(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163542
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20241115BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079259
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】591195592
【氏名又は名称】大同化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 詩歩
(72)【発明者】
【氏名】浦松 俊治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC302
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD281
4C083AD282
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを併用する事に依り、疎水化変性アルキルセルロースを含む水溶液において、保存安定性を改善する事を提供する事を課題とする。
【解決手段】(1)疎水化変性アルキルセルロース、(2)シクロデキストリン、及び(3)水含む外用剤用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用剤用組成物であって、
(1)疎水化変性アルキルセルロース、
(2)シクロデキストリン、及び
(3)水を含み、
前記外用剤用組成物中の前記(1)疎水化変性アルキルセルロースと前記(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)は、
(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン
=1:0.1~1:20である、外用剤用組成物。
【請求項2】
前記(1)疎水化変性アルキルセルロースは、
下記構造式(1):
【化1】
[式中、R
1、R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、
基:-[CH
2CH
2-k(CH
3)
kO]
mH、又は、基:-CH
2CH(OH)CH
2OC
jH
2j+1である。
nは、100~10,000の整数を示す。kは、0又は1の整数を示す。
mは、1~10の整数を示す。jは、6~26の整数を示す。]
で表されるものであって、
前記疎水化変性アルキルセルロースは、前記基:-CH
2CH(OH)CH
2OC
jH
2j+1を含む、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【請求項3】
前記構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースは、
低級アルキル基:10.0質量%~50.0質量%、
基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mH:3.0~20.0質量%、及び
基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1:0.1~10.0質量%
を含む、請求項2に記載の外用剤用組成物剤。
【請求項4】
前記構造式(1)式に含まれる前記基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1のjの値は、18である、請求項2に記載の外用剤用組成物。
【請求項5】
前記シクロデキストリンは、シクロデキストリン、又はシクロデキストリン誘導体である、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【請求項6】
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンから成る群から選ばれる少なくとも1種のシクロデキストリンである、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【請求項7】
前記外用剤用組成物は、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で、60秒間回転させる事で測定した粘度が、5,000mPa・s以下である、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【請求項8】
前記外用剤は、皮膚外用剤、又はスキンケア化粧品である、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品に関する。
【背景技術】
【0002】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにアルキル基を導入したセルロースエーテルで、具体的な成分として分子中に疎水性のステアリル基を導入したステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロースがある。この成分は増粘性、界面活性効果、保湿性といった多様な機能性を示す成分(非特許文献1)である。
【0003】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、増粘剤として、医薬品、医薬部外品、及び化粧品のジェル製剤として配合されるだけでなく、界面活性を持つ事から、乳化剤、肌への付着性(なじみの良さ)の向上、難溶性成分の安定化、更には、塗布時のよれ防止、薬効成分の持続的な付着効果を付与する成分として活用がなされている(特許文献1~6)。
【0004】
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、シクロデキストリンと併用して温度感受性を持たせる成分として活用がなされている(特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大同化成工業株式会社ホームページ公開資料「化粧品・医薬部外品・多機能型セルロース導体 サンジェロース 2021年4月8日改訂 全46ページ」
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6866058号
【特許文献2】特開2021-001137号
【特許文献3】特開平09-087130号
【特許文献4】特許第6321105号
【特許文献5】特開2014-181181号
【特許文献6】特許第7239964号
【特許文献7】特許第6207291号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを併用する事に依り、疎水化変性アルキルセルロースを含む水溶液において、保存安定性を改善する事を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液は、40℃以上の高温度域において、析出分離が起こる事が知られている(非特許文献1、p8)。疎水化変性アルキルセルロース水溶液では、その析出分離を改善する為に、1,3-ブチレングリコール(BG)、プロピレングリコール(PG)等の多価アルコール類、エタノール等を配合する事が推奨されていた(非特許文献1、p8)。
【0009】
本明細書に表す検証において、低粘度製剤の疎水化変性アルキルセルロース水溶液は、析出の傾向が顕著に促進され、室温保管でも静置状態が継続すれば、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースの一部ゲル相が分離し沈殿を起こす事が分かった(表1、及び表2:比較例1、及び比較例2)。
【0010】
疎水化変性アルキルセルロース水溶液では、その分離を改善する為に、多価アルコールを配合する事が求められる。疎水化変性アルキルセルロース水溶液では、一方で、多価アルコール類を配合すると、べたつき等を引き起こし得る要因に成り、べたつきを求めない製剤においては感触面では劣り得る製剤と成る。
【0011】
また、多価アルコール類を配合し難い製剤では、疎水化変性アルキルセルロースの配合の制限を受け得る要因と成る。
【0012】
こうして、多価アルコールの配合に依存せず、低粘度製剤における疎水化変性アルキルセルロース水溶液の保存安定性の改善方法が求められている。
【0013】
本発明は、次の低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性製剤を包含する。本発明は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れた外用剤用組成物を包含する。
【0014】
項1.
