(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163512
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】昆虫認識モデル生成装置、および昆虫生産管理システム
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20241115BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20241115BHJP
A01K 67/033 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
A01K29/00 C
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079200
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔦岡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】河合 重和
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩平
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096FA18
5L096FA52
5L096FA59
5L096FA69
5L096GA34
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】昆虫の個体数を数える作業を省力化可能な昆虫認識モデル生成装置、および昆虫生産管理システムを提供する。
【解決手段】機械学習装置20と、記憶装置30と、を備え、記憶装置30は、訓練画像データ31と、テスト画像データ32と、学習済みモデル33と、を備え、機械学習装置20は、カメラ21と、訓練画像データ31に対して付与されるアノテーション50が入力される入力部22と、訓練画像データ31を用いて学習済みモデル33を生成するモデル生成部23と、学習済みモデル33によってテスト画像データ32を判定したときに、テスト画像データ32に含まれるコオロギC1が認識されたか否かを判定する判定部24と、判定部24によるテスト画像データ32の判定結果に基づいて、判定結果が誤っている場合にはアノテーション50を修正する、アノテーション修正部25と、を備える、昆虫認識モデル生成装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昆虫を認識する昆虫認識モデルを生成する昆虫認識モデル生成装置であって、
機械学習装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、
前記昆虫がアノテーションにより紐づけられた学習用の訓練画像データと、
評価用のテスト画像データと、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルと、を備え、
前記機械学習装置は、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを取得する画像取得部と、
前記訓練画像データに対して付与される前記アノテーションが入力される入力部と、
前記訓練画像データを用いて機械学習を行うことにより前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記学習済みモデルによって前記テスト画像データを判定したときに、前記テスト画像データに含まれる前記昆虫が認識されたか否かを判定する判定部と、
前記判定部による前記テスト画像データの判定結果に基づいて、前記判定結果が誤っている場合には前記アノテーションを修正し、前記判定結果が正しい場合には前記アノテーションを維持する、アノテーション修正部と、を備える、昆虫認識モデル生成装置。
【請求項2】
前記アノテーションは、前記昆虫の外形を、閉じた線で囲うことにより行われる、請求項1に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項3】
前記閉じた線により形成される図形が複数の頂点を有する多角形であり、
前記アノテーションは、前記多角形の前記複数の頂点の相対的な位置に関する情報と、前記多角形の画素数に基づく情報と、を含む、請求項2に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項4】
前記昆虫は、幼虫と成虫の形状が類似しており、蛹である期間を経ることなく脱皮を繰返すことにより、前記幼虫から前記成虫に変態する不完全変態の前記昆虫である、請求項1に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項5】
前記アノテーションは、前記昆虫と、前記昆虫が脱皮した抜け殻と、を区別する、請求項4に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項6】
前記アノテーションは、前記昆虫の齢を区別する、請求項4に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項7】
