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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163514
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079206
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA05
3H062BB33
3H062CC01
3H062FF38
3H062FF39
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】摺動部を構成する互いの材料を工夫することにより、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態においても、円滑な回転を可能とし、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【解決手段】電動弁100aであって、弁部20aが設けられる弁体20を有する回転子部と、流路室13及び径方向に延在する弁ポート11aを有する弁本体10Aと、を備え、弁本体10Aは、弁体20を円周方向にガイドするガイド部材11と、弁部20aは、弁ポート11aを塞ぐシール部20aaと、弁ポート11aと連通可能である流路部15と、を有し、回転子部の回転により、弁ポート11aと流路部15との連通状態を変化させ、流量を制御するものであり、弁体20及びガイド部材11は、互いに摺動部を構成するとともに、樹脂材料からなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に弁部が設けられる弁体、及び、前記弁体と一体的に回転するロータを有する回転子部と、
前記弁部を収容する流路室、前記弁部と径方向に対向する弁座、及び、前記流路室と連通可能に径方向に延在する弁ポートを有する弁本体と、
前記弁本体と接続し、前記回転子部の背圧室を画定するケースと、
を備え、
前記弁本体は、前記流路室と直接連通する第1ポートと、前記弁ポートと連通する第2ポートと、軸線に沿って設ける前記弁体を、軸線方向に支持し、円周方向にガイドするガイド部材と、を有し、
前記弁部は、前記弁ポートを塞ぐシール部と、前記弁ポートと連通可能である流路部と、を有し、
前記ロータの回転により、前記弁ポートと前記流路部との連通状態を変化させ、前記弁ポートを流れる流体の流量を制御するものであり、
前記弁体及び前記ガイド部材は、互いに摺動部を構成するとともに、樹脂材料からなることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記樹脂材料は、PTFEが添加されたPPSであることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記樹脂材料は、強化剤としてガラス繊維、又は炭素繊維が添加されたものであることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記摺動部である前記弁体及び前記ガイド部材の間に、所定の半径方向隙間に設定され、前記弁体を半径方向に支持する半径方向支持手段をさらに備え、
前記半径方向支持手段は、前記弁部に隣接する一端側半径方向隙間と、前記一端側半径方向隙間の他端側に隣接する他端側半径方向隙間と、を有し、前記一端側半径方向隙間を、前記他端側半径方向隙間より小さく設定することを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁体は、一端側から他端側に沿って順に、前記弁部を一端側に有する小径ガイド軸部、大径ガイド軸部を有し、
前記ガイド部材は、一端側から他端側に沿って順に、小径ガイド部、大径ガイド部を有し、
前記小径ガイド軸部及び前記小径ガイド部の間からなる前記一端側半径方向隙間を、前記大径ガイド軸部及び前記大径ガイド部の間からなる前記他端側半径方向隙間より小さく設定することを特徴とする請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記摺動部である、前記弁体及び前記ガイド部材の軸線方向対向面を係合させ、前記弁体を軸線方向に支持する軸線方向支持手段をさらに備え、
前記第1ポートは、前記流路室を介して、前記弁ポートと連通し、
前記弁体は、軸線に沿って延在するとともに、前記第2ポートと前記背圧室とを常時連通させる均圧孔を有することを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【請求項7】
前記弁体は、前記小径ガイド軸部と前記大径ガイド軸部との境界に、環状の段部を有し、
前記ガイド部材は、前記小径ガイド部と前記大径ガイド部との境界に、環状の段差部を有し、
前記軸線方向支持手段は、前記弁体の前記段部及び前記ガイド部材の前記段差部を、互いに係合させることを特徴とする請求項6に記載の電動弁。
【請求項8】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~7のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料同士からなる摺動部を備える電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、環境保全の向上、及び、メンテナンス性の向上を目的として、例えば、特許文献1に記載されているような、冷凍機油を使用しない、いわゆる、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態で使用する冷凍サイクルシステムが提案されている。
【0003】
一般的な電動弁は、回転運動を直線運動に変換するねじ送り部を有する駆動部と、この直線運動により、軸線方向に移動する弁体とガイド部との間に生じる摺動部と、を有している。これにより、回転時において、駆動部(特に、ねじ送り部)及び摺動部における摺動抵抗が増加して、円滑な回転が困難となるおそれがあった(以下、「従来の問題点(摺動抵抗の増加)」という)。
【0004】
ここで、特許文献2には、図10に示すように、電動弁(以下、「従来の電動弁」という)1000であって、弁本体1010と、弁体1020と、ステッピングモータ1030と、を備えるものが記載されている。この弁本体1010は、弁ポート1011a、弁座1011b、円管形状のガイド部1011cを有するとともに、第1継手管1001及び第2継手管1002が接続される。また、弁体1020は、弁部1020a、ガイド部1011cの内周側に摺動可能に係合されるガイド軸部1020gを有する。さらに、ステッピングモータ1030は、弁体1020と一体的に回転するマグネットロータ1032を有する。
【0005】
これにより、特許文献2では、ガイド軸部1020gを、ガイド部1011cに対して、回転方向のみに移動可能とする構成を採用することにより、ねじ送り部を省略し、駆動部における摺動抵抗を抑制するものが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2(特に、第1の実施例:段落[0042],[0064]~[0065]及び図1参照)において、ガイド部1011c及びガイド軸部1020gが、金属材料同士からなるため、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態で使用する冷凍サイクルシステムに採用された場合に、摺動部における摺動抵抗が極めて大きく、かじりなどを生じるおそれがあった。また、特許文献2(特に、第5の実施例:段落[0064]~[0065]及び図14参照)において、ガイド軸部1020gを合成樹脂で被膜するものもあるが、ガイド部1011cが金属材料からなるため、被膜された合成樹脂の著しい摩耗が生じ、摺動部における摺動抵抗が増加するおそれがあった。このため、特許文献2(特に、第1の実施例及び第5の実施例参照)においても、依然として、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-162213号公報
【特許文献2】特開平8-312822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、摺動部を構成する互いの材料を工夫することにより、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態においても、円滑な回転を可能とし、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、一端側に弁部が設けられる弁体、及び、前記弁体と一体的に回転するロータを有する回転子部と、前記弁部を収容する流路室、前記弁部と径方向に対向する弁座、及び、前記流路室と連通可能に径方向に延在する弁ポートを有する弁本体と、前記弁本体と接続し、前記回転子部の背圧室を画定するケースと、を備え、前記弁本体は、前記流路室と直接連通する第1ポートと、前記弁ポートと連通する第2ポートと、軸線に沿って設ける前記弁体を、軸線方向に支持し、円周方向にガイドするガイド部材と、を有し、前記弁部は、前記弁ポートを塞ぐシール部と、前記弁ポートと連通可能である流路部と、を有し、前記ロータの回転により、前記弁ポートと前記流路部との連通状態を変化させ、前記弁ポートを流れる流体の流量を制御するものであり、前記弁体及び前記ガイド部材は、互いに摺動部を構成するとともに、樹脂材料からなる電動弁である。
【0010】
また、上記電動弁であって、前記樹脂材料は、PTFEが添加されたPPSとしてもよい。
【0011】
また、上記電動弁であって、前記樹脂材料は、強化剤としてガラス繊維、又は炭素繊維が添加されたものとしてもよい。
【0012】
