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特開2024-163526画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163526
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20241115BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079225
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】萩野谷 道彬
(72)【発明者】
【氏名】六川 洋
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200FA05
2H200FA18
2H200GA03
2H200GA04
2H200GA06
2H200GA09
2H200GA10
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA44
2H200HA02
2H200HB12
2H200HB22
2H200JA02
2H200JA28
2H200JA29
2H200JB06
2H200JB45
2H200JB48
2H200JB49
2H200MA04
2H200PA02
2H200PA03
2H200PA04
2H200PB02
2H200PB05
2H200PB14
2H200PB27
2H200PB28
2H270KA28
2H270LA07
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA37
2H270LA64
2H270LC04
2H270LC07
2H270LD05
2H270MA24
2H270MB07
2H270MB45
2H270MC39
2H270MH09
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】転写処理における画質の低下を抑止し得るようにする。
【解決手段】画像形成装置1は、転写条件等に応じて読み出した荷重・放電補正係数Aと媒体幅Wとを乗じて算出する荷重・放電補正転写電圧Vtrreにより、転写部20に形成される空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を補正して転写電圧Vtrを算出する。そのうえで画像形成装置1は、広幅時転写電圧Vtrwに対する狭幅時転写電圧Vtrnの比率に関し、タイプ2転写電圧比率RVtr2がタイプ3転写電圧比率RVtr3よりも大きくなるよう、各荷重・放電補正係数Aの値を設定した。これにより画像形成装置1では、媒体幅Wに対する転写電圧Vtrの変動が用紙Pのタイプごとに異なるものの、転写部20における空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を適切に軽減若しくは解消でき、極めて高品質な印刷処理を行うことができる。
【選択図】図26

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤像を担持する像担持体と、
媒体を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを介して前記像担持体に対向し、前記現像剤像を当該像担持体から前記媒体に転写する転写部材と、
前記転写部材に転写電圧を供給する電圧供給部と、
前記媒体に関する情報を取得する媒体情報取得部と
を具え、
前記電圧供給部は、
第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における前記転写電圧を第1転写電圧とし、
前記第1の厚さ、前記第1の抵抗及び前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における前記転写電圧を第2転写電圧とし、
前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、前記第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び前記第1の幅を有する第3媒体における前記転写電圧を第3転写電圧とし、
前記第2の厚さ、前記第2の抵抗及び前記第2の幅を有する第4媒体における前記転写電圧を第4転写電圧とした場合に、
前記第2転写電圧に対する前記第1転写電圧の比率である第1電圧比が、前記第4転写電圧に対する前記第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、前記転写電圧を制御する
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1電圧比は、1よりも大きく、
前記第2電圧比は、1よりも小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の抵抗は、体積抵抗率により表された場合の値が1.22×1017[Ω・cm]以上であり、
前記第2の抵抗は、体積抵抗率により表された場合の値が3.41×1010[Ω・cm]以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1の抵抗は、表面抵抗率により表された場合の値が6.24×1014[Ω/□]以上であり、
前記第2の抵抗は、表面抵抗率により表された場合の値が4.34×1010[Ω/□]以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の厚さは、140[μm]以下であり、
前記第2の厚さは、200[μm]以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1転写電圧、前記第2転写電圧、前記第3転写電圧及び前記第4転写電圧、又は当該第1転写電圧、当該第2転写電圧、当該第3転写電圧及び当該第4転写電圧をそれぞれ定めるための補正値若しくは補正係数をそれぞれ記憶する記憶部
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電圧供給部は、温度及び湿度の少なくとも一方に応じて前記転写電圧を変化させる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記電圧供給部は、前記転写部材に供給する前記転写電圧を、前記媒体の厚さに応じた値とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記搬送ベルトにより前記媒体が搬送される搬送路に沿って複数の前記像担持体及び複数の前記転写部材がそれぞれ配置され、
前記電圧供給部は、複数の前記転写部材にそれぞれ供給する前記転写電圧を、前記搬送路に沿った順序に応じた値とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記媒体の面を反転させると共に当該媒体を前記搬送ベルトに供給する媒体反転部
をさらに具え、
前記電圧供給部は、前記転写部材に供給する前記転写電圧を、前記媒体の面に応じた値とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記搬送ベルトにより前記媒体を搬送するときの速度である搬送速度を制御する速度制御部
をさらに具え、
前記電圧供給部は、前記転写部材に供給する前記転写電圧を、前記搬送速度に応じた値とする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
媒体に関する情報を取得する媒体情報取得ステップと、
前記媒体を搬送する搬送ベルトを介して、現像剤像を担持する像担持体に対向する転写部材に対し、電圧供給部から転写電圧を供給する電圧供給ステップと、
前記転写部材により、前記現像剤像を当該像担持体から前記媒体に転写させる転写ステップと
を有し、
前記電圧供給ステップでは、
第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における前記転写電圧を第1転写電圧とし、
前記第1の厚さ、前記第1の抵抗及び前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における前記転写電圧を第2転写電圧とし、
前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、前記第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び前記第1の幅を有する第3媒体における前記転写電圧を第3転写電圧とし、
前記第2の厚さ、前記第2の抵抗及び前記第2の幅を有する第4媒体における前記転写電圧を第4転写電圧とした場合に、
前記第2転写電圧に対する前記第1転写電圧の比率である第1電圧比が、前記第4転写電圧に対する前記第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、前記転写電圧を制御する
ことを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
情報処理装置に対し、
媒体に関する情報を取得する媒体情報取得ステップと、
前記媒体を搬送する搬送ベルトを介して、現像剤像を担持する像担持体に対向する転写部材に対し、電圧供給部から転写電圧を供給する電圧供給ステップと、
前記転写部材により、前記現像剤像を当該像担持体から前記媒体に転写させる転写ステップと
を実行させ、
前記電圧供給ステップでは、
第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における前記転写電圧を第1転写電圧とし、
前記第1の厚さ、前記第1の抵抗及び前記第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における前記転写電圧を第2転写電圧とし、
前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、前記第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び前記第1の幅を有する第3媒体における前記転写電圧を第3転写電圧とし、
前記第2の厚さ、前記第2の抵抗及び前記第2の幅を有する第4媒体における前記転写電圧を第4転写電圧とした場合に、
前記第2転写電圧に対する前記第1転写電圧の比率である第1電圧比が、前記第4転写電圧に対する前記第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、前記転写電圧を制御する
ことを特徴とする画像形成プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムに関し、例えば電子写真式の画像形成装置(いわゆるプリンタ)に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像形成装置として、画像形成ユニットにおいて像担持体(感光体ドラムとも呼ばれる)の表面に現像剤を用いた現像剤像を形成し、転写部においてこの現像剤像を感光体ドラムから用紙等の媒体に転写させ、定着部によって現像剤像を媒体に定着させることにより、画像を印刷するものが広く普及している。
【0003】
このうち転写部では、像担持体と転写部材(転写ローラとも呼ばれる)との間に媒体を挟持し、当該転写部材に所定の高電圧(以下これを転写電圧とも呼ぶ)を印加することにより、現像剤像を媒体に転写させている。このとき媒体は、電気的な抵抗として機能することになる。しかし転写部では、媒体の幅(主走査方向に沿った長さ)や厚さ、及び材質等に応じて抵抗の値が相違する。また転写部では、転写部幅方向に関する当該媒体の外側には空隙が形成され、その外側において像担持体及び転写部材が直接接触する。
【0004】
このような複数の要因により、転写部では、媒体の幅や厚さ等に応じて各部分に流れる電流が異なるため、適切な転写電圧も相違する。そこで画像形成装置として、各部分に流れる電流に応じて転写電圧を制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-52732号公報(図12等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、画像形成装置のなかには、無端ベルトでなる搬送ベルトを走行させ、当該搬送ベルトに媒体を載せた状態で搬送するものがある。この搬送ベルトは、当該媒体を安定的に搬送する観点から、可撓性を有しながらも比較的硬い樹脂材料により構成される。
