(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163577
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】災害評価装置、災害評価方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20241115BHJP
【FI】
G06Q50/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079320
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(71)【出願人】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鍬守 直樹
(72)【発明者】
【氏名】撫佐 昭裕
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤子
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 陽平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】越村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】マス サマネス エリック アルトゥロ
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC35
5L050CC35
(57)【要約】
【課題】災害の発生による被害状態や復旧状態を総合的に評価することができる災害評価装置等を提供する。
【解決手段】災害評価装置100は、災害の発生に応じて、災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う複数のシミュレーション部140~14Nと、複数のシミュレーション部140~14Nの各々のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するデータ換算部150と、データ換算部150により換算された複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価する社会価値評価部160とを備えている。また、災害評価装置100は、災害が発生した後、災害の規模及び発生場所を示す災害発生情報と、災害により発生し、実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示す被害実態データを受信する送受信部120を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う複数のシミュレーション部と、
前記複数のシミュレーション部の各々のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するデータ換算部と、
前記データ換算部により換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価する社会価値評価部と、
を備える、災害評価装置。
【請求項2】
前記複数のシミュレーション部の複数のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータには、損害額として換算可能なデータと、基準状態に対する前記災害発生による被害状態を相対評価として示すデータと、複数の評価値に重み付けをして加算して得られるデータと、順位付けに基づくデータと、同程度の評価値の数に基づくデータとが含まれており、
前記データ換算部は、評価方法の異なる複数の前記データを前記共通の社会価値を示す複数のデータに換算する、
請求項1に記載の災害評価装置。
【請求項3】
前記複数のシミュレーション部の各々は、前記災害の発生時からの時系列に応じた前記事象に対する被害状態のシミュレーションを行うものであり、
前記複数のシミュレーション部の各々には、入力値として、対象となる前記事象の前記時系列として前記事象以前に発生した1又は複数の事象に対する前記被害状態のシミュレーションを行った他の前記シミュレーション部の前記シミュレーション結果としての被害状態を示すデータが入力される、
請求項1に記載の災害評価装置。
【請求項4】
前記災害により発生し、実際の状況が明らかになった前記被害状態の実態値を示す被害実態データを受信する送受信部をさらに備え、
前記複数のシミュレーション部の各々には、前記他のシミュレーション部のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータの代わりに、前記送受信部により受信した前記被害実態データが入力される、
請求項3に記載の災害評価装置。
【請求項5】
前記データ換算部は、前記被害実態データを共通の社会価値を示すデータに換算するとともに、前記被害実態データが入力された前記シミュレーション部及び前記シミュレーション部に関連する他の前記シミュレーション部の新たなシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを前記共通の社会価値を示すデータに再度換算し、
前記社会価値評価部は、前記送受信部により受信した前記被害実態データの換算値と、前記データ換算部により再度換算した前記共通の社会価値を示すデータとに基づいて、前記災害による社会価値の変化を再度評価する、
請求項4に記載の災害評価装置。
【請求項6】
前記送受信部は、前記災害が発生した後、前記災害の規模及び発生場所を示す災害発生情報を受信し、
前記複数のシミュレーション部は、前記送受信部により受信した前記災害発生情報に基づいて、前記複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う、
請求項4又は請求項5に記載の災害評価装置。
【請求項7】
前記災害が地震とその後の津波による災害である場合には、前記災害による被害には、浸水地域建物設備被害、歴史・社会資産被害、物流・経済活動被害、及び人的被害が含まれる、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の災害評価装置。
【請求項8】
特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャのデータを記憶する記憶部をさらに備え、