外用剤用組成物であって、
(1)疎水化変性アルキルセルロース、
(2)シクロデキストリン、及び
(3)水を含み、
前記外用剤用組成物中の前記(1)疎水化変性アルキルセルロースと前記(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)は、
(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン
=1:0.1~1:20である、外用剤用組成物。
【0015】
項2.
前記(1)疎水化変性アルキルセルロースは、
下記構造式(1):
【0016】
【0017】
[式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、
基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mH、又は、基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1である。
【0018】
nは、100~10,000の整数を示す。kは、0又は1の整数を示す。
【0019】
mは、1~10の整数を示す。jは、6~26の整数を示す。]
で表されるものであって、
前記疎水化変性アルキルセルロースは、前記基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1を含む、前記項1に記載の外用剤用組成物。
【0020】
項3.
前記構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースは、
低級アルキル基:10.0質量%~50.0質量%、
基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mH:3.0質量%~20.0質量%、及び
基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1:0.1質量%~10.0質量%
を含む、前記項2に記載の外用剤用組成物剤。
【0021】
項4.
前記構造式(1)式に含まれる前記基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1の当該jの値は、18である、前記項2に記載の外用剤用組成物。
【0022】
項5.
前記シクロデキストリンは、シクロデキストリン、又はシクロデキストリン誘導体である、前記項1に記載の外用剤用組成物。
【0023】
項6.
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンから成る群から選ばれる少なくとも1種のシクロデキストリンである、前記項1に記載の外用剤用組成物。
【0024】
項7.
前記外用剤用組成物は、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で、60秒間回転させる事で測定した粘度が、5,000mPa・s以下である、前記項1に記載の外用剤用組成物。
【0025】
項8.
前記外用剤は、皮膚外用剤、又はスキンケア化粧品である、請求項1に記載の外用剤用組成物。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを併用する事に依り、低濃度疎水化変性アルキルセルロース水溶液の保存安定性を改善する事が出来る。
【0027】
本発明の外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良い。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0029】
本発明を表す実施の形態は、発明の趣旨がより良く理解できる説明であり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0030】
本明細書において、「含む」及び「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。
【0031】
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、「A以上、B以下」を意味する。
【0032】
本明細書において、一般に、部、%等の表示を使用する。
【0033】
本明細書において、特に断りがない限り、質量部又は質量%(wt%)を表す。
【0034】
[1]外用剤用組成物
本発明の外用剤用組成物は、外用剤に用いる為の組成物であり、少なくとも、(1)疎水化変性アルキルセルロース、(2)シクロデキストリン(CyD)、及び(3)水を含有する。
【0035】
外用剤は、使用者が使用する最終形態であり、外用剤用組成物を含むものを意味する。外用剤がクリーム等であれば、外用剤用組成物に、更に油相成分が含まれても良い。外用剤用組成物は、そのまま最終製品として流通され、使用される形態でも良く、外用剤が外用剤用組成物を100質量%含む使用形態であっても良い。その様な外用剤は、好ましくは、ゲル、ローション等の製剤である。
【0036】
本発明の外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを併用する事に依り、低濃度疎水化変性アルキルセルロース水溶液の保存安定性を改善する事が出来る。また、外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良く成る。
【0037】
1.(1)疎水化変性アルキルセルロース
本発明の外用剤用組成物は、(1)疎水化変性アルキルセルロースを含む。
【0038】
(1)疎水化変性アルキルセルロースは、セルロースエーテル誘導体に、疎水性基である長鎖アルキル基を導入したものである。
【0039】
疎水化変性アルキルセルロースは、好ましくは、下記構造式(1)で表されるものである。
【0040】
【0041】
式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、
基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mH、又は、基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1である。
【0042】
nは、100~10,000の整数を示す。
【0043】
kは、0又は1の整数を示す。
【0044】
mは、1~10の整数を示す。
【0045】
jは、6~26の整数を示す。
【0046】
疎水化変性アルキルセルロースは、好ましくは、基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1を含む。
【0047】
疎水化変性アルキルセルロースの基と成るセルロースエーテル誘導体の内、入手のし易さ等の点から、好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを選択する。
【0048】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、構造式(1)において、R1、R2及びR3が、同一又は異なって、-H、-CH3又は基:-[CH2CH(CH3)O]mHであり、基:-[CH2CH(CH3)O]mHを含むものである。
【0049】
疎水化変性アルキルセルロースは、HPMCに長鎖アルキル基を導入したものであり、例えば、アルカリ触媒の存在下で、HPMCに、ステアリルグリシジルエーテルを反応させる事で製造する事が出来る。
