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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163587
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20241115BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G03G15/08 390B
G03G15/08 310
G03G21/00 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079337
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】本山 清人
【テーマコード(参考)】
2H077
2H270
【Fターム(参考)】
2H077AB03
2H077AC03
2H077AC04
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD13
2H077CA02
2H077CA12
2H077CA13
2H077DB08
2H077EA01
2H270LA80
2H270MA13
2H270MA14
2H270MC29
2H270MC33
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】封止シートに堆積したトナーを、より効率的に回収する。
【解決手段】画像形成装置1は、像担持体としての感光体ドラム20と、静電潜像を形成する露光装置と、前記静電潜像をトナーで顕像化する現像装置30と、現像ローラ32に現像バイアスを印加する現像バイアス電源36と、現像ローラ32を駆動する駆動源と、感光体ドラム20の表面を清掃する清掃部材70と、非画像形成時に清掃用の静電潜像パターンを感光体ドラム20の表面に形成し、現像バイアスが印加された現像ローラ32で静電潜像パターンを現像後、現像後に形成されたトナー像を清掃部材70で除去して回収する清掃動作を実施可能な制御部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の回転方向に回転可能であって、表面が帯電される像担持体と、
前記像担持体の表面を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、
前記像担持体と対向する開口部を有し、内部にトナーを含む現像剤が収容される収容部と、前記開口部に回転可能に設けられ前記現像剤を担持する現像ローラと、前記開口部よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置から、前記像担持体に先端部が当接するように延伸されたシート状の封止シートと、を有する現像装置と、
前記現像ローラに所定の電圧である現像バイアスを印加する現像電源と、
前記像担持体と前記現像ローラとを回転させる駆動源と、
前記像担持体上に形成されたトナー像を用紙に転写する転写装置と、
前記像担持体の表面を清掃する清掃部材と、
非画像形成時に、前記像担持体の前記回転方向に露光部と非露光部とが繰り返される清掃用の静電潜像パターンを前記像担持体の表面に形成し、前記静電潜像パターンが前記封止シートを通過するように前記像担持体を回転させ、前記現像バイアスが印加された前記現像ローラで前記静電潜像パターンを現像後、現像されたトナーを前記清掃部材で回収する清掃動作を実施可能な制御部と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記清掃動作を実施する際、前記像担持体の帯電電位と前記現像バイアスとの電位差を画像形成時よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、前記清掃動作を実施する際、前記像担持体または前記現像ローラの少なくとも一方を画像形成時の回転速度より速い回転速度で回転させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置において、
清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記露光部の前記回転方向の長さは、前記像担持体の長手方向には一定であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像形成装置において、
清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向に所定の周期で変化することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像形成装置において、
清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部が前記像担持体の長手方向に交互に形成されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像形成装置において、
清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記非露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向には一定であるとともに前記像担持体の回転方向には変化することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像形成装置において、
清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記露光部および前記非露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向には一定であるとともに前記像担持体の回転方向には変化することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像形成装置において、
前記制御部は、画像形成枚数をカウントする画像形成枚数カウント手段を有し、
前記画像形成枚数カウント手段がカウントした画像形成枚数が所定値を超えた場合に、前記清掃動作を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載の画像形成装置において、
温度および湿度を検出可能な環境センサと、
前記現像剤が前記収容部に収容されてから実施された画像形成枚数である現像剤現像枚数をカウントする現像剤カウンタとをさらに備え、
前記制御部は、環境センサの検出結果および前記現像剤カウンタがカウントした現像剤現像枚数に基づいて、前記清掃動作を実施するかどうかの判定と実施条件の決定を行うことを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1に記載の画像形成装置において、
