(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163551
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車両用温度制御システム
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20241115BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20241115BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241115BHJP
【FI】
B60K11/02
H01M10/615
H01M10/625
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079275
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100187045
【弁理士】
【氏名又は名称】梅澤 奈菜
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
(72)【発明者】
【氏名】辻 輝明
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】井田 博之
(72)【発明者】
【氏名】石野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】畠山 淳
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】本開示は、異なる温度の液状熱媒体を供給できる液体加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る車両用温度制御システム800は、液状熱媒体回路801と、液体加熱装置1と、複数の放熱用熱交換器61,62と、を備え、液体加熱装置は、タンクとヒータとを備え、タンクは、少なくとも一つの流路と、少なくとも一つの流路入口11,21と、複数の流路出口12,22とを有し、ヒータは、流路のうち一つの流路内に配置され、複数の流路出口は、第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、第1流路出口から流出する液状熱媒体は、第n流路出口から流出する液状熱媒体よりも相対的に低温であり、液状熱媒体回路は、第1~第n流路出口の各流路出口に接続された第1~第n分岐路801A,801Bを含み、複数の放熱用熱交換器は、第1~第n分岐路の各分岐路上にそれぞれ配置されている。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状熱媒体が循環する液状熱媒体回路(801,901)と、
前記液状熱媒体を温調する液体加熱装置(1,100)と、
前記液状熱媒体を放熱させる複数の放熱用熱交換器(61,62)と、を備え、
該液体加熱装置(1,100)は、前記液状熱媒体が流れるタンク(2,102)と、前記液状熱媒体を加熱するヒータ(3,103)と、を備え、
前記タンク(2,102)は、少なくとも一つの流路(10,20,110)と、少なくとも一つの流路入口(11,21,111)と、複数の流路出口(12,22,1121,1122)とを有し、
前記ヒータ(3)は、前記流路のうち一つの流路(20,110)内に配置され、
前記複数の流路出口(12,22,1121,1122)は、第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、
該第1流路出口(12,1121)から流出する前記液状熱媒体は、前記第n流路出口(22,1122)から流出する前記液状熱媒体よりも相対的に低温であり、
前記液状熱媒体回路(801,901)は、前記第1~第n流路出口の各流路出口(12,22,1121,1122)に接続された第1~第n分岐路(801A,801B,901A,901B)を含み、
前記複数の放熱用熱交換器(61,62)は、前記第1~第n分岐路の各分岐路(801A,801B,901A,901B)上にそれぞれ配置されていることを特徴とする車両用温度制御システム。
【請求項2】
前記液体加熱装置(100)は、
前記タンク(102)が、前記流路として一つの流路(110)を有し、
前記複数の流路出口(1121,1122)は、前記流路の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された前記第1~第n流路出口を含み、
前記流路入口(111)と前記第n流路出口(1122)との前記流れ方向の間に、前記第1流路出口(1121)があることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度制御システム。
【請求項3】
前記液体加熱装置(1)は、
前記タンク(2)が、第1室(2A)と、該第1室(2A)と区画された第2室(2B)と、を有し、
前記第1室(2A)は、前記流路として第1流路(10)と、前記流路入口として第1流路入口(11)と、前記第1流路出口(12)と、を有し、
前記第2室(2B)は、前記流路として第2流路(20)と、前記流路入口として第2流路入口(21)と、前記第n流路出口として第2流路出口(22)と、を有し、
前記第2流路(20)は、筒状の第2側壁(24)と、該第2側壁(24)の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の第2端壁(25a,25b)と、を有し、
前記ヒータ(3)は、前記第2流路(20)内に配置され、
前記第2流路出口(22)は、前記第2流路入口(21)よりも前記第2流路(20)の下流側に設けられ、
前記第1流路(10)は、前記第2側壁(24)に隣接し、かつ、該第1流路(10)と前記第2流路(20)とを隔てる前記第2側壁(24)は、熱交換壁であることを特徴とする請求項1に記載の車両用温度制御システム。
【請求項4】
前記液体加熱装置(100)は、前記ヒータ(103)として前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部(103a1,103a2)を有し、
前記第1~第n分岐路の各分岐路(901A,901B)は、開閉弁(906A,906B)を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用温度制御システム。
【請求項5】
前記開閉弁(906A,906B)は、絞り機能を有することを特徴とする請求項4に記載の車両用温度制御システム。
【請求項6】
前記液体加熱装置(100)は、前記ヒータ(103)として前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部(103a1,103a2)を有し、
前記第1~第n分岐路の各分岐路(901A,901B)は、ポンプ(907A,907B)を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用温度制御システム。
【請求項7】
前記第1分岐路(801A)は、前記放熱用熱交換器(61)を迂回する迂回路(801C)を有し、かつ、該迂回路(801C)を流れる流量と前記放熱用熱交換器(61)を流れる流量とを調整する分配比調整装置(806)を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用温度制御システム。
【請求項8】
前記第1流路出口(12)は、前記流路の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口(121~12m)を含み、
前記第1分岐路(801A)は、前記第1~第mの第1流路出口(121~12m)の各々の第1流路出口に接続された第1~第mの出口路(801A1,801A2)と、該第1~第mの出口路(801A1,801A2)を合流させる合流路(801A3)と、前記第mの出口路(801A2)から前記液状熱媒体を前記合流路(801A3)に流通させつつ、前記第1~第(m-1)の出口路(801A1)から前記合流路(801A3)に流通させる前記液状熱媒体の流量を調整する混合比調整装置(807)を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用温度制御システム。
【請求項9】
前記第1分岐路(801A,901A)上に配置される前記放熱用熱交換器(61)は、バッテリを加熱するバッテリ加熱用熱交換器であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の車両用温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液状熱媒体として温水が流通するタンク内に電熱式ヒータが収容された液体加熱装置が開示されている(例えば、特許文献1,2を参照。)。特許文献1,2の液体加熱装置は、車両用空調装置に適用されて、暖房運転を実行するために熱媒体として温水を加熱する装置であり、温水が流入口からタンク内へ供給されて加熱され、加熱された温水が一つの流出口から流出される。
【0003】
走行用エンジンの冷却水の循環ループに2つのヒーターコア(放熱用熱交換器)が接続された車両用空調装置が開示されている(例えば、特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-31069号公報
【特許文献2】特開2017-211093号公報
【特許文献3】特開平7-25219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3のように複数の放熱用熱交換器に液状熱媒体を供給するにあたり、各放熱用熱交換器で相互に異なる温度の液状熱媒体を要求される場合がある。しかし、特許文献1,2に開示されたような従来の液体加熱装置では、複数の放熱用熱交換器に供給される液状熱媒体の温度は相互に同じであり、前記の要求に応えられなかった。
【0006】
各放熱用熱交換器の放熱量に応じて、複数の液体加熱装置を配置する技術も考えられるが、車両の大型化及び温度制御システムの複雑化の問題があった。
【0007】
本開示は、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれの放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給できる車両用温度制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両用温度制御システムは、液状熱媒体が循環する液状熱媒体回路と、前記液状熱媒体を温調する液体加熱装置と、前記液状熱媒体を放熱させる複数の放熱用熱交換器と、を備え、該液体加熱装置は、前記液状熱媒体が流れるタンクと、前記液状熱媒体を加熱するヒータと、を備え、前記タンクは、少なくとも一つの流路と、少なくとも一つの流路入口と、複数の流路出口とを有し、前記ヒータは、前記流路のうち一つの流路内に配置され、前記複数の流路出口は、第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、該第1流路出口から流出する前記液状熱媒体は、前記第n流路出口から流出する前記液状熱媒体よりも相対的に低温であり、前記液状熱媒体回路は、前記第1~第n流路出口の各流路出口に接続された第1~第n分岐路を含み、前記複数の放熱用熱交換器は、前記第1~第n分岐路の各分岐路上にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記液体加熱装置は、前記タンクが、前記流路として一つの流路を有し、前記複数の流路出口は、前記流路の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された前記第1~第n流路出口を含み、前記流路入口と前記第n流路出口との前記流れ方向の間に、前記第1流路出口があることが好ましい。このような液体加熱装置を適用することで、一つの流路から異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0010】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記液体加熱装置は、前記タンクが、第1室と、該第1室と区画された第2室と、を有し、前記第1室は、前記流路として第1流路と、前記流路入口として第1流路入口と、前記第1流路出口と、を有し、前記第2室は、前記流路として第2流路と、前記流路入口として第2流路入口と、前記第n流路出口として第2流路出口と、を有し、前記第2流路は、筒状の第2側壁と、該第2側壁の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の第2端壁と、を有し、前記ヒータは、前記第2流路内に配置され、前記第2流路出口は、前記第2流路入口よりも前記第2流路の下流側に設けられ、前記第1流路は、前記第2側壁に隣接し、かつ、該第1流路と前記第2流路とを隔てる前記第2側壁は、熱交換壁であることが好ましい。このような液体加熱装置を適用することで、2系統で異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0011】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記液体加熱装置は、前記ヒータとして前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部を有し、前記第1~第n分岐路の各分岐路は、開閉弁を有することが好ましい。各放熱用熱交換器に要求される放熱量に応じてより適切な熱量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器に選択的に供給することができる。
【0012】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記開閉弁は、絞り機能を有することが好ましい。各放熱用熱交換器に要求される放熱量に応じてより適切な熱量、かつ、適切な流量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器に選択的に供給することができる。
【0013】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記液体加熱装置は、前記ヒータとして前記流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部を有し、前記第1~第n分岐路の各分岐路は、ポンプを有することが好ましい。各放熱用熱交換器に要求される放熱量に応じてより適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器に選択的に供給することができる。
【0014】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記第1分岐路は、前記放熱用熱交換器を迂回する迂回路を有し、かつ、該迂回路を流れる流量と前記放熱用熱交換器を流れる流量とを調整する分配比調整装置を有することが好ましい。第1分岐路上に配置された放熱用熱交換器に要求される放熱量に応じて、迂回路へ流す流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を第1分岐路上に配置された放熱用熱交換器に供給することができる。
【0015】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記第1流路出口は、前記流路の流れ方向に沿って、該流れ方向の上流側から順に配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口を含み、前記第1分岐路は、前記第1~第mの第1流路出口の各々の第1流路出口に接続された第1~第mの出口路と、該第1~第mの出口路を合流させる合流路と、前記第mの出口路から前記液状熱媒体を前記合流路に流通させつつ、前記第1~第(m-1)の出口路から前記合流路に流通させる前記液状熱媒体の流量を調整する混合比調整装置を有することが好ましい。第1分岐路上に配置された放熱用熱交換器に要求される放熱量に応じて、第mの出口路から合流させる流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を第1分岐路上に配置された放熱用熱交換器に供給することができる。
【0016】
本発明に係る車両用温度制御システムでは、前記第1分岐路上に配置される前記放熱用熱交換器は、バッテリを加熱するバッテリ加熱用熱交換器であることが好ましい。冬季など低温環境においてバッテリを適温に保持することができ、その結果、低温によってバッテリの性能が低下することを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれの放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給できる車両用温度制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置の第一例を示す平面概略図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置の第二例を示す平面概略図である。
【
図7】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置の第三例を示す平面概略図である。
【
図10】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置の第四例を示す平面概略図である。
【
図13】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される第一例~第四例の液体加熱装置の変形例を示す平面概略図である。
【
図14】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置の第五例を示す概略斜視図である。
【
図15】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される第五例の液体加熱装置の変形例を示す概略斜視図である。
【
図16】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される第五例の液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが1本である形態を示す。
【
図17】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される第五例の液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが2本である形態を示す。
【
図18】本実施形態に係る車両用温度制御システムに適用される第五例の液体加熱装置におけるタンクの変形例を示す概略断面図である。
【
図19】本実施形態に係る車両用温度制御システムの第一例を示す概略ブロック図である。
【
図20】本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システムの第一変形例を示す概略ブロック図である。
【
図21】本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システムの第二変形例を示す概略ブロック図である。
【
図22】
図20に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第一例を示す概略ブロック図であり、余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図である。
【
図23】
図22に示す第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。
【
図24】
図20に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第二例を示す概略ブロック図であり、余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図である。
【
図25】
図24に示す第二例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。
【
図26】
図21に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第三例を示す概略ブロック図であり、余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図である。
【
図27】
図26に示す第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。
【
図28】
図21に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第四例を示す概略ブロック図であり、余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図である。
【
図29】
図28に示す第四例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。
【
図30】本実施形態に係る車両用温度制御システムの第二例を示す概略ブロック図である。
【
図31】本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第一変形例を示す概略ブロック図である。
【