【0050】
【0051】
ステアリルグリシジルエーテルの他、セチルグリシジルエーテル及びデシルグリシジルエーテル等であっても良い。
【0052】
疎水化変性アルキルセルロースに導入される疎水基である基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1のCjH2j+1は、好ましくは、ステアリル基(-C18H37)である。
【0053】
基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1は、基:-CH2CH(OH)CH2O-C18H37となる疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの混ざりが良く、外用剤として使用した時のべたつき感がなく、皮膚への塗布が容易であり、使用感が良好である。
【0054】
構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースは、好ましくは、基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1を0.1質量%~10.0質量%含み、より好ましくは、0.1質量%~2.0質量%含み、更に好ましくは、0.1質量%~1.0質量%含む。疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの混ざりが良く、外用剤として使用した時のべたつき感がなく、皮膚への塗布が容易であり、使用感が良好である。
【0055】
構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースに含まれる低級アルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基等であり、より好ましくは、メチル基である。
【0056】
低級アルキル基は、これらの低級アルキル基を一種単独で含まれても良く、或は二種以上が混合して含まれても良い。
【0057】
構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースは、メチル基等の低級アルキル基を、好ましくは、10.0質量%~50.0質量%含み、より好ましくは、21.5質量%~30.0質量%含む。疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの混ざりが良く、外用剤として使用した時のべたつき感がなく、皮膚への塗布が容易であり、使用感が良好である。
【0058】
構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースに含まれる基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mHは、kが0の場合は、基:-[CH2CH2O]mHと成り、kが1の場合は、基:-[CH2CH(CH3)O]mHと成る。基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mHは、特に好ましくは、kが1の場合の基:-[CH2CH(CH3)O]mHである。
【0059】
構造式(1)で表される疎水化変性アルキルセルロースは、基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mHを、好ましくは、3.0質量%~20.0質量%含み、より好ましくは、7.0質量%~11.0質量%含む。疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの混ざりが良く、外用剤として使用した時のべたつき感がなく、皮膚への塗布が容易であり、使用感が良好である。
【0060】
外用剤用組成物は、セルロースエーテル誘導体に、特にステアリル基(-C18H37)等の長鎖アルキル基が導入された疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、好ましくは、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含む事で、外用剤用組成物の滑りが良く、延びが良いものと成る。また、外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良く成る。
【0061】
疎水化変性アルキルセルロースに含まれる低級アルキル基、基:-[CH2CH2-k(CH3)kO]mH、及び基:-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1の含有量は、第13改正日本薬局方「ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208」の項に準じた方法によって測定した値とする事が出来る。
【0062】
疎水化変性アルキルセルロースは、好ましくは、大同化成工業(株)社製の商品名:サンジェロース(R)を用いる。サンジェロース(R)(疎水化HPMC)は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)に、C18(疎水基)を付加させたセルロースエーテルであり、構造式(1)において、-CH2CH(OH)CH2OCjH2j+1のCjH2j+1がステアリル基(-C18H37)である。
【0063】
サンジェロース(R)は、以下のグレードの製品(表1)が使用可能である。
【0064】
【0065】
疎水化変性アルキルセルロースは、好ましくは、粉末状の成分である。
【0066】
粉末状の疎水化変性アルキルセルロースの平均粒径は、好ましくは、20μm~800μm程度であり、より好ましくは、50μm~600μm程度であり、更に好ましくは、80μm~300μm程度であり、特に好ましくは、100μm~200μm程度である。疎水化変性アルキルセルロースの平均粒径を前記範囲に調整する事で、溶媒(水)中に、疎水化変性アルキルセルロースを容易に溶解が可能である為、溶媒(水)中で、良好に、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンが包接複合体を形成する。溶媒(水)中に、疎水化変性アルキルセルロースを容易に溶解が可能である為、取り扱い中に飛散するのを防止し、取り扱いが容易である。
【0067】
外用剤用組成物が含む(1)疎水化変性アルキルセルロースの配合量は、外用剤用組成物全量に対して、好ましくは、0.01質量%~10質量%程度であり、より好ましくは、0.05質量%~5質量%程度であり、更に好ましくは、0.1質量%~2質量%程度であり、特に好ましくは、0.2質量%~1質量%程度である。外用剤用組成物が含む(1)疎水化変性アルキルセルロースの配合量は、外用剤用組成物全量に対して、例えば、0.01質量%~0.5質量%程度、0.01質量%~0.05質量%程度の低濃度の範囲で、低粘度の好ましい態様とする事が出来る。
【0068】
外用剤用組成物が含む(1)疎水化変性アルキルセルロースの配合量を調整する事に依り、外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良く成る。また、外用剤用組成物は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性を発揮する。外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0069】
