lbを有しているので、ノズル列Laとノズル列Lbの間隔が第3間隔D3となる。
【0076】
第4間隔D4は、液体噴射ヘッドHに含まれる複数のヘッドチップHcのうち隣り合う2つのヘッドチップHcにおいて、一方のヘッドチップHcに含まれる複数のノズル列Lのうち最も他方のヘッドチップHcに近いノズル列Lと、他方のヘッドチップHcに含まれる複数のノズル列Lのうち最も一方のヘッドチップHcに近いノズル列Lとの+Y方向に関する間隔である。液体噴射ヘッドH2の隣り合うヘッドチップHc7およびヘッドチップHc8で例えると、第4間隔D4は、ヘッドチップHc8に含まれる複数のノズル列Lのうち最もヘッドチップHc7に近いノズル列L8aと、ヘッドチップHc7に含まれる複数のノズル列Lのうち最もヘッドチップHc8に近いノズル列L7bとの+Y方向に関する間隔である。
【0077】
第5間隔D5は、液体噴射ヘッドH2の反応液を噴射するノズル列Lと液体噴射ヘッドH2の処理液を噴射するノズル列Lとの+Y方向に関する最短の間隔である。本実施形態ではヘッドチップHc8のノズル列L8aとヘッドチップHc5のノズル列L5bとの+Y方向に関する間隔が第5間隔D5となる。
【0078】
上述した間隔同士の関係は次のように規定されている。第2間隔D2は、第1間隔D1よりも長い。第4間隔D4は第3間隔D3よりも長い。第5間隔D5は、第4間隔D4よりも長い。また、
図8に示すように、第2間隔D2は、液体噴射ヘッドHのY軸方向に関する寸法Wより小さい。なお、液体噴射ヘッドHのY軸方向に関する寸法Wは、Z軸方向に見たときの液体噴射ヘッドHの外形に関する寸法であり、本実施形態では流路部材200の外形の寸法に相当する。なお、液体噴射ヘッドHの外形は、流路部材200以外の構成要素の外形であってもよいし、複数の構成要素の組み合わせによって画定されてもよい。
【0079】
このような構成のヘッドユニットUは、単方向印刷を行うことで画像を形成する。具体的には、1つのバンド幅に対応する部分画像を形成する為の+Y方向印刷処理を2回行う度に、媒体Sの移動処理を行う。
【0080】
1回目の+Y方向印刷処理では、ヘッドユニットUは+Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH1がオーバーコート液を除いた各色のインクを噴射し、液体噴射ヘッドH2が反応液を噴射する。その後、ヘッドユニットUを媒体Sよりも-Y方向側に移動させる。
【0081】
2回目の+Y方向印刷処理では、ヘッドユニットUは+Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH1がオーバーコート液を噴射し、液体噴射ヘッドH2が処理液を噴射する。その後、媒体Sを+X方向に移動させる移動処理を実行する。このような単方向印刷により、インク、反応液、オーバーコート液、処理液がこの順で媒体Sの1つのバンド幅に相当する領域に噴射され、部分画像が形成される。
【0082】
以上に説明した、インク、反応液、処理液、オーバーコート液を噴射するヘッドユニットUは、+Y方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドHを備え、複数の液体噴射ヘッドHの夫々は、1以上のノズル列Lを有する複数のヘッドチップHcを有し、液体噴射ヘッドHに含まれる複数のノズル列Lのうち、+Y方向の端に配置されたノズル列L1aと、-Y方向の端に配置されたノズル列L4bとの+Y方向に関する間隔は、第1間隔D1であり、複数の液体噴射ヘッドHは、互いに隣り合う液体噴射ヘッドH1及び液体噴射ヘッドH2を含み、液体噴射ヘッドH1に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH2に近いノズル列であるノズル列L4bと、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH1に近いノズル列であるノズル列L5aとの+Y方向に関する第2間隔D2は、第1間隔D1よりも長く、液体噴射ヘッドH1は、インク及びオーバーコート液を噴射するノズル列L1a、L1bを有するヘッドチップHc1、並びにインクを噴射するノズル列L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bを有する複数のヘッドチップHc2、Hc3、Hc4を有し、液体噴射ヘッドH2は、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bを有するヘッドチップHc8及び処理液を噴射するノズル列L5a、L5bを有するヘッドチップHc5を有する。
【0083】
このような構成のヘッドユニットUは、反応液と反応するインク及びオーバーコート液を噴射するヘッドチップHc1、インクを噴射するヘッドチップHc2~Hc4を備える液体噴射ヘッドH1と、反応液を噴射するヘッドチップHc8を備える液体噴射ヘッドH2とが別々になっている。換言すれば、複数ある液体噴射ヘッドHの任意の一つにおいて、インク及びオーバーコート液を噴射するヘッドチップHc1、インクを噴射するヘッドチップHc2~Hc4と、反応液とを噴射するヘッドチップHc8が配置されていない。これにより、液体噴射ヘッドH2から反応液を噴射する際に発生した反応液のミストが液体噴射ヘッドH1のノズル21の詰まりに影響を及ぼしにくくなっている。すなわち、反応液のミストが液体噴射ヘッドH1のノズル21にてインクやオーバーコート液と反応して凝集し、ノズル21が詰まるリスクを低減することができる。
【0084】
