(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163547
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車体側部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B62D25/08 L
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079267
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】宮永 啓世
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康一
(72)【発明者】
【氏名】猿渡 直行
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 真康
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BC10
3D203BC15
3D203BC16
3D203CA58
3D203DA73
3D203DA87
3D203DA88
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制しつつ、ホイールハウスのサスペンション荷重の入力部の支持剛性を高めることができる車体側部構造を提供する。
【解決手段】車体側部構造は、ホイールハウスと、ダンパベース13と、を備える。ホイールハウスは、車輪の上方側外周と車幅方向内側を囲むように車体側部に配置される。ダンパベース13は、ホイールハウスの上部領域の内面に固定されてサスペンションのダンパ12の上部を支持する。ホイールハウスの上部領域には、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部18が設けられる。ダンパベース13は、三次元曲面部18の内面に固定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の上方側外周と車幅方向内側を囲むように車体側部に配置されるホイールハウスと、
前記ホイールハウスの上部領域の内面に固定されてサスペンションのダンパの上部を支持するダンパベースと、を備え、
前記ホイールハウスの前記上部領域には、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部が設けられ、
前記ダンパベースは、前記三次元曲面部の内面に固定されていることを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記ホイールハウスの前記上部領域の車幅方向内側に連なる内側部領域には、前記三次元曲面部に連なり、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない車幅方向内側に凸の三次元曲面が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記ホイールハウスの前記上部領域の車幅方向内側に連なる内側部領域の一部には、前記ホイールハウスの内側方向に窪んで車室内部品との干渉を回避する段部が設けられ、
前記ダンパベースが固定される前記三次元曲面部は、前記段部と車体前後方向で重ならない位置に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記ダンパベースは、前記ホイールハウスの前記三次元曲面部を構成する単一のパネル部材にのみ固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記ダンパベースは、非貫通レーザ溶接によって前記三次元曲面部に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項6】
前記三次元曲面部の曲面は、カテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールハウスを含む車体側部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
四輪車両の車体側部構造として、車輪の上方側外周と車幅方向内側を囲むようにホイールハウスが設けられ、そのホイールハウスの上部領域の内面にサスペンションのダンパの上部を支持するダンパベースが取り付けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車体側部構造は、略半円筒状の周壁と、その周壁の車幅方向内側を覆う側壁を有するホイールハウスインナを備えている。ホイールハウスインナは、プレス成形によって周壁と側壁が一体に形成されている。ホイールハウスインナの周壁の上部領域の内面と側壁の外側面(車幅方向外側に向く面)には、肉厚の補強ブラケット(アブソーバブラケット)が溶接によって固定されている。そして、ホイールハウスインナの周壁の内面に固定される補強ブラケットの上壁の下面には、ダンパベースが溶接によって固定されている。