2.(2)シクロデキストリン
本発明の外用剤用組成物は、(2)シクロデキストリンを含む。
【0070】
シクロデキストリン(CyD)は、グルコピラノース単位から成るα-1,4結合の環状オリゴ糖である(第8版食品添加物公定書)。
【0071】
シクロデキストリンは、好ましくは、シクロデキストリン、又はシクロデキストリン誘導体である。
【0072】
シクロデキストリンは、好ましくは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンから成る群から選ばれる少なくとも1種のシクロデキストリンである。
【0073】
α-シクロデキストリン(α-CyD)は、6個のグルコースの単位からなる環状オリゴ糖である。β-シクロデキストリン(β-CyD)は、7個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。γ-シクロデキストリン(γ-CyD)は、8個のグルコース単位からなる環状オリゴ糖である。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンは、デンプンを酵素処理し、非還元性環状デキストリンとして得ることができる。
【0074】
外用剤用組成物において、シクロデキストリンは、これらのシクロデキストリンを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0075】
シクロデキストリンは、外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みを維持する事が出来る点から、好ましくは、β-シクロデキストリンである。
【0076】
シクロデキストリンとして、シクロデキストリン誘導体を使用しても良い。シクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリンを構成するグルコース分子中の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子の一部又は全てが、他の官能基で置換された化合物である。
【0077】
他の官能基は、適度な界面活性作用を有する点から、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数1~4のヒドロキシアルキル基から選ばれる少なくとも1種の基である。
【0078】
炭素数1~4のアルキル基は、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等のアルキル基である。
【0079】
炭素数1~4のヒドロキシアルキル基は、好ましくは、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ジヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシイソブチル基、ジヒドロキシメチル基、2,2-ジヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基である。
【0080】
シクロデキストリン誘導体では、炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数1~4のヒドロキシアルキル基は、これらの炭素数1~4のアルキル基、及び炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を一種単独で含まれても良く、或は二種以上が混合して含まれても良い。
【0081】
シクロデキストリン誘導体は、好ましくは、シクロデキストリンを構成するグルコース分子中の2位、3位、及び6位の水酸基の水素原子の一部、又は全てが、炭素数1~2のアルキル基、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基等の基で置換されているシクロデキストリンである。
【0082】
分子内に炭素数1~4のアルキル基を少なくとも一つ有するシクロデキストリン誘導体は、好ましくは、メチル化α-シクロデキストリン、メチル化β-シクロデキストリン、メチル化γ-シクロデキストリン、ジメチル-α-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、ジメチル-γ-シクロデキストリン等である。
【0083】
分子内に炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を少なくとも一つ有するシクロデキストリン誘導体は、好ましくは、ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリン等である。
【0084】
シクロデキストリン誘導体は、好ましくは、シクロデキストリンの分子内に、親水性の置換基である炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を、少なくとも一つ有するシクロデキストリン誘導体であり、より好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、2-ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-α-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン等である。
【0085】
外用剤用組成物において、シクロデキストリン誘導体は、これらのシクロデキストリン誘導体を一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0086】
外用剤用組成物が含むシクロデキストリン誘導体は、特に好ましくは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、2-ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリン等である。疎水化変性アルキルセルロース等の他の成分との混合し易く、外用剤として使用した時のべたつき感がなく、皮膚への塗布が容易である。
【0087】
シクロデキストリン誘導体は、好ましくは、β-シクロデキストリンの2位、3位及び/又は6位に、ヒドロキシブチルを導入したヒドロキシブチル-β-シクロデキストリンである。ヒドロキシブチル-β-シクロデキストリンは、ヒドロキシブチル基がランダムに複数個導入された誘導体であり、この様な誘導体は、精製が容易である。
【0088】
ヒドロキシブチル基を導入したシクロデキストリン誘導体は、皮膚への刺激性が低く、製造コストや安全性等の観点から望ましい。
【0089】
シクロデキストリン、及びシクロデキストリン誘導体の薬理的に許容される塩類は、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等である。
【0090】
シクロデキストリン1分子当たりに結合している他の官能基の総数を置換度と称する。好ましい置換度は、好ましくは、1~14であり、より好ましくは、3~10であり、更に好ましくは、3~8である。
【0091】
外用剤用組成物が含む(2)シクロデキストリンの配合量は、外用剤用組成物全量に対して、好ましくは、0.1質量%~20質量%程度であり、より好ましくは、0.2質量%~18質量%程度であり、更に好ましくは、0.2質量%~15質量%程度であり、特に好ましくは、0.2質量%~12質量%程度である。