前記複数のシミュレーション部には、少なくとも、道路及び建物の被害状態のシミュレーションを行う道路建物被害シミュレーション部と、社会インフラストラクチャ被害状態のシミュレーションを行うインフラストラクチャ被害シミュレーション部とが含まれ、
前記道路建物被害シミュレーション部及び前記インフラストラクチャ被害シミュレーション部は、前記記憶部に記憶される前記特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャに対して、前記特定の付加価値を考慮した前記被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う、
請求項7に記載の災害評価装置。
【請求項9】
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行い、
複数のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算し、
前記換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価する、
災害評価方法。
【請求項10】
コンピュータに、
災害の発生に応じて、複数種類の事象に対する前記災害による被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う処理と、
複数のシミュレーション結果としての前記復旧状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータにそれぞれ換算する処理と、
前記複数のシミュレーション結果の前記被害状態の換算値に基づいて、前記災害による社会価値の変化を評価する処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、災害の発生による被害状態を総合的に評価する災害評価装置、災害評価方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
災害の発生による損害額を適切に評価するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の損害評価システムは、地震によって発生すると予想される損害を効果的に評価するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、評価対象の災害の種類として地震のみが例示されており、また、想定した地震に基づいて被害率を算定し、この被害率に基づいて損害を評価するものである。そして、地震や地震火災、地盤の液状化現象等による被害率を求める対象がメッシュ状に区分けされた各地区内に存在する建物についてのみであり、災害による文化的な被害を全く考慮していない。
【0005】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、災害の発生による被害状態を総合的に評価することができる災害評価装置、災害評価方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の災害評価装置は、
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う複数のシミュレーション部と、
前記複数のシミュレーション部の各々のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するデータ換算部と、
前記データ換算部により換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価する社会価値評価部と、
を備えるものである。
【0007】
本開示の災害評価方法は、
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行い、
複数のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算し、
前記換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価するものである。
【0008】
本開示のプログラムは、
コンピュータに、
災害の発生に応じて、複数種類の事象に対する前記災害による被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う処理と、
複数のシミュレーション結果としての前記復旧状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータにそれぞれ換算する処理と、
前記複数のシミュレーション結果の前記被害状態の換算値に基づいて、前記災害による社会価値の変化を評価する処理と、
を実行させるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、災害の発生による被害状態を総合的に評価することができる災害評価装置、災害評価方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】災害の発生からその災害による被害状態を評価するまでの流れを示す概略図である。
【
図2】実施の形態にかかる災害評価装置を含む全体構成を示す概念図である。
【
図3】
図2に示す災害評価装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態にかかる災害被害評価処理の概略を示すフローチャートである。
【
図5】各シミュレーション部の入力を示す概念図である。
【
図6】地震発生時に実行される複数種類の事象に対する各種シミュレーション部の関係性の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、本実施の形態で説明する構成のすべてが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
<災害評価における課題>
まず、本開示における災害被害や災害復旧を評価する際の課題について説明する。上記背景技術で説明したように、災害発生時の被害のシミュレーションは、個々の事象(例えば、地震後の津波による災害や浸水による災害、大雨や台風通過後の土砂崩れによる災害、山林火事による火災等)に対する金銭的な損害の内容、すなわち損害額を推定するために用いられることが多かった。そのため、このような被害のシミュレーションでは、災害被害の総合的な推定をすることはできなかった。以下、これらを踏まえて、本開示における災害評価の課題を説明する。
【0013】
