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特開2024-163573インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163573
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079315
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】日置 渉
(72)【発明者】
【氏名】田中 悠太郎
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB36
2C056EB46
2C056EC07
2C056EC33
2C056EC42
2C056EC77
2C056EC79
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行う。
【解決手段】インクジェットプリンタである印刷装置12に対する調整を行う調整方法であって、テストパターンを印刷装置12に印刷させるパターン印刷段階と、テストパターンの読み取り結果に対する解析を行う解析段階と、解析段階での解析の結果を印刷装置12の動作に反映させる調整を行う調整段階とを備え、印刷装置12は、インクジェットヘッドと、主走査駆動部112と、ヘッド位置調整部118とを備え、パターン印刷段階において、ヘッドギャップを複数段階で異ならせて、印刷装置12にテストパターンを印刷させ、解析段階において、テストパターンに基づき、ヘッドギャップの違いによって生じる主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知し、調整段階において、着弾位置の変化量に基づく調整を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタに対する調整を行うインクジェットプリンタの調整方法であって、
媒体に対して所定のテストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させるパターン印刷段階と、
前記媒体に印刷された前記テストパターンの読み取り結果に対する解析を行う解析段階と、
前記解析段階での解析の結果を前記インクジェットプリンタの動作に反映させる調整を行う調整段階と
を備え、
前記インクジェットプリンタは、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
鉛直方向と直交する主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
鉛直方向における前記インクジェットヘッドの高さを変化させるヘッド位置調整部と
を備え、
前記パターン印刷段階において、前記ヘッド位置調整部によって前記インクジェットヘッドの高さを複数段階で異ならせることで、前記媒体の表面と前記インクジェットヘッドの下部のノズル面との間の距離であるヘッドギャップを複数段階で異ならせて、前記インクジェットプリンタに前記テストパターンを印刷させ、
前記解析段階において、前記テストパターンに基づき、前記ヘッドギャップの違いによって生じる前記主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知し、
前記調整段階において、前記着弾位置の変化量に基づく調整を行うことを特徴とするインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項2】
前記パターン印刷段階で前記テストパターンが印刷された前記媒体をスキャナで読み取ることで前記テストパターンを示す画像であるパターン画像を生成するパターン読取段階を更に備え、
前記解析段階において、前記パターン画像に対する解析をコンピュータで行うことで、前記テストパターンの読み取り結果に対する解析を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタは、前記主走査方向及び鉛直方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部を更に備え、
前記テストパターンは、前記ヘッドギャップを複数段階で異ならせて描かれるパターンであるギャップ変更パターンを含み、
前記ギャップ変更パターンは、
前記ヘッドギャップを第1の距離にして、前記主走査動作において移動している前記インクジェットヘッドが前記主走査方向における所定の位置に来たタイミングで前記インクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれる第1パターンと、
前記第1パターンと前記副走査方向における位置をずらして描かれるパターンであり、前記ヘッドギャップを前記第1の距離と異なる第2の距離にして、前記主走査動作において移動している前記インクジェットヘッドが前記所定の位置に来たタイミングで前記インクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれる第2パターンと
を含み、
前記解析段階において、前記第1パターン及び前記第2パターンの前記主走査方向における位置のズレ量を検知し、
前記調整段階において、前記ズレ量に基づく調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項4】
前記解析段階において、前記第1パターン及び前記第2パターンに基づき、前記インクジェットヘッドが吐出するインクのミスト化、及び、インクの飛行曲がりの少なくともいずれかを更に検知することを特徴とする請求項3に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項5】
前記インクジェットプリンタは、前記インクジェットヘッドを駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力部を更に備え、
前記調整段階において、前記着弾位置の変化量に基づき、前記インクジェットヘッドに供給される前記駆動信号の電圧を調整することを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項6】
前記インクジェットプリンタは、前記主走査方向及び鉛直方向と直交する副走査方向へ前記媒体に対して相対的に前記インクジェットヘッドを移動させる副走査駆動部を更に備え、
前記テストパターンは、前記ヘッドギャップを複数段階で異ならせて描かれるパターンであるギャップ変更パターンを含み、
前記ギャップ変更パターンは、
前記ヘッドギャップを第1の距離にして、前記主走査動作において移動している前記インクジェットヘッドが前記主走査方向における所定の位置に来たタイミングで前記インクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれる第1パターンと、
前記第1パターンと前記副走査方向における位置をずらして描かれるパターンであり、前記ヘッドギャップを前記第1の距離と異なる第2の距離にして、前記主走査動作において移動している前記インクジェットヘッドが前記所定の位置に来たタイミングで前記インクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれる第2パターンと
を含み、
前記解析段階において、前記第1パターン及び前記第2パターンの前記主走査方向における位置のズレ量を検知し、
前記調整段階において、予め設定された基準量と前記ズレ量とを比較した結果に応じて、前記駆動信号の電圧を変化させることを特徴とする請求項5に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項7】
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを有し、
前記駆動信号出力部は、前記インクジェットヘッドに対し、前記ノズル毎に、前記駆動信号を供給し、
前記ギャップ変更パターンは、前記ノズル毎の前記ズレ量を検知できる前記第1パターン及び前記第2パターンを含み、
前記解析段階において、前記ノズル毎に、前記ズレ量を検知し、
前記調整段階において、前記ノズル毎の前記駆動信号に対し、前記ノズル毎の前記ズレ量に基づき、前記駆動信号の電圧の調整を行うことを特徴とする請求項6に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項8】
前記調整段階において、印刷すべき画像として前記インクジェットプリンタへ供給される印刷画像に対し、前記着弾位置の変化量に基づき、画像処理を行うことで、前記着弾位置の変化量に基づく調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項9】
前記解析段階において、前記着弾位置の変化量に基づき、前記媒体の厚さを検知し、
前記調整段階において、前記媒体の厚さに基づく調整を行うことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタの調整方法。
【請求項10】
コンピュータに画像解析を行わせるプログラムであって、
インクジェットプリンタによって媒体に印刷された所定のテストパターンの読み取り結果に対する解析処理を前記コンピュータに行わせ、
前記インクジェットプリンタは、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
鉛直方向と直交する主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
鉛直方向における前記インクジェットヘッドの高さを変化させるヘッド位置調整部と
を備え、
前記テストパターンは、前記ヘッド位置調整部によって前記インクジェットヘッドの高さを複数段階で異ならせることで、前記媒体の表面と前記インクジェットヘッドの下部のノズル面との間の距離であるヘッドギャップを複数段階で異ならせて、前記インクジェットプリンタに印刷させたパターンであり、
前記解析処理において、前記コンピュータに、
前記テストパターンに基づき、前記ヘッドギャップの違いによって生じる前記主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知させ、
前記着弾位置の変化量に基づき、前記インクジェットプリンタの調整に用いる補正値を算出させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
前記解析処理において、前記テストパターンが印刷された前記媒体をスキャナで読み取ることで生成される画像であるパターン画像に対する解析を前記コンピュータに行わせることで、前記パターン画像に基づき、前記着弾位置の変化量を検知させることを特徴とする請求項10に記載のプログラム。
【請求項12】
インクジェット方式での印刷を行う印刷システムであって、
インクジェット方式での印刷を行うインクジェットプリンタと、
前記インクジェットプリンタによって媒体に印刷された所定のテストパターンの読み取り結果に対する解析処理を行う解析装置と、
を備え、
前記インクジェットプリンタは、
インクを吐出するインクジェットヘッドと、
鉛直方向と直交する主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、
鉛直方向における前記インクジェットヘッドの高さを変化させるヘッド位置調整部と
を備え、
前記テストパターンは、前記ヘッド位置調整部によって前記インクジェットヘッドの高さを複数段階で異ならせることで、前記媒体の表面と前記インクジェットヘッドの下部のノズル面との間の距離であるヘッドギャップを複数段階で異ならせて、前記インクジェットプリンタに印刷させたパターンであり、
前記解析装置は、
前記テストパターンに基づき、前記ヘッドギャップの違いによって生じる前記主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知し、
前記着弾位置の変化量に基づき、前記インクジェットプリンタの調整に用いる補正値を算出することを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
画像の読み取りを行うスキャナを更に備え、
前記解析装置は、前記テストパターンが印刷された前記媒体を前記スキャナで読み取ることで生成される画像であるパターン画像に対する解析を行うことで、前記パターン画像に基づき、前記着弾位置の変化量を検知することを特徴とする請求項12に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットヘッドを用いて印刷を行う印刷装置であるインクジェットプリンタが広く用いられている。また、従来、インクジェットヘッドに対する検査を行う様々な方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-62158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいて、正常な画質での印刷を適切に行うためには、例えば、インクジェットヘッドのノズルからのインクの吐出を正確に行う必要がある。そして、ノズルからのインクの吐出を正確に行うためには、例えば、ノズルから吐出されるインクの容量(吐出量、ドットボリューム)を適正な量にすること等が必要になる。また、インクの容量については、例えば、インクジェットプリンタにおける各インクジェットヘッドの各ノズルに対して供給する駆動信号の電圧を変更することで調整を行うことができる。この場合、例えば、質量計を使用した方法でインクの容量を測定して、駆動信号の電圧を調整すること等が考えられる。
【0005】