さらに、反応液を噴射するヘッドチップHc8と、処理液を噴射するヘッドチップHc5とは同じ液体噴射ヘッドH2に設けられている。これにより、反応液を噴射するためだけの液体噴射ヘッドを別途に設ける必要がなくなり、液体噴射ヘッドの数を削減することができ、ヘッドユニットUを小型化することができる。なお、ヘッドチップHc8の反応液が、同一の液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5のノズル21に到達する可能性はある。しかしながら、反応液と処理液とは反応しにくい。さらに、前述した定期的なクリーニングの間隔よりも長い時間を掛けて凝集するので、凝集する前に払拭部材9でノズル21に付着した反応液のミストが除去される。したがって、同一の液体噴射ヘッドH2に反応液と処理液とを噴射するヘッドチップHc8、Hc5が設けられていても、ノズル21が目詰まりする可能性を極めて低くすることができる。
【0085】
なお、インク及びオーバーコート液は、「第1液体」に相当する。+Y方向は「第1方向」に相当し、-Y方向は「第2方向」に相当する。液体噴射ヘッドH1は「第1ヘッド」に相当し、液体噴射ヘッドH2は「第2ヘッド」に相当する。インク及びオーバーコート液を噴射するヘッドチップHc1、並びにインクを噴射するヘッドチップHc2、Hc3、Hc4は「第1ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc8は「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc5は「第3ヘッドチップ」に相当する。オーバーコート液を噴射するノズル列L1a、及びインクを噴射するノズル列L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4b、は「第1ノズル列」に相当し、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L5a、L5bは「第3ノズル列」に相当する。また、インクを噴射するヘッドチップHcは複数個に限定されず一個でもよいし、オーバーコート液を噴射するヘッドチップHcは一個に限定されず複数個あってもよい。
【0086】
また、液体噴射ヘッドH1は、液体噴射ヘッドH2に対して+Y方向に配置され、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5は、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc8に対して-Y方向に配置されている。このような構成のヘッドユニットUは、インク及びオーバーコート液を噴射する液体噴射ヘッドH1と、反応液を噴射するヘッドチップHc8のノズル列L8a、L8bとの距離を長くすることができ、ノズル詰まりが発生するリスクをより一層低減することができる。
【0087】
また、液体噴射ヘッドH2は、2個の液体噴射ヘッドHのうち、-Y方向の端に配置された液体噴射ヘッドHである。このような構成のヘッドユニットUは、インク及びオーバーコート液を噴射する液体噴射ヘッドH1と、反応液を噴射するヘッドチップHc8のノズル列L8a、L8bとの距離を最も長くすることができ、ノズル詰まりが発生するリスクをより一層低減することができる。もちろん、このような構成に限定されず、例えば、3個以上の液体噴射ヘッドHを備えるヘッドユニットUでは、液体噴射ヘッドH2が-Y方向の端に配置されていなくてもよい。
【0088】
また、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc8は、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち、-Y方向の端に配置されたヘッドチップHcであり、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5は、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち、+Y方向の端に配置されたヘッドチップHcである。反応液と処理液とは反応し難く、ノズル21が目詰まりするリスクは低いが0ではない。そのため、同一の液体噴射ヘッドH2において、反応液を噴射するヘッドチップHc8と、処理液を噴射するヘッドチップHc5とを最も離れて配置させることで、反応液によってノズル詰まりのリスクを含む処理液を噴射するノズル列L5a,L5bに対しても、ノズル詰まりのリスクを低減することができる。もちろん、このような構成に限定されず、ヘッドチップHc8は、-Y方向の端に配置されていなくてもよいし、ヘッドチップHc5は+Y方向の端に配置されていなくてもよい。
【0089】
ヘッドチップHcに含まれる複数のノズル列Lのうち、隣り合うノズル列L同士の+Y方向に関する間隔は、第3間隔D3であり、液体噴射ヘッドHに含まれる複数のヘッドチップHcのうち隣り合う2つのヘッドチップHc8及びヘッドチップHc7において、一方のヘッドチップHc8に含まれる複数のノズル列Lのうち最もヘッドチップHc7に近いノズル列L8aと、他方のヘッドチップHc7に含まれる複数のノズル列Lのうち最もヘッドチップHc8に近いノズル列L7bとの+Y方向に関する間隔は、第4間隔D4であり、第4間隔D4は、第3間隔D3よりも長く、液体噴射ヘッドH2の反応液を噴射するノズル列L8a、L8bと液体噴射ヘッドH2の処理液を噴射するノズル列L5a,L5bとは、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcのうち同じヘッドチップHcに配置されない。このように、同一のヘッドチップHcに反応液と処理液とを噴射させない構成とすることで、反応液によってノズル詰まりのリスクを含む処理液を噴射するノズル列L5a、L5bに対しても、ノズル詰まりのリスクを低減することができる。もちろん、このような構成に限定されず、同一のヘッドチップHcに反応液と処理液とを噴射させる構成としてもよい。
