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2024-163535離型シート、その製造方法、及び該離型シートを用いるセラミック部材の製造方法
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  • -離型シート、その製造方法、及び該離型シートを用いるセラミック部材の製造方法 図1
  • -離型シート、その製造方法、及び該離型シートを用いるセラミック部材の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163535
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】離型シート、その製造方法、及び該離型シートを用いるセラミック部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
C04B35/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079245
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100145089
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 彰紘
(72)【発明者】
【氏名】堀田 幹則
(57)【要約】
【課題】より薄く、十分な保形強度を有する離型シートを、環境負荷を削減しつつ提供する。
【解決手段】天然原料由来であり、繊維長/粒子径の割合が大きい繊維状であるセルロースナノファイバーを窒化ホウ素粒子のバインダーとして用いることにより、厚みが薄くても十分な保形強度を有する離型シートとする。また、該離型シートに、カーボン粒子を含有させることにより、還元性雰囲気中で製品を製造する場合の還元をより適切に行うことを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む離型シート。
【請求項2】
前記窒化ホウ素粒子を、前記離型シートの空隙部を除く体積割合で、40%以上95%以下含む、請求項1に記載の離型シート。
【請求項3】
カーボン粒子を、前記離型シートの空隙部を除く体積割合で、1%以上20%以下含む、請求項2に記載の離型シート。
【請求項4】
膜厚が1μm以上200μm以下である、請求項1に記載の離型シート。
【請求項5】
窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含みカーボン粒子を含まない二層の間に、窒化ホウ素粒子とカーボン粒子とセルロースナノファイバーを含む層が介在する三層構造である、請求項1に記載の離型シート。
【請求項6】
セラミック部材の製造に用いる請求項1~5のいずれか1項に記載の離型シート。
【請求項7】
前記セラミック部材が非酸化物系セラミック部材である、請求項6に記載の離型シート。
【請求項8】
窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む水系スラリーから水分を除きシート状に成形する工程を含む、窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む離型シートの製造方法。
【請求項9】
前記水系スラリーがさらにカーボン粒子を含む、請求項8に記載の離型シートの製造方法。
【請求項10】
前記水分を除きシート状に成形する工程が、前記スラリーを非吸水性基板に流して乾燥させる工程である、請求項8又は9に記載の離型シートの製造方法。
【請求項11】
前記水分を除きシート状に成形する工程が、前記スラリーを吸水性基板に流して乾燥させる工程である、請求項8又は9に記載の離型シートの製造方法。
【請求項12】
前記水分を除きシート状に形成する工程が、前記スラリーをメッシュで抄い上げて乾燥させる工程である、請求項8又は9に記載の離型シートの製造方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の離型シートを治具とセラミックのグリーン成形体の間、及び/又はセラミックのグリーン成形体同士の間に挟み、焼成する工程を含むセラミック部材の製造方法。
【請求項14】
前記焼成工程を不活性ガス雰囲気中、又は還元性ガス雰囲気中で行う、請求項13に記載のセラミック部材の製造方法。
【請求項15】
前記セラミック部材が非酸化物系セラミック部材である、請求項14に記載のセラミック部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型シート、その製造方法、及び該離型シートを用いるセラミック部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック部材を焼成して製造する際の部材間又は部材と治具間の焼き付き防止や、プレス製品、鋳造製品等の金型表面への貼り付き防止のために、離型材が用いられている。離型材としては、固体潤滑材としての機能も有する窒化ホウ素が多く用いられている。