【0092】
外用剤用組成物が含む(2)シクロデキストリンの配合量を調整する事に依り、外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みを維持する事が出来る。また、外用剤用組成物は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性を発揮する。外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0093】
3.(3)水
本発明の外用剤用組成物は、(3)水を含む。
【0094】
本発明の外用剤用組成物は、皮膚外用剤、又はスキンケア化粧品の使用態様に合わせて、適量の水を含む。
【0095】
4.(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)
本発明の外用剤用組成物は、外用剤用組成物中の(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)として、肌馴染みが良く成る点から、
(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン
=1:0.1~1:20である。
【0096】
つまり、外用剤用組成物は、(1)疎水化変性アルキルセルロースが1質量部に対して、(2)シクロデキストリンを0.1質量部~20質量部含む。
【0097】
外用剤用組成物中の(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)として、
(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン
=1:0.1~1:20であり、
好ましくは、1:0.2~1:20であり、
より好ましくは、1:0.5~1:20であり、
更に好ましくは、1:1~1:20である。
【0098】
外用剤用組成物中の(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合比(質量部)は、好ましくは、(1)疎水化変性アルキルセルロースに比べて、(2)シクロデキストリンを多く配合する。
【0099】
外用剤用組成物は、(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合量を調整する事に依り、包接複合体を形成し、化粧品に適用すると、肌馴染みが良い。また、シクロデキストリンの配合量を上記範囲に調整する事で、塗布した時の肌馴染みを維持する事が出来る。
【0100】
外用剤用組成物は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性を発揮する。外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0101】
外用剤用組成物は、(1)疎水化変性アルキルセルロース(-C18H37基、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース等)に、(2)シクロデキストリン(HP-β-CD等)
を組み合わせて使用する事で、疎水化変性アルキルセルロースの析出に因る濁りの発生を抑え、外用剤用組成物の高温安定性が改善する。
【0102】
外用剤用組成物は、シクロデキストリンの配合濃度を高める事で、疎水化変性アルキルセルロースの析出、疎水化変性アルキルセルロースの分離が無く、外用剤用組成物の透明性が維持される。
【0103】
外用剤用組成物は、特に、(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン=1:0.5~1:20から、それら効果がより顕著に表れる。
【0104】
外用剤用組成物は、シクロデキストリンを配合する事で、外用剤用組成物の粘度を下げる傾向が有る。
【0105】
5.(4)多価アルコール
本発明は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る外用剤組成物(保存安定性製剤)である。
【0106】
外用剤組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0107】
外用剤組成物は、多価アルコールの配合に依存せず、低粘度製剤における疎水化変性アルキルセルロース水ス溶液の保存安定性が優れている。
【0108】
外用剤用組成物は、外用剤として用いた時の物性を滑らかにする目的、製品の安定性の点から、更に、(4)多価アルコールを配合しても良い。
【0109】
多価アルコールは、好ましくは、炭素数2~6で酸素数2~3の多価アルコールを用いる。
【0110】
多価アルコールは、好ましくは、グリセリン、マンニトール、ソルビトール等を用いる。
【0111】
多価アルコールは、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンチレングリコール(1,2-ペンタンジオール)、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、2,2'-オキシジエタノール等のジオール類等を用いる。
【0112】
外用剤用組成物において、多価アルコールは、これらの多価アルコールを一種単独で用いても良く、或は二種以上を混合(ブレンド)して用いても良い。
【0113】
外用剤用組成物が含む(4)多価アルコールの配合量は、外用剤用組成物全量に対して、好ましくは、0.1質量%~20質量%程度であり、より好ましくは、0.5質量%~18質量%程度であり、更に好ましくは、1質量%~16質量%程度であり、特に好ましくは、1質量%~14質量%程度である。
【0114】
外用剤組成物は、多価アルコールの配合に依存せず、低粘度製剤における疎水化変性アルキルセルロース水溶液の保存安定性が優れている。
【0115】
外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良い。
【0116】
外用剤用組成物は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性を発揮する。外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0117】
6.その他の成分
本発明の外用剤用組成物は、外用剤として使用した時のべたつき感が無い事、皮膚への塗布の容易さ、使用感が良い事等の効果を補う、又は増強する事を目的として、更に脂肪酸及び/又はその塩(以下、「脂肪酸(塩)」とも記す)を配合しても良い。
【0118】
脂肪酸(塩)は、好ましくは、粉末状の成分である。脂肪酸(塩)は、外用剤用組成物中で均一に分散されるので、外用剤として肌表面に塗布される際に、ざらつき等の使用感を損なう事を防ぐ事が可能である。脂肪酸(塩)は、取り扱い中に飛散するのを防止し、取り扱いが容易である。
【0119】
脂肪酸(塩)は、外用剤(例えば、化粧料等)で使用できるものであれば、特段の限定無く使用できる。脂肪酸(塩)は、例えば、第十六改正日本薬局方解説書に記載の、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム(以下、ステアリン酸及び/又はその塩(以下、「ステアリン酸(塩)」とも記す))を使用することができる。その他にも、ステアリン酸ナトリウム等を使用する事が出来る。
【0120】