しかし、インクジェットヘッドは、通常、多数のノズルを有する。また、インクジェットプリンタでは、複数のインクジェットヘッドを用いる場合もある。そして、この場合、複数のインクジェットヘッドにおける多数のノズルに対し、従来の方法で吐出の調整を行おうとすると、極めて多くの手間や時間を要することになる。また、この場合、例えば、調整を行う作業者の違いによって調整の結果にバラツキが生じやすくなること等も考えられる。そのため、従来、インクジェットプリンタに対する調整をより容易かつ適切に行うことが望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタの調整方法、プログラム、及び印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者は、インクジェットヘッドに対する調整に関し、インクジェットヘッドから媒体へ向かう鉛直方向の速度である吐出方向速度に着目して、調整を行うことを考えた。また、より具体的に、本願の発明者は、インクの吐出方向速度に関し、例えば、インクジェットヘッドに主走査動作を行わせる場合において、主走査動作時にインクジェットヘッドが移動する方向(主走査方向)でのインクの着弾位置について、吐出方向速度に応じて変化することに、着目をした。また、この場合において、更に、インクジェットヘッドの高さを複数段階で異ならせてインクジェットヘッドにインクを吐出させ、高さの違いによって生じる着弾位置間の距離を測定することで、ノズルの状態を確認することを考えた。そして、実際に様々な実験等を行うことで、このような方法でノズルの状態を確認できることや、確認結果を利用して、インクジェットプリンタに対する調整を容易かつ適切に行い得ることを見出した。
【0007】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、上記の効果を得るための構成を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、インクジェットプリンタに対する調整を行うインクジェットプリンタの調整方法であって、媒体に対して所定のテストパターンを前記インクジェットプリンタに印刷させるパターン印刷段階と、前記媒体に印刷された前記テストパターンの読み取り結果に対する解析を行う解析段階と、前記解析段階での解析の結果を前記インクジェットプリンタの動作に反映させる調整を行う調整段階とを備え、前記インクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、鉛直方向と直交する主走査方向へ移動しつつインクを吐出する主走査動作を前記インクジェットヘッドに行わせる主走査駆動部と、鉛直方向における前記インクジェットヘッドの高さを変化させるヘッド位置調整部とを備え、前記パターン印刷段階において、前記ヘッド位置調整部によって前記インクジェットヘッドの高さを複数段階で異ならせることで、前記媒体の表面と前記インクジェットヘッドの下部のノズル面との間の距離であるヘッドギャップを複数段階で異ならせて、前記インクジェットプリンタに前記テストパターンを印刷させ、前記解析段階において、前記テストパターンに基づき、前記ヘッドギャップの違いによって生じる前記主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知し、前記調整段階において、前記着弾位置の変化量に基づく調整を行うことを特徴とする。
【0008】
このように構成した場合、テストパターンを用いて検知される主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量に基づき、インクジェットプリンタの状態を適切に検知できる。また、検知した結果に基づき、例えば、インクジェットプリンタに対する調整を適切に行うことができる。テストパターンについては、例えば、互いに異なる高さからインクジェットヘッドにインクを吐出させたパターン等と考えることができる。
【0009】
この構成において、ヘッド位置調整部は、例えば、テストパターンを印刷するために行う複数回の主走査動作のうち、少なくともいずれかの主走査動作の合間にインクジェットヘッドの高さを変化させることで、その前後の主走査動作の実行時におけるインクジェットヘッドの高さを異ならせる。また、インクジェットプリンタの調整方法は、例えば、テストパターンを示す画像であるパターン画像を生成するパターン読取段階を更に備えてもよい。この場合、パターン読取段階では、例えば、パターン印刷段階でテストパターンが印刷された媒体をスキャナで読み取ることでパターン画像を生成する。また、解析段階では、例えば、パターン画像に対する解析をコンピュータで行うことで、テストパターンの読み取り結果に対する解析を行う。このように構成すれば、例えば、パターンの読み取り及び解析を適切に行うことができる。また、この場合、テストパターンを読み取る機能をインクジェットプリンタが有していなくても、例えば市販のスキャナ等を用いて、テストパターンの読み取りを適切に行うことができる。
【0010】
この構成において、パターン読取段階及び解析段階の動作については、例えば、コンピュータを用いて自動的に行うことが考えられる。また、調整段階の動作についても、例えば、コンピュータを用いて自動的に行うことが考えられる。この場合、テストパターンの読み取りや解析等を自動的に行うことで、例えば、インクジェットプリンタの出荷後等であっても、インクジェットプリンタを使用している通常の印刷環境等でインクジェットプリンタにテストパターンを印刷させて、インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行うことができる。また、解析段階において、例えば、コンピュータでの画像処理によって解析を行い、その結果に基づいてインクジェットプリンタに対する調整を行うことで、調整を行う作業者の個人差等によって調整の結果に差がでることを防止すること等も可能になる。また、これにより、例えば、インクジェットプリンタ毎の印刷結果での画質について、インクジェットプリンタの個体毎に差が生じること等を適切に防止することができる。そのため、このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタに対する調整を高い精度でより適切に行うことができる。
【0011】
また、この構成において、インクジェットプリンタは、例えば、副走査駆動部を更に備える。副走査駆動部については、例えば、媒体に対して相対的に副走査方向へインクジェットヘッドを移動させる駆動部等と考えることができる。副走査方向については、例えば、主走査方向及び鉛直方向と直交する方向等と考えることができる。また、この場合、テストパターンとしては、例えば、ヘッドギャップを複数段階で異ならせて描かれるパターンであるギャップ変更パターンを含むパターンを用いることが考えられる。ギャップ変更パターンとしては、例えば、副走査方向における位置を互いにずらして描かれる第1パターン及び第2パターンを含むパターンを用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、第1パターンとしては、例えば、ヘッドギャップを第1の距離にして、主走査動作において移動しているインクジェットヘッドが主走査方向における所定の位置に来たタイミングでインクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれるパターンを用いることが考えられる。第2パターンとしては、例えば、ヘッドギャップを第1の距離と異なる第2の距離にして、主走査動作において移動しているインクジェットヘッドが上記の所定の位置に来たタイミングでインクジェットヘッドが吐出するインクによって描かれるパターンを用いることが考えられる。また、この場合、解析段階では、例えば、第1パターン及び第2パターンの主走査方向における位置のズレ量を検知する。そして、調整段階では、例えば、このズレ量に基づく調整を行う。このように構成すれば、例えば、ヘッドギャップの違いによって生じる主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量について、適切に検知することができる。また、これにより、例えば、インクジェットプリンタに対する調整を適切に行うことができる。
【0012】
また、この構成において、ヘッドギャップの違いによって生じる主走査方向におけるインクの着弾位置の変化については、例えば、吐出方向速度の違いを反映していると考えることができる。また、吐出方向速度については、例えば、インクの容量(インクの液滴の容量)に応じて変化すると考えることができる。そして、この場合、解析段階で検知する着弾位置の変化量について、例えば、インクの容量に対応すると考えることができる。そのため、調整段階では、例えば、解析段階での解析の結果に基づき、ノズルから吐出されるインクの容量を変化させる調整を行うことが考えられる。また、この場合、調整段階において、例えば、インクジェットヘッドに供給する駆動信号の電圧を変化させる調整を行うこと等が考えられる。この場合、インクジェットプリンタは、例えば、インクジェットヘッドを駆動する駆動信号を出力する駆動信号出力部を更に備える。そして、調整段階では、例えば、着弾位置の変化量に基づき、インクジェットヘッドに供給される駆動信号の電圧を調整する。このように構成すれば、例えば、インクジェットプリンタに対する調整を適切に行うことができる。
【0013】
また、より具体的に、例えば、ギャップ変更パターンを含むテストパターンを用いる場合、上記においても説明をしたように、解析段階では、例えば、第1パターン及び第2パターンの主走査方向における位置のズレ量を検知する。そして、この場合、調整段階では、例えば、予め設定された基準量とズレ量とを比較した結果に応じて、駆動信号の電圧を変化させる。このように構成すれば、例えば、駆動信号の調整を適切に行うことができる。また、この場合、上記の基準量としては、例えば、インクの容量が適正である場合に検知されるべきズレ量に対応する値等を用いることが考えられる。基準量に対応するズレ量については、例えば、第1パターンの基準位置と第2パターンの基準位置との間の距離に関し、インクの容量が適正な場合に対応する距離等と考えることができる。また、この距離については、例えば、調整段階の調整において目標とすべきターゲット距離等と考えることもできる。この場合、調整段階では、例えば、第1パターンと第2パターンとのズレ量をターゲット距離に合わせるための調整値や補正値等を算出し、インクジェットプリンタに対する制御に反映させることで、インクジェットプリンタに対する調整を行うことが考えられる。
【0014】
また、駆動信号の調整については、例えば、インクジェットヘッドにおけるノズル毎に個別に行うことが好ましい。より具体的に、この場合、インクジェットヘッドは、複数のノズルを有する。駆動信号出力部は、インクジェットヘッドに対し、ノズル毎に、駆動信号を供給する。また、テストパターンにおけるギャップ変更パターンは、例えば、ノズル毎の上記のズレ量を検知できる第1パターン及び第2パターンを含む。そして、解析段階では、例えば、このようなテストパターンに基づき、ノズル毎に、上記のズレ量を検知する。また、調整段階では、例えば、ノズル毎の駆動信号に対し、ノズル毎の上記のズレ量に基づき、電圧の調整を行う。このように構成すれば、例えば、ノズル毎の駆動信号の調整を適切に行うことができる。
【0015】
また、調整段階では、駆動信号の電圧以外の調整を行うこと等も考えられる。この場合、例えば、インクジェットプリンタにおいて印刷をしようとしている画像に対し、解析段階の解析結果に基づく画像処理を行うことで、インクジェットプリンタに対する調整を行うことが考えられる。より具体的に、この場合、調整段階において、上記の着弾位置の変化量に基づく調整として、例えば、印刷すべき画像としてインクジェットプリンタへ供給される印刷画像に対し、解析段階で検知される着弾位置の変化量に基づき、画像処理を行うことが考えられる。このように構成した場合も、解析段階での解析の結果に基づき、インクジェットプリンタに対する調整を適切に行うことができる。また、この場合、例えば、解析段階において、インクの容量について、基準の容量とのズレ量を検知し、このズレ量に応じて生じる画質の変化を軽減するように、印刷画像に対する画像処理を行うこと等が考えられる。
【0016】
また、この構成において、ヘッドギャップについては、例えば、媒体の厚さに応じて変化すると考えることもできる。そのため、解析段階では、例えば、上記の着弾位置の変化量に基づき、媒体の厚さを検知すること等も考えられる。この場合、調整段階では、例えば、媒体の厚さに基づく調整を行うこと等が考えられる。このように構成した場合も、インクジェットプリンタに対する調整を適切に行うことができる。また、媒体の厚さに基づく調整としては、例えば、インクジェットヘッドの高さの調整等を行うことが考えられる。また、上記において説明をしたギャップ変更パターンを含むテストパターンを用いる場合、解析段階において、例えば、第1パターン及び第2パターンに基づき、インクジェットヘッドが吐出するインクのミスト化、及び、インクの飛行曲がりの少なくともいずれかを更に検知すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、一つのテストパターンに基づき、多様な情報を適切に得ることができる。
【0017】
また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有するプログラムや印刷システムを用いること等も考えられる。これらの場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、例えば、インクジェットプリンタの調整を容易かつ適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの調整方法を実行する印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、印刷装置12の要部の構成の一例を示す。
