(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163509
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/02 20060101AFI20241115BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C01B3/02 Z
C10J3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079197
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】523176244
【氏名又は名称】森 桂一
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】森 桂一
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140BA02
4G140BB03
4G140FA02
4G140FB04
4G140FB05
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】
【課題】高いエネルギー投資効率で水素を製造することができる水素製造装置を提供する。
【解決手段】水素製造装置1は、バイオマス原料Bを無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解することで水素ガスを含む生成ガスGを生成するガス生成部10と、ガス生成部10で生成された生成ガスGから水素ガスを分離する水素ガス分離器30とを備える。ガス生成部10は、バイオマス原料Bを熱分解する熱分解炉50と、熱分解炉50に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段とを含む。熱分解炉50は、ロータリキルン51と、ロータリキルン51を加熱するヒータ52とを有する。ヒータ52は、ロータリキルン51の内部を1000℃から1100℃に加熱するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解することで水素ガスを含む生成ガスを生成するガス生成部と、
前記ガス生成部で生成された前記生成ガスから前記水素ガスを分離する水素ガス分離器と
を備える、水素製造装置。
【請求項2】
前記ガス生成部は、
前記バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解する熱分解炉と、
前記熱分解炉に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段と
を含む、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項3】
前記ガス生成部は、前記バイオマス原料を前記熱分解炉に供給する原料供給部をさらに含み、
前記原料供給部は、
前記バイオマス原料が投入されるホッパと、
前記バイオマス原料を前記ホッパから前記熱分解炉に供給可能なシリンダと
前記シリンダに接続される吸引ポンプと
を含み、
前記吸引ポンプは、前記外気流入抑制手段として機能する、
請求項2に記載の水素製造装置。
【請求項4】
前記ガス生成部は、前記バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解する熱分解炉を含み、
前記熱分解炉は、
炉本体と、
前記炉本体を加熱するヒータと
を有する、請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項5】
前記熱分解炉の前記ヒータは、前記炉本体の内部を1000℃から1100℃に加熱するように構成される、請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項6】
前記ガス生成部は、バイオマス燃料を用いて電力を生成する発電部をさらに含み、
前記発電部により生成された前記電力の少なくとも一部は前記ヒータに供給される、
請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項7】
前記ガス生成部は、前記水素ガス分離器で分離された前記水素ガスを用いて電力を生成する発電部をさらに含み、
前記発電部により生成された前記電力の少なくとも一部は前記ヒータに供給される、
請求項4に記載の水素製造装置。
【請求項8】
前記水素ガス分離器は、
前記生成ガスを供給する供給ポートと、前記生成ガス中の水素ガスを排出する水素排出ポートとを有するハウジングと、
前記生成ガス中の前記水素ガスを透過させるが、前記生成ガス中の少なくとも1種のガスは透過させない水素ガス透過膜と
を含み、
前記水素ガス透過膜は、前記供給ポートを通じて前記生成ガスが供給される第1の空間と、前記水素排出ポートに連通する第2の空間とを互いに隔絶するように前記ハウジング内に収容される、
請求項1に記載の水素製造装置。
【請求項9】