【0090】
また、液体噴射ヘッドH2のノズル列L8aと液体噴射ヘッドH2のノズル列L5bとの+Y方向に関する最短の第5間隔D5は、第4間隔D4よりも長い。このように、反応液を噴射するヘッドチップHc8からみて、第4間隔D4で隣り合うヘッドチップHc7よりも離れた第5間隔D5の位置に、処理液を噴射するヘッドチップHc5を配置することで、反応液によってノズル詰まりのリスクを含む処理液を噴射するノズル列L5a、L5bに対しても、ノズル詰まりのリスクを低減することができる。
【0091】
また、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のヘッドチップHcは、+Y方向に関して液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc8と液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5との間に配置された液体を噴射しないヘッドチップHc6及びヘッドチップHc7を含む。これにより、ヘッドチップHc8とヘッドチップHc5との距離を離すことができるため、反応液によってノズル詰まりのリスクを含む処理液を噴射するノズル列L5a、L5bに対しても、ノズル詰まりのリスクを低減することができる。なお、液体を噴射しないヘッドチップHc6及びヘッドチップHc7は、「ダミーヘッドチップ」に相当する。また、本実施形態のように2個のダミーヘッドチップを配置した構成に限定されず、ダミーヘッドチップの個数は任意である。また、液体噴射ヘッドH2にダミーヘッドチップを配置しない構成としてもよいし、ヘッドチップHc8とヘッドチップHc5との間にダミーヘッドチップを配置せず、ヘッドチップHc8よりも-Y方向側、ヘッドチップHc5よりも+Y方向側にダミーヘッドチップを配置してもよい。さらには、ダミーヘッドチップは液体噴射ヘッドH1に配置されていてもよい。また、ヘッドチップHc6、Hc7を覆うために、ヘッドチップHc6、Hc7に対応する露出開口部221をカバーヘッド220に形成しないようにしてもよい。また、液体噴射ヘッドH2にヘッドチップHc6、Hc7を設けずに、ヘッドチップHc6、Hc7に対応する露出開口部221をカバーヘッド220に形成しないようにしてもよい。
【0092】
また、第2間隔D2は、液体噴射ヘッドHのY軸方向に関する寸法よりも小さい。このような構成とすることで、インクやオーバーコート液を噴射するノズル21に対する反応液のミストの影響を低減しながらも、Y軸方向に関してヘッドユニットUを小型化することができる。
【0093】
また、液体噴射ヘッドH2は、インクやオーバーコート液などの「第1液体」を噴射するヘッドチップHc1、Hc2、Hc3、Hc4を含まない。また、処理液は、柔軟剤を含む液体である。
【0094】
また、液体噴射装置1は、ヘッドユニットUと、ヘッドユニットUを+Y方向及び-Y方向に往復移動させる移動機構6と、を備える。このような液体噴射装置1によれば、反応液のミストが液体噴射ヘッドH1のノズル21にてインクやオーバーコート液と反応して凝集し、ノズル21が詰まるリスクを低減することができるとともに、反応液を噴射するためだけの液体噴射ヘッドを別途に設ける必要がないので液体噴射装置1を小型化することができる。
【0095】
〈実施形態1の変形例1〉
図10の表ta2に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例1を示す。変形例1は、液体噴射ヘッドH1において、インクとオーバーコート液との順序を逆にした点で実施形態1と相違する。具体的には、ノズル列L1aはシアンインクを噴射し、ノズル列L1bはオレンジインクを噴射する。ノズル列L2aはレッドインクを噴射し、ノズル列L2bはグリーンインクを噴射する。ノズル列L3aはイエローインクを噴射し、ノズル列L3bはマゼンタインクを噴射する。ノズル列L4aはブラックインクを噴射し、ノズル列L4bはオーバーコート液を噴射する。また、特に図示しないが、インクを噴射するヘッドチップHcの間に、オーバーコート液を噴射するヘッドチップHcを配置してもよい。本変形例においても、実施形態1と同様に、ノズル列L1a、L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4bは「第1ノズル列」に相当し、これらのノズル列を有するヘッドチップHc1~Hc4は「第1ヘッドチップ」に相当する。また、本変形例と「第2ノズル列」、「第3ノズル列」、「第2ヘッドチップ」、「第3ヘッドチップ」の各対応関係は、実施形態1と同様である。
【0096】
〈実施形態1の変形例2〉
図11の表ta3に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例2を示す。変形例2のヘッドチップHc5、Hc6は処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L6a、L6bを有する。変形例2のヘッドチップHc7、Hc8は反応液を噴射するノズル列L7a、L7b、L8a、L8bを有する。反応液を噴射するノズル列L7a、L7b、L8a、L8bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L6a、L6bは「第3ノズル列」に相当する。ノズル列L7a、L7b、L8a、L8bを有するヘッドチップHc7、Hc8は「第2ヘッドチップ」に相当する。ノズル列L5a、L5b、L6a、L6bを有するヘッドチップHc5、Hc6は「第3ヘッドチップ」に相当する。