また、上記電動弁であって、前記摺動部である前記弁体及び前記ガイド部材の間に、所定の半径方向隙間に設定され、前記弁体を半径方向に支持する半径方向支持手段をさらに備え、前記半径方向支持手段は、前記弁部に隣接する一端側半径方向隙間と、前記一端側半径方向隙間の他端側に隣接する他端側半径方向隙間と、を有し、前記一端側半径方向隙間を、前記他端側半径方向隙間より小さく設定するものとしてもよい。
【0013】
また、上記電動弁であって、前記弁体は、一端側から他端側に沿って順に、前記弁部を一端側に有する小径ガイド軸部、大径ガイド軸部を有し、前記ガイド部材は、一端側から他端側に沿って順に、小径ガイド部、大径ガイド部を有し、前記小径ガイド軸部及び前記小径ガイド部の間からなる前記一端側半径方向隙間を、前記大径ガイド軸部及び前記大径ガイド部の間からなる前記他端側半径方向隙間より小さく設定するものとしてもよい。
【0014】
また、上記電動弁であって、前記摺動部である、前記弁体及び前記ガイド部材の軸線方向対向面を係合させ、前記弁体を軸線方向に支持する軸線方向支持手段をさらに備え、前記第1ポートは、前記流路室を介して、前記弁ポートと連通し、前記弁体は、軸線に沿って延在するとともに、前記第2ポートと前記背圧室とを常時連通させる均圧孔を有するものとしてもよい。
【0015】
また、上記電動弁であって、前記弁体は、前記小径ガイド軸部と前記大径ガイド軸部との境界に、環状の段部を有し、前記ガイド部材は、前記小径ガイド部と前記大径ガイド部との境界に、環状の段差部を有し、前記軸線方向支持手段は、前記弁体の前記段部及び前記ガイド部材の前記段差部を、互いに係合させるものとしてもよい。
【0016】
また、冷凍サイクルシステムであって、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含み、上記電動弁が、前記膨張弁として用いられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摺動部を構成する互いの材料を工夫することにより、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態においても、円滑な回転を可能とし、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる電動弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電動弁の弁開状態における断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のIb-Ib断面拡大図を、それぞれ表す。
図2図1に示される電動弁の弁閉状態における断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のIIb-IIb断面拡大図を、それぞれ表す。
図3】第1の実施形態及び軸線方向支持手段変形例の説明図であり、(a)は、第1の実施形態における、図2に示される破線IIIaで囲まれた領域の拡大図、(b)は、第1の実施形態における、図2に示される破線IIIbで囲まれた領域の拡大図、(c)は、軸線方向支持手段変形例における(a)に対応する拡大図、(d)は、軸線方向支持手段変形例における(b)に対応する拡大図を、それぞれ表す。
図4】第1の実施形態の流路部変形例1及び2の説明図であり、(a)は、流路部変形例1における図1(b)に対応する断面図、(b)は、流路部変形例1における図2(b)に対応する断面図、(c)は、流路部変形例2における(a)に対応する断面図、(d)は、流路部変形例2における(b)に対応する断面図を、それぞれ表す。
図5】第1の実施形態の第2継手管変形例の説明図(図1(a)に対応する断面図)である。
図6】第1の実施形態の弁体変形例の説明図(図1(a)に対応する断面図)である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る電動弁の弁開状態における断面図であり、(a)は、電動弁の縦断面図、(b)は、(a)のVIIb-VIIb断面拡大図、(c)は、(a)の破線VIIcで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図8】第2の実施形態のストッパ部変形例の説明図であり、(a)は、図7(a)に対応する要部断面図、(b)は、(a)に示されるVIIIb-VIIIb線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図9】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図10】従来技術に係る電動弁を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について、図1から図9を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0020】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「左」、「右」、「上」、「下」とは、図1(a)、図2(a)、図3図5~6、図7(a),(c)、図8(a)に示される方向を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端」及び「他端」とは、図面における「下端」及び「上端」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「摺動部」とは、「弁体及びガイド部材における摺接可能に係合される領域」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「冷却手段」とは、「摺動部を冷却する手段」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「面圧」とは、「接触面における単位面積当たりの荷重」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「半径方向支持手段」とは、「弁体を半径方向に支持する手段」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「軸線方向支持手段」とは、「弁体を軸線方向に支持する手段」を示す。
【0021】
(第1の実施形態)
<電動弁の構成について>
図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係る電動弁100aについて説明する。電動弁100aは、弁本体10A、弁体20、ステッピングモータ30、支持部材40から主に構成される。以下、電動弁100aのそれぞれの構成を順に説明する。
【0022】
ここで、詳細は後述するが、第1の実施形態における電動弁100aは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用し、摺動部を互いに樹脂材料で構成することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。
【0023】
弁本体10Aは、流路室13の一部を画定する椀状部材10と、軸線L上に沿って延在する概略円管形状を有し、椀状部材10の底面側に固定接続されるガイド部材11と、ガイド部材11に一体成形された円環形状からなる下蓋12と、を備える。
【0024】
椀状部材10には、冷媒などの流体経路としての第1継手管1が側面側に、第2継手管2が底面側に、それぞれ接続される。この第1継手管1は、第1ポート1aを介して、流路室13に直接連通される。また、第2継手管2は、第2ポート2a、ガイド部材11の内部流路14及び弁ポート11a(詳細は後述する)のそれぞれを介して、流路室13に連通される。第1継手管1及び第2継手管2は、例えば、銅やステンレスなどを材料として構成されており、椀状部材10に、ろう付け等により固着されている。
【0025】
ガイド部材11には、軸線Lに沿って、一端側から他端側まで開口する挿通孔が形成される。この挿通孔には、他端側から一端側に向かって、大径ガイド部11cb、小径ガイド部11caがそれぞれ設けられる。この小径ガイド部11caは、大径ガイド部11cbより内径が小さく設定され、一端側の内側領域には、軸線L方向に延在する内部流路14が画定される。また、大径ガイド部11cbと小径ガイド部11caとの境界には、平坦な形状を有する環状の段差部11e(軸線方向対向面)が形成される。さらに、ガイド部材11には、図1(a)及び図2(a)に示すように、第1ポート1aの同心上、かつ、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1継手管1の反対側に位置するとともに、内部流路14と流路室13との間を径方向に貫通する弁ポート11aと、この弁ポート11aの周囲に形成される環状の弁座11b(図1(b)及び図2(b)参照)と、が形成される。加えて、ガイド部材11の他端側外周面の一部には、径方向外側に延在する引出し部11gが形成される。
【0026】
下蓋12は、ガイド部材11に接合される内周部と、椀状部材10の他端部及びケース31の一端部にそれぞれ接合される外周部と、を有する。この下蓋12には、流路室13と背圧室16とを常時連通し、均圧孔として機能する連通孔12aが形成される。
【0027】
第1の実施形態において、軸線Lと直交する方向から見た、弁ポート11aの形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、矩形形状や、楕円形状や、任意の非対称形状など、様々な形状を採用することができる。また、第1の実施形態においては、椀状部材10とガイド部材11とを別体とするものであったが、これに限らず、例えば、図10に示される従来の電動弁のように、椀状部材10とガイド部材11とを一体に形成するものであってもよい。
【0028】