前記アノテーションは、はねの有無によって、前記昆虫が成虫であるか幼虫であるかを区別する、請求項4に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項8】
前記アノテーションは、前記昆虫の外形を、閉じた線で囲うことにより行われ、
前記閉じた線により形成される図形が、
前記昆虫の頭部、胸部、および腹部の外形を囲う本体アノテーションと、
前記はねの外形を囲うはねアノテーションと、を備える、請求項7に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項9】
前記本体アノテーションは、閉じた線により形成される多角形の複数の頂点の相対的な位置に関する情報と、前記多角形の画素数に基づく情報と、を含む、請求項8に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項10】
前記アノテーションは、産卵管の有無によって前記昆虫の雌雄を区別する、請求項4に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項11】
前記アノテーションは、前記昆虫の外形を、閉じた線で囲うことにより行われ、
前記閉じた線により形成される図形が、
前記昆虫の頭部、胸部、および腹部の外形を囲う本体アノテーションと、
前記腹部から突出した前記産卵管の外形を囲う産卵管アノテーションと、を備える、請求項10に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項12】
前記本体アノテーションは、閉じた線により形成される多角形の複数の頂点の相対的な位置に関する情報と、前記多角形の画素数に基づく情報と、を含む、請求項11に記載の昆虫認識モデル生成装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の昆虫認識モデル生成装置を備える、昆虫生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫認識モデル生成装置、および昆虫生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、昆虫の一種であるコオロギを飼育するコオロギ用の飼育装置が記載されている。飼育装置においては、コオロギに水を与えるために、水を含んだ脱脂綿が置かれた容器を飼育容器内に設けることや、コオロギが物陰に隠れることができるように、軽く丸められた新聞紙を多数飼育容器内に設けること等が、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術によれば、コオロギの成虫は、出荷時に、出荷用の段ボール箱に数えながら投入供給される。すなわち、従来技術においては、コオロギの個体数は手作業によって数えられていた。このため、コオロギの個体数を数える作業の省力化が望まれていた。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、昆虫の個体数を数える作業を省力化可能な昆虫認識モデル生成装置、および昆虫生産管理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
昆虫を認識する昆虫認識モデルを生成する昆虫認識モデル生成装置であって、
機械学習装置と、記憶装置と、を備え、
前記記憶装置は、
前記昆虫がアノテーションにより紐づけられた学習用の訓練画像データと、
評価用のテスト画像データと、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルと、を備え、
前記機械学習装置は、
前記訓練画像データおよび前記テスト画像データを取得する画像取得部と、
前記訓練画像データに対して付与される前記アノテーションが入力される入力部と、
前記訓練画像データを用いて機械学習を行うことにより前記学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
前記学習済みモデルによって前記テスト画像データを判定したときに、前記テスト画像データに含まれる前記昆虫が認識されたか否かを判定する判定部と、
前記判定部による前記テスト画像データの判定結果に基づいて、前記判定結果が誤っている場合には前記アノテーションを修正し、前記判定結果が正しい場合には前記アノテーションを維持する、アノテーション修正部と、を備える、昆虫認識モデル生成装置にある。
【0007】
本発明の他の態様は、
上記のいずれか一つに記載の昆虫認識モデル生成装置を備える、昆虫生産管理システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、昆虫を認識可能な昆虫認識モデルを生成することができる。これにより、昆虫として認識されたセグメンテーションの個数を機械学習装置が数えることにより、昆虫の個体数を算出することができる。この結果、人力によって昆虫の個体数を数える作業を省略することができるので、昆虫の計数作業の工数を低減することができる。
【0009】
本発明の他の態様によれば、昆虫生産管理システムにおいて、コオロギの計数作業の工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の昆虫生産管理システムおよび昆虫認識モデル生成装置を示すブロック図。