まず第1に、災害に対する統一的評価手法がないという課題がある。すなわち、災害による被害には、金額に換算することができる経済的被害(例えば、建物倒壊による損害額等)の他、人的被害(例えば、その災害により何人死亡し、何人負傷したか)、文化的被害(例えば、文化財の消失等)等がある。これらの同一指標(例えば、金額等)により換算することができない被害についての統合的価値の換算方法が切望されている。
【0014】
また、第2に、災害により発生する複数種類の事象(例えば、津波や浸水)に対する被害状態をシミュレーションする場合には、各事象のシミュレーションのために入力する初期値が必要となる。このような1つあるいは複数の事象に対する被害状態のシミュレーションのために、どのような初期値を準備すべきかが問題となる。また、国や自治体にとっては、復旧・復興の対応策を早期に提示するために、各シミュレーションの結果を早期に得たいという要望もある。例えば、専門家が現地調査を行い、災害の被害を検証したり、調査したりして、発生した災害を評価するのであれば、それなりの時間をかけてじっくりと評価しても問題ではない。しかしながら、早期に対応案を立案するために、近年では、デジタルツイン(災害デジタルツイン)を利用しているが、このデジタルツインでは、災害対策の立案時には、予測結果に対するリアルタイム要求に応える手法が必要となってくる。
【0015】
<本開示の災害評価装置の概要>
本開示の災害評価装置は、上記のような課題を解決するためになされたものである。以下、災害の発生からその被害シミュレーションにおける本実施の形態にかかる災害評価装置の概要を説明する。なお、本開示の災害評価装置、災害評価方法、及びプログラムの評価の対象は、原則として、災害が発生したときに起こるすべての現象である。そして、本開示は、災害レジリエンス(災害からの復元力・復旧力)の思想そのものを対象としている。
【0016】
まず、本開示の災害評価装置による災害の発生時における被害状態の評価について説明する。ここでは、災害として地震が発生した場合を例示する。
図1は、災害の発生からその災害による被害状態を評価するまでの流れを示す概略図である。
図1に示すように、まず、災害(災害現象)が発生すると、災害評価装置は、例えば、国(政府)や対応機関(気象庁)等から災害発生情報として、災害の規模や発生場所(震源地や震源の深さ)を示す情報を受信する。災害デジタルツインの仮想世界において、災害評価装置は、被害状態に対する各種シミュレーションを行い、浸水地域建物設備被害、歴史・社会資産被害、物流・経済活動被害、人的被害等の各種被害の状態(被害状態)を推定する。
【0017】
一方、災害デジタルツインの物理世界では、災害評価装置は、人や物の動き等をセンシングしたり、国や自治体等から情報を収集したりすることにより、今回の災害における実際の被害状態の情報を得る。
【0018】
次いで、災害デジタルツインの仮想世界において、災害評価装置は、推定された各種の被害状態の情報に基づいて、今回の災害による被害を総合的に評価し、この災害による社会価値の変化を評価する。すなわち、災害評価装置は、各種シミュレーションのシミュレーション結果を総合的に判断し、災害により社会価値がどの程度下がってしまったかを評価・判定する。
【0019】
次いで、災害デジタルツインの仮想世界において、災害評価装置は、災害による被害状態の推定結果から、社会価値の低下に対するレジリエンス(耐久力や復元力)を数値化し、このレジリエンスを上げるための対応策(対策案)を策定して、被害状態のシミュレーションを再度行ってもよい。このように、対応策を作成してシミュレーションをループさせることにより、また、物理世界の被害状態の情報をフィードバックすることにより、災害評価装置は、社会価値の低下をできるだけ食い止めるように対応策を提案してもよい。すなわち、本開示の災害デジタルツインは、災害の発生によって生じる災害現象に対する結果(被害状態)を評価するためのシミュレーションを行うことにより、複数種類の事象に対する被害状態を推測し、これら複数の被害状態を総合的に評価することにより、災害被害を評価するものである。
【0020】
<災害評価装置の構成>
次に、本実施の形態にかかる災害評価装置の構成を説明する。本実施の形態では、災害評価装置について、災害の具体例として地震とその後に発生する津波を例に説明するが、災害の種類はこれに限らない。想定される災害としては、地震や津波以外にも、例えば、台風と台風通過後の土砂崩れによる災害、山林火事による火災、大雨による災害等がある。まず、災害評価装置を含む全体構成を説明する。
図2は、本実施の形態にかかる災害評価装置を含む全体構成を示す概念図である。
【0021】
図2に示すように、災害評価装置100は、インターネット等のネットワーク300を介して、国の政府機関サーバ210と、国の各省庁サーバ220~22Nと、人流サーバ230と、交通関連サーバ240とに接続される。ここで、人流サーバ230は、所定地域内の人流情報を提供するサーバであり、例えば、携帯端末の通信会社(キャリア)が所有するサーバ等であればよい。また、交通関連サーバ240は、各種交通機関のサーバであればよく、例えば、各鉄道会社のサーバ、各バス会社のサーバ、各航空会社のサーバ、各船舶会社のサーバ等を含む。
【0022】
災害の発生時には、災害評価装置100は、後述するように、政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nから災害発生情報を取得する。災害発生情報は、例えば、災害が地震であれば、地震の規模や震源地の位置や震源の深さ等を含む。
【0023】
地震発生の情報を取得すると、災害評価装置100は、物理世界のセンシングのために、各省庁サーバ220~22N内の気象庁サーバから当該地震の影響があった各地域の震度情報を受信するとともに、人流サーバ230から該当地域の人流情報を取得するように構成される。また、災害評価装置100は、交通関連サーバ240から該当地域に関連する交通網の情報(交通関連情報)、特に、鉄道の損壊情報や遅延情報、旅客機の離発着情報、船舶の運航情報等を取得するように構成される。なお、災害評価装置100は、人流情報や交通関連情報を常時取得するように構成されてもよい。
【0024】
その後、災害評価装置100は、後述のように、この地震による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションを行い、各シミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するように構成される。そして、災害評価装置100は、これら複数の換算データに基づいて、地震による社会価値の変化を評価するように構成される。災害評価装置100の具体的な動作については、