窒化ホウ素(BN)はかさが高くふわふわした粒子であり、乾燥状態でのハンドリングが難しい。そのため、部材や金型等に固体で塗布する場合、粒子が飛び散り、均等な膜ができない、表面への付着量が少ない等の問題がある。そこで、溶媒を加えた液状物にして、スプレーや刷毛塗で焼き付き防止部や摺動部に塗布したり(特許文献1参照)、シート状に成形して焼成前の成形体間又は焼成前の成形体と治具の間に挟み込んだり(特許文献2、3)して、部材間の焼き付きや貼り付きを防止することが一般的である。
【0003】
特許文献1には、金型の内表面にBN粒子を溶媒に分散させた潤滑離型剤を塗布した後に、前記金型を用いて鋳造することにより、金型表面への貼り付きを防止することが記載されている(請求項1)。
【0004】
特許文献2には、BN粒子と有機バインダー(エチルセルロース、コーンスターチ、アクリル系樹脂等)を含む水溶液をシート状に成形して乾燥させた離型シートを、焼成前の予備成形体間に挟むことで離形剤層を形成することが記載されている(請求項1、段落[0017]、[0028]、[0031])。
【0005】
特許文献3には、焼成前のセラミック成形体を、BN粒子、バインダーであるポリビニルブチラール(PVB)、及び分散媒を含むスラリーをシート状に成形した一対の離型シートで挟んでホットプレス焼成し、配向セラミック焼結体を得ることが記載されている(請求項1,3、10、実験例1,3)。
【0006】
一方、セルロースナノファイバー(CNF)は、天然由来の素材であり、環境負荷が小さく、軽量、高強度、低熱膨張等の特性を有することから、種々の用途が検討されている素材である。特許文献4には、BN粒子とCNFの複合材からなる放熱材について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-297754号公報
【特許文献2】特開2001-240476号公報
【特許文献3】特許第6490881号公報
【特許文献4】特許第6470539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されるように、BN粒子に溶媒を加えた液状物を金型等に塗布する場合、スプレーの液滴、刷毛塗の筋などができやすく、不均一なむらが生じ、むらが製品表面に転写されるという問題が発生する。
また、焼成前のセラミック成形体のような多孔質部材の表面に液状物を塗布すると、多孔質内部に液が染み込み、悪影響を及ぼす恐れがある。さらに、表面に転写されたむらが、製品のそり発生につながってしまう。
【0009】
特許文献2、3には、BN粒子を含む離型シートを用いてセラミック部材を製造することが記載されている。しかし、BN粒子のバインダーとして実施例において使用しているのは、ポリビニルブチラール(PVB)、アクリル樹脂等の樹脂系合成品であり、有機系の分散媒を用いたスラリーから離型シートを作製しているため、カーボンニュートラルの要請に反し、環境負荷が大きい。
また、シート状物には、シートとしての形状を保って取り扱いを容易にするための強度(以下、「保形強度」という。)が必要である。しかし、樹脂系合成品のバインダーでは、BN粒子との結合力が大きくないため、保形強度を満たすために多量のバインダーを必要とする。したがって、薄いシート状物を得ることが難しく、限られた容積を有する製造装置内で離型シートの占める体積が大きくなってしまう(スペースファクターが劣る。)。
【0010】
特許文献2の段落[0031]、特許文献3の段落[0013]には、エチルセルロースやコーンスターチ等、天然原料由来のバインダーも例示されており、これらの使用によって、一定の環境負荷削減の効果が期待できる。しかし、これらのバインダーも、樹脂系合成品のバインダーと同じく、保形強度を確保するためには一定以上の含有が必要であるから、厚みを薄くすることができず、スペースファクターが改善されないという課題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題に鑑み、より薄く、十分な保形強度を有する離型シートを、環境負荷を削減しつつ提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述のとおり、CNFは、環境負荷が小さく、軽量、高強度、低熱膨張等の特性を有することから、種々の用途が検討されている素材であり、上記特許文献4には、BN粒子とCNFの複合材からなる放熱材について記載されている。しかしながら、該特許文献には離型シートについては何ら記載されていない。
本発明者らは、離型シートにおけるBN粒子のバインダーとしてCNFを用いることで、上記課題が解決し得ることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用するものである。
[1]窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む離型シート。
[2]前記窒化ホウ素粒子を、前記離型シートの空隙部を除く体積割合で、40%以上95%以下含む、前記[1]の離型シート。
[3]カーボン粒子を、前記離型シートの空隙部を除く体積割合で、1%以上20%以下含む、前記[2]又は[3]の離型シート。
