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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163552
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】回転式切削工具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20241115BHJP
   B23B 51/00 20060101ALI20241115BHJP
   B23P 15/32 20060101ALI20241115BHJP
   B23P 15/34 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B23C5/10 Z
B23B51/00 S
B23P15/32
B23P15/34
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079278
(22)【出願日】2023-05-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】390002521
【氏名又は名称】ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康友
(72)【発明者】
【氏名】平松 茂
(72)【発明者】
【氏名】南野 亜紗日
【テーマコード(参考)】
3C022
3C037
【Fターム(参考)】
3C022KK14
3C022KK28
3C037BB15
3C037FF04
(57)【要約】
【課題】 ねじれ溝を設けた工具本体の先端部に超高圧焼結チップを取り付け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃をねじれ溝に沿って工具本体の軸方向に長く設けるようにする。
【解決手段】 一対のねじれ溝11を設けた工具本体10の先端部に超高圧焼結体20を取り付け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃21をねじれ溝に沿って設けた回転式切削工具Xにおいて、工具本体の中心Oを通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝12を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた複数の超高圧焼結チップ20A~20Dを、取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って形成した。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、工具本体の先端部に超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有する超高圧焼結体が取り付けられて、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃が設けられた回転式切削工具において、工具本体の中心を通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた超高圧焼結チップを、前記の取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って設けたことを特徴とする回転式切削工具。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式切削工具において、前記の取付用ねじれ溝内で積層させる各超高圧焼結チップの積層部分に段部を設け、積層させる超高圧焼結チップに形成された段部相互を接合させて、超高圧焼結チップを積層させたことを特徴とする回転式切削工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転式切削工具において、前記の各超高圧焼結チップの半径方向両側の外周に切れ刃が形成された超高圧焼結チップを用い、前記の超高圧焼結チップを取付用ねじれ溝内で積層させて、一対のねじれ溝の外周に沿った切れ刃を形成したエンドミルであることを特徴とする回転式切削工具。
【請求項4】
請求項3に記載の回転式切削工具において、工具本体の先端側に設けられた超高圧焼結チップの先端面に底刃を形成したことを特徴とする回転式切削工具。
【請求項5】
工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有するねじれた超高圧焼結チップが、工具本体の先端部に形成されたねじれ溝に沿って取り付けられた回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体の先端から軸方向に、超高圧焼結材料で構成されたねじれた超高圧焼結チップを取り付ける取付用ねじれ溝を設け、前記の取付用ねじれ溝内に、超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片を工具本体の軸方向に複数段積層させて取り付け、その後、前記の工具本体の先端部の外周に、一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片によってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、前記の各超高圧焼結チップ片の径方向両側に切れ刃を形成することを特徴とする回転式切削工具の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の回転式切削工具の製造方法において、前記の取付用ねじれ溝内に超高圧焼結チップを工具本体の軸方向に積層させるにあたり、積層させる各超高圧焼結チップの積層部分に段部を設け、積層させる超高圧焼結チップに形成された段部相互を接合させて、超高圧焼結チップを積層させることを特徴とする回転式切削工具の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の回転式切削工具の製造方法において、前記の棒状になった工具本体に対して、前記の取付用ねじれ溝を放電ワイヤー加工により加工すると共に、前記の各超高圧焼結チップ片を放電加工により超高圧焼結基材から切り出し加工し、さらに放電加工により、工具本体の先端部に一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片によってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、各超高圧焼結チップ片の径方向両側に切れ刃を形成することを特徴とする回転式切削工具の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は請求項6に記載の回転式切削工具の製造方法において、前記の工具本体の先端部の外周に、一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片によってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、前記の各超高圧焼結チップ片の径方向両側の外周に切れ刃を設けて、一対のねじれ溝の外周に沿った切れ刃を形成することを特徴とする回転式切削工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して樹脂やセラミックスや非鉄金属等の被削材を切削加工するのに使用する回転式切削工具及びその製造方法に関するものである。