図32】本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第二変形例を示す概略ブロック図である。
【
図33】本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第三変形例を示す概略ブロック図である。
【
図34】本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第四変形例を示す概略ブロック図である。
【
図35】本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第五変形例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0020】
まず、本実施形態に係る車両用温度制御システムに好適な液体加熱装置の例をいくつか説明する。
【0021】
本実施形態に係る液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、
図1~
図3に示す第一例の液体加熱装置1A、
図4~
図6に示す第二例の液体加熱装置1B、
図7~
図9に示す第三例の液体加熱装置1C、及び
図10~
図12に示す第四例の液体加熱装置1Dを包含する。液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、液状熱媒体を加熱する装置であり、例えば、車両用空調装置に適用される。液状熱媒体は、常温で液体の熱媒体であり、例えば、水又はクーラントである。
【0022】
まず、代表して
図1~
図3を参照して、本実施形態に係る第一例~第四例の液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)に共通する全体構成について説明する。本実施形態に係る液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、
図1~
図3に示すように、液状熱媒体が流れるタンク2と、液状熱媒体を加熱するヒータ3(
図2、
図3に図示)と、を備える液体加熱装置において、タンク2は、第1室2Aと、第1室2Aと区画された第2室2Bと、を有し、第1室2Aは、第1流路10と、第1流路入口11と、第1流路出口12と、を有し、第2室2Bは、第2流路20と、第2流路入口21と、第2流路出口22と、を有し、第2流路20は、筒状の第2側壁24と、第2側壁24の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の第2端壁25a,25bと、を有し、ヒータ3は、第2流路20内に配置され、第2流路出口22は、第2流路入口21よりも第2流路20の下流側に設けられ、第1流路10は、第2側壁24に隣接し、かつ、第1流路10と第2流路20とを隔てる第2側壁24は、熱交換壁である。
【0023】
液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、
図2に示すように、少なくとも電子回路基板31を収容する電装室30を更に備えることが好ましい。電装室30は、タンク2の上部に設けられる。電装室30は、電装室隔壁33で形成されており、電装室隔壁33は、底部として電装室30とタンク2と隔てる区画壁33aを有する。電子回路基板31は、例えば、トランジスタ(例えばIGBT)32などの電装部品が接続され、ヒータ3の通電を制御する制御部となる。
【0024】
タンク2は、液状熱媒体を流通可能な内部空間を有し、該内部空間は第1室2Aと第2室2Bとに区画されている。第1室2Aを流れる液状熱媒体と第2室2Bを流れる液状熱媒体とは混合することなく、別系統で供給される。タンク2内を区画することで、複数系統で液状熱媒体の温度を相互に変えたり、液状熱媒体の成分を相互に変えたりすることができる。具体例としては、放熱用熱交換器の要求する放熱量に応じて、一つの液体加熱装置が、2系統で相対的に高温の液状熱媒体と相対的に低温の液状熱媒体とを供給することができる。また、例えば、放熱用熱交換器の特性に応じて、一つの液体加熱装置が、2系統で相対的に導電性が高い液状熱媒体と相対的に導電性が低い液状熱媒体とを供給することができる。
【0025】
第1室2Aは、相対的に低温の液状熱媒体を生成する低温室である。第1流路10は
図2に示すように第1周壁13で囲まれており、上流側から下流側に向けて液状熱媒体が通流する。第1周壁13は、第2側壁24の軸方向X2と同じ方向に延在する筒状の第1側壁14を有することが好ましい。第1側壁14の形状は、例えば、略円筒形状又は略楕円筒形状であることが好ましい。本明細書において、略円筒又は略楕円筒とは、細部にこだわらずおおよその外形状が円柱若しくは楕円柱又はこれらを傾斜させた柱状であることを意味しており、断面形状が真円又は真楕円である形状に限定されず、断面形状が歪んだ円若しくは楕円である形状、又は外形状が中心軸に対して内径を変化させた円錐台若しくは楕円錐台のような形状を包含することを意味している。また、
図2に示す第1側壁14のように、筒の一部が欠けている形状を包含する。第1流路入口11及び第1流路出口12は、第1周壁13に設けられ第1流路10に連通する開口であり、該開口から延びる筒状の接続部11a,12a(
図1に図示)を包含する。第1流路出口12は、第1流路入口11よりも第1流路10の下流側に設けられることが好ましい。第1側壁14の軸方向X1で第1流路入口11の位置及び第1流路出口12の位置を相互にずらすことがより好ましく、第1流路入口11を第1側壁14の軸方向X1の一方の端部側に設け、第1流路出口12を第1側壁14の軸方向X1の他方の端部側に設けることが特に好ましい。第1流路10が第2側壁24に隣接する距離をより長く確保することができ、第1流路10を流れる液状熱媒体が第2流路20を流れる液状熱媒体から受ける熱交換量をより大きくすることができる。ここで、第1側壁14の軸方向X1とは、第1側壁14の延在方向、言い換えると第1側壁14を構成する筒の長さ方向をいう。第1流路出口12は、第1流路入口11と比較して電装室30に近い位置に配置されていることが好ましい。これによって、第1流路10内に液状熱媒体が停留することを抑制することができる。また、第1流路10内に混入した気泡を効率的に排出することができる。第1室2Aでは、液状熱媒体が第1流路入口11から第1流路10に流入されて第1流路出口12から流出される。
【0026】
第2室2Bは、相対的に高温の液状熱媒体を生成する高温室である。第2流路20は
図2に示すように第2周壁23で囲まれており、内部にヒータ3が配置されるとともに上流側から下流側に向けて液状熱媒体が通流する。第2周壁23は、両端が閉塞した筒状であり、第2側壁24と一対の第2端壁25a,25bとを有する。第2側壁24は、筒状の側面となる壁である。第2側壁24の形状は、例えば、略円筒形状又は略楕円筒形状であることが好ましい。第2側壁24は、ヒータ3の軸方向に沿って延在することが好ましい。第2端壁25a,25bは、第2側壁24の両端の開口を閉塞する壁である。第2流路入口21及び第2流路出口22は、第2周壁23に設けられ第2流路20に連通する開口である。第2流路入口21及び第2流路出口22は、第2側壁24に設けられることが好ましい。特に、第2流路入口21が、第2側壁24に設けられることが好ましい。これによって、第2流路20を流れる液状熱媒体の流れを旋回流とすることができ、第1流路10を流れる液状熱媒体と効率的に熱交換することができる。第2流路出口22は、第2流路入口21よりも第2流路20の下流側に設けられる。第2側壁24の軸方向X2で第2流路入口21の位置及び第2流路出口22の位置を相互にずらすことがより好ましく、第2流路入口21を第2側壁24の軸方向X2の一方の端部側に設け、第2流路出口22を第2側壁24の軸方向X2の他方の端部側に設けることが特に好ましい。第2流路20を流れる液状熱媒体がヒータ3に接する時間をより長く確保することができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。ここで、第2側壁24の軸方向X2とは、第2側壁24の延在方向、言い換えると第2側壁24を構成する筒の長さ方向をいう。第2流路出口22は、第2流路入口21と比較して電装室30に近い位置に配置されていることが好ましい。これによって、第2流路20内に液状熱媒体が停留することを抑制することができる。また、第2流路20内に混入した気泡を効率的に排出することができる。第2室2Bでは、液状熱媒体が第2流路入口21から第2流路20に流入されて第2流路出口22から流出される。
【0027】
ヒータ3は、電気発熱式のヒータであり、液状熱媒体と熱交換して加熱可能なものであれば特に限定されないが、例えば、シーズヒータ又はPTCヒータである。ヒータ3は、発熱部3aと端子部3bとを有する。発熱部3aは、例えば、第2側壁24の軸方向X2に沿って配置されることが好ましい。発熱部3aの形状は、特に限定されないが、コイル状であるか(例えば
図2に図示)、直線状(不図示)又は第2流路20内を往復する形状(不図示)であってもよい。端子部3bは、例えば、一方の第2端壁25aを貫通して固定される。端子部3bには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタ32を介して電力が供給される。トランジスタ32はスイッチング動作によってヒータ3への電力の供給を制御する。これによって、ヒータ3は所望の温度に調整される。その結果、第2流路出口22から流出される液状熱媒体が所望の温度に調整される。
【0028】
第1流路10は、第2側壁24を介して第2流路20に隣接する。第1流路10と第2流路20とを隔てる第2側壁24は、熱交換壁である。本明細書において、熱交換壁とは、熱伝導率が高い部材からなる壁であり、当該壁を介して第2流路20を流れる液状熱媒体から第1流路10を流れる液状熱媒体へ熱エネルギーが移動可能な壁をいう。熱交換壁の材質は、例えば、アルミニウム若しくは銅などの金属材料又はこれらの合金材料である。第2側壁24は全体が熱交換壁となっているか、又は第1流路10と第2流路20とを隔てる部分だけが熱交換壁となっていてもよい。第1流路10が熱交換壁を介して第2流路20に隣接することで、例えば
図2に示す破線矢印h1のように第2流路20を流れる液状熱媒体の熱が第1流路10を流れる液状熱媒体に移動して、第1流路10を流れる液状熱媒体が温められる。第1流路10と第2流路20とを隔てる部分だけが熱交換壁となっている場合、タンク2は、一定の剛性を有し、加熱された液状熱媒体による腐食及び含浸に耐えられる材料であればよい。タンク2の熱交換壁以外の材質は、特に限定されないが、例えば、ナイロン6又はナイロン6,6が好適に用いられる。
【0029】
液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、第2流路入口21が、第1流路入口11と比較して電装室30に近い位置に配置されているか、第1流路入口11と比較して電装室30から遠い位置に配置されているか、又は第1流路入口11と同じ高さ位置に配置されていてもよい。
【0030】
液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、第2側壁24の軸方向X2を略水平方向に配置した状態が設置状態とされることが好ましい。ここで、略水平方向とは、第1室2Aと第1流路出口12との接続部分又は第2室2Bと第2流路出口22との接続部分がタンク2の概ね上方に位置する状態であれば特に限定はしないが、水平方向及び水平に対してなす角の大きさが20度以内の範囲にある向きを含む。液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)をこのように配置することで、タンク2の内部に意図せずに発生、あるいは侵入した気泡を円滑に排出することができる。本明細書では、上記設置状態における上下方向を、上方、下方ということがある。
【0031】
本実施形態に係る液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は次のように作用する。液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)では、液状熱媒体がタンク2の第1室2A及び第2室2Bを通流する。このとき、液状熱媒体は、第1流路入口11から第1流路10に流入するとともに、第2流路入口21から第2流路20に流入する。第2流路20に流入した液状熱媒体は、ヒータ3によって加熱される。これによって、所定の温度に加熱された液状熱媒体が第2流路出口22から流出する。一方、第1流路10に流入した液状熱媒体は、第2流路20を流れる液状熱媒体からの熱移動によって温められる。これによって、温められた液状熱媒体が第1流路出口12から流出する。第1流路出口12から流出する液状熱媒体の温度は、第2流路出口22から流出する液状熱媒体の温度よりも低い。以上の作用によって、液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、2系統で異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0032】
また、第1室2Aを通流する液状熱媒体と第2室2Bとで成分を変えることもできる。例えば、第1室2Aを通流する液状熱媒体を導電性が低い成分とし、第2室2Bを通流する液状熱媒体を導電性が高い成分とするか、又は第1室2Aを通流する液状熱媒体を導電性が高い成分とし、第2室2Bを通流する液状熱媒体を導電性が低い成分としてもよい。あるいは、第1室2Aを通流する液状熱媒体を一般的な成分(例えば、一般的な凍結防止剤や耐腐食剤)のみが添加された並級なものとし、第2室2Bを通流する液状熱媒体をヒータ3による熱分解が発生しにくい成分が添加された高級ものとしてもよい。
【0033】
(第一例の液体加熱装置)
次に、
図1~
図3を参照して第一例の液体加熱装置1Aについてより詳細に説明する。本実施形態に係る第一例の液体加熱装置1Aは、
図1に示すように、少なくとも電子回路基板31を収容する電装室30を更に備え、第2側壁24の周方向の一部分は、
図3に示すように電装室30に隣接し、第1流路10は、第2側壁24の周方向のうち電装室30に隣接していない部分に隣接するとともに、
図2に示すように第2流路20の流れ方向の一部分に隣接し、第2流路入口21は、第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられることが好ましい。
【0034】
第一例の液体加熱装置1Aでは、電装室隔壁33の区画壁33aは、第1側壁14及び第2側壁24と一体であるか、又は第1側壁14及び第2側壁24と別体であり第1側壁14及び第2側壁24に接合されていてもよい。電装室隔壁33の区画壁33aは、成形性の観点から、第1側壁14及び第2側壁24と一体であることがより好ましい。区画壁33aが第1側壁14及び第2側壁24と一体である形態とは、一つの隔壁が第1側壁14の一部及び第2側壁24の一部と区画壁33aの一部とを兼用している形態をいう。
【0035】
第一例の液体加熱装置1Aでは、第2側壁24の周方向の一部分は、区画壁33aの一部分となっているか又は区画壁33aの一部分と接合することで、第2流路20と電装室30とが区画壁33aを介して隣接する。本明細書において、第2側壁24の周方向とは、第2側壁24を構成する筒の外周に沿った方向をいう。電装室30は、
図2に示すように、第2流路20の流れ方向の全体に隣接するか、又は第2流路20の流れ方向の一部分に隣接してもよい(不図示)。
【0036】
第一例の液体加熱装置1Aでは、第2側壁24の周方向の残りの部分のうち第2側壁24の軸方向X2の一部分は、第1流路10に隣接する。言い換えると、第1流路10が、第2側壁24の電装室30に隣接していない部分のうち第2側壁24の軸方向X2の一部分を囲むように設けられる。そして、第1室2A及び第2室2Bが区画壁33aから下方にかけて設けられる。第1流路10が第2流路20の上方に隣接せず下方だけに隣接する。これによって、液体加熱装置1Aの大型化が防止される。また、第1流路10は第2流路20の流れ方向の全部には隣接せず一部分だけに隣接するので、より確実に液体加熱装置1Aの大型化が防止される。第1流路10が第2流路20の流れ方向に隣接する範囲は、特に限定されないが、第2側壁24の軸方向X2の長さの40~90%の範囲であることが好ましい。さらに、第1流路10が第2流路20の流れ方向に隣接する範囲が、第2側壁24の軸方向X2の長さの40~70%の範囲であることで、小型化及び軽量化するうえで好ましい。あるいは、第1流路10が第2流路20の流れ方向に隣接する範囲が、第2側壁24の軸方向X2の長さの70~90%の範囲であることで、大きな熱交換量を確保するうえで好ましい。第1流路10は、
図2に示すように第2側壁24の一方の端部に設けられた第2端壁25bよりも外側に延在していてもよい。第2流路20を流れる液状熱媒体の熱は、例えば
図2に示す破線矢印h1のように第1流路10を流れる液状熱媒体に移動して、第1流路10を流れる液状熱媒体が温められる。
【0037】
第一例の液体加熱装置1Aでは、第2流路入口21は、第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられる。これによって、第1流路10を貫通するような製作過程が不要となり、生産を容易化できる。
【0038】
第一例の液体加熱装置1Aでは、第2側壁24の外形状は、テーパー状であることが好ましい。製造時の型抜きをよりスムーズに行うことができる。
【0039】
第一例の液体加熱装置1Aでは、
図3に示すように、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30に近い位置に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、第1流路入口11から第1流路10に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の外面(第1流路10側の面)にぶつかり、第2側壁24の外面に沿って流れ、その流れは
図3に示す断面において矢印R1のような時計回りの旋回流となる。一方、第2流路入口21から第2流路20に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の内面(第2流路20側の面)に当たって、第2側壁24の内面に沿って流れ、その流れは
図3に示す断面において矢印R2のような反時計回りの旋回流となる。このように、第2側壁24の周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。本明細書において、対向流とは、第1流路10における液状熱媒体の流れ方向と第2流路20における液状熱媒体の流れ方向とが相互に逆方向であることをいう。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0040】
第1流路出口12は、
図2に示すように、第1側壁14のうち第2側壁24よりも第1側壁14の軸方向X1における外側に延出した部分に設けられ、かつ、第1流路入口11は第1側壁14のうち第1流路出口12が設けられた側とは第1側壁14の軸方向の反対側の端部に設けられることが好ましい。あるいは、図示しないが、第1流路入口11は、第1側壁14のうち第2側壁24よりも第1側壁14の軸方向X1における外側に延出した部分に設けられ、かつ、第1流路出口12は第1側壁14のうち第1流路入口11が設けられた側とは第1側壁14の軸方向の反対側の端部に設けられることが好ましい。これらによって、第1流路10が第2側壁24に隣接する距離をより長く確保することができ、第1流路10を流れる液状熱媒体が第2流路20を流れる液状熱媒体から受ける熱交換量をより大きくすることができる。
【0041】
第2流路入口21は、
図2に示すように、第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は第1流路10が隣接する部分側の第2端壁25bに設けられることが好ましい。これによって、第2流路20を流れる液状熱媒体がヒータ3に接する時間をより長く確保することができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
図2では、一例として第2流路出口22が第2端壁25bに設けられ、第2端壁25bから電装室30の横を通って液体加熱装置1Aの上方に向けて液状熱媒体を流出させるように構成されている形態を示した。
【0042】
第2流路入口21は
図2に示すように第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は第1流路10が隣接する部分側の第2端壁25bに設けられるとともに、第1流路入口11は図示しないが第1側壁14のうち第2側壁24よりも第1側壁14の軸方向X1における外側に延出した部分に設けられ、かつ、第1流路出口12は第1側壁14のうち第1流路入口11が設けられた側とは第1側壁14の軸方向の反対側の端部に設けられることが好ましい。この好ましい形態における第1流路入口11及び第1流路出口12の位置は
図2では図示されていないが、第1流路入口11は
図2における第1流路出口12の下方に位置する部分に設け、第1流路出口12は
図2における第1流路入口11の上方に位置する部分に設けることが好ましい。これによって、第1流路10における液状熱媒体の温度の高低分布と第2流路20における液状熱媒体の温度の高低分布とが逆方向となる。例えば、
図2に示す断面において、第1流路10では、液状熱媒体の温度は、右側が最も低く、左側へ行くほど高くなる。一方、第2流路20では、液状熱媒体の温度は、左側が最も低く、右側へ行くほど高くなる。このように構成することで、第2流路20を流れる液状熱媒体の熱エネルギーを、第1流路10を流れる液状熱媒体へより効率的に移動させることができる。