弁体20は、軸線Lに沿って延在する部材である。この弁体20の一端側は、ガイド部材11の挿通孔に挿入されており、一端側から他端側に向かって順に、弁部20aを一端側に有する小径ガイド軸部20g、大径ガイド軸部20hが、階段状に順次拡径して形成され、小径ガイド軸部20gと大径ガイド軸部20hとの境界には、平坦な形状を有する環状の一端側段部20i(段部,軸線方向対向面)が形成される。ここで、弁部20aは、小径ガイド軸部20gと同一外径を有する。この弁部20aには、図1(b)及び図2(b)に示すように、軸線L方向から見て、略扇形形状を有し、軸線L方向の一端側に延在し開口する流路部15を有する。また、詳細は後述するが、図3(a)に示すように、小径ガイド軸部20g、一端側段部20i及び大径ガイド軸部20hは、それぞれ、ガイド部材11の小径ガイド部11ca、段差部11e及び大径ガイド部11cbに、それぞれ摺接可能に係合される摺動部を有する。これにより、第1の実施形態における弁体20は、半径方向の大きさを比較的小さくし、軽量化を図ることができるため、ステッピングモータ30における省エネ化を向上させることができる。さらに、弁体20の他端側には、マグネットロータ32のハブ35に固定される他端側段部20ka、軸線Lに沿って他端側へと延在し開口する他端側有底円筒部20cと、を備える。この他端側有底円筒部20cには、弁体20を一端側に付勢する支持部材40が収容される。
【0029】
弁体20は、図2(a)及び図3(b)に示すように、円板部20kから垂設された突起部20kbを備える。弁部20aが、ガイド部材11に対して回転する際に、この突起部20kbが、ストッパ部として機能するガイド部材11の引出し部11gに突き当たり、弁部20aの回転が規制される。なお、図3(b)に示すように、ガイド部材11の他端部11hは、弁体20の円板部20kと離間する。
【0030】
ステッピングモータ30は、ケース31と、マグネットロータ32と、ステータコイル33と、を備える。
【0031】
ケース31は、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、上方の端部が塞がれた略円筒形状に形成され、弁体20及びマグネットロータ32を収容する背圧室16を画定する。ケース31の下方の開口側の端部は、下蓋12の外周部に溶接等によって気密に固定される。
【0032】
マグネットロータ32は、外周部を多極に着磁された円筒状のマグネット部34と、マグネット部34の内周側にスポークを介して接続されるハブ35と、を一体に備える。マグネットロータ32のハブ35の内側には、弁体20が軸線L方向の他端側に向けて嵌挿され、弁体20の他端側段部20kaを、ハブ35の一端部に当接させ、後述の支持部材40のブッシュ43を他端側有底円筒部20cに組み込み、ハブ35の他端部に当接させ後、ハブ35との溶着等により、回転子部であるマグネットロータ32及び弁体20は一体的に固定される。これにより、回転子部は、ケース31内に軸線Lを中心に回転可能に設けられる。
【0033】
ステータコイル33は、ケース31の外周面に配設されており、ステータコイル33にパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ32が回転される。
【0034】
このように、マグネットロータ32が回転されると、このマグネットロータ32とともに弁部20aが弁ポート11aに対して回転し、流路部15と弁ポート11aとの開度を変化させ、第1継手管1から第2継手管2へ(又は第2継手管2から第1継手管1へ)流れる流体の流量が制御される。
【0035】
支持部材40は、ケース31に対して、当接した状態で、回転可能に配置されるばね受け部41と、他端側有底円筒部20c及びハブ35に固定されるブッシュ43と、ばね受け部41とブッシュ43との間に挟持され、弁体20を一端側に付勢する付勢ばね42と、を備える。
【0036】
<電動弁の動作について>
図1及び図2を用いて、電動弁100aの動作を説明する。ここでは、電動弁100aが用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。また、電動弁100aにおいて、第1継手管1は、高圧(一次側圧力)側に接続され、第2継手管2は、低圧(二次側圧力)側に接続される。なお、これとは反対方向に流れる、第2継手管2が高圧側に接続され、第1継手管1が低圧側に接続される場合(図1(a),(b)中の破線)にも、同様の説明ができることから、ここでは省略する。
【0037】
まず、図1(b)に示すように、弁部20aが、マグネットロータ32により、反時計回りに回転されることにより、不図示であるが、弁体20の突起部20kbが、ガイド部材11の引出し部11gに突き当たり、弁部20aの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32の回転も規制される。この際、流路部15が、弁ポート11aと対向する位置となるため、弁開状態となる。よって、流体は、図1(a),(b)における実線矢印で示すように、高圧側の第1ポート1aから低圧側の第2ポート2aへと流れる。なお、流体経路において、圧力損失を生じさせないために、弁ポート11a前後に位置する、流路室13及び流路部15におけるそれぞれの流路面積は、弁ポート11aの流路面積より大きくなるように設定される。
【0038】
次に、図2(b)に示すように、弁部20aが、マグネットロータ32により、時計回りに回転されることにより、図2(a)に示すように、弁体20の突起部20kbが、ガイド部材11の引出し部11gに突き当たり、弁部20aの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32の回転も規制される。この際、流路部15が、弁座11bと対向するとともに、弁ポート11aがシール部20aaと対向する位置となるため、弁閉状態となる。よって、高圧側の第1ポート1aから低圧側の第2ポート2aへの流路が閉じられる。なお、本実施形態では、弁体20の弁部20aと小径ガイド軸部20gとを同一外径としたが、冷凍サイクルシステムにより電動弁100aの弁閉時にも少量の流体を通過させる必要がある。この場合は、弁部20aの外径を、小径ガイド軸部20gの外径より小さくし、弁ポート11aとシール部20aaとの間隙量を調整することにより、弁閉時に必要とされる流量を任意に設定することができる。
【0039】
第1の実施形態における流路部15は、軸線L方向から見て、略扇形形状を有する。よって、第1の実施形態における電動弁100aでは、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少又は増加するため、例えば、開閉弁として用いることができる。
【0040】
第1の実施形態における流路部15は、軸線L方向から見て、略扇形形状であったが、これに限らない。例えば、第1の実施形態における流路部15が、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有する場合には、電動弁100aでは、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、流路面積が漸減的又は漸増的に変化し、細かな流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁として用いることができる。また、第1の実施形態における流路部15が、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有する場合には、電動弁100aでは、流路部15が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少し、その後、流路面積が漸減的に変化する、又は、流路面積が漸増的に変化し、その後、流路面積が急激に増加するため、例えば、流量調整弁の機能を付加した開閉弁として用いることができる。
【0041】
<摺動部の詳細について>
図10を用いて前述したように、従来の電動弁1000では、ガイド部1011c及びガイド軸部1020gからなる摺動部が、金属材料同士、又は、金属材料と被膜された合成樹脂とからなる。よって、従来の電動弁1000が、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態で使用する冷凍サイクルシステムに採用される場合には、ガイド部1011c及びガイド軸部1020gとの間に、冷凍機油による流体潤滑膜が全く存在しない状態、又は、比較的薄い流体潤滑膜しか存在しない状態となるため、著しい機械的摩耗、つまり、摺動面の凝着による摩耗や、摺動面の凹凸によるアブレシブ摩耗が生じ、摺動部における摺動抵抗が増加するおそれがあった。このため、従来の電動弁においても、依然として、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消することができなかった。
【0042】
これに対して、第1の実施形態における電動弁100aでは、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するために、以下の第1の対策(摺動部の材料を工夫)を講じるものである。加えて、詳細は後述するが、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を講じた上で、懸念される事項に対して、さらなる、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を講じるものである。
【0043】
<第1の対策(摺動部の材料を工夫)について>
第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第1の対策(摺動部の材料を工夫)として、摺動部を構成する材料等を工夫することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するものである。具体的には、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、摺動部を構成する弁体20及びガイド部材11を、互いに樹脂材料で構成するものである。