操作部を備え、前記操作部での操作によって前記清掃動作を実施可能であることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子写真方式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置として、帯電装置によって帯電後、露光装置によって露光を行うことにより感光体ドラム上に静電潜像を形成した後、現像装置でトナーを含む現像剤により顕像化することによってトナー像を形成するものが知られている。現像装置では、現像槽から現像ローラへの現像剤の汲み上げと、現像ローラの回転による現像剤の搬送とが行われる。
【0003】
画像形成時には、現像ローラと感光体ドラムとの対向領域でトナーの飛散が発生しやすくなる。例えば特許文献1では、現像ローラの近傍で現像剤の飛散を防止するために、トナー受け部材を支持する支持部材の上端にフィルム状のシール部材を設け、シール部材の先端部を感光体ドラムの表面に接触させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-84797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現像装置においては、感光体ドラムと現像ローラとの間の電位差によって、トナーがシール部材に引き寄せられ、シール部材に付着したり堆積したりしやすい。堆積したトナーは、画像形成中に現像ローラ側に落下し、現像されて用紙上にトナー落ちとして現れ、印刷画質を低下させるおそれがある。
【0006】
前記特許文献1では、トナー受け部材を振動させてトナー受け面に堆積したトナーを供給搬送室に落下させるとともに、形成する静電潜像のパターンを変更してシール部材に付着したトナーを現像ローラ側に回収することが提案されている。しかしながら、シール部材に付着したトナーは凝集して塊状になることが多く、付着したトナーを現像ローラ側に回収してしまうと塊状のまま現像されて、トナー落ちとなって画像不良が発生するおそれがある。また、現像ローラから現像剤の供給搬送室に塊状のトナーが収容されると撹拌不良や帯電不良の要因となる。
【0007】
本開示は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、堆積したトナーを、より効率的に回収し、良好な画像形成を行うことが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するための本開示の解決手段は、画像形成装置として、所定の回転方向に回転可能であって、表面が帯電される像担持体と、前記像担持体の表面を露光し、静電潜像を形成する露光装置と、前記像担持体と対向する開口部を有し、内部にトナーを含む現像剤が収容される収容部と、前記開口部に回転可能に設けられ前記現像剤を担持する現像ローラと、前記開口部よりも前記像担持体の回転方向の上流側の位置から、前記像担持体に先端部が当接するように延伸されたシート状の封止シートと、を有する現像装置と、前記現像ローラに所定の電圧である現像バイアスを印加する現像電源と、前記像担持体と前記現像ローラとを回転させる駆動源と、前記像担持体上に形成されたトナー像を用紙に転写する転写装置と、前記像担持体の表面を清掃する清掃部材と、非画像形成時に、前記像担持体の前記回転方向に露光部と非露光部とが繰り返される清掃用の静電潜像パターンを前記像担持体の表面に形成し、前記静電潜像パターンが前記封止シートを通過するように前記像担持体を回転させ、前記現像バイアスが印加された前記現像ローラで前記静電潜像パターンを現像後、現像されたトナーを前記清掃部材で回収する清掃動作を実施可能な制御部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
前記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記清掃動作を実施する際、前記像担持体の帯電電位と前記現像バイアスとの電位差を画像形成時よりも小さくすることが好ましい。
【0010】
また、前記構成の画像形成装置において、前記制御部は、前記清掃動作を実施する際、前記像担持体または前記現像ローラの少なくとも一方を画像形成時の回転速度より速い回転速度で回転させることが好ましい。
【0011】
また、前記構成の画像形成装置において、清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記露光部の前記回転方向の長さは、前記像担持体の長手方向には一定であることが好ましい。
【0012】
また、前記構成の画像形成装置において、清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向に所定の周期で変化してもよい。
【0013】
また、前記構成の画像形成装置において、清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部が前記像担持体の長手方向に交互に形成されてもよい。
【0014】
また、前記構成の画像形成装置において、清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記非露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向には一定であるとともに前記像担持体の回転方向には変化してもよい。
【0015】
また、前記構成の画像形成装置において、清掃用の前記静電潜像パターンは、前記露光部と前記非露光部とが前記回転方向に交互に形成され、前記露光部および前記非露光部の前記回転方向の長さが、前記像担持体の長手方向には一定であるとともに前記像担持体の回転方向には変化してもよい。
【0016】
また、前記構成の画像形成装置において、前記制御部は、画像形成枚数をカウントする画像形成枚数カウント手段を有し、前記画像形成枚数カウント手段がカウントした画像形成枚数が所定値を超えた場合に、前記清掃動作を実行することが好ましい。
【0017】
また、前記構成の画像形成装置において、温度および湿度を検出可能な環境センサと、
前記現像剤が前記収容部に収容されてから実施された画像形成枚数である現像剤現像枚数をカウントする現像剤カウンタとをさらに備え、前記制御部は、環境センサの検出結果および前記現像剤カウンタがカウントした現像剤現像枚数に基づいて、前記清掃動作を実施するかどうかの判定と実施条件の決定を行ってもよい。
【0018】
また、前記構成の画像形成装置において、操作部をさらに備え、前記操作部での操作によって前記清掃動作を実施可能とされてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、封止シートに堆積したトナーを、より効率的に回収し得て、良好な画像形成を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図2】前記画像形成装置に備えられる現像装置の外観を示す斜視図である。