図2】ヘッド部102の具体的な構成について説明をする図である。図2(a)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202の構成の一例を示す。
図3】画像解析ツールの構成の一例を示す図である。
図4】画像解析装置16において実行する解析の一例について説明をする図である。図4(a)は、インクの吐出方向速度と着弾位置との関係を簡略化して示す。図4(b)は、調整パターンの印刷時における印刷の条件の一例を示す。
図5】本例において用いる調整パターンの例について説明をする図である。図5(a)は、調整パターンの少なくとも一部として印刷するギャップ変更パターン410に関し、1回の主走査動作で形成するインクのドット402の並びの一例を示す。図5(b)は、ギャップ変更パターン410の構成の一例を示す。
図6】印刷システム10の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】補正値の算出を行う動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの調整方法を実行する印刷システム10について説明をする図である。図1(a)は、印刷システム10の要部の構成の一例を示す。以下に説明をする点を除き、印刷システム10は、公知の印刷システムと同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷システム10は、図示した構成以外に、公知の印刷システムと同一又は同様の構成を更に有してよい。
【0021】
本例において、印刷システム10は、インクジェット方式での印刷を行う印刷システムであり、印刷装置12、スキャナ14、画像解析装置16、及びMPC18を備える。印刷装置12は、印刷システム10において印刷を実行するインクジェットプリンタである。また、本例において、印刷装置12は、複数のインクジェットヘッドを有しており、印刷装置12に対する調整を行う調整時において、印刷対象の媒体(メディア)に対して、予め設定されたテストパターンである調整パターンを印刷する。印刷装置12の構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0022】
スキャナ14は、印刷装置12によって媒体に印刷された画像を読み取る画像読取装置である。本例において、スキャナ14は、印刷装置12に対する調整時において、媒体に印刷された調整パターンを読み取る。スキャナ14を用いて調整パターンを読み取ることで、例えば、画像を読み取るための特別な構成等を印刷装置12に持たせることなく、容易かつ適切に調整パターンの読み取りを行うことができる。また、スキャナ14を用いることで、例えば、高解像度での画像の読み取りを容易かつ適切に行うこと等も可能になる。スキャナ14としては、フルカラーでの画像の読み取りが可能なカラースキャナを用いることが好ましい。また、スキャナ14としては、例えば、コンピュータに接続されて、そのコンピュータの制御に従って画像の読み取りを行うスキャナを用いることが考えられる。このようなスキャナ14としては、例えば、読み取り可能な最大の原稿サイズがA4サイズ以下のスキャナ等を好適に用いることができる。また、この場合、例えば、読み取りの解像度が2400dpi以上(例えば、2400~4800dpi程度、好ましくは、2400~3000dpi程度)のスキャナを用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、市販の安価なPC用スキャナ等を用いて、調整用パターンの読み取りを適切に実行することができる。スキャナ14を接続するコンピュータとしては、例えば、汎用のPC等を好適に用いることができる。また、本例において、このコンピュータとしては、例えば、画像解析装置16を用いる。
【0023】
画像解析装置16は、調整パターンを示す画像であるパターン画像に対する画像解析を行うコンピュータであり、スキャナ14での調整パターンの読み取りによって生成されるパターン画像に対する画像処理を行う。また、これにより、画像解析装置16は、例えば、印刷装置12の動作の制御に用いる補正値の算出や、印刷装置12におけるインクジェットヘッドの状態を示す数値の算出等を行う。より具体的に、本例において、画像解析装置16は、例えばPC等のコンピュータであり、コンピュータを画像解析装置として機能させるプログラムである画像解析ツールに従って、調整パターンに基づき、所定の補正値等の数値の算出を行う。また、画像解析装置16は、算出した補正値について、MPC18へ供給する。更に、本例において、画像解析装置16は、画像処理での解析の結果を示す解析レポートとして、解析結果を示すファイルである解析結果ファイルを生成する。画像解析装置16において算出する数値や画像解析装置16の動作等については、後に更に詳しく説明をする。
【0024】
MPC18は、印刷装置12の動作を制御するコンピュータ(制御PC)であり、印刷装置12の動作を制御するためのプログラムに従って動作することで、印刷装置12の動作を制御する。より具体的に、MPC18は、例えば、制御設定値を記憶するデータベース20を管理し、データベース20が記憶している制御設定値に基づき、印刷装置12の動作を制御する。この場合、制御設定値については、例えば、印刷装置12の動作を制御するための設定値等と考えることができる。また、本例において、データベース20は、制御設定値を記憶する設定値記憶部の一例であり、例えば、MPC18の一部として構成される。この場合、データベース20が記憶する制御設定値は、例えば、MPC18の記憶装置(例えば、HDD又はSSD等)に格納される。また、本例において、データベース20は、印刷装置12における互いに異なる動作にそれぞれが対応付けられた複数種類の制御設定値を記憶している。MPC18及びデータベース20の変形例において、データベース20は、MPC18の外部に置かれてもよい。また、本例において、MPC18は、画像解析装置16から受け取る上記の補正値について、制御設定値の少なくとも一部として、データベース20に記憶させる。また、これにより、MPC18は、画像解析装置16によって算出される補正値を利用して、印刷装置12の動作を制御する。このように構成すれば、例えば、調整パターンに基づいて算出される補正値に基づき、印刷装置12の動作の調整を適切に行うことができる。また、この場合、制御設定値の少なくとも一部については、例えば、データベース20が記憶している少なくともいずれかの制御設定値等と考えることができる。
【0025】
続いて、本例における印刷装置12の構成について、更に詳しく説明をする。図1(b)は、印刷装置12の要部の構成の一例を示す。上記及び以下に説明をする点を除き、印刷装置12は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、印刷装置12は、図示した構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に有してよい。本例において、印刷装置12は、ヘッド部102、台部104、Yバー部106、主走査駆動部112、副走査駆動部114、駆動信号出力部116、ヘッド位置調整部118、及び制御部120を有する。ヘッド部102は、印刷対象の媒体50に対してインクを吐出する部分である。また、本例において、ヘッド部102は、複数のインクジェットヘッドを有し、印刷の解像度に応じて設定される媒体50上の吐出位置に対し、それぞれのインクジェットヘッドから、インクを吐出する。この場合、それぞれのインクジェットヘッドは、印刷の解像度に応じて設定される吐出位置のうち、印刷すべき画像に応じて選択される少なくとも一部の吐出位置へ、インクを吐出する。ヘッド部102の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0026】
台部104は、ヘッド部102と対向する位置に媒体50を保持する台状部材である。本例において、台部104は、フラットベッド型の印刷装置において媒体50を保持する台であり、例えば図中に示すように、上面に媒体50の全体が載せられることで、ヘッド部102と対向させて媒体50を保持する。Yバー部106は、媒体50を挟んで台部104と対向する位置において媒体50の幅方向へ延伸する部材であり、媒体50と対向する位置にヘッド部102を保持する。本例において、媒体50の幅方向は、印刷装置12において予め設定された主走査方向(図中のY方向)と平行な方向である。主走査方向は、鉛直方向と直交する方向である。また、Yバー部106は、例えば主走査方向へのヘッド部102の移動をガイドするガイドレール等を含み、主走査動作時において、主走査方向へのヘッド部102の移動をガイドする。この場合、主走査動作については、例えば、主走査方向へ媒体50に対して相対的に移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。
【0027】
主走査駆動部112は、ヘッド部102に主走査動作を行わせる駆動部である。ヘッド部102に主走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに主走査動作を行わせること等と考えることができる。本例において、主走査駆動部112は、Yバー部106に沿ってヘッド部102を移動させつつ、ヘッド部102におけるそれぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させることで、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。この場合、主走査駆動部112は、制御部120の制御に従って、駆動信号出力部116から受け取る駆動信号をそれぞれのインクジェットヘッドに供給して、印刷すべき画像に応じて、それぞれのインクジェットヘッドにおけるそれぞれのノズルからインクを吐出させる。駆動信号については、例えば、複数のインクジェットヘッドのそれぞれにインクを吐出させる信号等と考えることができる。また、駆動信号について、例えば、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズルからインクを吐出させる駆動素子(例えば、ピエゾ素子等)を駆動するための信号等と考えることもできる。
【0028】
副走査駆動部114は、ヘッド部102に副走査動作を行わせる駆動部である。ヘッド部102に副走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッドに副走査動作を行わせること等と考えることができる。副走査動作については、例えば、主走査方向及び鉛直方向と直交する副走査方向(図中のX方向)へ媒体50に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作について、例えば、媒体50において主走査動作時にヘッド部102と対向する位置を変更する動作等と考えることもできる。副走査駆動部114は、例えば、主走査動作の合間にヘッド部102に副走査動作を行わせることで、媒体50において次の回の主走査動作でインクが吐出される領域を変更する。このように構成すれば、例えば、媒体50の各位置に対する主走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。また、本例において、副走査駆動部114は、位置が固定されている台部104に対し、制御部120の制御に従って、所定の副走査移動量だけヘッド部102と共にYバー部106を移動させることで、ヘッド部102に副走査動作を行わせる。副走査移動量については、例えば、副走査動作において媒体50に対して相対的に複数のインクジェットが移動する移動量等と考えることができる。
【0029】
駆動信号出力部116は、インクジェットヘッドを駆動する駆動信号をヘッド部102における複数のインクジェットヘッドへ供給する出力部である。本例において、駆動信号出力部116は、主走査駆動部112を介してそれぞれのインクジェットヘッドにおける駆動素子へ駆動信号を供給することで、それぞれのインクジェットヘッドにおけるノズルからインクを吐出させる。また、これにより、駆動信号出力部116は、インクジェットヘッドにおける複数のノズルに対し、ノズル毎に、駆動信号を供給する。この場合、ノズル毎に駆動信号を供給することについては、例えば、ノズル毎に個別に駆動信号の調整を行えること等と考えることができる。駆動信号の調整としては、例えば、駆動信号の電圧を調整することが考えられる。駆動信号の電圧を調整することについては、例えば、駆動信号における少なくとも一部のタイミングでの電圧を調整すること等と考えることができる。
【0030】
ヘッド位置調整部118は、鉛直方向におけるインクジェットヘッドの高さを変化させる調整部である。本例において、ヘッド位置調整部118は、例えば、Yバー部106の少なくとも一部の高さを変化させることで、鉛直方向へヘッド部102を移動させて、インクジェットヘッドの高さを変化させる。この場合、ヘッド位置調整部118は、例えば、媒体50の厚みに合わせて、インクジェットヘッドの高さを変化させる。また、本例において、ヘッド位置調整部118は、調整パターンを印刷する動作の中で、インクジェットヘッドの高さを変化させる。より具体的に、この場合、ヘッド位置調整部118は、例えば、調整パターンを印刷するために行う複数回の主走査動作のうち、少なくともいずれかの主走査動作の合間にインクジェットヘッドの高さを変化させることで、その前後の主走査動作の実行時におけるインクジェットヘッドの高さを異ならせる。調整パターンの印刷時にインクジェットヘッドの高さを変化させる動作については、後に更に詳しく説明をする。
【0031】