【0044】
一般的に、樹脂材料は、比較的低い動摩擦係数(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、0.04程度、超高分子量ポリエチレンは、0.11程度、モノマーキャストナイロンは、0.18程度)を有するため、摺動性は極めて良好である。また、第1の実施形態の電動弁100aの摺動部では、面圧及び相対的な滑り速度が、比較的小さく、摺動時間も比較的短いものである。よって、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第1の対策(摺動部の材料を工夫)として、弁体20及びガイド部材11を、互いに樹脂材料で構成することにより、オイルフリーの状態、又は、低油量の状態においても、動摩擦力を極めて小さくすることができるため、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の円滑な回転を可能とする。この結果、電動弁100aにおける、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。
【0045】
ここで、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用したとしても、想定外の事態が生じ、摺動部(弁体20及びガイド部材11)における面圧及び相対的な滑り速度が比較的大きくなる場合には、動摩擦力が極めて大きくなり、比較的高い摩擦熱(例えば、200℃)が生じるおそれがある。この際、一般的な樹脂材料の融点は、100~200℃の間であるので、仮に、樹脂材料同士が溶融する場合には、樹脂材料同士が溶着するおそれがあった(以下、「懸念事項(摺動部の溶融)」という)。このため、第1の実施形態では、第2の対策(摺動部の耐熱手段)をさらに採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を一層向上させることができる。
【0046】
<第2の対策(摺動部の耐熱手段)について>
第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第2の対策(摺動部の耐熱手段)として、弁体20及びガイド部材11の樹脂材料を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が添加されたポリフェニレンサルファイド(PPS)とする。このPPSは、非常に高い耐熱性(例えば、PPSの耐熱温度は220℃程度)を有するとともに、良好な潤滑性を有している。
【0047】
これにより、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用することにより、摺動部は、非常に高い耐熱性及び潤滑性を有することから、想定外の事態が生じ、比較的高い摩擦熱が生じたとしても、樹脂材料は、溶融することないため、懸念事項(摺動部の溶融)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を一層向上させることができる。
【0048】
加えて、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、弁体20及びガイド部材11の樹脂材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に加え強化剤としてガラス繊維、又は炭素繊維が添加されたPPSとしてもよい。このPPSは、非常に高い引張り強度(例えば、150MPa)及び耐熱性(例えば、耐熱温度は230℃程度)を有している。
【0049】
これにより、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用することにより、摺動部は、非常に高い耐熱性及び強度を有することから、想定外の事態が生じ、比較的高い摩擦熱が生じたとしても、樹脂材料は、溶融することないため、懸念事項(摺動部の溶融)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0050】
<第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))について>
第1の実施形態の電動弁100aにおいて、懸念事項(摺動部の溶融)を解消するために、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用したとしても、摺動部における摩擦熱は依然として発生するため、この摩擦熱の発生自体に、何ら対策を講じない場合には、樹脂材料からなる摺動部に僅かでも寸法変化が生じ、摺動部の最適な摺動状態からずれる懸念があった(以下、「懸念事項(摺動部の寸法変化)」という)。そこで、第1の実施形態の電動弁100aでは、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消するものである。
【0051】
第1の実施形態の電動弁100aは、図3(a)に示すように、小径ガイド軸部20gと小径ガイド部11ca、及び、大径ガイド軸部20hと大径ガイド部11cbとの摺接可能な係合により、弁体20を半径方向に支持する半径方向支持手段と、一端側段部20i及び段差部11eの摺接可能な係合により、弁体20を軸線方向に支持する軸線方向支持手段と、を有する。ここで、第1の実施形態の電動弁100aは、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))として、弁部20aに隣接する、一端側半径方向隙間G1(半径方向隙間)を、他端側半径方向隙間G2(半径方向隙間)より小さく(G1<G2)設定するものである。具体的には、半径方向支持手段において、図3(a)に示すように、弁部20aを一端側に有する小径ガイド軸部20g及び小径ガイド部11caの間からなる一端側半径方向隙間G1を、大径ガイド軸部20h及び大径ガイド部11cbの間からなる他端側半径方向隙間G2より、小さく設定する。このように、第1の実施形態の電動弁100aにおいて、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用すると、実質的な摺動部は、弁部20aを一端側に有する小径ガイド軸部20g及び小径ガイド部11caから構成される。なお、半径方向支持手段において、摺動面積を比較的小さくし、摺動抵抗を低減できるため、摺動部の作動性と耐久性をより一層向上させることができる。さらに、一端側半径方向隙間G1が比較的小さいことから、図2(b)に示すように、弁閉状態における弁部20aのシール性が向上し、弁漏れを抑制することができる。
【0052】
ここで、具体的に、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を説明するために、図1(a)を用いて、第1の実施形態の電動弁100aにおける流体の温度について考察する。まず、流体が、第1ポート1aから流路室13に流入する際には、中温(例えば、約60~70℃)となる一方、流体が、弁ポート11a及び流路部15を介し、内部流路14に流入する際には、膨張(減圧)することにより、低温(例えば、約-10~20℃)となる。これにより、弁開状態において、低温の流体により、弁部20aが積極的に冷却されることから、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、弁部20aに加え、弁部20aを一端側に有する小径ガイド軸部20g及び小径ガイド部11caも、積極的に冷却されるため、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0053】
以上より、第1の実施形態における電動弁100aは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用し、懸念事項(摺動部の溶融)を解消するとともに、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用し、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消することにより、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0054】
なお、第1の実施形態の電動弁100aでは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))をそれぞれ採用するものであるが、これに限らず、例えば、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用した上で、第2の対策(摺動部の耐熱手段)、又は、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用するものであってもよい。
【0055】
(第1の実施形態の軸線方向支持手段変形例)
図3(c),(d)を用いて、第1の実施形態の軸線方向支持手段変形例について説明する。第1の実施形態の軸線方向支持手段変形例は、軸線方向支持手段を、半径方向支持手段から離間配置する点で、第1の実施形態と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0056】
具体的には、図3(c)に示すように、半径方向支持手段は、第1の実施形態と同様に、小径ガイド軸部20g及び小径ガイド部11ca、大径ガイド軸部20h及び大径ガイド部11cbのそれぞれを半径方向に摺接可能に係合させる。一方、軸線方向支持手段は、図3(c)に示すように、一端側段部20i’及び段差部11eを軸線L方向に離間させる代わりに、図3(d)に示すように、円板部20kの一端面(軸線方向対向面)及びガイド部材11’の他端部11h’(軸線方向対向面)を軸線L方向に摺接可能に係合させる。このように、電動弁100bにおいて、軸線方向支持手段を、半径方向支持手段から離間配置し、摺動部において生じる摩擦熱を分散させる。これにより、半径方向支持手段における懸念事項(摺動部の寸法変化)を、確実に解消することができる。なお、軸線方向支持手段において生じる摩擦熱は、背圧室16の流体へと放熱することができる。