図3のブロック図と
図4のフローチャートを参照して、詳細に後述する。
【0025】
通常、地震が発生した場合には、社会価値は低下する。災害評価装置100は、評価した地震による社会価値低下度合に基づいて、複数種類の事象に対する複数の対応策をリコメンドするように構成してもよい。また、災害評価装置100は、これらのリコメンド情報を政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nに送信するように構成してもよい。国(政府)は、必要に応じて、これらリコメンドされた対応策に基づいて、災害対策本部を設置するか否かを決定すればよい。また、国(政府)や被災地の自治体等は、必要に応じて、これらのリコメンド情報を利用し、地震災害により被災した地域の住民(被災者)に対して行うべき災害救助活動を決定すればよい。
【0026】
次に、本実施の形態の災害評価装置100の構成を説明する。
図3は、
図2に示す災害評価装置100の構成を示すブロック図である。
図2及び
図3を参照しながら、本実施の形態にかかる災害評価装置100の構成を説明する。
【0027】
図3に示すように、災害評価装置100は、制御部110と、送受信部120と、記憶部130と、複数のシミュレーション部140~14Nと、データ換算部150と、社会価値評価部160とを備える。制御部110は、災害評価装置100内の各部を制御するように構成される。
【0028】
送受信部120は、ネットワーク300を介して、政府機関サーバ210と、各省庁サーバ220~22Nと、人流サーバ230と、交通関連サーバ240との間でデータの送受信を行うように構成される。具体的には、上述のように、送受信部120は、政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nから、災害、ここでは、地震が発生した後、地震の規模と、発生場所である震源地の位置及び震源の深さとを示す災害発生情報を受信するように構成される。送受信部120は、被害状態のシミュレーションのために、受信した災害発生情報をシミュレーション部140~14Nに出力する。
【0029】
また、送受信部120は、政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nから、地震により発生し、実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示す被害実態データを受信するように構成される。送受信部120は、被害状態の再シミュレーションのために、受信した被害実態データをシミュレーション部140~14Nに出力する。
【0030】
なお、送受信部120は、地震の発生に伴って社会価値評価部160により評価された社会価値の変化を示すデータを政府機関サーバ210等に送信してもよい。
【0031】
記憶部130は、必要に応じて、複数のシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを一時的に記憶するように構成される。また、記憶部130は、データ換算部150により換算された各種データを一時的に記憶するように構成される。
【0032】
さらに、記憶部130は、送受信部120により受信した災害発生情報や被害実態データと、社会価値評価部160により評価された社会価値の変化に関するデータとを一時的に記憶するように構成される。
【0033】
記憶部130は、特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャのデータを記憶するように構成されてもよい。また、記憶部130は、特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャのデータを記憶する図示しないデータベースを含むように構成されてもよい。特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャには、例えば、神社や仏閣等の歴史的な建造物、東京タワーやスカイツリー等の観光スポット、有名な建築家が設計した建築物、レインボーブリッジや瀬戸大橋等の吊り橋等が含まれる。このような特定の付加価値を有する建造物等の各々には、特定の付加価値に応じた損害額の係数や国等に認められた価値が設定されており、
図1に示す歴史・社会資産被害として損壊した場合には、通常の建造物よりも高い損害額が算定される。なお、送受信部120は、このようなデータを例えば各省庁サーバ220~22Nから受信するように構成されてもよい。
【0034】
複数のシミュレーション部140~14Nは、災害の発生に応じて、該災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行うように構成される。具体的には、複数のシミュレーション部140~14Nは、送受信部120により受信した災害発生情報に基づいて、複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行うように構成される。各シミュレーション部140~14Nは、対応するシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを自身に関連する他のシミュレーション部140~14Nに出力するように構成される。このように、本実施の形態による災害評価装置100では、複数のシミュレーション部140~14Nを連携させることにより、後段の社会価値評価部160による社会価値の評価を推定するものである。
【0035】
災害による複数種類の事象には、例えば、地震と津波に対して
図6に例示するように、道路建物被害、建物構造物被害、人的被害、インフラ被害、救助活動・避難所、経済被害、基本行政サービス、医療物資輸送、支援物資輸送等が含まれる。
図6は、地震発生時に実行される複数種類の事象に対する各種シミュレーション部の関係性の一例を示す概念図である。
【0036】
本実施の形態では、複数のシミュレーション部140~14Nの各々は、災害発生時には、これらの事象に対して該当のシミュレーションを行うものである。ここで、複数のシミュレーション部140~14Nには、
図6に示すように、互いに関連し連携し合うシミュレーション部が含まれ、そのような関係のシミュレーション部では、時系列として前のシミュレーション部のシミュレーション結果を時系列として後のシミュレーション部の入力として利用することとなる。
【0037】
例えば、道路建物被害シミュレーション部のシミュレーション結果は、インフラ被害シミュレーション部、人的被害シミュレーション部、救助活動・避難所シミュレーション部、医療物資輸送シミュレーション部、及び支援物資輸送シミュレーション部の入力として利用される。