【0007】
このような画像形成装置では、転写部において、媒体及び搬送ベルトを重ねた状態で像担持体及び転写部材の間に挟持することになる。このとき転写部では、搬送ベルトの変形する度合が比較的小さいため、像担持体及び搬送ベルトが直接接触する範囲が狭くなり、若しくは直接接触しなくなり、幅方向に関し十分に大きい空隙が形成されることになる。
【0008】
この結果、この画像形成装置では、各部に流れる電流の振る舞いが特許文献1とは異なるため、転写電圧を適切な値に制御することが困難となり、良好な画質を得ることができない、という問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、転写処理における画質の低下を抑止し得る画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の画像形成装置においては、現像剤像を担持する像担持体と、媒体を搬送する搬送ベルトと、搬送ベルトを介して像担持体に対向し、現像剤像を当該像担持体から媒体に転写する転写部材と、転写部材に転写電圧を供給する電圧供給部と、媒体に関する情報を取得する媒体情報取得部とを設け、電圧供給部は、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における転写電圧を第1転写電圧とし、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における転写電圧を第2転写電圧とし、第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び第1の幅を有する第3媒体における転写電圧を第3転写電圧とし、第2の厚さ、第2の抵抗及び第2の幅を有する第4媒体における転写電圧を第4転写電圧とした場合に、第2転写電圧に対する第1転写電圧の比率である第1電圧比が、第4転写電圧に対する第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、転写電圧を制御するようにした。
【0011】
また本発明の画像形成方法においては、媒体に関する情報を取得する媒体情報取得ステップと、媒体を搬送する搬送ベルトを介して、現像剤像を担持する像担持体に対向する転写部材に対し、電圧供給部から転写電圧を供給する電圧供給ステップと、転写部材により、現像剤像を当該像担持体から媒体に転写させる転写ステップとを有し、電圧供給ステップでは、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における転写電圧を第1転写電圧とし、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における転写電圧を第2転写電圧とし、第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び第1の幅を有する第3媒体における転写電圧を第3転写電圧とし、第2の厚さ、第2の抵抗及び第2の幅を有する第4媒体における転写電圧を第4転写電圧とした場合に、第2転写電圧に対する第1転写電圧の比率である第1電圧比が、第4転写電圧に対する第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、転写電圧を制御するようにした。
【0012】
さらに本発明の画像形成プログラムにおいては、情報処理装置に対し、媒体に関する情報を取得する媒体情報取得ステップと、媒体を搬送する搬送ベルトを介して、現像剤像を担持する像担持体に対向する転写部材に対し、電圧供給部から転写電圧を供給する電圧供給ステップと、転写部材により、現像剤像を当該像担持体から媒体に転写させる転写ステップとを実行させ、電圧供給ステップでは、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅を有する第1媒体における転写電圧を第1転写電圧とし、第1の厚さ、第1の抵抗及び第1の幅よりも大きい第2の幅を有する第2媒体における転写電圧を第2転写電圧とし、第1の厚さよりも大きい第2の厚さ、第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗及び第1の幅を有する第3媒体における転写電圧を第3転写電圧とし、第2の厚さ、第2の抵抗及び第2の幅を有する第4媒体における転写電圧を第4転写電圧とした場合に、第2転写電圧に対する第1転写電圧の比率である第1電圧比が、第4転写電圧に対する第3転写電圧の比率である第2電圧比よりも大きくなるように、転写電圧を制御するようにした。
【0013】
本発明は、第1電圧比が第2電圧比よりも大きくなるように転写電圧を制御するため、比較的薄く且つ比較的抵抗が大きい媒体と、比較的厚く且つ比較的抵抗が小さい媒体との何れにおいても、媒体の幅及び厚さに応じて形成される空隙の大きさ等に関わらず、適切な転写電圧を転写部材に供給することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転写処理における画質の低下を抑止し得る画像形成装置、画像形成方法及び画像形成プログラムを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】画像形成装置の構成を示す略線図である。
図2】画像形成ユニットの構成を示す略線図である。
図3】画像形成装置の回路構成を示す略線的ブロック図である。
図4】転写部における空隙の形成の様子を示す略線図である。
図5】薄紙に対応した電圧テーブルを示す略線図である。
図6】厚紙に対応した電圧テーブルを示す略線図である。
図7】薄紙に対応した補正テーブルを示す略線図である。
図8】厚紙に対応した補正テーブルを示す略線図である。
図9】薄紙における媒体幅と荷重・放電補正転写電圧との関係を示す略線図である。
図10】厚紙における媒体幅と荷重・放電補正転写電圧との関係を示す略線図である。
図11】転写順が2番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図12】転写順が3番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図13】転写順が4番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図14】転写順が1番目及び4番目の場合における媒体幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
図15】両面印刷時であり転写順が1番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図16】両面印刷時であり転写順が2番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図17】両面印刷時であり転写順が3番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図18】両面印刷時であり転写順が4番目の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図19】薄紙における両面印刷時の媒体幅と荷重・放電補正転写電圧との関係を示す略線図である。
図20】厚紙における両面印刷時の媒体幅と荷重・放電補正転写電圧との関係を示す略線図である。
図21】薄紙における両面印刷時の媒体幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
図22】厚紙における両面印刷時の媒体幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
図23】印刷速度が低速の場合の補正テーブルを示す略線図である。
図24】用紙の厚さ及び電気抵抗値による分類を示す略線図である。
図25】用紙のタイプごとの媒体幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
図26】用紙のタイプごとの媒体幅と転写電圧との関係を厚さ及び電気抵抗値により分類した様子を示す略線図である。
図27】タイプ2及びタイプ3における狭幅時転写電圧、広幅時転写電圧及び転写電圧比率を示す略線図である。
図28】転写電圧決定処理手順を示すフローチャートである。
図29】タイプ1の用紙における用紙幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
図30】タイプ3の用紙における用紙幅と転写電圧との関係を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0017】
[1.画像形成装置の構成]
[1-1.全体構成]
図1に模式的な断面図を示すように、第1の実施の形態による画像形成装置1は、電子写真方式のカラープリンタであり、媒体としての用紙Pに対しモノクロ又はカラーの画像を形成すること、すなわち印刷することができる。因みに画像形成装置1は、原稿を読み取るイメージスキャナ機能や電話回線を使用した通信機能等を有しておらず、印刷機能のみを有する単機能のSFP(Single Function Printer)となっている。
【0018】
画像形成装置1は、略箱型に形成された筐体2の内部に種々の部品が配置されている。因みに以下では、図1における右端部分を画像形成装置1の正面とし、この正面と対峙して見た場合の上下方向、左右方向及び前後方向をそれぞれ定義した上で説明する。また以下では、左右方向を主走査方向又は幅方向とも呼ぶ。
【0019】
また画像形成装置1は、情報処理装置として構成されており、印刷制御部3により全体を統括制御するようになっている。この印刷制御部3は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を有しており、各種プログラムを実行することにより種々の処理を行う。さらに印刷制御部3は、コンピュータ装置等の上位装置(図示せず)と無線又は有線により接続されている。印刷制御部3は、この上位装置から印刷対象の画像を含む印刷データが与えられると、用紙Pの表面に印刷画像を形成する印刷処理を実行する。
【0020】
筐体2の上面における前側には、表示操作部4が設けられている。表示操作部4は、例えば液晶パネルとタッチセンサとが組み合わされたタッチパネルとして構成されている。この表示操作部4は、印刷制御部3の制御に基づいて種々の情報を表示し、またユーザからの操作入力を受け付けて該印刷制御部3に通知する。
【0021】
筐体2内の最下部には、集積された用紙P(媒体とも呼ぶ)を収容する用紙カセット5が設けられている。用紙カセット5の前上方には、給紙部6が設けられている。給紙部6は、該用紙カセット5の前上側から用紙Pを搬送すべき経路である搬送路Uに沿って、各種ローラや搬送ガイド等が適宜配置されている。
【0022】
この給紙部6(図1)は、印刷制御部3の制御に基づいて各種ローラ等を適宜回転させることにより、用紙カセット5に収容されている用紙Pを1枚ずつ分離しながらピックアップする。続いて給紙部6は、この用紙Pを搬送ガイドにより案内しながら、搬送路Uに沿って前上方へ進行させ、やがて後方へ折り返して送り出す。
【0023】
給紙部6の後側には、概ね前後方向に沿って搬送路Uが形成されており、その下側に中搬送部10が配置されている。中搬送部10は、後側のベルト駆動ローラ11及び前側のベルト従動ローラ12、4個の転写ローラ13及び転写ベルト14等により構成されている。
【0024】
ベルト駆動ローラ11、ベルト従動ローラ12及び各転写ローラ13は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、且つ回転可能に支持されている。ベルト駆動ローラ11は、中搬送部10の後端付近に配置されており、図示しないベルトモータから供給される駆動力により矢印R2方向へ回転する。ベルト従動ローラ12は、中搬送部10の前端付近に配置されている。
【0025】
4個の転写ローラ13は、ベルト駆動ローラ11及びベルト従動ローラ12の間に、前後方向に所定間隔毎に離散するように配置されている。また各転写ローラ13は、後述する転写電圧発生部54から所定のバイアス電圧が印加される。
【0026】