[4]膜厚が1μm以上200μm以下である、前記[1]~[3]のいずれかの離型シート。
[5]窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含みカーボン粒子を含まない層の間に、窒化ホウ素粒子とカーボン粒子とセルロースナノファイバーを含む層が介在する三層構造である、前記[1]の離型シート。
[6]セラミック部材の製造に用いる前記[1]~[5]のいずれかの離型シート。
[7]前記セラミック部材が非酸化物系セラミック部材である、前記[6]の離型シート。
[8]窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む水系スラリーから水分を除きシート状に成形する工程を含む、窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む離型シートの製造方法。
[9]前記水系スラリーがさらにカーボン粒子を含む、前記[8]の離型シートの製造方法。
[10]前記水分を除きシート状に成形する工程が、前記スラリーを非吸水性基板に流して乾燥させる工程である、前記[8]又は[9]の離型シートの製造方法。
[11]前記水分を除きシート状に成形する工程が、前記スラリーを吸水性基板に流して乾燥させる工程である、前記[8]又は[9]の離型シートの製造方法。
[12]前記水分を除きシート状に成形する工程が、前記スラリーをメッシュで抄い上げて乾燥させる工程である、前記[8]又は[9]の離型シートの製造方法。
[13]前記[1]~[5]のいずれかの離型シートを、治具とセラミックのグリーン成形体の間、及び/又はセラミックのグリーン成形体同士の間に挟み、焼成する工程を含むセラミック部材の製造方法。
[14]前記焼成工程を不活性ガス雰囲気中、又は還元性ガス雰囲気中で行う、前記[13]のセラミック部材の製造方法。
[15]前記セラミック部材が非酸化物系セラミック部材である、前記[14]のセラミック部材の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、CNF繊維長/BN粒子径の割合が大きい繊維状であることからBN粒子を結合する効果が高く、かつ、天然原料由来であるCNFを、BN粒子のバインダーとして用いることにより、より少ないバインダー量で十分な保形強度を有する薄い離型シートを、環境負荷を削減しつつ提供することができる。
また、本発明によれば、離型シートがさらにカーボン粒子を含むことにより、還元性雰囲気中で製品を製造する場合の還元をより適切に行うことができる。
さらに、本発明によれば、離型シートを水系スラリーから水分を除きシート状に成形して製造することにより、さらに環境負荷を減らすことができる。
加えて、本発明によれば、離型シートの厚みを薄くすることができるため、セラミック部材等の製造装置内におけるスペースファクターを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1で得られた離型シートを撮影した写真
図2】実施例2で得られた離型シートを撮影した写真
図3】実施例3で得られた離型シートを撮影した写真
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、窒化ホウ素粒子及びセルロースナノファイバーを含む離型シート、その製造方法、及びその離型シートを用いてセラミック部材を製造する方法を提供するものである。
本発明における「離型」とは、製品と型の離型(焼き付き防止、貼り付き防止、融着防止)に限られず、製品間の離型(同上)をも意味する。
【0017】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に即して、本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。
なお、数値範囲等を「~」を用いて表す場合、その下限及び上限として記載された数値をも含む意味である。
【0018】
<窒化ホウ素(BN)粒子>
BN粒子は、離型性、潤滑性に優れた材料として知られている。本実施形態に係る離型シートに離型材として用いるBN粒子は、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
BN粒子が細かすぎると、後述する水系スラリーの粘度が高くなり、シートの作製が困難になることがある。そのため、BN粒子の平均粒子径D50は0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。
また、BN粒子が大きすぎると、後述するCNFとの結合力が低下することがある。そのため、BN粒子の平均粒子径D50は30μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
このようなBN粒子は、市販品として容易に入手することができる。
【0019】
<セルロースナノファイバー>
セルロースナノファイバー(CNF)は、植物の細胞壁の主成分であるセルロースを化学的又は機械的にナノレベルまで微細に解砕したものであり、概ね、直径が数nm~100nm、長さが直径の100倍以上の100nm~数μmである極細繊維である。