【0038】
図6に例示した各種シミュレーション部にかかわらず、具体例としては、災害として地震が発生した場合には、まず、地震計等により地震のマグニチュードで示す規模、地震の震源地、震源の深さ等が求められる。しかしながら、該地震の断層面が分からないため、これらの情報や各地の震度等に基づいて、断層面を計算するシミュレーションを実行する。そして、このシミュレーションで断層面が分かると、その場所においてどれだけ海面が上昇したかを計算するシミュレーションを実行する。このシミュレーションにより海面上昇が分かると、上昇した海面がどのように伝播していくかを計算するシミュレーションを実行する。波(津波)の伝播が分かると、いつ沿岸部に到達して、地上部分がどれだけ浸水していくかを計算するシミュレーションを実行する。浸水地域が分かると、道路や建築物、インフラがどの程度被害を受けるかを計算するシミュレーションを実行する。
【0039】
ここで、複数のシミュレーション部140~14Nの各々には、
図5に示すように、入力値として、災害の内容により変動する災害変動値と、災害の内容に関係なく該災害の発生からの時間の経過に応じて変動する災害外変動値と、災害の内容によりほとんど変動しない固定値とが入力される。
図5は、各シミュレーション部140~14Nの入力を示す概念図である。
【0040】
災害変動値とは、本来調査により明らかになる値(例えば、地震の規模や発生場所、そのメカニズム等)であり、ネットワーク300及び送受信部120を介して、各種サーバ210、220~22N等から取得されるものである。災害外変動値とは、災害とは関係なく、常時収集され、センシング可能な値(例えば、気温や湿度、ある時間帯にある場所にいる人の数、病床使用率等)であり、ネットワーク300及び送受信部120を介して、各種サーバ220~22N、230、240等から取得されるものである。固定値は、比較的変動頻度の少ない値(例えば、地形、施設建物、物理係数等)であり、例えば、記憶部130に予め記憶されている。また、固定値は、各医療施設の最大受入患者数、各設備の位置、各インフラ敷設の位置等を含んでもよい。
【0041】
また、複数のシミュレーション部140~14Nの複数のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータには、損害額として換算可能なデータと、基準状態に対する災害発生による被害状態を相対評価として示すデータと、複数の評価値に重み付けをして加算して得られるデータと、順位付けに基づくデータと、同程度の評価値の数に基づくデータとが含まれる。
【0042】
損害額として換算可能なデータとは、同基準換算データを意味し、得られた数値を共通の価値(ここでは、損害額等の金額)に換算すればよい。基準状態に対する災害発生による被害状態を相対評価として示すデータとは、基準状態相対換算データを意味し、具体的には、基準状態を設定し、それぞれの観点による価値状態を基準状態に対して相対的に評価し、基準状態比率価値を求めればよい。例えば、基準状態に対して良くなった場合には正の値とし、逆に悪くなった場合には負の値とする。そして、このデータは、これら正負の度合いを計算することにより、基準状態に対して、正の価値であるか、負の価値であるかを比率で示すものである。
【0043】
複数の評価値に重み付けをして加算して得られるデータとは、重み付け換算データを意味し、具体的には、異なる評価値に重み付け計数を乗算し、それらを加算して求めればよい。例えば、後述するアンケートの満足度等が含まれる。順位付けに基づくデータとは、順位換算データを意味し、絶対評価、比率評価あるいは相対評価が困難なデータに対して、同構造を有する複数の対象物に対して順位付けをして求めればよい。このデータは、例えば、同様の種類であるが別の現象が発生したときの差や順位により求める。具体的には、地域内の人口差、人口当たりの数、地域内の行政設備の数(保育園や学校の設置数、児童公園の数等)により求める場合が該当する。同程度の評価値の数に基づくデータとは、いわゆる〇×数換算データを意味し、同程度の価値のある対象物の数を数えることにより求めればよい。
【0044】
なお、複数のシミュレーション部140~14Nの各々は、災害の発生時からの時系列に応じた対象となる事象に対する被害状態のシミュレーションを行うものであればよい。そして、複数のシミュレーション部140~14Nの各々には、入力値として、対象となる事象の時系列として該事象以前に発生した1又は複数の事象に対する被害状態のシミュレーションを行った他のシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果としての被害状態を示すデータが入力されればよい。
【0045】
また、送受信部120が、災害により発生し、実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示す被害実態データを受信した場合には、該当のシミュレーション部140~14Nよりも時系列で後段の他のシミュレーション部140~14Nの各々には、該当のシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果としての被害状態を示すデータの代わりに、送受信部120により受信した被害実態データが入力されればよい。
【0046】
なお、記憶部130が特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャのデータを記憶する場合には、複数のシミュレーション部140~14Nには、少なくとも、道路及び建物の被害状態のシミュレーションを行う道路建物被害シミュレーション部と、社会インフラストラクチャ被害状態のシミュレーションを行うインフラストラクチャ被害シミュレーション部とが含まれる。そして、道路建物被害シミュレーション部及びインフラストラクチャ被害シミュレーション部は、記憶部130に記憶される特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャに対して、該特定の付加価値を考慮した被害状態のシミュレーションをそれぞれ行えばよい。
【0047】
データ換算部150は、複数のシミュレーション部140~14Nの各々のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するように構成される。データ換算部150により換算された複数のデータは、社会価値評価部160に出力される。