【0004】
この車体側部構造は、ホイールハウスインナの周壁の上部領域と側壁が肉厚の補強部材(補強ブラケット)によって補強されるため、車両の走行時にダンパベースに入力されるサスペンション荷重をホイールハウスの高剛性部によって安定して支持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の車体側部構造は、ホイールハウスインナの周壁の上部領域と側壁の剛性を高めるために、肉厚の厚い大型の補強部材をホイールハウスインナに取り付けている。このため、この車体側部構造を採用した場合には、部品点数が増加し、そのことが車体重量の増加や、ホイールハウス内の部品レイアウトの自由度の低下の原因となり易い。
【0007】
そこで本発明は、部品点数の増加を抑制しつつ、ホイールハウスのサスペンション荷重の入力部の支持剛性を高めることができる車体側部構造を提供しようとするものである。そして、本発明は延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車体側部構造は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る車体側部構造は、車輪(例えば、実施形態の後輪11)の上方側外周と車幅方向内側を囲むように車体側部に配置されるホイールハウス(例えば、実施形態のリヤホイールハウス10)と、前記ホイールハウスの上部領域(例えば、実施形態の上部領域10u)の内面に固定されてサスペンションのダンパ(例えば、実施形態のダンパ12)の上部を支持するダンパベース(例えば、実施形態のダンパベース13)と、を備え、前記ホイールハウスの前記上部領域には、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部(例えば、実施形態の三次元曲面部18)が設けられ、前記ダンパベースは、前記三次元曲面部の内面に固定されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成により、ダンパからダンパベースにサスペンション荷重が入力されると、その荷重はホイールハウスの上部領域の三次元曲面部によって受け止められる。三次元曲面部は、多方向に湾曲し変曲点を持たない上方に凸の連続した曲面から成るため、ダンパベースから入力される荷重を面全体で分散して受け止めることができる。このため、ホイールハウスの上部領域から車幅方向内側の側部領域に跨る大型の補強部材を追加することなく、ダンパベースを通して入力されるサスペンション荷重を安定して受け止めることができる。
【0010】
前記ホイールハウスの前記上部領域の車幅方向内側に連なる内側部領域(例えば、実施形態の側壁部14s)には、前記三次元曲面部に連なり、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ車幅方向内側に凸の変曲点を持たない三次元曲面(例えば、実施形態の三次元曲面19)が設けられるようにしても良い。
【0011】
この場合、ダンパからダンパベースにサスペンション荷重が入力されると、その荷重はホイールハウスの上部領域の三次元曲面部の面全域で受け止められるとともに、ホイールハウスの内側部領域の三次元曲面の全域でも受けてめられる。
したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベースに入力されるサスペンション荷重をホイールハウスの上部領域と内側部領域の広範囲において均一に受け止めることができる。
【0012】
前記ホイールハウスの前記上部領域の車幅方向内側に連なる内側部領域の一部には、前記ホイールハウスの内側方向に窪んで車室内部品(例えば、実施形態のリヤシート50)との干渉を回避する段部(例えば、実施形態の段部40)が設けられ、前記ダンパベースが固定されるの前記三次元曲面部は、前記段部と車体前後方向で重ならない位置に形成されるようにしても良い。
【0013】
この場合、ホイールハウスの内側部領域に車室内部品との干渉を回避するための段部を設ける必要がある場合であっても、ダンパベースが固定される三次元曲面部が段部と車体前後方向で重ならない位置に形成されているため、三次元曲面部による入力荷重の分散支持効果を確実に得ることができる。
【0014】
前記ダンパベースは、前記ホイールハウスの前記三次元曲面部を構成する単一のパネル部材にのみ固定されることが望ましい。
【0015】