天然由来であるCNFは、環境負荷が小さく、軽量、高強度、低熱膨張等の特性を有することから、昨今、注目を集めている素材である。
本実施形態において、CNFは離型シートに含まれるBN粒子を結合するバインダーとして用いられる。
CNFは、上記のとおり、ナノオーダーの直径に対して100倍以上の長さを有する極細繊維であるため、少ない量で多くのBN粒子を絡めとることができるので、BN粒子相互の結合を高め、シートとしての保形強度を高めることができる。
【0020】
<カーボン粒子>
本実施形態に係る離型シートは、BN粒子、CNFに加えてカーボン(C)粒子を含んでいてよい。
C粒子は還元作用を有する。
C粒子は、BN粒子よりも水系スラリー中への分散性が高いことから、平均粒子径D50がBNより小さくてもよく、0.01μm以上であることが好ましい。
一方、CNFとの結合力を保つためには、BN粒子と同等以下の平均粒子径D50であることが好ましく、30μm以下が好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
C粒子は還元剤として機能することから、特に非酸化物系セラミック部材を不活性ガス雰囲気中、又は還元性ガス雰囲気中で焼成して製造する際に、C粒子を含む離型シートを用いることにより、還元性雰囲気の生成及び維持に効果がある。
【0021】
ただし、C粒子を含む離型シートを多孔質であるグリーン成形体に直接接して焼成すると、多孔の空隙にC成分が移行し、製造されたセラミック部材の組成に悪影響を及ぼす恐れがある。
そのような場合は、BN粒子とCNFを含み、Cを含まない二層の間に、BN粒子とC粒子とCNFとを含む層を挟んだ三層構造の離型シートとすることができ、セラミック部材の組成への影響を回避することができる。
【0022】
<BN粒子、CNF、C粒子の体積割合>
本実施形態における離型シートに含まれるBN粒子の具体的な体積割合[BN/(BN+CNF)]は、薄いシート厚とするためには、離型シートの空隙部を除き、40%以上であることが好ましく、離型性の向上のためには70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。また、保形強度を維持するためには、95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
離型シートにC粒子が含まれる場合の具体的な体積割合[C/(BN+CNF+C)]は、離型シートの空隙部を除き、1%以上であることが好ましく、還元性雰囲気の生成及び維持のためには、3%以上であることがより好ましい。また、離型性を有するBN粒子の体積割合を減らさないためには、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
なお、離型シートの空隙部の測定は、シート質量を体積(=面積×厚み)で除して得たシートの密度と、シート中に含まれる、BN、CNF、Cの質量と密度から求められる緻密体を仮定した密度との比から求めることができる。あるいは、離型シートの乾燥質量、含水質量、水中質量から、アルキメデス法により求めることができる。なお、上記の方法に限らず、他の方法を用いて測定してもよい。
【0023】
<離型シートの厚み>
離型シートは、使用中の保形強度を保つことができれば、できるだけ薄い方が好ましい。
例えば、セラミック部材を製造する際には、焼成炉内壁又は治具とグリーン成形体の間や、積層された複数のグリーン成形体間に離型シートを介装し、焼成工程が行われる。焼成炉の大きさが同じであれば、離型シートの厚みがより薄い方がより多くのグリーン成形体を炉内に収容し、より多くのセラミック部品を製造することができる。
また、離形シートが金型の内表面を覆うように用いられる場合も、金型の形状を正確に製品に伝えるためには、薄い離形シートであることが好ましい。
離型シートの厚みは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。一方、保形強度を維持するためには、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。
【0024】
<離型シートの製造方法>
本実施形態に係る離型シートの製造方法は、固形分であるBN粒子及びCNF、又はBN粒子、C粒子及びCNFに分散媒を加えてスラリーを調製する工程、及び調製したスラリーから、溶媒を除く工程を含む。
分散媒は水であることが好ましい。分散媒に、有機溶媒ではなく、水を使用することにより、スラリーの調製、水分の除去を容易に行い、環境負荷の少ない工程とすることができる。
また、固形分の分散性を向上させるために、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリエチレンイミン等、あるいは市販の分散剤をさらに加える場合もあるが、分散剤の添加は必須ではない。分散剤を必須としないことによっても、環境負荷の少ない工程とすることができる。
【0025】