【0097】
〈実施形態1の変形例3〉
図12の表ta4に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例3を示す。変形例3のヘッドチップHc6、Hc7は反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有する。変形例3のヘッドチップHc5、Hc8は処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bを有する。反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bは「第3ノズル列」に相当する。ノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有するヘッドチップHc6、Hc7は「第2ヘッドチップ」に相当する。ノズル列L5a、L5b、L8a、L8bを有するヘッドチップHc5、Hc8は「第3ヘッドチップ」に相当する。
【0098】
〈実施形態1の変形例4〉
図13の表ta5に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例4を示す。変形例4のヘッドチップHc6、Hc7は処理液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有する。変形例4のヘッドチップHc5、Hc8は反応液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bを有する。反応液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bは「第3ノズル列」に相当する。ノズル列L5a、L5b、L8a、L8bを有するヘッドチップHc5、Hc8は「第2ヘッドチップ」に相当する。ノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有するヘッドチップHc6、Hc7は「第3ヘッドチップ」に相当する。
【0099】
〈実施形態1の変形例5〉
図14の表ta6に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例5を示す。変形例5のヘッドチップHc5は反応液を噴射するノズル列L5a、L5bを有する。変形例5のヘッドチップHc8は処理液を噴射するノズル列L8a、L8bを有する。変形例5のヘッドチップHc6、Hc7は、液体を噴射しない未使用のノズル列Hc6a、Hc6b、Hc7a、Hc7bを有する。反応液を噴射するノズル列L5a、L5bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L8a、L8bは「第3ノズル列」に相当する。ノズル列L5a、L5bを有するヘッドチップHc5は「第2ヘッドチップ」に相当する。ノズル列L8a、L8bを有するヘッドチップHc8は「第3ヘッドチップ」に相当する。
【0100】
〈実施形態1の変形例6〉
図15の表ta7に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した変形例6を示す。変形例6のヘッドチップHc7は反応液を噴射するノズル列L7a、L7bを有する。変形例6のヘッドチップHc6は処理液を噴射するノズル列L6a、L6bを有する。変形例6のヘッドチップHc5、Hc8は、液体を噴射しない未使用のノズル列Hc5a、Hc5b、Hc8a、Hc8bを有する。反応液を噴射するノズル列L7a、L7bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L6a、L6bは「第3ノズル列」に相当する。ノズル列L7a、L7bを有するヘッドチップHc7は「第2ヘッドチップ」に相当する。ノズル列L6a、L6bを有するヘッドチップHc6は「第3ヘッドチップ」に相当する。なお、特に図示しないが、ノズル列L6a、L6bに反応液を噴射させ、ノズル列L7a、L7bに処理液を噴射させてもよい。この場合では、ノズル列L6a、L6bが「第2ノズル列」に相当し、ノズル列L7a、L7bが「第3ノズル列」に相当し、ヘッドチップHc6が「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc7が「第3ヘッドチップ」に相当する。
【0101】
なお、実施形態1の変形例2~6の夫々と「第1ノズル列」、「第1ヘッドチップ」の各対応関係は、実施形態1と同様である。
【0102】
〈実施形態1の比較例1〉
図16の表ta8に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した比較例1を示す。比較例1のヘッドチップHc5は反応液を噴射するノズル列L5aと、処理液を噴射するノズル列L5bを有する。比較例1のヘッドチップHc8は処理液を噴射するノズル列L8aと、反応液を噴射するノズル列L8bを有する。
図16の例では、液体噴射ヘッドH2の+Y方向の端に配置されたヘッドチップHc5は、ノズル列L5aから反応液を噴射し、ノズル列L5bから処理液を噴射する。液体噴射ヘッドH2の-Y方向の端に配置されたヘッドチップHc8は、ノズル列L8aから処理液を噴射し、ノズル列L8bから反応液を噴射する。このように、処理液を噴射するノズル列Lが直ぐ隣にあるノズル列Lから噴射された反応液のミストによって目詰まりする虞がある。
【0103】
〈実施形態1の比較例2〉
図17の表ta9に、