前記水素ガス分離器の前記水素ガス透過膜はシリカ膜から形成される、請求項8に記載の水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素製造装置に係り、特にバイオマス原料から水素を製造する水素製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代のクリーンエネルギー源として水素が注目されており、将来的に水素の需要が増えることが予想される。水素の原料として石油や天然ガスなどの化石燃料を用いると、水素の製造時に二酸化炭素が排出されるため、カーボンニュートラルの観点からバイオマス原料から水素を製造する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された装置は、予熱したアルミナ、セラミック、鋼などの熱担持媒体をバイオマス原料に供給して熱分解ガスを生成する熱分解器と、この熱分解ガスに水蒸気と酸素を供給して昇温して水素に富む改質ガスを生成する改質器とを備えている。しかしながら、この水素製造装置における熱分解器の温度は中低温(680℃~740℃)であるため、反応速度が遅く、生成ガス中の水素含有率も5割程度に留まり、エネルギー投資効率が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、高いエネルギー投資効率で水素を製造することができる水素製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、高いエネルギー投資効率で水素を製造することができる水素製造装置が提供される。この水素製造装置は、バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解することで水素ガスを含む生成ガスを生成するガス生成部と、上記ガス生成部で生成された上記生成ガスから上記水素ガスを分離する水素ガス分離器とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における水素製造装置を示す概念図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す水素製造装置における水素ガス分離器の構成を示す概念図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態における水素製造装置を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る水素製造装置の実施形態について
図1から
図3を参照して詳細に説明する。
図1から
図3において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図3においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0008】
図1は、本発明の第1の実施形態における水素製造装置1を示す概念図である。
図1に示すように、本実施形態における水素製造装置1は、バイオマス原料Bを熱分解して水素を含む生成ガスGを生成するガス生成部10と、ガス生成部10で生成された生成ガスGを洗浄及び処理するスクラバ20と、スクラバ20で処理された生成ガスGから水素を分離する水素ガス分離器30と、スクラバ20で処理された生成ガスGを水素ガス分離器30に移送する吸引ポンプ22と、水素ガス分離器30により分離された水素ガスを捕集する水素ガス捕集タンク40と、水素ガス分離器30により水素ガスから分離された残存ガスを捕集する残存ガス捕集タンク42とを備えている。バイオマス原料Bは動植物から生まれた有機性資源であり、このようなバイオマス原料Bの例としては、木屑、紙屑、繊維屑、木材、農林水産物、稲わら、籾殻、食品廃棄物、生ゴミ、動物の死骸、動物の糞尿、プランクトンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0009】
ガス生成部10は、バイオマス原料Bを熱分解する熱分解炉50と、熱分解炉50にバイオマス原料Bを供給する原料供給部60と、熱分解炉50で生成された生成ガスGと熱分解後の残留物Rとを排出する排出部70とを含んでいる。熱分解炉50は、図示しないモータにより軸周りに回転駆動されるロータリキルン51(炉本体)と、ロータリキルン51の外周に取り付けられるヒータ52とを有している。このヒータ52としては電気により発熱する電気式加熱器を用いることができる。ヒータ52は、ロータリキルン51の内部を1000℃~1100℃に加熱できる能力を有することが好ましい。また、ロータリキルン51内の温度を測定する温度検出器を設け、検出された温度に応じてヒータ52による加熱を制御してもよい。なお、
図1においては、ロータリキルン51が水平に置かれているように示されているが、ロータリキルン51の下流側(
図1において右側)の端部が上流側(
図1において左側)の端部よりも下方に位置するようにロータリキルン51を傾斜させて配置して、バイオマス原料Bが下流側に向かって流れやすくなるようにすることが好ましい。
【0010】
原料供給部60は、バイオマス原料Bを貯留するホッパ61と、ホッパ61にバイオマス原料Bを搬送するコンベア62と、ロータリキルン51の上流側の端部に接続されるシリンダ63と、シリンダ63内で軸方向に移動可能なピストン64と、ピストン64を軸方向に移動させる駆動部65と、ホッパ61の下部から供給されるバイオマス原料Bを混合しつつシリンダ63に移送するスクリュコンベア66と、スクリュコンベア66を回転駆動させるモータ67とを有している。水素製造装置1は、必要に応じて、ホッパ61に投入する前のバイオマス原料を適切な大きさに粉砕する粉砕器12を有していてもよい。この場合には、バイオマス原料Bは粉砕器12により粉砕された後にコンベア62によってホッパ61に投入される。