制御部120は、例えば印刷装置12のCPUを含む部分であり、印刷装置12のファームウェア等のプログラムに従って、印刷装置12の各部の動作を制御する。制御部120については、例えば、印刷装置12における制御ユニットに対応する構成等と考えることもできる。また、本例において、制御部120は、データベース20に記憶されている制御設定値に基づき、印刷装置12の各部の動作を制御する。また、これにより、制御部120は、印刷装置12の各部について、制御設定値に基づいて動作させる。より具体的に、制御部120は、例えば、データベース20に記憶されている制御設定値に基づき、主走査駆動部112の動作を制御する。また、これにより、主走査駆動部112は、例えば、制御設定値に基づき、ヘッド部102に主走査動作を行わせる。この場合、例えば、制御設定値としてデータベース20が記憶している補正値に基づき、それぞれのインクジェットヘッドにインクを吐出させるタイミングの調整を行うことが考えられる。このように構成すれば、例えば、より高い精度での主走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。また、制御部120は、更に、例えば、制御設定値としてデータベース20が記憶している補正値に基づき、副走査動作における副走査移動量の調整を行う。このように構成すれば、例えば、より高い精度での副走査動作をヘッド部102に適切に行わせることができる。この場合、副走査移動量の調整用の補正値としては、例えば、インクジェットヘッドにインクを吐出させるタイミングの調整用の補正値とは別の補正値を用いることが考えられる。また、本例において、制御部120は、更に、例えば、制御設定値としてデータベース20が記憶している補正値に基づき、インクジェットヘッドの各ノズルに対して供給される駆動信号の電圧を変化させる。この場合、駆動信号の電圧の調整用の補正値としては、例えば、上記の他の調整用の補正値とは別の補正値を用いることが考えられる。
【0032】
続いて、印刷装置12におけるヘッド部102の構成について、更に詳しく説明をする。図2は、ヘッド部102の具体的な構成について説明をする図である。図2(a)は、ヘッド部102の構成の一例を示す。図2(b)は、ヘッド部102におけるインクジェットヘッド202の構成の一例を示す。本例において、ヘッド部102は、キャリッジ200及び複数のインクジェットヘッド202を有する。キャリッジ200は、ヘッド部102における複数のインクジェットヘッド202を保持する保持部材であり、図中に符号202a1~d4として区別して示すような複数のインクジェットヘッド202について、台部104(図1参照)と対向する位置に保持する。この場合、台部104と対向させてインクジェットヘッド202を保持することについては、例えば、台部104上の媒体へ向けてインクが吐出されるようにインクジェットヘッド202を保持すること等と考えることができる。
【0033】
また、本例において、キャリッジ200は、スタガ配置で副走査方向へ複数のインクジェットヘッド202が並ぶインクジェットヘッド202の列が主走査方向へ複数列並ぶ構成により、複数のインクジェットヘッド202を保持する。より具体的に、図示した構成においては、インクジェットヘッド202a1~a4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第1の列になっている。また、インクジェットヘッド202b1~b4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第2の列になっている。インクジェットヘッド202c1~c4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第3の列になっている。インクジェットヘッド202d1~d4として示す4個のインクジェットヘッド202が、スタガ配列で並ぶ第4の列になっている。複数のインクジェットヘッド202がスタガ配列で並ぶことについては、例えば、主走査方向における位置をずらした複数のインクジェットヘッド202が副走査方向へ並ぶこと等と考えることができる。この場合、複数のインクジェットヘッド202は、例えば、副走査方向において一部が重なるように、副走査方向へ並んでもよい。より具体的に、本例において、スタガ配列で並ぶ4個のインクジェットヘッド202は、例えば図中に示すように、主走査方向における位置を交互にずらしつつ、隣接するインクジェットヘッド202の間で副走査方向において一部が重なるように、副走査方向へ並ぶ。
【0034】
また、この場合、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202について、例えば、仮想的な大きな一つのインクジェットヘッドとして用いることが可能になる。より具体的に、この場合、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202が有しているノズルを合わせて、仮想的な一つのノズル列を構成すると考えることができる。また、図中に示すように、本例において、インクジェットヘッド202の第1~第4の列は、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並ぶ。この場合、それぞれのスタガ配列に対応する仮想的なノズル列について、主走査方向に並んでいると考えることができる。また、この場合、それぞれのスタガ配列(一つのスタガ配列)に並ぶ複数のインクジェットヘッド202では、同じ色のインクを吐出し、互いに異なるスタガ配列に並ぶインクジェットヘッド202では、互いに異なる色のインクを吐出することが考えられる。より具体的に、例えば、本例のように、第1~第4の列に分けてキャリッジ200が複数のインクジェットヘッド202を保持する場合、第1~第4のそれぞれの列のインクジェットヘッド202によって、プロセスカラーの各色のインクを吐出することが考えられる。プロセスカラーの各色については、例えば、減法混色法での色表現での基本色等と考えることができる。また、プロセスカラーの各色のインクとしては、例えば、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、及びK(ブラック)の各色のインクを用いることが考えられる。このような各色のインクを用いることで、例えば、高い品質でのカラー印刷を適切に行うことができる。また、印刷装置12(図1参照)の用途等によっては、一つのスタガ配列に並ぶ複数のインクジェットヘッド202の一部により、同じスタガ配列内の他のインクジェットヘッド202と異なる色のインクを吐出してもよい。このように構成すれば、例えば、ヘッド部102において、より多くの色のインクを吐出することができる。また、複数のスタガ配列のインクジェットヘッド202により、同じ色のインクを吐出すること等も考えられる。
【0035】
また、ヘッド部102の構成に関し、インクジェットヘッド202の個数や配置については、図2(a)に図示した例に限らず、様々に変更が可能である。また、ヘッド部102は、インクジェットヘッド202から吐出するインクに合わせて、他の構成を更に有してもよい。例えば、インクジェットヘッド202から紫外線硬化型のインクを吐出する場合、ヘッド部102は、紫外線光源等を更に有してもよい。
【0036】
また、本例において、それぞれのインクジェットヘッド202は、例えば図2(b)に示すように、複数のノズル列212を有する。ノズル列212については、例えば、所定のノズル列方向における位置を互いにずらして複数のノズルが並ぶ列等と考えることができる。また、本例において、ノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。それぞれのノズル列212において、複数のノズルは、主走査方向における位置を揃えて、一定のノズル間隔で副走査方向へ並んでいる。また、それぞれのインクジェットヘッド202において、複数のノズル列212は、例えば、副走査方向における位置をずらして、主走査方向へ並んでいる。この場合、例えば、一つのノズル列212におけるノズル間隔未満の距離だけ、ノズル列212間での副走査方向における位置をずらすことが考えられる。このように構成すれば、例えば、一つのインクジェットヘッド202における副走査方向でのノズル間の距離(インクジェットヘッド202内での副走査方向におけるノズル間の最小距離)について、一つのノズル列212におけるノズル間隔よりも短い距離にすることができる。また、これにより、例えば、高解像度の印刷を高速かつ適切に行うことが可能になる。
【0037】
尚、図2(b)においては、一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数が4列の場合について、インクジェットヘッド202の構成の例を簡略化して図示している。一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数は、4列以外であってもよい。また、高解像度の印刷を高速かつ適切に行うことを考えた場合、一つのインクジェットヘッド202におけるノズル列212の数について、4列以上(例えば、4~6列程度)にすることが好ましい。
【0038】
続いて、画像解析装置16において実行する画像処理の動作等について、更に詳しく説明をする。上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って、調整パターンに基づき、所定の補正値等の数値の算出を行う。そして、この場合、画像解析ツールとしては、例えば、図3に示す構成のプログラムを用いる。
【0039】
図3は、画像解析ツールの構成の一例を示す。本例において、画像解析ツールは、画像解析装置16(図1参照)において実行されるプログラムであり、複数のモジュールによって構成されている。また、画像解析ツールは、複数のモジュールとして、解析ツール本体302、パターン解析ライブラリ304、複数の調整項目ライブラリ306、及びレポート作成ライブラリ308を有する。解析ツール本体302は、画像解析ツールの全体を制御するツール本体となるモジュールである。また、本例において、解析ツール本体302は、実行ファイル形式のファイル(例えば、exe形式のファイル)であり、画像解析ツールに対するデータの入出力処理(I/O処理)や、画像解析ツールにおけるモジュール間でのデータの入出力処理の管理等を行う。
【0040】
より具体的に、本例において、解析ツール本体302は、例えば画像解析装置16のモニタにユーザインターフェイス(UI)を表示し、ユーザによるファイルの選択により、パターン画像及び機種パラメータの読み込みを行う。この場合、上記においても説明をしたように、パターン画像は、媒体に印刷された調整パターンをスキャナ14(図1参照)で読み取ることで生成される画像である。パターン画像は、例えば画像解析装置16の記憶装置に記憶されており、上記のユーザインターフェイスでユーザに選択されることで、画像解析ツールに読み込まれる。この場合、画像解析ツールに読み込まれるパターン画像について、例えば、解析の対象となる解析画像等と考えることができる。また、機種パラメータは、調整パターンの印刷に用いた印刷装置12(図1参照)の機種に応じて設定されるパラメータである。このような機種パラメータを用いることで、例えば、印刷装置12の機種に合わせた動作を画像解析ツールに行わせることができる。また、これにより、例えば、複数種類の機種の印刷装置に対して共通の画像解析ツールを用いること等が可能になる。機種パラメータとしては、例えば、ヘッド部102(図2参照)におけるインクジェットヘッドの配置やインクジェットヘッドの構成等を示すパラメータを用いること等が考えられる。インクジェットヘッドの配置を示すパラメータとしては、例えば、インクジェットヘッドの個数やスタガ配置での配置数を示すパラメータを用いることが考えられる。
【0041】
また、本例において、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って実行する動作での出力として、補正値データ及び解析レポートを出力する。この場合、画像解析装置16は、補正値データとして、画像解析装置16において算出する補正値を示すファイルを出力する。また、解析レポートとして、解析結果を示す解析結果ファイルを出力する。この場合、画像解析装置16は、画像解析ツールに従って実行する動作によって、補正値の算出及び解析結果ファイルの生成等を行う。補正値データについては、例えば、補正値を印刷装置12にフィードバックするためのファイル等と考えることもできる。より具体的に、画像解析装置16は、例えば、所定の書式で補正値を示すファイルを生成することで、補正値データを出力する。また、この場合、例えばデータベース20が記憶する情報を管理するプログラム(例えばアジャストツール)を画像解析装置16又は他のコンピュータで実行することで、補正値をデータベース20に記憶させる。また、補正値について、例えば、画像解析ツールに従って実行する画像解析装置16の動作の中で、直接、データベース20に記憶させてもよい。解析結果ファイルとしては、例えばpdf形式や表計算用ファイル形式のファイルを用いることが考えられる。また、解析結果ファイルによって出力する解析レポートについては、例えば、印刷装置12における調整レベルを数値化して、人が見やすい形式にまとめたレポート等と考えることができる。また、解析レポートについては、例えば、調整レベルのエビデンス管理等に用いることが考えられる。
【0042】