水系スラリーから水分を除きシート状に成形する工程は、特に限定されないが、例えば、前記スラリーを非吸水性基板に流し込み、乾燥させる工程、又は前記スラリーを吸水性基板に流し込み、吸水させて半乾燥させた後、剥がして完全乾燥させる工程、或いは前記スラリーをメッシュで抄い上げて乾燥させる工程、等が挙げられる。
非吸水性基板としては、プラスチックシート、アルミニウムシート等が挙げられる。
吸水性基板としては、例えば、多孔質の陶器製吸水板、ろ紙とブフナーロートの組み合わせ等が挙げられる。
メッシュは、目開き10~50μm程度のものが好ましい。
【0026】
<セラミック部材の製造方法>
本実施形態に係るセラミック部材の製造方法は、BN粒子とCNFを含む、又はBN粒子、C粒子及びCNFを含む離型シートを用いて、グリーン成形体を焼成する工程を含む。
前記離型シートは、セラミック部材の焼成容器の内壁又はスペーサ等の治具とグリーン成形体との間に配置されてもよく、複数のグリーン成形体を積層して焼成する場合のグリーン成形体間に配置されてもよい。
【0027】
本発明に係るセラミック部材は、酸化系セラミック部材、及び非酸化系セラミック部材を含む。
酸化物系セラミック部材とは、酸化性雰囲気中、800℃以下で焼成を行うセラミック部材全般を指す。アルミナ、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、チタン酸鉛等が例示できる。これらは焼結助剤を含むものでもよい。加えて、ガラス、ガラス/アルミナ、ガラス/ジルコニア等のガラス系部材も例示できる。
非酸化物系セラミック部材とは、酸化性雰囲気中での焼成を避け、不活性ガス雰囲気中、又は還元性ガス雰囲気中で焼成を行う必要のあるセラミック部材全般を指す。窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、タングステンカーバイト、サーメット等が例示できる。これらは焼結助剤を含むものでもよい。加えて、金属導電層やカーボン導電層を内部に有する酸化物セラミックス、なども例示できる。
【0028】
BN粒子及びCNFを含む離型シートが配置されたグリーン成形体を、酸化性雰囲気中、又は不活性ガス雰囲気中若しくは還元性ガス雰囲気中で400~800℃の焼成を行うと、CNFは分解し、焼失又は残渣Cとして残留する。したがって、上記の焼成工程により、セラミック部材と治具間、又はセラミック部材間には、離型作用を有するBN粒子のみ、又はBN粒子とCNFの残渣のCのみが残留する。さらにC粒子を含む離型シートを用いた場合は、BN粒子、又はBN粒子とCNFの残渣のCに加えて、C粒子の残渣であるCも残留し得る。残留するCの量は焼成温度や時間とガス雰囲気により調整できる。
【0029】
酸化物系セラミック部材を酸化性雰囲気中で焼成する場合は、BN粒子の酸化が800℃以上で生じるので、上記の焼成工程までを行う。本方法により、離型良く、酸化物系セラミック部材を得ることができる。
非酸化物系セラミック部材を焼成する場合は、上記の焼成工程後、さらに不活性ガス雰囲気中、又は還元性ガス雰囲気中で1200~2500℃の焼成を行う。本方法により、離型良く、非酸化物系セラミック部材を得ることができる。
【0030】
特に、非酸化物系セラミック部材を製造する場合は、BN粒子、C粒子及びCNFを含む離型シートを用いることが好ましい。
離型シートがC粒子を含むことにより、非酸化物系セラミックのグリーン成形体を焼成するために必要な還元性雰囲気の調整を良好に行うことができる。
ただし、セラミック部材にC成分が移行することを防ぐためには、C粒子を含む離型シートをグリーン成形体に直接触れさせないことが好ましく、C粒子を含まない二層間にC粒子を含む層を挟み込んだ三層構造の離型シートを使用することが好ましいことは、上述のとおりである。
【実施例0031】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明する。
なお、実施例は本発明の好適な例を示すものであり、本発明は、以下の実施例によって制限されるものではない。
【0032】
(実施例1-1)
BN粒子(デンカGP)1g(密度2.1g/cm、体積換算0.48cm)、CNF(スギノマシンWFo-10005 濃度5wt%、繊維径10~50nm)15g(固形分0.75g、密度1.5、体積換算0.5cm)、及び分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)0.5gを水30gに分散し、水系スラリーを調製した。
前記水系スラリー中の固形分であるBN粒子とCNF粒子の体積割合は、BN:CNF=0.48:0.5である。
また、BN粒子がバインダー(CNF)を除いた前記水系スラリー中に占める体積割合(以下「スラリー濃度」という。)は、BN:水=0.48:30であるから、約1.6%である。
【0033】
前記水系スラリーから以下(1)~(3)の方法を用いて水分を除いてシート状に成形し、BN粒子の体積割合が0.48/(0.48+0.5)=49vol%(ただし、離型シートの空隙体積を除く。以下同様。)である実施例1-1に係る離型シートを作製した。
(1)非吸水性のプラスチックシートに流し込み、室温で放置して乾燥した。
(2)吸水性を有する多孔質の陶器製吸水板に流し込み、2時間放置して水分を吸収させて、半乾燥させた後、基板から剥がして完全乾燥した。