図3】前記現像装置および感光体ドラムの配置形態を示す断面図である。
図4】前記感光体ドラムと現像ローラとの対向領域を拡大して示す断面図である。
図5図4におけるA部の拡大説明図である。
図6図4におけるA部の拡大説明図である。
図7】本開示の実施形態に係る画像形成装置が備える機能構成の一部を示すブロック図である。
図8】前記画像形成装置における清掃モードの実施制御例を示すフローチャートである。
図9】参考例に係る静電潜像パターンを示す説明図である。
図10】本開示の実施形態に係る画像形成装置における清掃用パターンの例を示す説明図である。
図11】前記清掃用パターンの他の例を示す説明図である。
図12】前記清掃用パターンの他の例を示す説明図である。
図13】前記画像形成装置における清掃モード処理の一例を示すフローチャートである。
図14】前記清掃モードを実施するか否かを判定するために用いられる判定テーブルの一例を示す説明図である。
図15】前記清掃モードの実施例について示す表である。
図16】前記実施例での清掃用パターンの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置1について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(画像形成装置)
図1は、本開示の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。本実施形態では、モノクロ画像を出力する画像形成装置1に適用した場合について説明する。
【0023】
画像形成装置1は、例えば電子写真方式が採用される装置であり、原稿を読み取った画像データ、または外部から取得した画像データによって示されるモノクロ画像を用紙等の記録媒体に画像形成する。画像形成装置1は、大別すると、原稿搬送部201、画像読取部202、画像形成部203、用紙搬送部204、給紙部205、CPUやメモリ等を含む制御部100等を備えて構成されている。また、画像形成装置1は、画像読取部202と画像形成部203との間に排紙トレイ243を有する胴内排紙空間が設けられている。画像形成装置1では、現像剤として、非磁性のトナーと磁性キャリアとを含む2成分現像剤(以下、単に現像剤という)を用いる現像方式が採用されている。
【0024】
原稿搬送部201は、原稿が原稿トレイ211にセットされると、原稿を1枚ずつ原稿トレイ211から引き出して搬送し、この原稿を画像読取部202の第1プラテンガラス223上に導いて通過させる。画像読取部202は、第1プラテンガラス223の下方に第1走査部221および第2走査部222を含む光学ユニットを配置しており、原稿が第1プラテンガラス223上を通過する際に、第1走査部221の光源によって原稿表面を露光し、第1走査部221および第2走査部222のミラーによって原稿表面からの反射光を結像レンズ224へと導き、結像レンズ224によって原稿表面の画像をCCD(Charge Coupled Device)225上に結像する。CCD225は、原稿表面の画像を主走査方向に繰り返し読み取り、原稿表面の画像を示す画像データを出力する。
【0025】
原稿が画像読取部202上面の第2プラテンガラス226に置かれた場合は、第1走査部221および第2走査部222を相互に所定の速度関係を維持しつつ副走査方向に移動させながら、第1走査部221によって第2プラテンガラス226上の原稿表面を露光し、第1走査部221および第2走査部222によって原稿表面からの反射光をさらに反射して結像レンズ224へと導き、結像レンズ224によって原稿表面の画像をCCD225上に結像する。出力された画像データは各種の画像処理を施されてから、画像形成部203に出力される。
【0026】
画像形成部203は、その略中央部に像担持体としての感光体ドラム20を備えている。感光体ドラム20の周囲には、現像装置30、帯電装置40、露光装置50、転写装置60、および清掃部材70が配置されている。感光体ドラム20は、接地された導電性のドラム状の基材および基材の表面上に薄膜状に形成された感光層を有している。基材は、例えば、アルミニウム等の金属で構成することができる。感光層は、暗所では絶縁性を有し、光が照射された領域が導電性に変化する材料特性を有する。感光層は、例えば、有機光半導体(OPC)やアモルファスシリコン(a-Si)等で構成することができる。感光体ドラム20は、後述する駆動源130(図7参照)によって所定の回転方向に回転可能であって、次に説明する帯電装置40によって表面が所定電位に帯電される。
【0027】
帯電装置40は、図示しない電源(帯電電源)から所定の電圧もしくは電流である帯電バイアスが供給されることで放電し、感光体ドラム20の表面(感光層)を所定の電位、例えば-600Vに均一帯電させる。帯電装置40は、例えば、タングステンワイヤ等の帯電線、金属製のシールド板、グリット板からなるコロナ帯電器や、帯電ローラまたは帯電ブラシ等で構成することができる。
【0028】
露光装置50は、レーザまたはLED等の光源を有し、出力する画像データに応じて、均一に帯電された感光体ドラム20の表面を露光する。感光体ドラム20表面の露光された領域(露光部)は導電性に変化し、その表面電位は、例えば-150Vに低下する(厳密には接地電位0Vにならない。)。これは、露光される時間が極めて短くて電気抵抗値が0Ωにならないためである。このようにして、感光体ドラム20の表面に画像データと対応した表面電位の分布を有する静電潜像が形成される。ここで、露光されなかった領域である非露光部の表面電位は、帯電電位と同じ(例えば-600V)ままで変化しない。
【0029】
現像装置30は、露光装置50によって感光体ドラム20上に形成された静電潜像をトナーで現像して顕像化する。現像装置30については、後で詳しく説明する。
【0030】
転写装置60は、転写ベルト61と感光体ドラム20との間に、後述する給紙部205から搬送されてくる用紙を挟み込んで搬送しつつ、感光体ドラム20上のトナー像を用紙に転写する。転写装置60としては、転写ベルト61の他に、例えば、転写ローラ、またはコロナ放電器等を用いることもできる。
【0031】
画像形成部203の上部には、定着装置80が配置されている。定着装置80は、トナー像が転写された用紙を、内部に熱源を備える定着ローラ81と加圧ローラ82との間に挟み込み通過させることで、熱と圧力でトナー像を用紙に定着させる。定着後の用紙は、搬送ローラにより搬送されて、排紙ローラ241により胴内排紙空間の排紙トレイ243に排出される。
【0032】
用紙の両面に画像を形成する場合には、用紙は排紙ローラ241で逆方向に反転搬送され、さらに反転搬送経路244へと搬送され、その表裏を反転してから画像形成部203へ再び搬送され、その裏面にトナー像が転写されて定着される。
