(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163546
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】含液廃棄物の乾燥方法及び含液廃棄物乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 17/20 20060101AFI20241115BHJP
F26B 5/04 20060101ALI20241115BHJP
F26B 25/22 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
F26B17/20 B
F26B5/04
F26B25/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079266
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】503446992
【氏名又は名称】誠南工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】薮田 勇気
(72)【発明者】
【氏名】亀井 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】飯田 克己
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA06
3L113AB02
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC23
3L113AC58
3L113AC67
3L113BA36
3L113CA02
3L113CA04
3L113CB02
3L113CB13
3L113CB29
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】含液廃棄物の含液率を制御することができる含液廃棄物の乾燥方法を提供すること。
【解決手段】含液廃棄物の乾燥方法が実施される含液廃棄物乾燥装置1は、含液廃棄物を乾燥させる円筒体の乾燥炉10と、乾燥炉10内を減圧するとともに乾燥炉10内の気体を吸引する吸引ポンプ30とを備える。乾燥炉10には、乾燥炉10内で含液廃棄物を撹拌するパドルミキサ型の撹拌翼20と、撹拌翼20を回転させる回転モータ25とが設けられている。含液廃棄物乾燥装置1による乾燥方法は、回転モータ25の電流値によって、含液廃棄物の含液率が把握され、含液廃棄物の乾燥が制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な乾燥炉と、該乾燥炉内を撹拌する撹拌翼と、該撹拌翼を回転させる回転モータと、該乾燥炉内の気体を吸引する吸引ポンプと、を備える含液廃棄物乾燥装置、を用いて該乾燥炉内に収容された含液廃棄物を乾燥させる乾燥方法であって、
該乾燥炉は、横置きの円筒体であり、
該撹拌翼は、該円筒体の中心軸に沿って回動軸が配置され、
該回転モータの電流値によって、該含液廃棄物の含液率が把握され、該含液廃棄物の乾燥が制御される、
ことを特徴とする含液廃棄物の乾燥方法。
【請求項2】
前記乾燥炉は、空気が遮断された状態で加熱されることを特徴する請求項1に記載の含液廃棄物の乾燥方法。
【請求項3】
前記吸引ポンプは、循環水の流れを利用して減圧状態を作り出して前記乾燥炉内の前記気体を吸引するエジェクターであり、
該気体を該循環水に溶解させる、ことを特徴とする請求項1に記載の含液廃棄物の乾燥方法。
【請求項4】
前記乾燥炉は、該乾燥炉を加温する加温ジャケットに覆われ、加温されることを特徴とする請求項1に記載の含液廃棄物の乾燥方法。
【請求項5】
前記乾燥炉は、含液廃棄物の含液率が下がるにつれて段階的にプーリー比を小さくすることにより該含液廃棄物の乾燥が制御される、ことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の含液廃棄物の乾燥方法。
【請求項6】
密閉可能な乾燥炉と、該乾燥炉内を撹拌する撹拌翼と、該撹拌翼を回転させる回転モータと、該乾燥炉内の気体を吸引する吸引ポンプと、を備える含液廃棄物乾燥装置であって、