図8に示したヘッドユニットUと同じ構成であるが噴射する液体を変更した比較例2を示す。比較例2のヘッドチップHc1は処理液を噴射するノズル列L1a、L1bを有する。比較例2のヘッドチップHc2はオーバーコート液を噴射するノズル列L2aとシアンインクを噴射するノズル列L2bを有する。ヘッドチップHc3、Hc4、Hc5は表ta9に示す各色インクを噴射するノズル列L3a、L3b、L4a、L4b、L5a、L5bを有する。ヘッドチップHc6、Hc7は液体を噴射しない未使用のノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有する。ヘッドチップHc8は、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bを有する。比較例2は、同一の液体噴射ヘッドH2に、インクを噴射するノズル列L5a、L5bを有するヘッドチップHc5と、反応液を噴射するノズル列L8a、L8bを有するヘッドチップHc8とが配置されている。このような比較例2のヘッドユニットUは、ヘッドチップHc8から噴射された反応液のミストによってヘッドチップHc5のノズル21が目詰まりする虞がある。
【0104】
〈実施形態1の比較例3〉
特に図示しないが、液体噴射ヘッドH1と、処理液を噴射するノズル列を有するヘッドチップHcのみを備える液体噴射ヘッドH2と、反応液を噴射するノズル列を有するヘッドチップHcのみを備える液体噴射ヘッドH3とを備えたヘッドユニットを比較例3とする。このような比較例3では、処理液を噴射するヘッドチップHcと、反応液を噴射するためのヘッドチップHcとが、別々の液体噴射ヘッドH2と液体噴射ヘッドH3とにそれぞれ配置されることになる。このような構成のヘッドユニットUは、液体噴射ヘッドの個数が増加してしまい、ヘッドユニットU及び液体噴射装置1の大きさが増大してしまう。
【0105】
〈実施形態2〉
図18及び
図19を用いて、実施形態2に係るヘッドユニットUについて説明する。
図18は、ヘッドユニットUの平面図である。
図19は各ノズル列Lと噴射される液体との関係を示す表である。なお
図18は、ヘッドユニットUのうち液体噴射ヘッドH、ヘッドチップHc、ノズル列Lのみを図示しており、支持体U1など他の部材の図示を省略している。また実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0106】
複数の液体噴射ヘッドHは、本実施形態ではY軸方向に沿って並んだ3個の液体噴射ヘッドHを含む。具体的には、液体噴射ヘッドH1、液体噴射ヘッドH2、液体噴射ヘッドH3がこの順で-Y方向に配置されている。
【0107】
液体噴射ヘッドH3は、複数のヘッドチップHc、本実施形態では4個のヘッドチップHcを有する。4個のヘッドチップHcは、X軸方向に関して同じ位置となるように、Y軸方向に沿って並設されており、4個のヘッドチップHcを-Y方向に順番にヘッドチップHc9~Hc12と称している。
【0108】
ヘッドチップHc9のノズル列La、Lbをノズル列L9a、L9bと称し、ヘッドチップHc10のノズル列La、Lbをノズル列L10a、L10bと称し、ヘッドチップHc11のノズル列La、Lbをノズル列L11a、L11bと称し、ヘッドチップHc12のノズル列La、Lbをノズル列L12a、L12bと称する。つまり、液体噴射ヘッドH3には、-Y方向に向かって順番にノズル列L9a、L9b、L10a、L10b、L11a、L11b、L12a、L12bの8列が並んで配置されている。
【0109】
図19の表ta10に示すように、ノズル列L9aはブラックインクを噴射し、ノズル列L9bはマゼンタインクを噴射する。ノズル列L10aはイエローインクを噴射し、ノズル列L10bはグリーンインクを噴射する。ノズル列L11aはレッドインクを噴射し、ノズル列L11bはオレンジインクを噴射する。ノズル列L12aはシアンインクを噴射し、ノズル列L12bはオーバーコート液を噴射する。
【0110】
このように液体噴射ヘッドH3は、インクを噴射するノズル列L9b、L9a、L10b、L10a、L11b、L11a、L11bを有するヘッドチップHc9~Hc11、並びにインクを噴射するノズル列L12a及びオーバーコート液を噴射するノズル列L12bを有するヘッドチップHc12を備えている。
【0111】
液体噴射ヘッドH1の構成は実施形態1と同様である。液体噴射ヘッドH2は、液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH3との間に配置されており、ヘッドチップHcの構成については実施形態1の変形例3と同様である。すなわち、液体噴射ヘッドH2は、処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bを有するヘッドチップHc5、Hc8と、反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを有するヘッドチップHc6、Hc7とを備えている。
【0112】
液体噴射ヘッドH1に含まれる複数のノズル列Lと、液体噴射ヘッドH3に含まれる複数のノズル列Lとは、Y軸方向に直交する対称軸Mに対して線対称に配置される。また、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列L2と、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列L3とは、対称軸Mに対して線対称に配置されている。
【0113】
具体的には、