パターン解析ライブラリ304、複数の調整項目ライブラリ306、及びレポート作成ライブラリ308のそれぞれは、ライブラリとして機能するモジュールである。本例において、これらのライブラリのモジュールとしては、ダイナミックリンクライブラリ形式(DLL形式)のファイルを用いる。また、これらのライブラリのうち、パターン解析ライブラリ304は、パターン画像を解釈するためのライブラリであり、パターン画像を解釈した結果に基づき、複数の調整項目ライブラリ306の中から、必要なモジュールを呼び出す。また、これにより、パターン解析ライブラリ304は、パターン画像に対する様々な解析を複数の調整項目ライブラリ306に行わせる。複数の調整項目ライブラリ306のそれぞれは、画像解析ツールでの解析の対象となる様々な項目(調整項目)に対する解析を行うライブラリである。本例において、複数の調整項目ライブラリ306のそれぞれは、互いに異なる項目用のライブラリであり、必要に応じてパターン解析ライブラリ304から呼び出されて、対応する項目に関する処理を実行する。また、本例の画像解析ツールは、例えば解析すべき項目が後に増えた場合等に、必要な調整項目ライブラリ306を追加可能に構成されている。
【0043】
より具体的に、本例において、複数の調整項目ライブラリ306としては、図中に示すように、ヘッド傾き解析用、ヘッド前後解析用、ヘッドスタガ解析用、ヘッド電圧解析用、ドット位置解析用、及びフィード解析用のライブラリを用いる。この場合、ヘッド傾き解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、キャリッジ200(図2参照)に対するインクジェットヘッド202(図2参照)の取付角度の解析を行う。インクジェットヘッド202の取付角度については、例えば、所定の正しい向きに対してインクジェットヘッド202の長手方向がずれる角度等と考えることができる。また、ヘッド前後解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、キャリッジ200に保持されているそれぞれのインクジェットヘッド202について、前後方向となる副走査方向での位置の解析を行う。ヘッドスタガ解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、スタガ配列で並ぶ複数のインクジェットヘッド202について、隣接するインクジェットヘッド202の間での前後方向における位置関係の解析を行う。ヘッド電圧解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202へ供給される駆動信号の電圧の解析を行う。ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、それぞれのインクジェットヘッド202のノズル列におけるノズルから吐出されるインクで形成されるインクのドットの位置の解析を行う。また、フィード解析用の調整項目ライブラリ306では、例えば、副走査動作での副走査移動量の解析を行う。
【0044】
また、レポート作成ライブラリ308では、複数の調整項目ライブラリ306で行った解析の結果に基づき、解析結果ファイルを生成する。この場合、レポート作成ライブラリ308は、例えば、解析ツール本体302及びパターン解析ライブラリ304を介して、それぞれの調整項目ライブラリ306での解析の結果を受け取る。また、レポート作成ライブラリ308は、例えば、解析ツール本体302を介して、解析結果ファイルを出力する。また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、補正値データを出力することで、データベース20に補正値を記憶させる。この場合、複数の調整項目ライブラリ306の少なくとも一部において、実行する解析の結果に合わせて、補正値を算出する。また、解析ツール本体302は、パターン解析ライブラリ304を介して調整項目ライブラリ306から補正値を受け取り、受け取った補正値を示す補正値データを出力する。
【0045】
また、本例において、複数の調整項目ライブラリ306によって実行する様々な解析のうち、ヘッド傾き解析、ヘッド前後解析、及びヘッドスタガ解析については、例えば、機械的な調整(メカ調整)に関する解析等と考えることができる。これに対し、ヘッド電圧解析、ドット位置解析、及びフィード解析については、例えば、メカ調整以外の印刷の動作の調整(プリント調整)に関する解析等と考えることができる。そして、本例においては、例えば、プリント調整に関する調整項目ライブラリ306のうち、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306、及びフィード解析用の調整項目ライブラリ306において、補正値の算出を行う。また、この場合、補正値の算出を行わない調整項目ライブラリ306での解析の結果については、例えば、解析結果ファイルに反映する。また、本例においては、例えば、補正値の算出を行う調整項目ライブラリ306での解析の結果も含めて、全ての調整項目ライブラリ306での解析の結果について、解析結果ファイルに反映する。
【0046】
続いて、調整項目ライブラリ306で実行する解析の例について、更に詳しく説明をする。以下においては、調整項目ライブラリ306で実行する解析の一例として、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306で行う解析の例を説明する。また、この例において、画像解析装置16では、例えば図4に示す事項を利用して、調整パターンの印刷時に形成されるインクのドットの位置に基づき、印刷装置12の状態に対する解析を行う。また、解析結果に基づき、印刷装置12の調整に用いる補正値の算出を行う。
【0047】
図4は、画像解析装置16において実行する解析の一例について説明をする図であり、ドット位置解析用の調整項目ライブラリ306で行う解析の例に関し、この解析に関連する印刷装置12の状態とインクの着弾位置との関係の例を示す。図4(a)は、インクの吐出方向速度と着弾位置との関係を簡略化して示す。
【0048】
上記においても説明をしたように、本例の印刷装置12において、インクジェットヘッド202は、主走査動作により、主走査方向へ移動しつつ、インクを吐出する。そして、この場合、インクジェットヘッド202から吐出されるインク(インクの液滴)の速度は、インクジェットヘッド202から媒体50へ向かう鉛直方向(吐出方向)の成分と、主走査動作中のインクジェットヘッド202の移動速度であるスキャン速度に対応する成分とを合成した成分になる。また、その結果、インクジェットヘッド202と媒体50との間において、インクは、主走査方向へ移動しつつ、徐々に媒体50へ近づくことになる。そして、この場合、インクの飛翔中に主走査方向において液滴が移動する距離を飛翔距離と定義し、上記の鉛直方向の成分を吐出方向速度と定義すると、飛翔距離について、吐出方向速度に応じて変化すると考えることができる。吐出方向速度については、例えば、インクジェットヘッド202から媒体50へ向かう鉛直方向の速度等と考えることもできる。
【0049】
この点に関し、インクジェットヘッド202のノズルからインクが吐出された直後において、液滴の速度における主走査方向の成分は、スキャン速度に対応する値になると考えることができる。また、吐出方向速度については、インクの容量(インクの液滴の容量、体積)に応じて決まる値になると考えることができる。そして、この場合、主走査方向の成分については、ノズルの特性によらず、一定の値になると考えることができる。これに対し、インクの容量は、通常、ノズルの特性のバラツキによって変化する。そのため、吐出方向速度については、ノズルの特性に応じて変化すると考えることができる。そして、この場合、図4(a)において液滴の移動ベクトルとして簡略化して示すように、インクジェットヘッド202と媒体50との間で飛翔するインクの移動の向きについて、吐出方向速度に応じて変化すると考えることができる。また、その結果、飛翔距離について、吐出方向速度に応じて変化すると考えることができる。より具体的に、例えば、吐出方向速度が相対的に小さい場合、飛翔距離について、相対的に大きくなると考えることができる。また、吐出方向速度が相対的に大きい場合、飛翔距離について、相対的に小さくなると考えることができる。
【0050】
ここで、実際の印刷時において、飛翔中のインクの速度は、空気抵抗や重力等の影響により、徐々に変化する。そのため、吐出方向速度と飛翔距離との関係については、図4(a)に示す関係よりも複雑になることが考えられる。しかし、本例の印刷装置12のように、インクジェット方式で印刷を行う構成では、飛翔中のインクの実効的な吐出方向速度について、例えば、インクの容量に応じて決まると考えることができる。そして、この場合、実効的な吐出方向速度と飛翔距離との関係について、例えば、上記と同様に考えることができる。また、この場合、インクの容量と実効的な吐出方向速度との相関関係に基づき、例えば、インクの容量が相対的に小さい場合、飛翔距離について、相対的に大きくなると考えることができる。また、インクの容量が相対的に大きい場合、飛翔距離について、相対的に小さくなると考えることができる。また、このような相関関係については、例えば、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置において通常成り立っている関係と考えることができる。また、この場合、本例の印刷装置12について、このような相関関係が成立する構成になっていると考えることもできる。
【0051】
また、この場合、原理的には、例えば、飛翔距離を測定することで、インクの容量を算出することも考えられる。しかし、通常の印刷装置の構成の場合、飛翔距離を測定することは、難しい。より具体的に、飛翔距離を正しく測定するためには、主走査方向において、インクジェットヘッド202がノズルからインクを吐出した位置と、媒体50上においてインクが着弾した位置との間の距離を測定することが必要になる。そして、この場合、インクを吐出した位置については、例えば、主走査動作の制御に用いる座標系の位置として検出することができる。また、インクの着弾位置については、例えば、媒体50上に設定する座標系の位置として検出することができる。しかし、この場合、通常、両者の座標系が異なることで、これらの位置の間の距離を高い精度で測定することは、難しい。また、この場合、両者の座標の位置を正確に対応付けようとすると、例えば媒体50上での位置を主走査動作の制御に用いる座標系の位置として高い精度で検知すること等が必要になり、印刷装置12のコストが大きく増大すること等が考えられる。
【0052】
これに対し、本例においては、以下において説明をするように、飛翔距離を直接測定するのではなく、吐出時の条件を互いに異ならせた場合に生じる着弾位置の変化量(主走査方向における変化量)に基づき、飛翔距離の差に対応する事項を検知する。そして、この検知結果に基づいて駆動信号の電圧を変化させることで、インクの容量を変化させて、印刷装置12に対する調整を行う。また、より具体的に、本例においては、例えば図4(b)に示すように、調整パターンの印刷時において、インクジェットヘッド202の高さを複数段階で異ならせる。
【0053】
図4(b)は、調整パターンの印刷時における印刷の条件の一例を示す図であり、画像解析装置16において実行する解析の対象となる調整パターンの印刷の仕方の一例を示す。上記においても説明をしたように、本例の印刷装置12では、ヘッド位置調整部118(図1参照)によって、インクジェットヘッド202の高さを変化させることができる。また、この場合、ヘッド位置調整部118によってインクジェットヘッド202の高さを複数段階で変化させることで、媒体50の表面とインクジェットヘッド202の下部のノズル面との間の距離であるヘッドギャップについても、複数段階で変化させることができる。そして、この場合、インクジェットヘッド202の高さを変化させることでヘッドギャップが変化すると、飛翔距離も変化することになる。また、この場合、飛翔距離の変化量について、吐出方向速度の違いを反映していると考えることができる。そして、吐出方向速度がインクの容量に応じて決まることを考えると、飛翔距離の変化量について、インクの容量に応じて決まると考えることもできる。また、本願の発明者は、実際に様々な実験等を行うことで、ヘッドギャップを変化させることで生じる飛翔距離の変化量について、インクの容量との対応付けが可能であることを確認した。
【0054】
また、この点に関し、図4(b)の左側の図は、インクの容量が適正な場合の飛翔距離の変化を簡略化して示している。この場合、図中にギャップ1と示すように、ヘッドギャップを相対的に大きい所定の距離にすると、飛翔距離は、距離L1になる。また、図中にギャップ2と示すように、ヘッドギャップを相対的に小さい他の所定の距離にすると、飛翔距離は、距離L2になる。また、この場合、インクジェットヘッド202の高さを変化させることで生じる飛翔距離の変化量ΔLは、距離L1と距離L2との差(L1-L2)と等しくなる。そして、この場合、この変化量ΔLについて、インクの適正な容量に対応していると考えることができる。
【0055】
また、図4(b)において、右側の図は、実際に測定される飛翔距離の変化量ΔLmの例を示している。この場合、インクの容量が適正な容量からずれていると、飛翔距離について、図4(b)の左側の図における距離と異なる距離に変化することになる。例えば、図示した場合において、ヘッドギャップを左側の図のギャップ1と同じにした場合、飛翔距離について、距離L1と異なるLm1になると考えることができる。また、ヘッドギャップを左側の図のギャップ2と同じにした場合、飛翔距離について、距離L2と異なるLm2になると考えることができる。また、その結果、インクの容量が適正でない場合、飛翔距離の変化量ΔLm(=Lm1-Lm2)についても、インクの容量が適正な場合の変化量ΔLと異なる値になる。そして、この場合、測定される変化量ΔLmについて、例えば、インクの容量に対応していると考えることができる。
【0056】