この場合、ダンパベースが複数の部材に跨って固定されないため、ダンパベースの固定部の全域にばらつきなく均一に入力荷重を伝達することが可能になる。したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベースから入力されるサスペンション荷重を三次元曲面部の全域に均一に支持させることができる。
さらに、ダンパベースをホイールハウスの三次元曲面部に溶接によって固定する場合には、溶接部分に段差部等の非連続部が存在しないことになるため、三次元曲面部に対するダンパベースの溶接を容易に行うことができる。
【0016】
前記ダンパベースは、非貫通レーザ溶接によって前記三次元曲面部に固定されるようにしても良い。
【0017】
この場合、ダンパベースを三次元曲面部に溶接固定する際に三次元曲面部に歪みが生じにくくなる。
したがって、本構成を採用した場合には、三次元曲面部による入力荷重の分散支持効果をより確実に得ることができる。
【0018】
前記三次元曲面部の曲面は、カテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されることが望ましい。
【0019】
この場合、ダンパベースが固定される三次元曲面部が、全方向において張力が釣り合うカテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されているため、入力されるサスペンション荷重が上部領域の一箇所に集中しにくくなる。
したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベースに入力されるサスペンション荷重を、ホイールハウスの三次元曲面部の全域に効率良く分散支持させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車体側部構造は、ホイールハウスの上部領域に、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部が設けられ、ダンパベースがその三次元曲面部の内面に固定されている。このため、部品点数の増加を抑制しつつ、ホイールハウスのサスペンション荷重の入力部の支持剛性を高めることができる。
よって、本発明に係る車体側部構造を採用した場合には、車体側部のホイールハウス回りの軽量化を図り、かつホイールハウス内の部品レイアウトの自由度を高めることができる。そして、本発明に係る車体側部構造を採用した場合には、エネルギーの効率化に寄与することができる。
また、本発明に係る車体側部構造は、ダンパベースを通して入力される振動を、曲げの生じにくい三次元曲面部で受け止めることができるため、車両振動も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の車両の左側後部のホイールハウス部分の分解斜視図。
【
図2】実施形態の車両の左側後部のホイールハウス部分の平面図。
【
図3】実施形態の車両の左側後部のホイールハウス部分の側面図。
【
図4】実施形態の車両の左側後部のホイールハウス部分の後面図。
【
図6】実施形態の車両の左側後部のホイールハウス部分の
図5のVI矢視に対応する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、前後や上下、左右については、特別に断らない限り車両の前進方向に対しての向きを意味するものとする。また、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが記されている。
【0023】
図1は、本実施形態の車両1の左側後部のリヤホイールハウス10部分の分解斜視図である。
図2は、リヤホイールハウス10部分の平面図であり、
図3は、リヤホイールハウス10部分を車幅方向内側から見た側面図である。また、
図4は、リヤホイールハウス10部分を車両後方から見た後面図であり、
図5は、
図3のV-V線に沿う断面図である。
リヤホイールハウス10(ホイールハウス)は、車両1の後輪11(車輪)の上方側外周と車幅方向内側を囲むように車体側部に配置されている。リヤホイールハウス10の車幅方向内側の下端部は、
図5に示すように、リヤサイドフレーム34と車両後部のリヤフロアパネル35に連結されている。
図1~
図5では、車両左側のリヤホイールハウス10が示されているが、車両右側のリヤホイールハウスも同様の構造とされている。
【0024】
後輪11は、図示しないサスペンションアームを介して車体に揺動可能に支持されている。サスペンションアームは、後輪11の車幅方向内側に配置されている。サスペンションアームと車体の間には、後輪サスペンションの図示しないスプリングとダンパ12(減衰装置)が介装されている。ダンパ12の上端部は、肉厚の金属材料から成るダンパベース13を介してリヤホイールハウス10の上部領域に支持されている。ダンパベース13は、後に詳述するようにリヤホイールハウス10の上部領域の内面に固定されている。