【0011】
モータ67によりスクリュコンベア66が回転駆動されると、ホッパ61の下部から供給されたバイオマス原料Bがスクリュコンベア66によって混合されてスクリュコンベア66の端部でシリンダ63内に投入される。シリンダ63内に充填されたバイオマス原料Bは、駆動部65がピストン64を軸方向に移動させることでロータリキルン51の内部に押し出される。このシリンダ63内に充填されたバイオマス原料Bは、ロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段としての機能も有する。
【0012】
また、原料供給部60は、シリンダ63に接続される水蒸気源68及び吸引ポンプ69を含んでいる。この水蒸気源68からシリンダ63内のバイオマス原料Bに水蒸気が供給される。この水蒸気源68からの水蒸気は、バイオマス原料Bの熱分解の酸化剤として機能する。また、水蒸気源68からの水蒸気は、バイオマス原料Bとともに、ロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段としての機能も有する。
【0013】
シリンダ63に接続された吸引ポンプ69は、シリンダ63内を真空引きすることで、ロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制することができる。すなわち、吸引ポンプ69は、ロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段としての機能を有する。上述のように、水蒸気源68からの水蒸気はロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制する機能を有するが、ロータリキルン51内でバイオマス原料Bが燃焼することによる水素の損失を最小限にする観点から、本実施形態のように水蒸気源68に加えて吸引ポンプ69をシリンダ63に接続することが好ましい。
【0014】
排出部70は、ロータリキルン51の下流側の端部に取り付けられたダクト71と、ダクト71の下方に配置されたトレー72とを含んでいる。トレー72の内部には水Wが満たされており、ダクト71の下端はトレー72内の水中で開口している。熱分解炉50において生成ガスGとならずに残った灰や金属類などの残留物Rは、ロータリキルン51内部からシャッタ(図示せず)を通じてダクト71に排出され、ダクト71の下端からトレー72内の水中に落下して堆積する。このように、水Wで満たされたトレー72とダクト71により、ロータリキルン51内に外気が流入するのが抑制される。すなわち、本実施形態におけるトレー72及びダクト71は、ロータリキルン51内に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段としての機能を有する。
【0015】
原料供給部60のピストン64によりロータリキルン51の内部に押し出されたバイオマス原料Bは、ロータリキルン51内に例えば30分間滞留し、その間にヒータ52により例えば1000℃から1100℃、好ましくは1050℃の高温で加熱される。上述した外気流入抑制手段によりロータリキルン51内に外気が流入するのが抑制されているため、ロータリキルン51内のバイオマス原料Bは、無酸素状態又は低酸素状態で水蒸気源68から供給された水蒸気を酸化剤として熱分解される。この熱分解により水素ガスを含む生成ガスGが生成される。生成された生成ガスGは、例えば水素65%、メタン10%、一酸化炭素15%、及び二酸化炭素10%を含んでいる。この生成ガスGは、排出部70のダクト71を通じてスクラバ20に送られ、スクラバ20で洗浄及び処理される。スクラバ20で処理された生成ガスGは吸引ポンプ22によって水素ガス分離器30に送られる。
【0016】
図2は、水素ガス分離器30の構成を示す概念図である。
図2に示すように、水素ガス分離器30は、ハウジング31と、ハウジング31内に収容された水素ガス透過膜32とを有している。本実施形態における水素ガス透過膜32は円筒状に形成されており、この円筒状の水素ガス透過膜32が円筒状のハウジング31の内部に配置され、いわゆる二重管のような構造となっている。水素ガス透過膜32の軸方向の両端部はハウジング31の内面と密着固定されており、水素ガス透過膜32の外周面とハウジング31の内周面との間の空間S1(第1の空間)と水素ガス透過膜32の半径方向内側の空間S2(第2の空間)とは、水素ガス透過膜32を介して互いに隔絶されている。
【0017】
ハウジング31の外周面には、スクラバ20(吸引ポンプ22)から延びる管路33に接続される供給ポート34と、残存ガス捕集タンク42に延びる管路35に接続される第1の排出ポート36とが設けられている。また、ハウジング31の軸方向の一端面には、水素ガス透過膜32の半径方向内側の空間S2に連通する第2の排出ポート37(水素排出ポート)が設けられており、この第2の排出ポート37には、水素ガス捕集タンク40に延びる管路38が接続されている。
【0018】