図19の表ta10に示すように、液体噴射ヘッドH1では、+Y方向から-Y方向に向かってオーバーコート液、シアンインク、オレンジインク、レッドインク、グリーンインク、イエローインク、マゼンタインク、ブラックインクを噴射するように各ノズル列Lが配置されている。一方、液体噴射ヘッドH3では、-Y方向から+Y方向に向かって、オーバーコート液、シアンインク、オレンジインク、レッドインク、グリーンインク、イエローインク、マゼンタインク、ブラックインクを噴射するように各ノズル列Lが配置されている。このように、液体噴射ヘッドH1の+Y方向から1番目のノズル列L1aはオーバーコート液を噴射し、液体噴射ヘッドH3の-Y方向から1番目のノズル列L12bはオーバーコート液を噴射する。同様に2番目のノズル列L1b、L12aはシアンインクを噴射し、3番目のノズル列L2a、11bはオレンジインクを噴射し、以降のノズル列の組についても同様に同じ液体を噴射する。このように各ノズル列Lから噴射される液体が対称軸Mについて対称となっている。液体噴射ヘッドH2についても同様である。具体的には、+Y方向から1番目のノズル列L5aと、-Y方向から1番目のノズル列L8bは処理液を噴射する。2番目以降も同様であり、液体噴射ヘッド2の各ノズル列Lから噴射される液体が対称軸Mについて対称となっている。
【0114】
また、液体噴射ヘッドH2において、反応液を噴射するヘッドチップHc6、Hc7は、処理液を噴射するヘッドチップHc5とヘッドチップHc8との間に配置される。なお、このような配置に限定されず、処理液を噴射するヘッドチップHc6、Hc7が反応液を噴射するヘッドチップHc5とヘッドチップHc8との間に配置されていてもよい。
【0115】
液体噴射ヘッドH3における第1間隔D1は、実施形態1で述べたように定義される。すなわち、液体噴射ヘッドH3に含まれる複数のノズル列Lのうち、Y軸方向に関して両端に配置された2つのノズル列Lの間隔が第1間隔D1である。具体的には、液体噴射ヘッドH3に含まれる複数のノズル列Lのうち、+Y方向の端に配置されたノズル列L9aと、-Y方向の端に配置されたノズル列L12bとの+Y方向に関する間隔が液体噴射ヘッドH3における第1間隔D1である。本実施形態では液体噴射ヘッドH1における第1間隔D1と、液体噴射ヘッドH3における第1間隔D1は同じ間隔としてあるが、異なる間隔としてもよい。
【0116】
液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH2との第2間隔D2は、実施形態1で述べたように定義される。すなわち、第2間隔D2は、液体噴射ヘッドH3に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH2に近いノズル列L9aと、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列Lのうち最も液体噴射ヘッドH3に近いノズル列L8bとの+Y方向に関する間隔である。本実施形態では液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH2との第2間隔D2と、液体噴射ヘッドH3と液体噴射ヘッドH2との第2間隔D2は同じ間隔としてあるが、異なる間隔としてもよい。なお、液体噴射ヘッドH2における第3間隔D3、第4間隔D4、第5間隔D5は実施形態1と同様であるので図示を省略している。
【0117】
このような構成のヘッドユニットUは、双方向印刷により画像を形成することができる。具体的には、+Y方向印刷処理と-Y方向印刷処理を夫々3回行う度に、媒体Sの移動処理を行う。
【0118】
1回目の+Y方向印刷処理及び-Y方向印刷処理では、ヘッドユニットUは+Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH1がオーバーコート液を除いた各色のインクを噴射し、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc6のノズル列L6a、L6bが反応液を噴射する。そして、ヘッドユニットUは-Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH3がオーバーコート液を除いた各色のインクを噴射し、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc7のノズル列L7a、L7bが反応液を噴射する。
【0119】
2回目の+Y方向印刷処理及び-Y方向印刷処理では、ヘッドユニットUは+Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH1のノズル列L1aがオーバーコート液を噴射し、その後、ヘッドユニットUは-Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH3のノズル列L12bがオーバーコート液を噴射する。
【0120】
3回目の+Y方向印刷処理及び-Y方向印刷処理では、ヘッドユニットUは+Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc5のノズル列L5a、L5bが処理液を噴射し、その後、ヘッドユニットUは-Y方向に移動しながら、液体噴射ヘッドH2のヘッドチップHc7のノズル列L8a、L8bが処理液を噴射する。
【0121】
このような印刷処理が終わった後、媒体SをX軸方向側に移動させる。このような双方向印刷により、インク、反応液、オーバーコート液、処理液がこの順で媒体Sの1つのバンド幅に相当する領域に噴射され、部分画像が形成される。
【0122】
以上に説明したヘッドユニットUにおいて、複数の液体噴射ヘッドHは、複数のヘッドチップHc1を有する液体噴射ヘッドH3を含み、液体噴射ヘッドH2は、液体噴射ヘッドH1と液体噴射ヘッドH3との間に配置され、液体噴射ヘッドH1に含まれる複数のノズル列Lと、液体噴射ヘッドH3に含まれる複数のノズル列Lとは、Y軸方向に直交する対称軸Mに対して線対称に配置される。