【
図4】コオロギに、実施形態1に係るアノテーションが付与された状態を示す図。
【
図5】実施形態1の昆虫認識モデル生成装置の動作を示すフローチャート。
【
図7】実施形態1に係る訓練画像データにアノテーションが付与された状態を示す図。
【
図8】実施形態1に係る学習済みモデルによりコオロギにセグメンテーションが付与された状態を示す図。
【
図9】実施形態1に係るテスト画像データを示す図。
【
図10】実施形態1に係るテスト画像データの判定結果の一例を示す図。
【
図11】実施形態1において、修正されたアノテーションがコオロギに付与された状態を示す図。
【
図12】実施形態1に係る学習済みモデルを示す図であって、(a)は、前回の学習済みモデルを示す図であり、(b)は、新たに生成された学習済みモデルを示す図。
【
図13】実施形態2に係るフタホシコオロギにアノテーションが付与された状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
本発明は、昆虫認識モデル生成装置1、およびこれを備えた昆虫生産管理システム2に関する。本形態に係る昆虫は、特に限定されず、成長する際に完全変態するものであっても良いし、不完全変態をするものであっても良い。不完全変態をする昆虫は、幼虫と成虫の形状が類似しており、蛹である期間を経ることなく脱皮を繰返すことにより、幼虫から成虫に変態するものをいう。不完全変態をする昆虫としては、例えば、直翅目を好適に用いることができる。直翅目としては、例えば、コオロギ、イナゴ、バッタ等を例示することができる。本形態においては、コオロギC1が例示される。なお、以下の説明において、複数の同一部材については一部の構成について符号を付し、他の構成については符号を省略する場合がある。
【0012】
1.昆虫生産管理システム2の概要
図1に示すように、昆虫生産管理システム2は、飼育装置10と、昆虫認識モデル生成装置1と、を備える。飼育装置10では、コオロギC1が飼育される。昆虫認識モデル生成装置1は、機械学習装置20と、記憶装置30と、を備える。
【0013】
機械学習装置20は、カメラ21(画像取得部の一例)と、入力部22と、モデル生成部23と、判定部24と、アノテーション修正部25と、を備える。記憶装置30は、訓練画像データ31と、テスト画像データ32と、学習済みモデル33(昆虫認識モデルの一例)と、を格納する。記憶装置30は特に限定されず、半導体メモリ、ハードディスクドライブ等、任意の記憶媒体を適宜に選択できる。
【0014】
2.飼育装置10およびコオロギC1
図2に示すように、飼育装置10は、コオロギC1を飼育するために用いられる。飼育装置10は、詳細には図示しないが、複数の飼育箱11が、接続部材12によって連結されている。飼育箱11は箱状に形成されている。各飼育箱11には、複数のコオロギC1が収容されている。各飼育箱11には、コオロギC1に水を与える給水手段(図示せず)と、餌を与える給餌手段と、が収容されている。
【0015】
飼育箱11には、同じ齢のコオロギC1が飼育される。コオロギC1は、体の表面の組織を更新する生態、所謂「脱皮」を繰り返しながら体格を増して複数段階で成長することが知られている。そこで、本例では、便宜上、脱皮の生態から定まる1単位期間を「1齢」とし、コオロギC1を複数の飼育箱11のそれぞれにおいて同じ齢毎に飼育するようにしている。
【0016】
コオロギC1が孵化してから最初に脱皮する(第1回目の脱皮)までの期間における、当該コオロギC1の齢を「1齢」とすることができる。この場合、コオロギC1の第1回目の脱皮から次回の脱皮(第2回目の脱皮)までの期間における、当該コオロギC1の齢が「2齢」となり、コオロギC1の第2回目の脱皮から次回の脱皮(第3回目の脱皮)までの期間における、当該コオロギC1の齢が「3齢」となる。このように、脱皮の生態を有する昆虫においては、第(M-1)回目の脱皮後から第M回目の脱皮までに期間における、当該生物の齢を「M齢」とすることができる(ただし、Mを自然数とする。)。
【0017】
本例では、コオロギC1が8齢まで成長すると飼育を終了して収集することとし、8つの飼育箱11を準備している。
図2には、1齢のコオロギC1が飼育される飼育箱11が示されている。ただし、飼育箱11の個数は8つに限定されず、任意の個数とすることができる。
【0018】
互いに隣り合う2つの飼育箱11は接続部材12によって接続されている。飼育箱11には、接続部材12を取付けるための貫通穴13が設けられている。接続部材12は、2つの飼育箱11を結ぶ連絡通路12aを有する。このため、一方の飼育箱11と他方の飼育箱11は、接続部材12の連絡通路12aによって互いに連通している。
【0019】
接続部材12の連絡通路12aは、飼育箱11と飼育箱11同士を結ぶことに加えて、その通路断面積がコオロギC1の1齢の状態での移動を可能とし且つ2齢以上の高齢の状態での移動を不能とするように設定されている。特に図示しないが、この点についてはその他の接続部材12も同様である。これにより、各飼育箱11には、同じ齢のコオロギC1が飼育される構成となっている。
【0020】