搬送ベルトとしての転写ベルト14は、例えばポリイミドのような柔軟性を有すると共にある程度の硬度を有する樹脂材料により、無端ベルトとして構成されている。この転写ベルト14は、例えば厚さが100±8[μm]であり、周長が624±1.5[mm]となっている。また転写ベルト14は、ベルト駆動ローラ11及びベルト従動ローラ12の周囲を周回するように張架されており、その上側部分が搬送路Uに沿うように位置している。
【0027】
この転写ベルト14は、ベルト駆動ローラ11の回転に伴い上側部分を後方向へ進行させるように走行する。このとき転写ベルト14は、給紙部6から用紙Pが引き渡された場合、当該用紙Pを上側に載せた状態で、搬送路Uに沿って後方向へ搬送する。また中搬送部10では、速度制御部としての印刷制御部3の制御に基づき、上述したベルトモータの回転速度が変化すると、転写ベルト14の走行速度も変化することになる。
【0028】
中搬送部10の上側には、4個の画像形成ユニット15(15K、15Y、15M及び15C)が前側から後側に向けて順次整列した状態で配置されている。各色の画像形成ユニット15は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色にそれぞれ対応しているものの、色のみが相違しており、何れも同様に構成されている。各画像形成ユニット15は、大きく分けて、トナーカートリッジ16、ID(イメージドラム)ユニット17、及び露光ヘッド18等が設けられている。
【0029】
トナーカートリッジ16は、IDユニット17に対し着脱可能に構成されており、現像剤としてのトナーが収納されている。このトナーカートリッジ16は、IDユニット17との接続部分に開閉可能なトナー供給口が形成されており、このトナー供給口を介してトナーを該IDユニット17に供給する。
【0030】
IDユニット17は、筐体2に対し着脱可能に構成されており、円筒状の感光体ドラム19や各種ローラ等を有している。また各IDユニット17は、それぞれの感光体ドラム19を各転写ローラ13の真上に位置させており、且つ所定の付勢機構(図示せず)により下方向に向けて付勢されている。これにより画像形成装置1では、各IDユニット17の感光体ドラム19及び該転写ローラ13により、転写ベルト14を挟持(ニップ)している。以下では、感光体ドラム19及び転写ローラ13により転写ベルト14若しくは該転写ベルト14及び用紙Pを挟持する部分を、転写部20若しくはニップ部と呼ぶ。
【0031】
このIDユニット17は、図示しない上位装置から供給された印刷データに基づいた静電潜像を感光体ドラム19の周側面に生成し、トナーカートリッジ16から供給されるトナーを用いて現像することにより、感光体ドラム19の周側面上にトナー画像を形成する(詳しくは後述する)。各転写部20は、搬送路Uに沿って用紙Pが搬送されていた場合、各画像形成ユニット15(15K、15Y、15M及び15C)における各感光体ドラム19の周側面からトナー画像を該用紙Pにそれぞれ転写させる。説明の都合上、以下ではトナーを現像剤とも呼び、またトナー画像を現像剤像とも呼ぶ。
【0032】
中搬送部10の後端近傍には、定着部21が設けられている。定着部21は、搬送路Uを挟んで対向するように配置された加熱ローラ22及び加圧ローラ23を有している。加熱ローラ22は、中心軸を左右方向に向けた円筒状に形成されており、内部にヒータ(図示せず)が設けられている。加圧ローラ23は、加熱ローラ22と同様の円筒状に形成されており、上側の表面を加熱ローラ22における下側の表面に所定の押圧力で押し付けている。また定着部21には、温度を検知する温度センサ(図示せず)等も設けられている。
【0033】
この定着部21は、印刷制御部3の制御に基づき、図示しない定着モータから駆動力が供給されると、加熱ローラ22を加熱すると共に当該加熱ローラ22及び加圧ローラ23をそれぞれ所定方向へ回転させる。これにより定着部21は、中搬送部10から受け取った用紙P、すなわち各色のトナー画像が順次転写された用紙Pに対して熱及び圧力を加えてトナーを定着させ、さらに後方へ引き渡す。
【0034】
定着部21の後側及び下側には、用紙反転部24が設けられている。用紙反転部24は、定着部21の後側に設けられた切替器25の他、複数の搬送ガイド及び複数の搬送ローラ等により、退避搬送路UR1及び循環搬送路UR2といった複数の搬送路を形成している。
【0035】
媒体反転部としての用紙反転部24は、両面印刷を行う場合、印刷制御部3の制御に基づき、切替器25を切り替えて用紙Pを退避搬送路UR1に沿って進行させた後、該用紙Pの進行方向を反転させる。その後、用紙反転部24は、この用紙Pを循環搬送路UR2に沿って前方へ進行させ、再び給紙部6の途中から搬送路Uに合流させる。この結果、用紙反転部24は、用紙Pの表裏を反転させた状態で中搬送部10により搬送することができ、該用紙Pの裏面に画像を転写させることができる。因みに用紙反転部24は、用紙Pに両面印刷を行わない場合、及び該用紙Pの裏面に画像を転写させ終えた場合、切替器25により該用紙Pを後斜め上方向へ進行させる。
【0036】
定着部21及び切替器25の後側及び上側には、排紙部26が配置されている。排紙部26は、給紙部6と一部類似した構成となっており、搬送路Uに沿って搬送ガイドや複数のローラ等が適宜配置されている。この排紙部26は、各ローラ等を適宜回転させることにより、定着部21から引き渡される用紙Pを搬送ガイドに沿って後上方へ搬送してから前方へ向けて折り返し、筐体2の上面に形成された排出トレイ27へ排出する。
【0037】
[1-2.画像形成ユニットの構成]
次に、画像形成ユニット15(15K、15Y、15M及び15C)の構成について、模式的な側面図である図2を参照しながら説明する。この画像形成ユニット15は、上述したように、トナーカートリッジ16、IDユニット17及び露光ヘッド18等を有している。トナーカートリッジ16は、内部にトナーを収納する空間を有しており、下部側面に形成された供給口から当該トナーをIDユニット17内へ供給する。
【0038】
IDユニット17は、外殻部分を構成するIDユニット筐体30の内部に、トナーを収容するトナー収容空間31が設けられると共に、その下方乃至後方に、供給ローラ32、現像ローラ33、現像ブレード34、感光体ドラム19、帯電ローラ35、帯電クリーニングローラ36、クリーニング部材37及び除電部38等が適宜配置されている。
【0039】
トナー収容空間31は、IDユニット筐体30の上側にトナーカートリッジ16が装着されると、当該トナーカートリッジ16から供給されるトナーを内部に収容する。このトナー収容空間31には、図示しないトナー撹拌部が設けられており、収容されているトナーを適宜撹拌することにより、該トナーの凝集を防止すると共に、該トナーを供給ローラ32等へ円滑に供給する。
【0040】
供給ローラ32、現像ローラ33、感光体ドラム19、帯電ローラ35及び帯電クリーニングローラ36は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円柱状若しくは円筒状に構成されており、且つ回転可能に支持されている。これらのローラやドラム等は、図示しないIDモータから供給される駆動力により回転する。
【0041】
供給ローラ32は、トナー収容空間31内の下方に配置されている。現像ローラ33は、供給ローラ32の後ろ斜め上側において、該供給ローラ32及び感光体ドラム19とそれぞれ当接する位置に設けられている。供給ローラ32及び現像ローラ33は、何れも中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、それぞれの中心軸を中心として回転可能に支持されている。現像ブレード34は、薄板状に形成されており、一端側がIDユニット筐体30に固定されると共に他端側が現像ローラ33の周側面に当接され、さらに該現像ローラ33に対し弾性力を作用させている。
【0042】
像担持体としての感光体ドラム19は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成されており、中心軸を中心に回転可能に支持されている。また感光体ドラム19は、その周側面に薄膜状の電荷発生層及び電荷輸送層が順次形成され、帯電し得るようになっている。帯電部としての帯電ローラ35は、中心軸を左右方向に沿わせた円柱状に形成され、回転可能に支持されると共に、感光体ドラム19の後上側に当接するように設けられている。帯電クリーニングローラ36は、帯電ローラ35の上側に該帯電ローラ35と当接するように配置されている。この帯電クリーニングローラ36は、該帯電ローラ35の回転に伴って従動し、若しくは周速差をつけて回転する。
【0043】
露光ヘッド18は、露光部等とも呼ばれており、左右方向に沿った細長い棒状に形成され、感光体ドラム19の上側に位置している。この露光ヘッド18には、発光素子であるLED(Light Emitting Diode)素子が主走査方向(すなわち左右方向)に沿って複数配列されると共に、ロッドレンズアレイ等を有している。この露光ヘッド18は、印刷制御部3(図2)の制御に基づいて各LED素子を適宜発光させると、下方向へ向けてそれぞれ光を収束させながら照射し、感光体ドラム19の周側面における上端近傍に結像させ、これにより感光体ドラム19の表面を露光し、静電潜像を形成する。
【0044】
クリーニング部材37は、感光体ドラム19の後側に設けられており、柔軟性を有する樹脂材料により薄板状に構成されている。このクリーニング部材37は、後端側がIDユニット筐体30に固定されると共に前端近傍が感光体ドラム19の周側面に当接している。除電部38は、例えばLED等の発光素子を有しており、感光体ドラム19の後上側に位置している。この除電部38は、印刷制御部3の制御に基づいて発光し、この光を感光体ドラム19の周側面に照射することにより、当該周側面を除電する。
【0045】
かかる構成において、各画像形成ユニット15(15K、15Y、15M及び15C)は、印刷処理を行う場合、印刷制御部3の制御に基づき、IDユニット17の現像ローラ33、帯電ローラ35及び転写ローラ13をそれぞれ矢印R2方向へ回転させると共に、感光体ドラム19及び供給ローラ32を矢印R1方向へ回転させる。
【0046】
これと共に画像形成ユニット15は、印刷制御部3及び高圧制御部45の制御に基づき、帯電電圧発生部51、現像電圧発生部52、供給電圧発生部53及び転写電圧発生部54(図3)から、帯電ローラ35、現像ローラ33、供給ローラ32及び転写ローラ13に対し、それぞれ所定のバイアス電圧を供給する。また画像形成ユニット15は、印刷制御部3の制御に基づき除電部38を発光させる。
【0047】
供給ローラ32は、帯電によりトナー収容空間31内のトナーを周側面に付着させ、回転によりこのトナーを現像ローラ33の周側面に付着させる。現像ローラ33は、現像ブレード34によって周側面から余分なトナーが除去され該トナーの薄層が形成された後、このトナーの薄層を感光体ドラム19の周側面に当接させる。説明の都合上、以下では供給ローラ32、現像ローラ33及び現像ブレード34をまとめて現像部39とも呼ぶ。
【0048】
また帯電ローラ35は、帯電した状態で感光体ドラム19と当接することにより、当該感光体ドラム19の周側面を均一に帯電させる。このとき帯電クリーニングローラ36は、該帯電ローラ35に付着するトナーや該トナーの外添剤等を掻き取る。
【0049】
一方、印刷制御部3は、上位装置から取得した印刷データを基に画像データを生成し、この画像データを1ラインごとのドットデータとして露光ヘッド18に供給する。露光ヘッド18は、供給されたドットデータに基づいた発光パターンで発光し、感光体ドラム19を露光する。これにより感光体ドラム19は、その上端近傍において周側面に静電潜像が形成される。
【0050】
続いて感光体ドラム19は、矢印R1方向へ回転することにより、この静電潜像を形成した箇所を現像ローラ33と当接させる。これにより感光体ドラム19の周側面には、静電潜像に基づいてトナーが付着し、画像データに基づいたトナー画像が現像される。現像されたトナー画像は、感光体ドラム19の回転により、転写ローラ13との挟持箇所、すなわち搬送路U上の転写位置に到達する。
【0051】