【0123】
このような構成のヘッドユニットUによれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。さらに、ヘッドユニットUが+Y方向に移動しても、-Y方向に移動しても同様に反応液、色材を含むインクの各色、オーバーコート液、処理液の噴射の順番を同じ順番にすることができる。したがって、ヘッドユニットUをY軸方向に往復移動させて印刷を行う際に、+Y方向に移動して液体を噴射する順番と、-Y方向に移動して液体を噴射する順番とを同じ順番にして、媒体S上での液体の重なる順番を同様とすることができると共に、異なる種類の液体が着弾する時間差を同様にすることができる。したがって、走査方向の違いによる色の差及び走査方向の違いによるインクの凝集加減の差を抑制して、印刷品質を向上することができる。
【0124】
また、液体噴射ヘッドH2に含まれる反応液を噴射する複数のノズル列L6a、L6b、L7a、L7bと、液体噴射ヘッドH2に含まれる処理液を噴射する複数のノズル列L5a、L5b、L8a、L8bとは、対称軸Mに対して線対称に配置され、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列L6a、L6b、L7a、L7bは、液体噴射ヘッドH2に含まれる複数のノズル列L5a、L5b、L8a、L8bの間に配置される。すなわち、対称配列としたヘッドユニットUの場合においては、反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bがノズル列L5a、L5b、L8a、L8bよりも内側に配置される。このようなヘッドユニットUは、反応液を噴射するノズル列Lを、処理液を噴射するノズル列Lよりも外側に配置する場合と比較して、反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bを液体噴射ヘッドH1及び液体噴射ヘッドH3から離すことができ、反応液のミストが液体噴射ヘッドH1及び液体噴射ヘッドH3のノズル21にてインクやオーバーコート液と反応して凝集し、ノズル21が詰まるリスクを低減することができる。
【0125】
なお、液体噴射ヘッドH3は「第3ヘッド」に相当する。インク及びオーバーコート液を噴射するヘッドチップHc1、Hc12、並びにインクを噴射するヘッドチップHc2~Hc4、Hc9~Hc11は「第1ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc6、Hc7は「第2ヘッドチップ」に相当し、ヘッドチップHc5、Hc8は「第3ヘッドチップ」に相当する。オーバーコート液を噴射するノズル列L1a、L12b及びインクを噴射するノズル列L1b、L2a、L2b、L3a、L3b、L4a、L4b、L9a、L9b、L10a、L10b、L11a、L11b、L12aは「第1ノズル列」に相当し、反応液を噴射するノズル列L6a、L6b、L7a、L7bは「第2ノズル列」に相当し、処理液を噴射するノズル列L5a、L5b、L8a、L8bは「第3ノズル列」に相当する。
【0126】
〈他の実施形態〉
上記実施形態においては、液体吐出ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体吐出ヘッドを対象としたものであり、インク以外の液体を吐出する液体吐出ヘッドにも適用することができる。その他の液体吐出ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0127】
上記実施形態において、圧力室に圧力変化を生じさせる駆動素子として圧電アクチュエーターを用いて説明したが、特にこれに限定されない。例えば、駆動素子として、圧力室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルからインク滴を吐出させるものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルからインク滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0128】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものでないことは言うまでもない。当業者であれば言うまでもないことであるが、
・前記実施形態の中で開示した相互に置換可能な部材および構成等を適宜その組み合わせを変更して適用すること
・前記実施例の中で開示されていないが、公知技術であって前記実施形態の中で開示した部材および構成等と相互に置換可能な部材および構成等を適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用すること
・前記実施形態の中で開示されていないが、公知技術等に基づいて当業者が前記実施形態の中で開示した部材および構成等の代用として想定し得る部材および構成等と適宜置換し、またその組み合わせを変更して適用することは本発明の一実施形態として開示されるものである。
【0129】
〈付記〉
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0130】