【0048】
また、データ換算部150は、上述のように、被害状態を示すデータが複数の異なる評価方法(損害額換算、基準状態相対換算等)で評価されている場合には、評価方法の異なる複数のデータを共通の社会価値を示す複数のデータに換算するように構成される。
【0049】
さらに、送受信部120により実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示す被害実態データを受信した場合には、データ換算部150は、被害実態データを共通の社会価値を示すデータに換算するとともに、該被害実態データが入力されたシミュレーション部140~14N及び該シミュレーション部140~14Nに関連する他のシミュレーション部140~14Nの新たなシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに再度換算すればよい。これにより、時間を追うごとに被害状態が明らかになるので、シミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果がより正確になっていく。
【0050】
社会価値評価部160は、データ換算部150により換算された複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価するように構成される。送受信部120は、社会価値評価部160により評価された社会価値の変化(災害時には負の値の変化)を政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nに送信してもよい。
【0051】
送受信部120により実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示す被害実態データを受信し、シミュレーション部140~14Nが新たなシミュレーション結果を出力し、データ換算部150が再度の換算を実行した場合には、社会価値評価部160は、送受信部120により受信した被害実態データの換算値と、データ換算部150により再度換算した共通の社会価値を示すデータとに基づいて、災害による社会価値の変化を再度評価すればよい。社会価値評価部160により被害実態データに基づく換算値による社会価値変化の再評価により、実際の被害状況に応じて、社会価値を再評価することができるとともに、必要な場合には、災害の実態に合った対応策を再度リコメンドすることができる。
【0052】
ここで、災害評価装置100の一連の動作の概略を説明する。災害発生後の災害状態に応じて、複数のシミュレーション部140~14Nは、各種シミュレーションを行い、シミュレーション結果としての被害状態や復旧状態を示すデータを出力する。
【0053】
データ換算部150は、各データを共通の社会価値を示すデータに換算し、社会価値評価部160は、換算された複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価する。ここで、制御部110は、社会価値評価部160の評価結果ができるだけ高くなるように、複数のシミュレーション部140~14Nに誤差計算最適化処理を行わせてもよい。
【0054】
誤差計算最適化処理は、複数のシミュレーション部140~14Nの各々に入力するデータを少しずつずらしてその都度社会価値評価部160の評価結果を得る処理である。評価結果を最適化することにより、被害状態においては社会価値の低下を抑制することができる。このようなシミュレーション結果を得ることは、社会価値評価部160により総合的な評価を行うことにより、初めて可能となる。
【0055】
具体的には、この誤差計算最適化処理では、制御部110は、複数のシミュレーション部140~14Nにおける救助・救援・復旧の内容を変更させつつ、社会価値評価部160が社会価値の変化を評価して、得られた社会価値の差を求める。そして、制御部110は、災害発生時において期待される社会価値との相対差を計算し、この社会価値が最適化されるように計数補正を行いながら最適解を探索するものである。最適解の探索手法としては、誤差乱数最適化法や網羅計算法等の従来手法を採用すればよい。
【0056】
そして、災害評価装置100は、制御部110による誤差計算最適化処理により決定された最適解となる救助・救援・復旧の内容に基づいて、国や各自治体による施策の修正や対応策をリコメンドしてもよい。
【0057】
社会価値評価部160を上記のように構成することにより、比較的統合的な判断結果(評価結果)を早期に得ることができ、評価された社会価値の変化に基づいて、複数の対応策に優先順位を付けて提案することが可能となる。したがって、災害評価装置100によれば、国や被災地の各自治体の首長である総合判断者の政治的な判断をサポートすることができる。
【0058】
今まで利用されていた災害にも用いられるデジタルツインでは、災害による被害状態のシミュレーションを行い、そのシミュレーション結果として災害による被害がどのような状態・状況となっているかを評価することまでしか利用されていなかった。本実施の形態の災害評価装置100によれば、上述のように、災害による被害状態を総合的に評価することができる。そして、この被害に対する社会全体のレジリエンスを評価するために、複数種類の事象に対するシミュレーションから得られたシミュレーション結果としての数値等を効率的に融合して、社会価値を総合的に評価することができる。
【0059】
また、本実施の形態の災害評価装置100によれば、時系列に応じた複数のシミュレーションの実行を考慮して、実際の状況が明らかになった被害状態の実態値を示すデータをフィードバックしている。そして、該当するシミュレーション部140~14N以降の関連するシミュレーション部140~14Nにより再度シミュレーションを行うことにより、複数のシミュレーション部140~14Nによるシミュレーション結果の誤差を修正することができ、これにより、社会価値評価部160の評価が過大評価になることを効果的に防止することができる。
【0060】
なお、複数のシミュレーション部140~14Nの各々による初期のシミュレーション結果と、実際の状況が明らかになった被害状態や復旧状態の実態値とが許容範囲を超えてずれている場合には、制御部110は、該当するシミュレーション部140~14Nにおけるシミュレーションの係数等を見直すように構成してもよい。これにより、初期段階における災害による社会価値の変化をより正確に評価することができる。
【0061】
<災害評価装置の動作>
次に、
図4を参照して、本実施の形態の災害評価装置100の動作を説明する。
まず、災害発生時の被害状態の評価について説明する。