【0025】
図1,
図5に示すように、リヤホイールハウス10は、後輪11の車幅方向内側寄りの上方側外周と後輪11の車幅方向内側を取り囲むホイールハウスインナ14と、後輪11の車幅方向外側寄りの上方側外周を取り囲むホイールハウスアウタ15と、ホイールハウスアウタ15の車幅方向外側の端部に固定されるホイールハウスカバー16と、を備えている。
【0026】
ホイールハウスインナ14は、後輪11の車幅方向内側寄りの上方側外周を覆う略半円筒状の周壁部14rと、周壁部14rの車幅方向内側を覆う側面視が略半円状の側壁部14sと、周壁部14rの車幅方向外側の端部から放射方向外側に延出する接合フランジ14fと、を有する。これらの周壁部14r、側壁部14s、及び、接合フランジ14fは、金属製の板材からプレス成形によって一体に形成されている。周壁部14rと側壁部14sの間は滑らかな湾曲面によって連続している。
【0027】
ホイールハウスアウタ15は、後輪11の車幅方向外側寄りの上方側外周を覆う略半円筒状の周壁部15rを有する。周壁部15rの車幅方向内側の端縁は、ホイールハウスインナ14の周壁部14rの車幅方向外側の端縁に下方から重ねられ、溶接によってホイールハウスインナ14の周壁部14rに固定されている。
【0028】
ホイールハウスアウタ15の周壁部15rの車幅方向外側の端部には、
図1に示すように、切欠き部17が形成されている。切欠き部17の縁部には、ホイールハウスカバー16が溶接固定されている。ホイールハウスカバー16は、ホイールハウスアウタ15と別材質の金属板によって形成されている。ホイールハウスカバー16は、ホイールハウスアウタ15の切欠き部17を補完する略半円筒部16rと、略半円筒部16rの車幅方向外側から放射方向内側に延びる略円弧状のカバー壁16cと、を有する。
なお、
図1中の符号39は、ホイールハウスインナ14とホイールハウスアウタ15の前縁部下端に接合されるサイドシルエンドプレートである。サイドシルエンドプレート39は、車室の側部下方に配置される図示しないサイドシルの後端部に接合されるプレート材である。
【0029】
図5に示すように、ホイールハウスインナ14の接合フランジ14fには、ボディサイドパネルインナ30iの下縁部が溶接固定されている。ホイールハウスカバー16のカバー壁16cの外側面には、ボディサイドパネルアウタ30oの下縁部が溶接固定されている。また、ボディサイドパネルインナ30iとボディサイドパネルアウタ30oの上縁部は相互に溶接固定されている。ボディサイドパネルインナ30iとボディサイドパネルアウタ30oは、リヤホイールハウス10の上方側において、リヤホイールハウス10とともに閉断面を構成している。
【0030】
溶接固定されたホイールハウスインナ14とホイールハウスアウタ15の周壁部14r,15rのうちの前後方向の中央部付近は、上方に凸に膨出するリヤホイールハウス10の上部領域10uを構成している。この上部領域10uには、側面視(
図3参照)、前後方向視(
図4参照)、上下方向視(
図2参照)のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部18が設けられている。
上部領域10uの三次元曲面部18は、カテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されている。なお、図面の適所には、カテナリー曲面に沿う補助線が記載され、その補助線に符号Caが付されている。
【0031】
また、リヤホイールハウス10の上部領域10uの車幅方向内側に連なる内側部領域の一部(ホイールハウスインナ14の側壁部14sの一部)には、上部領域10uの三次元曲面部18に連なり、側面視(
図3参照)、前後方向視(
図4参照)、上下方向視(
図2参照)のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない車幅方向内側に凸の三次元曲面19が形成されている。ホイールハウスインナ14の側壁部14sの三次元曲面19は、カテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されている。
【0032】
また、
図2,
図3に示すように、車室内後部のリヤホイールハウス10(ホイールハウスインナ14)に近接する位置には、車室内部品であるリヤシート50が設置されている。ホイールハウスインナ14の側壁部14s(内側部領域)の前端側寄り部分には、リヤシート50との干渉を回避するための段部40が設けられている。段部40は、リヤシート50のシートバック50bの傾斜に沿うように、リヤホイールハウス10の内側方向(車幅方向外側)に緩やかに窪んでいる。