(3)目開き約30μmのメッシュで救い上げてシート状物とし、乾燥した。
【0034】
図1に、(2)の方法で作製した実施例1-1に係る離型シート(70mm×60mm×80μm)を撮影した写真を一例として挙げる。
図1のシートについては、厚みがほぼ一定であり、また、亀裂や孔は見当たらなかった。すなわち、問題なく良好に作製されたシートであった。また、ピンセットで容易に持ち上げることが可能であり、取り扱い性(ハンドリング性)にも問題がないものであった。
また、(1)及び(3)の方法で作製した実施例1-1に係る離型シートについても、(2)の方法で作製したシートと同等のサイズのシートが良好に作製され、亀裂や孔は見当たらず、取り扱い性に問題がないものであった。
【0035】
(実施例1-2:分散剤不使用の検討)
分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)を使用しなかった以外は実施例1-1と同様にして水系スラリーを作製したのち、(2)の方法を用いて実施例1-2に係る離型シートを作製した。
分散剤なしでも問題なく良好なシートの作製が可能であった。
実施例1と同じく、取り扱い性に問題はなかった。
CNFの繊維がBN粒子をCNFネットワーク構造に取り込んで分散させる効果があるためと推察される。
【0036】
(実施例1-3~1-6:BN粒子径の検討)
平均粒子径(D50)が異なる以下の4種類のBN粒子を用いた以外は実施例1-1の(2)の方法と同様にして、実施例1-3~1-6に係る離型シートを作製した。
実施例1-3:昭和電工UHP-S2(D50=0.7μm)、
実施例1-4:デンカHGP(D50=5μm)
実施例1-5:デンカMGP(D50=10μm)
実施例1-6:デンカSGP(D50=18μm)
【0037】
実施例1-4(D50=5μm)、実施例1-5(D50=10μm)では、実施例1-1(D50=7μm)と同様、問題なく良好な離型シートを作製でき、ハンドリング性も良好であった。
実施例1-3(D50=0.7μm)では、D50がより大きい他の実施例よりも作製した水系スラリーの粘度が高く、やや扱いにくかったが、孔や亀裂のない離型シートの作製は可能であり、ハンドリング性も良好であった。
実施例1-6(D50=18μm)では、離型シート作製に問題はなかった。シート強度は、D50がより小さい他の実施例より低く、ピンセットで持ち上げることに注意が必要であったが、ハンドリングは可能であった。
【0038】
以上の結果を実施例1-1とともに以下の表1に示す。
表1からは、本発明に係る離型シートに適するBN粒子の粒子径範囲が予測できる。
【0039】
【表1】
【0040】
(実施例2:BN粒子の体積割合の検討)
BN粒子(デンカHGP)1g(密度2.1g/cm、体積換算0.48cm)、CNF(スギノマシンWFo-10005)3g(体積換算0.1cm)、及び分散剤(ポリカルボン酸アンモニウム塩)0.5gを水15gに分散し、水系スラリーを調製した。
前記水系スラリー中の固形分であるBN粒子とCNFの体積割合は、BN:CNF=0.48:0.1であり、BN粒子のスラリー濃度は、BN:水=0.48:15であるから、約3.2%である。
前記水系スラリーから、実施例1と同様の方法により水分を除去してシート状に成形し、実施例2に係る離型シートを作製した。
BN粒子が前記離型シートに占める体積割合は、0.48/(0.48+0.1)=83vol%である。
【0041】
図2は、一例として(1)の方法で作製した実施例2に係る離型シート(50mm×40mm×120μm)を撮影した写真である。BNの体積割合が80%を超え、バインダーの体積割合が20%未満である実施例2においても、シートの作製、及び取り扱い性に問題はなかった。
【0042】
(実施例3-1:C粒子添加の検討)
BN粒子(デンカHGP)1g(密度2.1g/cm、体積換算0.48cm)、C粒子(高純度化学 粒子径5μm)0.2g(密度2.1g/cm、体積換算0.09cm)、CNF(スギノマシンWFo-10005)17g(体積換算0.57cm)、及び分散剤ポリカルボン酸アンモニウム塩0.5gを水40gに分散し、水系スラリーを調製した。
BN粒子、C粒子、及びCNFの体積割合は、BN:C:CNF=0.48:0.09:0.57であり、BN粒子のスラリー濃度は、BN:水=0.48:40であるから、約1.2vol%であり、C粒子のスラリー濃度は、C:水=0.09:40であるから、約0.2%である。
前記水系スラリーから、実施例1と同様の方法(1)~(3)により水分を除去してシート状に成形し、実施例3-1に係る離型シートを作製した。
BN粒子、及びC粒子が前記離型シートに占める体積割合は、それぞれ0.48/(0.48+0.09+0.57)=42vol%、0.09/(0.48+0.09+0.57)=8vol%である。
【0043】
図3は、一例として(2)の方法で作製した実施例3-1に係る離型シート(80mm×60mm×110μm)を撮影した写真である。C粒子を用いた実施例3-1においても、シート作製及び取り扱い性に問題はなく、十分な保形強度を確保することができた。