図4は、本実施の形態にかかる災害被害評価処理の概略を示すフローチャートである。この災害被害評価処理は、例えば、災害が発生し、政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nから災害発生情報を提供されたときに開始される。ここでは、上記と同様に、災害として地震が発生した場合における災害評価装置100の動作について説明する。
【0062】
災害発生情報の提供を受け付けると、災害評価装置100は、送受信部120を介して、災害に関する情報を送信するように政府機関サーバ210や各省庁サーバ220~22Nに依頼する。そして、送受信部120は、地震の規模や震源地の情報(災害発生情報)を受信し(ステップS1)、受信した情報を複数のシミュレーション部140~14Nに出力する。複数のシミュレーション部140~14Nの各々は、地震の規模及び震源地等の情報に基づいて、時系列に従って、対応する事象に対する被害状態のシミュレーションを実行する(ステップS2)。各シミュレーション部140~14Nは、シミュレーション結果としての被害状態を示すデータをそのまま後段の他のシミュレーション部140~14Nに出力するとともに、必要に応じて、同データをデータ換算部150に出力する。シミュレーション部140~14Nから被害状態を示すデータを受け付けると、データ換算部150は、対応するシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果としての被害状況を示す複数のデータを共通の社会価値を示すデータにそれぞれ換算する(ステップS3)。
【0063】
データ換算部150は、必要に応じて、換算した社会価値を示すデータ(換算値)を後段の他のシミュレーション部140~14Nに出力するとともに、社会価値評価部160にも同様に出力する。すべてのシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果に対するデータ換算部150により換算した社会価値を示すデータを受け付けると、社会価値評価部160は、これら複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価する(ステップS4)。
【0064】
なお、
図4のフローチャートでは省略しているが、災害による社会価値の変化が評価された段階において、災害評価装置100は、送受信部120及びネットワーク300を介して、政府機関サーバ210等に評価結果を送信してもよい。
【0065】
次いで、制御部110は、送受信部120により、複数のシミュレーション部140~14Nの複数のシミュレーション結果のいずれかに対応する被害状態の実態値を示す被害実態データを該当する各省庁サーバ220~22N等から受信したか否かを判定する(ステップS5)。災害評価装置100は、送受信部120によりこのような被害実態データを受信するまで、このステップS5で待機する。
【0066】
送受信部120によりいずれかの被害実態データを受信したと制御部110が判定した場合には、送受信部120は、受信した被害実態データを対応するシミュレーション部140~14Nに関連する時系列で後段のシミュレーション部140~14Nに出力する。そして、被害実態データを受け付けたシミュレーション部140~14Nは、自身のシミュレーションを再度実行し、新たなシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを後段の関連する他のシミュレーション部140~14Nに出力する。後段の関連する他のシミュレーション部140~14Nは、同様に自身のシミュレーションを再度実行し、これにより、該当するシミュレーション部140~14Nのシミュレーションがそれぞれ実行されることとなる(ステップS6)。
【0067】
次いで、ステップS3の処理と同様に、データ換算部150は、シミュレーションを再度実行したシミュレーション部140~14Nのシミュレーション結果としての被害状況を示すデータを共通の社会価値を示すデータに再度換算する(ステップS7)。そして、社会価値評価部160は、再度換算したデータ(換算値)を含む複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を再度評価する(ステップS8)。
【0068】
そして、制御部110は、この災害被害評価処理を終了する。なお、
図4のフローチャートでは省略しているが、災害による社会価値の変化が再評価されるたびに、災害評価装置100は、送受信部120及びネットワーク300を介して、政府機関サーバ210等に再評価結果を送信してもよい。
【0069】
なお、シミュレーションの対象となる災害の種類に応じて得られる被害実態データの種類は異なるが、災害被害評価処理を開始した後は、送受信部120によりすべての被害実態データを受信するまで、災害評価装置100は、この災害被害評価処理のステップS5~S8の処理を繰り返せばよい。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態による災害評価装置100は、災害の発生に応じて、災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う複数のシミュレーション部140~14Nと、複数のシミュレーション部140~14Nの各々のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するデータ換算部150と、データ換算部150により換算された複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価する社会価値評価部160とを備えている。災害評価装置100をこのように構成することにより、複数のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算し、それに基づいて社会価値を評価しているので、災害の発生による被害状態を総合的に評価することができる。
【0071】
本実施の形態による災害評価方法は、災害の発生に応じて、災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行い、複数のシミュレーション結果としての被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算し、換算された複数のデータに基づいて、災害による社会価値の変化を評価するように構成される。これにより、災害評価装置100と同様の効果が得られる。
【0072】