該乾燥炉は、横置きの円筒体であり、
該撹拌翼は、該円筒体の中心軸に沿って回動軸が配置され、
該回転モータの電流値によって、該含液廃棄物の乾燥が制御される、
ことを特徴とする含液廃棄物乾燥装置。
【請求項7】
前記乾燥炉は、空気が遮断された状態で加熱されることを特徴とする請求項6に記載の含液廃棄物乾燥装置。
【請求項8】
前記撹拌翼は、前記回転軸の半径方向に、先端に扇状に末端が拡がったブレードを備える回転羽根が設けられ、該ブレードの末端は、鋸歯状のものと平坦状のものとが用いられている、ことを特徴とする請求項6に記載の含液廃棄物乾燥装置。
【請求項9】
前記乾燥炉は、含液廃棄物の含液率が下がるにつれて段階的にプーリー比を小さくすることにより該含液廃棄物の乾燥が制御される、ことを特徴とする請求項6~8の何れかに記載の含液廃棄物乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、生ゴミや糞尿などの含液廃棄物の乾燥方法及び含液廃棄物乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含液廃棄物の乾燥方法として、含液廃棄物を、撹拌しながら真空吸引することにより減圧乾燥させる方法が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された含液廃棄物の乾燥方法では、含液廃棄物を乾燥させることはできるものの、含液率を把握しながら乾燥させることができるものではなく、含液廃棄物の含液率が制御されているものではなかった。このため、含液廃棄物の含液率を制御することができる乾燥方法が望まれていた。
【0005】
本明細書の技術は、上記にかんがみて、含液廃棄物の含液率を制御することができる含液廃棄物の乾燥方法及び含液廃棄物乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る含液廃棄物の乾燥方法は、密閉可能な乾燥炉と、該乾燥炉内を撹拌する撹拌翼と、該撹拌翼を回転させる回転モータと、該乾燥炉内の気体を吸引する吸引ポンプと、を備える含液廃棄物乾燥装置、を用いて該乾燥炉内に収容された含液廃棄物を乾燥させる乾燥方法であって、
該乾燥炉は、横置きの円筒体であり、
該撹拌翼は、該円筒体の中心軸に沿って回動軸が配置され、
該回転モータの電流値によって、該含液廃棄物の含液率が把握され、該含液廃棄物の乾燥が制御される、
ことを特徴とする。
【0007】
実施形態に係る含液廃棄物の乾燥方法によれば、乾燥炉内に収容された含液廃棄物は、撹拌翼の回転羽根で撹拌されることにより、含液廃棄物に含まれる水などの液体が気体となって揮発し、液体が揮発した気体が吸引ポンプに吸引されるため、乾燥が促進される。含液廃棄物の乾燥は、回転モータの電流値によって、含液廃棄物の含液率が把握されるため、含液廃棄物の含液率を制御することができる。
【0008】
ここで、上記含液廃棄物の乾燥方法において、前記乾燥炉は、空気が遮断された状態で加熱される構成とすることができる。
【0009】
また、上記含液廃棄物の乾燥方法において、前記吸引ポンプは、循環水の流れを利用して減圧状態を作り出して前記乾燥炉内の前記気体を吸引するエジェクターであり、
該気体を該循環水に溶解させる構成とすることができる。
【0010】
これによれば、含液廃棄物から発生する気体に含まれるアンモニアガスなどの悪臭成分を循環水に溶解させることができ、含液廃棄物の乾燥における臭いの発生が抑制される。
【0011】
また、上記含液廃棄物の乾燥方法において、前記乾燥炉は、該乾燥炉を加温する加温ジャケットに覆われ、加温される構成とすることができる。
【0012】
これによれば、乾燥炉内の含液廃棄物の乾燥を促進させることができる。
【0013】
また、上記含液廃棄物の乾燥方法において、前記乾燥炉は、含液廃棄物の含液率が下がるにつれて段階的にプーリー比を小さくすることにより該含液廃棄物の乾燥が制御される構成とすることができる。
【0014】
これによれば、乾燥炉内の含液廃棄物の含液率の制御性を向上させることができる。
【0015】