ここで、上記においても説明をしたように、本例において、インクジェットヘッド202は、駆動信号出力部116(図1参照)から供給される駆動信号に応じて、ノズルからインクを吐出する。そして、この場合、例えば、駆動信号の電圧を変化させることで、ノズルから吐出されるインクの容量を変化させることができる。そのため、例えばインクの容量が適正な容量になっていない場合には、インクの容量を適正な容量に近づけるように、駆動信号の電圧を変化させることが考えられる。そして、この場合、例えば、測定される変化量ΔLmと、インクの容量が適正な場合の変化量ΔLとの差に基づいて駆動信号の電圧を変化させることで、インクの容量について、適正な容量に近づけることができる。
【0057】
また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、媒体50に印刷される調整パターンに基づき、補正値等の数値の算出を行う。そして、この場合、インクの容量に関し、画像解析装置16は、例えば、飛翔距離の変化量ΔLmを測定するためのパターンを含む調整パターンに基づき、駆動信号の電圧を変化させるための補正値を算出する。また、印刷システム10においては、例えば画像解析装置16又はMPC18(図1参照)等により、この補正値をデータベース20(図1参照)に記憶させることで、印刷装置12に対する調整を行う。また、より具体的に、この場合、例えば、インクの容量が適正な場合の飛翔距離の変化量ΔLを目標の値(ターゲット距離)として、測定される飛翔距離の変化量ΔLmをターゲット距離に近づけるように、駆動信号の電圧を変化させることが考えられる。また、本例において、画像解析装置16は、調整パターンに基づき、このように駆動信号の電圧を変化させるための補正値を算出する。この場合、飛翔距離の変化量ΔLmをターゲット距離に近づけることについては、例えば、ΔLmとターゲット距離との差を所定の許容範囲内の値にすること等と考えることができる。
【0058】
また、この場合、画像解析装置16は、例えば、予め用意した電圧変化量と飛翔距離の変化量との関係に基づき、駆動信号の電圧を変化させるための補正値を算出する。電圧変化量と飛翔距離の変化量との関係としては、例えば、駆動信号の単位電圧(例えば、1V)あたりの電圧変化によって生じる飛翔距離の変化量を示すパラメータを用いることが考えられる。この場合、単位電圧あたりの電圧変化によって生じる飛翔距離の変化量としては、例えば、測定される飛翔距離の変化量ΔLmが単位電圧あたりに変化する量を用いることが考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、駆動信号の単位電圧あたりの電圧変化によって生じる飛翔距離の変化量をAとし、駆動信号を変化させる電圧調整量をdVとして、
dV=(|ΔLm|-ΔL)/A (計算式1)
によって、電圧調整量dVを算出することができる。この場合、パラメータAについては、例えば、インクの種類や色によって異なることが考えられる。そのため、パラメータAとしては、例えば、インクの種類や色に合わせて予め決定した値を用いることが考えられる。また、測定される飛翔距離の変化量ΔLmについては、上記のように、|ΔLm|として、距離の絶対値を用いることが考えられる。また、このような調整については、例えば、駆動信号の電圧を調整するための補正値(制御設定値)である電圧調整値が既に設定されている状態で行うことも考えられる。そして、この場合、上記の計算式1で算出される電圧調整量dVについて、例えば、下記の計算式2によって、現在の電圧調整値に電圧調整量dVを加算することが考えられる。
(調整後の電圧調整値)=(現在の電圧調整値)+(電圧調整量dV) (計算式2)
【0059】
この場合、現在の電圧調整値については、例えば、調整を行う前の補正値に対応すると考えることができる。また、調整後の電圧調整値については、例えば、画像解析装置16において算出する新たな補正値に対応すると考えることができる。また、更に具体的に、例えば、現在の電圧調整値=+1.0V、ターゲット距離=100μm、単位電圧を1Vとして、駆動信号の単位電圧あたりの電圧変化によって生じる飛翔距離の変化量A=20μmの場合、例えば、測定される飛翔距離の変化量ΔLm=-110μmであれば、電圧調整量dVは、計算式1により、
dV=(|-110|-100)/20=+0.5V
になる。また、その結果、新たな補正値に対応する調整後の電圧調整値は、計算式2により、+1.5Vになる。
【0060】
また、本例において、飛翔距離の変化量ΔLmに基づいて駆動信号の電圧の調整を行う場合、印刷装置12に印刷させる調整パターンとして、ヘッドギャップを複数段階で異ならせて描かれるパターンであるギャップ変更パターンを含むパターンを用いる。また、この場合、ギャップ変更パターンとしては、例えば、図5に示すパターンを用いることが考えられる。図5は、本例において用いる調整パターンの例について説明をする図である。図5(a)は、図4を用いて説明をした調整を行うために調整パターンの少なくとも一部として印刷するギャップ変更パターン410に関し、1回の主走査動作で形成するインクのドット402の並びの一例を示す。図5(b)は、ギャップ変更パターン410の構成の一例を示す。
【0061】
本例において、印刷装置12(図1参照)は、複数回の主走査動作を行うことで、ギャップ変更パターン410を印刷する。そして、この場合、ギャップ変更パターン410を印刷するための複数回の主走査動作のうち、少なくともいずれかの主走査動作の合間にインクジェットヘッド202(図2参照)の高さを変化させることで、その前後の主走査動作の実行時におけるインクジェットヘッド202の高さを異ならせる。また、この場合、各回の主走査動作において、印刷装置12は、インクジェットヘッド202において調整の対象となるノズルにより、主走査動作中に所定の間隔でインクを吐出することで、媒体上に、例えば図5(a)に示すように、主走査方向へ並ぶインクのドット402の並びを形成する。この場合、副走査方向における位置を揃えて主走査方向へ並ぶ複数のドット402について、例えば、同じノズルによって形成されるドット402と考えることができる。また、この場合も、印刷装置12は、例えば通常の印刷時と同様に、主走査動作の合間に副走査動作を行う。そして、この場合、同じノズルによって形成されるドット402であっても、異なる回の主走査動作で形成されると、副走査方向における位置がずれることになる。そのため、ヘッドギャップが異なる複数回の主走査動作により、同じノズルによって形成されるドット402について、副走査方向におけるドット402の位置に基づき、いずれの回の主走査動作で形成されたかについて、識別をすることができる。
【0062】
また、より具体的に、本例において、ギャップ変更パターン410は、例えば図5(b)に示すように、副走査方向における位置を互いにずらして描かれる第1パターン412及び第2パターン414を含む。図示の便宜上、図5(b)では、第1パターン412に含まれるインクのドット402を白丸で示し、第2パターン414に含まれるドット402について、網掛け模様を付して示している。また、本例において、第1パターン412は、ヘッドギャップを第1の距離にして描かれるパターンである。第2パターン414は、ヘッドギャップを第1の距離と異なる第2の距離にして描かれるパターンである。この場合、第1パターン412について、例えば、主走査動作において移動しているインクジェットヘッド202が主走査方向における所定の位置に来たタイミングでインクジェットヘッド202が吐出するインクによって描かれるパターン等と考えることができる。また、この場合、印刷装置12は、例えば、インクジェットヘッド202における少なくとも一部のノズルを調整対象のノズルとして選択して、選択したノズルにインクを吐出させることで、第1パターン412を構成する複数のインクのドット402を媒体上に形成する。また、第2パターン414については、例えば、ヘッドギャップを第1パターン412の描画時と異ならせた主走査動作において、第1パターン412と同じタイミングでインクジェットヘッド202が吐出するインクによって描かれるパターン等と考えることができる。この場合、第2パターン414の描画時に形成されるインクのドット402について、仮にヘッドギャップを上記の第1の距離にすれば第1パターン412において対応するインクのドット402と主走査方向における位置が同じになると考えることができる。また、第2パターン414については、例えば、主走査動作時にインクを吐出する位置について、主走査方向における位置を第1パターン412の描画時と同じにしたパターン等と考えることもできる。第2パターン414については、例えば、主走査動作において移動しているインクジェットヘッド202が第1パターン412の描画時における上記の所定の位置に来たタイミングでインクジェットヘッド202が吐出するインクによって描かれるパターン等と考えることもできる。
【0063】
また、この場合、インクが着弾する位置については、ヘッドギャップの違いの影響により、第1パターン412と第2パターン414とで、差が生じることになる。また、その結果、例えば、第1パターン412と第2パターン414との間で、主走査方向における位置にズレが生じることになる。そして、この場合、例えば図中に破線で示すように、第1パターン412の主走査方向における位置と第2パターン414の主走査方向における位置との差を測定することで、飛翔距離の変化量ΔLmを測定することができる。
【0064】
ここで、図5(b)においては、図示の便宜上、インクジェットヘッド202における全てのノズルにおいてインクの容量が適正な場合について、第1パターン412と第2パターン414とのズレ方の一例を示している。この場合、測定される飛翔距離の変化量ΔLmについて、インクの容量が適正な場合の変化量ΔLに等しくなると考えることができる。しかし、実際にギャップ変更パターン410を描く場合には、ノズルの特性のバラツキ等によってインクの容量がノズル毎に異なることで、第1パターン412と第2パターン414とのズレ方について、個々のノズルに対応するインクの容量を反映したズレ方になると考えることができる。そのため、飛翔距離の変化量ΔLmの実際の測定時には、主走査方向へ複数のインクのドット402が並ぶドット402の並び毎に、飛翔距離の変化量ΔLmを測定することが考えられる。また、この場合、ギャップ変更パターン410における第1パターン412及び第2パターン414について、例えば、ノズル毎に飛翔距離の変化量ΔLmを検知できるパターンになっていると考えることができる。このように構成すれば、例えば、調整対象のノズル毎に、飛翔距離の変化量ΔLmを適切に測定することができる。また、これにより、例えば、ギャップ変更パターン410を用いて行う駆動信号の調整において、インクジェットヘッド202におけるノズル毎に個別の調整を適切に行うことができる。
【0065】
また、第1パターン412及び第2パターン414におけるドット402の並びについては、例えば図5(b)に示すように、第1パターン412におけるドット402の並びの副走査方向における位置と、第2パターン414におけるドット402の並びの副走査方向における位置とが重ならないように、形成することが好ましい。このように構成すれば、例えば、第1パターン412におけるドット402の並びと、第2パターン414におけるドット402の並びとを、より容易かつ適切に区別することができる。
【0066】
続いて、印刷システム10において実行する印刷装置12の調整及び印刷の動作について、フローチャートを用いて、更に詳しく説明をする。図6は、印刷システム10の動作の一例を示すフローチャートである。上記においても説明をしたように、印刷システム10において、印刷装置12の調整を行う場合、媒体に対して調整パターンを印刷装置12に印刷させる(S102)。本例において、ステップS102の動作は、パターン印刷段階の動作の一例である。パターン印刷段階については、例えば、媒体に対して所定のテストパターンを印刷装置12に印刷させる段階等と考えることができる。本例のステップS102において、印刷装置12は、MPC18の指示に応じて、調整パターンを印刷する。この場合、MPC18は、例えば、印刷装置12の構成に合わせて動的に生成された調整パターンを印刷装置12に印刷させる。このような調整パターンとしては、例えば、実行しようとする調整の項目に合わせて生成された調整パターンを用いることが考えられる。このような調整パターンを用いることで、MPC18は、例えば、実行しようとする調整の項目に応じて、その調整の項目に対応するパターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させる。
【0067】
より具体的に、例えば、図4及び図5を用いて上記において説明をしたように、駆動信号の電圧の調整を行う場合、MPC18は、印刷装置12に、ギャップ変更パターン410を含む調整パターンを印刷させる。この場合、MPC18は、ヘッドギャップを互いに異ならせた複数回の主走査動作を印刷装置12に行わせることで、ヘッドギャップを複数段階で異ならせて描かれる調整パターンを印刷装置12に印刷させる。また、印刷システム10においては、例えば、複数の調整の項目について同時に調整を行うこと等も考えられる。この場合、MPC18は、例えば、複数の調整の項目に対応する複数種類のパターンを含む調整パターンを印刷装置12に印刷させる。
【0068】
また、ステップS102において、印刷装置12は、媒体に対し、例えば、A4サイズ以下の印刷範囲内へ調整パターンを印刷する。このように構成すれば、例えば、スキャナ14として、市販の安価なPC用スキャナ等を適切に用いることができる。また、本例において、印刷装置12は、台部104で保持可能な最大サイズの媒体よりも小さなA4サイズ以下の媒体に対して、調整パターンを印刷する。より具体的に、本例のステップS102において、印刷装置12は、例えば、A4サイズの媒体に対して、調整パターンを印刷する。このような動作については、例えば、印刷装置12における印刷可能範囲よりも狭い印刷範囲内に調整パターンを印刷する動作等と考えることもできる。印刷装置12における印刷可能範囲については、例えば、印刷装置12における台部104上で印刷が可能な最大の範囲等と考えることができる。