【0043】
(第二例の液体加熱装置)
次に、
図4~
図6を参照して第二例の液体加熱装置1Bについてより詳細に説明する。本実施形態に係る第二例の液体加熱装置1Bは、少なくとも電子回路基板31を収容する電装室30を更に備え、第1流路10は、電装室30に隣接するとともに、第2側壁24の周方向のうち一部分と隣接し、第2流路入口21は、第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられることが好ましい。
【0044】
第二例の液体加熱装置1Bでは、第1流路10が区画壁33aを介して電装室30に隣接する。第1流路10は、
図5に示すように、第1側壁14の軸方向X1における流れ方向の全体において電装室30に隣接するか、又は流れ方向の一部分において電装室30に隣接してもよい(不図示)。第1流路10は、
図5に示すように、電装室30よりも軸方向X1における外側に延在していてもよい。
【0045】
第二例の液体加熱装置1Bでは、電子回路基板31は、第1流路10と電装室30とを区画する区画壁33aに熱的に結合し、区画壁33aは熱交換壁であることが好ましい。電子回路基板31に接続される電装部品が区画壁33aに熱的に結合することがより好ましい。本明細書において、熱的に結合するとは、一方の物質から他方の物質へ熱を伝達可能な状態をいい、熱を伝達し合う物質同士は非接触状態であるか又は接触状態であってもよい。電子回路基板31は、区画壁33aと非接触状態であることが好ましい。電子回路基板31が区画壁33aに熱的に結合することで、電子回路基板31が発生する熱は、例えば
図5に示す破線矢印h2のように第1流路10を流れる液状熱媒体に伝達される。その結果、電子回路基板31の放熱を促進し、熱環境を改善することができる。一方で、第1流路10を流れる液状熱媒体は温められる。区画壁33aは、その全体が熱交換壁であってもよいし、区画壁33aのうち第1流路が隣接している部分だけが熱交換壁であってもよい。電子回路基板31に接続されるトランジスタ32などの電装部品は、電子回路基板31のうち第1流路10の上流側の上方に配置されることが好ましい。電装部品が第1流路10を流れる液状熱媒体のうちより低温の液状熱媒体と熱的に結合することで、電装部品をより効率的に放熱することができる。区画壁33aは、第1側壁14と一体であるか、又は第1側壁14と別体であり第1側壁14に接合されていてもよい。区画壁33aは、成形性の観点から、第1側壁14と一体であることがより好ましい。区画壁33aが第1側壁14と一体である形態とは、一つの隔壁が第1側壁14の一部と区画壁33aの一部とを兼用している形態をいう。区画壁33aが第1側壁14と別体である場合、第1側壁14及び区画壁33aの両方を熱交換壁とする。
【0046】
第二例の液体加熱装置1Bでは、第1流路10が、第2側壁24の周方向の一部分を囲むように設けられる。第1流路10は、第2流路20の下方に隣接せず上方だけに隣接する。これによって、液体加熱装置1Bの大型化が防止される。第二例の液体加熱装置1Bでは、第1流路10は、第2流路20の流れの方向の全体に隣接する。第2流路20を流れる液状熱媒体の熱は、例えば
図5に示す破線矢印h1のように第1流路10を流れる液状熱媒体に移動して、第1流路10を流れる液状熱媒体が温められる。
【0047】
第二例の液体加熱装置1Bでは、第2流路入口21は、第2側壁24のうち第1流路10が隣接していない部分に設けられる。これによって、第2流路20を貫通するような製作過程が不要となり、生産を容易化できる。
【0048】
第二例の液体加熱装置1Bでは、
図6に示すように、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30から遠い位置に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、第1流路入口11から第1流路10に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の外面(第1流路10側の面)にぶつかり、第2側壁24の外面に沿って流れ、その流れは
図6に示す断面において矢印R1のように反時計回りの旋回流となる。一方、第2流路入口21から第2流路20に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の内面(第2流路20側の面)に当たって、第2側壁24の内面に沿って流れ、その流れは
図6に示す断面において矢印R2のように時計回りの旋回流となる。このように、第2側壁24の周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0049】
第1流路出口12は、
図4に示すように、第1側壁14のうち第1側壁14の軸方向X1の一方の端部に設けられ、かつ、第1流路入口11は第1側壁14のうち第1側壁14の軸方向X1の他方の端部に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10が第2側壁24に隣接する距離をより長く確保することができ、第1流路10を流れる液状熱媒体が第2流路20を流れる液状熱媒体から受ける熱交換量をより大きくすることができる。
【0050】
第2流路入口21は、
図5に示すように、第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は他方の第2端壁25bに設けられることが好ましい。これによって、第2流路20を流れる液状熱媒体がヒータ3に接する時間をより長く確保することができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
図5では、一例として第2流路出口22が第2端壁25bに設けられ、第2端壁25bから第1流路10側とは反対側、すなわち液体加熱装置1Bの下方に向けて液状熱媒体を流出させるように構成されている形態を示した。
【0051】
第2流路入口21は、
図5に示すように、第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は他方の第2端壁25bに設けられるとともに、第1流路入口11は第1側壁14のうち第2端壁25bに近い部分に設けられ、かつ、第1流路出口12は第1側壁14のうち第1流路入口11が設けられた側とは第1側壁14の軸方向X1の反対側の端部に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10における液状熱媒体の温度の高低分布と第2流路20における液状熱媒体の温度の高低分布とが逆方向となる。例えば、
図5に示す断面において、第1流路10では、液状熱媒体の温度は、右側が最も低く、左側へ行くほど高くなる。一方、第2流路20では、液状熱媒体の温度は、左側が最も低く、右側へ行くほど高くなる。このように構成することで、第2流路20を流れる液状熱媒体の熱エネルギーを、第1流路10を流れる液状熱媒体へより効率的に移動させることができる。
【0052】
(第三例の液体加熱装置)
次に、
図7~
図9を参照して第三例の液体加熱装置1Cについてより詳細に説明する。本実施形態に係る第三例の液体加熱装置1Cでは、第1流路10は、第2側壁24を取り囲んでおり、第1流路10と第2流路20とが2重筒構造をなしていることが好ましい。
【0053】
第三例の液体加熱装置1Cでは、第1流路10が区画壁33aを介して電装室30に隣接することが好ましい。第1流路10は、
図8に示すように、第1側壁14の軸方向X1における流れ方向の全体において電装室30に隣接するか、又は流れ方向の一部分において電装室30に隣接してもよい(不図示)。第1流路10は、
図8に示すように、電装室30よりも軸方向X1における外側に延在していてもよい。
【0054】
第三例の液体加熱装置1Cでは、電子回路基板31は、第1流路10と電装室30とを区画する区画壁33aに熱的に結合し、区画壁33aは熱交換壁であることが好ましい。電子回路基板31が区画壁33aに熱的に結合することで、電子回路基板31が発生する熱は、例えば
図8に示す破線矢印h2のように第1流路10を流れる液状熱媒体に伝達される。その結果、電子回路基板31の放熱を促進し、熱環境を改善することができる。一方で第1流路10を流れる液状熱媒体は温められる。区画壁33aは、その全体が熱交換壁であってもよいし、区画壁33aのうち第1流路10が隣接している部分だけが熱交換壁であってもよい。電子回路基板31に接続されるトランジスタ32などの電装部品は、電子回路基板31のうち第1流路10の上流側の上方に配置されることが好ましい。電装部品が第1流路10を流れる液状熱媒体のうちより低温の液状熱媒体と熱的に結合することで、電装部品をより効率的に放熱することができる。区画壁33aは、第1側壁14と一体であるか、又は第1側壁14と別体であり第1側壁14に接合されていてもよい。区画壁33aは、成形性の観点から、第1側壁14と一体であることがより好ましい。区画壁33aが第1側壁14と一体である形態とは、一つの隔壁が第1側壁14の一部と区画壁33aの一部とを兼用している形態をいう。区画壁33aが第1側壁14と別体である場合、第1側壁14及び区画壁33aの両方を熱交換壁とする。
【0055】
第三例の液体加熱装置1Cでは、第1流路10は、
図9に示すように、第2側壁24を取り囲んでおり、第1流路10と第2流路20とが2重筒構造をなしている。第2流路20を流れる液状熱媒体の熱は、例えば
図8に示す破線矢印h1のように第1流路10を流れる液状熱媒体に移動して、第1流路10を流れる液状熱媒体が温められる。このように、第2室2Bで発生する熱を、第1室2Aを流れる液状熱媒体に十分に伝えることができる。第三例の液体加熱装置1Cでは、第1流路10は、第1側壁14の軸方向X1における第2流路20の流れの方向の全体に隣接する。第1流路10は、
図8に示すように第2側壁24の一方の端部に設けられた第2端壁25bよりも軸方向X1における外側に延在していてもよい。
【0056】
第三例の液体加熱装置1Cでは、
図9に示すように、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30から遠い位置に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、第1流路入口11から第1流路10に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の外面(第1流路10側の面)にぶつかり、第2側壁24の外面に沿って流れ、その流れは
図9に示す断面において矢印R1のような反時計回りの旋回流となる。一方、第2流路入口21から第2流路20に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の内面(第2流路20側の面)に当たって、第2側壁24の内面に沿って流れ、その流れは
図9に示す断面において矢印R2のような時計回りの旋回流となる。このように、第2側壁24の周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0057】
また、第三例の液体加熱装置1Cでは、図示しないが、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30に近い位置に配置されていてもよい。このように構成することによって、第2側壁24の周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0058】
第1流路出口12は、
図8に示すように、第1側壁14のうち第1側壁14の軸方向X1の一方の端部に設けられ、かつ、第1流路入口11は第1側壁14のうち第1側壁14の軸方向X1の他方の端部に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10が第2側壁24に隣接する距離をより長く確保することができ、第1流路10を流れる液状熱媒体が第2流路20を流れる液状熱媒体から受ける熱交換量をより大きくすることができる。
【0059】
第2流路入口21は、
図8に示すように、第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は他方の第2端壁25bに設けられることが好ましい。これによって、第2流路20を流れる液状熱媒体がヒータ3に接する時間をより長く確保することができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
図8では、一例として第2流路出口22が第2端壁25bに設けられ、第2端壁25bから第1流路10を貫通し、電装室30の横を通って液体加熱装置1Cの上方に向けて液状熱媒体を流出させるように構成されている形態を示した。
【0060】
第2流路入口21は、
図8に示すように、第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は他方の第2端壁25bに設けられるとともに、第1流路入口11は第1側壁14のうち第2端壁25bに近い部分に設けられ、かつ、第1流路出口12は第1側壁14のうち第1流路入口11が設けられた側とは第1側壁14の軸方向X1の反対側の端部に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10における液状熱媒体の温度の高低分布と第2流路20における液状熱媒体の温度の高低分布とが逆方向となる。例えば、
図8に示す断面において、第1流路10では、液状熱媒体の温度は、右側が最も低く、左側へ行くほど高くなる。一方、第2流路20では、液状熱媒体の温度は、左側が最も低く、右側へ行くほど高くなる。このように構成することで、第2流路20を流れる液状熱媒体の熱エネルギーを、第1流路10を流れる液状熱媒体へより効率的に移動させることができる。
【0061】
(第四例の液体加熱装置)
次に、
図10~
図12を参照して第四例の液体加熱装置1Dについてより詳細に説明する。本実施形態に係る第四例の液体加熱装置1Dでは、第2側壁24は、
図11、
図12に示すように、筒状の内壁24aと内壁24aの外側に設けられた筒状の外壁24bとを有し、第1流路10は、内壁24a内の空間であり、第1流路10と第2流路20とが2重筒構造をなしていることが好ましい。
【0062】
第四例の液体加熱装置1Dでは、第2流路20が区画壁33aを介して電装室30に隣接することが好ましい。第2流路20は、
図11に示すように、第1側壁14の軸方向X1における流れ方向の全体において電装室30に隣接するか、又は流れ方向の一部分において電装室30に隣接してもよい(不図示)。第2流路20は、
図11に示すように、電装室30よりも軸方向X1における外側に延在していてもよい。
【0063】
第四例の液体加熱装置1Dでは、第2側壁24の内壁24aが、
図12に示すように、第1側壁14をなしており、第2流路20は第1流路10を取り囲むように構成される。そして、第1流路10と第2流路20とが2重筒構造をなしている。第2流路20を流れる液状熱媒体の熱は、例えば
図11に示す破線矢印h1のように第1流路10を流れる液状熱媒体に移動して、第1流路10を流れる液状熱媒体が温められる。このようにして、第2室2Bで発生する熱を、第1室2Aを流れる液状熱媒体に十分に伝えることができる。第四例の液体加熱装置1Dでは、第2流路20は、軸方向X1における第1流路10の流れの方向の全体に隣接する。第2流路20は、
図11に示すように第1流路10よりも軸方向X1における外側に延在していてもよい。また、
図12に示すように、ヒータ3の螺旋状の発熱部3aが、内壁24a(第1側壁14)を取り囲むように配置されることが好ましい。ヒータ3の熱を、内壁24aの全周から第1流路10を流れる液状熱媒体に伝えることができる。
【0064】
第四例の液体加熱装置1Dでは、
図12に示すように、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30に近い位置に配置されていることが好ましい。このように構成することによって、第1流路入口11から第1流路10に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の内壁24aにぶつかり、内壁24aに沿って流れ、その流れは
図12に示す断面において矢印R1のような時計回りの旋回流となる。一方、第2流路入口21から第2流路20に流入した液状熱媒体の流れは、第2側壁24の内壁24aに当たって、内壁24aの外壁24b側の面に沿って流れ、その流れは
図12に示す断面において矢印R2のような反時計回りの旋回流となる。このように、第2側壁24の内壁24aの周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0065】
また、第四例の液体加熱装置1Dでは、図示しないが、第2流路入口21は、第1流路入口11と比較して電装室30から遠い位置に配置されていてもよい。このように構成することによって、第2側壁24の内壁24aの周方向を基準として、第1流路10における液状熱媒体の流れと第2流路20における液状熱媒体の流れとを対向流とすることができる。対向流によって、熱交換量をより大きくすることができる。
【0066】
第1流路出口12は、
図11に示すように、内壁24aのうち第2側壁24の軸方向X2の一方の端部に設けられ、かつ、第1流路入口11は内壁24aのうち第2側壁24の軸方向X2の他方の端部を塞ぐ第1端壁15に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10が第2側壁24に隣接する距離をより長く確保することができ、第1流路10を流れる液状熱媒体が第2流路20を流れる液状熱媒体から受ける熱交換量をより大きくすることができる。
図11では、一例として第1流路出口12が第1端壁15に設けられ、第1端壁15から第2流路20を貫通し、電装室30の横を通って液体加熱装置1Dの上方に向けて液状熱媒体を流出させるように構成されている形態を示した。
【0067】
第2流路入口21は、
図11に示すように、第2側壁24のうち他方の第2端壁25bに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられるか、又は、第2流路入口21は、第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は第2側壁24のうち他方の第2端壁25bに近い部分に設けられる(不図示)ことが好ましい。これによって、第2流路20を流れる液状熱媒体がヒータ3に接する時間をより長く確保することができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
【0068】
第2流路入口21は、
図11に示すように、第2側壁24のうち他方の第2端壁25bに近い部分に設けられ、かつ、第2流路出口22は第2側壁24のうち一方の第2端壁25aに近い部分に設けられるとともに、第1流路出口12は、内壁24aのうち第2側壁24の軸方向X2の他方の端部に設けられ、かつ、第1流路入口11は内壁24aのうち第2側壁24の軸方向X2の一方の端部を塞ぐ第1端壁15に設けられることが好ましい。これによって、第1流路10における液状熱媒体の温度の高低分布と第2流路20における液状熱媒体の温度の高低分布とが逆方向となる。例えば、
図11に示す断面において、第1流路10では、液状熱媒体の温度は、左側が最も低く、右側へ行くほど高くなる。一方、第2流路20では、液状熱媒体の温度は、右側が最も低く、左側へ行くほど高くなる。このように構成することで、第2流路20を流れる液状熱媒体の熱エネルギーを、第1流路10を流れる液状熱媒体へより効率的に移動させることができる。
【0069】
ここまで、
図1~
図12を参照して液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)の実施形態の例を説明してきたが、これらは例示に過ぎず、本発明はこれらの構成のみに限定されない。本発明は、本発明の効果を奏する限り、種々の変形形態を包含する。変形形態の一例としては、液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)が複数の第1流路出口12を有していてもよい。
図13は、液体加熱装置の変形例を示す概略平面図である。
図13では代表して
図1~
図3に示す第一例の液体加熱装置1Aの変形例を示しているが、
図4~
図12に示す第二~第四例の液体加熱装置1B,1C,1Dにおいても同様の変形をすることができる。本実施形態に係る液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)では、
図13に示すように、第1流路出口12は、第1流路10の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口12
1~12
mを含むことが好ましい。
図13では一例としてmが2である形態、すなわち、第1流路出口12が第1の第1流路出口12
1と第2の第1流路出口12
2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、mは3以上であってもよい。このとき、第1の第1流路出口12
1は、第1流路入口11と第mの第1流路出口12
mとの第1流路10の流れ方向の間にあることが好ましい。第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口12
1~12
mは、第1側壁14の軸方向X1に延びる同一直線上に配置されるか、又は第1側壁14の軸方向X1に延びる異なる直線上に配置されてもよい。
【0070】