ここで、実施形態に係る含液廃棄物乾燥装置は、密閉可能な乾燥炉と、該乾燥炉内を撹拌する撹拌翼と、該撹拌翼を回転させる回転モータと、該乾燥炉内の気体を吸引する吸引ポンプと、を備える含液廃棄物乾燥装置であって、
該乾燥炉は、横置きの円筒体であり、
該撹拌翼は、該円筒体の中心軸に沿って回動軸が配置され、
該回転モータの電流値によって、該含液廃棄物の乾燥が制御される、
ことを特徴とする。
【0016】
実施形態に係る含液廃棄物乾燥装置によれば、乾燥炉内に収容された含液廃棄物は、撹拌翼の回転羽根で撹拌されることにより、含液廃棄物に含まれる水などの液体が気体となって揮発し、液体が揮発した気体が吸引ポンプに吸引されるため、乾燥が促進される。含液廃棄物の乾燥は、回転モータの電流値によって、含液廃棄物の含液率が把握されるため、含液廃棄物の含液率を制御することができる。
【0017】
また、上記含液廃棄物乾燥装置において、前記撹拌翼は、前記回転軸の半径方向に、先端に扇状に末端が拡がったブレードを備える回転羽根が設けられ、該ブレードの末端は、鋸歯状のものと平坦状のものとが用いられている構成とすることができる。
【0018】
これによれば、撹拌翼は、含液廃棄物の撹拌効率を高めることができる。
【0019】
また、上記含液廃棄物乾燥装置において、前記乾燥炉は、含液廃棄物の含液率が下がるにつれて段階的にプーリー比を小さくすることにより該含液廃棄物の乾燥が制御される構成とすることができる。
【0020】
これによれば、乾燥炉内の含液廃棄物の含液率の制御性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
実施形態の含液廃棄物の乾燥方法によれば、含液廃棄物の含液率を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態の含液廃棄物の乾燥方法が実施される含液廃棄物乾燥装置の概念図である。
【
図2】同含液廃棄物乾燥装置の乾燥炉の背面図である。
【
図5】同撹拌翼の平面図(A)、その正面図(B)である。
【
図6】実施例1の鶏糞の含液率に対する回転モータの電流値を示すグラフを示す図である。
【
図7】実施例2の鶏糞の含液率に対する回転モータの電流値を示すグラフを示す図である。
【
図8】回転伝達軸の断面図であり、(A)はプーリー比1:5、(B)はプーリー比1:3の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、実施形態の含液廃棄物の乾燥方法について説明する。
図1に示すように、実施形態の含液廃棄物の乾燥方法が実施される含液廃棄物乾燥装置1は、含液廃棄物を乾燥させる円筒体の乾燥炉10と、乾燥炉10内の気体を吸引する吸引ポンプ30とを備え、実質的に密閉系で接続されている。円筒体の乾燥炉10には、乾燥炉10内で含液廃棄物を撹拌するパドルミキサ型の撹拌翼20と、撹拌翼20を回転させる回転モータ25とが備えられている。吸引ポンプ30は、ベンチュリ効果によって乾燥炉10内の気体を吸引するエジェクター31であり、エジェクター31には、ベンチュリ効果を発揮させる循環水路32が備えられている。なお、本明細書において、乾燥炉10の向きを表す際は、
図2又は
図3に示すように、円筒体の乾燥炉10の円筒の軸方向を前後方向とし、投入口11を有する側を前とし、回転モータ25を有する側を後とする。上下左右は、乾燥炉10を前側から見た際の上下左右とし、図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、撹拌翼20の回動などの円周の方向は、乾燥炉10を前側から見た際の方向(時計回り方向など)とする。
【0024】
実施形態の含液廃棄物の乾燥方法によって、乾燥させる含液廃棄物は、乾燥させることによって、燃料、堆肥、土壌改良剤などとして再利用が可能なものである。再利用可能な含液廃棄物として、畜糞(牛糞、豚糞、鶏糞)、生ごみ、農作物非食部分、肉畜非食部分、その他動植物性残渣物等の有機廃棄物の他に、余剰汚泥、消化汚泥、脱水汚泥、加圧浮上スカム、凝集沈殿汚泥、ケミカルスラッジ、パルプスラッジ、粘土スラッジ、セメントスラッジ、その他、無機系廃液等の無機廃棄物、さらには、含油廃液を挙げることができる。上記含液廃棄物は、高含液率のものから、低含液率のものを使用することができる。