【0033】
給紙部205は給紙トレイ251を備えており、給紙トレイ251から用紙を1枚ずつ分離供給する。用紙は、搬送ローラのうち、感光体ドラム20および転写装置60の手前に設けられたレジストローラ242によって一旦停止され、転写のタイミングに合わせて感光体ドラム20と転写装置60との間に供給され、感光体ドラム20上のトナー像が用紙に転写される。
【0034】
清掃部材70は、転写装置60においてトナー像が用紙に転写された後に感光体ドラム20の表面上に残留する転写残トナーを除去し、清掃する。清掃部材70は、シリコンゴムなどの弾性を有する部材を有し、先端が感光体ドラム20の表面に接触するブレード材である。なお、清掃部材70には、例示するようなブレード形状ではなくローラ状のものを使用してもよい。
【0035】
清掃部材70によって清掃された感光体ドラム20の表面は、図示しない光源に照射されて静電潜像が除去される(接地電位は0Vもしくはそれに近い値となる。)。そして、再び帯電装置40によって所定電位に帯電されるというサイクルを繰り返す。画像形成装置1では、このような画像形成プロセスが随時繰り返される。
【0036】
(現像装置)
図2は、画像形成装置1に備えられる現像装置30の外観を示す斜視図であり、図3は現像装置30および感光体ドラム20の配置形態を示す断面図である。図示するように、現像装置30は、内部に、トナーを含む現像剤が収容される現像槽31(収容部)を有し、感光体ドラム20と対向する開口部311が、現像槽31の上部に長手方向Xに沿って設けられている。開口部311の内側には、現像剤を表面に担持する現像ローラ32が長手方向Xに沿って配設されている。感光体ドラム20は、開口部311に面して配設される。
【0037】
現像槽31に収容される現像剤は、前述したように非磁性のトナーと磁性材からなるキャリアを含む2成分現像剤である。ここで、トナーの粒径は例えば6μm程度であり、キャリアの粒径は例えば40μm程度である。
【0038】
次に、現像装置30について詳しく説明する。図3に示すように、現像槽31の内部には、現像ローラ32、パドルローラ33、混合ローラ34、および搬送ローラ35が設けられる。パドルローラ33、混合ローラ34、および搬送ローラ35は、後述する駆動源130からの回転力を受けて回転されることで現像剤を攪拌してトナーを所定電位に摩擦帯電させ、現像ローラ32に現像剤を供給する。現像ローラ32は、供給された現像剤を表面に担持し感光体ドラム20との対向領域に現像剤を搬送するためにマグネットローラ321と現像スリーブ322とを備えている。マグネットローラ321は、複数の棒磁石である磁極が放射状に配置される多極着磁型のマグネット部材であり、現像槽31に回転不能に支持されている。現像スリーブ322は、非磁性材料(例えばアルミ)を用いて形成される円筒状のスリーブ部材であり、マグネットローラ321に外嵌されている。現像スリーブ322は現像槽31に回転自在に支持され、現像ローラ32の駆動源130(後述する現像ローラ回転駆動部132)によって所定方向(回転方向M)に回転され、表面に担持した現像剤を感光体ドラム20との対向領域に搬送する。
【0039】
現像ローラ32には、所定の電圧であるバイアス電圧(現像バイアス)を印加する現像バイアス電源(現像電源)36が接続されている。現像装置30では現像ローラ32に現像バイアスが印加されることで、感光体ドラム20表面に形成された静電潜像との間の電位差によって、現像剤に含まれるトナーが現像ローラ32から感光体ドラム20の表面に引き寄せられ、感光体ドラム20上に形成されていた静電潜像の部分にトナーが付着し、静電潜像を現像する。この静電潜像の現像により、トナー像が感光体ドラム20の表面に形成される。
【0040】
現像槽31の上部には、開口部311の片側縁部を構成する上部フレーム37が設けられている。上部フレーム37には、シート状の封止シート(封止マイラー)38が備えられている。図2に示すように、封止シート38は、開口部311に沿って長手方向Xに延在するように設けられている。
【0041】
図4は、感光体ドラム20と現像ローラ32との対向領域を拡大して示す断面図である。図示するように、現像槽31には、感光体ドラム20と現像ローラ32との対向領域よりも現像ローラ32の回転方向Mの上流側に、現像ローラ32の表面に担持されるトナーの層厚を規制する規制ブレード39が設けられている。
【0042】
ここで、封止シート38は、規制ブレード39より現像ローラ32の回転方向Mの下流側に設けられた上部フレーム37に一側縁(一端)が固定されている。封止シート38の他側縁(他端)は、感光体ドラム20の回転方向Nと直交する主走査方向(図中X方向)に沿って感光体ドラム20の表面に接触するように設けられている。封止シート38の材質としては、ウレタンシート等が用いられる。
【0043】
以上のように、シート状の封止シート38は、現像槽31の開口部311よりも感光体ドラム20の回転方向Nの上流側位置から、感光体ドラム20に先端部(他端)が当接するように延伸されている。次に封止シート38の役割について詳しく説明する。
【0044】
図5および図6は、図4のA部拡大説明図であり、感光体ドラム20と現像ローラ32との対向領域の一部を示す。なお、図5および図6では、図面を見やすくするため、現像剤に含まれるキャリアの図示を省略し、トナーT、T1について図示している。
【0045】
現像装置30では上部フレーム37が、規制ブレード39から感光体ドラム20までの間を覆って設けられている。規制ブレード39を通り過ぎた現像剤からはトナーTが分離し、現像スリーブ322の下流方向へ浮遊することがあるが、上部フレーム37および封止シート38を設けることによって、浮遊したトナーTが感光体ドラム20との隙間から現像槽31の外側へ漏れ出ることを防止できる。つまり、規制ブレード39を通過後にトナーTが浮遊しても、浮遊したトナーTが画像形成装置1内に漏れ出て飛散することを防止できる。
【0046】
一方、画像形成時つまり用紙にトナー像を転写する画像(静電潜像)を形成する時には、現像ローラ32および感光体ドラム20間の電位差により、トナーTが封止シート38の裏面に引き寄せられやすくなる。そのため、封止シート38の現像ローラ32側の面である裏面にトナーが付着して堆積しやすくなる。なお、図5では、封止シート38の裏面に引き寄せられて付着したトナーT1を、現像ローラ32上のトナーTと区別するために、薄墨色を付して示している。
【0047】