【0057】
以上より、第1の実施形態の軸線方向支持手段変形例における電動弁100bは、第1の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び/又は第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)及び/又は懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0058】
加えて、第1の実施形態の軸線方向支持手段変形例における電動弁100bは、軸線方向支持手段を、半径方向支持手段から離間配置し、摺動部において生じる摩擦熱を分散させることにより、半径方向支持手段における懸念事項(摺動部の寸法変化)を、確実に解消することができる。
【0059】
(第1の実施形態の流路部変形例1及び2)
図4を用いて、第1の実施形態の流路部変形例1及び2について説明する。第1の実施形態の流路部変形例1及び2は、弁部20a’’,20a’’’における流路部15’’,15’’’の形状について、第1の実施形態の弁部20aの流路部15と相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。なお、図4(a),(c)及び図4(b),(d)は、それぞれ、図1(b)及び図2(b)に対応する図であるが、便宜的に、弁部20a’’,20a’’’及びガイド部材11のみを示す。
【0060】
(第1の実施形態の流路部変形例1)
図4(a),(b)を用いて、第1の実施形態の流路部変形例1における、弁部20a’’の流路部15’’を説明する。この流路部15’’は、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有する点で、第1の実施形態の流路部15と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態の流路部15と同一である。
【0061】
流路部15’’が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、流路面積が漸減的又は漸増的に変化する。よって、第1の実施形態の流路部変形例1における電動弁100cでは、マグネットロータ32の回転角度により、細かな流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁として用いることができる。
【0062】
(第1の実施形態の流路部変形例2)
図4(c),(d)を用いて、第1の実施形態の流路部変形例2における、弁部20a’’’の流路部15’’’を説明する。この流路部15’’’は、第1の実施形態の流路部15に、第1の実施形態の流路部変形例1の流路部15’’を組み合わせた形状を有する点で、第1の実施形態の流路部15と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態の流路部15と同一である。
【0063】
具体的には、流路部15’’’は、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有する。よって、第1の実施形態の流路部変形例2における電動弁100dでは、流路部15’’’が、弁ポート11aに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少し、その後、流路面積が漸減的に変化する、又は、流路面積が漸増的に変化し、その後、流路面積が急激に増加するように、流路面積の急激な変化及び漸次的な変化の組み合わせることにより流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁の機能を付加した開閉弁として用いることができる。
【0064】
以上より、第1の実施形態の流路部変形例1及び2における電動弁100c,100dは、第1の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び/又は第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)及び/又は懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0065】
(第1の実施形態の第2継手管変形例)
図5を用いて、第1の実施形態の第2継手管変形例について説明する。第1の実施形態の第2継手管変形例における第2継手管2’の接続様態は、弁本体10A’に対して、軸線Lと直交する方向に延在するように第2継手管2’を配置する点で、第1の実施形態と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0066】
具体的には、椀状部材10’の底面側には、ガイド部材11が嵌合固定される接続室18が形成される。この接続室18から径方向に第2継手管2’が接続される。このように、電動弁100eにおいて、第2継手管2’を軸線Lと直交する方向に延在するように配置することにより、軸線L方向の低背化を図ることができる。
【0067】
以上より、第1の実施形態の第2継手管変形例における電動弁100eは、第1の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び/又は第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)及び/又は懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0068】
(第1の実施形態の弁体変形例)
図6を用いて、第1の実施形態の弁体変形例について説明する。第1の実施形態の弁体変形例は、内部流路14と背圧室16とを常時連通する均圧孔(軸孔20l及び貫通孔20m)が弁体20’’’’に形成される点で、第1の実施形態と相違するが、その他の構成は、第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
<電動弁の構成について>
図6を用いて、本発明の第1の実施形態の弁体変形例に係る電動弁100fについて説明する。電動弁100fは、弁本体10A’’、弁体20’’’’、ステッピングモータ30、支持部材40から主に構成される。ここで、第1の実施形態と相違する点を中心に、弁本体10A’’及び弁体20’’’’について順に説明する。
【0070】
弁本体10A’’は、第1の実施形態と同様に、ガイド部材11に一体成形された円環形状からなる下蓋12’を備えるが、この下蓋12’には、流路室13と背圧室16とを常時連通し、均圧孔として機能する連通孔が形成されていない点で、第1の実施形態と異なり、その他の構成は、同一である。
【0071】
弁体20’’’’は、内部流路14と他端側有底円筒部20cとの間を、軸線L上に沿って貫通する軸孔20lと、他端側有底円筒部20cと背圧室16との間を、半径方向に貫通する貫通孔20mと、を備える点で、第1の実施形態と異なり、その他の構成は、同一である。この貫通孔20mは、ガイド部材11の他端部11hと、弁体20’’’’の円板部20kとの間に配置される。
【0072】
<第4の対策(摺動部の冷却手段(均圧孔))について>
第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fでは、第1の実施形態と同様に、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するために、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を講じた上で、懸念事項(摺動部の溶融)及び懸念事項(摺動部の寸法変化)に対して、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))をさらに講じるものである。この上で、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fでは、懸念事項(摺動部の寸法変化)に対して、第4の対策(摺動部の冷却手段(均圧孔))を加えて講じるものである。
【0073】
ここで、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fは、第1の実施形態と同様に、小径ガイド軸部20g及び小径ガイド部11caの摺接可能な係合により、弁体20’’’’を半径方向に支持する半径方向支持手段と、一端側段部20i及び段差部11eの摺接可能な係合により、弁体20’’’’を軸線方向に支持する軸線方向支持手段と、を備える。なお、不図示であるが、一端側半径方向隙間G1(半径方向隙間)を、他端側半径方向隙間G2(半径方向隙間)より小さく(G1<G2)設定するものである(図3(a)参照)。また、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fは、図6に示すように、弁体20’’’’には、均圧孔として機能する、軸孔20l、他端側有底円筒部20c及び貫通孔20mが形成されており、この均圧孔を介して、内部流路14と背圧室16とが常時連通する。
【0074】
第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))における説明と重複するが、流体が、弁ポート11a及び流路部15を介し、内部流路14に流入する際には、膨張(減圧)することにより、低温(例えば、約-10~20℃)となる。よって、弁開状態において、この低温の流体が、弁体20’’’’の軸孔20lに導入されることにより、特に、弁体20’’’’の一端側に位置する半径方向支持手段及び軸線方向支持手段が、内側から積極的に冷却されることにより、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を確実に向上させることができる。