図2に示すように、飼育箱11の側壁の上端部には、カメラ21が、ステー14を介して取付けられている。カメラ21によって、飼育箱11に飼育されるコオロギC1の画像データを撮影可能になっている。詳細には図示しないが、カメラ21は、各飼育箱11に取付けられている。
【0021】
ここで、
図3を参照して、コオロギC1について説明する。1齢~6齢のコオロギC1は、頭部41と、胸部42と、腹部43と、を備える。頭部41には2つの眼41aが形成されている。また、頭部41からは2つの触角41bがのびている。胸部42からは、6本の脚42aがのびている。腹部43の末端には、2つの尾毛43aが突出している。1齢~6齢までは、体の大きさが齢を重ねるごとに大きくなる。しかし、頭部41、胸部42および腹部43と、脚42aと、の相対的な大きさのバランスは変化するものと、形態はほとんど変化しない。
【0022】
7齢~8齢になると、コオロギC1の雌には、腹部43から延びる1つの産卵管43bが形成される。これにより、7齢以降のコオロギC1については、雌雄の区別が可能となる。
【0023】
上記したように、コオロギC1は脱皮を繰返して成長する。1齢~6齢のコオロギC1、および7齢~8齢のコオロギC1の雄の抜け殻44aは、眼41aの部分がない以外は、コオロギC1の形状とほとんど同じである。また、抜け殻44aには中身がないので、表面にしわ44cが形成されている点でも、コオロギC1本体とは異なっている。
【0024】
7齢~8齢のコオロギC1の雌の抜け殻44bには産卵管43bに対応する形状が形成されている。この点で、7齢~8齢のコオロギC1の雌の形状と同じであるが、やはり、眼41aの部分がない点と、表面にしわ44cが形成されている点で、コオロギC1本体とは異なっている。
【0025】
コオロギC1は、成虫になるとはね45が形成される。腹部43の先端からは、はね45の先端部分45aが突出している。このように、コオロギC1については、はね45の有無によって、成虫と幼虫とを区別することができる。
【0026】
3.昆虫認識モデル生成装置1
図1および
図4を参照して、昆虫認識モデル生成装置1について説明する。
図1に示すように、カメラ21は、コオロギC1の画像データを撮影する。撮影された画像データは記憶装置30に格納される。画像データのうち、機械学習において訓練データとして用いられるものは学習用の訓練画像データ31とされる。また、画像データのうち、機械学習においてテストデータとして用いられるものは評価用のテスト画像データ32とされる。
【0027】
訓練画像データ31に対しては、撮影されたコオロギC1の画像に対して、入力部22を介してアノテーション50が付与される(
図4参照)。入力部22としては、マウス、タッチパネル、ジョイスティック等、任意の入力装置を適宜に選択できる。
【0028】
図4に、示すように、作業者は、入力部22によって、訓練画像データ31に撮影されたコオロギC1の、頭部41、胸部42、および腹部43の外形を閉じた線で囲う。閉じた線は、特に限定されず、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形でもよいし、円形状、楕円形状でもよい。本形態では、コオロギC1の頭部41、胸部42、および腹部43は、六角形で囲まれる。この六角形は、コオロギC1の本体部分を特定するものであり、本体アノテーション50aとされる。この本体アノテーション50aにより、訓練画像データ31に撮影されたコオロギC1が特定される。また、六角形の6つの頂点と、六角形で囲まれた領域の画素数と、により、コオロギC1の形状についての情報が、本体アノテーション50aに紐づけられる。コオロギC1の形状についての情報としては、特に限定されず、例えば、体長、体幅等が挙げられる。
【0029】
また、7齢~8齢のコオロギC1の雌に対しては、頭部41、胸部42、および腹部43を囲う六角形の本体アノテーション50aに加えて、産卵管43bを囲う四角形の産卵管アノテーション50bが付与される。
【0030】
また、成虫に対しては、雄、雌ともに、はね45を囲う三角形のはねアノテーション50cが、さらに付与される。なお、はねアノテーション50cの形状は三角形に限定されず、例えば四角形、五角形等、任意の形状を適宜に採用しうる。
【0031】
なお、抜け殻44a,44bに対しては、アノテーション50は付与しない。すなわち、抜け殻44a,44bに対しては、本体アノテーション50a、産卵管アノテーション50b、およびはねアノテーション50cは付与しない。
【0032】
なお、以下の説明において、本体アノテーション50a、産卵管アノテーション50b、およびはねアノテーション50cを区別しない場合は、アノテーション50と記載する場合がある。アノテーション50の種類としては、本体アノテーション50a、産卵管アノテーション50b、およびはねアノテーション50cに限られない。
【0033】
図1に戻って、モデル生成部23は、入力部22を介してアノテーション50が付与された訓練画像データ31によって機械学習を行うことにより、学習済みモデル33を生成する。学習済みモデル33は、記憶装置30に格納される。
【0034】
判定部24は、記憶部に格納されたテスト画像データ32と、学習済みモデル33と、を取得し、学習済みモデル33を用いてテスト画像データ32を判定する。