【0033】
図6は、車両1の
図5のVI矢視に対応する斜視図である。
図1,
図5,
図6に示すように、ダンパベース13は、ダンパ12の上端部が締結固定される平面視が略楕円状の締結壁13bと、締結壁13bの外側を取り囲むように配置された溶接フランジ13fと、を備えている。溶接フランジ13fは、リヤホイールハウス10の上部領域10uに設けられた三次元曲面部18の内面に突き当てられ、テーラドブランク等の非貫通溶接によって三次元曲面部18に溶接固定されている。溶接フランジ13fの上面は、三次元曲面部18の突き当て面に沿う曲面形状に形成されている。三次元曲面部18のうちのダンパベース13が溶接固定される箇所は、ホイールハウスインナ14の周壁部14rの内面で、かつ、側壁部14sの段部40に対して車体後方側にオフセットした位置とされている。したがって、ダンパベース13が固定される三次元曲面部18は、段部40と車体前後方向で重ならない位置に形成されている。
【0034】
また、ダンパベース13の溶接フランジ13fは、ホイールハウスインナ14の内面にのみ溶接固定され、ホイールハウスアウタ15側には跨って溶接されていない。したがって、ダンパベース13は、リヤホイールハウス10の上部領域10uを構成する単一のパネル部材にのみ固定されている。
【0035】
以上のように、本実施形態の車体側部構造は、リヤホイールハウス10の上部領域に、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ変曲点を持たない上方に凸の三次元曲面部18が設けられ、ダンパベース13がその三次元曲面部18の内面に固定されている。このため、車両1の走行時等にダンパ12からダンパベース13にサスペンション荷重が入力されると、その荷重はリヤホイールハウス10の上部領域10uの三次元曲面部18によって受け止められる。
【0036】
リヤホイールハウス10の三次元曲面部18は、多方向に湾曲した変曲点を持たない上方に凸の連続した曲面から成るため、ダンパベース13から入力されるサスペンション荷重を面全体で分散して受け止めることができる。このため、本実施形態の車体側部構造は、リヤホイールハウス10の上部領域10uから車幅方向内側の側壁部14sに跨る大型の補強部材を追加することなく、ダンパベース13を通して入力されるサスペンション荷重を安定して受け止めることができる。したがって、部品点数の増加を抑制しつつ、リヤホイールハウス10のサスペンション荷重の入力部の支持剛性を高めることができる。
よって、本実施形態の車体側部構造を採用した場合には、車体側部のリヤホイールハウス10回りの軽量化を図り、かつリヤホイールハウス10内の部品レイアウトの自由度を高めることができる。そして、本実施形態の車体側部構造を採用した場合には、エネルギーの効率化に寄与することができる。
【0037】
また、本発明に係る車体側部構造は、リヤホイールハウス10の上部領域10uに設けられた三次元曲面部18の内面にダンパベース13が固定されるため、ダンパベース13を通して入力される振動を曲げの生じにくい三次元曲面部18で受け止めることができる。したがって、本構成を採用した場合には、リヤホイールハウス10での振動騒音の発生を抑制することができる。
【0038】
また、本発明に係る車体側部構造は、リヤホイールハウス10の側壁部14s(内側部領域)に、上部領域10uの三次元曲面部18に連なり、側方視、前後方向視、上下方向視のすべてにおいて湾曲し、かつ車幅方向内側に凸の変曲点を持たない三次元曲面19が設けられている。このため、ダンパ12からダンパベース13にサスペンション荷重が入力されたときに、その荷重がリヤホイールハウス10の上部領域10uの三次元曲面部18の面全域で受け止められるとともに、リヤホイールハウス10の側壁部14s(内側部領域)の三次元曲面19の全域でも受けてめられる。
したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベース13に入力されるサスペンション荷重をリヤホイールハウス10の上部領域10uと側壁部14s(内側部領域)の広範囲で均一に受け止めることができる。よって、本構成を採用することにより、リヤホイールハウス10のサスペンション荷重の入力部の支持剛性をより高めることができる。
【0039】
また、本発明に係る車体側部構造は、ダンパベース13が固定されるリヤホイールハウス10の三次元曲面部18が、リヤシート50との干渉回避用の段部40と車体前後方向で重ならない位置に形成されている。このため、リヤホイールハウス10の側壁部14sの一部に、リヤシート50との干渉回避用の段部40を設けざるを得ない場合であっても、三次元曲面部18による入力荷重の分散支持効果を段部40によって妨げられることなく、確実に得ることができる。