【0075】
加えて、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fにおいて、弁体20’’’’が、均圧孔を有することにより、高圧側の第1ポート1aから低圧側の第2ポート2aへと流れる場合(図中の実線参照)(以下、「順方向流れ」という)と、高圧側の第2ポート2aから低圧側の第1ポート1aへと流れる場合(図中の破線参照)(以下、「逆方向流れ」という)のいずれにおいても、軸線方向支持手段における摺動部の面圧を、所望の値に維持することができる。以下に、軸線方向支持手段における摺動部の面圧について具体的な説明をする。
【0076】
<比較例:第1の実施形態における摺動部の面圧>
まず、理解を深めるために、図1に示される第1の実施形態の電動弁100aを用いて、弁体20に生じる差圧による押圧力を説明する。この電動弁100aでは、第1ポート1aは、流路室13及び下蓋12の連通孔12aを介して、背圧室16と常時連通する。よって、順方向流れの場合(図中の実線参照)と、逆方向流れの場合(図中の破線参照)では、背圧室16に導入される圧力が変動する。つまり、順方向流れの場合には、背圧室16の流体は高圧となる一方、内部流路14の流体は低圧となるため、弁体20の軸線L方向に生じる差圧による押圧力は、一端側(下側)に向けて生じる。これに対し、逆方向流れの場合には、背圧室16の流体は低圧となる一方、内部流路14の流体は高圧となるため、弁体20の軸線L方向に生じる差圧による押圧力は、他端側(上側)に向けて生じる。
【0077】
したがって、第1の実施形態の電動弁100aでは、順方向流れの場合及び逆方向流れの場合における差圧による弁体20への押圧力の差が、若干大きくなっているため、弁体20がぐらつかないように、逆方向流れの場合(差圧による他端側(上側)への押圧力)を基準として、最大差圧による押圧力に耐える付勢ばね42(弁体20を一端側に付勢)のばね荷重が設定される。これにより、電動弁100aでは、順方向流れの場合には、軸線方向支持手段における摺動部の面圧が、逆方向流れの場合と比べ、差圧による押圧力の差分が若干大きくなっている。
【0078】
<第1の実施形態の弁体変形例の摺動部の面圧>
これに対し、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fでは、図6に示すように、順方向流れの場合には、背圧室16及び内部流路14の流体はともに低圧となるため、弁体20’’’’の軸線L方向に生じる差圧による押圧力は、略キャンセルされる。また、逆方向流れの場合には、背圧室16及び内部流路14の流体はともに高圧となるため、弁体20’’’’の軸線L方向に生じる差圧による押圧力は、略キャンセルされる。
【0079】
したがって、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fでは、順方向流れの場合及び逆方向流れの場合における差圧による押圧力の差がないため、付勢ばね42(弁体20を一端側に付勢)のばね荷重は、弁体20がぐらつかない程度に、必要最小限の値に設定することができる。これにより、電動弁100fでは、順方向流れの場合及び逆方向流れの場合のいずれにおいても、軸線方向支持手段における摺動部の面圧を、所望の値に維持することができる。
【0080】
以上より、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fは、第1の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)を解消し、加えて、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))及び第4の対策(摺動部の冷却手段(均圧孔))を採用することにより、懸念事項(摺動部の寸法変化)を確実に解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができるとともに、軸線方向支持手段における摺動部の面圧を、所望の値に維持することができる。
【0081】
なお、第1の実施形態の弁体変形例における電動弁100fでは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)、第2の対策(摺動部の耐熱手段)、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))及び第4の対策(摺動部の冷却手段(均圧孔))をそれぞれ採用するものであるが、これに限らず、例えば、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用した上で、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))及び第4の対策(摺動部の冷却手段(均圧孔))を採用するものであってもよい。
【0082】
(第2の実施形態)
図7を用いて、本発明の第2の実施形態に係る電動弁100gについて説明する。第2の実施形態に係る電動弁100gは、主に、弁体20B及びガイド部材11Bの径方向の配置や、第1継手管1B及び第2継手管2Bの接続様態について、第1の実施形態の電動弁100aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と略同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0083】
ここで、詳細は後述するが、第2の実施形態における電動弁100gは、第1の実施形態と同様に、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するために、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を講じた上で、懸念事項(摺動部の溶融)及び懸念事項(摺動部の寸法変化)に対して、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))をさらに講じるものである。
【0084】
<電動弁の構成について>
図7に示すように、電動弁100gは、弁本体10B、弁体20B、ステッピングモータ30B、支持部材40Bから主に構成される。以下、電動弁100gのそれぞれの構成を順に説明する。
【0085】
弁本体10Bは、流路室13の一部を画定する椀状部材10Baと、軸線L上に沿って延在する略円筒形状を有し、椀状部材10Baの底面側に固定接続されるガイド部材11Bと、を備える。
【0086】
椀状部材10Baには、冷媒などの流体経路としての第1継手管1B及び第2継手管2Bが、底面側に接続される。この第1継手管1Bは、第1ポート1Baを介して、流路室13に直接連通される。また、第2継手管2Bは、ガイド部材11Bの一端部に当接され、第2ポート2Ba、ガイド部材11Bの内部流路14及び弁ポート11Ba(詳細は後述する)のそれぞれを介して、流路室13に連通される。第1継手管1B及び第2継手管2Bは、例えば、銅やステンレスなどを材料として構成されており、椀状部材10Baに、ろう付け等により固着されている。また、図7(b)に示すように、椀状部材10Baには、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1継手管1Bの反対側に位置するとともに、流路室13内に向けて隆起する隆起部10Baaが形成される。
【0087】
ガイド部材11Bは、軸線L方向の略中央から一端側及び他端側で、構造が大きく異なる。まず、ガイド部材11Bにおける軸線L方向の略中央から一端側は、有底円筒形状を有しており、軸線L方向に延在する内部流路14と、内部流路14の他端側で、ガイド部材11Bを径方向に貫通する弁ポート11Baと、弁ポート11Baの周囲に形成される環状の弁座11Bbと、弁体20Bを円周方向にガイドするガイド部11Bdと、環状の縮径部11Bc(図7(c)参照)と、を有する。この縮径部11Bcは、ガイド部11Bdより外径が小さく設定される。次に、ガイド部材11Bにおける軸線L方向の略中央から他端側は、中実形状を有しており、ガイド部材11Bの他端部には、平坦な形状を有する支持部11Beが形成される。ここで、弁ポート11Baは、図7(b)に示すように、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、第1ポート1Baの反対側に位置する。第2の実施形態において、軸線Lと直交する方向から見た、弁ポート11Baの形状は、円形状であるが、これに限らず、例えば、矩形形状や、楕円形状や、任意の非対称形状など、様々な形状を採用することができる。
【0088】
第2の実施形態においては、椀状部材10Baとガイド部材11Bとを別体とするものであったが、これに限らず、例えば、図10に示される従来の電動弁のように、椀状部材10Baとガイド部材11Bとを一体に形成するものであってもよい。
【0089】
弁体20Bは、軸線Lに沿って延在する部材である。この弁体20Bは、一端側に弁部20Baが形成される。また、弁体20Bの内側には、軸線Lに沿って一端側へと延在する一端側有底円筒部20Bbと、軸線Lに沿って他端側へと延在する他端側有底円筒部20Bcと、を備える。一方、弁体20Bの外周側には、弁部20Baの径方向外側から円盤状に突出するフランジ部20Bgと、このフランジ部20Bgから垂設されるとともに、弁部20Baの径方向外側から突出し、弁体20Bが回転する際に、椀状部材10Baの隆起部10Baaと当接し得る突起部20Beと、を備える。さらに、弁体20Bの外周側には、詳細は後述するが、マグネットロータ32Bが嵌合及び当接される段部20Bdと、止め輪17を保持する環状溝20Bfと、を備える。
【0090】