【0044】
(実施例3-2~3-5:C粒子径の検討)
平均粒子径(D50)が異なる以下の4種類のC粒子を用いた以外は実施例3-1の(2)と同様にして、実施例3-2~3-5に係る離型シートを作製した。
実施例3-2:シグマアルドリッチ社 カーボンブラック (D50=0.1μm)
実施例3-3:高純度化学 カーボン(D50=10μm)
実施例3-4:高純度化学 カーボン(D50=20μm)
実施例3-5:高純度化学 カーボン(D50=50μm)
実施例3-2~3-4(D50=0.1μm、10μm、20μm)では、実施例3-1(D50=2μm)と同様、問題なく良好な離型シートを作製でき、ハンドリング性も良好であった。
実施例3-5(D50=50μm)では、シートを作製できたが、シート内に黒点(大きなC粒子)がみえることがあった。
【0045】
以上の結果を実施例3-1とともに以下の表2に示す。
表2から、本発明に係る離型シートに適するC粒子の粒子径範囲が予測できる。
【0046】
【表2】
【0047】
(実施例4:三層構造)
BN粒子とCNFを含むスラリーを、実施例1-4と同様の手順で作製した。BN粒子、C粒子及びCNFを含むスラリーを、実施例3-1と同様に作製した。
次に、吸水性を有する多孔質の陶器製吸水板に、BN粒子とCNFを含むスラリーを流し込み、水分を吸収させて半乾燥状態とした。その後、BN粒子、C粒子及びCNFを含むスラリーをその上に流し込み、水分を吸収させて半乾燥状態とした。さらにその上にBN粒子とCNFを含むスラリーを流し込み、水分を吸収させて半乾燥状態とした。その後、吸水板から剥がして完全乾燥することにより、BN-CNF/BN-C-CNF/BN-CNFの三層よりなるシートを作製した。
このシートの取り扱い性に問題はなく、十分な保形強度を確保することができた。
【0048】
以下の実施例5~7では、比較例5a~7a、及び比較例5b~7bとの対比によりバインダーの種類について検討するとともに、BN粒子の割合と作成可能な離型シートの厚み及び保形強度の関係を検討する。
【0049】
(実施例5:BN粒子が50vol%;CNF)
BN粒子(デンカHGP)1g、CNF(スギノマシンWFo-10005)14.4gを水38gに分散し、BN粒子のスラリー濃度が1.3vol%の水系スラリーを調製した。
前記水系スラリーを非吸水性のプラスチックシート上でギャップ400μmのアプリケーターで製膜速度10mm/secで製膜し、乾燥した後、厚み25μm、長さ20mm、幅5mmの離型シートを切り出した。
離型シートの保形強度を評価するために、前記離型シートを製膜方向(アプリケーター移動方向)に引張り、引張強度を測定した。引張強度が大きいほど、保形強度が高いといえる。
【0050】
(比較例5a:BN粒子が50vol%;PVB)
BN粒子(デンカHGP)9g、ポリビニルブタノール(PVB:積水BM-1)4.5g、及び可塑剤であるフタル酸ジオクチル2.3gを、2-プロパノールと1-ブタノールの混合液(体積比3:1)に分散し、スラリー濃度12vol%のスラリーを調製した。(分散剤は不使用)
前記スラリーを実施例5と同様の手順により製膜し、厚み65μmの離型シートを切り出し、製膜方向の引張強度を測定した。
【0051】
(比較例5b:BN粒子が50vol%;でんぷんのり)
BN粒子(デンカHGP)10gとでんぷんのり8gを配合し、分散媒として水を加えてスラリー濃度15vol%との水系スラリーを調製した。
前記水系スラリーを実施例5と同様の手順により製膜し、厚み80μmの離型シートを切り出し、製膜方向の引張強度を測定した。
【0052】
実施例5、及び比較例5a,5bに係る離型シートの引張強度を以下の表3に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
表3から、離型シートに占めるBN粒子の体積割合が50vol%である場合、バインダーがCNFである実施例5では、大量の水に分散した低粘度のスラリー液を用いて、厚みが薄く、保形強度が大きい離型シートを作製できたことがわかる。
これに対して、バインダーがPVBである比較例5a、又はでんぷんのりである比較例5bでは、離型シートを作製するためには、実施例4の10倍程度以上のスラリー濃度が必要であり、シートの厚みは実施例5より厚くならざるを得ず、また、保形強度も、実施例5に及ばないことがわかる。
【0055】
(実施例6、比較例6a、6b:BN粒子が70vol%)
離型シートに占めるBN粒子の体積割合を70vol%とした以外は、それぞれ、実施例5、及び比較例5a、5bと同様の手順で、実施例6、及び比較例6a、6bに係る離型シートの作製を試みた。
実施例6、及び比較例6a、6bに係る結果を以下の表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