本発明の外用剤用組成物は、炭化水素、液体油脂、固体油脂、ロウ類、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤等を含んでも良い。
【0121】
炭化水素は、例えば、スクワラン、流動パラフィン等である。
【0122】
液体油脂は、例えば、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等である。
【0123】
固体油脂は、ヤシ油、パーム油、シア脂等である。
【0124】
ロウ類は、例えば、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン等である。
【0125】
高級アルコールは、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール等である。
【0126】
合成エステル油は、例えば、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等である。
【0127】
シリコーン油は、例えば、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性ポリシロキサン等である。
【0128】
親油性非イオン界面活性剤は、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノステアレート等である。
【0129】
親水性非イオン界面活性剤は、例えば、モノステアリン酸デカグリセリル、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-ソルビタンテトラオレエート、POE-ベヘニルエーテル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等である。
【0130】
陰イオン界面活性剤は、例えば、ステアリン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等である。
【0131】
陽イオン界面活性剤は、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベンザルコニウム等である。
【0132】
両性界面活性剤は、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等である。
【0133】
低級アルコールは、例えば、エタノール、イソプロパノール等である。
【0134】
水溶性高分子は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等である。
【0135】
金属イオン封鎖剤は、例えば、エデト酸二ナトリウム等である。
【0136】
本発明の外用剤用組成物は、粉末成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機アミン、防腐剤(フェノキシエタノール、グリセリンエチルヘキシルエーテル、メチルパラベン等)、殺菌剤、消炎剤、収れん剤、美白剤、ビタミン類、アミノ酸、血行促進剤、賦活剤、賦形剤(マルチトール、乳糖、デキストリン、デンプン等)、清涼剤、各種抽出物、香料等を含んでも良い。
【0137】
[2]皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、本発明の外用剤用組成物を含む。
【0138】
皮膚外用剤は、外用剤用組成物を100質量%含む使用形態であっても良い。本発明の外用剤が前記外用剤用組成物を100質量%含む使用形態である場合、外用剤中の疎水化変性アルキルセルロース、シクロデキストリン等の含有量は、外用剤用組成物の使用態様を適用する事が出来る。
【0139】
皮膚外用剤は、外用剤用組成物に、更に、香料、pH調整剤等を配合しても良い。皮膚外用剤は、外用剤用組成物の項目で記した、多価アルコール、液体油脂、固体油脂、ロウ類、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、低級アルコール、水溶性高分子、金属イオン封鎖剤、その他の粉末成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、有機アミン、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、収れん剤、美白剤、ビタミン類、アミノ酸、血行促進剤、賦活剤、賦形剤、清涼剤、各種抽出物、香料、水等を、適量添加しても良い。
【0140】
皮膚外用剤は、一般的に用いられる外用基剤、油脂類、保湿剤、安定剤、安定化剤、色素や香料、清涼剤、増粘剤、酸化防止剤等の成分を配合しても良い。
【0141】
外用基剤は、例えば、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、中鎖脂肪酸トリグリセリド等である。
【0142】
保湿剤は、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、コレステロールプルラン等である。
【0143】
安定剤、及び安定化剤は、例えば、EDTA、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L-アルギニン、トコフェノール、シリコーン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等である。
【0144】
防腐剤は、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ソルビン酸、フェノール、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0145】
清涼剤は、例えば、カンフル、メントール、植物抽出フレーバー等である。
【0146】
増粘剤は、例えば、アラビアゴム、グアガム、カラギーナン、カルボキシビニルポリマー、セルロース、ポリアクリル酸塩等である。
【0147】
酸化防止剤は、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、天然型ビタミンE等である。
【0148】
美白剤は、例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸及びその誘導体等である。
【0149】
紫外線吸収剤は、例えば、オクチルメトキシシンナメート等である。
【0150】
皮膚外用剤が外用剤用組成物を含み、更に任意の成分を含む場合であっても、皮膚外用剤中の疎水化変性アルキルセルロース、シクロデキストリン等の含有量は、好ましくは、外用剤用組成物の使用態様を適用する。
【0151】
皮膚外用剤の使用部位は、制限は無く、ボディ用外用剤(スキンケア化粧料)として用いて、アトピー性皮膚炎、切創、擦過創、熱傷、ひび割れ、乾燥肌等に対して使う事も可能である。
【0152】
皮膚外用剤を直接的に作用し効果を高める部位に使用する。
【0153】
外用剤皮膚に塗布する事で、皮膚の保湿性を高めるができる。
【0154】
皮膚外用剤の使用方法は、例えば、通常の使用方法としては、ヒト皮膚に塗布し、健常人或いは、肌荒れ、湿疹、かゆみ、ただれ等の症状を有するヒトの患部の全体を覆う様に広げて、症状に応じて可能であれば軽く刷り込む。
【0155】
皮膚外用剤は、塗布後のベタツキ感或いはてかりがなく、皮膚を保護する効果及び皮膚の保湿性を有し、しかも皮膚に対する刺激感が低く、安定性も良好である。
【0156】
本発明の外用剤とは、臨床用の治療用製剤としても使用可能なものである。