一端側有底円筒部20Bbには、円周方向にガイドするガイド部材11Bが、径方向に僅かな隙間を有し、摺動可能な状態で挿入される。ここで、一端側有底円筒部20Bb、及び、ガイド部11Bdは、互いに摺動可能に係合される摺動部を有する。これにより、弁体20Bの回転状態の安定性を高めることができる。また、一端側有底円筒部20Bbにおいて、ガイド部材11Bの支持部11Beと当接する他端部20Bbaは、支持部11Beと対応する平坦な形状を有する。この他端部20Bba及び支持部11Beの摺接可能な係合により、弁体20Bを軸線方向に支持する軸線方向支持手段を備える。さらに、一端側有底円筒部20Bbには、詳細は後述するが、ガイド部材11Bの弁座11Bbと環状に摺接するシール部20Baaと、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有し、軸線L方向の一端側に延在し開口する流路部15Bと、を有する。この流路部15Bは、図7(a)に示すように、一端部を、弁ポート11Baに対して、軸線L方向の一端側に配置するとともに、流路部15Bの他端部を、弁ポート11Baに対して、軸線L方向の他端側に配置する。なお、第2の実施形態において、ガイド部材11Bの支持部11Beの形状を平坦としたが、これに限らず、例えば、半球面形状や凸形状としてもよい。これにより、ガイド部材11Bの支持部11Beと、弁体20Bの他端部20Bbaとの接触面積が極めて小さくなり、摺動抵抗が低減されることにより、弁体20Bが回転し易くなる。
【0091】
他端側有底円筒部20Bcには、弁体20Bを一端側に付勢する支持部材40Bが収容される。
【0092】
よって、弁部20Baが、ガイド部材11Bに対して回転することにより、弁部20Baの流路部15Bと、ガイド部材11Bの弁ポート11Baとの連通状態を、弁開状態(図7(a),(b)参照)から弁閉状態(不図示)(あるいは最小開度)の間で変化させ、流量の調節を行う。この際、図7(b)に示すように、弁部20Baの突起部20Beが、ストッパ部として機能する隆起部10Baaに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。よって、弁部20Baが弁開状態となる位置又は弁閉状態(あるいは最小開度)となる位置を超えて移動されることが規制されるため、再現性のある安定かつ確実な位置決めができる。
【0093】
ステッピングモータ30Bは、ケース31Bと、マグネットロータ32Bと、ステータコイル33Bと、を備える。
【0094】
ケース31Bは、例えば、ステンレスなどの金属を材料として、上方の端部が塞がれた略円筒形状に形成され、弁体20B及びマグネットロータ32Bを収容する背圧室16を画定する。ケース31Bの下方の開口側の端部は、椀状部材10Baの上端部に溶接等によって気密に固定される。
【0095】
マグネットロータ32Bは、外周部を多極に着磁された円筒状のマグネット部34Bと、マグネット部34Bの内周側にスポークを介して接続されるハブ35Bと、を一体に備える。マグネットロータ32Bは、ハブ35Bの一端部を、段部20Bdに当接させるとともに、ハブ35Bの他端部を、止め輪17により軸線L方向に付勢させるように挟持することにより、弁体20Bに固定される。これにより、回転子部は、マグネットロータ32B及び弁体20Bを一体的に有し、ケース31B内に軸線Lを中心に回転可能に設けられる。
【0096】
ステータコイル33Bは、ケース31Bの外周面に配設されており、ステータコイル33Bにパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ32Bが回転される。
【0097】
このように、マグネットロータ32Bが回転されると、このマグネットロータ32Bとともに弁部20Baが弁ポート11Baに対して回転し、流路部15Bと弁ポート11Baとの開度を変化させ、詳細は後述するが、第1継手管1Bから第2継手管2Bへ(又は第2継手管2Bから第1継手管1Bへ)流れる流体の流量が制御される。
【0098】
支持部材40Bは、ケース31Bに対して、当接した状態で、回転可能に配置されるばね受け部41と、ばね受け部41と弁体20Bとの間に挟持され、弁体20Bを一端側に付勢する付勢ばね42と、を備える。
【0099】
<電動弁の動作について>
図7を用いて、電動弁100gの動作を説明する。ここでは、電動弁100gが用いられる対象を冷媒回路として説明するが、これに限らない。また、電動弁100gにおいて、第1継手管1Bは、高圧(一次側圧力)側に接続され、第2継手管2Bは、低圧(二次側圧力)側に接続される場合(図7(a)中の実線)について説明する。なお、これとは反対方向に流れる、第2継手管2Bが高圧側に接続され、第1継手管1Bが低圧側に接続される場合(図7(a)中の破線)にも、同様の説明ができることから、ここでは省略する。
【0100】
まず、図7(b)に示すように、弁部20Baが、マグネットロータ32Bにより、反時計回り(矢印方向)に回転されることにより、弁部20Baの突起部20Beが、椀状部材10Baの隆起部10Baaに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。この際、流路部15Bが、弁ポート11Baと対向する位置となるため、弁開状態となる。よって、流体は、図7(a)における実線矢印で示すように、高圧側の第1ポート1Baから低圧側の第2ポート2Baへと流れる。なお、流体経路において、圧力損失を生じさせないために、弁ポート11Ba前後に位置する、流路部15B及び内部流路14におけるそれぞれの流路面積は、弁ポート11Baの流路面積より大きくなるように設定される。
【0101】
次に、図示は省略するが、弁部20Baが、マグネットロータ32Bにより、時計回りに回転されることにより、弁部20Baの突起部20Beが、椀状部材10Baの隆起部10Baaに突き当たり、弁部20Baの回転が規制されるとともに、マグネットロータ32Bの回転も規制される。この際、流路部15Bが、弁座11Bbと対向するとともに、弁ポート11Baがシール部20Baaと対向する位置となるため、弁閉状態となる。よって、高圧側の第1ポート1Baから低圧側の第2ポート2Baへの流路が閉じられる。
【0102】
第2の実施形態における流路部15Bは、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状を有する。よって、第2の実施形態では、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態(図7(b)参照)及び弁閉状態(不図示)の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少し、その後、流路面積が漸減的に変化する、又は、流路面積が漸増的に変化し、その後、流路面積が急激に増加する。このように、第2の実施形態における電動弁100gでは、流路面積の急激な変化及び漸次的な変化の組み合わせによる流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁の機能を付加した開閉弁として用いることができる。
【0103】
第2の実施形態における流路部15Bは、軸線L方向から見て、略扇形形状と、軸線Lに対して、偏心した半円形状とを組み合わせた形状であったが、これに限らない。例えば、第2の実施形態における流路部15Bが、軸線L方向から見て、略扇形形状を有する場合には、電動弁100gでは、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、遷移直後に、流路面積が急激に減少又は増加するため、例えば、開閉弁として用いることができる。また、第2の実施形態における流路部15Bが、軸線L方向から見て、軸線Lに対して、偏心した半円形状を有する場合には、電動弁100gでは、流路部15Bが、弁ポート11Baに対して回転し、弁開状態及び弁閉状態の一方から他方に遷移すると、流路面積が漸減的又は漸増的に変化し、細かな流量制御が可能となるため、例えば、流量調整弁として用いることができる。
【0104】
ここで、第2の実施形態における電動弁100gでは、第1の実施形態と同様に、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するために、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を講じた上で、懸念事項(摺動部の溶融)及び懸念事項(摺動部の寸法変化)に対して、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))をさらに講じるものである。
【0105】
<第1の対策(摺動部の材料を工夫)について>
第2の実施形態における電動弁100gでは、第1の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用すること、つまり、摺動部(弁体20B及びガイド部材11B)を構成する材料等を工夫し、互いに樹脂材料で構成することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消するものである。
【0106】
<第2の対策(摺動部の耐熱手段)について>
第2の実施形態における電動弁100gでは、第1の実施形態と同様に、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用すること、つまり、弁体20B及びガイド部材11Bの樹脂材料を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が添加されたポリフェニレンサルファイド(PPS)とし、好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に加え強化剤としてガラス繊維、又は炭素繊維が添加されたPPSとすることにより、懸念事項(摺動部の溶融)を解消するものである。
【0107】