このとき画像形成ユニット15は、搬送路Uに沿って用紙Pが搬送されていた場合、転写ローラ13に印加された高電圧により当該用紙Pが帯電され、各部分の電位差等により、トナー画像を感光体ドラム19の周側面から当該用紙Pに転写させる。このようにして画像形成ユニット15は、印刷データに基づいたトナー画像を形成し、搬送路Uに沿って前方から搬送されて来る用紙Pに当該トナー画像を転写することができる。
【0052】
また画像形成ユニット15は、転写箇所を通過した感光体ドラム19の周側面にトナーが残っていた場合、クリーニング部材37により当該トナーを掻き落とす。さらに画像形成ユニット15は、感光体ドラム19の周側面がクリーニング部材37との当接箇所を通過した後、除電部38により除電し、周側面を一様に帯電されていない状態に戻す。
【0053】
[1-3.画像形成装置の回路構成]
次に、画像形成装置1の回路構成について、図3を参照しながら説明する。印刷制御部3は、画像形成装置1を統括的に制御する部分であり、上述したように図示しないCPU、ROM及びRAM等を有している。この印刷制御部3には、記憶部41、コマンド/画像処理部43、露光ヘッドインタフェース(I/F)部44、高圧制御部45、センサ46、温度・湿度検出部47及び感光体ドラム19等が接続されている。
【0054】
記憶部41は、例えばSSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)のような不揮発性の記憶媒体であり、各種プログラムや各種情報等を記憶する。印刷制御部3は、RAMをワークエリアとして使用しながら、ROMや記憶部41等から読み出した各種プログラムをCPUによって実行することにより、様々な処理を行う。
【0055】
ホストインタフェース(I/F)部42は、コマンド/画像処理部43に接続されており、通信接続における物理的階層のインタフェースを担う部分であり、例えば物理的なコネクタや通信処理を行う半導体チップ部品等により構成される。このホストインタフェース部42は、例えばIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3u/ab/an/ae等の規格に準拠した有線LAN(Local Area Network)、又はIEEE802.11a/b/g/n/ac/ax等の規格に準拠した無線LAN等のインタフェースとして機能する。
【0056】
このホストインタフェース部42は、図示しないケーブルやネットワーク等を介して、図示しない上位装置(ホストコンピュータ等とも呼ばれる)やサーバ装置等との間で種々の情報を送受信することができる。
【0057】
コマンド/画像処理部43は、例えば図示しないマイクロプロセッサ、RAM及び所定の演算処理を実行するための専用回路等を有している。このコマンド/画像処理部43は、上位装置からホストインタフェース部42を介して各種コマンドや画像データ等を取得し、当該コマンドの解釈処理や画像データのビットマップデータへの展開処理等を実行する。
【0058】
露光ヘッドインタフェース(I/F)部44は、図示しないマイクロプロセッサ及びRAM等を有しており、コマンド/画像処理部43からビットマップデータを取得し、所定の加工処理を施した上で、各画像形成ユニット15の各露光ヘッド18へそれぞれ供給する。
【0059】
高圧制御部45は、図示しないマイクロプロセッサ等により構成されており、帯電電圧発生部51、現像電圧発生部52、供給電圧発生部53及び転写電圧発生部54に対し、それぞれ帯電電圧、現像電圧、供給電圧及び転写電圧の生成に関する制御を行う。
【0060】
帯電電圧発生部51は、帯電ローラ35に供給する帯電電圧の生成及び停止を行う。現像電圧発生部52は、現像ローラ33に供給する現像電圧の生成及び停止を行う。供給電圧発生部53は、供給ローラ32に供給する供給電圧の生成及び停止を行う。転写電圧発生部54は、転写ローラ13に供給する転写電圧の生成及び停止を行う。
【0061】
センサ46は、筐体2(図1)内における搬送路Uに沿った複数の箇所にそれぞれ配置されており、用紙Pの有無を検出する。温度・湿度検出部47は、例えばサーミスタのような温度及び湿度を検出するための素子を有しており、周囲の温度及び湿度を検出する。
【0062】
さらに印刷制御部3は、記憶部41から所定のプログラムを読み出して実行することにより、その内部に情報取得部61、係数取得部62及び演算処理部63といった複数の機能ブロックを形成する。
【0063】
情報取得部61は、上位装置から取得した印刷データやユーザにより設定された各種設定値の内容等から、用紙P(すなわち媒体)に関する情報や印刷処理に関する情報等を取得する。電圧・係数取得部62は、記憶部41から所定の電圧又は係数を取得する。演算処理部63は、例えば係数取得部62により取得された所定の係数を用い、帯電電圧発生部51等の各電圧発生部において発生すべき電圧値を算出する処理等、種々の演算処理を行う(詳しくは後述する)。
【0064】
また転写電圧発生部54は、図4(A)に模式図を示すように、転写出力抵抗R13を介して転写電圧を転写ローラ13に供給している。一方、転写ローラ13における電気抵抗の値は、温度や湿度等の影響を受けて変動する。そこで転写電圧発生部54は、転写ローラ13に供給した電流の大きさを検知し、この電流の大きさと転写出力抵抗R13の値を基に、温度・湿度検出部47により検出された温度及び湿度の値も利用して、転写ローラ13の電気的抵抗値を算出する。
【0065】
[2.転写電圧の設定]
画像形成装置1では、高圧制御部45を介して転写電圧発生部54から転写ローラ13に供給する転写電圧Vtrを、用紙Pや印刷の設定、並びに温度や湿度等に応じて適切に設定するようになっている。より詳細に、画像形成装置1では、まず基準となる基準転写電圧Vtrsを決定し、さらに該基準転写電圧Vtrsを補正するための補正転写電圧Vtreを算出し、該基準転写電圧Vtrsに該補正転写電圧Vtreを加算することにより、転写電圧Vtrを算出するようになっている。また画像形成装置1では、後述するように、補正転写電圧Vtreとして、荷重・放電補正転写電圧Vtrelと、抵抗補正転写電圧Vtrerといった2種類の値を算出するようになっている。
【0066】
以下では、基準転写電圧Vtrsの設定、並びに荷重・放電補正転写電圧Vtrel及び抵抗補正転写電圧Vtrerの算出について、それぞれ詳細に説明する。
【0067】
[2-1.基準転写電圧の設定]
画像形成装置1の転写部20は、上述したように、転写処理を行う場合、転写ローラ13に対し正の高電圧でなる転写電圧を印加することにより、トナー画像を感光体ドラム19の表面から用紙Pの表面へ転写させている。このとき転写部20では、用紙Pが抵抗として作用しており、該用紙Pの抵抗値により感光体ドラム19へ流れる電流の大きさが変動することになる。従って転写部20では、用紙Pにおける抵抗の大きさに応じて、転写電圧の値を調整することが望ましい。
【0068】
ここで、転写部20において挟持された状態の用紙Pにおける抵抗の大きさは、紙の性質上、周囲の湿度及び温度によって変動することが知られている。そこで画像形成装置1では、図5に電圧テーブルTV1として示すように、一般的な厚さの用紙P(以下これを薄紙とも呼ぶ)に関し、温度Tを所定の整数であるn段階に区分すると共に湿度Hを所定の整数であるm段階に区分し、温度Ti及び湿度Hjの組み合わせごとに、予め適切な基準転写電圧Vtrsを設定している。
【0069】
ただし温度Tに付された添え字iはn以下の整数であり、また湿度Hに付された添え字jはm以下の整数である。またこの電圧テーブルTV1は、後述するように、用紙Pが薄紙であり、片面印刷を行う場合であり、ブラック(K)の画像形成ユニット15(図1)と対応する転写ローラ13に印加される転写電圧Vtrを表している。
【0070】
さらに、転写部20に挟持された用紙Pにおける抵抗の大きさは、当該用紙Pの厚さ(以下これを用紙厚さ又は媒体厚さと呼ぶ)にも影響を受けて変動する。そこで画像形成装置1では、一般紙よりも厚い用紙Pに関し、図6に示す電圧テーブルTV2を予め用意している。この電圧テーブルTV2は、後述するように、用紙Pが厚紙であり、片面印刷を行う場合であり、ブラック(K)の画像形成ユニット15(図1)と対応する転写ローラ13に印加される転写電圧Vtrを表している。
【0071】
このように画像形成装置1では、湿度及び温度並びに用紙Pの厚さが決まると、電圧テーブルTV1(図5)又は電圧テーブルTV2(図6)から、適切な基準転写電圧Vtrsを読み出すことができる。因みに電圧テーブルTV1及びTV2は、何れも記憶部41(図3)に予め記憶されている。
【0072】
[2-2.荷重及び放電に応じた補正]
ところで画像形成装置1の転写部20では、転写ベルト14の表面及び感光体ドラム19の間で絶縁破壊が起こることにより放電現象が発生する場合があり、この放電現象が転写処理に影響を及ぼす可能性がある。以下では、放電現象による転写処理への影響について説明し、この放電現象を踏まえた転写電圧の算出について説明する。
【0073】
まず、転写部20における放電現象の発生について説明する。上述した図4(A)は、転写部20において、感光体ドラム19及び転写ローラ13の間に、左右方向の長さが比較的短く(以下これを狭幅と呼ぶ)、且つ比較的厚い用紙Pと、転写ベルト14とを重ねて挟持した状態を表した模式図である。この転写部20において、感光体ドラム19は剛体として振る舞う。また転写ベルト14は、用紙Pの形状に合わせてやや変型するものの、概ね剛体として振る舞う。
【0074】
すなわち図4(A)は、感光体ドラム19等の幅に対し用紙Pの幅が短いものの、該用紙Pが十分に厚いために、転写ベルト14が該感光体ドラム19と直接触れておらず、やや離れることにより空隙SCを形成した状態を表している。
【0075】
また転写部20は、上述したように、転写処理を行う場合、転写ローラ13に対し正の高電圧でなる転写電圧を印加することにより、トナー画像を感光体ドラム19の表面から用紙Pの表面へ転写させている。このとき転写部20では、用紙Pが抵抗として作用しており、該用紙Pの抵抗値により感光体ドラム19へ流れる電流の大きさが変動することになる。従って転写部20では、用紙Pにおける抵抗の大きさに応じて、転写電圧の値を調整することが望ましい。
【0076】
用紙Pは、当該用紙Pを構成する材料やその構造等、すなわち紙質等に応じて、体積抵抗率[Ω・cm]や表面抵抗率[Ω/□](又は[Ω/sq.])といった抵抗に関する係数値を有している。このため用紙Pの抵抗値は、この体積抵抗率に体積を乗じた値、又はこの表面抵抗率に表面積を乗じた値として算出することができる。そこで画像形成装置1では、用紙Pの紙質等に応じて、転写電圧の値を設定するようになっている。
【0077】
次に、図4(A)と対応する図4(B)は、転写部20において、感光体ドラム19及び転写ローラ13の間に、狭幅であり、且つ比較的薄い用紙Pと、転写ベルト14とを重ねて挟持した状態を表した模式図である。この図4(B)は、用紙Pが比較的薄いために、該用紙Pの左右両側に比較的小さい空隙SCを形成しているものの、転写ベルト14における左右両側の端部近傍部分が感光体ドラム19と直接触れた状態を表している。以下、このような状態をベルト・ドラム接触状態と呼ぶ。
【0078】
説明の都合上、以下では、転写ベルト14における左右方向(幅方向)に関し、転写ベルト14の長さを転写幅Lとし、用紙P(すなわち媒体)の長さを媒体幅Wとする。また、転写幅Lに相当する領域のうち、媒体幅Wに相当する領域を除いた部分を媒体外領域M(M1及びM2)と呼ぶ。さらに、媒体外領域Mのうち、転写ベルト14及び感光体ドラム19の間に空隙SCが形成されている部分を空隙領域K(K1及びK2)と呼び、該空隙領域Kを除いた部分を媒体外接触領域J(J1及びJ2)と呼ぶ。
【0079】
一方、図4(A)では、転写ベルト14が感光体ドラム19から離れており、媒体外接触領域Jが形成されていない。このため図4(A)では、媒体外領域M(M1及びM2)の全部分が空隙領域K(K1及びK2)となっている。以下、このような状態をベルト・ドラム非接触状態と呼ぶ。
【0080】
次に、転写部20における荷重及び放電の影響について説明する。上述したように、各転写部20では、各画像形成ユニット15に対し、下方向へ向けて所定の力が付勢されている。このため、転写部20において感光体ドラム19及び用紙Pの間で作用する力は、該感光体ドラム19に対し、用紙P及び転写ベルト14が接触する面積に応じて分散されることになる。
【0081】