特に、工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、工具本体の先端部に超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有するねじれた超高圧焼結チップが取り付けられて、ねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃が設けられた回転式切削工具において、超高圧焼結材料で構成された切れ刃をねじれ溝に沿って工具本体の軸方向に長く設けることができると共に、前記のような超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有する複数の超高圧焼結チップを回転式切削工具のねじれ溝に沿って取り付けることにより、ねじれ溝のねじれ角が異なる様々な回転式切削工具においても、超高圧焼結材料で構成された切れ刃をねじれ溝に沿って簡単に設けることができるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転して被削材を切削加工するのに使用する回転式切削工具としては、エンドミルやドリルが使用されている。
【0003】
そして、このような回転式切削工具において、樹脂やセラミックス等の非鉄金属からなる被削材を切削加工するにあたって、従来から、工具本体の先端部に、ダイヤモンドや立方晶窒化硼素等の超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有するチップを取り付けたものが示されている。
【0004】
また、前記のような回転式切削工具としては、工具本体の先端部に切削された切り屑を排出させる複数のねじれ溝が形成されたものが使用されており、このように複数のねじれ溝が形成された工具本体の先端部に、前記の超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有する超高圧焼結チップを取り付けるにあたって、特許文献1、2においては、各ねじれ溝のすくい面を座ぐりし、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が形成された超高圧焼結チップを設けた台座を、前記の座ぐりした部分にろう付けするようにしたエンドミルが示されており、また特許文献3においては、各ねじれ溝のすくい面に沿って設けた取付凹部に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が形成された超高圧焼結チップの一部を嵌め込むようにして、超高圧焼結チップをろう付けするようにしたエンドミルが示されている。
【0005】
しかし、工具本体の径が小さく、ねじれ溝を深くすることができない回転式切削工具の場合、前記のように複数の各ねじれ溝のすくい面を座ぐりし、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が形成された超高圧焼結チップを設けた台座を、座ぐりした部分にろう付けしたり、各ねじれ溝のすくい面に沿って取付凹部を設け、この取付凹部に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が形成された超高圧焼結チップの一部を嵌め込むようにして、超高圧焼結チップをろう付けする作業は非常に困難であり、さらにろう付けした超高圧焼結チップが工具本体から外れたりする等の問題もあった。
【0006】
また、特許文献3においては、先端切れ刃を有する超高圧焼結チップを、工具本体の先端部の径方向に設けられた取付凹部内に嵌め込むようにしてろう付けしたドリルが示されている。
【0007】
しかし、工具本体の先端部の径方向に設けられた取付部内に、先端切れ刃を有する超高圧焼結チップを嵌め込むようにしてろう付けさせるようにした場合、工具本体の軸方向の長さが長くなった超高圧焼結チップを製造することは非常に困難であり、工具本体の先端部が鋭角になって先端切れ刃が軸方向に長くなったドリルや、工具径が大きくなって先端切れ刃の軸方向に長さも長くなったドリルを得ることは非常に困難であった。
【0008】
また、従来においては、特許文献4に示されるように、超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結体が軸方向に溝状に一体焼結されたチップを用い、このチップを工具本体の先端部に取り付けた後、溝状になった超高圧焼結体の部分に切れ刃を形成するようにして、軸方向に伸びた切り屑排出溝を設けるようにしたものが示されている。
【0009】
しかし、特許文献4に示されるものにおいては、工具本体の先端部における複数のねじれ溝に沿うようにして、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を形成することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1-96307号公報
【特許文献2】特開2002-178211号公報
【特許文献3】US2008/0247899 A1
【特許文献4】特表2002-504027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、工具本体の先端部に超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有するねじれた超高圧焼結チップが取り付けられて、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃が設けられた回転式切削工具における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0012】
すなわち、本発明においては、前記のような回転式切削工具において、工具本体の径が小さい場合にも、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃を簡単に設けることができると共に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を工具本体の軸方向に長く設けることができ、さらにねじれ溝のねじれ角が異なる様々な回転式切削工具においても、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を、一対のねじれ溝に沿って簡単に設けることができるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る回転式切削工具においては、前記のような課題を解決するため、工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、工具本体の先端部に超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有する超高圧焼結体が取り付けられて、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃が設けられた回転式切削工具において、工具本体の中心を通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた超高圧焼結チップを、前記の取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って設けるようにした。
