(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163528
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】医療デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20241115BHJP
【FI】
A61M25/10 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079235
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】河井 花奈美
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB28
4C267BB40
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG24
4C267GG32
4C267HH08
(57)【要約】
【課題】拡張体の外周に設けた金属線を、拡張体の拡張を妨げないように構成した医療デバイスを提供する。
【解決手段】拡張体(バルーン4)と、バルーン4の外側に設けられた金属線5と、バルーン4の先端部4aと金属線5の先端部5aとを接合した先端接合部6と、バルーン4の基端部4bと金属線5の基端部5bとを接合した基端接合部7と、を備える。先端接合部6は第1強度で接合され、基端接合部7は第1強度よりも弱い第2強度で接合される。バルーン4を拡張すると、基端接合部7の接合が優先的に解除される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張体と、前記拡張体の外周に設けられた金属線と、前記拡張体の先端部と前記金属線の先端部とを接合した先端接合部と、前記拡張体の基端部と前記金属線の基端部とを接合した基端接合部と、を備え、
前記先端接合部は第1強度で接合され、前記基端接合部は、前記第1強度よりも弱い第2強度で接合されていることを特徴とする医療デバイス。
【請求項2】
前記金属線は、前記基端接合部を除き、樹脂膜により被覆されている、請求項1に記載の医療デバイス。
【請求項3】
前記拡張体が拡張する際に、前記金属線の前記基端接合部における接合が解除される、請求項1又は2に記載の医療用デバイス。
【請求項4】
前記基端接合部が、前記金属線の基端部を収容する空間を有し、
前記拡張体を拡張又は拡縮させる際に、前記金属線は前記空間内を摺動する、請求項1~3の何れか一項に記載の医療用デバイス。
【請求項5】
前記拡張体と前記樹脂膜とを、同一の樹脂により形成した、請求項1~4の何れか一項に記載の医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や消化器官等の病変部に挿入し、該病変部を内部から拡張させる拡張体(バルーン)を備えた医療デバイスの技術が知られている。例えば、特許文献1には、病変部でバルーンを膨張させるとともに、病変部のスコアリングが可能なカテーテルの発明が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明によれば、スコアリング用の金属線をバルーンの先端部と基端部とに接合している。このため、バルーンを拡張すると、金属線が軸方向に向けて真っ直ぐに引き延ばされ、バルーンの拡張を妨げつつ突っ張り、バルーンを湾曲させるという問題があった。また、金属線が突っ張り、バルーン壁面に沿って配置されないため、病変部における石灰化破壊が困難となるという問題もあった。
【0005】
そこで、本開示の目的は、拡張体の外周に設けた金属線を、拡張体の拡張を妨げないように構成した医療デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の医療デバイスは、拡張体と、拡張体の外側に設けられた金属線と、拡張体の先端部と金属線の先端部とを接合した先端接合部と、拡張体の基端部と金属線の基端部とを接合した基端接合部と、を備え、先端接合部は第1強度で接合され、基端接合部は、第1強度よりも弱い第2強度で接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の医療デバイスによれば、先端接合部を第1強度で接合し、基端接合部を第1強度よりも弱い第2強度で接合したため、拡張体の拡張に応じて金属線の基端部の接合が解除され、拡張体の外周に設けられた金属線により拡張体の拡張が妨げられない。また、金属線が突っ張らないため、拡張体が湾曲せず、金属線がバルーン壁面に沿って配置され、確実に石灰化破壊を施術することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】拡張前のバルーンの(a)A-A線断面図、(b)B-B線端面図である。
【
図3】(a)バルーン拡張前、(b)バルーン拡張時、(c)バルーン収縮時、における、金属線の基端部の位置を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の医療デバイスをカテーテルとして具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明において、
図1の左側を体内に挿入する先端側、右側を医師等の手技者によって操作される基端側とする。
【0010】
本開示は、例えば、スコアリングバルーンカテーテルとして用いることができる。スコアリングバルーンカテーテルは、主に、動脈硬化性プラークによって引き起こされる血管の慢性閉塞を治療するために用いられる。具体的には、バルーンの外周に金属線を設け、病変部の内部でバルーンを拡張させることによって金属線を石灰化等の病変部に向けて付勢し、病変部を破壊する。
【0011】