すなわち転写部20では、ベルト・ドラム非接触状態(図4(A))において、画像形成ユニット15に作用する下方向への力(以下これを荷重と呼ぶ)の全てが用紙Pに加えられることになる。このため転写部20では、このベルト・ドラム非接触状態(図4(A))において、用紙Pの幅である媒体幅Wに応じて、単位面積当たりの荷重が変動することになる。
【0082】
そうすると転写部20では、例えば比較的大きい媒体幅W1の用紙Pに対し、所定の転写電圧Vtr1が適切であったとしても、該媒体幅W1よりも小さい媒体幅W2の用紙Pに対し当該転写電圧Vtr1を印加した場合、電圧が過剰となってしまう。この場合転写部20では、「転写カスレ」と呼ばれる、トナー画像を適切に転写できない現象が生じる恐れがある。
【0083】
次に、転写部20における放電の影響について説明する。転写部20では、空隙SCが形成されている空隙領域Kにおいて絶縁破壊が発生した際に、転写ベルト14及び感光体ドラム19の間で電荷が移動することにより、放電現象が発生する。この放電の度合については、転写ローラ13を流れる電流量を基に確認することができる。
【0084】
すなわち転写部20では、トナー画像を感光体ドラム19から用紙Pに転写させる転写処理において、転写電圧発生部54(図3)を流れる電流(以下これを転写電流Itrと呼ぶ)のうち一部分が、放電により流れることになる。このため転写部20では、転写電圧発生部54から転写ローラ13に供給される転写電流Itrのうち、放電に相当する部分を除いた残りの部分が、用紙Pを流れてトナー画像の転写に作用する。そこで画像形成装置1では、空隙SCにおいて放電により電流が流れることを踏まえ、転写電圧を補正するようになっている。
【0085】
また、例えば所定の転写電流Itrを転写ローラ13に供給することにより用紙Pにおいて所望の電流密度を実現できトナー画像を適切に転写し得る状況において、仮に放電により流れる電流の割合が増加した場合、当該電流密度を実現できず、転写カスレ等の印字不良を発生させる恐れがある。このため転写部20では、用紙Pの厚さが大きくなり空隙SCの間隔(上下方向に関する転写ベルト14及び感光体ドラム19の距離)が拡大された場合には、転写電圧の補正量を増加させる必要が生じる。また転写部20では、媒体幅Wが変動し、空隙領域Kにおける幅方向の大きさが変動した場合にも、放電により流れる電流が増減することになる。
【0086】
そこで画像形成装置1では、空隙SCの間隔及び空隙領域Kにおける幅方向の大きさに影響を及ぼす用紙Pに関する情報、すなわち当該用紙Pの厚さ及び媒体幅Wに応じて、転写電圧の補正量を調整するようになっている。
【0087】
このように、転写部20における荷重及び放電の影響は、媒体幅Wに比例したものとなる。そこで、まず媒体幅Wの最小値である最小幅Wmin(例えば70[mm])及び最大値である最大幅Wmax(例えば297[mm])をそれぞれ規定する。これにより媒体幅Wは、次の(1)式の関係を満たすことになる。
【0088】
【数1】
【0089】
また転写部20における荷重及び放電の影響は、上述したように、媒体幅Wが最大幅Wmaxであるときに該影響を考慮する必要が無く、媒体幅Wの値が小さくなるに連れて該影響が大きくなっていく、という関係を有している。そこで荷重及び放電の影響については、媒体幅Wが最大幅Wmaxであるときを基準とし、最大幅Wmax及び媒体幅Wの差分である(Wmax-W)に対し、荷重による影響を表す所定の荷重係数p、及び放電による影響を表す所定の放電係数qをそれぞれ乗じることにより、数値として算出するものとした。
【0090】
このような方針に基づき、荷重及び放電による影響を補正するための補正値である荷重・放電補正転写電圧Vtrelを、媒体幅W、最大幅Wmax、荷重係数p及び放電係数qを用いて表すと、次の(2)式のように表すことができる。ただし媒体幅Wについては、上述した(1)式を満たすものとする。
【0091】
【数2】
【0092】
ここで(2)式を媒体幅W及び最大幅Wmaxに関する部分について整理し、さらに(p+q)の項を荷重・放電補正係数Aに置き換えると、次の(3)式のように表すことができる。
【0093】
【数3】
【0094】
この荷重・放電補正係数Aの適正値は、基準転写電圧Vtrsの場合と同様に、温度Ti及び湿度Hjに応じて変動すると考えられる。そこで画像形成装置1では、図7に補正テーブルTA11を示すと共に図8に補正テーブルTA21として示すように、用紙Pが薄紙である場合及び厚紙である場合のそれぞれについて、温度Ti及び湿度Hjの組み合わせごとに、予め適切な荷重・放電補正係数Aijの値を設定した。
【0095】
この補正テーブルTA11及びTA21は、電圧テーブルTV1及びTV2(図5及び図6)と同様、何れも記憶部41(図3)に予め記憶されている。
【0096】
ここで、媒体幅Wと荷重・放電補正転写電圧Vtrelとの関係を、図9及び図10のグラフを用いて説明する。図9及び図10における特性曲線Q、Q及びQは、それぞれ上述した荷重係数p及び放電係数q、並びに荷重・放電補正係数Aを用いた場合における、媒体幅Wと電圧(すなわち各係数と媒体幅Wとの乗算値)との関係を表したものである。また図9は、用紙Pが薄紙である場合を表しており、図10は、用紙Pが厚紙である場合を表している。
【0097】
図9及び図10を比較すると、用紙Pの厚さが異なることに応じて転写部20における空隙SCの間隔も異なるため、荷重による特性曲線Q及び放電による特性曲線Qの傾きがそれぞれ相違している。この結果、図9及び図10では、特性曲線Qの傾きも互いに相違している。
【0098】
[2-3.転写順に応じた補正]
ところで画像形成装置1では、4個の画像形成ユニット15が前後方向に沿って整列するように配置されており、中搬送部10により搬送路Uに沿って搬送される用紙Pに対し、4箇所の転写部20において、各色のトナー画像を順次転写していくことになる。ここでは、用紙Pの進行方向に着目し、前側を上流側と呼び、後側を下流側と呼ぶ。
【0099】
画像形成装置1では、各転写部20において、当該色のトナー画像を転写しない場合であっても、一定の電圧を印加することになる。このため搬送される用紙Pは、上流側から下流側へ進むに連れて帯電されていき、これに伴って電気抵抗値が上昇していく。以下、このような現象をチャージアップと呼ぶ。また画像形成装置1では、用紙PがOHPシートである場合やその基材がPET(Poly Ethylene Terephthalate)樹脂である場合等、当該用紙Pの抵抗値が比較的高い場合に、チャージアップの度合も大きくなる。
【0100】
本実施の形態による画像形成装置1(図1)では、各画像形成ユニット15及び各転写部20が、搬送路Uに沿って上流側から下流側へ向けて、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の順序で並んでいる。このため画像形成装置1では、ブラック(K)の転写部20においてチャージアップの影響が表れないものの、シアン(C)の転写部20においてチャージアップの影響が大きく表れる。
【0101】
このような関係を踏まえ、画像形成装置1では、図11図12及び図13にそれぞれ補正テーブルTA12、TA13及びTA14として示すように、各転写部20の順序に応じて、温度Ti及び湿度Hjの組み合わせごとに、予め適切な荷重・放電補正係数の値をそれぞれ設定している。すなわち補正テーブルTA12、TA13及びTA14は、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色と対応しており、転写順としてそれぞれ2番目、3番目及び4番目となっている。なお、図7に示した補正テーブルTA11は、ブラック(K)と対応しており、転写順として1番目となっている。
【0102】
ここで、最も上流側のブラック(K)と最も下流側のシアン(C)について、用紙Pの媒体幅と適切な印加電圧との関係を求めたところ、図14に示すグラフが得られた。この図14では、ブラック(K)の特性曲線Q11Kがシアン(C)の特性曲線Q14Cよりも下側に位置しており、且つ何れも媒体幅が増加するに連れて印加電圧が下降する、といった傾向が表れている。
【0103】
[2-4.両面印刷に応じた補正]
ところで画像形成装置1は、上述したように用紙反転部24(図1)が設けられており、印刷データに両面印刷を行う指示が含まれていた場合、当該用紙反転部24を利用して、用紙Pの両面にそれぞれ印刷処理を行う。
【0104】
具体的に画像形成装置1は、用紙Pを中搬送部10により搬送しながら、その第1面に対し各画像形成ユニット15からトナー画像を転写し、定着部21において熱及び圧力を加えて定着させた後、用紙反転部24によって当該用紙Pを反転させると共に給紙部6に戻す。続いて画像形成装置1は、当該用紙Pを中搬送部10により搬送しながら、その第2面に対し各画像形成ユニット15からトナー画像を転写し、定着部21において熱及び圧力を加えて定着させ、排紙部26により排出トレイ27へ排出する。
【0105】
すなわち画像形成装置1では、用紙Pの第1面に対する印刷処理において、定着部21により熱及び圧力を加えており、このとき当該用紙Pの水分量が減少し、これに伴い当該用紙Pの電気抵抗値が上昇する。このため画像形成装置1では、この用紙Pの第2面に印刷処理を行う場合、第1面に印刷処理を行った場合と比較して、厚さが不変であるものの、電気抵抗値が大きくなるため、転写電圧を上昇させる必要が生じる。以下では、用紙Pの第1面に印刷処理を行う場合を片面印刷時と呼び、当該用紙Pの第2面に印刷処理を行う場合を両面印刷時と呼ぶ。
【0106】
このような関係を踏まえ、画像形成装置1では、両面印刷時について、図15図16図17及び図18にそれぞれ補正テーブルTA31、TA32、TA33及びTA34として示すように、各転写部20の(すなわち各色の)順序に応じて、温度Ti及び湿度Hjの組み合わせごとに、予め適切な荷重・放電補正係数Aの値をそれぞれ設定している。なお、図7図11図12及び図13にそれぞれ示した補正テーブルTA11、TA12、TA13及びTA14は、補正テーブルTA31、TA32、TA33及びTA34とそれぞれ対応しており、片面印刷時における、各転写部20の順序に応じた荷重・放電補正係数の値となっている。
【0107】
また、両面印刷時における、用紙Pが薄紙の場合又は厚紙の場合のそれぞれにおける適切な電圧の補正値は、図9及び図10とそれぞれ対応する図19及び図20に示すような各特性曲線となる。
【0108】
図9及び図19を比較すると、片面印刷時よりも両面印刷時の方が、放電による影響の度合が大きくなっており、特性曲線Qqの傾きが急峻になっていることがわかる。またこれに伴い、特性曲線QAの傾きも大きくなっている。このような傾向は、図10及び図20の間にも表れている。
【0109】
ここで、用紙Pが薄紙である場合及び厚紙である場合のそれぞれについて、媒体幅Wを様々に変化させながら、両面印刷時における荷重・放電補正係数Aを算出し、これを用いて転写電圧Vtrを算出したところ、図21及び図22に示すような電圧特性曲線QV1及びQV2が得られた。ただし、ここでは温度Tiを22[℃]とし、湿度Hjを55[%]とした。
【0110】
図21において、薄紙における電圧特性曲線QV1は、媒体幅Wが増加するに連れて転写電圧Vtrが減少している。一方、図22において、厚紙における電圧特性曲線QV2は、媒体幅Wが増加するに連れて転写電圧Vtrが増加している。また、転写電圧Vtrが変動する範囲についても、薄紙では3.36[V]以上3.55[V]以下の範囲であるのに対し、厚紙では2.60[V]以上2.80[V]以下の範囲であり、互いの範囲が大きく相違していた。
【0111】
[2-5.搬送速度に応じた補正]
次に、用紙Pの搬送速度と電気抵抗値との関係について説明する。一般に、厚さが比較的大きい厚紙は、電気的な抵抗が大きいため、転写部20での転写処理において、単位面積当たりに比較的多くの電流を流す必要が生じる。このため画像形成装置1では、厚紙である用紙Pに対し印刷処理を行う場合、薄紙の場合よりも搬送速度が低く(遅く)なるように制御する。
【0112】
次に、このような用紙Pの厚さと搬送速度との関係を、数式を用いて説明する。まず、用紙Pの搬送速度をv[mm/s]とし、媒体幅をW[mm]とし、転写部20において媒体が挟持(ニップ)される部分の搬送方向(前後方向)に沿った長さをN[mm]とする。また、転写電圧Vtrの印加時に用紙Pを流れる電流の電流密度をJ[A/mm]とし、用紙Pの搬送方向に沿った長さをD[mm]とする。
【0113】