表4からは、BN粒子の体積割合が70vol%である場合でも、表3とほぼ同様の傾向が示された。すなわち、バインダーがCNFである実施例6においては、厚み37μmの離型シートが得られ、引張強度8MPaの保形強度が得られたのに対して、バインダーがPVBである比較例6aにおいては、スラリー濃度を約10倍高めて得られた離型シートの厚みは86μmとなり、離型シートの保形強度は実施例6に及ばなかった。バインダーがでんぷんのりである比較例6bでは、スラリー濃度を19vol%としても製膜できず、離型シートを作製することができなかった。
【0058】
(実施例7、比較例7a、7b:BN粒子が83vol%)
離型シートに占めるBN粒子の体積割合を83vol%とした以外は、それぞれ、実施例5、及び比較例5a、5bと同様にして、実施例7、及び比較例7a、7bに係る離型シートの作製を試みた。
実施例7においては、厚み48μmの離型シートが得られたが、比較例7aにおいては、BN粒子の体積割合に対するバインダーの体積割合が小さすぎ、シートを作製することができなかった。
バインダーがでんぷんのりである比較例7bでは、高粘度でクリーム状となり、シート作製に適したスラリーを作製することができなかった。
実施例7、及び比較例7a、7bに係る実験結果を以下の表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5からは、BN粒子の体積割合が83vol%である場合でも、バインダーがCNFである実施例7では、スラリー濃度、シート厚は実施例5、6よりは大きくなるものの、50μm以下の厚みとすることができ、2MPaの引張力に耐える保形強度を有することがわかる。
これに対して、バインダーがPVBである比較例7aでは、スラリー濃度を21vol%としても、製膜することが不可能であり、バインダーがでんぷんのりである比較例7bでは、スラリーを調製すること自体が不可能であった。
以上の結果から、BN粒子のバインダーとしてCNFを用いることにより、薄く、保形性に優れた離型シートを提供できることが実証された。
【0061】
(実施例8:窒化アルミニウムセラミック部材製造への適用)
実施例1-1及び実施例2に係る離型シート(40mm×40mm)を窒化アルミニウムのグリーン成形体(30mm×30mm×0.5mm)と治具の間、及びグリーン成形体同士の間に挟み込み、焼成炉で、大気中500℃で1時間脱脂、1気圧窒素中1850℃で2時間焼成した。取り出した窒化アルミニウム部材と治具の間、及び窒化アルミニウム部材間には、BN層が形成され、癒着部位は見られなかった。
【0062】
(実施例9:窒化ケイ素セラミック部材製造への適用)
実施例1-1及び実施例2に係る離型シート(40mm×40mm)を窒化ケイ素のグリーン成形体(30mm×30mm×0.5mm)と治具の間、及びグリーン成形体同士の間に挟み込み、焼成炉で、大気中500℃で1時間脱脂、5気圧窒素中1800℃で2時間焼成した。取り出した窒化ケイ素部材と治具の間、及び窒化ケイ素部材間には、BN層が形成され、癒着部位は見られなかった。
【0063】
(実施例10:C粒子を含む離型シートの窒化アルミニウムセラミック部材製造への適用)
実施例3-1に係る離型シート(40mm×40mm)を窒化アルミニウムのグリーン成形体(φ25mm×3mm)と治具の間に挟み込み、焼成炉で、大気中500℃で1時間脱脂、1気圧窒素中1850℃で2時間焼成した。取り出した窒化アルミニウム部材と治具の間には、BN層が形成され、癒着部位は見られなかった。得られた窒化アルミニウムの熱伝導率は、レーザーフラッシュ法で測定したところ、190W/mKであった。
なお、実施例1に係る離型シートを用い、実施例10と同様にして作製した窒化アルミニウム部材の熱伝導率は、160W/mKであった。
したがって、離型シートがC粒子を含むことにより、還元作用がより強く働き、熱伝導性の向上に寄与したことがわかる。
【0064】
(実施例11:三層構造シートのセラミック部材製造への適用)
実施例1-1に係るBN粒子とCNFを含むシートをそれぞれ外層とし、外層の間に実施例3-1に係るBN粒子、C粒子及びCNFを含むシートを中間層として挟み込んで三層構造とした離型シートを準備し、実施例9と同様にして、窒化ケイ素部材の焼成をおこなった。取り出した窒化ケイ素部材と治具の間、及び窒化ケイ素部材間には、BN層が形成され、癒着部位は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る離型シートは、BN粒子との結合性が高いCNFをバインダーとしているので、BN粒子の割合を多くして離型性を高めても、保形強度が高く薄い離型シートを提供することができる。したがって、本発明は、セラミック部材やプレス製品、鋳造製品等の製造時のスペースファクターを最小化して、製品と製造装置間又は製品同士の貼り付き防止や焼き付き防止に利用することができる。
また、本発明に係る離型シートは、BN粒子のバインダーとして、天然物由来のCNFを用い、水を分散媒としたスラリーを用いて作製することができる。したがって、本発明により環境負荷の少ない離型シートを製造することができる。
本発明に係る離型シートは、特に、C粒子を加えた離型シートとすることにより、還元性雰囲気を調整することができるので、窒化ケイ素や窒化アルミニウムのような非酸化物系セラミック部材の製造時に、焼成による部材と治具間、又は部材間の焼き付き防止に利用することができる。
図1
図2
図3