第1流路出口12が、第1流路10の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口12(121~12m)を含む場合、各第1流路出口12から排出される液状熱媒体の温度は、第1流路10の最上流側に配置された第1の第1流路出口12(121)から流出する液状熱媒体の温度が最も低く、第1流路10の最下流側に配置された第mの第1流路出口12(12m)から流出する液状熱媒体の温度が最も高くなる。これによって、液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、2系統で異なる温度の液状熱媒体を供給するとともに、目標温度に応じて第1流路出口12(121~12m)から流出する液状熱媒体の温度を調整することができる。
【0071】
(第五例の液体加熱装置)
図14は、本実施形態に係る液体加熱装置の一例を示す概略斜視図である。本実施形態に係る液体加熱装置100は、
図14に示すように、液状熱媒体が流れるタンク102と、液状熱媒体を加熱するヒータ103と、を備える液体加熱装置において、タンク102は、一つの流路110と、少なくとも一つの流路入口111と、複数の流路出口112(112
1~112
n)と、を有し、ヒータ103は、流路110内に配置され、複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に、第1流路出口112
1がある。
【0072】
本実施形態に係る液体加熱装置100は、液状熱媒体を加熱する装置であり、例えば、車両用空調装置に適用される。液状熱媒体は、常温で液体の熱媒体であり、例えば、水又はクーラントである。
【0073】
液体加熱装置100は、
図14に示すように、少なくとも電子回路基板を収容する電装室130を更に備えることが好ましい。電装室130は、タンク102の上部に設けられる。電子回路基板は、例えば、トランジスタ(例えばIGBT)などの電装部品が接続され、ヒータ103の通電を制御する制御部となる。
【0074】
タンク102は、液状熱媒体を流通可能な1つの内部空間を有し、この内部空間が流路110となる。流路110は周壁113で囲まれており、空間内にはヒータ103が配置されて上流側から下流側に向けて液状熱媒体が通流する。周壁113の材質は、一定の剛性を有し、加熱された液状熱媒体による腐食及び含浸に耐えられる材質であればよく特に限定されないが、例えば、ナイロン6又はナイロン6,6が好適に用いられる。これによって、液体加熱装置100を軽量化できる。あるいは、周壁113の材質は、アルミニウム合金が好適に用いられる。これによって、液体加熱装置100の剛性をより十分に確保できる。周壁113は、両端が閉塞した筒状であることが好ましく、筒状の側壁114と一対の端壁115a,115bとを有する。側壁114の形状は、特に限定されないが、例えば、略円筒形状又は略楕円筒形状であることが好ましい。本明細書において、略円筒又は略楕円筒とは、細部にこだわらずおおよその外形状が円柱若しくは楕円柱又はこれらを傾斜させた柱状であることを意味しており、断面形状が真円又は真楕円である形状に限定されず、断面形状が歪んだ円若しくは楕円である形状、又は外形状が中心軸に対して内径を変化させた円錐台若しくは楕円錐台のような形状を包含することを意味している。また、側壁114は、筒の一部が欠けている形状を包含する。
【0075】
流路入口111及び流路出口112(112
1~112
n)は、周壁113に設けられ流路110に連通する開口であり、該開口から延びる筒状の接続部111a,112a(
図14に図示)を包含する。流路出口112(112
1~112
n)は、流路入口111と比較して電装室130に近い位置に配置されていることが好ましい。このように、流路入口111を下側、流路出口112(112
1~112
n)を上側に配置することで、設置時又はメンテナンス時に流路110内に混入した気泡を効率的に排出することができる。
図14では一例として、流路入口111が端壁115bに設けられ、流路出口112(112
1~112
n)が側壁114に設けられる形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、
図15に示すように、流路入口111及び流路出口112(112
1~112
n)の両方が側壁114に設けられてもよい。
図15に示すように流路入口111を側壁114に設けることで、流路110を流れる液状熱媒体の流れを側壁114の内面に沿った旋回流とすることができ、液状熱媒体をより効率的に加熱することができる。
【0076】
複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に第1流路出口112
1、第2流路出口112
2、・・・第n流路出口112
nが配置される。nは2以上の自然数であり、
図14では一例として、nが2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、nが3以上であってもよい。
図14に例示する形態では、上流側の流路出口112は第1流路出口112
1であり、下流側の流路出口112は第2流路出口112
2である。ここで、流路110の流れ方向に沿って配置されるとは、流路110の上流側から下流側に向かって、第1流路出口112
1、・・第n流路出口112
nの順番が、nが小さい順に並んでいることをいう。第1流路出口112
1は、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に配置される。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体を適度に加熱することができる。第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体を過度に加熱しないことができる、とも言える。流路出口112(112
1~112
n)は、流路入口111よりも流路110の下流側に設けられることが好ましい。側壁114の軸方向X3で流路入口111の位置及び流路出口112の位置を相互にずらすことがより好ましく、流路入口111を側壁114の軸方向X3の一方の端部側に設け、第n流路出口112
nを側壁114の軸方向X3の他方の端部側に設けることが特に好ましい。流路110を長く確保することができる。ここで、側壁114の軸方向X3とは、側壁114の延在方向、言い換えると側壁114を構成する筒の長さ方向をいう。
【0077】
図16は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが1本である形態を示す。
図16は、タンク102の内部が見えるように側壁114の一部を透視して図示している。ヒータ103は、電気発熱式のヒータであり、液状熱媒体と熱交換して加熱可能なものであれば特に限定されないが、例えば、シーズヒータ又はPTCヒータである。ヒータ103は、発熱部103aと端子部103bとを有する。発熱部103aは、例えば、側壁114の軸方向X3に沿って配置されることが好ましい。発熱部103aの形状は、特に限定されないが、
図16に示すようにコイル状であるか、直線状(不図示)又は流路110内を往復する形状(不図示)であってもよい。端子部103bは、例えば、端壁115aを貫通して固定される。端子部103bには、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのトランジスタを介して電力が供給される。トランジスタはスイッチング動作によってヒータ103への電力の供給を制御する。これによって、ヒータ103は所望の温度に調整される。その結果、各流路出口112(112
1~112
n)から流出される液状熱媒体が所望の温度に調整される。
【0078】
液体加熱装置100は、側壁114の軸方向X3を略水平方向に配置した状態が設置状態とされることが好ましい。ここで、略水平方向とは、側壁114と流路出口112(1121~112n)との接続部分がタンク102の概ね上方に位置する状態であれば特に限定はしないが、水平方向及び水平に対してなす角の大きさが20度以内の範囲にある向きを含む。液体加熱装置100をこのように配置することで、タンク102の内部に意図せずに発生、あるいは侵入した気泡を円滑に排出することができる。本明細書では、上記設置状態における上下方向を、上方、下方ということがある。
【0079】
本実施形態に係る液体加熱装置100は次のように作用する。液体加熱装置100では、液状熱媒体がタンク102を通流する。このとき、液状熱媒体は、流路入口111から流路110に流入する。流路110に流入した液状熱媒体は、ヒータ103によって加熱されて、上流側の各流路出口112(1121~112n)から順次流出される。液状熱媒体の温度は、流路110の下流へ行くほど高くなる傾向がある。本実施形態に係る液体加熱装置100はこの傾向を利用して、複数の流路出口112(1121~112n)を流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置することで、各流路出口112(1121~112n)から流出される液状熱媒体の温度を相互に異なる温度とすることができる。より具体的には、各流路出口112(1121~112n)から排出される液状熱媒体の温度は、流路110の最上流側に配置された第1流路出口1121から流出する液状熱媒体の温度が最も低く、流路110の最下流側に配置された第n流路出口112nから流出する液状熱媒体の温度が最も高くなる。nが2である形態を例にとって説明すると、流路110に流入した液状熱媒体の一部は、第1流路出口1121から流出され、液状熱媒体の残りは第1流路出口1121よりも流路110の下流へ流れ、第2流路出口1122から流出される。第1流路出口1121から流出する液状熱媒体の温度は、第2流路出口1122から流出する液状熱媒体の温度よりも低い。以上の作用によって、液体加熱装置100は、一つの流路110から異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0080】
図17は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの一例を示す概略平面図であり、ヒータが2本である形態を示す。
図17は、タンク102の内部が見えるように側壁114の一部を透視して図示している。本実施形態に係る液体加熱装置100は、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、複数のヒータ部103a1,103a2は、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を含むことが好ましい。
【0081】
図17を参照して、ヒータが複数のヒータ部を有する形態の一例を説明する。本実施形態に係る液体加熱装置100は、
図17に示すように、複数本のヒータ103A,103Bを有し、該複数本のヒータ103A,103Bは、第1ヒータ部103a1として第1発熱部と第1発熱部に送電する第1端子部とを有するヒータ103Aと、第2ヒータ部103a2として第2発熱部と第2発熱部に送電する第2端子部103b2とを有するヒータ103Bと、を含み、第1ヒータ部103a1は、前記第1端子部103b1から電力が供給されることで発熱し、かつ、第2ヒータ部103a2は、第2端子部103b2から電力が供給されることで発熱することが好ましい。
図17ではヒータ103が2本である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、ヒータ103が3本以上であってもよい。このように、複数のヒータ部103a1,103a2を、相互に異なるヒータ103A,103Bの発熱部とし、各ヒータ103A,103Bの電力供給を制御することで、より精密な温度制御をすることができる。例えば、次のような制御をすることができる。第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度として高めの温度が求められ、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度として第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体よりも高い温度が求められる場合は、第1ヒータ103A及び第2ヒータ103Bの両方へ電力を供給する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば2kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば5kW/hとすることができる。また、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度と第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度とを同程度とすることが求められる場合は、第1ヒータ103Aだけへ電力を供給し、第2ヒータ103Bへの電力供給を停止する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量及びを例えば1kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば1kW/hとすることができる。あるいは、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度として低めの温度が求められ、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体の温度を高めの温度とすることが求められる場合は、第1ヒータ103Aへの電力供給を停止し、第2ヒータ103Bだけへ電力を供給する。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体に与えられる熱量及びを例えば0.7kW/hとし、第n流路出口112
nから流出される液状熱媒体に与えられる熱量を例えば2.5kW/hとすることができる。
【0082】
複数のヒータ部を配置する場合、各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)同士の発熱量は、それぞれ適宜設定することができる。例えば各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に異なる発熱量としてもよいし、各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に同じとしてもよい。各ヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の発熱量を相互に異なる発熱量とする場合、流路110の流れ方向に沿ったヒータ103A,103B(ヒータ部103a1,103a2)の並び順と発熱量の大小との組合せは特に限定されず、例えば、上流側へ向かうほど発熱量が多いヒータ部を配置してもよいし、上流側へ向かうほど発熱量が少ないヒータ部を配置してもよい。あるいは、相対的に発熱量が多いヒータ部同士の間に相対的に発熱量が少ないヒータ部を配置したり、相対的に発熱量が少ないヒータ部同士の間に相対的に発熱量が多いヒータ部を配置したりしてもよい。
【0083】
本実施形態に係る液体加熱装置100では、第1ヒータ部103a1の発熱量は、第2ヒータ部103a2の発熱量よりも多いことが好ましい。本実施形態は、下記に例示する液状熱媒体の流量及び液状熱媒体の温度に限定されず、液状熱媒体の流量及び液状熱媒体の温度は適宜設定することができる。第1ヒータ部103a1は、流路入口111から例えば10L/minの流量及び例えば30℃の温度で流入してきたすべての液状熱媒体の昇温を担う。そして、第1ヒータ部103a1で例えば60℃に加熱された液状熱媒体の一部が例えば3L/minの流量で第1流路出口1121から流出する。第2ヒータ部103a2は、第1ヒータ部103a1によって昇温され、かつ、第1流路出口1121から流出しなかった残りの液状熱媒体の更なる昇温を担う。第2ヒータ部103a2で加熱された液状熱媒体は例えば90℃まで昇温され、例えば7L/minの流量で第2流路出口1122から流出する。すなわち、この形態では、第1ヒータ部103a1は、10L/min及び温度差30℃の液状熱媒体の昇温を担うため、第1ヒータ部103a1が液状熱媒体に供給する熱量は300L・℃/minとなる。また、第2ヒータ部103a2は、7L/min及び温度差30℃の液状熱媒体の昇温を担うため、第2ヒータ部103a2が液状熱媒体に供給する熱量は210L・℃/minとなる。したがって、下流側に配置されるヒータ部(第2ヒータ部)103a2の発熱量は上流側に配置されるヒータ部(第1ヒータ部)103a1の発熱量よりも少なくすることで、より省電力化することができる。
【0084】
図17に示す本実施形態に係る液体加熱装置100のように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2とは、それぞれ流路110に配置された別個のヒータ103A,103Bの発熱部であり、各ヒータ103A,103Bは、それぞれ、端壁115a、115bのいずれかを貫通して固定される端子部103b1,103b2を有し、各端子部103b1,103b2には、それぞれ、電力が供給されることが好ましい。これにより、より精密な温度制御をすることができる。
【0085】
本実施形態に係る液体加熱装置では、第1流路出口112
1は、
図17に示すように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられていることが好ましい。これによって、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度は、液状熱媒体の流量が一定である場合、第1ヒータ部103a1の発熱量によって一義的に決まるため、より精密な温度制御をすることができる。境界領域は、例えば、第1ヒータ部103a1の下流端を含む部分、第2ヒータ部103a2の上流端を含む部分、又は第2ヒータ部103a2の第1ヒータ部103a1に近接する部分である。
【0086】
図14~
図17では、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が流路110の流れ方向に沿って略一定である形態を示したが、タンク102の縦断面積は流路110の流れ方向に沿って不定であってもよい。
図18は、本実施形態に係る液体加熱装置におけるタンクの変形例を示す概略断面図である。
図18において、ヒータ103は断面ではなく、正面視した状態を示している。本実施形態に係る液体加熱装置100では、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が、流路110の下流へ行くほど小さくなることが好ましい。これによって、液体加熱装置の小型化及び軽量化を図ることができる。第1流路出口112
1から第2流路出口112
2までのタンク102の縦断面積が、流路入口111から第1流路出口112
1までのタンク102の縦断面積よりも小さいことがより好ましい。タンク102では、第1流路出口112
1から第2流路出口112
2までの領域は、流路入口111から第1流路出口112
1までの領域よりも液状熱媒体の流量が少ない。タンク102の断面積を液状熱媒体の流量に合わせて小さくすることで、液状熱媒体をより効率的に加熱することができるとともに、液体加熱装置の小型化及び軽量化を図ることができる。より好ましくは、
図18に示すように、タンク102を上下方向に縦断した縦断面積が、流路110の下流へ行くほど小さくなり、かつ、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、複数のヒータ部103a1,103a2は、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を含む形態である。更に好ましくは、当該形態において、
図18に示すように、第1流路出口112
1が第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられている形態である。
【0087】
ここまで、液体加熱装置100が2個の流路出口112を有する形態を例にとって説明してきたが、これらは例示に過ぎず、本発明はこれらの構成のみに限定されない。本発明は、本発明の効果を奏する限り、種々の変形形態を包含する。変形形態の一例としては、液体加熱装置100が、複数の流路出口112として、流れ方向の上流側から順に配置された第1流路出口1121、第2流路出口1122及び第3流路出口1123を含み、複数のヒータ103として、流れ方向の上流側から順に配置された第1ヒータ部、第2ヒータ部及び第3ヒータ部を含む形態である。この形態において、第1ヒータ部の発熱量は、第2ヒータ部の発熱量よりも多く、かつ、第2ヒータ部の発熱量は、第3ヒータ部の発熱量よりも多いことが好ましい。また、第1流路出口1121は、第1ヒータ部と第2ヒータ部との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられ、第2流路出口1122は、第2ヒータ部と第3ヒータ部との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁114に設けられることが好ましい。
【0088】
図17ではヒータが複数のヒータ部を有する形態の一例として、液体加熱装置100が、複数本のヒータ103A,103Bを備えており、該複数本のヒータ103A,103Bのそれぞれの発熱部が複数のヒータ部103a1,103a2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、液体加熱装置100が、