【0035】
アノテーション修正部25は、判定部24によるテスト画像データ32の判定結果に基づいて、アノテーション50が誤っている場合にはアノテーション50を修正し、アノテーション50が正しい場合にはアノテーション50を維持する。
【0036】
4.昆虫認識モデル生成装置1の動作
図5~
図12を参照して、昆虫認識モデル生成装置1の動作について説明する。
図5に、昆虫認識モデル生成装置1の動作のメインフローを示す。昆虫認識モデル生成装置1が起動されると、カメラ21により、飼育装置10で飼育されているコオロギC1が、訓練画像データ31として撮影される(S1)。
図6に示すように、複数の訓練画像データ31が撮影される。
【0037】
次に、撮影された訓練画像データ31にアノテーション50が付与される(S2)。
図7に示すように、作業者は、訓練画像データ31のコオロギC1の、頭部41、胸部42および腹部43の外形を六角形状の図形で囲うことにより、本体アノテーション50aを付与する。ただし、コオロギC1が産卵管43bを有する場合には産卵管アノテーション50bを付与しても良い。また、コオロギC1がはね45を有する場合には、はねアノテーション50cを付与しても良い。
【0038】
次に、
図5に戻って、本体アノテーション50aが付与された訓練画像データ31を用いて学習済みモデル33が生成される(S3)。学習済みモデル33は、画像データに撮影された対象物の中からコオロギC1を認識するための知識モデルである。
図8に示すように、例えば、画像データに撮影された対象物がコオロギC1であると認識した場合には、コオロギC1の外周をセグメンテーション51aで囲う構成となっている。ただし、セグメンテーション51aの形状は限定されず、三角形、四角形、五角形、六角形等の多角形でも良いし、円形状、長円形状等、任意の形状を適宜に選択可能であり、本形態では六角形に形成されている。
【0039】
セグメンテーション51aは、本体アノテーション50aに対応する情報を含んでも良い。また、セグメンテーション51aは、産卵管アノテーション50bに対応する情報を含んでも良いし、はねアノテーション50cに関する情報を含んでも良い。
【0040】
次に、
図5に戻って、生成された学習済みモデル33を評価するための、複数のテスト画像データ32が撮影される(S4)。
図9に示すように、訓練画像データ31とは異なる複数のテスト画像データ32が撮影される。ただし、テスト画像データ32は、コオロギC1を撮影した複数の画像データの一部を訓練画像データ31とするとともに、他の部分をテスト画像データ32としても良い。
【0041】
次に、判定部24は、学習済みモデル33を用いて、テスト画像データ32を判定する。
図10に、テスト画像データ32の判定結果の一例を示す。
図10には、4匹のコオロギC1が撮影されている。4匹のコオロギC1のうち、右下のコオロギC1を除く3匹のコオロギC1については、学習済みモデル33を用いた判定において、コオロギC1と認識され、セグメンテーション51aで囲まれている。
【0042】
一方、
図10の右下に位置するコオロギC1については、学習済みモデル33を用いた判定では、コオロギC1と認識されず、セグメンテーション51aが付与されなかった。
【0043】
次に、
図5に戻って、学習済みモデル33を用いた判定において、コオロギC1を認識できたか否かが判断される(S6)。
【0044】
図10においては、右下のコオロギC1を除く3匹のコオロギC1については、正しくコオロギC1と判定されている。したがって、学習済みモデル33による判定結果は正しかった。すなわち、正しくコオロギC1を認識できている(
図5におけるS6:Y)。この場合、アノテーション修正部25は、本体アノテーション50aを維持する(
図5におけるS7)。以上により、昆虫認識モデル生成装置1の動作が終了する。
【0045】
図10においては、右下のコオロギC1については、コオロギC1と認識されていない。すなわち、コオロギC1を正しく認識できていない(
図5におけるS6:N)。この場合、作業者は、
図11に示すように、正しく認識できなかったコオロギC1に対して、新たな本体アノテーション50aを付与する。これにより、アノテーション修正部25は、本体アノテーション50aを修正する(
図5におけるS8)。
図5におけるS3に戻って、修正された本体アノテーション50aに基づいて、新たな学習済みモデル33を生成する。
図12に示すように、修正された本体アノテーション50aに基づいて、以前の学習済みモデル33では正しく認識できなかったコオロギC1に対して、新たな学習済みモデル33が生成され、新たなセグメンテーション51bが付与される。これにより、コオロギC1の認識精度を向上させることができる。
【0046】
5.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態によれば、コオロギC1を認識可能な学習済みモデル33を生成することができる。コオロギC1として認識されたセグメンテーション51a,51bの個数を機械学習装置20が数えることにより、コオロギC1の個体数を算出することができる。これにより、人力によってコオロギC1の個体数を数える作業を省略することができるので、コオロギC1の計数作業の工数を低減することができる。