また、本開示は、血管内の血栓等を回収する血栓回収デバイスにも応用可能である。血栓回収デバイスは、複数の金属線を互いに交差させて所定の空間を包む金属網を形成し、該空間に血栓等を捕えて体外まで運搬するデバイスである。金属網の網目は、金属網の空間に捕えられた血栓が外部に漏れない程度の大きさに形成されている。金属網は、収縮させた状態で血栓位置まで運搬され、血栓近傍で拡張させて用いられる。このように、拡張体を、金属網で構成することも可能である。
【0012】
図1,2に示すように、本開示のカテーテル1は、インナーシャフト2と、インナーシャフト2の先端に設けられた筒状の先端チップ8と、インナーシャフト2と同軸に設けられたアウターシャフト3と、医師等の手技者が操作する操作部であるコネクタ9と、コネクタ9に加えられたトルクを伝達するコイル状のトルク伝達部材(図示なし)と、を備える。
【0013】
また、本開示のカテーテル1は、拡張体としてのバルーン4と、バルーン4の外側に設けられた金属線5と、バルーン4の先端部4aと金属線5の先端部5aとを接合した先端接合部6と、バルーン4の基端部4bと金属線5の基端部5bとを接合した基端接合部7と、を備え、先端接合部6は第1強度で接合され、基端接合部7は、第1強度よりも弱い第2強度で接合されている。先端接合部6は、先端チップ8に設けられ、基端接合部7は、固定部10に設けられている。
【0014】
インナーシャフト2及びアウターシャフト3は、可撓性を有する円筒状の部材である。インナーシャフト2の基端部は、アウターシャフト3の基端部に接続され、インナーシャフト2の先端部2aは先端チップ8に接続されている。インナーシャフト2は、バルーン4及びアウターシャフト3に挿通され、インナーシャフト2の内側には、ガイドワイヤ(図示なし)を挿通するインナールーメン21が形成されている。インナールーメン21は、先端チップ8の内側の空間と接続されている。
【0015】
アウターシャフト3の先端部3aは、固定部10において、バルーン4の基端部4bと接続されている。バルーン4は、樹脂の薄膜により形成された筒状の部材であり、収縮した状態で挿通され、病変部において径方向に拡張させて用いられる。バルーン4の内側の空間は、アウタールーメン31に接続されている。カテーテル1の使用者は、コネクタ9に接続されたインデフレータ(図示なし)等を用いて、アウタールーメン31を通じてバルーン4の内側に造影剤や生理食塩水などの流体を流入させることができる。
【0016】
先端チップ8、インナーシャフト2、アウターシャフト3、バルーン4、及び、固定部10に用いられる樹脂は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等を採用できる。
【0017】
金属線5は、バルーン4の外周において、軸方向に沿って設けられている。金属線5の本数は、単数でも複数でも良く、適宜変更可能である。バルーン4を拡張すると、金属線5が石灰化等の病変部に付勢され、内部から石灰化等を破壊する。金属線5は、丸線、三角線、台形線、矩形線等の任意の断面形状を有するものを選択できる。また、金属線5に用いられる金属は、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、白金イリジウム(Pt-Ir)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、白金、金、またはこれらの合金等を採用できる。
【0018】
また、金属線5は、基端接合部7を除き、樹脂膜51により被覆されている。樹脂膜51は、カテーテル1が挿通される血管等を保護するために設けられている。樹脂膜51に用いられる樹脂は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミドイミド等を採用できる。樹脂膜51の最大厚さは、2μm以上11μm以下である。
【0019】
バルーン4を樹脂で形成し、先端接合部6の金属線5は樹脂膜51により被覆したため、先端接合部6におけるバルーン4と金属線5との接合強度(第1強度)を高めることができる。バルーン4と樹脂膜51とを同一の樹脂により形成し、第1強度をさらに高めることも可能である。一方、基端接合部7の金属線5は樹脂膜51により被覆されていないため、基端接合部7におけるバルーン4と金属線5との接合強度(第2強度)は第1強度よりも弱くなる。第2強度は0.1N以上1N以下となる。
【0020】
図3に示すように、基端接合部7は、金属線5の基端部5bを収容する空間Sを有する。
図3(b)に示すように、バルーン4を拡張させると、金属線5は、軸方向に引っ張られる。このとき、第1強度よりも第2強度の方が弱いため、基端接合部7の接合が、先端接合部6の接合よりも優先的に解除される。このとき、金属線5の基端部5bは、空間Sを摺動し、カテーテル1の先端に向けて移動する。
図3(c)に示すように、バルーン4を収縮させると、金属線5の基端部5bは、空間Sを摺動し、カテーテル1の基端方向に移動する。
【0021】
したがって、本開示のカテーテル1によれば、金属線5を、基端接合部7を除いて樹脂膜51により被覆したため、基端接合部7の接合強度(第2強度)は、先端接合部6の接合強度(第1強度)よりも弱くなる。このため、バルーン4の拡張に伴って、金属線5の基端部5bの接合が解除され、バルーン4の拡張が妨げられない。
【0022】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 カテーテル
2 インナーシャフト(a:先端部)
3 アウターシャフト(a:先端部)
4 バルーン(a:先端部、b:基端部)
5 金属線(a:先端部、b:基端部)
6 先端接合部
7 基端接合部
8 先端チップ
9 コネクタ
10 固定部
21 インナールーメン
31 アウタールーメン
51 樹脂膜
S 空間