好適な態様1に係るヘッドユニットは、第1液体と、前記第1液体を凝集させる反応液と、前記第1液体に比べて前記反応液に対して凝集しにくい処理液と、を噴射するヘッドユニットであって、前記ヘッドユニットは、第1方向に沿って並んで配置された複数の液体噴射ヘッドを備え、前記複数の液体噴射ヘッドの夫々は、1以上のノズル列を有する複数のヘッドチップを有し、前記液体噴射ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち、前記第1方向の端に配置されたノズル列と、前記第1方向とは反対の第2方向の端に配置されたノズル列との前記第1方向に関する間隔は、第1間隔であり、前記複数の液体噴射ヘッドは、互いに隣り合う第1ヘッド及び第2ヘッドを含み、前記第1ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第2ヘッドに近いノズル列と、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記第1ヘッドに近いノズル列との前記第1方向に関する第2間隔は、前記第1間隔よりも長く、前記第1ヘッドは、前記第1液体を噴射する1以上の第1ノズル列を有する複数の第1ヘッドチップを有し、前記第2ヘッドは、前記反応液を噴射する1以上の第2ノズル列を有する1以上の第2ヘッドチップ及び前記処理液を噴射する1以上の第3ノズル列を有する1以上の第3ヘッドチップを有する。
【0131】
また態様1の具体例である態様2において、前記第1ヘッドは、前記第2ヘッドに対して前記第1方向に配置され、前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップに対して前記第2方向に配置される。
【0132】
また態様2の具体例である態様3において、前記第2ヘッドは、前記複数の液体噴射ヘッドのうち、前記第2方向の端に配置された液体噴射ヘッドである。
【0133】
また態様3の具体例である態様4において、前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち、前記第2方向の端に配置されたヘッドチップであり、前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち、前記第1方向の端に配置されたヘッドチップである。
【0134】
また態様1の具体例である態様5において、前記ヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち、隣り合うノズル列同士の前記第1方向に関する間隔は、第3間隔であり、前記液体噴射ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち隣り合う2つのヘッドチップにおいて、一方のヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も他方のヘッドチップに近いノズル列と、前記他方のヘッドチップに含まれる複数の前記ノズル列のうち最も前記一方のヘッドチップに近いノズル列との前記第1方向に関する間隔は、第4間隔であり、前記第4間隔は、前記第3間隔よりも長く、前記第2ヘッドの前記第2ノズル列と前記第2ヘッドの前記第3ノズル列とは、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップのうち同じヘッドチップに配置されない。
【0135】
また態様5の具体例である態様6において、前記第2ヘッドの前記第2ノズル列と前記第2ヘッドの前記第3ノズル列との前記第1方向に関する最短の第5間隔は、前記第4間隔よりも長い。
【0136】
また態様1の具体例である態様7において、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記ヘッドチップは、前記第1方向に関して前記第2ヘッドの前記第2ヘッドチップと前記第2ヘッドの前記第3ヘッドチップとの間に配置された液体を噴射しないダミーヘッドチップを含む。
【0137】
また態様1の具体例である態様8において、前記複数の液体噴射ヘッドは、複数の前記第1ヘッドチップを有する第3ヘッドを含み、前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドと前記第3ヘッドとの間に配置され、前記第1ヘッドに含まれる複数の前記第1ノズル列と、前記第3ヘッドに含まれる複数の前記第1ノズル列とは、前記第1方向に直交する対称軸に対して線対称に配置される。
【0138】
また態様8の具体例である態様9において、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記第2ノズル列と、前記第2ヘッドに含まれる複数の前記第3ノズル列とは、前記対称軸に対して線対称に配置され、前記第2ヘッドに含まれる前記複数の第2ノズル列は、前記第2ヘッドに含まれる前記複数の第3ノズル列の間に配置される。
【0139】
また態様1の具体例である態様10において、前記第2ヘッドは、前記第1ヘッドチップを含まない。
【0140】
また態様1の具体例である態様11において、前記第2間隔は、前記液体噴射ヘッドの前記第1方向に関する寸法よりも小さい。
【0141】
また態様1の具体例である態様12において、前記処理液は、柔軟剤を含む液体である。
【0142】
また好適な他の態様である態様13に係る液体噴射装置は、上記態様のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットを前記第1方向及び前記第2方向に往復移動させる移動機構とを備える。
【符号の説明】
【0143】
D1…第1間隔、D2…第2間隔、D3…第3間隔、D4…第4間隔、D5…第5間隔、H…液体噴射ヘッド、H1…液体噴射ヘッド(第1ヘッド)、H2…液体噴射ヘッド(第2ヘッド)、H3…液体噴射ヘッド(第3ヘッド)、Hc…ヘッドチップ、L…ノズル列、M…対称軸、S…媒体、U…ヘッドユニット、1…液体噴射装置、12…圧力室、20…ノズルプレート、21…ノズル、200…流路部材。