【0069】
また、上記においても説明をしたように、スキャナ14としては、例えば、読み取りの解像度が2400dpi以上のスキャナを用いることが考えられる。そして、この場合、調整パターンのサイズが例えばA3サイズ以上等に大きくなると、スキャナ14での画像の読み取りで生成されるファイルのサイズが極めて大きくなることが考えられる。そのため、この点でも、調整パターンを印刷する範囲について、A4サイズ以下にすることが好ましい。また、この場合、実行しようとする調整の項目の種類や、項目の数によっては、A4以下のサイズの1枚の媒体に対して必要な調整パターンの全てを印刷することが難しいこと等も考えられる。そのため、このような場合には、必要に応じて、例えば、A4サイズ以下の媒体を複数枚用いてもよい。この場合、MPC18は、複数の媒体のそれぞれに対し、印刷装置12に調整パターンを印刷させる。また、この場合、それぞれの媒体に印刷されるパターンについて、調整パターンの一部と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、1枚のA4サイズの媒体では必要な全てのパターンを印刷できない場合等にも、複数の媒体に分けて、必要な全てのパターンを印刷装置12に印刷させることができる。
【0070】
また、ステップS102において印刷装置12に調整パターンを印刷させた後には、調整パターンが印刷された媒体をスキャナ14で読み取ることで、調整パターンを示すパターン画像を生成し(S104)、画像解析装置16において、パターン画像に対する解析を行う(S106)。本例において、ステップS104の動作は、パターン読取段階の動作の一例である。ステップS104でのスキャナ14による画像の読み取りについては、例えば、スキャナ14で画像を読み取る公知の方法と同一又は同様に行うことが考えられる。また、本例において、ステップS106の動作は、解析段階の動作の一例である。解析段階については、例えば、媒体に印刷されたテストパターンの読み取り結果に対する解析を行う段階等と考えることができる。本例のステップS106において、画像解析装置16は、パターン画像に対する解析として、所定の画像処理及び演算等を実行する。また、これにより、上記においても説明をしたように、画像解析装置16は、例えば、印刷装置12の動作の制御に用いる補正値の算出や、印刷装置12におけるインクジェットヘッドの状態を示す数値の算出を行う。また、本例において、ステップS106の動作は、コンピュータに解析処理を行わせる動作の一例でもある。この場合、解析段階について、例えば、パターン画像に対する解析をコンピュータで行うことで、テストパターンの読み取り結果に対する解析を行う段階等と考えることができる。
【0071】
また、ステップS106において補正値の算出等を行った後には、画像解析装置16又はMPC18等により、補正値に基づき、データベース20に記憶されている制御設定値の更新を行う(S108)。本例において、ステップS108の動作は、設定値更新段階及び調整段階の動作の一例である。設定値更新段階については、例えば、解析段階での解析の結果に基づいて制御設定値の少なくとも一部を更新する段階等と考えることができる。また、調整段階については、例えば、解析段階での解析の結果を印刷装置12の動作に反映させる調整を行う段階等と考えることができる。この場合、例えば、制御設定値の少なくとも一部を更新する動作について、印刷装置12に対する調整の動作と考えることができる。また、本例のステップS108において、画像解析装置16は、ステップS106での解析の結果に基づき、補正値データ及び解析結果ファイルを出力する。そして、例えば、上記においても説明をしたように、データベース20が記憶する情報を管理するプログラムを画像解析装置16又はMPC18等で実行することで、補正値データに基づき、補正値をデータベース20に記憶させる。
【0072】
また、より具体的に、本例のステップS108では、例えば、解析段階の解析の結果に基づき、インクジェットヘッドの各ノズルに対応する駆動信号の電圧を調整するための制御設定値を変更する。また、これにより、例えば、解析段階での解析の結果を印刷装置12の動作に反映させる。本例によれば、例えば、スキャナ14によって調整パターンを読み取り、所定の画像処理及び演算を画像解析装置16で実行することで、印刷装置12の調整に用いる補正値の算出等を適切に行うことができる。また、算出した補正値をデータベース20に記憶させることで、例えば、印刷装置12の調整を容易かつ適切に行うことができる。
【0073】
また、本例の印刷システム10において、上記のように印刷装置12の調整を行った後、MPC18は、印刷装置12に、更新後の制御設定値に基づき、印刷の動作を実行させる(S110)。この場合、ステップS110で印刷装置12に実行させる印刷の動作については、例えば、所望の印刷物を作成するための印刷の動作等と考えることができる。本例によれば、例えば、印刷装置12に対する調整を適切に行うことができる。また、印刷装置12に対して必要な調整を行った後に、印刷装置12によって印刷物を適切に作成することができる。
【0074】
また、上記のように、本例においては、テストパターンの読み取り及び解析や、解析結果に基づく調整について、例えば作業者の主観的な判断等を要することなく、画像解析装置16等により、自動的に行うことができる。この場合、例えば、テストパターンの読み取り結果に対し、画像解析装置16での画像処理によって解析を行い、その結果に基づいて印刷装置12に対する調整を行うことで、調整を行う作業者の個人差等によって調整の結果に差がでることを防止すること等も可能になる。また、これにより、例えば、印刷装置12毎の印刷結果での画質について、印刷装置12の個体毎に差が生じること等を適切に防止することができる。この場合、印刷装置12の個体毎の画質に差が生じることについては、例えば、同じ構成の印刷装置12の間で印刷結果に差が生じること等と考えることができる。また、同じ構成の印刷装置12の間で印刷結果に差が生じることについては、例えば、同じ製品のインクジェットヘッド202及びインクを用いた複数台の印刷装置12の間で、インクジェットヘッド202毎の個体差等の影響でインクの容量(吐出量)に差が生じ、印刷物の色に差が生じること等と考えることができる。更に、本例においては、補正値の算出等を自動的に行うことで、例えば、印刷装置12におけるインクジェットヘッド202の数や、インクジェットヘッド202におけるノズルの数が多い場合等にも、印刷装置12に対する調整を容易かつ適切に行うことができる。また、印刷装置12に対する調整を行う調整時には、一部の作業について、作業者によって実行すること等も考えられる。この場合、画像解析装置16での画像処理によって、調整の作業を半自動化できると考えることもできる。また、この場合も、調整の作業を半自動化することで、調整に要する時間の低減や、作業者の負担の軽減をすることができる。
【0075】
また、印刷装置12に対する調整については、例えば、印刷装置12の製造時に行うことが考えられる。また、本例においては、上記の動作を自動的又は半自動的に行うことで、例えば、印刷装置12の出荷後等であっても、印刷装置12を使用している通常の印刷環境等で印刷装置12にテストパターンを印刷させて、印刷装置12の調整を容易かつ適切に行うことができる。また、この場合、テストパターンを読み取る機能を印刷装置12が有していなくても、例えば市販のスキャナ14等を用いて、テストパターンの読み取りを適切に行うことができる。このような出荷後の調整については、例えば、印刷装置12を使用している拠点において、印刷装置12のメーカから派遣される保守要員によって行うことが考えられる。また、出荷後の調整について、例えば、印刷装置12を所有しているユーザ自身によって行うこと等も考えられる。
【0076】
続いて、ステップS106において補正値の算出を行う動作の例について、更に詳しく説明をする。図7は、ステップS106において補正値の算出を行う動作の一例を示すフローチャートであり、図4及び図5を用いて上記において説明をしたように駆動信号の電圧の調整を行う場合に関し、補正値の算出を行う動作の例を示す。この場合、画像解析装置16は、例えば、図5を用いて上記において説明をしたギャップ変更パターン410を含む調整パターンをスキャナ14で読み取ることで生成されるパターン画像に対する解析を行うことで、ギャップ変更パターン410における第1パターン412及び第2パターン414の主走査方向における位置のズレ量を検知する(S202)。また、図4及び図6を用いて説明をした事項等から理解できるように、本例において、このズレ量については、例えば、ヘッドギャップの違いによって生じる主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量に対応すると考えることができる。また、この変化量については、ヘッドギャップの違いに応じて生じる飛翔距離の変化量ΔLmの測定値に対応すると考えることができる。そのため、第1パターン412及び第2パターン414の主走査方向における位置のズレ量を検知することについては、例えば、ヘッドギャップの違いによって生じるインクの着弾位置の差を解析することに対応すると考えることができる。
【0077】
また、上記においても説明をしたように、本例において、ギャップ変更パターン410における第1パターン412及び第2パターン414は、ノズル毎に飛翔距離の変化量ΔLmを検知できるパターンになっている。そのため、本例のステップS202において、画像解析装置16は、インクジェットヘッド202における調整対象のノズル毎に第1パターン412及び第2パターン414の主走査方向における位置のズレ量を検知することで、ノズル毎に、飛翔距離の変化量ΔLmを測定する。この場合、ノズル毎に第1パターン412及び第2パターン414の主走査方向における位置のズレ量を検知することについては、例えば、第1パターン412及び第2パターン414において個々のノズルに対応する位置毎に、主走査方向における位置のズレ量を検知すること等と考えることができる。また、上記においても説明をしたように、本例において、飛翔距離の変化量ΔLmについては、例えば、インクの容量に対応していると考えることができる。また、インクジェットヘッド202のノズルから吐出されるインクの容量については、例えば、駆動信号の電圧を変化させることで調整することができる。そして、この場合、例えば、飛翔距離の変化量ΔLmに基づいて駆動信号の電圧を変化させることで、インクの容量を調整することができる。そこで、本例において、画像解析装置16は、以降の動作によって、飛翔距離の変化量ΔLmに基づき、駆動信号の電圧を調整するための補正値の算出を行う。
【0078】
より具体的に、この場合、画像解析装置16は、ステップS202で測定されたノズル毎の飛翔距離の変化量ΔLmについて、予め設定されたターゲット距離ΔLと等しいか否かの確認を行う(S204)。この場合、飛翔距離の変化量ΔLmがターゲット距離ΔLと等しいことについては、例えば、両者の差が所定の許容範囲内になること等と考えることができる。そして、調整対象の全てのノズルについて、飛翔距離の変化量ΔLmとターゲット距離ΔLとが等しくなっている場合(S204、Yes)、駆動信号の電圧に対する調整は不要であると判断して、新たな補正値の算出を行うことなく、調整の動作を終了する。また、この場合、ステップS110へ進み、印刷装置12に、印刷の動作を実行させる。この場合、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS108の動作を省略すると考えることができる。
【0079】
また、ステップS204において、いずれかのノズルについて、飛翔距離の変化量ΔLmとターゲット距離ΔLとが等しくないと判断した場合(S204、No)、画像解析装置16は、等しくないと判断した全てのノズルに対し、ノズル毎に、そのノズルに対して測定された飛翔距離の変化量ΔLmに基づき、そのノズルに対応する駆動信号に対応する電圧調整量dVを算出する(S206)。この場合、画像解析装置16は、例えば、図4を用いて説明をした計算式1に従って、電圧調整量dVを算出する。また、画像解析装置16は、ノズル毎に、飛翔距離の変化量ΔLmに対応する補正値として、図4を用いて説明をした計算式2に従って、算出された電圧調整量dVに応じて調整された電圧調整値である調整後の電圧調整値を算出する(S208)。このように構成すれば、例えば、飛翔距離の変化量ΔLmに対応する補正値を適切に算出することができる。
【0080】
また、本例において、画像解析装置16は、ステップS208で補正値の算出を行った後に、調整の完了の確認を更に行う(S210)。この場合、調整の完了の確認として、例えば、ステップS208で算出された補正値を用いることでインクの容量が目標の容量(適正な容量)に変化したか否かを確認することが考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば、印刷システム10において、調整後の補正値を用いて、ギャップ変更パターン410を印刷装置12に印刷させ、調整対象の全てのノズルに対して、測定される飛翔距離の変化量ΔLmとターゲット距離ΔLとが等しくなることを確認することが考えられる。また、ステップS210において、例えば、画像解析ツールが表示する結果に問題がないかをユーザが確認することで、調整の完了の確認を行ってもよい。そして、ステップS210において、調整が完了していないと判断した場合、ステップS206に戻り、以降の動作を繰り返す。このように構成すれば、例えば、インクの容量を調整するための補正値をより高い精度で適切に算出することができる。また、これにより、例えば、ステップS210において調整が完了していないと判断した場合において、正しい調整の結果が得られるように適切に修正を行うことができる。また、ステップS210において、調整が完了したと判断した場合、ステップS106での動作を終了し、ステップS108へ進む。この場合、ステップS108において、画像解析装置16は、上記の動作で算出した補正値に基づき、補正値データ及び解析結果ファイルを出力する。