ここで、画像形成時において、感光体ドラム20の露光部Bが現像ローラ32(詳しくは現像スリーブ322)と対向している状態について、図5を用いて説明する。この状態において、現像ローラ32には所定の電圧である現像バイアス、例えば-450Vが印加されている。これに対して露光部Bの表面電位は、例えば-150Vであり、その電位差は-300Vある。ここでトナーはマイナスに帯電されている(例えば-25μC/g)ため、より接地電位に近い露光部B側に引き寄せられる。つまり、規制ブレード39を通過した後にトナーTが浮遊した場合、感光体ドラム20側に引き寄せられる静電気力が作用し、封止シート38の裏面に付着する。そして、封止シート38に堆積したトナーT1には感光体ドラム20側に引き寄せられる力が作用し、封止シート38を感光体ドラム20側に湾曲させる。
【0048】
次に、感光体ドラム20の非露光部Wが現像ローラ32と対向している状態(図6参照)を考える。この状態においても画像形成中は、現像ローラ32に現像バイアス-450Vが印加されている。この時、非露光部Wの表面電位は、例えば-600Vであるため、現像バイアスとの電位差は+150Vとなる。つまり、同じマイナス極性側で、接地電位から離れる方向に電位差がつくので、封止シート38に付着したマイナスに帯電したトナーT1は、非露光部Wから斥力を受ける。そのため、封止シート32のたわみ量が減ると同時に、トナーT1には封止シート32から離れる方向の力が作用する。このとき、封止シート38に堆積したトナーT1は、封止シート38から脱落し、現像ローラ32の表面に落下する。
【0049】
このように堆積したトナーT1が画像形成中に封止シート38から落下すると、そのまま現像されて用紙上に転写され、トナー落ちと呼ばれる画像不良を引き起こす。このトナー落ちは、黒ベタ印刷などトナー消費の多い原稿を連続印刷した後に発生しやすい。トナー落ちは印刷画質を低下させるので、未然に防ぐことが求められた。
【0050】
(清掃モード)
本実施形態に係る画像形成装置1の制御部100は、封止シート38に堆積したトナーT1によるトナー落ちが画像形成中に発生することを防止するために、所定のタイミングで清掃モードを実行する。清掃モードでは、用紙に転写するトナー像を形成していない、いわゆる非画像形成時に、トナーT1の清掃用の静電潜像パターン(清掃用パターン)を露光装置50の露光によって形成し、封止シート38を通過させる。詳しくは後述するが、清掃用パターンは、感光体ドラム20の回転方向Nに、感光体ドラム20の表面電位が変動するように構成されている(露光部Bと非露光部Wが交互に繰り返されるように構成される)。そのため、清掃用パターンが、封止シート38の先端つまり感光体ドラム20との当接部を通過する際に、封止シート38に堆積したトナーT1に作用する静電気力が変動する。この静電気力の変動が、トナーT1が付着している封止シート38を振動させ、その結果、堆積したトナーT1を現像ローラ32側に落下させる。
【0051】
そして、詳しくは後述するが清掃用パターンを通常の画像形成時と異なる条件で現像することで、現像ローラ32上に落下したトナーT1を感光体ドラム20側に移動させ(現像し)、トナー像ごと清掃部材70で回収する。
【0052】
制御部100は、以上のような一連の動作を行う清掃モード(清掃動作)を実施することで、堆積していたトナーT1を封止シート38から除去し、現像槽31内から排出できる。そして、排出されて感光体ドラム20に移動したトナーT1は、清掃部70で除去(回収)され、再び現像槽31に収容されることはないので、清掃モード後の通常の画像形成時でのトナー落ちの発生を抑制することができる。
【0053】
図7は、上述した清掃モードを実行するために画像形成装置1が備える機能構成の一部を示すブロック図である。画像形成装置1は制御部100、操作部110、記憶部120、画像形成部203、駆動源130、現像バイアス電源36、および環境センサ150等を備えて、これらが相互に接続されている。制御部100は、中央演算処理装置としてのCPUを含む処理部101を備え、記憶部120に記憶されるプログラムおよびデータを読み出して画像形成装置1の各構成部に制御信号を送信することにより画像形成装置1を制御する機能部である。
【0054】
制御部100には、画像形成枚数カウンタ102、および現像剤カウンタ103も備えられている。画像形成枚数カウンタ102は、画像形成処理を行った枚数(画像形成枚数)をカウントし累積する。詳しくは後述するが、制御部100は、画像形成枚数カウンタ102がカウントして累積した画像形成枚数が、所定枚数を超えるごとに、後述する清掃モードを実行するかどうか判定する。そして清掃モードが実行された場合は、カウントした画像形成枚数をリセットして、再び1からカウントを開始し、実行されなかった場合はリセットせずカウントを継続する。現像剤カウンタ103は、現像剤が現像槽31に収容された時点からの画像形成枚数(同一の現像剤で現像した画像形成枚数である現像剤現像枚数)をカウントし、累積する。現像剤カウンタ103は、現像剤が交換されると、すでにカウントされていた現像剤現像枚数をリセットしてからカウントを再開する。
【0055】
操作部110は、操作パネルおよび操作ボタン等を備えて、ユーザの操作により画像形成処理を受け付けたり、画像形成の各種状況を表示したりする。
【0056】
記憶部120は、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリを含み、制御部100によって実行されるプログラムや、制御部100で使用される各種パラメータ等を記憶する。処理部101の制御によって、ROMに記憶されているプログラムが読み出されてRAM上にロードされると、各種構成要素の作動の制御、例えば、駆動源130を介した現像ローラ32の回転駆動や、感光体ドラム20の回動駆動等が実行される。なお、プログラムは、HDD等の記録媒体から読み込まれてもよいし、LAN等のネットワークからダウンロードされてもよい。
【0057】
画像形成部203の詳細については、図1を参照して説明したとおりであり、ここでは本実施形態に係る画像形成装置1の機能構成を説明するために必要な機能部について記載している。例えば、画像形成部203においては、前記のとおり感光体ドラム20、現像装置30、および露光装置50を少なくとも備える。
【0058】
駆動源130は、感光体ドラム20を回転駆動する感光体ドラム回転駆動部131と、現像ローラ32を回転駆動する現像ローラ回転駆動部132とを含む。現像バイアス電源36は、現像装置30の現像ローラ32に現像バイアスを印加する。環境センサ150は、温度および湿度を検出可能なセンサである。
【0059】
図8は、画像形成装置1における清掃モードの実施制御例を示すフローチャートである。制御部100は、清掃モードを実施すると判定すると、転写装置60の転写ベルト61と感光体ドラム20とを離間させ、転写離間状態に切り替える(ステップS11)。これにより、後述するトナーで現像された感光体ドラム20表面の清掃用パターンを、転写ベルト61に転写させることなく、清掃部材70に搬送することができる。
【0060】