【0025】
図1~
図3に示すように、乾燥炉10は、軸方向を前後方向とする円筒体であり、上側となる円筒体の側面に、含液廃棄物が投入される投入口11と、乾燥炉10内を減圧する吸引ポンプ30が接続される吸引口12と、が設けられ、後側の面に、乾燥させた含液廃棄物が取り出される取出口13と、が設けられている。投入口11は、乾燥炉10に含液廃棄物が投入される入口であり、含液廃棄物乾燥装置1の運転時には閉塞できるように、密閉蓋11aが開閉可能に備えられている。吸引口12は、後述する吸引ポンプ30が接続される接続口であり、吸引ポンプ30の作動によって、乾燥炉10内が-0.04~-0.1MPa(ゲージ圧)まで減圧され、乾燥炉10内の気体が吸引される。取出口13は、乾燥させた含液廃棄物を回収するために取り出す開口であり、含液廃棄物乾燥装置1の運転時には閉塞できるように、密閉蓋13aが開閉可能に備えられている。
【0026】
円筒状の乾燥炉10は、
図1、
図3に示すように、上下左右方向の側面と前後の面とがそれぞれ加温ジャケット14に覆われている。加温ジャケット14は、接続口14aから蒸気ボイラ15が接続され、蒸気ボイラ15が発する蒸気によって、全体が満遍なく加温されるように構成されている。なお、乾燥炉10を加熱する加熱媒体は、蒸気ボイラ15が発する蒸気を例に説明したが、間接加熱方式を利用できるものであれば特に限定されることなく使用することができ、温水、加熱蒸気、加熱オイル、抵抗加熱器なども使用可能である。加温は、乾燥炉10内が60~120℃になるように調整する。乾燥炉10内の含液廃棄物の乾燥を促進することができるためである。別の実施形態として、乾燥炉10内を100~120℃になるように調整することができる。
【0027】
吸引ポンプ30は、
図1に示すように、エジェクター31と、循環水路32と、冷却器35と、を備える。エジェクター31は、循環水路32の水流を利用して、ベンチュリ効果により乾燥炉10内を減圧にするとともに乾燥炉10内の気体を吸引する吸引器である。乾燥炉10内が減圧されることにより、乾燥炉10内の含液廃棄物の乾燥が促進される。循環水路32は、循環水を循環させて、その水流により、エジェクター31に吸引効果を発揮させるとともに、エジェクター31が吸引した乾燥炉10内のアンモニアガスなどの悪臭成分を循環水に溶解させて消臭効果を発揮するものである。循環水路32は、エジェクター31と、循環水槽33と、循環ポンプ34とを備える。循環水槽33に溜められた循環水は、循環ポンプ34によってエジェクター31に導入される。エジェクター31に導入された循環水は、エジェクター31の吸引により、乾燥炉10内のアンモニアガスなどの悪臭成分を吸収して、循環水槽33に流れる。循環水は、循環水路32を循環することによって、乾燥炉10内の悪臭成分を繰り返し吸収する。このため、循環水槽33には冷却器35が取り付けられ、循環水の温度が低温に保たれ、悪臭成分の溶解度を高めている。なお、循環水は、定期的に交換され、悪臭成分は排除される。
【0028】
図1、
図3に示すように、乾燥炉10には、円筒体の軸方向に、含液廃棄物を撹拌するパドルミキサ型の撹拌翼20が備えられている。撹拌翼20は、
図4及び
図5に示すように、前後方向に回転軸21を備え、回転軸21は、回転軸21の前後方向のある位置から、対向する半径方向にそれぞれ回転羽根22が設けられ、前後に等間隔に6組の回転羽根22が設けられている。回転羽根22の組は、前後の一つ置きが周方向に同じ向きを向き、その間のそれぞれの回転羽根22の組が前後の回転羽根22に対して周方向に90°方向を変えて配置されている。つまり、前後の回転羽根22の組は、十字に交差するように配置されている。撹拌翼20の回転によって、含液廃棄物は、撹拌され、含液廃棄物に含まれる水分などの液分の揮発が促進される。回転羽根22の先端は、扇状に末端が拡がったブレード22aが備えられている。ブレード22aの末端は、
図4及び
図5に示すように、鋸歯状のものと平坦状のものとが用いられている。回転羽根22の先端が鋸歯状のものと平坦状のものとが用いられていることにより、乾燥炉10の内壁とブレード22aの先端との間の隙間が一定でなく複数種類の間隔が生じるため、撹拌翼20は、含液廃棄物の撹拌効率を高めることができる。回転羽根22の材質はステンレス鋼材もしくは鉄鋼材により形成され、回転羽根22と乾燥炉10の隙間は1~5cmに保たれている。