【0081】
この場合、ステップS108において、画像解析装置16又はMPC18等は、例えば、ステップS106で算出された補正値をデータベース20に反映させることで、上記の着弾位置の変化量に基づき、インクジェットヘッド202に供給される駆動信号の電圧を調整する。また、この場合において、例えば、ノズル毎の駆動信号に対し、ノズル毎の補正値をデータベース20に反映させることで、ノズル毎の上記のズレ量に基づき、電圧の調整を行う。このように構成すれば、例えば、ノズル毎の駆動信号の調整を適切に行うことができる。このように、本例によれば、例えば、調整パターンを用いて検知される主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量に基づき、インクジェットヘッド202のノズルから吐出されるインクの容量に関し、印刷装置12の状態を適切に検知できる。また、検知した結果に基づき、例えば、印刷装置12に対する調整を適切に行うことができる。
【0082】
また、上記の説明等から理解できるように、本例において用いる調整パターンについては、例えば、互いに異なる高さからインクジェットヘッド202にインクを吐出させたパターン等と考えることができる。そして、この場合、ステップS106の動作については、例えば、互いに異なる2種類の高さから吐出されたインクが着弾して形成された2つのインクのドットに対し、主走査方向における距離を測定することで、主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量を検知していると考えることができる。また、ステップS106で算出された結果に基づいてステップS108で行う動作については、例えば、上記の着弾位置の変化量に基づく調整を行う動作等と考えることができる。また、ステップS108の動作については、例えば、ステップS106での解析の結果に基づき、ノズルから吐出されるインクの容量を変化させる調整を行う動作等と考えることもできる。
【0083】
続いて、上記において説明をした構成に関する補足説明や、変形例の説明等を行う。上記の説明等から理解できるように、本例において、画像解析装置16は、上記の計算式1、2に従って、補正値の算出を行う。この場合、この補正値について、例えば、測定される飛翔距離の変化量ΔLmとターゲット距離ΔLとを比較した結果に基づいて算出される値等と考えることができる。また、この場合、測定される飛翔距離の変化量ΔLmについては、上記においても説明をしたように、調整パターンが含むギャップ変更パターン410における第1パターン412及び第2パターン414の主走査方向における位置のズレ量に対応すると考えることができる。そして、ターゲット距離ΔLについては、例えば、予め設定された基準量に対応すると考えることができる。そのため、ステップS106で算出さる補正値については、例えば、このような基準量とズレ量とを比較した結果に対応する値等と考えることもできる。また、この場合、この基準量について、例えば、インクの容量が適正である場合に検知されるべきズレ量等と考えることができる。また、このようなズレ量については、例えば、第1パターン412の基準位置と第2パターン414の基準位置との間の距離に関し、インクの容量が適正な場合に対応する距離等と考えることもできる。また、この場合、上記において説明をしたステップS108の動作について、例えば、ターゲット距離に対応して算出される調整値や補正値等を印刷装置12に対する制御に反映させることで、印刷装置12に対する調整を行う動作等と考えることもできる。
【0084】
また、上記においても説明をしたように、本例において、画像解析装置16は、調整パターンをスキャナ14で読み込むことで生成されるパターン画像に基づき、補正値の算出等を行う。そのため、本例によれば、例えば印刷結果に対する読み取りを行うためのカメラや測色器を印刷装置12備えていない場合でも、駆動信号の電圧の調整等を適切に行うことができる。また、この場合、上記においても説明をしたように、スキャナ14としては、安価なPC用スキャナ等を用いることが可能である。そのため、例えば印刷装置12の製造を行う工場等に限らず、印刷装置12を使用している現場等でも、印刷装置12を使用している環境のままで、駆動信号の電圧の調整等を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、印刷装置12の経年劣化等でインクの容量にズレが生じた場合等にも、印刷装置12に対する調整を容易かつ適切に行うことができる。
【0085】
また、上記においても説明をしたように、本例の印刷システム10では、印刷装置12に対する調整として、例えば、駆動信号の電圧の調整を行う。また、この場合、駆動信号の電圧を変化させることで、例えば、インクジェットヘッド202のノズルから吐出されるインクの容量を変化させる。そして、この場合、インクジェットヘッド202から媒体へ向かうインクの吐出方向速度に関し、例えば、吐出されるインクの容量と吐出方向速度との間に一定の関係があることに着目していると考えることができる。より具体的に、この場合、インクの容量と、飛翔中のインクの実効的な吐出方向速度との間に、例えば、単調増加の関係があると考えることができる。
【0086】
また、飛翔距離の変化量ΔLmの測定時には、ヘッドギャップを異ならせる変化量について、例えば、1mm程度(例えば、0.5~2mm)程度にすることが考えられる。より具体的に、この場合、ヘッドギャップについて、例えば、1.5mm程度及び2.5mm程度の2種類の距離で変化させて、飛翔距離の変化量ΔLmの測定を行うことが考えられる。また、この場合、ターゲット距離について、例えば、100μ程度(例えば、90~140μm程度)にすることが考えられる。駆動信号の電圧については、例えば、標準の電圧に対して変化させる電圧の変動幅を-3V~+3V程度にすることが考えられる。また、この場合、駆動信号の電圧を1V変化させることで、飛翔距離の変化量ΔLmについて、例えば、10~50μm程度(好ましくは、15~40μm程度)の変化が生じることが考えられる。この場合、この変化量について、例えば、上記において説明をした計算式1におけるパラメータAに対応すると考えることができる。
【0087】
また、ギャップ変更パターン410を含む調整パターン等を用いる場合、測定される飛翔距離の変化量ΔLmに基づき、駆動信号の電圧以外の調整を行うこと等も考えられる。より具体的に、上記においても説明をしたように、いずれかのノズルに対応する飛翔距離の変化量ΔLmと、ターゲット距離ΔLとが相違している場合、そのノズルから吐出されるインクの容量について、適正なインクの量になっていないと考えることができる。そして、この場合、例えば、印刷すべき画像として印刷装置12へ供給される印刷画像(印刷データ)を生成する処理において、飛翔距離の変化量ΔLmと、ターゲット距離ΔLとの差を考慮して、画像処理を行うことが考えられる。また、この場合、例えば、印刷画像の生成時に実行するRIP処理又はその前処理等において、飛翔距離の変化量ΔLmと、ターゲット距離ΔLとの差に基づく補正を行うことが考えられる。また、より具体的に、例えば、いずれかのノズルに対応する飛翔距離の変化量ΔLmと、ターゲット距離ΔLとが相違している場合、媒体上に形成されるインクのドットの位置やサイズにズレが生じることで、印刷される画像の画質に変化(例えば、画像の一部における色調の変化等)が生じることが考えられる。そして、この場合、例えば、飛翔距離の変化量ΔLmと、ターゲット距離ΔLとの差に応じて生じると予測される画質の変化を軽減するように、印刷画像を生成する処理に対してこの差をフィードバックすることが考えられる。このように構成すれば、例えば、画像の各位置に吐出されるインクの量を制御して、色の補正を行うができる。このように構成した場合も、例えば、印刷装置12に対する調整を適切に行うことができる。
【0088】
また、上記においても説明をしたように、インクジェットヘッド202と媒体との間でのインクの飛翔距離については、例えば、ヘッドギャップに応じて変化すると考えることができる。そして、例えばインクジェットヘッド202の高さが同じである場合、ヘッドギャップについては、媒体の厚さに応じて変化すると考えることができる。また、その結果、飛翔距離の変化量ΔLm等として測定される主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量についても、媒体の厚さに応じて変化すると考えることができる。そして、この場合、例えば、主走査方向におけるインクの着弾位置の変化量に基づき、媒体の厚さを検知すること等も考えられる。より具体的に、この場合、例えば、インクの容量が適正な場合について、飛翔距離の変化量ΔLmとヘッドギャップとの関係を示すデータを予め準備しておくことが考えられる。また、この場合、例えば、インクジェットヘッド202の高さを所定の既知の高さに設定し、インクの容量が適正になっているノズルを用いて、飛翔距離の変化量ΔLmを測定する。そして、例えば、上記のデータに基づき、測定される飛翔距離の変化量ΔLmに対応するヘッドギャップを求める。また、求めたヘッドギャップと、インクジェットヘッド202との高さに基づき、媒体の厚さを算出する。このように構成すれば、例えば、媒体の厚みが不明な場合等に、媒体の厚みを適切に検知することができる。また、この場合、検知した媒体の厚みに基づき、印刷装置12に対する調整を行うこともできる。より具体的に、この場合、媒体の厚さに基づく調整として、例えば、インクジェットヘッド202の高さの調整等を行うことが考えられる。
【0089】
また、第1パターン412及び第2パターン414を含むギャップ変更パターン410を用いる場合、例えば、飛翔距離の変化量Δ以外の事項を検知することもできる。より具体的に、ギャップ変更パターン410を用いる場合、例えば、飛翔距離の変化量Δ以外にも、ヘッドギャップの変化に応じて生じるインクの着弾の仕方の変化を検知することができる。より具体的に、この場合、ギャップ変更パターン410に基づいて行う解析として、例えば、ギャップ変更パターン410における第1パターン412及び第2パターン414に基づき、インクジェットヘッド202が吐出するインクのミスト化、及び、インクの飛行曲がりの少なくともいずれかを更に検知すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、一つのテストパターンに基づき、より多様な情報を適切に得ることができる。
【0090】
また、印刷システム10及び印刷装置12等においては、その他の点においても、様々に変更を行うことができる。例えば、上記においては、主に、印刷装置12で媒体に印刷した調整パターンの読み取りについて、スキャナ14を用いる構成及び動作について、説明をした。この場合、上記においても説明をしたように、例えば、画像を読み取るための特別な構成等を印刷装置12に持たせることなく、容易かつ適切に調整パターンの読み取りを行うことができる。また、例えば、市販の安価なPC用スキャナ等を用いること等も可能になる。しかし、印刷システム10の変形例においては、例えば、スキャナ14以外の画像読み取り装置を用いて、調整パターンの読み取りを行うこと等も考えられる。例えば、画像を読み取るための構成を備えている印刷装置12を用いる場合等には、この構成で調整パターンの読み取りを行うこと等も考えられる。また、調整に求められる精度等によっては、調整パターンの読み取りについて、デジタルカメラやスマートフォンのカメラ機能を用いて行うこと等も考えられる。
【0091】
また、上記のように、本例において、印刷装置12は、インクジェットプリンタである。この場合、印刷装置12について、例えば、媒体に対してインクを吐出することで2次元(2D)の画像を描く構成等と考えることができる。印刷装置12の変形例においては、印刷装置12として、例えば、立体的な造形物を造形する3Dプリンタ(3D印刷装置)等を用いることも考えられる。この場合、印刷装置12に対する調整を行う場合にのみ印刷対象の媒体を用いて、媒体上に2次元の画像を描く動作を印刷装置12に行わせることが考えられる。このように構成した場合も、印刷装置12の調整を適切に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、例えばインクジェットプリンタの調整方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0093】
10・・・印刷システム、102・・・ヘッド部、104・・・台部、106・・・Yバー部、112・・・主走査駆動部、114・・・副走査駆動部、116・・・駆動信号出力部、118・・・ヘッド位置調整部、12・・・印刷装置、120・・・制御部、14・・・スキャナ、16・・・画像解析装置、18・・・MPC、20・・・データベース、200・・・キャリッジ、202・・・インクジェットヘッド、212・・・ノズル列、302・・・解析ツール本体、304・・・パターン解析ライブラリ、306・・・調整項目ライブラリ、308・・・レポート作成ライブラリ、402・・・ドット、410・・・ギャップ変更パターン、412・・・第1パターン、414・・・第2パターン、50・・・媒体
図1
図2
図3
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図5
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図7