図16に示すように1本のヒータ103を備え、該1本のヒータ103が流れ方向に沿って複数の発熱領域(不図示)を有しており、該複数の発熱領域を複数のヒータ部103a1,103a2としてもよい。すなわち、ヒータが複数のヒータ部を有する形態の別の例について、
図16を参照して説明すると、本実施形態に係る液体加熱装置100は、1本のヒータ103を有し、1本のヒータ103は、流れ方向に沿って配置された複数の発熱領域(不図示)と、複数の発熱領域に送電する端子部103bと、を有し、複数の発熱領域は、第1ヒータ部と第2ヒータ部とを有し、第1ヒータ部及び第2ヒータ部は、端子部103bから電力が供給されることで発熱することが好ましい。これによって、構造及び制御の複雑化を防止した液体加熱装置とすることができる。1本のヒータ103に複数の発熱領域を設ける方法は、特に限定されないが、1本の発熱体の中で発熱線の密度を変えて発熱分布を形成する方法、又は発熱量の相互に異なる複数の発熱体同士を電気的に接続する方法である。図示しないが、別な変形形態の一例としては、
図17を参考にして説明すると、第1ヒータ部103a1は、流路110に配置される第1発熱部であり、かつ、
図17に示す第1端子部103b1に代えて被接続部(不図示)を有し、第2ヒータ部103a2は、流路110に配置される第2発熱部であり、かつ、第1ヒータ部103a1の被接続部と電気的に接続される接続部と、端壁115a、115bのいずれかを貫通して固定される端子部103b2とを有し、当該端子部103b2には、電力が供給されることが好ましい。このように、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2とを直列状に連結し、第2ヒータ部a2に電力を供給することで、第1ヒータ部a1にも電力が供給される。端子部の数を増やさず、また、タンク102の端壁を貫通する端子部の数を増やさないので、端壁の構造が複雑化せず、液体加熱装置を製作することができる。
【0089】
次に、車両用温度制御システムについて説明する。
【0090】
本実施形態に係る車両用温度制御システムは、液状熱媒体が循環する液状熱媒体回路と、液状熱媒体を温調する液体加熱装置と、液状熱媒体を放熱させる複数の放熱用熱交換器と、を備え、液体加熱装置は、液状熱媒体が流れるタンクと、液状熱媒体を加熱するヒータと、を備え、タンクは、少なくとも一つの流路と、少なくとも一つの流路入口と、複数の流路出口とを有し、ヒータは、流路のうち一つの流路内に配置され、複数の流路出口は、第1~第n流路出口(nは2以上の自然数である。)を含み、第1流路出口から流出する液状熱媒体は、第n流路出口から流出する液状熱媒体よりも相対的に低温であり、液状熱媒体回路は、第1~第n流路出口の各流路出口に接続された第1~第n分岐路を含み、複数の放熱用熱交換器は、第1~第n分岐路の各分岐路上にそれぞれ配置されている。
【0091】
液状熱媒体回路は、少なくとも液体加熱装置及び放熱用熱交換器が接続されて液状熱媒体を循環させる流路である。
【0092】
液体加熱装置は、異なる温度の液状熱媒体を供給できる装置であればよく、特に限定されないが、例えば、
図1~
図13に示される第一例~第四例の液体加熱装置1(1A~1D)又は
図14~
図18に示される第五例の液体加熱装置100であることが好ましい。
【0093】
放熱用熱交換器は、液体加熱装置で加熱された液状熱媒体を放熱することができる装置であって、放熱によって被加熱物を加熱するための装置である。車両に搭載される複数の放熱用熱交換器は、例えば、被加熱物として車室内へ送風される空気を温める加熱用熱交換器(ヒータコア)、被加熱物としてバッテリを温めるバッテリ加熱用熱交換器、被加熱物として車両の床を温める床暖房用熱交換器又は被加熱物として座席シートを温めるシート暖房用熱交換器がある。
【0094】
本実施形態に係る車両用温度制御システムは、一つの装置から複数の相互に異なる温度の液状熱媒体を供給することができる液体加熱装置を利用して、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれに要求される放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給するシステムである。本実施形態に係る車両用温度制御システムは、液体加熱装置として
図1~
図13に示される第一例~第四例の液体加熱装置1(1A~1D)を適用する第一例の車両用温度制御システム800(
図19~
図29に図示)と、液体加熱装置として
図14~
図18に示される第五例の液体加熱装置100を適用する第二例の車両用温度制御システム900(
図30~
図35に図示)と、を包含する。
【0095】
車両には複数の放熱用熱交換器が搭載され、各放熱用熱交換器は、加熱の対象とする被加熱物によって要求される放熱量が異なる場合がある。例えば、前記に例示した放熱用熱交換器を例にとって説明すると、ヒータコアは、多くの放熱量が要求される一方、バッテリ加熱用熱交換器、床暖房用熱交換器又はシート暖房用熱交換器は、ヒータコアよりも少量の放熱量で足りる場合がある。あるいは、ヒータコアは、相対的に長時間、放熱が要求されることがある一方、バッテリ加熱用熱交換器は、相対的に短時間の放熱で足りることがある。本発明者らは、
図1~
図13に示される第一例~第四例の液体加熱装置1(1A~1D)及び
図14~
図18に示される第五例の液体加熱装置100のように、一つの装置から複数の相互に異なる温度の液状熱媒体を供給することができる液体加熱装置の発明を完成させた。そして、このような液体加熱装置を車両用温度制御システムに適用すれば、システム及び制御を複雑化することなく、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれの放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給することができることを見出した。
【0096】
(第一例の車両用温度制御システム)
まず、
図19~
図21を参照して、第一例の車両用温度制御システムについて説明する。
【0097】
第一例の車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置は、
図1~
図13に示される第一例~第四例の液体加熱装置1(1A~1D)である。すなわち、本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システム800では、液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)は、
図1~
図13に示すように、タンク2が、第1室2Aと、第1室2Aと区画された第2室2Bと、を有し、第1室2Aは、流路として第1流路10と、流路入口として第1流路入口11と、第1流路出口12と、を有し、第2室2Bは、流路として第2流路20と、流路入口として第2流路入口21と、第n流路出口として第2流路出口22と、を有し、第2流路20は、筒状の第2側壁24と、第2側壁24の両端部をそれぞれ塞ぐ一対の第2端壁25a,25bと、を有し、ヒータ3は、第2流路20内に配置され、第2流路出口22は、第2流路入口21よりも第2流路20の下流側に設けられ、第1流路10は、第2側壁24に隣接し、かつ、第1流路10と第2流路20とを隔てる第2側壁24は、熱交換壁であることが好ましい。このような液体加熱装置1(1A,1B,1C,1D)を適用することで、2系統で異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0098】
第一例の車両用温度制御システム800では、液状熱媒体回路801は、
図19に示すように、流路出口の数nに応じてn個の独立した循環回路を含み、例えば、複数の流路出口の数nが2である場合、液状熱媒体回路801は、独立した2つの循環回路として第1分岐路801A及び第2分岐路801Bを含む。
【0099】
第1分岐路801Aは、少なくとも、液体加熱装置1と、第1ポンプ802と、第1放熱用熱交換器61と、が順に温水配管803a~803cで接続されていることが好ましい。
【0100】
第1ポンプ802は、第1分岐路801A内で液状熱媒体を圧送する装置であり、
図19では一例として液体加熱装置1の第1流路出口12と第1放熱用熱交換器61の流入口との間に配置した形態を示した。第1ポンプ802は、図示しないが、第1放熱用熱交換器61の流出口と液体加熱装置1の第1流路入口11との間に配置してもよい。
【0101】
第1放熱用熱交換器61は、液状熱媒体の流入口と、流路と、流出口とを有し、内部を流れる液状熱媒体を放熱する装置である。第1放熱用熱交換器61は、バッテリ59を加熱するバッテリ加熱用熱交換器であることが好ましい。バッテリ59は、例えば、EV車(Electric Vehicle)又はPHV車(Plug-in Hybrid Vehicle)に搭載される走行用バッテリである。第1流路出口12から流出する液状熱媒体は比較的低温であるため、バッテリ59を適度に温めることができる。このため、冬季など低温環境においてバッテリ59を早期に適温にまで温度上昇することができ、その結果、低温環境においてもバッテリの充放電性能を確保することができる。また、第1放熱用熱交換器61は、例えば、床暖房用の熱交換器又は座席シートを温めるシート暖房用熱交換器であってもよい。
【0102】
第2分岐路801Bは、少なくとも、液体加熱装置1と、第2ポンプ804と、第2放熱用熱交換器62と、が順に温水配管805a~805cで接続されていることが好ましい。
【0103】
第2ポンプ804は、第2分岐路801B内で液状熱媒体を圧送する装置であり、
図19では一例として液体加熱装置1の第2流路出口22と第2放熱用熱交換器62の流入口との間に配置した形態を示した。第2ポンプ804は、図示しないが、第2放熱用熱交換器62の流出口と液体加熱装置1の第2流路入口21との間に配置してもよい。
【0104】
第2放熱用熱交換器62は、液状熱媒体の流入口と、流路と、流出口とを有し、内部を流れる液状熱媒体を放熱する装置である。第2放熱用熱交換器62は、第1放熱用熱交換器61よりも要求される放熱量が相対的に多い熱交換器であることが好ましく、例えば、車室内へ送風される空気を温調するヒータコアである。第2流路出口22から流出する液状熱媒体は比較的高温であるため、車室内へ送風される空気を効率的に温めることができる。
【0105】
ヒータコア62(第2放熱用熱交換器62)は、車両用空調装置50に搭載される。車両用空調装置50は、例えば、空気通路を有するケース51を有し、ケース51内には、送風機53と、蒸発器54と、エアミックスドア55と、ヒータコア62とが収容される。ケース51の最上流部には、外気導入口52a及び内気導入口52bが開口しており、送風機53が駆動すると、外気導入口52a及び/又は内気導入口52bから空気が引き込まれて、空気通路に空気流れが発生する。空気通路を流れる空気は、必要に応じて蒸発器54によって除湿・冷却された後、エアミックスドア55の開度によって必要に応じてヒータコア62を通過し、ヒータコア62内を流れる液状熱媒体との熱交換によって加熱される。そして、温調された空気は、ケース51の最下流部に開口するデフロスト開口部56a、ベント開口部56b及びフット開口部56cの少なくとも一つから選択的に車室内へ送風される。
【0106】
本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システム800は、次のように作用する。第1分岐路801Aでは、液状熱媒体は、液体加熱装置1の第1室2Aで温調されて第1流路出口12から温水配管803a,803bを通って第1放熱用熱交換器61へ供給される。第1放熱用熱交換器61では、液状熱媒体の熱が被加熱物(例えばバッテリ59)の加熱に利用されて、液状熱媒体が放熱される。放熱された液状熱媒体は、温水配管803cを通って、液体加熱装置1の第1流路入口11から第1室2Aに流入し、再び温調される。一方、第2分岐路801Bでは、液状熱媒体は、液体加熱装置1の第2室2Bで温調されて第2流路出口22から温水配管805a,805bを通って第2放熱用熱交換器62へ供給される。第2放熱用熱交換器62では、液状熱媒体の熱が被加熱物(例えば車室内へ送風される空気)の加熱に利用されて、液状熱媒体が放熱される。放熱された液状熱媒体は、温水配管805cを通って、液体加熱装置1の第2流路入口21から第2室2Bに流入し、再び温調される。このとき、第1流路出口12から第1放熱用熱交換器61へ供給される液状熱媒体の温度は、第2流路出口22から第2放熱用熱交換器62へ供給される液状熱媒体の温度よりも低い。以上の作用によって、第一例の車両用温度制御システム800は、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれに要求される放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給できる。より具体的に説明すると、車両用温度制御システム800は、第1流路出口12から第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、第2流路出口22から第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0107】
図20は、本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システムの第一変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システム800では、第1分岐路801Aは、
図20に示すように、第1放熱用熱交換器61を迂回する迂回路801Cを有し、かつ、迂回路801Cを流れる流量と第1放熱用熱交換器61を流れる流量とを調整する分配比調整装置806を有することが好ましい。
【0108】
迂回路801Cは、第1ポンプ802と第1放熱用熱交換器61の流入口とを接続する温水配管803b又は第1流路出口12と第1ポンプ802とを接続する温水配管803aと、第1放熱用熱交換器61の流出口と第1流路入口11とを接続する温水配管803cと、を接続する温水配管803dによって構成される流路であり、液状熱媒体回路801の一部を構成する。
【0109】
分配比調整装置806は、例えば、分配弁である。分配弁は、例えば、入口ポートとして第1ポートp1と、出口ポートとして第1放熱用熱交換器61の流入口につながる温水配管に接続される第2ポートp2と、出口ポートとして迂回路801Cに接続される第3ポートp3と、を有することが好ましい。
図20において、分配比調整装置806を表している3個の三角形は分配弁の各ポートp1,p2,p3を表しており、黒で塗りつぶした三角形(
図20ではp3)はポートを遮断した状態を示しており、白抜きの三角形(
図20ではp1,p2)はポートを接続した状態を示している。分配比調整装置806では、図示しない制御部によって各出口ポートp2,p3の開度が制御され、迂回路801Cを流れる流量と第1放熱用熱交換器61を流れる流量とが調整される。第1ポートp1は、常時開いているか、又は制御部によって開閉制御されてもよい。
【0110】
第一例の車両用温度制御システム800は、迂回路801C及び分配比調整装置806を備えることで、次のように作用する。第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度であるとき、制御部(不図示)は分配比調整装置806に対し第2ポートp2を開とし、第3ポートp3を閉とする制御を行う。これによって、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を流れる。ここで、目標温度とは、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量、言い換えると第1放熱用熱交換器61の放熱によって加熱される被加熱物が必要とする加熱量に応じて設定される温度である。また、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度は、例えば、温水配管803bのうち分配比調整装置806の近傍に設けられた温度センサ(不図示)によって検知された温度である。第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度であるときは、被加熱物が低温状態であり加熱を必要としており、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量が多いときである。このようなときは、より多くの液状熱媒体を第1放熱用熱交換器61へ流して第1放熱用熱交換器61での放熱量を高めることで、被加熱物(例えばバッテリ59)を効率的に加熱することができる。一方、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、制御部(不図示)は分配比調整装置806に対して第2ポートp2及び第3ポートp3を開とする制御を行う。これによって、第1流路出口12から流出した液状熱媒体が、第1放熱用熱交換器61及び迂回路801Cへ分配される。第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いときは、被加熱物が温められた状態であり加熱をあまり必要としていないか又は加熱が不要であるときであり、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量が少ないときである。このようなときは、液状熱媒体を迂回路801Cへ分配させて、第1放熱用熱交換器61へ流れる液状熱媒体の流量を減少させ、第1放熱用熱交換器61での放熱量を少なくすることで、被加熱物(例えばバッテリ59)の過剰な加熱を防止することができる。このとき、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が高いほど、制御部は、第2ポートp2の開度を小さく、第3ポートp3の開度を大きくする制御を行うことが好ましい。これによって、第1放熱用熱交換器61を流れる液状熱媒体の流量をより減少させて放熱量を少なくすることができる。被加熱物の加熱が不要であるとき、制御部は、第2ポートp2を閉とし、第3ポートp3を開とする制御を行ってもよい。以上のように、第一例の車両用温度制御システム800は、迂回路801C及び分配比調整装置806を備えることで、第1分岐路801A上に配置された第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量に応じて、迂回路801Cへ流す流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を第1分岐路801A上に配置された第1放熱用熱交換器61に供給することができる。
【0111】
図21は、本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システムの第二変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システム800では、第1流路出口12は、
図21に示すように、流路の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。
図21では一例としてmが2である形態を示した。)の第1流路出口12
1,12
2を含み、第1分岐路801Aは、第1~第mの第1流路出口12
1,12
2の各々の第1流路出口に接続された第1~第mの出口路801A1,801A2と、該第1~第mの出口路801A1,801A2を合流させる合流路801A3と、第mの出口路801A2から液状熱媒体を合流路801A3に流通させつつ、第1~第(m-1)の出口路801A1から合流路801A3に流通させる液状熱媒体の流量を調整する混合比調整装置807を有することが好ましい。
【0112】
図21に示す液体加熱装置1は、
図13に示す液体加熱装置1(1A)を適用できる。
図21では、一例としてmが2であり、第1~第mの第1流路出口が、第1の第1流路出口12
1及び第2の第1流路出口12
2であり、第1~第mの出口路が第1の出口路801A1及び第2の出口路801A2である形態を示したが、本発明はこれに限定されず、mが3以上であってもよい。mが3以上であるとき、第1~第mの第1流路出口が、第1の第1流路出口12
1、第2の第1流路出口12
2、第3の第1流路出口(不図示)、・・・第mの第1流路出口(不図示)であり、第1~第mの出口路が第1の出口路801A1、第2の出口路801A2、第3の出口路(不図示)、・・・第mの出口路(不図示)であってもよい。
【0113】
第1~第mの出口路801A1,801A2は、第1~第mの第1流路出口121,122の各々に接続された温水配管803e,803fによって構成される流路であり、第1分岐路801Aの一部を構成する。
【0114】
合流路801A3は、第1~第mの出口路801A1,801A2を合流させる流路であり、温水配管803aによって構成され、第1分岐路801Aの一部を構成する。
【0115】
混合比調整装置807は、例えば、混合弁である。混合弁は、例えば、入口ポートとして第1の出口路801A1に接続される第1ポートp11と、入口ポートとして第2の出口路801A2に接続されて常時開いている第2ポートp12と、出口ポートとして合流路801A3に接続されて常時開いている第3ポートp13と、を有することが好ましい。
図21において、混合比調整装置807を表している3個の三角形は混合弁の各ポートp11,p12,p13を表しており、黒で塗りつぶした三角形(
図21ではp11)はポートを遮断した状態を示しており、白抜きの三角形(
図21ではp12,p13)はポートを接続した状態を示している。
図21では一例として混合弁が3個のポートp11,p12,p13を有する形態を示した。第2ポートp12及び第3ポートp13は常時開いており、第mの第1流路出口12