【0029】
回転軸21の両端は一対のベアリングで支持され、一方の端部には駆動プーリーが取り付けられている。回転軸21の長さは、回転を阻害しない長さとし筐体の長さより20mm~30mm短いものを用いた。長さが短すぎると撹拌効率が下がるためである。また回転軸21の軸径は20~100mmとすることができる。また、回転軸21の材質は被処理物の種類に応じて異なり、比重の高い無機充填材を添加した強化プラスチック製であってもよいが、耐摩耗性および撹拌効率(伝熱性も含めて)の見地からは、鉄系合金、アルミニウム系合金、黄銅等の金属製又はアルミナ、ジルコニア、チタニア等のセラミックス製とすることができる。これらの内で、特に、鋼、ステンレス鋼等の鉄系合金製のものを好適に使用することができる。また、加温は必然ではないが、乾燥時間の短縮を考えれば、回転軸21を加温(加熱)してもよい。
【0030】
駆動プーリーは、原動機の出力プーリーと連結されベルト駆動されるようになっている。なお、伝動手段は、ベルト駆動に限定されず、歯車伝動、チェーン伝動を問わない。撹拌翼20は、図の形状の代わりに矩形ないし三角形断面を有する中空翼としてもよい。また、回転羽根22を構成する形状の幅及びピッチは、横置き筒体の容量により異なるが、約15~30cmとする。
【0031】
上記においては、撹拌媒体として撹拌翼20を例にとり説明したが、撹拌媒体は撹拌塊状体(ボールミル)であってもよい。撹拌塊状体による撹拌は、撹拌翼を撹拌ボール(撹拌塊状体)として、乾燥炉10を周方向に回転させることによって、撹拌ボールを転動させて、含液廃棄物を撹拌するものである。また、撹拌媒体は、撹拌翼と撹拌塊状体との組み合わせとすることもできる。なお、処理品排出口(取出し口)には、撹拌ボールと処理物との分離のために格子板(有孔板)が取り付けられている。撹拌塊状体は、球状であるが、柱体(ペレット状:円柱体、角柱体)、多面体等任意である。また、撹拌ボールの大きさは横置き筒体の内容積及び処理物の種類、さらには撹拌翼の大きさ等により異なるが、10mmから300mmとすることができる。ただし、撹拌翼と横置き筒体内周壁面との隙間より大きいものとする。そして、撹拌ボールの材質も、被処理物の種類により異なるが、通常、前述の撹拌棒と同様とする。そして、撹拌塊状体の作用は、下記の如くである。なお、撹拌塊状体の投入量は、被処理物の種類により、撹拌塊状体の大きさにより異なるが、通常、横置き筒体の内容積の1~20容量%とする。被処理物と混入された撹拌塊状体は、撹拌翼の回転につれて、常時、擦り合わされたり持ち上げられたりして、被処理物をすり潰したり、被処理物に上から衝撃を与える。したがって、被処理物に熱が加わって糊状となるご飯のような澱粉質のものであっても、それぞれ凝集肥大化することがなく、微粉砕状物となる。また、撹拌塊状体は、横置き筒体内壁面や回転軸外周壁に対して常時衝突・転動することにより、それらに対する被処理物の付着を阻止ないし付着物を剥離する。更に、撹拌塊状体を熱伝導率の良好な金属製ないしセラミックス製とした場合は、筒体ないし回転軸の壁面からも受熱して、被処理物内に侵入していく。これらが相乗して被処理物に対する熱伝達効率及び蒸発効率が増大して乾燥が迅速に進む。
【0032】
図1~
図3に示すように、乾燥炉10には回転モータ25が備えられ、撹拌翼20は、回転モータ25の回転によって回転し、含液廃棄物を撹拌する。回転モータ25は、インバータによって制御され、撹拌翼20の回転数を一定の回転数に制御することができるとともに、回転モータ25の負荷が電流値で示されるように構成されている。
【0033】
撹拌翼20の回転数は、5~30rpmとすることができる。含液廃棄物に含まれる水分などの液分を効率よく揮発させることができるためである。別の実施形態として、撹拌翼20の回転数は、8~12rpmとすることができる。
【0034】
次に、実施形態の含液廃棄物の乾燥方法が実施される含液廃棄物乾燥装置1の動作について説明する。含液廃棄物乾燥装置1の動作説明では、含液廃棄物として鶏糞Cを使用した。