水素ガス透過膜32は、水素ガスの分子よりも小さい微細孔が形成された膜であり、生成ガスGに含まれるガスのうち少なくとも1種類はこの微細孔を通って水素ガス透過膜32を透過し、水素ガスは水素ガス透過膜32を透過しない。本実施形態では、生成ガスG中の水素ガスのみが水素ガス透過膜32を透過し、それ以外のメタンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、及びその他の不純物は水素ガス透過膜32を透過しないようになっている。例えば、このような水素ガス透過膜32としてはパラジウム膜、パラジウム合金膜、カーボン膜、セラミック膜、ゼオライト膜、高分子膜、及びシリカ膜が挙げられる。なお、水素ガス透過膜32としてパラジウム膜やパラジウム合金膜を高温下で用いた場合には、ハウジング31と水素ガス透過膜32との熱膨張係数の違いにより水素ガス透過膜32の破損が生じたり、膜表面には酸素や水蒸気などの汚染物質が吸着しやすくなることによって水素透過率が低下したりすることが考えられることから、水素ガス透過膜32としてシリカ膜を用いることがより好ましい。
【0019】
スクラバ20で処理された生成ガスGは、管路33を通じて吸引ポンプ22により供給ポート34から水素ガス透過膜32の外周面とハウジング31の内周面との間の空間S1に供給される。空間S1に供給された生成ガスG中の水素ガスは水素ガス透過膜32を透過して水素ガス透過膜32の半径方向内側の空間S2に移動する。空間S2に移動した水素ガスは、第2の排出ポート37から管路38を通って水素ガス捕集タンク40に送られ、水素ガス捕集タンク40に貯留される。このようにして貯留された水素ガスは各種のエネルギー源として利用することができる。一方、空間S1に供給された生成ガスG中の水素ガス以外のガスは、水素ガス透過膜32を透過しないため、第1の排出ポート36から管路35を通って残存ガス捕集タンク42に送られ、残存ガス捕集タンク42に貯留される。
【0020】
上述したように、本実施形態による水素製造装置1によれば、ガス生成部10の熱分解炉50においてバイオマス原料Bを無酸素又は低酸素状態で1000℃から1100℃に加熱して熱分解することで、水素含有率の高い生成ガスGを生成することができる。そして、水素ガス分離器30によってこの生成ガスGから水素ガスを分離することにより高いエネルギー投資効率で水素を製造することができる。
【0021】
また、上述したように、本実施形態では、複数の外気流入抑制手段が設けられており、これらの外気流入抑制手段によってロータリキルン51に外気が流入することが抑制されるので、バイオマス原料Bの熱分解が行われるロータリキルン51内の酸素量を低減することができる。したがって、ロータリキルン51内の熱分解により生成される生成ガスの水素含有率を高めることができる。また、上述した外気流入抑制手段に加えて、あるいは上述した外気流入抑制手段に代えて、以下に述べるような外気流入抑制手段を利用することも可能である。
【0022】
また、例えばガス生成部10の構成要素の間にガスケットやパッキンなどのシール材を配置して、ロータリキルン51の内部空間を外部から封止してもよい。このようなシール材によりロータリキルン51に外気が流入することを抑制することができる。この場合には、シール材が外気流入抑制手段として機能する。
【0023】
また、ロータリキルン51内に圧力センサ(図示せず)を配置してもよい。この圧力センサの検出信号に基づいてバイオマス原料Bの供給量やヒータ52の温度などのパラメータを制御してロータリキルン51内の圧力を一定に維持することで、ロータリキルン51に外気が流入することを抑制することができる。例えば、圧力センサにより検出されるロータリキルン51内の圧力の変化から、バイオマス原料Bの供給量が過剰であること又は過少であることを検知し、原料供給部60からロータリキルン51へのバイオマス原料Bの供給量を適切に制御することで、ロータリキルン51内の圧力を一定に維持し、ロータリキルン51に外気が流入することを抑制することができる。この場合には、圧力センサ及びバイオマス原料Bの供給量などのパラメータを制御する制御部が外気流入抑制手段として機能する。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施形態における水素製造装置101を示す概念図である。
図3に示すように、この水素製造装置101のガス生成部110は、上述した第1の実施形態のガス生成部10に発電部120を追加したものである。この発電部120は電力を生成して、生成した電力の少なくとも一部を熱分解炉50のヒータ52に供給するように構成されている。なお、発電部120で生成した電力を原料供給部60のモータ67や駆動部65、コンベア62などにも供給するようにしてもよい。
【0025】
この発電部120における発電のために化石燃料を用いた場合、水素製造装置全体として二酸化炭素の排出に寄与してしまうことになる。このため、本実施形態における発電部120は、バイオマス燃料Fを用いて電力を生成し、カーボンニュートラルを実現するように構成されている。このバイオマス燃料Fは、上述したバイオマス原料Bと同様に、動植物から生まれた有機性資源であり、このようなバイオマス燃料Fの例としては、木屑、紙屑、繊維屑、木材、農林水産物、稲わら、籾殻、食品廃棄物、生ゴミ、動物の死骸、動物の糞尿、プランクトンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。バイオマス燃料Fとしてバイオマス原料Bと同種のものを用いてもよいし、別の種類のものを用いてもよい。