<第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))について>
第2の実施形態における電動弁100gでは、第1の実施形態と同様に、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消するものである。以下に、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))について具体的な説明をする。
【0108】
第2の実施形態における電動弁100gは、図7(c)に示すように、一端側有底円筒部20Bbと、ガイド部11Bd及び縮径部11Bcとの摺接可能な係合により、弁体20Bを半径方向に支持する半径方向支持手段を有する。ここで、第2の実施形態の電動弁100gは、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))として、弁部20Baに隣接する、一端側半径方向隙間G1’(半径方向隙間)を、他端側半径方向隙間G2’(半径方向隙間)より小さく(G1’<G2’)設定するものである。具体的には、半径方向支持手段において、図7(c)に示すように、弁部20Baを一端側に有する一端側有底円筒部20Bb及びガイド部11Bdの間からなる一端側半径方向隙間G1’を、一端側有底円筒部20Bb及び縮径部11Bcの間からなる他端側半径方向隙間G2’より、小さく設定する。このように、第2の実施形態の電動弁100gにおいて、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用すると、実質的な摺動部は、弁部20Baを一端側に有する一端側有底円筒部20Bb及びガイド部11Bdから構成される。
【0109】
ここで、第1の実施形態と同様に、流体が、流路部15B及び弁ポート11Baを介し、内部流路14に流入する際には、膨張(減圧)することにより、低温(例えば、約-10~20℃)となる。よって、弁開状態において、この低温の流体が、弁体20Bの内部流路14に導入されることにより、特に、弁体20Bの一端側に位置する半径方向支持手段が、内側から積極的に冷却されるため、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を確実に向上させることができる。また、半径方向支持手段において、摺動面積を比較的小さくし、摺動抵抗を低減できるため、摺動部の作動性と耐久性をより一層向上させることができる。さらに、一端側半径方向隙間G1’が比較的小さいことから、弁閉状態における弁部20Baのシール性が向上し、弁漏れを抑制することができる。
【0110】
以上より、第2の実施形態における電動弁100gは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)を採用し、懸念事項(摺動部の溶融)を解消するとともに、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用し、懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消することにより、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0111】
なお、第2の実施形態における電動弁100gでは、第1の対策(摺動部の材料を工夫)、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))をそれぞれ採用するものであるが、これに限らず、例えば、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用した上で、第2の対策(摺動部の耐熱手段)、又は、第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用するものであってもよい。
【0112】
(第2の実施形態のストッパ部変形例)
図8を用いて、第2の実施形態のストッパ部変形例について説明する。第2の実施形態のストッパ部変形例における第1継手管1B’の接続様態は、第1継手管1B’が、弁部20Baのストッパ部として機能する位置に、軸線Lと直交する方向に延在する第1継手管1B’を配置し、隆起部10Baaを省略する点で、第2の実施形態と相違するが、その他の構成は、第2の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0113】
具体的には、椀状部材10Ba’には、第1継手管1B’が、図8(a)に示すように、軸線Lと直交する方向から見て、突起部20Beと重なる位置に配置されるとともに、図8(b)に示すように、軸線L方向から見て、回転する突起部20Beと干渉する位置に配置される。この第1継手管1B’が、回転する突起部20Beと当接することにより、所望の回転角度に規制されるため、再現性のある安定かつ確実な位置決めができる。このように、第1継手管1B’が、弁部20Baのストッパ部として機能するため、隆起部10Baaを省略することができ、低コスト化を図ることができる。
【0114】
以上より、第2の実施形態のストッパ部変形例における電動弁100hは、第2の実施形態と同様に、第1の対策(摺動部の材料を工夫)を採用することにより、従来の問題点(摺動抵抗の増加)を解消し、摺動部の作動性と耐久性を向上させることができる。また、第2の対策(摺動部の耐熱手段)及び/又は第3の対策(摺動部の冷却手段(弁部))を採用することにより、懸念事項(摺動部の溶融)及び/又は懸念事項(摺動部の寸法変化)を解消し、摺動部の作動性と耐久性をさらに一層向上させることができる。
【0115】
<冷凍サイクルシステムについて>
図9を用いて、本発明の冷凍サイクルシステムを説明する。冷凍サイクルシステムは、第1から2の実施形態の電動弁100a~100hを用いた膨張弁100と、室外ユニットに搭載された室外熱交換器200と、室内ユニットに搭載された室内熱交換器300と、四方弁を構成する流路切換弁400と、圧縮機500と、を備える。ここで、膨張弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び、圧縮機500は、それぞれ導管によって接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略している。
【0116】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時(図中の実線矢印参照)には、圧縮機500で圧縮された冷媒は、流路切換弁400から室外熱交換器200、膨張弁100、室内熱交換器300、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室外熱交換器200が凝縮器として機能し、室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0117】
一方、暖房運転時(図中の破線矢印参照)には、圧縮機500で圧縮された冷媒は、流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。よって、膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、又は、暖房運転時に室内熱交換器300から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御することができる。
【0118】
なお、本発明は、第1から2の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、第1から2の実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁100a~100hを例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0119】
<その他>
本実施形態の電動弁100a~100hは、例示する冷凍サイクルだけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0120】
100a~100h 電動弁
1,1B,1B’ 第1継手管
1a,1Ba,1Ba’ 第1ポート
2,2’,2B 第2継手管
2a,2Ba 第2ポート
10A,10A’,10A’’,10B 弁本体
10,10’,10Ba,10Ba’ 椀状部材
10Baa 隆起部
11,11’,11B ガイド部材
11a,11Ba 弁ポート
11b,11Bb 弁座
11ca 小径ガイド部
11cb 大径ガイド部
11e 段差部
11g 引出し部
11h,11h’ 他端部
11Bc 縮径部
11Bd ガイド部
11Be 支持部
12,12’ 下蓋
12a 連通孔
13 流路室
14 内部流路
15,15’’,15’’’,15B 流路部
16 背圧室
17 止め輪
18 接続室
20,20’,20’’’’,20B 弁体
20a,20a’’,20a’’’,20Ba 弁部
20aa,20Baa シール部
20c,20Bc 他端側有底円筒部
20g 小径ガイド軸部
20h 大径ガイド軸部
20i,20i’ 一端側段部
20k 円板部
20ka 他端側段部
20kb,20Be 突起部
20l 軸孔(均圧孔)
20m 貫通孔(均圧孔)
20Bb 一端側有底円筒部
20Bba 他端部
20Bd 段部
20Bf 環状溝
20Bg フランジ部
30,30B ステッピングモータ
31,31B ケース
32,32B マグネットロータ
33,33B ステータコイル
34,34B マグネット部
35,35B ハブ
40,40B 支持部材
41 ばね受け部
42 付勢ばね
43 ブッシュ
100 膨張弁
200 室外熱交換器
300 室内熱交換器
400 流路切換弁
500 圧縮機

G1,G1’ 一端側半径方向隙間
G2,G2’ 他端側半径方向隙間
L 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10