【0035】
含液廃棄物として鶏糞Cは、供給コンベア11bによって、乾燥炉10の投入口11に投入される。投入の際に、鶏糞Cは、公称目開き8mmのふるいでふるい分けられ、鶏糞Cに混ざった大きなゴミなどが排除される。鶏糞Cの投入後の投入口11は、密閉蓋11aによって閉じられ、乾燥炉10は外気から遮断される。なお、取出口13は、予め密閉蓋13aによって閉塞され、外気から遮断されている。乾燥炉10内の鶏糞Cは、外気から遮断されて乾燥されるため、乾燥の際に酸化が抑制され、酸化による臭いの発生が抑制される。
【0036】
乾燥炉10に鶏糞Cが投入されると、蒸気ボイラ15による乾燥炉10の加熱、吸引ポンプ30による乾燥炉10内の減圧、撹拌翼20による鶏糞Cの撹拌が行われる。
【0037】
蒸気ボイラ15による乾燥炉10の加熱は、蒸気ボイラ15で発生させた高温の蒸気を、乾燥炉10を覆う加温ジャケット14に送り込み、鶏糞Cを含め、乾燥炉10全体を加熱するものである。鶏糞Cが加熱されることにより、鶏糞Cに含まれる水や悪臭成分などの揮発成分の揮発が促進される。
【0038】
吸引ポンプ30による乾燥炉10内の減圧は、循環水路32の水流を利用して、エジェクター31によって、乾燥炉10内を減圧にするとともに、乾燥炉10内の気体(鶏糞Cの揮発成分)を吸引する。乾燥炉10内を減圧にすることによって、鶏糞Cに含まれる水や悪臭成分などの揮発成分の揮発を促し、吸引によって、鶏糞Cの揮発成分を吸引して、鶏糞Cの乾燥を促進させる。
【0039】
撹拌翼20による鶏糞Cの撹拌は、鶏糞Cを撹拌することによって、鶏糞Cの揮発成分の揮発を促すものである。撹拌翼20は回転モータ25によって回動され、回転モータ25は、インバータで制御され、回転数を一定に制御するとともに、回転モータ25の負荷が電流値で示される。乾燥(運転)開始直後は、鶏糞Cに多くの水やアンモニアなどの揮発成分が含まれているため、回転モータ25の負荷としての電流値が大きく現れる。運転が進むにつれ、鶏糞Cから揮発成分が揮発し、鶏糞Cの乾燥が進み、回転モータ25の負荷としての電流値が次第に小さくなる。このため、回転モータ25の電流値によって、含液廃棄物としての鶏糞Cの含液率が把握することができ、所望の電流値に達した際に運転を止めることによって、含液廃棄物としての鶏糞Cの含液率を制御することができる。
【0040】
実施形態の含液廃棄物の乾燥方法によれば、乾燥炉10内に収容された含液廃棄物は、撹拌翼20の回転羽根22で撹拌されることにより、含液廃棄物に含まれる水などの液体が気体となって揮発し、液体が揮発した気体が吸引ポンプ30に吸引されるため、乾燥が促進される。含液廃棄物の乾燥は、回転モータ25の電流値によって、含液廃棄物の含液率が把握されるため、含液廃棄物の含液率を制御することができる。
【0041】
本装置は回転羽根22と内容物とが接しており容易に回転羽根22をスラスト方向に駆動させることが出来ないため
図8(A)のようにプーリーとの間を回転伝達軸37とで連結した構成とし、回転伝達軸37がスラスト方向に移動する事により任意のプーリーを回転軸に伝達できる。含液率が低くなるほど回転モータ25の電流値の差異が小さくなり把握精度が悪くなる。把握精度を確保するため含水率が下がり電流値の変化が小さくなる前の含水率30~60%の範囲にて回転伝達軸37を
図8(A)の下方にスライドさせ
図8(B)のようにすることで回転伝達をプーリー36aからプーリー36bへの切り替えでプーリー比を変えることにより、より高精度に含液率を制御することできる。
【実施例0042】
(実施例1)
実施例1では、以下の仕様の含液廃棄物乾燥装置1を用いて、下記の条件で鶏糞Cの乾燥を行なった。
【0043】
含液廃棄物 鶏糞C(初期の含液率:71%)
初期重量 50kg
乾燥炉10 φ700mm×L1300mm(500L)
撹拌翼20 L1200mm、半径方向300mmの回転羽根22が6組
回転モータ25 CHHM8-6165-59(住友重機械工業) 200V 5.5kW
インバータ FRENIC-MINI(富士電機)
プーリー比 1:5
回転数 10rpm
乾燥炉10内の温度 110℃
乾燥炉10内の圧力 -0.08MPa(ゲージ圧)