上述した災害評価装置100における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給することができる。
【0073】
なお、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0074】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う複数のシミュレーション部と、
前記複数のシミュレーション部の各々のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算するデータ換算部と、
前記データ換算部により換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価する社会価値評価部と、
を備える、災害評価装置。
(付記2)
前記複数のシミュレーション部の複数のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータには、損害額として換算可能なデータと、基準状態に対する前記災害発生による被害状態を相対評価として示すデータと、複数の評価値に重み付けをして加算して得られるデータと、順位付けに基づくデータと、同程度の評価値の数に基づくデータとが含まれており、
前記データ換算部は、評価方法の異なる複数の前記データを前記共通の社会価値を示す複数のデータに換算する、
付記1に記載の災害評価装置。
(付記3)
前記複数のシミュレーション部の各々には、入力値として、前記災害の内容により変動する災害変動値と、前記災害の内容に関係なく前記災害の発生からの時間の経過に応じて変動する災害外変動値と、前記災害の内容により変動しない固定値とが入力される、
付記1に記載の災害評価装置。
(付記4)
前記複数のシミュレーション部の各々は、前記災害の発生時からの時系列に応じた前記事象に対する被害状態のシミュレーションを行うものであり、
前記複数のシミュレーション部の各々には、入力値として、対象となる前記事象の前記時系列として前記事象以前に発生した1又は複数の事象に対する前記被害状態のシミュレーションを行った他の前記シミュレーション部の前記シミュレーション結果としての被害状態を示すデータが入力される、
付記1に記載の災害評価装置。
(付記5)
前記災害により発生し、実際の状況が明らかになった前記被害状態の実態値を示す被害実態データを受信する送受信部をさらに備え、
前記複数のシミュレーション部の各々には、前記他のシミュレーション部のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータの代わりに、前記送受信部により受信した前記被害実態データが入力される、
付記4に記載の災害評価装置。
(付記6)
前記データ換算部は、前記被害実態データを共通の社会価値を示すデータに換算するとともに、前記被害実態データが入力された前記シミュレーション部及び前記シミュレーション部に関連する他の前記シミュレーション部の新たなシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを前記共通の社会価値を示すデータに再度換算し、
前記社会価値評価部は、前記送受信部により受信した前記被害実態データの換算値と、前記データ換算部により再度換算した前記共通の社会価値を示すデータとに基づいて、前記災害による社会価値の変化を再度評価する、
付記5に記載の災害評価装置。
(付記7)
前記送受信部は、前記災害が発生した後、前記災害の規模及び発生場所を示す災害発生情報を受信し、
前記複数のシミュレーション部は、前記送受信部により受信した前記災害発生情報に基づいて、前記複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う、
付記5に記載の災害評価装置。
(付記8)
前記災害が地震とその後の津波による災害である場合には、前記災害による被害には、浸水地域建物設備被害、歴史・社会資産被害、物流・経済活動被害、及び人的被害が含まれる、
付記1に記載の災害評価装置。
(付記9)
特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャのデータを記憶する記憶部をさらに備え、
前記複数のシミュレーション部には、少なくとも、道路及び建物の被害状態のシミュレーションを行う道路建物被害シミュレーション部と、社会インフラストラクチャ被害状態のシミュレーションを行うインフラストラクチャ被害シミュレーション部とが含まれ、
前記道路建物被害シミュレーション部及び前記インフラストラクチャ被害シミュレーション部は、前記記憶部に記憶される前記特定の付加価値を有する建造物及び社会インフラストラクチャに対して、前記特定の付加価値を考慮した前記被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う、
付記8に記載の災害評価装置。
(付記10)
災害の発生に応じて、前記災害による複数種類の事象に対する被害状態のシミュレーションをそれぞれ行い、
複数のシミュレーション結果としての前記被害状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータに換算し、
前記換算された複数のデータに基づいて、前記災害による前記社会価値の変化を評価する、
災害評価方法。
(付記11)
コンピュータに、
災害の発生に応じて、複数種類の事象に対する前記災害による被害状態のシミュレーションをそれぞれ行う処理と、
複数のシミュレーション結果としての前記復旧状態を示すデータを共通の社会価値を示すデータにそれぞれ換算する処理と、
前記複数のシミュレーション結果の前記被害状態の換算値に基づいて、前記災害による社会価値の変化を評価する処理と、
を実行させる、プログラム。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示による災害評価装置等は、災害の発生による被害状態を総合的に評価したり、災害からの復旧時における復旧状態を総合的に評価したり、災害からの復旧時において、災害の被災者の幸福度を予測したりする用途に適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
100 災害評価装置
110 制御部
120 送受信部
130 記憶部
140-14N シミュレーション部
150 データ換算部
160 社会価値評価部
210 政府機関サーバ
220-22N 各省庁サーバ
230 人流サーバ
240 交通関連サーバ
300 ネットワーク