次に、制御部100は、感光体ドラム20および現像ローラ32の回転速度と、後述するクリーニングフィールドを含む現像プロセス条件を、通常の画像形成時、つまり用紙への画像形成時とは異なる条件に切り替える(ステップS12)。
【0061】
まず、感光体ドラム20および現像ローラ32の回転速度について説明する。制御部100は、清掃モードを実施する際、駆動源130を制御して、感光体ドラム20または現像ローラ32の少なくとも一方を、画像形成時の回転速度より速い回転速度で回転させる。一例として、現像ローラ32の回転速度を通常の画像形成時の回転速度より速い回転速度で回転させる場合について説明すると、この場合、通常の画像形成時での現像ローラ32の回転速度を標準速度とすると、清掃モードでは標準速度の1.5倍の回転速度とすることが好ましい。なお、現像ローラ32の回転速度を通常の画像形成時と同じ回転速度とし、感光体ドラム20の回転速度を通常の画像形成時の1.5倍の速度にしてもよい。以上のように現像ローラ32の回転速度(または感光体ドラム20の回転速度)を通常の画像形成時よりも上げることで、封止シート38に堆積したトナーT1を落ちやすくすることができる。
【0062】
次に、切り替えステップS12で行うクリーニングフィールドの変更について説明する。現像プロセス条件の切り替えステップS12として、制御部100は、感光体ドラム20の表面電位(非露光部Wの電位)と現像ローラ32の現像バイアスとの電位差(クリーニングフィールド)を、通常の画像形成時よりも小さくなるように制御する。
【0063】
制御部100は、清掃モードの開始にあたり、前述した回転速度で感光体ドラム20および現像ローラ32のそれぞれを回転させた後、通常の画像形成時と異なるクリーニングフィールドとなるように変更した帯電バイアスおよび現像バイアスをそれぞれ帯電装置40および現像ローラ32に印加する。
【0064】
次に、クリーニングフィールドについて詳しく説明する。例えば、通常の画像形成時における帯電バイアスが印加されて帯電されたドラム表面電位は-600Vであり、通常の画像形成時における現像バイアスは-450Vであるとする。このとき、クリーニングフィールド(ドラム表面電位と現像バイアスとの電位差)は-150Vとなる。一方、清掃モードでは、クリーニングフィールドが-50Vになる帯電バイアスと現像バイアスに変更される。この時変更される帯電バイアスと現像バイアスの値は予め実験で求めることができ、例えば現像バイアスが―450Vの場合は、感光体ドラム20の表面電位が―500Vとなる帯電バイアスに変更され、感光体ドラム20の表面電位が-600Vの場合は、現像バイアスが-550Vとなるように設定される。封止シート38に堆積したトナーT1は、自然放電により帯電量が通常より低下していることが多く、このようにクリーニングフィールドを変更することで、現像ローラ32上に落下した帯電量の低い(通常の帯電量-25μC/gより低い)トナーT1を、積極的に感光体ドラム20側に移動させることができるようになる。
【0065】
制御部100は、以上のように通常の画像形成時とは異なる現像プロセス条件(感光体ドラム20および現像ローラ32の回転速度と、クリーニングフィールド)で感光体ドラム20および現像ローラ32を駆動させてから、露光装置50を制御して感光体ドラム20表面に清掃用パターン(静電潜像)を作成する(ステップS13)。
【0066】
清掃用パターンは、前述したように感光体ドラム20の回転方向Nに繰り返す静電潜像の露光部Bと非露光部Wとを含んで構成されている。このような清掃用パターンが封止シート38を通過することで、封止シート38に堆積したトナーT1に作用する静電気力が繰り返して変動する。この繰り返し変動に伴って、封止シート38のたわみ量が変化し、その繰り返し変動によって、封止シート38に堆積していたトナーT1が現像ローラ32上に落下させる。そして、現像ローラ32上に落下したトナーT1を、通常の画像形成時とは異なる現像プロセス条件(現像ローラ32上に落下した通常より帯電量が低いトナーが、通常時の画像形成時より感光体ドラム20側に現像されやすい条件)にすることによって、感光体ドラム20側に確実に移動させ、清掃部材70で回収することができる。
【0067】
清掃モードが終了すると、現像プロセス条件を再び切り替えて、清掃モードから通常の画像形成に備える(ステップS14)。
【0068】
なお、清掃モードは、用紙への画像形成を行っていないかまたは用紙への画像形成を一旦休止させた非画像形成時、あるいは用紙への画像形成前後の非画像形成時に、実施されることが好ましい。また、清掃用パターンは、次に説明するように複数のパターンが使用可能である。
【0069】
(清掃用パターン)
図9は静電潜像パターンの参考例を示す説明図である。例えば、図9に示すパターンPT0は、露光部Bと非露光部Wとが、感光体ドラム20の回転方向Nと直交する方向、すなわち感光体ドラム20の長手方向Xに繰り返して形成されている。このようなパターンは、回転方向Nに沿って静電潜像の電位変化はない。そのため、静電潜像が封止シート38を通過しても、封止シート38に堆積したトナーT1に対して作用する静電気力は回転方向Nに変化しない。したがって、トナーT1を封止シート38から落とすための所期の効果が得られにくい。
【0070】
図10は、本実施形態に係る画像形成装置1における清掃用パターンの例を示す説明図である。図10において、感光体ドラム20の回転方向Nは図面の左右方向の左側から右側への方向であり、この回転方向Nにそれぞれの清掃用パターンが形成され現像されるものとする。
【0071】
画像形成装置1の清掃用パターンとしては、静電潜像の露光部Bと非露光部Wとの繰り返しパターンを含んで構成される。例えば図10に示すように、一例としての清掃用パターンPT1は、静電潜像の露光部Bと非露光部Wとが感光体ドラム20の回転方向Nに交互に形成されるように構成されている。さらに、清掃用パターンPT1は、露光部Bおよび非露光部Wの回転方向Nのそれぞれの長さは、感光体ドラム20の長手方向Xにともに一定とされている。
【0072】
ここで、露光部Bは黒ベタ部(濃度100%)で現像され、非露光部Wは白地(濃度0%)となる。露光部Bおよび非露光部Wの長さは1辺30mm以上とされることが好ましい。このような清掃用パターンPT1により、清掃モードの実施中には、露光部Bと非露光部Wとが一定の間隔で封止シート38を通過することとなり、電位差の逆転により、封止シート38を一定間隔で振動させつつトナーT1を落下させることが可能となる。
【0073】
また、清掃用パターンPT2のように、長手方向Xに露光部Bと非露光部Wとが一定間隔で繰り返すとともに、回転方向Nにも露光部Bと非露光部Wとが一定間隔で繰り返し、いずれの方向にも露光部Bと非露光部Wとが隣接して繰り返す市松模様のパターンとされてもよい。
【0074】