【0026】
また、発電部120は、バイオマス燃料Fに代えて、水素ガス捕集タンク40に貯留された水素ガスを用いて電力を生成するように構成されていてもよい。この場合にもカーボンニュートラルを実現することができる。
【0027】
上述した実施形態の水素ガス分離器30は、水素ガスを選択的に透過するガス透過膜を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、生成ガスGを加圧して、水素に対してのみ高い吸着力を有する吸着剤に生成ガスG中の水素ガスを吸着させ、その後減圧して吸着剤に吸着した水素ガスだけを吸着剤から分離するもの(圧力スイング吸着(PSA)法)であってもよい。
【0028】
また、複数の水素ガス分離器30を直列に接続し、生成ガスGから多段的に水素ガスを分離するように構成してもよい。
【0029】
以上述べたように、本発明に係る水素製造装置は、以下のような構成を採用することが可能である。
【0030】
[構成1]
バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解することで水素ガスを含む生成ガスを生成するガス生成部と、
上記ガス生成部で生成された上記生成ガスから上記水素ガスを分離する水素ガス分離器と
を備える、水素製造装置。
【0031】
このような構成によれば、バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解することで、水素含有率の高い生成ガスを生成することができる。そして、水素ガス分離器によってこの生成ガスから水素ガスを分離することにより高いエネルギー投資効率で水素を製造することができる。
【0032】
[構成2]
上記構成1の水素製造装置において、
上記ガス生成部は、
上記バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解する熱分解炉と、
上記熱分解炉に外気が流入するのを抑制する外気流入抑制手段と
を含む。
【0033】
このように外気流入抑制手段によって熱分解炉に外気が流入することが抑制されるので、バイオマス原料の熱分解が行われる熱分解炉内の酸素量を低減することができ、熱分解により生成される生成ガスの水素含有率を高めることができる。
【0034】
[構成3]
上記構成2の水素製造装置において、
上記ガス生成部は、上記バイオマス原料を上記熱分解炉に供給する原料供給部をさらに含み、
上記原料供給部は、
上記バイオマス原料が投入されるホッパと、
上記バイオマス原料を上記ホッパから上記熱分解炉に供給可能なシリンダと
上記シリンダに接続される吸引ポンプと
を含み、
上記吸引ポンプは、上記外気流入抑制手段として機能する。
【0035】
[構成4]
上記構成1から3のいずれかの水素製造装置において、
上記ガス生成部は、上記バイオマス原料を無酸素又は低酸素状態で加熱して熱分解する熱分解炉を含み、
前記熱分解炉は、
炉本体と、
上記炉本体を加熱するヒータと
を有する。
【0036】
[構成5]
上記構成4の水素製造装置において、
上記熱分解炉の上記ヒータは、上記炉本体の内部を1000℃から1100℃に加熱するように構成される。
【0037】
[構成6]
上記構成4又は5の水素製造装置において、
上記ガス生成部は、バイオマス燃料を用いて電力を生成する発電部をさらに含み、
上記発電部により生成された上記電力の少なくとも一部は上記ヒータに供給される。
【0038】
[構成7]
上記構成4又は5の水素製造装置において、
上記ガス生成部は、上記水素ガス分離器で分離された上記水素ガスを用いて電力を生成する発電部をさらに含み、
上記発電部により生成された上記電力の少なくとも一部は上記ヒータに供給される。
【0039】
[構成8]
上記構成1から7のいずれかの水素製造装置において、
上記水素ガス分離器は、
上記生成ガスを供給する供給ポートと、上記生成ガス中の水素ガスを排出する水素排出ポートとを有するハウジングと、
上記生成ガス中の上記水素ガスを透過させるが、上記生成ガス中の少なくとも1種のガスは透過させない水素ガス透過膜と
を含み、
上記水素ガス透過膜は、上記供給ポートを通じて上記生成ガスが供給される第1の空間と、上記水素排出ポートに連通する第2の空間とを互いに隔絶するように上記ハウジング内に収容される。
【0040】
[構成9]
上記構成8の水素製造装置において、
上記水素ガス分離器の上記水素ガス透過膜はシリカ膜から形成される。
【0041】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1,101 水素製造装置
10,110 ガス生成部
12 粉砕器
20 スクラバ
22 吸引ポンプ
30 水素ガス分離器
31 ハウジング
32 水素ガス透過膜
34 供給ポート
36 第1の排出ポート
37 第2の排出ポート(水素排出ポート)
40 水素ガス捕集タンク
42 残存ガス捕集タンク
50 熱分解炉
51 ロータリキルン(炉本体)
52 ヒータ
60 原料供給部
61 ホッパ
62 コンベア
63 シリンダ
64 ピストン
65 駆動部
66 スクリュコンベア
67 モータ
68 水蒸気源
69 吸引ポンプ
70 排出部
71 ダクト
72 トレー
120 発電部
B バイオマス原料
F バイオマス燃料
G 生成ガス
R 残留物
S1 (第1の)空間
S2 (第2の)空間