【0157】
[3]スキンケア化粧品
本発明のスキンケア化粧品は、本発明の外用剤用組成物(皮膚外用剤)を含む。
【0158】
本発明の外用剤組成物の剤型は、皮膚外用基剤を用いて、適当な剤型にする事が出来、剤型は、好ましくは、液状、ペースト状、クリーム状、固体状等である。
【0159】
スキンケア化粧品は、好ましくは、ファンデーション、保湿クリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム、マッサージ料等である。
【0160】
スキンケア化粧品は、ボディ用外用剤として、ローション、乳液、クリーム、軟膏、シート状等の剤形での使用が可能である。
【0161】
スキンケア化粧品は、パック化粧料として、皮膚を覆う事も可能である。
【0162】
外用剤用組成物(皮膚外用剤)は、メイクアップ組成物として用い、ボディメイクアップ製品を製造する事も可能である。
【0163】
スキンケア化粧品は、化粧水、美容液、パック、マスカラ、アイライナー、アイシャドー、ファンデーション、紫外線ケア用化粧品等の化粧品に配合する事も可能である。
【0164】
スキンケア化粧品は、リップスティック、リップクリーム、リップグロス、リップペンシル、口紅、リップトリートメント等の口唇用化粧料(リップ製品)に配合する事も可能である。
【0165】
スキンケア化粧品は、アイペンシル、まゆ毛メイクアップ製品等に配合する事も可能である。
【0166】
スキンケア化粧品は、ネイルワニス、ネイルケア製品等のネイル用製品等に配合する事も可能である。
【0167】
[4]外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の製造方法
本発明の外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、(1)疎水化変性アルキルセルロース、(2)シクロデキストリン、及び(3)水を含み、水等の溶媒に、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを添加し、溶解する事に依り、製造する事が出来る。
【0168】
疎水化変性アルキルセルロースは、水、含水メタノール、含水エタノール、含水イソプロピルアルコール等の含水アルコールには溶ける。
【0169】
シクロデキストリンの水への溶解度は25℃で、1g/100mL~30g/100mL程度である。
【0170】
水等の溶媒中で、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとが包接複合体を形成する。
【0171】
外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、水等の溶媒(水溶液)中で、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとが包接複合体を形成する事に依って、保存性に優れ、容易に皮膚に塗布する事が出来る。
【0172】
外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、好ましくは、水等の溶媒に、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとを添加し、加温下で、よく混和した後、室温まで放冷する事で製造する。外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、必要に応じて、放冷過程で適宜・適切に混合・攪拌する事で製造する。
【0173】
混和する溶媒は、好ましくは、水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等であり、より好ましくは、水である。外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、皮膚への塗布が容易であり、使用感が良好である。
【0174】
水、エタノール、又はプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の溶媒100質量部に対して、疎水化変性アルキルセルロースを0.1質量%~10質量%程度、シクロデキストリンを0.1質量%~20質量%程度添加して、混和することが好ましい。その他の成分は、適宜混和することができる。
【0175】
外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依る保存安定性を発揮する。外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0176】
外用剤用組成物を化粧品に適用すると、肌馴染みが良い。
【0177】
[5]外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の粘度
本発明の外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品は、(1)疎水化変性アルキルセルロース、(2)シクロデキストリン、及び(3)水を含み、B型粘度計で、25℃、60rpmの条件下で、60秒間回転させる事で測定した粘度が、好ましくは、5,000mPa・s以下であり、より好ましくは、1,000mPa・s以下であり、更に好ましくは、500mPa・s以下である。
【0178】
B型粘度計のローターは任意の物を使用する事が出来、例えば、外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の粘度が、5,000mPa・s以下となる場合、B型粘度計のローターNo.2を使用し、6rpm回転、60秒間の条件で、粘度を測定する事が出来る。外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の粘度が、1,000mPa・s以下となる場合、B型粘度計のローターNo.2を使用し、30rpm回転、60秒間の条件で、粘度を測定する事が出来る。外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の粘度が、500mPa・s以下となる場合、B型粘度計のローターNo.2を使用し、60rpm回転、60秒間の条件で、粘度を測定する事が出来る。
【0179】
外用剤用組成物、皮膚外用剤、及びスキンケア化粧品の粘度を上記範囲に調整する事で、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、保存安定性が良く、肌に塗布した時の肌馴染みが良く成る。
【実施例0180】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。
【0181】
本発明は、以下の具体的な実施例に限定されない。
【0182】
[1]保存安定性の検証
表2、及び表3では、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースと2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとの配合比に依り、保存安定性を検証した。
【0183】
成分(1):疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サンジェロース(R)60L(大同化成工業製)
成分(2):1,2-ペンタンジオール、HYDROLITE(R)-5GREEN(シムライズ社製)