また、清掃用パターンPT3のように、清掃用パターンPT1と清掃用パターンPT2を複合させ、露光部Bの回転方向Nの長さが感光体ドラム20の長手方向Xに所定の周期で変化するパターンとされてもよい。露光部Bの回転方向Nの長さは、短い部分と長い部分とが長手方向Xに繰り返して形成されている。
【0075】
また、清掃用パターンPT4のように、矩形状の露光部Bが回転方向Nおよび長手方向Xに規則的に配置され、露光部Bと非露光部Wとが長手方向Xに交互に形成されるパターンであってもよい。この場合、露光部Bと非露光部Wとは、回転方向Nにも交互に形成されている。
【0076】
図11および図12は、画像形成装置1における他の清掃用パターンの例を示す説明図である。図11に示す清掃用パターンPT5は、図10に示す清掃用パターンPT1の変形例であり、露光部Bと非露光部Wとが感光体ドラム20の回転方向Nに交互に形成されるとともに、露光部Bの回転方向Nの長さは、感光体ドラム20の長手方向Xには一定とされている。加えて、非露光部Wは、回転方向Nの長さが、回転方向Nに一定ではなく変化するように形成されている。
【0077】
また、清掃用パターンPT6および清掃用パターンPT7では、露光部Bと非露光部Wとが感光体ドラム20の回転方向Nに交互に形成されるとともに、露光部Bの回転方向Nの長さおよび非露光部Wの回転方向Nの長さが、感光体ドラム20の長手方向Xには一定であるが、回転方向Nには変化するように形成されている。
【0078】
これらの清掃用パターンPT6、PT7の場合、清掃モードの実施中には、露光部Bと非露光部Wとが交互に不規則な間隔で封止シート38を通過し、露光部Bと非露光部Wとの電位差の逆転により、封止シート38を不規則な間隔で振動させつつトナーT1を落下させることできる。
【0079】
図12に示す清掃用パターンPT8は、図10に示す清掃用パターンPT2の変形例であり、長手方向Xに露光部Bと非露光部Wとが一定間隔で繰り返すパターンであるとともに、回転方向Nには露光部Bと非露光部Wとが間隔を変化させて繰り返すように形成されている。いずれの方向にも露光部Bと非露光部Wとが隣接して繰り返す変形された市松模様のパターンとされている。
【0080】
いずれの清掃用パターンPT1~PT8にあっても、清掃モードの実施中に露光部Bと非露光部Wとが封止シート38を通過することで、封止シート38を振動させつつトナーT1を落下させることが可能となる。現像ローラ32に落下したトナーT1は、現像ローラ32から感光体ドラム20側に移動(現像)される。現像装置30によって現像された清掃用パターンのトナー像は、図10から図12に示すような画像となる。ここで、現像されたトナーT1は、図中の薄墨色のドットで示されるように、いわゆるトナー落ちと呼ばれる画像不良を発生させるものではあるが、現像されたトナー像ごと清掃部材70で感光体ドラム20表面から除去され、図示しない廃トナー容器に回収される。この清掃用パターンを用いた清掃モードの実施により、封止シート38に堆積していたトナーT1が再び現像槽31に収容されることなく除去され、清掃モード後の通常の画像形成時でのトナー落ちの発生を抑制することが可能となる。
【0081】
(清掃モード実施タイミング)
前述した清掃モードは、所定のタイミングで実施されることが好ましい。図13は、通常の画像形成中における清掃モードを実施するか否か判定する処理を含む清掃モード処理のフローチャートである。図14は、清掃モードを実施するか否か判定するために使用される判定テーブルの一例を示す説明図である。
【0082】
ここで、清掃モードを実施タイミングするかどうかの判定は、温度や湿度などの動作環境に基づいて決定されることが好ましい。その理由は、画像形成装置1において、トナー落ちの発生頻度は動作環境の影響を大きく受けるためで、特に温度や湿度が高いほどトナー落ちが発生しやすい。また、現像剤の経時劣化の影響も受けやすく、現像剤の使用時間が長いと(現像剤カウンタ103が進むと)、現像剤を構成するキャリアが劣化し、トナーへの帯電付与性能が低下する。その結果、トナー落ちが発生しやすくなる。
【0083】
次に判定テーブルについて説明する。判定テーブルは、図14に示すように温度と湿度の組合せで分けられた5つの動作環境領域と、前述した現像剤カウンタ103がカウントしている現像剤現像枚数に対して、適用する6つの領域に区切られた現像枚数領域とを組み合わせた5×6=30個の判定領域を有する。そして、それぞれの判定領域に対して清掃モード時に形成する清掃パターンの形成回数が予め設定されている。
【0084】
より詳しく説明すると、動作環境領域は、LL環境(低温低湿環境)、NL環境(常温低湿環境)、NN環境(常温常湿環境)、NH環境(常温高湿環境)、HH環境(高温高湿環境)の5つに区切られている。本実施形態では、LL環境(低温低湿環境)は、温度15℃未満、湿度20%未満の第1環境領域、NL環境(常温低湿環境)は、温度が15℃以上28℃未満で、湿度が20%未満の第2環境領域、NN(常温常湿環境)は、温度が15℃以上28℃未満で、湿度が20%以上70%未満の第3環境領域、NH(常温高湿環境)は、温度が15℃以上28℃未満で、湿度が70%以上の第4環境領域、HH(高温高湿環境)が、温度28℃以上、湿度70%以上の第5環境領域として規定されるが、これらの領域を区切る温度と湿度の値は適宜変更してもよい。
【0085】
次に現像剤現像枚数に対応する6つの現像枚数領域について説明する。現像枚数領域は、現像剤が現像槽31に収容されてからの画像形成枚数である現像剤現像枚数が、0枚から10k(1万)枚未満の第1現像枚数領域、1k枚以上かつ100k(10万)枚未満の第2現像枚数領域、100k枚以上かつ300k(30万)枚未満の第3現像枚数領域、300k枚以上かつ500k(50万)枚未満の第4現像枚数領域、500k枚以上かつ700k(70万)枚未満の第5現像枚数領域、700k枚以上の第6現像枚数領域というように6つの現像枚数領域に区切られる。
【0086】
以上のように判定テーブルは、5つの動作環境領域と6つの現像枚数領域の組合せで決められた30個の判定領域を有し、それぞれの判定領域に対して、清掃モードを実行するか否か、清掃モードを実行する場合は、形成する清掃パターンの枚数(ここでの枚数はA4サイズに対応)が記載されている。例えば、環境センサ150が検出した動作環境がNH環境、すなわち第4環境領域で、現像剤カウンタ103がカウントした現像剤現像枚数が120,320枚の場合は、対応する現像枚数領域が第3現像枚数領域となり、清掃モード実行時に、A4サイズに形成された清掃パターンを2回(枚)形成する。判定テーブル中で0と記載された領域は、清掃モードを実行しないという意味である。なお、判定テーブルは、予め実験的に求められ、記憶部120に記憶されている。
【0087】
次に、通常の画像形成中に判定テーブルを用いて清掃モードを実行するか否か判定するフローについて、図13を参照して説明する。
【0088】