この場合、用紙Pの全部分が転写部20を通過するのに要する時間t[s]は、D/v[s]である。これに応じて、当該用紙Pの全部分が転写部20を通過する間に、当該用紙Pを流れる電流の総量I[A]は、次の(4)式により算出することができる。
【0114】
【数4】
【0115】
この(4)式から、画像形成装置1では、搬送速度vが比較的大きい(速い)場合、用紙Pに流れる電流の総量Iが比較的小さくなることがわかる。この場合、画像形成装置1では、基準転写電圧Vtrsを比較的大きくすることにより、転写電圧Vtrの値を大きくして電圧不足となることを回避でき、良好な転写処理を行い得るようになる。
【0116】
また(4)式から、画像形成装置1では、搬送速度vが比較的小さい(遅い)場合、用紙Pに流れる電流の総量Iが比較的大きくなることがわかる。この場合、画像形成装置1では、基準転写電圧Vtrsを比較的小さくすることにより、転写電圧Vtrの値を小さくして電圧過剰となることを回避でき、良好な転写処理を行い得るようになる。
【0117】
このように画像形成装置1では、用紙Pの搬送速度vと、当該用紙Pの電気抵抗値との双方を勘案した値を転写電圧Vtrとして転写ローラ13に印加する必要がある。また(4)式から、媒体幅Wが変化した場合に、転写電圧Vtrにおける放電の影響についても、搬送速度vに応じて表れ方が異なることがわかる。
【0118】
そこで画像形成装置1では、図23に補正テーブルTA41を示すように、用紙Pが薄紙であり、且つ搬送速度vが低速である場合についても、温度Ti及び湿度Hjの組み合わせごとに、予め適切な荷重・放電補正係数Aijの値を設定した。
【0119】
[2-6.用紙の厚さ及び抵抗の大きさを組み合わせた分類]
ここでは、用紙Pの大まかな分類として、厚さに関して厚紙又は薄紙の何れであるかに区分し、電気抵抗値に関して高抵抗(抵抗値が高い)又は低抵抗(抵抗値が低い)の何れであるかに区分するものとする。すなわちここでは、用紙Pについて、厚さを2段階に区分すると共に電気抵抗値の大きさを2段階に区分することにより、両者を組み合わせた合計4種類に分類する。
【0120】
用紙Pに関する厚さ及び電気抵抗値に関する分類は、図24に示す模式図のように、厚さ及び電気抵抗値をそれぞれの軸として交差させ、4個の象限に区切ったマトリクスとして表すことができる。この図24において、用紙Pの種類に関し、薄紙且つ低抵抗を「タイプ1」とし、薄紙且つ高抵抗を「タイプ2」とし、厚紙且つ低抵抗を「タイプ3」とし、厚紙且つ高抵抗を「タイプ4」とする。
【0121】
タイプ1(薄紙且つ低抵抗)の用紙Pにおける代表的な物性値は、例えば体積抵抗率が3.53×1010[Ω・cm]であり、表面抵抗率が1.68×1011[Ω/□]であり、用紙厚が100[μm]である。このタイプ1の用紙Pとして、例えば比較的薄い普通紙であるエクセレントホワイト(沖電気工業株式会社)がある。
【0122】
タイプ2(薄紙且つ高抵抗)の用紙Pにおける代表的な物性値は、例えば体積抵抗率が1.22×1017[Ω・cm]であり、表面抵抗率が6.24×1014[Ω/□]であり、用紙厚が140[μm]である。このタイプ2の用紙Pとして、例えば比較的薄い耐水紙であるレーザーピーチ145(登録商標、大王製紙株式会社)の他、例えばOHPシートや各種フィルムを基材とする種々の用紙が該当する。
【0123】
タイプ3(厚紙且つ低抵抗)の用紙Pにおける代表的な物性値は、例えば体積抵抗率が3.41×1010[Ω・cm]であり、表面抵抗率が4.34×1010[Ω/□]であり、用紙厚が200[μm]である。このタイプ3の用紙Pとして、例えば比較的厚い普通紙であるカラーコピー200の他、例えばハガキや封筒等も該当する。
【0124】
タイプ4(厚紙且つ高抵抗)の用紙Pにおける代表的な物性値は、例えば体積抵抗率が3.72×1015[Ω・cm]であり、表面抵抗率が1.40×1013[Ω/□]であり、用紙厚が235[μm]である。このタイプ4の用紙Pとして、例えば比較的厚い耐水紙であるラミフリー(登録商標、株式会社中川製作所)がある。
【0125】
なお、各用紙Pにおける物性値は、デジタル超高抵抗/微少電流計(ULTRA HIGH RESISTANCE METER、株式会社アドバンテスト製)及びレジスティビティ・チェンバ(RESISTIVITY CHAMBER、株式会社アドバンテスト製)を使用して測定した。
【0126】
タイプ1の用紙Pは、薄紙且つ低抵抗であるため、転写電圧Vtrの値を小さくすることができ、これに伴って荷重の影響及び放電の影響を何れも無視することができる。このような場合、補正転写電圧Vtreは、媒体幅Wに関わらず値「0」とすることが望ましい。このため、タイプ1の用紙Pにおける転写電圧Vtrは、図25に示す特性曲線QVT1のように、媒体幅Wに関わらず一定の値となる。なお図25では、画像形成装置1において印刷処理が可能な用紙Pを想定し、媒体幅Wの最小値を70[mm]とし、最大値を297[mm]とした。
【0127】
タイプ2の用紙Pは、薄紙且つ高抵抗であるため、仮に低抵抗の用紙Pと同等の搬送速度vにより搬送した状態で適切に転写処理を行うためには、転写電圧Vtrを極めて大きい値に設定する必要があるものの、印字不良の発生や転写部材に対するダメージ等が懸念される。このため画像形成装置1では、タイプ2の用紙Pについて、搬送速度vを比較的小さく(遅く)設定することにより、転写電圧Vtrをできるだけ小さい値に抑えることが望ましい。
【0128】
上述した(4)式を再び参照すると、搬送速度vが小さくなった場合、転写電圧Vtrを低下させることができる。しかし、仮に媒体幅Wが小さくなった場合であっても、荷重の影響が小さいため、相対的に放電による影響が大きくなる。従って画像形成装置1は、このタイプ2の用紙Pを使用する場合、図25に示す特性曲線QVT2のように、媒体幅Wが大きくなるに連れて、放電による影響が大きくなり、転写電圧Vtrが徐々に減少していくような制御となることが望ましい。
【0129】
タイプ3の用紙Pは、厚紙であり低抵抗であるため、転写部20において、媒体幅Wが小さく(狭く)なるほど、当該用紙Pに加えられる単位面積当たりの荷重が大きくなり、接触抵抗が小さくなるため、荷重の影響を考慮した補正を行う必要が生じる。その一方で、当該用紙Pが厚紙であることから空隙SC(図3)が形成されるものの、低抵抗であるために転写電圧Vtrが比較的小さい値となり、その結果として放電による影響が比較的小さいものとなる。
【0130】
従って画像形成装置1は、タイプ3の用紙Pを使用する場合、図25に示す特性曲線QVT3のように、媒体幅Wが大きくなるに連れて、荷重の影響が小さくなり、転写電圧Vtrが徐々に増加していくような制御となることが望ましい。
【0131】
タイプ4の用紙Pは、厚紙であり高抵抗であるため、荷重及び放電が何れも比較的大きく影響する。しかし、このタイプ4の用紙Pは、トナーの定着性やトナー画像の品質向上を目的として、表面に特殊な層が形成されていることがある。
【0132】
このためタイプ4の用紙Pに関しては、媒体幅Wが異なる場合に補正転写電圧Vtreの値も異なってくる。一例として、タイプ4の用紙Pであるラミフリー(登録商標)であれば、図25に示す特性曲線QVT4のように、媒体幅Wが大きくなるに連れて、転写電圧Vtrが徐々に増加していくような制御とすることが望ましい。
【0133】
次に示す図26は、図25に示した各特性曲線QVT1~QVT4を、それぞれの用紙厚及び電気抵抗値に応じて図24と同様にマトリクス状に配置した概念図である。この図26からも分かるように、画像形成装置1では、用紙Pの媒体幅Wと適正な転写電圧Vtrとの関係が、用紙厚及び電気抵抗値に基づいた分類(すなわちタイプ)ごとに、異なった傾向となっている。
【0134】
このうちタイプ1では、上述したように転写部20の構成による影響が小さいため、媒体幅Wの変動に対する転写電圧Vtrの変化量を無視することができる。またタイプ4では、媒体幅Wと転写電圧Vtrとの関係について、転写部20の構成のみでは定量的若しくは定性的な特徴を見出すことはできない。
【0135】
一方、タイプ2及びタイプ3については、転写部20の構成に基づき、分類ごとの特徴を定量的に表すことができる。図27は、タイプ2及びタイプ3それぞれにおける転写電圧Vtrの値を、媒体幅Wが最も小さい(狭い)場合(以下これを狭幅と呼ぶ)及び最も大きい(広い)場合(以下これを広幅と呼ぶ)のそれぞれについて算出した値を、表形式にまとめたものである。
【0136】
ここでは、図25の場合と同様に、狭幅時の媒体幅Wを70[mm]とし、広幅時の媒体幅Wを297[mm]とした。また以下では、狭幅時における転写電圧Vtrを狭幅時転写電圧Vtrnと呼び、広幅時における転写電圧Vtrを広幅時転写電圧Vtrwと呼ぶ。
【0137】
さらに図27には、タイプ2及びタイプ3それぞれにおける広幅時転写電圧Vtrwに対する狭幅時転写電圧Vtrnの比率である転写電圧比率RVtrの値を表している。
すなわち広幅時転写電圧Vtrw、狭幅時転写電圧Vtrn及び転写電圧比率RVtrの関係は、次の(5)式のように表すことができる。
【0138】
【数5】
【0139】
図25及び図26に示したように、タイプ2の特性曲線QVT2は、媒体幅Wの増加に伴って転写電圧Vtrが低下する、右下がりの特性を表している。このため、タイプ2における転写電圧比率RVtr(以下これをタイプ2転写電圧比率RVtr2と呼ぶ)は、1よりも大きい値となっている。
【0140】
一方、タイプ3の特性曲線QVT3は、媒体幅Wの増加に伴って転写電圧Vtrが増加する、右上がりの特性を表している。このため、タイプ3における転写電圧比率RVtr(以下これをタイプ3転写電圧比率RVtr3と呼ぶ)は、1よりも小さい値となっている。
【0141】
このため、タイプ2転写電圧比率RVtr2及びタイプ3転写電圧比率RVtr3の間には、次の(6)式のような関係が成立する。
【0142】
【数6】
【0143】
すなわち画像形成装置1では、タイプ3転写電圧比率RVtr3がタイプ2転写電圧比率RVtr2よりも小さくなるように、補正テーブルTA11(図7)等の各補正テーブルにおける各荷重・放電補正係数Aの値が、それぞれ適切に定められている。
【0144】
ここで、タイプ2であって比較的小さい所定の厚さ(これを第1の厚さとする)であり、且つ所定の抵抗(体積抵抗率又は表面抵抗率、これを第1の抵抗とする)であり、70[mm]の媒体幅W(これを第1の幅とする)である用紙Pを第1媒体とし、当該第1媒体に適した転写電圧を第1転写電圧とする。
【0145】
また、これと同様にタイプ2であって第1の厚さ及び第1の抵抗でありながら、297[mm]の媒体幅W(これを第2の幅とする)である用紙Pを第2媒体とし、当該第2媒体に適した転写電圧を第2転写電圧とする。
【0146】
一方、タイプ3であって第1の厚さよりも大きい第2の厚さであり、且つ第1の抵抗よりも小さい第2の抵抗であり、第1の幅である用紙Pを第3媒体とし、当該第3媒体に適した転写電圧を第3転写電圧とする。
【0147】
また、これと同様にタイプ3であって第2の厚さ及び第2の抵抗でありながら、第2の幅である用紙Pを第4媒体とし、当該第4媒体に適した転写電圧を第4転写電圧とする。
【0148】
そうすると画像形成装置1では、タイプ2における第2転写電圧に対する第1転写電圧の比率を第1電圧比とし、タイプ3における第4転写電圧に対する第3転写電圧の比率を第2電圧比としたときに、当該第1電圧比が当該第2電圧比よりも大きくなるように、転写電圧を算出して供給することになる。
【0149】
[2-7.抵抗値の変動に応じた補正]
画像形成装置1の転写部20では、転写電圧発生部54から転写ローラ13に転写電圧Vtrが印加されると、該転写ローラ13、転写ベルト14、用紙P及び感光体ドラム19を電流(すなわち転写電流Itr)が流れることになる。このとき転写部20を構成する転写ローラ13、転写ベルト14及び感光体ドラム19は、何れも電気的な抵抗として作用することになる。ただし、これらの抵抗値は、温度及び湿度に応じて大きく変動する。
【0150】
そこで画像形成装置1では、計測により得られた温度T及び湿度Hについて、所定の基準値(基準温度Ts及び基準湿度Hs)との差分値(差分温度Td及び差分湿度Hd)をそれぞれ算出する。その上で画像形成装置1は、予め設定された所定の閾値(温度閾値Tth及び湿度閾値Hth)を差分値が超えた場合に、抵抗補正転写電圧Vtrerを算出するようになっている。
【0151】