m(12
2)から流出した液状熱媒体は、常に第1分岐路801A内を循環する。これによって、第mの第1流路出口12
2から流出する液状熱媒体の温度は高温となる場合があるところ、このような高温の液状熱媒体を液体加熱装置1内に滞留させることを防止して安全性をより高めることができる。混合比調整装置807では、図示しない制御部によって入口ポートp11の開度が制御され、合流路801A3に通流する第1の第1流路出口12
1から流出する液状熱媒体の流量が調整される。また、制御部は、入口ポートp11の開度に加えて、入口ポートp12の開度を制御してもよい。これによって、合流路801A3に流通させる、第2の出口路801A2からの液状熱媒体の流量と第1の出口路801A1からの液状熱媒体の流量との比率を調整することができ、より精密な温度制御をすることができる。
【0116】
第一例の車両用温度制御システム800は、第1~第mの出口路801A1,801A2及び混合比調整装置807を備えることで、次のように作用する。第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度であるとき、制御部(不図示)は混合比調整装置807に対し第1ポートp11を閉とし、第2ポートp12及び第3ポートp13を開とする制御を行う。これによって、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が、第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体となり、第1室2Aで十分に加熱された液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を流れる。ここで、目標温度とは、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量、言い換えると第1放熱用熱交換器61の放熱によって加熱される被加熱物が必要とする加熱量に応じて設定される温度である。また、第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度は、例えば、第mの第1流路出口122近傍に設けられた温度センサ(不図示)によって検知された温度である。第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度であるときは、被加熱物が低温状態であり加熱を必要としているときであり、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量が多いときである。このようなときは、第mの第1流路出口122から流出する液状熱媒体だけを第1放熱用熱交換器61へ流して第1放熱用熱交換器61での放熱量を高めることで、被加熱物(例えばバッテリ59)を効率的に加熱することができる。一方、第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、制御部(不図示)は混合比調整装置807に対して第1ポートp11、第2ポートp12及び第3ポートを開とする制御を行う。これによって、合流路801A3を流通する液状熱媒体が、第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体に第1の第1流路出口121から流出した液状熱媒体が混合された混合液状熱媒体となり、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体だけである場合よりも低温の液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を流れる。第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いときは、被加熱物が温められた状態であり加熱を必要としていないか又は加熱が不要であるときであり、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量が少ないときである。このようなときは、第1の第1流路出口121から流出した液状熱媒体を第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体に混合させて、第1放熱用熱交換器61へ流れる液状熱媒体の温度を低下させ、第1放熱用熱交換器61での放熱量を少なくすることで、被加熱物(例えばバッテリ59)の過剰な加熱を防止することができる。このとき、第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の温度が高いほど、制御部は、第1ポートp11の開度を大きく、第2ポートp12の開度を小さくする制御を行うことが好ましい。これによって、合流路801A3を流通する混合液状熱媒体中の第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の比率を増やすこととなり、第1放熱用熱交換器61を流れる液状熱媒体の温度がより低減する。その結果、第1放熱用熱交換器61での放熱量を少なくすることができる。以上のように、第一例の車両用温度制御システム800は、第1~第mの出口路801A1,801A2及び混合比調整装置807を備えることで、第1分岐路801A上に配置された第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量に応じて、第1の第1流路出口121から流出した液状熱媒体に混合させる第mの第1流路出口122から流出した液状熱媒体の流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を第1分岐路801A上に配置された第1放熱用熱交換器61に供給することができる。
【0117】
図20に示す迂回路801C及び分配比調整装置806を備える車両用温度制御システム800、
図21に示す第1~第mの出口路801A1,801A2及び混合比調整装置807を備える車両用温度制御システム800では、第1放熱用熱交換器61で液状熱媒体の放熱を必要とされていないとき、第1放熱用熱交換器61に液状熱媒体を通流させない制御が考えられる。しかし、このような制御では、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体の熱量が余剰となる。このような形態において、本実施形態に係る第一例の車両用温度制御システム800は、第1分岐路801Aで生じた余剰熱を放熱する余剰熱放熱システムを更に備えることが好ましい。余剰熱放熱システムによって、液状熱媒体は、余剰熱を放熱した後、液体加熱装置1に戻るため、第1室2A内で液状熱媒体の温度が高くなりすぎることを防止することができる。第1放熱用熱交換器61で液状熱媒体の放熱を必要とされていないときは、第1放熱用熱交換器61によって加熱される被加熱物が加熱を必要としていないときであり、具体例としては、第1放熱用熱交換器61がバッテリ加熱用熱交換器である場合、例えば、バッテリ59が十分に温められているとき又はバッテリ59自身による発熱によって温まっているときであり、第1放熱用熱交換器61が床暖房用熱交換器である場合、例えば、乗員が床暖房を必要としていないときであり、第1放熱用熱交換器61がシート暖房用熱交換器である場合、例えば、乗員がシート暖房を必要としていないときである。
【0118】
図22及び
図23は、
図20に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第一例を示す概略ブロック図であり、
図22は余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図であり、
図23は余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800では、第1分岐路801Aが、
図22及び
図23に示すように、第1放熱用熱交換器61を迂回する迂回路801Cと、迂回路801Cを流れる流量と第1放熱用熱交換器61を流れる流量とを調整する分配比調整装置806と、を有しており、車両用温度制御システム800は、余剰熱放熱用熱交換器64と、第1分岐路801Aから分岐して余剰熱放熱用熱交換器64を経由して第1流路入口11の手前で第1分岐路801Aに合流する第1放熱路801Dと、第1放熱路801Dを流れる流量と第1分岐路801Aを流れる流量とを調整する第1放熱路分配装置808と、を有する余剰熱放熱システムを更に備えることが好ましい。
【0119】
余剰熱放熱用熱交換器64は、熱を放熱できる装置であればよく、特に限定されないが、
図22及び
図23では一例として冷媒サイクル500を構成するチラーである形態を示した。冷媒サイクル500は、少なくとも、圧縮機501と、凝縮器(不図示)と、膨張装置502と、チラー(余剰熱放熱用熱交換器)64と、が順に冷媒配管で接続されている。圧縮機501は、例えばエンジンルーム内に配置されており、エンジンの駆動又は内蔵された電動モータの駆動によって動作する。圧縮機501は、吸入した冷媒を圧縮して凝縮器(不図示)に吐出する。凝縮器は、エンジンルーム前方など車両走行時に生じる走行風を受けやすい場所に配置され、内部を流れる冷媒と走行風を含む外気との間で熱交換を行う車室外熱交換器である。凝縮器は、圧縮機501から吐出された冷媒を外気との熱交換によって冷却して凝縮液化させる。膨張装置502は、凝縮器によって凝縮液化された冷媒を減圧膨張させる。チラー64は、膨張装置によって減圧された冷媒と第1放熱路801Dを通過する液状熱媒体とを熱交換させて冷媒を気化させる装置である。冷媒サイクル500には、車両用空調装置50に搭載される蒸発器54が更に接続されていてもよい。冷媒サイクル500に蒸発器54を接続する場合、
図22に示す膨張装置502よりも上流側、かつ、凝縮器(不図示)の下流側で冷媒配管に分岐配管(不図示)を接続し、該分岐配管に膨張装置502とは別の膨張装置(蒸発器用の膨張装置)(不図示)と蒸発器54とを順に接続する。分岐配管は、蒸発器54の下流側で
図22に示すチラー64と圧縮機501との間の冷媒配管に接続する。これによって、圧縮機501から吐出されて、凝縮器で凝縮液化された冷媒の一部は分岐配管を流れて蒸発器用の膨張装置へ送られ、残りは
図22に示す膨張装置502へ送られる。そして、膨張装置502へ送られた冷媒は、膨張装置502で減圧膨張され、チラー64で第1放熱路801Dを通過する液状熱媒体と熱交換され、圧縮機501へ送られる。また、蒸発器用の膨張装置へ送られた冷媒は、蒸発器用の膨張装置で減圧膨張され、蒸発器54で車室内へ送風される空気と熱交換され、圧縮機501の手前でチラー64を通ってきた冷媒と合流して圧縮機501へ送られる。
【0120】
第1放熱路801Dは、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体をチラー64に通過させるための流路であり、液状熱媒体回路801の一部を構成する。第1放熱路801Dは、第1放熱用熱交換器61の下流側で第1分岐路801Aから分岐して第1流路入口11の手前で第1分岐路801Aに合流する。
【0121】
第1放熱路分配装置808は、例えば、分配弁である。分配弁は、例えば、入口ポートとして第1ポートp21と、出口ポートとして第1分岐路801Aを構成する温水配管に接続される第2ポートp22と、出口ポートとして第1放熱路801Dに接続される第3ポートp23と、を有することが好ましい。
図22及び
図23において、第1放熱路分配装置808を表している3個の三角形は分配弁の各ポートp21,p22,p23を表しており、黒で塗りつぶした三角形(
図22ではp23)はポートを遮断した状態を示しており、白抜きの三角形(
図22ではp21,p22)はポートを接続した状態を示している。第1放熱路分配装置808では、図示しない制御部によって各出口ポートp22,p23の開度が制御され、第1放熱路801Dを流れる流量と第1分岐路801Aを流れる流量とが調整される。第1ポートp21は、常時開いている。
【0122】
第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、次のように作用する。第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度と同じであるとき、制御部(不図示)は
図20に示すように分配比調整装置806に対し第2ポートp2を開とし、第3ポートp3を閉とする制御を行うとともに、
図22に示すように第1放熱路分配装置808に対し第1ポートp21及び第2ポートp22を開とし、第3ポートp23を閉とする制御を行う。これによって、
図20に示す車両用温度制御システム800について説明した作用と同様に、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を流れ、第1放熱用熱交換器61で放熱された液状熱媒体の全量がチラー64(
図22に図示)を経由せず第1流路入口11に直行して液体加熱装置1に流入する。また、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、
図22に示すように、制御部(不図示)は分配比調整装置806に対し第1~第3ポートp1,p2,p3を開とする制御を行うとともに、第1放熱路分配装置808に対し第1ポートp21及び第2ポートp22を開とし、第3ポートp23を閉とする制御を行う。これによって、
図20に示す車両用温度制御システム800について説明した作用と同様に、第1流路出口12から流出した液状熱媒体が、第1放熱用熱交換器61及び迂回路801Cへ分配され、第1放熱用熱交換器61で放熱された液状熱媒体と迂回路801Cを経た液状熱媒体とがチラー64を経由せず第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。
【0123】
第1放熱用熱交換器61での液状熱媒体の放熱が必要とされていないとき、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度に関わらず、
図23に示すように、制御部(不図示)は分配比調整装置806に対し第1ポートp1及び第3ポートp3を開とし、第2ポートp2を閉とする制御を行うとともに、第1放熱路分配装置808に対し第1~第3ポートp21,p22,p23を開とする制御を行う。これによって、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を迂回して迂回路801Cを流れる。迂回路801Cを経た液状熱媒体の一部はそのまま第1分岐路801Aを流れて第1流路入口11に直行し、液状熱媒体の残りは第1放熱路801Dに分配される。第1放熱路801Dに分配された液状熱媒体はチラー64を通り、チラー64内で液状熱媒体の熱は、冷媒サイクル500を流れる冷媒に移動する。その結果、冷媒は加熱されて気化し、液状熱媒体は放熱される。チラー64で放熱された液状熱媒体は第1流路入口11の手前で第1分岐路801Aに合流して、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。このとき、制御部は、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体の温度に応じて第1放熱路分配装置808に対し第2ポートp22及び第2ポートp22の開度を調整する制御を行うことが好ましい。より具体的には、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体の温度が高いほど、第2ポートp22の開度を小さく、第3ポートp23の開度を大きくすることが好ましい。あるいは、第2ポートp22を閉じ、第3ポートp23の開度を最大としてもよい。これによって、余剰熱を効率的に放熱して、液体加熱装置1に戻る液状熱媒体の温度を低減することができる。
図20及び
図22に示すように、液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を通過する場合、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体は放熱された後、液体加熱装置1に戻るが、
図23に示すように、液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を通過しない場合、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体の熱が余剰となる。このような場合において、車両用温度制御システム800では、
図23に示すように、余剰熱放熱システムによって第1分岐路801Aで発生した液状熱媒体の余剰熱を効率的に放熱するとともに冷媒サイクルにおいて車室内空調の暖房用の熱源などに有効利用することができる。
【0124】
図24及び
図25は、
図20に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第二例を示す概略ブロック図であり、
図24は余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図であり、
図25は余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。第二例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、余剰熱放熱用熱交換器65が車室外熱交換器(ラジエータ)である点以外は、
図22及び
図23に示す第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と基本的な構成を同じくする。このため、共通する構成については説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。
【0125】
余剰熱放熱用熱交換器65である車室外熱交換器(ラジエータ)は、例えば、
図22及び
図23に示した冷媒サイクル500を構成する凝縮器、又は
図20に示す蒸発器54に供給される冷媒を循環させる冷凍サイクル(不図示)を構成する凝縮器である。ラジエータ65は、ラジエータ65のコアに送風する冷却ファン65aを有する。ラジエータ65は、ラジエータ65のコアを通過する空気とラジエータ65内を通過する液状熱媒体とを熱交換させる。ラジエータ65のコアを通過する空気は、冷却ファン65aによって発生した空気流れであるか、又は走行風であってもよい。
【0126】
第二例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、次のように作用する。第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度と同じであるときは、
図22に示す第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と同様に作用する。また、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、
図24に示すように、
図22に示す第一例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と同様に作用する。
【0127】
第1放熱用熱交換器61での液状熱媒体の放熱が必要とされていないとき、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の温度に関わらず、
図25に示すように、制御部(不図示)は分配比調整装置806に対し第1ポートp1及び第3ポートp3を開とし、第2ポートp2を閉とする制御を行うとともに、第1放熱路分配装置808に対し第1~第3ポートp21,p22,p23を開とする制御を行う。また、制御部(不図示)は冷却ファン65aを稼働させる制御を行うことが好ましい。これによって、第1流路出口12から流出した液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を迂回して迂回路801Cを流れる。迂回路801Cを経た液状熱媒体の一部はそのまま第1分岐路801Aを流れて第1流路入口11へ直行し、液状熱媒体の残りは第1放熱路801Dに分配される。第1放熱路801Dに分配された液状熱媒体はラジエータ65を通り、ラジエータ65内で液状熱媒体の熱がラジエータ65のコアを通過する空気に移動する。これによって、液状熱媒体は放熱される。ラジエータ65で放熱された液状熱媒体は第1流路入口11の手前で第1分岐路801Aに合流して、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。車両用温度制御システム800では、
図25に示すように、余剰熱放熱システムによって第1分岐路801Aで発生した液状熱媒体の余剰熱を効率的に放熱することができる。
【0128】
図26及び
図27は、
図21に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第三例を示す概略ブロック図であり、
図26は余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図であり、
図27は余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800では、第1流路出口12は、
図26及び
図27に示すように、流路の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第m(mは2以上の自然数である。)の第1流路出口12
1,12
2を含み、第1分岐路801Aは、第1~第mの第1流路出口12
1,12