【0014】
そして、このように工具本体の中心を通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた超高圧焼結チップを、前記の取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って設けるようにすると、工具本体の径が小さい場合にも、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃を簡単に設けることができると共に、超高圧焼結チップを工具本体の軸方向に積層させる数を多くすることによって、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を工具本体の軸方向に長く形成することができ、さらにねじれ溝のねじれ角が異なる回転式切削工具を得る場合にも、ねじれ溝に対応して取付用ねじれ溝のねじれ角を変更させて、これに対応した超高圧焼結チップを工具本体の軸方向に積層させることにより、ねじれ溝のねじれ角等が異なる各種の回転式切削工具を簡単に製造できるようになる。
【0015】
また、本発明の回転式切削工具においては、前記の取付用ねじれ溝内で積層させる各超高圧焼結チップの積層部分に段部を設け、積層させる超高圧焼結チップに形成された段部相互を接合させて、超高圧焼結チップを積層させることが好ましい。このようにすると、接合された各超高圧焼結チップにおける一方のねじれ溝側と他方のねじれ溝側とにおける切れ刃の接合位置が、軸方向においてずれた状態になり、回転式切削工具を回転させて切削を行う場合に、一方のねじれ溝側における切れ刃の接合部分と、他方のねじれ溝側におけるに切れ刃の接合部分との何れもが、接合された超高圧焼結チップにおける反対のねじれ溝側の切れ刃によって切削されて、切削加工面の仕上りがよくなる。
【0016】
また、本発明の回転式切削工具においては、前記の各超高圧焼結チップの半径方向両側の外周に切れ刃が形成された超高圧焼結チップを用い、前記の超高圧焼結チップを取付用ねじれ溝内で積層させて、一対のねじれ溝の外周に沿った切れ刃を形成したエンドミルとして使用することができる。
【0017】
そして、このように各超高圧焼結チップの半径方向両側の外周に設けた切れ刃によって、一対のねじれ溝の外周に沿った切れ刃を形成したエンドミルとして使用する場合、工具本体の先端側に設けられた超高圧焼結チップの先端面に底刃を形成すると、工具本体の先端側に設けられた超高圧焼結チップの先端面に設けた底刃によって座ぐり加工等も行えるようになる。
【0018】
また、本発明に係る回転式切削工具の製造方法においては、工具本体の外周に一対のねじれ溝が形成されると共に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を有するねじれた超高圧焼結チップが、工具本体の先端部に形成されたねじれ溝に沿って取り付けられた回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体の先端から軸方向に、超高圧焼結材料で構成されたねじれた超高圧焼結チップを取り付ける取付用ねじれ溝を設け、前記の取付用ねじれ溝内に、超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片を工具本体の軸方向に複数段積層させて取り付け、その後、前記の工具本体の先端部の外周に、一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップ片によってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、前記の各超高圧焼結チップ片の径方向両側に切れ刃を形成するようにした。
【0019】
このようにして回転式切削工具を製造すると、前記のように工具本体の径が小さい場合にも、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃を簡単に設けることができると共に、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を工具本体の軸方向に長くすることができ、また、ねじれ溝のねじれ角が異なる各種の回転式切削工具を簡単に製造できるようになる。
【0020】
また、前記の回転式切削工具の製造方法において、前記の取付用ねじれ溝内に超高圧焼結チップを積層させるにあたって、積層させる各超高圧焼結チップの積層部分に段部を設け、積層させる超高圧焼結チップに形成された段部相互を接合させて、超高圧焼結チップを積層させるようにすると、前記のように接合された各超高圧焼結チップにおける一方のねじれ溝側と他方のねじれ溝側とにおける切れ刃の接合位置が、軸方向においてずれた状態になり、回転式切削工具を回転させて切削を行う場合に、一方のねじれ溝側における切れ刃の接合部分と、他方のねじれ溝側におけるに切れ刃の接合部分との何れもが、接合された超高圧焼結チップにおける反対のねじれ溝側の切れ刃によって切削されて、切削加工面の仕上りがよくなる。
【0021】
また、前記の回転式切削工具の製造方法において、前記の棒状になった工具本体に対して、前記の取付用ねじれ溝を放電ワイヤー加工により加工すると共に、前記の各超高圧焼結チップを放電加工により超高圧焼結基材から切り出し加工し、さらに放電加工により、工具本体の先端部に一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップによってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、各超高圧焼結チップの径方向両側に切れ刃を形成するようにすると、ねじれ溝のねじれ角やねじれ方向等が異なる各種の回転式切削工具を簡単に製造できるようになる。
【0022】