したがって、本構成を採用した場合には、車両における部材レイアウトの自由度をより高めることができる。
【0040】
さらに、本発明に係る車体側部構造は、ダンパベース13が、リヤホイールハウス10の三次元曲面部18を構成する部材のうちのホイールハウスインナ14にのみ(単一のパネル部材にのみ)固定されている。この場合、ダンパベース13が上部領域10uを構成する複数の部材に跨って固定されないため、ダンパベース13の固定部の全域にばらつきなく均一に入力荷重を伝達することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベース13から入力されるサスペンション荷重を三次元曲面部18の全域により均一に支持させることができる。
また、本構成を採用した場合、ダンパベース13をリヤホイールハウス10の三次元曲面部18に溶接によって固定する際に、溶接部分に段差部等の非連続部が存在しないことになるため、三次元曲面部18に対するダンパベース13の溶接を容易に行うことが可能になる。
【0041】
また、本発明に係る車体側部構造では、ダンパベース13が、非貫通レーザ溶接によってリヤホイールハウス10の三次元曲面部18に固定されている。このため、ダンパベース13を三次元曲面部18に溶接固定する際に三次元曲面部18に歪みが生じにくくなる。
したがって、本構成を採用した場合には、三次元曲面部18による入力荷重の分散支持効果をより確実に得ることができる。
【0042】
また、本発明に係る車体側部構造は、リヤホイールハウス10の三次元曲面部18の曲面が、カテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されている。この場合、ダンパベース13が固定される三次元曲面部18が、全方向において張力が釣り合うカテナリー曲面によって、若しくは、複数のカテナリー曲面を組み合わせた曲面によって構成されているため、入力されるサスペンション荷重がリヤホイールハウス10の上部領域10uの一箇所に集中しにくくなる。
したがって、本構成を採用した場合には、ダンパベース13に入力されるサスペンション荷重を、リヤホイールハウス10の三次元曲面部18の全域に効率良く分散支持させることができる。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ダンパベース13がリヤホイールハウス10の三次元曲面部18の内面に非貫通溶接によって固定されているが、三次元曲面部18に対するダンパベース13の固定形態はこれに限定されない。ダンパベース13は、三次元曲面部18に対して非貫通溶接以外の溶接によって固定するようにしても良い。また、ダンパベース13は、三次元曲面部18に対して工業用接着剤等によって固定するようにしても良い。
【0044】
また、上記の実施形態では、車両後部のリヤホイールハウス10の上部領域10uに三次元曲面部18を設け、その三次元曲面部18の内面にダンパベース13を固定している。しかし、車両前部のフロントホイールハウスの上部領域に同様に三次元曲面部を設け、その三次元曲面部の内面にダンパベースを固定するようにしても良い。
【0045】
また、上記の実施形態では、リヤホイールハウス10の上部領域10uの三次元曲面部18を構成する部材のうちのホイールハウスインナ14にのみ、ダンパベース13が溶接固定されている。しかし、ダンパベース13は、ホイールハウスインナ14とホイールハウスアウタ15に跨るように固定することも可能である。
【0046】
さらに、上記の実施形態では、ホイールハウスアウタ15の車幅方向外側に接合されるホイールハウスカバー16は三次元曲面部18の一部を構成する部材とされていないが、ホイールハウスカバー16の上部領域も三次元曲面部18の一部を構成するようにしても良い。
【0047】
また、上記の実施形態では、リヤホイールハウス10(ホイールハウス)が複数の部材から構成されているが、ホイールハウスは、単一の部材によって構成するようにしても良い。
【0048】
また、上記の実施形態では、リホイールハウス10(ホイールハウス)の側部領域14sの一部に段部40が設けられているが、ホイールハウスは段部のない構造であることが望ましい。この場合、ホイールハウスのサスペンション荷重の入力部の支持剛性をより効率良く高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
10…リヤホイールハウス(ホイールハウス)
10u…上部領域
11…後輪(車輪)
12…ダンパ
13…ダンパベース
14s…側壁部(内側部領域)
18…三次元曲面部
19…三次元曲面
40…段部
50…リヤシート(車室内部品)