画像形成装置1において、用紙にトナー像を形成する印刷ジョブを受信すると、制御部100は、図13に示すように、まず1枚目の印刷ジョブ(画像形成処理)を実施する(ステップS20)。
【0089】
1枚目の画像形成処理が終了すると、制御部100は、画像形成枚数カウンタ102でのカウントアップ、および現像剤カウンタ103でのカウントアップを行うとともに、各カウンタのカウントアップされた値を確認する(ステップS21)。
【0090】
次に、制御部100は、画像形成枚数カウンタ102のカウント値、つまり画像形成枚数が所定値(例えば199枚)を超えたかどうか判定する(ステップS22)。画像形成枚数が所定値を超えていない場合(ステップS22でNoの場合)は、ステップS26に進み、画像形成枚数が所定値を超えた場合は(ステップS22でYesの場合)は、ステップS23に進む。
【0091】
ステップS23では、環境センサ150から得られた温度および湿度と、現像剤カウンタ103から得られた現像剤現像枚数に基づいて、対応する判定テーブルの判定領域(対応判定領域)を確認(参照)する。
【0092】
次に、判定テーブルの対応判定領域を参照して、清掃モードの実行条件であるか否かを判定する(ステップS24)。判定テーブルの対応判定領域に清掃モード実行条件が記載されている場合(ステップS24でYesの場合)は、ステップS25に進む。確認した判定テーブルの対応判定領域に清掃モード実行条件が記載されていない場合(ステップS24でNoの場合)は、ステップS26に進む。
【0093】
ステップS25では、判定テーブルに記載された条件で清掃モードを実行し、実行後に、画像形成枚数カウンタ102のカウント数をリセットし、ステップS26に進む。
【0094】
ステップS26では、印刷ジョブが完了したかどうかを確認する。次に画像形成を行う場合(ステップS26でNoの場合)は、ステップS20に進む。次に画像形成を行わない場合、すなわち印刷ジョブが終了した場合(ステップS26でYesの場合)は、一連の処理を終了する。
【0095】
以上のように、通常の画像形成中において、画像形成枚数カウンタ102、現像剤カウンタ103および環境センサ150がそれぞれ検出する値に基づいて、清掃モードを実行するか否か判定すると同時に、状況に適した条件で清掃モードを実行することで、封止シート38に堆積したトナーによるトナー落ちの発生を効果的に防止することができる。
【0096】
なお、清掃モードは、例えばメンテナンスタイミング時にサービスマンなどが強制的に実施できるように、専用のプログラムを、操作部110を操作して実行できるようにしてもよい。
【0097】
(実施例)
画像形成装置1における清掃モードの実施例について、図面を参照しつつ説明する。図15は、実施例での清掃モードの実施条件を示す表であり、図16は、実施例での清掃用パターンの例を示す説明図である。なお、図16に示す表中、「標準」は通常の画像形成時の条件と同様の条件であることを示す。
【0098】
実施例での清掃用パターンとしては、図16に示すパターン1とパターン2のいずれか一方を適用した。清掃用パターンのパターン1は、前述の清掃用パターンPT1に相当し、パターン2は前述の清掃用パターンPT0に相当する。これに対して、比較例では、清掃モードを実施せず、すなわち清掃用パターンを用いることなく通常の画像形成時の条件で印刷処理を行った。各実施例および比較例において、ドラム表面電位と現像バイアスとの電位差であるクリーニングフィールド、または現像ローラの回転速度を変化させた。
【0099】
実施例1では、清掃用パターンとしてパターン1を適用した以外は、通常の画像形成時と同様の標準条件とした。実施例2では、清掃用パターンとしてパターン2を適用した以外は標準条件とした。実施例3では、清掃用パターンとしてパターン1を適用し、クリーニングフィールドを通常の画像形成時よりも小さく(-100V)し、現像ローラの回転速度は標準条件とした。実施例4では、清掃用パターンとしてパターン1を適用し、クリーニングフィールドは標準条件とし、現像ローラの回転速度は標準速度の1.5倍の回転速度とした。実施例5では、清掃用パターンとしてパターン1を適用し、クリーニングフィールドは通常の画像形成時よりも小さく(-100V)するとともに、現像ローラの回転速度は標準速度の1.5倍の回転速度とした。
【0100】
各実施例および比較例では、印字率1%のドットパターンを5k枚印刷後、印字率35%のソリッドパターンを10k枚印刷する画像形成処理を行い、各実施例では印刷枚数200枚ごとに清掃モードを実施した。そして、最終的に、用紙に印刷されたドットパターンおよびソリッドパターンの画像上のトナー落ち個数をカウントすることにより評価を行った。
【0101】
トナー落ち個数は、清掃モードを実施しない比較例では100個であったのに対して、実施例1ないし実施例5ではいずれも比較例よりも明らかに低減したことが確認された。特に、清掃用パターンとしてパターン1を適用し、クリーニングフィールドおよび現像ローラの回転速度を標準条件からそれぞれ変更して適用した実施例5では、トナー落ちがゼロとなり、清掃モードによるトナー落ちの抑制効果が最も高いことが確認された。
【0102】
なお、画像形成装置1としては、外部から伝達される画像データやスキャナなどによって原稿から読み取った画像データに応じて用紙に単色の画像を形成することができる複合機を例に挙げて示したが、本開示の画像形成装置はこれに限定されるものではなく、例えば像担持体としては感光体ドラムであるには限定されない。また、複数色のトナーを利用したカラー印刷を行う画像形成装置では、現像装置は複数色のトナーの色に対応した複数の現像ローラを備えるように構成される。
【0103】
本開示は前記の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる技術的事項のすべてが本開示の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であり、そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
1 画像形成装置
203 画像形成部
20 感光体ドラム(像担持体)
30 現像装置
31 現像槽
311 開口部
32 現像ローラ
321 マグネットローラ
322 現像スリーブ
36 現像バイアス電源(現像電源)
37 上部フレーム
38 封止シート
39 規制ブレード
40 帯電装置
50 露光装置
60 転写装置
70 清掃部材
100 制御部
101 処理部
102 画像形成枚数カウンタ
103 現像剤カウンタ
110 操作部
120 記憶部
130 駆動源
131 感光体ドラム回転駆動部
132 現像ローラ回転駆動部
150 環境センサ
B 露光部
W 非露光部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図16