具体的に画像形成装置1は、転写電圧発生部54から転写ローラ13に対し、予め設定した抵抗変動測定電圧Vsを印加し、このときに流れた転写電流Itrの値を計測して抵抗変動測定電流Isとする。また画像形成装置1は、2種類の係数SA及びSBを、補正テーブルTA11(図7)等と同様の形式で、温度T及び湿度Hの組み合わせに応じた係数テーブル(図示せず)として予め記憶している。画像形成装置1は、温度T及び湿度Hに応じた係数SA及びSBを読み出し、これらと抵抗変動測定電流Isとを用いて、次に示す(7)式に従って抵抗補正転写電圧Vtrerを算出する。
【0152】
【数7】
【0153】
[2-8.各テーブルの記憶]
このように画像形成装置1では、用紙Pの厚さ(薄紙又は厚紙)、転写順を表す色(ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)又はシアン(C))、転写面(片面又は両面)、搬送速度(標準又は低速)といった各条件(以下これを転写条件と呼ぶ)の各組み合わせに応じて、転写電圧を適切に算出する必要がある。
【0154】
そこで画像形成装置1の記憶部41(図3)には、各転写条件の各組み合わせについて、電圧テーブルTV1(図5)のような電圧テーブルと、補正テーブルTA11(図7)のような補正テーブルが、それぞれ複数ずつ、それぞれの転写条件を表す情報と対応付けて、予め格納されている。
【0155】
[3.転写電圧決定処理手順]
次に、画像形成装置1における転写電圧の決定処理について、図28のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。画像形成装置1の印刷制御部3は、図示しない上位装置から印刷ジョブを受信すると、所定の印刷処理を実行すると共に、転写電圧決定処理を実行する。具体的に印刷制御部3は、記憶部41に予め格納されている転写電圧決定プログラムを読み出して実行することにより、所定の初期化処理等を行うと共に、情報取得部61(図3)等の各機能ブロックを形成した上で、転写電圧決定処理手順RT1(図28)を開始し、最初のステップSP1に移る。
【0156】
ステップSP1において印刷制御部3は、情報取得部61(図3)により、上位装置から受信した印刷ジョブを基に、転写処理に関する情報である転写情報を取得し、次のステップSP2に移る。この転写情報は、例えば用紙Pに対し転写処理を行う色の数(モノクロ又はカラー)や印刷処理を行う面(片面又は両面)等のような、印刷処理のうち特に転写処理に関する情報である。情報取得部61は、印刷ジョブを基にこれらの転写情報を取得すると、記憶部41に記憶させておく。
【0157】
ステップSP2において印刷制御部3は、情報取得部61(図3)により、用紙Pに関する情報である媒体情報を取得し、次のステップSP3に移る。この媒体情報は、例えば用紙Pの厚さ、媒体幅W、紙質、体積抵抗値及び表面抵抗値等のような、当該用紙Pの大きさや材質等に起因した物性に関する情報である。情報取得部61は、例えば印刷ジョブに含まれる情報や、表示操作部4を介したユーザの操作等により予め設定された設定内容等を基に、この媒体情報を取得し、記憶部41に記憶させておく。
【0158】
ステップSP3において印刷制御部3は、情報取得部61(図3)により、周囲の環境に関する情報である環境情報を取得し、次のステップSP4に移る。この環境情報は、例えば周囲の温度及び湿度である。情報取得部61は、例えば温度・湿度検出部47(図3)により検出された値を取得し、それぞれ温度T及び湿度Hとして記憶部41に記憶させておく。
【0159】
ステップSP4において印刷制御部3は、電圧・係数取得部62(図3)により、各色の転写部20における基準転写電圧Vtrsをそれぞれ取得し、次のステップSP5に移る。具体的に電圧・係数取得部62は、ステップSP1及びステップSP2において取得した各種情報を基に、転写条件(用紙Pの厚さ、転写順を表す色、転写面及び搬送速度)に応じた電圧テーブルを選択し、当該電圧テーブルから、ステップSP3において取得した温度T及び湿度Hと対応する基準転写電圧Vtrsを読み出す。
【0160】
ステップSP5において印刷制御部3は、ステップSP3において得られた温度T及び湿度Hと所定の基準値(基準温度Ts及び基準湿度Hs)との差分値(差分温度Td及び差分湿度Hd)をそれぞれ算出し、温度及び湿度の双方において、この差分値が所定の閾値(温度閾値Tth及び湿度閾値Hth)を超えるか否かを判定する。
【0161】
ここで肯定結果が得られると、このことは転写ローラ13、転写ベルト14及び感光体ドラム19における電気抵抗値が比較的大きく変動しているため、これに応じて転写電圧Vtrを補正する必要があることを表している。このとき印刷制御部3は、次のステップSP6に移る。
【0162】
ステップSP6において印刷制御部3は、転写電圧発生部54(図3)により、各色の抵抗変動測定電流Isを測定し、次のステップSP7に移る。具体的に転写電圧発生部54は、予め設定された抵抗変動測定電圧Vsを転写ローラ13に印加し、このときに各色について流れた転写電流Itrの値をそれぞれ計測して、各色の抵抗変動測定電流Isとする。
【0163】
ステップSP7において印刷制御部3は、演算処理部63(図3)により各色の抵抗補正転写電圧Vtrerを算出し、次のステップSP8に移る。具体的に演算処理部63は、記憶部41に記憶している係数テーブル(図示せず)から、温度T及び湿度Hに応じた係数SA及びSBを読み出し、これらと各色の抵抗変動測定電流Isとを用いて、上述した(7)式に従って各色の抵抗補正転写電圧Vtrerをそれぞれ算出し、その値を記憶部41に記憶させておく。
【0164】
一方、ステップSP5において否定結果が得られると、このことは転写ローラ13、転写ベルト14及び感光体ドラム19における電気抵抗値の変動幅が比較的小さいため、転写電圧Vtrを補正する必要が無いことを表している。このとき印刷制御部3は、抵抗補正転写電圧Vtrerを算出すること無く、次のステップSP8に移る。因みに抵抗補正転写電圧Vtrerは、最初に初期化された際に値「0」となっている。
【0165】
ステップSP8において印刷制御部3は、電圧・係数取得部62(図3)により、各色の転写部20における荷重・放電補正係数Aをそれぞれ取得し、次のステップSP9に移る。具体的に電圧・係数取得部62は、ステップSP1及びステップSP2において取得した各種情報を基に、転写条件(用紙Pの厚さ、転写順を表す色、転写面及び搬送速度)に応じた係数テーブルを選択し、当該係数テーブルから、ステップSP3において取得した温度T及び湿度Hと対応する各色の荷重・放電補正係数Aをそれぞれ読み出す。
【0166】
ステップSP9において印刷制御部3は、演算処理部63(図3)により各色の荷重・放電補正転写電圧Vtrelを算出し、次のステップSP10に移る。具体的に演算処理部63は、各色について、ステップSP2において取得した媒体幅Wと、ステップSP8において取得した荷重・放電補正係数Aとを基に、(3)式に従って荷重・放電補正転写電圧Vtrelをそれぞれ算出し、記憶部41に記憶させておく。
【0167】
ステップSP10において印刷制御部3は、演算処理部63(図3)により、各色について、基準転写電圧Vtrs、抵抗補正転写電圧Vtrer及び荷重・放電補正転写電圧Vtrelを加算することにより転写電圧Vtrを算出し、その値を記憶部41に記憶させておく。また印刷制御部3は、次のステップSP11に移り、転写電圧決定処理手順RT1を終了する。
【0168】
印刷制御部3は、この転写電圧決定処理手順RT1を終了すると、別途実行している印刷処理において、各色の転写部20において転写処理を行う際に、高圧制御部45を介して転写電圧発生部54から転写ローラ13に対し、各色の転写電圧Vtrをそれぞれ印加させるよう制御する。
【0169】
ここで、転写電圧決定処理手順RT1により算出された転写電圧Vtrの例を示す。なお、温度Tは22[℃]とし、湿度Hは55[%]とした。
【0170】
図29に示す特性曲線QV11は、用紙Pが低抵抗の薄紙である場合、すなわちタイプ1(図24及び図25)である場合における、媒体幅Wと転写電圧Vtrとの関係を表したものである。この特性曲線QV11の場合、媒体幅Wに関わらず荷重・放電補正転写電圧Vtrelの値が「0」であったため、転写電圧Vtrの値が一定の2.8[kV]となった。
【0171】
また図30に示す特性曲線QV13は、用紙Pが低抵抗の厚紙である場合、すなわちタイプ3(図24及び図25)である場合における、媒体幅Wと転写電圧Vtrとの関係を表したものである。この特性曲線QV13の場合、媒体幅Wの増加に伴い荷重・放電補正転写電圧Vtrelの値が増加したため、転写電圧Vtrの値が2.27[kV]から2.60[kV]まで変化した。
【0172】
[4.効果等]
以上の構成において、本実施の形態による画像形成装置1は、転写電圧Vtrを算出する際、転写部20に形成される空隙SC(図4)に起因した荷重及び放電の影響を補正するための荷重・放電補正転写電圧Vtrelを算出し、これを基準転写電圧Vtrsに加算するようにした。
【0173】
このとき画像形成装置1は、用紙厚に応じた補正テーブル(補正テーブルTA11及びTA21(図7及び図8)等)から温度T及び湿度Hに応じた荷重・放電補正係数Aを読み出し、(3)式に従って該荷重・放電補正係数Aを媒体幅Wに乗じることにより、荷重・放電補正転写電圧Vtrelを算出する。
【0174】
このため画像形成装置1は、荷重・放電補正転写電圧Vtrelとして、温度T及び湿度H並びに用紙厚及び媒体幅Wに応じた適切な値を算出できる。また画像形成装置1では、この荷重・放電補正転写電圧Vtrelを用いて転写電圧Vtrを算出することにより、転写部20での転写処理において、空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を格段に減少させ、若しくは排除することができ、トナー画像を用紙Pに対し良好に転写させることができる。この結果、画像形成装置1では、用紙Pの厚さや媒体幅Wに関わらず、極めて高品質な印刷処理を行うことができる。
【0175】
特に画像形成装置1は、用紙Pがタイプ2又はタイプ3(図24及び図25)である場合に、広幅時転写電圧Vtrwに対する狭幅時転写電圧Vtrnの比率である転写電圧比率RVtrに関し、タイプ3転写電圧比率RVtr3がタイプ2転写電圧比率RVtr2よりも小さくなるよう、各荷重・放電補正係数Aの値を設定した。さらに画像形成装置1は、タイプ2転写電圧比率RVtr2を1よりも大きい値とし、タイプ3転写電圧比率RVtr3を1よりも小さい値とした(図27)。
【0176】
このため画像形成装置1では、用紙Pがタイプ2であれば媒体幅の増加に伴って転写電圧Vtrを減少させることができ、また該用紙Pがタイプ3であれば媒体幅の増加に伴って転写電圧Vtrを増加させることができる。これにより画像形成装置1では、転写部20における空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を適切に軽減若しくは解消することができる。
【0177】
そのうえ画像形成装置1は、各転写条件(用紙Pの厚さ、転写順を表す色、転写面及び搬送速度)の各組み合わせについて、それぞれ補正テーブルを用意し、記憶部41に予め記憶させるようにした。これにより画像形成装置1は、転写条件の相違に起因して荷重及び放電の影響の度合が変動したとしても、適切な荷重・放電補正係数Aを用いて適切な荷重・放電補正転写電圧Vtrelを算出することができる。
【0178】
他の観点から見ると、画像形成装置1は、各転写条件の各組み合わせについて、それぞれの補正テーブルを用意しているため、転写条件の組み合わせと対応する補正テーブルから、温度T及び湿度Hに応じた荷重・放電補正係数Aを読み出すだけで、最適な荷重・放電補正係数Aを得ることができる。すなわち画像形成装置1は、例えば所定の関数等を用いた演算処理により転写条件の内容に応じた荷重・放電補正係数Aを算出する場合と比較して、処理負荷を軽減でき、また処理時間を短縮することが可能となる。
【0179】
さらに画像形成装置1は、基準転写電圧Vtrsについても、荷重・放電補正係数Aの場合と同様に、各転写条件の各組み合わせについて、それぞれ電圧テーブルを用意し、記憶部41に予め記憶させるようにした。このため画像形成装置1は、転写条件の相違に関わらず、適切な基準転写電圧Vtrsを用いて転写電圧Vtrを算出することができる。
【0180】