また、前記の回転式切削工具の製造方法において、前記の工具本体の先端部の外周に、一対のねじれ溝を加工して、前記の超高圧焼結材料で構成された超高圧焼結チップによってねじれ溝のすくい面を形成すると共に、前記の各超高圧焼結チップの径方向両側の外周に切れ刃を設けて、一対のねじれ溝の外周に沿った切れ刃を形成することにより、この回転式切削工具をエンドミルとして使用することができ、さらに工具本体の先端側に設けられた超高圧焼結チップの先端面に底刃を形成すると、超高圧焼結チップの先端面に設けた底刃によって座ぐり加工等も行えるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明における回転式切削工具及び回転式切削工具の製造方法においては、前記のように工具本体の中心を通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた超高圧焼結チップを、前記の取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って設けるようにしたため、工具本体の径が小さい場合にも、一対のねじれ溝に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃を簡単に設けることができると共に、超高圧焼結チップを工具本体の軸方向に積層させる数を多くすることによって、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を工具本体の軸方向に長く形成することができ、さらにねじれ溝のねじれ角等が異なる回転式切削工具を得る場合にも、ねじれ溝に対応して取付用ねじれ溝のねじれ角を変更させて、これに対応した超高圧焼結チップを工具本体の軸方向に積層させることにより、ねじれ溝のねじれ角等が異なる各種の回転式切削工具を簡単に製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る回転式切削工具において、工具本体における取付用ねじれ溝から各超高圧焼結チップを取り出した状態を示した分解斜視図である。
図2】同実施形態に係る回転式切削工具において、取付用ねじれ溝から各超高圧焼結チップを取り出した工具本体の先端側の概略正面図である。
図3】同実施形態に係る回転式切削工具において、取付用ねじれ溝から取り外した各超高圧焼結チップを、工具本体の先端側から後方側に向けて積層させるようにして接合させた状態を示した概略斜視図である。
図4】同実施形態に係る回転式切削工具において、取付用ねじれ溝から取り外した各超高圧焼結チップを、工具本体の先端側から後方側に向けて積層させるようにして接合させた状態を示した概略側面図である。
図5】同実施形態に係る回転式切削工具において、各超高圧焼結チップを工具本体の取付用ねじれ溝内に工具本体の先端側から後方側に向けて積層させて取り付けた状態を示した概略斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体の先端から軸方向に、超高圧焼結材料で構成されたねじれた超高圧焼結チップを取り付ける取付用ねじれ溝を設けた状態を示した概略斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る回転式切削工具の製造方法において、各超高圧焼結チップを製造するのに使用する基板の上に超高圧焼結基材を設けたものを示した概略側面図である。
図8】同実施形態に係る回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体に設けた取付用ねじれ溝内に取り付ける用いる各超高圧焼結チップの状態を示した概略斜視図である。
図9】同実施形態に係る回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体に設けた取付用ねじれ溝内に各超高圧焼結チップを取り付ける前に、各超高圧焼結チップを工具本体の先端側から後方側に向けて積層させるようにして接合させた状態を示した概略斜視図である。
図10】同実施形態に係る回転式切削工具の製造方法において、棒状になった工具本体に設けた取付用ねじれ溝内に、各超高圧焼結チップを工具本体の先端側から後方側に向けて積層させて取り付けた状態を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態における回転式切削工具及び回転式切削工具の製造方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明における回転式切削工具及び回転式切削工具の製造方法は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0026】
この実施形態においては、回転式切削工具がエンドミルである場合について説明する。
【0027】
この実施形態における回転式切削工具Xにおいては、外周に一対のねじれ溝11が形成された超硬合金で構成された工具本体10の先端部に、ダイヤモンドや立方晶窒化硼素等の超高圧焼結材料で構成された切れ刃21を有する超高圧焼結体20を取り付けて、一対のねじれ溝11に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃21を設けるようにしている。
【0028】
ここで、この実施形態における回転式切削工具Xにおいては、図1図2等に示すように、工具本体10の軸心Oを通るようにして両側のねじれ溝11に至る取付用ねじれ溝12を設けるようにしている。
【0029】
また、この実施形態においては、前記の超高圧焼結体20として、図1に示すように、ダイヤモンドや立方晶窒化硼素等の超高圧焼結材料で構成された切れ刃21が径方向両側の外周に設けられた4種類の超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを、前記の取付用ねじれ溝12における工具本体10の軸方向の位置に対応するようにして形成すると共に、工具本体10の先端側における超高圧焼結チップ20Aの両側の先端面に、それぞれ底刃22を形成するようにしている。
【0030】
そして、この実施形態における回転式切削工具Xにおいては、前記の各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを、図3及び図4に示すように、工具本体10の先端側から後方側に向けて積層させるようにして接合させ、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを、図5に示すように、前記の取付用ねじれ溝12内に順々に嵌め込んで、ろう付け等によって工具本体10に取り付けるようにしている。
【0031】
このように、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを、工具本体10の先端側から後方側に向けて積層させて接合させ、前記の取付用ねじれ溝12内に順々に嵌め込んで、ろう付け等によって工具本体10に取り付けるようにすると、工具本体10の径が小さい場合にも、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dにより、一対のねじれ溝11に沿って超高圧焼結材料で構成された切れ刃21を簡単に設けることができると共に、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dにおける超高圧焼結材料で構成された切れ刃21が接合されて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃21を一対のねじれ溝11に沿って工具本体10の軸方向に長く設けることができるようになる。
【0032】