2の各々の第1流路出口に接続された第1~第mの出口路801A1,801A2と、該第1~第mの出口路801A1,801A2を合流させる合流路801A3と、第mの出口路801A2から液状熱媒体を合流路801A3に流通させつつ、第1~第(m-1)の出口路801A1から合流路801A3に流通させる液状熱媒体の流量を調整する混合比調整装置807を有しており、車両用温度制御システム800は、余剰熱放熱用熱交換器64と、第1放熱用熱交換器61を迂回して余剰熱放熱用熱交換器64を経由して第1放熱用熱交換器61の下流で第1分岐路801Aに合流する第2放熱路801Eと、第1放熱用熱交換器61を流れる流量と第2放熱路801Eを流れる流量とを調整する第2放熱路分配装置809と、を有する余剰熱放熱システムを更に備えることが好ましい。
【0129】
余剰熱放熱用熱交換器64は、特に限定されないが、
図26及び
図27では一例として冷媒サイクル500を構成するチラーである形態を示した。チラー(余剰熱放熱用熱交換器)64は、
図22及び
図23に示すチラー64と同様である。
【0130】
第2放熱路801Eは、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体をチラー64に通過させるための流路であり、液状熱媒体回路801の一部を構成する。第2放熱路801Eは、第1放熱用熱交換器61の上流側で第1分岐路801Aから分岐して、第1放熱用熱交換器61の下流側で第1分岐路801Aに合流する。
【0131】
第2放熱路分配装置809は、例えば、分配弁である。分配弁は、例えば、入口ポートとして第1ポートp31と、出口ポートとして第1放熱用熱交換器61側に接続される第2ポートp32と、出口ポートとして第2放熱路801Eに接続される第3ポートp33と、を有することが好ましい。
図26及び
図27において、第2放熱路分配装置809を表している3個の三角形は分配弁の各ポートp31,p32,p33を表しており、黒で塗りつぶした三角形(
図26ではp33)はポートを遮断した状態を示しており、白抜きの三角形(
図26ではp31,p32)はポートを接続した状態を示している。第2放熱路分配装置809では、図示しない制御部によって各出口ポートp32,p33の開度が制御され、第1放熱用熱交換器61を流れる流量と第2放熱路801Eを流れる流量とが調整される。第1ポートp31は、常時開いている。
【0132】
第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、次のように作用する。第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度であるとき、制御部(不図示)は
図21に示すように混合比調整装置807に対し第1ポートp11を閉とし、第2ポートp12及び第3ポートp13を開とする制御を行うとともに、
図26に示すように第2放熱路分配装置809に対し第1ポートp31及び第2ポートp32を開とし、第3ポートp33を閉とする制御を行う。これによって、
図21に示す車両用温度制御システム800について説明した作用と同様に、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体となり、第1室2Aで十分に加熱された液状熱媒体の全量が、チラー64(
図26に図示)を経由せず、第1放熱用熱交換器61を流れ、第1放熱用熱交換器61で放熱された後、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。また、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、
図26に示すように、制御部(不図示)は混合比調整装置807に対して第1ポートp11、第2ポートp12及び第3ポートを開とする制御を行うとともに、第2放熱路分配装置809に対し第1ポートp31及び第2ポートp32を開とし、第3ポートp33を閉とする制御を行う。これによって、
図21に示す車両用温度制御システム800について説明した作用と同様に、合流路801A3を流通する液状熱媒体が、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体に第1の第1流路出口12
1から流出した液状熱媒体が混合された混合液状熱媒体となり、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体だけである場合よりも低温の液状熱媒体の全量が、チラー64を経由せずに、第1放熱用熱交換器61を流れ、第1放熱用熱交換器61で放熱された後、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。
【0133】
第1放熱用熱交換器61での液状熱媒体の放熱が必要とされていないとき、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度に関わらず、
図27に示すように、制御部(不図示)は混合比調整装置807に対して第1ポートp11を閉とし、第2ポートp12及び第3ポートを開とする制御を行うとともに、第2放熱路分配装置809に対して第1ポートp31及び第3ポートp33を開とし、第2ポートp32を閉とする制御を行う。これによって、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体となり、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を迂回して第2放熱路801Eを流れる。第2放熱路801Eでは、液状熱媒体の熱がチラー64内で冷媒サイクル500を流れる冷媒に移動する。その結果、冷媒は加熱されて気化し、液状熱媒体は放熱される。チラー64で放熱された液状熱媒体は第1放熱用熱交換器61の下流で第1分岐路801Aに合流して、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。
図21及び
図26に示すように、液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を通過する場合、液状熱媒体は放熱された後、液体加熱装置1に戻るが、
図27に示すように、液状熱媒体が第1放熱用熱交換器61を通過しない場合、第1分岐路801Aを流れる液状熱媒体の熱が余剰となる。このような場合に、車両用温度制御システム800では、
図27に示すように、余剰熱放熱システムによって第1分岐路801Aで発生した液状熱媒体の余剰熱を効率的に放熱するとともに冷媒サイクルにおいて車室内空調の暖房用の熱源などに有効利用することができる。
【0134】
図28及び
図29は、
図21に示す車両用温度制御システムにおいて、余剰熱放熱システムを更に備える車両用温度制御システムの第四例を示す概略ブロック図であり、
図28は余剰熱放熱システムの停止状態を説明するための図であり、
図29は余剰熱放熱システムの作動状態を説明するための図である。第四例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、余剰熱放熱用熱交換器65が車室外熱交換器(ラジエータ)である点以外は、
図26及び
図27に示す第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と基本的な構成を同じくする。このため、共通する構成については説明を省略し、相違する構成を中心に説明する。
【0135】
余剰熱放熱用熱交換器65である車室外熱交換器(ラジエータ)は、例えば、
図24及び
図25に示すラジエータ65と同様である。
【0136】
第四例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800は、次のように作用する。第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも低いとき又は目標温度と同じであるときは、
図26に示す第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と同様に作用する。また、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度が目標温度よりも高いとき、
図28に示すように、
図26に示す第三例の余剰熱放熱システムを備える車両用温度制御システム800と同様に作用する。
【0137】
第1放熱用熱交換器61での液状熱媒体の放熱が必要とされていないとき、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体の温度に関わらず、
図29に示すように、制御部(不図示)は混合比調整装置807に対して第1ポートp11を閉とし、第2ポートp12及び第3ポートを開とする制御を行うとともに、第2放熱路分配装置809に対して第1ポートp31及び第3ポートp33を開とし、第2ポートp32を閉とする制御を行う。また、制御部(不図示)は冷却ファン65aを稼働させる制御を行うことが好ましい。これによって、合流路801A3を流通する液状熱媒体の全量が、第mの第1流路出口12
2から流出した液状熱媒体となり、合流路801A3を流れる液状熱媒体の全量が、第1放熱用熱交換器61を迂回して第2放熱路801Eを流れる。第2放熱路801Eでは、液状熱媒体の熱がラジエータ65内でラジエータ65のコアを通過する空気に移動する。これによって、液状熱媒体は放熱される。ラジエータ65で放熱された液状熱媒体は第1放熱用熱交換器61の下流で第1分岐路801Aに合流して、第1流路入口11から液体加熱装置1に流入する。車両用温度制御システム800では、
図29に示すように、余剰熱放熱システムによって第1分岐路801Aで発生した液状熱媒体の余剰熱を効率的に放熱することができる。
【0138】
(第二例の車両用温度制御システム)
次に、
図30~
図35を参照して、第一例の車両用温度制御システムについて説明する。
【0139】
第二例の車両用温度制御システムに適用される液体加熱装置は、
図14~
図18に示される第五例の液体加熱装置100である。すなわち、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システム900では、液体加熱装置100は、
図14~
図18に示すように、タンク102が、流路として一つの流路110を有し、複数の流路出口112(112
1~112
n)は、流路110の流れ方向に沿って、流れ方向の上流側から順に配置された第1~第n流路出口を含み、流路入口111と第n流路出口112
nとの流れ方向の間に、第1流路出口112
1があることが好ましい。このような液体加熱装置100を適用することで、一つの流路110から異なる温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0140】
第二例の車両用温度制御システム900では、液状熱媒体回路901は、
図30に示すように、流路出口の数nに応じてn個の分岐路901A,901Bと、流路入口111に接続される流入路901Zと、を含み、n個の分岐路901A,901Bは、流路入口111の手前で流入路901Zに合流する。例えば
図30に示すように、複数の流路出口の数nが2である場合、液状熱媒体回路901は、分岐路として第1分岐路901A及び第2分岐路901Bを含む。
【0141】
第1分岐路901Aは、少なくとも、液体加熱装置100と、第1放熱用熱交換器61と、が順に温水配管903a,903bで接続されていることが好ましい。
【0142】
第2分岐路901Bは、少なくとも、液体加熱装置100と、第2放熱用熱交換器62と、が順に温水配管904a,904bで接続されていることが好ましい。
【0143】
流入路901Zは、第1分岐路901Aから流れてきた液状熱媒体と第2分岐路901Bから流れてきた液状熱媒体とを混合して流路入口111に流入させる流路である。流入路901Zは、総合ポンプ902を有することが好ましい。総合ポンプ902は、液状熱媒体回路901内で液状熱媒体を圧送する装置である。
【0144】
第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62は、例えば
図19に示す第一例の車両用温度制御システム800に配置される第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62と同様である。
【0145】
本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システム900は、次のように作用する。第1分岐路801Aでは、液状熱媒体は、液体加熱装置100で温調されて第1流路出口1121から温水配管903aを通って第1放熱用熱交換器61へ供給される。第1放熱用熱交換器61では、液状熱媒体の熱が例えばバッテリの加熱に利用されて、液状熱媒体が放熱される。放熱された液状熱媒体は、温水配管903bを通って、流入路901Zに合流し、流路入口111からタンク102内に流入し、再び温調される。一方、第2分岐路901Bでは、液状熱媒体は、液体加熱装置100で温調されて第2流路出口1122から温水配管904aを通って第2放熱用熱交換器62へ供給される。第2放熱用熱交換器62では、液状熱媒体の熱が例えば車室内へ送風される空気の加熱に利用されて、液状熱媒体が放熱される。放熱された液状熱媒体は、温水配管904bを通って、流入路901Zに合流し、流路入口111からタンク102内に流入し、再び温調される。このとき、第1流路出口1121から第1放熱用熱交換器61へ供給される液状熱媒体の温度は、第2流路出口1122から第2放熱用熱交換器62へ供給される液状熱媒体の温度よりも低い。以上の作用によって、第二例の車両用温度制御システム900は、第一例の車両用温度制御システム800と同様に、車両に搭載された複数の放熱用熱交換器のそれぞれの放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給できる。より具体的に説明すると、車両用温度制御システム900は、第1流路出口1121から第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、第2流路出口1222から第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0146】
図31は、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第一変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システム900では、ヒータ103が1つの発熱部103aを有し、第1分岐路901Aは開閉弁906を有することが好ましい。開閉弁906は、第1分岐路901Aを開放・閉鎖する装置である。開閉弁906は、
図31では一例として第1流路出口112
1と第1放熱用熱交換器61の流入口とを繋ぐ温水配管903a上に配置した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第1放熱用熱交換器61の流入口と流入路901Zとを繋ぐ温水配管903b上に配置してもよい。第1放熱用熱交換器61での液状熱媒体の放熱が必要とされていないとき、制御部(不図示)が開閉弁906を閉とする制御を行うことで、第1放熱用熱交換器61への液状熱媒体の流入を止めることができる。開閉弁906は絞り機能を有することが好ましい。これによって、第1放熱用熱交換器61に要求される放熱量に応じて、第1放熱用熱交換器61へ流入する液状熱媒体の流量を調整することができ、より適切な流量の液状熱媒体を第1放熱用熱交換器61に供給することができる。また、開閉弁906に代えて、ポンプ(不図示)を配置してもよい。第1分岐路901Aがポンプを有することで、絞り機能付きの開閉弁906を設けた場合と同様の効果が得られる。ヒータ103の発熱部103aが1つである場合、最下流に配置された第n流路出口(
図31では第2流路出口112
2)に接続される分岐路901Bには、開閉弁を設けないことが好ましい。第n流路出口から流出する液状熱媒体を常に循環させることで、液体加熱装置100のタンク102内に液状熱媒体が滞留することがなく、滞留によって液状熱媒体が意図しない温度にまで過熱されることを防止することができる。
【0147】
図32は、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第二変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る車両用温度制御システムでは、液体加熱装置100は、
図32に示すように、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有していることが好ましい。
図32に示す液体加熱装置100は、例えば、
図17に示す液体加熱装置100である。複数のヒータ部103a1,103a2の発熱量を、相互に異なる発熱量とすることで、より精密な温度制御をすることができ、各放熱用熱交換器61,62に要求される放熱量に応じてより適切な熱量の液状熱媒体を供給することができる。
【0148】
第二変形例では、例えば、次のような制御をすることができる。第1放熱用熱交換器61で最大限の放熱量が要求され、かつ、第2放熱用熱交換器62で最大限の放熱量が要求されている場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2の両方を発熱させる制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1流路出口1121から第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、第2流路出口1222から第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。また、第1放熱用熱交換器61で最大限よりも若干少ない放熱量が要求され、かつ、第2放熱用熱交換器62で最小限の放熱量が要求されている場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1だけ発熱させ、第2ヒータ部103a2での発熱を停止させる制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1流路出口1121から第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量1kW/hの液状熱媒体を供給し、第2流路出口1222から第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量1kW/hの液状熱媒体を供給することができる。第1放熱用熱交換器61で最小限の放熱量が要求され、かつ、第2放熱用熱交換器62で最大限よりも若干少ない放熱量が要求されている場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1での発熱を停止させ、第2ヒータ部103a2だけを発熱させる制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1流路出口1121から第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量0.7kW/hの液状熱媒体を供給し、第2流路出口1222から第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量2.5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。なお、第1ヒータ部103a1での発熱を停止していても、第2ヒータ部103a2を十分に発熱することで、流入路901Zを経由して循環する液状熱媒体(流路入口111、タンク102、第1流路出口1121を通流する液状熱媒体)は一定の熱エネルギーを有するため、第1放熱用熱交換器61にて放熱を行うことができる。
【0149】
図33は、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第三変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る車両用温度制御システムでは、液体加熱装置100は、
図33に示すように、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、第1~第n分岐路の各分岐路901A,901Bは、開閉弁906A,906Bを有することが好ましい。第1分岐路901Aに配置された第1開閉弁906Aは、
図33では一例として第1流路出口112
1と第1放熱用熱交換器61の流入口とを繋ぐ温水配管903a上に配置した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第1放熱用熱交換器61の流入口と流入路901Zとを繋ぐ温水配管903b上に配置してもよい。また、第2分岐路901Bに配置された第2開閉弁906Bは、
図33では一例として第2流路出口112
2と第2放熱用熱交換器62の流入口とを繋ぐ温水配管904a上に配置した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第2放熱用熱交換器62の流入口と流入路901Zとを繋ぐ温水配管904b上に配置してもよい。各放熱用熱交換器61,62に要求される放熱量に応じて開閉弁906A,906Bの開閉を制御することで、より適切な熱量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器61,62に選択的に供給することができる。最下流に配置された第n流出口に接続される分岐路(
図33では第2分岐路901B)に設けられた開閉弁(