これに加えて画像形成装置1は、温度T及び湿度Hに応じて、必要な場合に抵抗補正転写電圧Vtrerを算出し、基準転写電圧Vtrsに加算するようにした。これにより画像形成装置1は、転写部20における電気抵抗値の変化による影響を軽減若しくは解消し、良好な転写処理を行うことができる。
【0181】
以上の構成によれば、本実施の形態による画像形成装置1は、転写条件等に応じて読み出した荷重・放電補正係数Aと媒体幅Wとを乗じて算出する荷重・放電補正転写電圧Vtrelにより、転写部20に形成される空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を補正して転写電圧Vtrを算出する。そのうえで画像形成装置1は、広幅時転写電圧Vtrwに対する狭幅時転写電圧Vtrnの比率に関し、タイプ2転写電圧比率RVtr2がタイプ3転写電圧比率RVtr3よりも大きくなるよう、各荷重・放電補正係数Aの値を設定した。これにより画像形成装置1では、媒体幅Wに対する転写電圧Vtrの変動が用紙Pのタイプごとに異なるものの、転写部20における空隙SCに起因した荷重及び放電の影響を適切に軽減若しくは解消でき、極めて高品質な印刷処理を行うことができる。
【0182】
[5.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、タイプ2転写電圧比率RVtr2を1よりも大きい値とし、且つタイプ3転写電圧比率RVtr3を1よりも小さい値とするように、補正テーブルTA11(図7)等の各補正テーブルにおける各荷重・放電補正係数Aの値を設定する形態について述べた(図27)。しかし本発明はこれに限らず、例えばタイプ2転写電圧比率RVtr2を1よりも小さい値としても良く、或いはタイプ3転写電圧比率RVtr3を1よりも大きい値としても良い。これらの場合、少なくともタイプ2転写電圧比率RVtr2がタイプ3転写電圧比率RVtr3よりも大きい値であれば良く、すなわち(6)式を満たしていれば良い。
【0183】
また上述した実施の形態においては、用紙Pの体積抵抗率に関し、タイプ2において1.22×1017[Ω・cm]のものを使用し、タイプ3において3.41×1010[Ω・cm]のものを使用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばタイプ2においては用紙Pの体積抵抗率が1.22×1017[Ω・cm]以上のものを使用しても良く、またタイプ3においては用紙Pの体積抵抗率が3.41×1010[Ω・cm]以下のものを使用しても良い。
【0184】
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの表面抵抗率に関し、タイプ2において6.24×1014[Ω/□]のものを使用し、タイプ3において4.34×1010[Ω/□]のものを使用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばタイプ2においては用紙Pの表面抵抗率が6.24×1014[Ω/□]以上のものを使用しても良く、またタイプ3においては用紙Pの表面抵抗率が4.34×1010[Ω/□]以下のものを使用しても良い。
【0185】
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの厚さに関し、タイプ2において140[μm]のものを使用し、タイプ3において200[μm]のものを使用する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えばタイプ2においては用紙Pの厚さが140[μm]以下のものを使用しても良く、タイプ3においては用紙Pの厚さが200[μm]以上のものを使用しても良い。
【0186】
さらに上述した実施の形態においては、温度Ti及び湿度Hjの値に応じた荷重・放電補正係数Aの値を、補正テーブルTA11(図7)等のテーブルにそれぞれ格納し、当該補正テーブルTA11等を記憶部41に予め記憶させておく形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば所定の関数等を用いて温度Ti及び湿度Hjの値に応じて荷重・放電補正係数Aの値を算出するようにしても良い。この場合、テーブルを使用する形態と比較して、演算処理による処理負荷が増加するものの、記憶部41の記憶容量を削減することができる。
【0187】
さらに上述した実施の形態においては、転写条件として用紙Pの厚さ、転写順を表す色、転写面及び搬送速度に着目し、各転写条件の組み合わせごとに補正テーブルTA11(図7)を用意する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、転写条件として、用紙Pの厚さ、転写順を表す色、転写面及び搬送速度のうち、少なくとも1個を省略しても良く、或いは他の条件を追加しても良い。電圧テーブルTV1(図5)に関しても同様である。
【0188】
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの厚さ(用紙厚)を、薄紙又は厚紙の2通りに区分する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、用紙Pの厚さ(用紙厚)を3通り以上に区分しても良い。電圧テーブルTV1(図5)等の電圧テーブルに関しても同様である。
【0189】
さらに上述した実施の形態においては、各転写部20における転写順を表す色ごとに、補正テーブルTA11(図7)等の補正テーブルを用意する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば荷重・放電補正係数Aの値が各転写部20における転写順の影響を受けにくい場合に、転写順に関わらず共通の補正テーブルを使用するようにしても良い。電圧テーブルTV1(図5)等の電圧テーブルに関しても同様である。
【0190】
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの転写面(第1面又は第2面)に応じて補正テーブルTA11(図7)等の補正テーブルを用意する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば第1面と第2面との間で荷重・放電補正係数Aの値が近似している場合に、転写面に関わらず共通の補正テーブルを使用するようにしても良い。また、例えば画像形成装置1から用紙反転部24を省略し、用紙Pの片面にのみ印刷処理を行うようにしても良く、この場合は片面用の補正テーブルを用意すれば良い。電圧テーブルTV1(図5)等の電圧テーブルに関しても同様である。
【0191】
さらに上述した実施の形態においては、用紙Pの搬送速度を標準又は低速の2段階に区分し、各搬送速度に応じて補正テーブルTA11(図7)等の補正テーブルを用意する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば用紙Pの搬送速度を3段階以上に区分しても良い。或いは、例えば用紙Pの搬送速度が変化したとしても荷重・放電補正係数Aの値がほぼ変化しないような場合に、搬送速度に関わらず共通の補正テーブルを使用するようにしても良い。電圧テーブルTV1(図5)等の電圧テーブルに関しても同様である。
【0192】
さらに上述した実施の形態においては、転写電圧決定処理手順RT1のステップSP5及びSP6において、温度及び湿度の双方において、基準値との差分値が閾値を超えた場合に、抵抗補正転写電圧Vtrerを算出して転写電圧Vtrを補正する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば温度及び湿度の少なくとも一方において、基準値との差分値が閾値を超えた場合に、抵抗補正転写電圧Vtrerを算出しても良い。或いは、例えば温度T及び湿度Hの変動に対し転写部20における感光体ドラム19等の抵抗値の変動幅が十分に小さい場合等に、抵抗補正転写電圧Vtrerの算出及び基準転写電圧Vtrsへの加算を省略しても良い。
【0193】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成装置1に4個の画像形成ユニット15を設ける形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、画像形成装置1に3個以下又は5個以上の画像形成ユニット15を設けても良い。或いは、例えば画像形成装置1に1個の画像形成ユニット15を設け、モノクロのプリンタとして構成しても良い。この場合、転写条件のうち転写順を表す色に関しては、画像形成ユニット15の数に応じた種類を用意すれば良い。
【0194】
さらに上述した実施の形態においては、画像形成装置1を単機能のSFPとして構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば当該画像形成装置1を、複写機やファクシミリ装置の機能を有するMFP(Multi Function Peripheral)等、他の種々の機能を有する画像形成装置としても良い。
【0195】
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1の印刷制御部3において各種プログラムを実行することにより、図3に示した各機能ブロックをソフトウェアにより構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば各機能ブロックの少なくとも一部をハードウェアにより構成しても良い。
【0196】
さらに上述した第1の実施の形態においては、画像形成装置1において各種プログラムを記憶部41に予め記憶しておく形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、例えば所定のサーバ装置(図示せず)に各プログラムを保存しておき、ホストインタフェース部42により所定のネットワーク(図示せず)を介して当該サーバ装置から当該プログラムをダウンロードして実行するようにしても良い。また、各補正テーブル及び各電圧テーブルについても、予め記憶部41に記憶させておく形態に限らず、例えば上記のサーバ装置からダウンロードするようにしても良い。
【0197】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0198】
さらに上述した実施の形態においては、感光体ドラムとしての感光体ドラム19と、搬送ベルトとしての転写ベルト14と、転写部材としての転写ローラ13と、電圧供給部としての印刷制御部3、高圧制御部45及び転写電圧発生部54と、媒体情報取得部としての情報取得部61とによって画像形成装置としての画像形成装置1を構成する形態について述べた。しかし本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる感光体ドラムと、搬送ベルトと、転写部材と、電圧供給部と、媒体情報取得部とによって画像形成装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明は、例えば電子写真式の画像形成装置で利用できる。
【符号の説明】
【0200】
1……画像形成装置、3……印刷制御部、10……中搬送部、13……転写ローラ、14……転写ベルト、15……画像形成ユニット、19……感光体ドラム、20……転写部、24……用紙反転部、41……記憶部、45……高圧制御部、47……温度・湿度検出部、54……転写電圧発生部、61……情報取得部、62……電圧・係数取得部、63……演算処理部、U……搬送路、P……用紙、W……媒体幅、SC……空隙、T……温度、H……湿度、Itr……転写電流、Vtr……転写電圧、Vtre……補正転写電圧、Vtrel……荷重・放電補正転写電圧、Vtrer……抵抗補正転写電圧、Vtrs……基準転写電圧、Vtrn……狭幅時転写電圧、Vtrw……広幅時転写電圧、A……荷重・放電補正係数、TA11、TA12、TA13、TA14,TA21、TA31、TA32、TA33、TA34、TA41……補正テーブル、TV1、TV2……電圧テーブル、v……搬送速度、RVtr……転写電圧比率、RVtr2……タイプ2転写電圧比率、RVtr3……タイプ3転写電圧比率。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
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