また、この実施形態においては、前記の超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを積層させるようにして接合させるにあたり、図1図3及び図4に示すように、積層させる各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dの積層部分に段部23を設け、積層させる超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dに形成された段部23相互を接合させて、超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを積層させるようにしている。
【0033】
このように、積層させる超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dに形成された段部23相互を接合させて、超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dを積層させると、図4に示すように、接合された各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dにおける一方のねじれ溝側と他方のねじれ溝側とにおける切れ刃21の接合位置が、軸方向にずれた状態になり、この回転式切削工具Xを回転させて切削を行う場合に、一方のねじれ溝側における切れ刃21の接合部分と、他方のねじれ溝側におけるに切れ刃21の接合部分との何れもが、接合された超高圧焼結チップにおける反対のねじれ溝側の切れ刃21によって切削されて、切削加工面の仕上りがよくなる。
【0034】
次に、前記の実施形態における回転式切削工具Xを製造する実施形態について説明する。
【0035】
この実施形態においては、前記の回転式切削工具Xを製造するにあたり、図6に示すように、超硬合金で構成された棒状になった工具本体110の先端から軸方向にねじれた取付用ねじれ溝112を、放電ワイヤー加工により加工するようにしている。
【0036】
また、この実施形態においては、各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを得るにあたり、図7に示すような基板Pの上に超高圧焼結基材Yされたものを用い、この超高圧焼結基材Yから放電加工により、図8に示すように、前記の工具本体110における取付用ねじれ溝112に沿うようにして、ねじれた各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを切り出し加工するようにしている。
【0037】
そして、この実施形態においては、図9に示すように、前記の各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを、工具本体110の先端側から後方側に向けて積層させるようにして接合させ、図10に示すように、各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを前記の工具本体110における取付用ねじれ溝112内に順々に嵌め込んで、各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを、ろう付け等によって工具本体110に取り付けるようにしている。
【0038】
ここで、この実施形態において、前記の各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを積層させるようにして接合させるにあたっては、図8及び図9に示すように、積層させる各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dの積層部分に段部123を設け、積層させる超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dに形成された段部123相互を接合させて、各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを積層させるようにしている。
【0039】
そして、前記のようにして工具本体110における取付用ねじれ溝112内に、4種類の超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dをろう付け等によって工具本体110に取り付けた後は、前記の工具本体110と各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dに対して放電ワイヤー加工を行い、前記の図5に示すように、工具本体10の先端部に一対のねじれ溝11を形成して、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dがねじれ溝11のすくい面になるようにすると共に、各超高圧焼結チップ20A,20B,20C,20Dの径方向両側の外周に切れ刃21を形成し、さらに工具本体10の先端側における超高圧焼結チップ20Aの両側の先端面にそれぞれ底刃22を形成するようにしている。
【0040】
このようにして回転式切削工具Xを製造するようにした場合、放電ワイヤー加工により、工具本体110に設ける取付用ねじれ溝112のねじれ角やねじれ方向を自由に変更することができると共に、この取付用ねじれ溝112のねじれ角やねじれ方向に対応させて、適切なねじれ状態になって各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dを放電加工により簡単に切り出し加工することができ、このような工具本体110と各超高圧焼結チップ120A,120B,120C,120Dとを用いることにより、一対のねじれ溝11のねじれ角やねじれ方向が異なる各種の回転式切削工具Xを簡単に製造できるようになる。
【0041】
なお、前記の実施形態においては、回転式切削工具Xがエンドミルである場合について説明したが、本発明の回転式切削工具Xは、エンドミルに限定されるものではない。
【0042】
例えば、図示していないが、前記の特許文献3に示されるように、工具本体の先端部の径方向に設けられた取付部内に嵌め込むようにして先端切れ刃を有する超高圧焼結チップを取り付けるようにしたドリルにおいても、工具本体の中心を通るようにして両側のねじれ溝に至る取付用ねじれ溝を設け、超高圧焼結材料で構成された切れ刃が径方向両側に設けられた超高圧焼結チップを、前記の取付用ねじれ溝内に工具本体の軸方向に複数段積層させて、超高圧焼結材料で構成された切れ刃を一対のねじれ溝に沿って設けるようにすることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 :工具本体
11 :ねじれ溝
12 :取付用ねじれ溝
20 :超高圧焼結体
20A :超高圧焼結チップ
20B :超高圧焼結チップ
20C :超高圧焼結チップ
20D :超高圧焼結チップ
21 :切れ刃
22 :底刃
23 :段部
110 :工具本体
112 :取付溝
120A :超高圧焼結チップ
120B :超高圧焼結チップ
120C :超高圧焼結チップ
120D :超高圧焼結チップ
123 :段部
O :軸心
P :基板
X :回転式切削工具
Y :超高圧焼結基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10