【0047】
また、本形態によれば、本体アノテーション50aは、コオロギC1の外形を、閉じた線で囲うことにより行われる。この閉じた線により形成される図形が複数の頂点を有する多角形であり、本体アノテーション50aは、多角形の複数の頂点の相対的な位置に関する情報と、多角形の画素数に基づく情報と、を含む。これにより、多角形の複数の頂点の相対的な位置座標と、多角形の面積に相当する画素数と、に基づく情報を得ることができる。これにより、昆虫の認識精度を向上させることができる。
【0048】
また、不完全変態の昆虫であるコオロギC1は、幼虫の形状と成虫の形状が類似しているので、幼虫と成虫を肉眼で区別することが困難である。本形態によれば、不完全変態の昆虫であるコオロギC1の幼虫と成虫を学習済みモデル33により区別することができる。これにより、コオロギC1の認識精度を向上させることができる。
【0049】
また、不完全変態の昆虫であるコオロギC1は、脱皮により成長するので、多くの抜け殻44a,44bが発生する。この抜け殻44a,44bの形状はコオロギC1の形状と類似しているので、肉眼で区別することが困難である。本形態によれば、コオロギC1の抜け殻44a,44bと昆虫を学習済みモデル33により区別することができる。これにより、コオロギC1の認識精度を向上させることができる。
【0050】
また、不完全変態の昆虫であるコオロギC1は、幼虫が脱皮を繰返すことにより成長する。幼虫が脱皮するごとに、齢が増加する。このため、不完全変態のコオロギC1においては、脱皮の前後において、形状があまり変化しない。このため、異なる齢の幼虫を肉眼で区別することが困難である。本形態によれば、コオロギC1の幼虫の齢を学習済みモデル33により区別することができる。
【0051】
また、本形態によれば、はねアノテーション50cを付与することにより、はね45の有無によって、不完全変態の昆虫であるコオロギC1が成虫であるか幼虫であるかを区別することができる。
【0052】
本形態によれば、産卵管アノテーション50bを付与することにより、産卵管43bの有無によってコオロギC1の雌雄を区別することができる。
【0053】
本形態に係る昆虫生産管理システム2は、昆虫認識モデル生成装置1を備える。これにより、昆虫生産管理システム2において、コオロギC1の計数作業の工数を低減することができる。
【0054】
(実施形態2)
次に、
図13を参照して、実施形態2について説明する。本形態においては、フタホシコオロギC2(昆虫の一例)が飼育される。フタホシコオロギC2は、成虫になると、胸部42の背中側に、間隔を空けて並ぶ二つの模様46が現れる。これにより、フタホシコオロギC2の幼虫と成虫とを区別することができる。
【0055】
本形態においては、はねアノテーション50cに代えて、フタホシコオロギC2の模様46に対応して、胸部42の外形を閉じた線で囲う構成になっている。胸部42の外形を囲う閉じた線は、模様アノテーション50dとされる。本形態の模様アノテーション50dは四角形状に形成されている。ただし、模様アノテーション50dの形状は特に限定されず、任意の形状とすることができる。
【0056】
本形態によれば、模様アノテーション50dにより、フタホシコオロギC2の幼虫と成虫とを区別することができる。
【0057】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0058】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0059】
本発明に係る飼育装置は、実施例1および2に記載されたものに限られず、例えば、特開2023-037767号公報に記載された飼育装置に適用することができる。特開2023-037767号公報に記載された飼育装置において、コオロギの収穫時に、本体フレーム内に配置された止まり部材に止まっているコオロギを止まり部材から、ベルトコンベアのベルト上に落下させた後、本体フレームをベルトコンベア上から取外すと、ベルト上にはコオロギが配置される。このように、ベルト上に配置されたコオロギをカメラによって撮影することにより、本発明に係る訓練画像データ、およびテスト画像データを取得することができる。
【0060】
また、コオロギの収穫時に、本体フレーム内に配置された止まり部材に止まっているコオロギを止まり部材から、ベルトコンベアのベルト上に落下させ、その後、ベルトコンベアの終端部において、収穫用の収穫箱内にコオロギを収容する。この収穫箱内に収容されたコオロギをカメラで撮影することにより、本発明に係る訓練画像データ、およびテスト画像データを取得することができる。
【符号の説明】
【0061】
1:昆虫認識モデル生成装置、2:昆虫生産管理システム、20:機械学習装置、21:カメラ、22:入力部、23:モデル生成部、24:判定部、25:アノテーション修正部、30:記憶装置、31:訓練画像データ、32:テスト画像データ、33:学習済みモデル、41:頭部、42:胸部、43:腹部、43b:産卵管、44a,44b:抜け殻、46:模様、50:アノテーション、50a:本体アノテーション、50b:産卵管アノテーション、50c:はねアノテーション、50d:模様アノテーション、C1:コオロギ、C2:フタホシコオロギ