実施例1を行なうことにより、含液率と回転モータの電流値の関係について実験した結果を
図6のグラフに記載する。
図6のグラフから、鶏糞Cの含液率xに対する回転モータ25の電流値yについて下記数式(1)が求められた。
(数式1)
y=0.0007(x-20)^2+3.0 (x≧20)
y=3.0(X<20)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
【0044】
(実施例2)
実施例2では、以下の仕様の含液廃棄物乾燥装置1を用いて、下記の条件で鶏糞Cの乾燥を行なった。
【0045】
含液廃棄物 鶏糞C(初期含液率:71%)
初期重量 50kg
乾燥炉10 φ700mm×L1300mm(500L)
撹拌翼20 L1200mm、半径方向300mmの回転羽根22が6組
回転モータ25 CHHM8-6165-59(住友重機械工業)200V5.5kW
インバータ FRENIC-MINI(富士電機)
回転数 10rpm
乾燥炉10内の温度 110℃
乾燥炉10内の圧力 -0.08MPa(ゲージ圧)
プーリー比 1:5(含液率50%~70%)
プーリー比 1:3(含液率10%~50%)
実施例2では、含液率が50%まで低下した際にプーリー比を1:5から1:3に変更して乾燥を行った。この時の含液率と回転モータの電流値の関係について実験した結果を
図7のグラフに記載する。
図7のグラフから、含液率50%~70%間での乾燥の際の鶏糞Cの含液率に対する回転モータ25の電流値yについては実施例1と同じで下記数式(1)が求められた。また
図7のグラフから、含液率10%~50%間での乾燥の際の鶏糞Cの含液率に対する回転モータ25の電流値yを示す下記数式(2)が求められた。
(数式1)
y=0.0007(x-20)^2+3.0 (x≧20)
y=3.0 (x<20)・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
(数式2)
y=0.0020(x-5)^2+3.2(x≧5)
y=3.2 (x<5)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
実施例2では、乾燥が進み含液率が40%付近まで低下すると含液率に対する電流値の変化量が小さくなるため乾燥率の制御が難しいため、含液率が50%まで低下した際にプーリー比を1:5から1:3に小さくして実験を行った。その結果、含液率に対する電流値が上記の数式(2)のようになり、含液率が低いところで含液率に対する電流値の変化量を大きくすることができ、所望の電流値のところで装置を停止することにより乾燥率の制御精度を向上させることができた。
【0046】
上記の内容を詳細に説明すると、例えば、プーリー比1:5のままで含液率40%まで乾燥を継続した場合に数式(1)では電流値3.28Aに対し実際の電流値は誤差を含むため、±5%の3.12A~3.3.44Aまでの誤差範囲となる。そのときに乾燥を停止させると誤差範囲を考慮すると含液率40%を目標としても実際には含液率32.9%~45.2%までの範囲の制御のものしかできないが、プーリー比を1:3に下げることにより、含液率が40%の場合に電流値が5.8Aとなり±5%の5.51A~6.09Aまで誤差が生じたとしてもその時に乾燥を停止させると含液率40%の目標に対して含液率39.0%~41.0%の範囲の制御が可能になり、含液率の制御性を向上させることができた。
【0047】
なお、上記の各実施例の条件は一例で合って鶏糞等の含液廃棄物の種類や含液廃棄物の量に応じて変わるものである。回転数も含液廃棄物の種類や量に応じて5rpm~30rpmの範囲で適用する。上記の含液廃棄物の種類、量と回転数に応じて初期の回転モータ25の電流値が変わる。そのため適切なプーリー比を選択して乾燥を開始する。圧力は-0.04~-0.1MPa(ゲージ圧)の範囲で適用することができる。乾燥炉内の温度は圧力に応じて60~120℃の範囲で設定することができる。圧力を下げることでより沸点が下がるためより低温で乾燥が可能となる。乾燥が進むにつれて回転モータの負荷が下がり電流値が下がるためより精度よく乾燥状態を制御するためにプーリー比を下げて電流制御がしやすいように制御することも可能である。