成分(3):2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、セルデックスHP-β-CD(日本食品化工社製)
成分(4):水
(製造方法)
常温で、成分(2)に成分(1)を分散させ、攪拌しながら、常温の成分(4)に投入し、溶解させる。
【0184】
次いで、成分(3)を加え攪拌溶解し、製剤を得る。
【0185】
(判定方法及び判定基準)
得られた製剤を50℃の恒温室で保管し、一定期間後(3日後、7日後、及び14日後)の外観を目視で検査した。
【0186】
50℃の恒温室での保管品を、室温保管品(3日後、7日後、及び14日後)と比較し、下記の判定基準を用いて、判定を行った。
【0187】
○:50℃の恒温室での製剤保管品は、室温保管品と比べて、変化無しであり、良好な製品である。
【0188】
△:50℃の恒温室での製剤保管品は、室温保管品と比べて、僅かに、白濁、澱、ゲルの析出が生じたが、許容出来る製品である。
【0189】
×:50℃の恒温室での製剤保管品は、室温保管品と比べて、明らかに、白濁、澱、ゲルの析出が生じた。
【0190】
(評価結果)
表2、及び表3に示す結果から、本発明の製剤(実施例1~実施例14)は、50℃保管品の安定性が、比較品(シクロデキストリンの配合無し)に比べて、優れるものであった。
【0191】
本発明の製剤は、50℃保管品の安定性は、疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)とシクロデキストリン(2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、HP-β-CD)との配合比(質量部)が、(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン=1:0.1から効果が確認された。
【0192】
本発明の製剤は、50℃保管品の安定性は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの配合比(質量部)が、(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン=1:0.5から顕著な効果が確認され、1:1以上では更に顕著な効果が確認された。
【0193】
本発明の製剤は、疎水化変性アルキルセルロースとシクロデキストリンとの配合比が、(1)疎水化変性アルキルセルロース:(2)シクロデキストリン=1:0.1から、粘度低下が確認された。製剤は、シクロデキストリンの配合比が増大するに従って、更に低粘度の製剤と成り、製剤の保存安定性は保たれたままであった。
【0194】
本発明の製剤は、疎水化変性アルキルセルロースを含み、シクロデキストリンを配合する事で、疎水化変性アルキルセルロースに因る濁りの発生を抑え、製剤の高温安定性が改善された。
【0195】
本発明の製剤は、シクロデキストリンの配合濃度を高める事で、疎水化変性アルキルセルロースの析出、疎水化変性アルキルセルロース分離が無く、透明性が維持された。
【0196】
本発明の製剤は、疎水化変性アルキルセルロースを含み、シクロデキストリンを配合する事で、粘度が下がる傾向である。
【0197】
本発明の製剤は、疎水化変性アルキルセルロースを含み、シクロデキストリンを配合する事で、肌馴染みを維持する事が出来た。
【0198】
【0199】
【0200】
[2]皮膚用化粧水の保存安定性効果
表4では、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、或は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンとを配合した皮膚用化粧水の保存安定性を検証した。
【0201】
成分(1):水
成分(2):クエン酸
成分(3):クエン酸Na
成分(4):プロパンジオール、Zemea Select Propanediol(DuPont社製)
成分(5):1,2-ペンチレングリコール、HYDROLITE(R)-5GREEN(シムライズ社製)
成分(6):疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、サンジェロース(R)60L(大同化成工業製)
成分(7-1):α-シクロデキストリン、セルデックスA-100(日本食品化工社製)
成分(7-2):β-シクロデキストリン、セルデックスB-100(日本食品化工社製)
成分(7-3):2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、セルデックスHP-β-CD(日本食品化工社製)
(製造方法)
成分(1)に、成分(2)、成分(3)、及び成分(4)を加えて、常温で、攪拌溶解した(A)。
【0202】
次いで、成分(5)に、成分(6)を加えて分散させ、得られた(A)を、攪拌しながら加え、溶解した。
【0203】
次いで、成分(7)((7-1)、(7-2)、及び(7-3))を加え、攪拌溶解させ、製剤を得た。
【0204】
(判定方法および判定基準)
得られた製剤を、50℃の恒温室で保管し、14日後の外観を目視で検査した。
【0205】
得られた製剤を、室温保管品は、60日後の外観を目視で検査した。
【0206】
50℃の恒温室で保管品、或は室温保管品を、保管初期と比較し、下記の判定基準を用いて、判定を行った。
【0207】
○:50℃の恒温室で保管品、或は室温保管品は、保管初期と比べて、変化なしであり、良好な製品である。
【0208】
△:50℃の恒温室で保管品、或は室温保管品は、保管初期と比べて、僅かに白濁、澱、ゲルの析出が生じたが、許容出来る製品である。
【0209】
×:50℃の恒温室で保管品、或は室温保管品は、保管初期と比べて、明らかに白濁、澱、ゲルの析出が生じた。
【0210】
(評価結果)
表4に示す結果から、本発明の製剤(実施例15~実施例20)は、室温保管品、及び50℃保管品の安定性が、比較品(シクロデキストリンの配合無し)に比べて、優れるものであった。
【0211】
本発明の製剤は、シクロデキストリンは、αタイプに比べて、βタイプのシクロデキストリンを配合する事に依り、保存安定性の効果により優れていた。
【0212】
本発明の製剤は、更に、シクロデキストリンは、βタイプに比べて、ヒドロキシプロピル基を付加した2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを配合する事に依り、保存安定性の効果により優れていた。
【0213】
本発明の製剤は、疎水化変性アルキルセルロースを含み、シクロデキストリンを配合する事で、肌馴染みを維持する事が出来、特に、皮膚用化粧水として有用であった。
【0214】
【0215】
[3]産業上の利用可能性
本発明の外用剤用組成物は、低粘度疎水化変性アルキルセルロース(疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース)水溶液において、シクロデキストリンの配合に依り、保存安定性に優れる製剤である。本発明の外用剤用組成物は、疎水化変性アルキルセルロースの水への溶解性を改善し、保存安定性に優れる。
【0216】
本発明の外用剤用組成物は、(1)疎水化変性アルキルセルロースと(2)シクロデキストリンとの配合量を調整する事に依り、化粧品に適用すると、肌馴染みが良い。
【0217】
本発明の外用剤用組成物は、多価アルコールの配合に依存せず、低粘度製剤における疎水化変性アルキルセルロース水溶液の保存安定性が良好である。