図33では第2開閉弁)906Bは、常に開いていることが好ましい。第2分岐路901Bに常に液状熱媒体が通流されることで、タンクの内部に液状熱媒体が滞留することがなく、滞留によって液状熱媒体が意図しない温度にまで過熱されることを防止できる。一方、第n流出口よりも上流側に配置される第1~第(n-1)流出口に接続される分岐路(
図33では第1分岐路901A)では、第1放熱用熱交換器61の放熱によって加熱される被加熱物が目標温度に到達している場合、第1開閉弁906Aを閉じて、第1分岐路901Aでの液状熱媒体の通流を止めてもよい。
【0150】
図33に示す第二例の車両用温度制御システム900の第三変形例は、例えば、次のように作用する。まず、第1放熱用熱交換器61で放熱が必要され、かつ、第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされていない場合について説明する。第1放熱用熱交換器61で最大限の放熱量が要求され、かつ、第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされていない場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1だけを発熱させ、第2ヒータ部103a2の発熱を停止させるとともに第1開閉弁906Aを開とし、第2開閉弁906Bを閉とする制御を行う。これによって、第1分岐路901Aだけに液状熱媒体が循環し、第2分岐路901Bには液状熱媒体が循環しない。その結果、車両用温度制御システム900は、第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へは液状熱媒体を供給せず、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61だけに例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給することができる。このとき、タンク102内では、第2ヒータ部103a2の発熱が停止しているため、第1流路出口112
1よりも流路の下流側において液状熱媒体が意図しない温度にまで加熱されることを抑制することができる。
【0151】
次に、第三変形例において、第1放熱用熱交換器61で放熱が必要とされておらず、かつ、第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされている場合について説明する。この場合、制御部は、第1開閉弁906Aを閉とし、第2開閉弁906Bを閉とする制御を行う。さらに、制御部は、第2放熱用熱交換器62で要求される放熱量に応じて、複数のヒータ部103a1,103a2のオンオフを制御することで、第2放熱用熱交換器62に対して選択的により適切な温度の液状熱媒体を提供することができる。より具体的には、第1放熱用熱交換器61で放熱が必要とされておらず、かつ、第2放熱用熱交換器62で要求されている放熱量が少ない場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1だけを発熱させ、第2ヒータ部103a2の発熱を停止させるとともに第1開閉弁906Aを閉とし、第2開閉弁906Bを開とする制御を行う。これによって、第1ヒータ部103a1だけで加熱された液状熱媒体が第2分岐路901Bだけで循環し、第1分岐路901Aでは液状熱媒体が循環しない。その結果、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へは液状熱媒体を供給せず、第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62だけに例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給することができる。この形態に対して、第2放熱用熱交換器62での放熱量を増やしたい場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1の発熱を停止させ、第2ヒータ部103a2だけを発熱させるとともに、第1開閉弁906Aを閉とし、第2開閉弁906Bを開とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へは液状熱媒体を供給せず、第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62だけに例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。第2放熱用熱交換器62での放熱量を最大限としたい場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を発熱させるとともに、第1開閉弁906Aを閉とし、第2開閉弁906Bを開とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へは液状熱媒体を供給せず、第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62だけに例えば熱量7kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0152】
最後に、第三変形例において、第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされている場合について説明する。第1放熱用熱交換器61で放熱が要求され、かつ、第2放熱用熱交換器62で放熱が要求されている場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2の両方を発熱させるとともに、第1開閉弁906A及び第2開閉弁906Bを開とする制御を行う。これによって、第1分岐路901A及び第2分岐路901Bに液状熱媒体が循環する。その結果、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61へ例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、第2放熱用熱交換器(例えばヒータコア)62へ例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0153】
本実施形態に係る車両用温度制御システム900では、開閉弁906A,906Bは、絞り機能を有することが好ましい。各放熱用熱交換器61,62に要求される放熱量に応じて、各放熱用熱交換器61,62に流入する液状熱媒体の流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器61,62に選択的に供給することができる。
【0154】
図34は、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第四変形例を示す概略ブロック図である。本実施形態に係る車両用温度制御システムでは、液体加熱装置100は、
図34に示すように、ヒータ103として流れ方向に沿って直列に配置された複数のヒータ部103a1,103a2を有し、第1~第n分岐路の各分岐路901A,901Bは、ポンプ907A,907Bを有することが好ましい。
図34に示す第四変形例は、開閉弁906A,906Bに代えてポンプ907A,907Bを設置した以外は、基本的な構成を
図33に示す第三変形例と同じくする。ここでは、第三変形例と共通する構成については説明を省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0155】
第1分岐路901Aに配置された第1ポンプ907Aは、
図34では一例として第1流路出口112
1と第1放熱用熱交換器61の流入口とを繋ぐ温水配管903a上に配置した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第1放熱用熱交換器61の流入口と流入路901Zとを繋ぐ温水配管903b上に配置してもよい。また、第2分岐路901Bに配置された第2ポンプ907Bは、
図34では一例として第2流路出口112
2と第2放熱用熱交換器62の流入口とを繋ぐ温水配管904a上に配置した形態を示したが、本発明はこれに限定されず、第2放熱用熱交換器62の流入口と流入路901Zとを繋ぐ温水配管904b上に配置してもよい。各放熱用熱交換器61,62に要求される放熱量に応じてポンプ907A,907Bの流量を制御することで、より適切な熱量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器61,62に選択的に供給することができる。各分岐路901A,901Bに、ポンプ907A,907Bを設ける場合、総合ポンプ902(例えば
図33に図示)の設置は省略することができる。また、最下流に配置された第n流出口に接続される分岐路(
図34では第2分岐路901B)に設けられたポンプ(
図34では第2ポンプ)907Bは、常に作動させることが好ましい。第2分岐路901Bに常に液状熱媒体が通流されることで、タンクの内部に液状熱媒体が滞留することがなく、滞留によって液状熱媒体が意図しない温度にまで過熱されることを防止できる。一方、第n流出口よりも上流側に配置される第1~第(n-1)流出口に接続される分岐路(
図34では第1分岐路901A)では、第1放熱用熱交換器61の放熱によって加熱される被加熱物が目標温度に到達している場合、第1ポンプ907Aを停止して、第1分岐路901Aでの液状熱媒体の通流を止めてもよい。
【0156】
図34に示す第二例の車両用温度制御システム900の第四変形例は、
図33に示す第二例の車両用温度制御システム900の第三変形例における第1開閉弁906A及び第2開閉弁906Bの開閉を、それぞれ第1ポンプ907A及び第2ポンプ907Bのオンオフに置き換えることで、第三変形例と同様に作用する。さらに、第1ポンプ907A及び第2ポンプ907Bの流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器61,62に選択的に供給することができる。
【0157】
ここまで、第一例及び第二例の車両用温度制御システム800,900について、液体加熱装置1,100の流路出口の数nが2個である形態を例にとって説明してきたが、本発明はこれに限定されず、液体加熱装置1,100の流路出口の数nが3個以上であってもよい。例えば、代表して第二例の車両用温度制御システム900を用いて
図35を用いて説明する。
【0158】
図35は、本実施形態に係る第二例の車両用温度制御システムの第五変形例を示す概略ブロック図である。液体加熱装置100の流路出口の数nが3個である場合、液状熱媒体回路901は、
図35に示すように、分岐路として第1分岐路901A及び第2分岐路901Bに加えて、第3分岐路901Cを有し、放熱用熱交換器として第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62に加えて、第3放熱用熱交換器63を有する。このような形態では、例えば、第1放熱用熱交換器61はバッテリ加熱用熱交換器であり、第2放熱用熱交換器62は、車室の後席へ送風されるリア送風空気を加熱するリア用ヒータコアであり、第3放熱用熱交換器63は、車室の前席へ送風されるフロント送風空気を加熱するフロント用ヒータコアであることが好ましい。図示しないが、第一例の車両用温度制御システム800について、複数の流路出口の数nが3以上である場合、液状熱媒体回路801は、独立した3つ以上の循環回路として、第1分岐路801A、第2分岐路801B、第3分岐路(不図示)、・・・及び第n分岐路(不図示)を含む。そして、第1~第n流路出口の各流路出口12,22,・・・から流出する液状熱媒体の各温度に適した放熱量の放熱用熱交換器61,62,・・・を、第1~第n分岐路の各分岐路801A,801B,・・・上に配置することで、各放熱用熱交換器の放熱量に応じて、適切な温度の液状熱媒体を供給することができる。
【0159】
図35に示す第五変形例では、各分岐路901A,901B,901Cが開閉弁906A、906B,906Cを有していることが好ましく、開閉弁906A、906B,906Cが絞り機能を有することがより好ましい。
【0160】
図35に示す第五変形例では、ヒータ103が流路出口の数nと同じ数のヒータ部103a1,103a2,103a3を有し、第1流路出口112
1は、第1ヒータ部103a1と第2ヒータ部103a2との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁に設けられ、第2流路出口112
2は、第2ヒータ部103a2と第3ヒータ部103a3との境界及び該境界に近接する領域を含む境界領域を囲むタンク102の側壁に設けられることが好ましい。これによって、液状熱媒体の流量が一定である場合、第1流路出口112
1から流出される液状熱媒体の温度が、第1ヒータ部103a1の発熱量によって一義的に決まり、第2流路出口112
2から流出される液状熱媒体の温度が、第1ヒータ部103a1の発熱量及び/又は第2ヒータ部103a2の発熱量によって一義的に決まるため、より精密な温度制御をすることができる。
【0161】
図35に示す第二例の車両用温度制御システム900の第五変形例の作用の例をいくつか説明する。例えば、第1放熱用熱交換器61で放熱が必要され、かつ、第2放熱用熱交換器62及び第3放熱用熱交換器63で放熱が必要とされていない場合について説明する。この場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1だけを発熱させ、第2ヒータ部103a2及び第3ヒータ部103a3の発熱を停止させるとともに第1開閉弁906Aだけを開とし、第2開閉弁906B及び第3開閉弁906Cを閉とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第2放熱用熱交換器(例えばリア用ヒータコア)62及び第3放熱用熱交換器(例えばフロント用ヒータコア)63へは液状熱媒体を供給せず、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61だけに例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給することができる。このとき、タンク102内では、第2ヒータ部103a2及び第3ヒータ部103a3の発熱が停止しているため、第1流路出口112
1よりも流路の下流側において液状熱媒体が意図しない温度にまで加熱されることを抑制することができる。
【0162】
次に、第五変形例において、第3放熱用熱交換器63で放熱が必要され、かつ、第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされていない場合について説明する。この場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1及び第3ヒータ部103a3を発熱させ、第2ヒータ部103a2の発熱を停止させるとともに第1開閉弁906A及び第2開閉弁906Bを閉とし、第3開閉弁906Cを開とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61及び第2放熱用熱交換器(例えばリア用ヒータコア)62へは液状熱媒体を供給せず、第3放熱用熱交換器(例えばフロント用ヒータコア)63だけに例えば熱量4kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0163】
次に、第五変形例において、第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62で放熱が必要され、かつ、第3放熱用熱交換器63で放熱が必要とされていない場合について説明する。この場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1及び第2ヒータ部103a2を発熱させ、第3ヒータ部103a3の発熱を停止させるとともに第1開閉弁906A及び第2開閉弁906Bを開とし、第3開閉弁906Cを閉とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第3放熱用熱交換器(例えばフロント用ヒータコア)63へは液状熱媒体を供給せず、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61に例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、かつ、第2放熱用熱交換器(例えばリア用ヒータコア)62に例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0164】
最後に、第五変形例において、第1放熱用熱交換器61、第2放熱用熱交換器62及び第3放熱用熱交換器63で放熱が必要されている場合について説明する。この場合、制御部(不図示)は、第1ヒータ部103a1、第2ヒータ部103a2及び第3ヒータ部103a3を発熱させるとともに第1開閉弁906A、第2開閉弁906B及び第3開閉弁906Cを開とする制御を行う。これによって、車両用温度制御システム900は、第1放熱用熱交換器(例えばバッテリ加熱用熱交換器)61に例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給し、かつ、第2放熱用熱交換器(例えばリア用ヒータコア)62に例えば熱量5kW/hの液状熱媒体を供給し、かつ、第3放熱用熱交換器(例えばフロント用ヒータコア)63に例えば熱量7kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0165】
本発明は、前記に例示した第五変形例の作用に限定されず、各ヒータ部103a1,103a2,103a3のオンオフ、各開閉弁906A、906B,906Cの開閉を適宜組み合わせることで、所望の放熱用熱交換器61,62,63へ選択的に、適切な熱量の液状熱媒体を供給することができる。例えば、第3放熱用熱交換器としてフロント用ヒータコア63で放熱が必要され、かつ、第1放熱用熱交換器61及び第2放熱用熱交換器62で放熱が必要とされていない場合において、乗員がフロント座席においてより高温の暖房を希望している場合は、制御部(不図示)は、前記した制御に対して、第1ヒータ部103a1及び第3ヒータ部103a3の発熱に加えて、第2ヒータ部103a2を更に発熱させる制御を行えば、車両用温度制御システム900は、フロント用ヒータコア63だけに例えば熱量7kW/hの液状熱媒体を供給することができる。あるいは、乗員がフロント座席においてより低温の暖房を希望している場合は、制御部(不図示)は、前記した制御に対して、第1ヒータ部103a1だけを発熱させ、第2ヒータ部103a2及び第3ヒータ部103a3の発熱を停止する制御を行えば、車両用温度制御システム900は、フロント用ヒータコア63だけに例えば熱量2kW/hの液状熱媒体を供給することができる。
【0166】
また、第五変形例では、各分岐路901A,901B,901Cが第1開閉弁906A、第2開閉弁906B及び第3開閉弁906Cに代えて第1ポンプ(不図示)、第2ポンプ(不図示)及び第3ポンプ(不図示)を有していてもよい。開閉弁906A,906B,906Cに代えてポンプを有する場合、第1開閉弁906A、第2開閉弁906B及び第3開閉弁906Cの開閉を、それぞれ第1ポンプ、第2ポンプ及び第3ポンプのオンオフに置き換えることで、第五変形例と同様に作用する。さらに、第1ポンプ、第2ポンプ及び第3ポンプの流量を調整することで、より適切な熱量、かつ、より適切な流量の液状熱媒体を各放熱用熱交換器61,62,63に選択的に供給することができる。
【符号の説明】
【0167】
1(1A,1B,1C,1D) 液体加熱装置
2 タンク
2A 第1室
2B 第2室
3 ヒータ
3a 発熱部
3b 端子部
10 第1流路
11 第1流路入口
12 第1流路出口
13 第1周壁
14 第1側壁
15 第1端壁
20 第2流路
21 第2流路入口
22 第2流路出口
23 第2周壁
24 第2側壁
24a 内壁
24b 外壁
25a,25b 第2端壁
30 電装室
31 電子回路基板
32 トランジスタ
33 電装室隔壁
33a 区画壁
50 車両用空調装置
51 ケース
52a 外気導入口
52b 内気導入口
53 送風機
54 蒸発器
55 エアミックスドア
56a デフロスト開口部
56b ベント開口部
56c フット開口部
59 バッテリ
61 第1放熱用熱交換器
62 第2放熱用熱交換器
63 第3放熱用熱交換器
64,65 余剰熱放熱用熱交換器
100 液体加熱装置
102 タンク
103 ヒータ
103A,103B ヒータ
103a 発熱部
103a1,103a2 ヒータ部(発熱部)
103b,103b1,103b2 端子部
110 流路
111 流路入口
111a,112a 接続部
112(1121~112n) 流路出口
113 周壁
114 側壁
115a,115b 端壁
130 電装室
500 冷媒サイクル
501 圧縮機
502 膨張装置
800 車両用温度制御システム
801 液状熱媒体回路
801A 第1分岐路
801A1,801A2 出口路
801A3 合流路
801B 第2分岐路
801C 迂回路
801D 第1放熱路
801E 第2放熱路
802 第1ポンプ
803a~803f 温水配管
804 第2ポンプ
805a~805c 温水配管
806 分配比調整装置
807 混合比調整装置
808 第1放熱路分配装置
809 第2放熱路分配装置
900 車両用温度制御システム
901A 第1分岐路
901B 第2分岐路
901C 第3分岐路
901Z 流入路
902 総合ポンプ
903a,903b,904a,904b温水配管
906,906A,906B,906C 開閉弁
907A,907B ポンプ