IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163588
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241115BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20241115BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241115BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L29/78 618Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 622
G02F1/1368
G09F9/30 338
H10K59/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079338
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
【テーマコード(参考)】
2H192
3K107
5C094
5F110
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BC31
2H192CB05
2H192CB08
2H192CB34
2H192CB37
2H192CB83
2H192DA12
2H192DA52
2H192FA73
2H192FB03
2H192FB05
2H192FB33
2H192FB46
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC33
3K107EE04
3K107FF04
5C094AA21
5C094BA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA15
5C094FB02
5C094FB14
5C094FB15
5C094JA02
5C094JA03
5F110BB01
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110EE02
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE14
5F110EE30
5F110EE43
5F110EE44
5F110FF02
5F110FF04
5F110FF05
5F110FF09
5F110FF28
5F110FF29
5F110GG01
5F110GG13
5F110GG43
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK06
5F110HK21
5F110HK33
5F110NN03
5F110NN05
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN28
5F110NN72
5F110NN73
5F110NN78
(57)【要約】
【課題】高い移動度を有する半導体装置を実現すること。
【解決手段】半導体装置は、ゲート電極と、前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置である。前記半導体装置のId-Vg特性で、前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき20cm/Vsを超える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置であって、
前記半導体装置のId-Vg特性で、
前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、
前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、
前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、
線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cm
のとき20cm/Vsを超える半導体装置。
【請求項2】
前記線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cm
のとき30cm/Vsを超える、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置であって、
前記半導体装置のId-Vg特性で、
前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、
前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、
前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、
線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cm
のとき30cm/Vsを超える半導体装置。
【請求項4】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置であって、
前記半導体装置のId-Vg特性で、
前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、
前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、
前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、
Vg=Vthにおける線形移動度によって正規化された正規化線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cm
のとき3.0を超える半導体装置。
【請求項5】
前記正規化線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cm
のとき4.0を超える、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、
前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置であって、
前記半導体装置のId-Vg特性で、
前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、
前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、
前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、
Vg=Vthにおける線形移動度によって正規化された正規化線形移動度は、
(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cm
のとき4.0を超える半導体装置。
【請求項7】
前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とが重なる領域であって、前記ソース電極と前記ドレイン電極とによって挟まれた領域であるチャネル領域について、前記ソース電極と前記ドレイン電極とを結ぶ第1方向における前記チャネル領域の長さをLとし、前記第1方向に直交する第2方向における前記チャネル領域の幅をWとした場合、
Vthは、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電圧が0.1Vである場合における前記半導体装置のId-Vg特性において、前記半導体装置にW/L×10nAの電流が流れるときのVgである、請求項1乃至6のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記線形移動度は、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間の電圧が0.1Vである場合における前記半導体装置のId-Vg特性に基づいて求められる、請求項1乃至6のいずれか一に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記金属酸化物層は酸化アルミニウムを含む、請求項1乃至6のいずれか一に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、半導体装置に関する。特に、本発明の一実施形態は、チャネルとして酸化物半導体が用いられた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び単結晶シリコンに替わり、酸化物半導体がチャネルに用いられた半導体装置の開発が進められている(例えば、特許文献1~6)。酸化物半導体がチャネルに用いられた半導体装置は、アモルファスシリコンがチャネルに用いられた半導体装置と同様に、単純な構造かつ低温プロセスで形成することができる。酸化物半導体がチャネルに用いられた半導体装置は、アモルファスシリコンがチャネルに用いられた半導体装置よりも高い移動度を有することが知られている。
【0003】
酸化物半導体がチャネルに用いられた半導体装置が安定した動作をするために、その製造工程において酸化物半導体層に酸素を供給し、酸化物半導体層に形成された酸素欠損を低減することが重要である。酸化物半導体層に酸素を供給する方法の一つとして、例えば、酸化物半導体層を覆う絶縁層を、当該絶縁層が酸素をより多く含む条件で形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-141338号公報
【特許文献2】特開2014-099601号公報
【特許文献3】特開2021-153196号公報
【特許文献4】特開2018-006730号公報
【特許文献5】特開2016-184771号公報
【特許文献6】特開2021-108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、酸素をより多く含む条件で形成された絶縁層は欠陥を多く含む。その影響で、その欠陥に電子がトラップされることが原因と考えられる半導体装置の特性異常又は信頼性試験における特性変動が発生する。一方、欠陥の少ない絶縁層を用いると、絶縁層に含まれる酸素を多くすることができない。したがって、絶縁層から酸化物半導体層に十分に酸素を供給することができない。このように、半導体装置の特性変動の原因となる絶縁層中の欠陥を低減しつつ、酸化物半導体層に形成された酸素欠損を修復することができる構造を実現することが要求されている。
【0006】
本発明の一実施形態は、高い移動度を有する半導体装置を実現することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置である。前記半導体装置のId-Vg特性で、前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき20cm/Vsを超える。
【0008】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置である。前記半導体装置のId-Vg特性で、前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき30cm/Vsを超える。
【0009】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上の、アルミニウムを主成分とする金属酸化物層と、前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置である。前記半導体装置のId-Vg特性で、前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、Vg=Vthにおける線形移動度によって正規化された正規化線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき3.0を超える。
【0010】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層の上の金属酸化物層と、前記金属酸化物層の上の、多結晶構造を有する酸化物半導体層と、前記酸化物半導体層の上から前記酸化物半導体層と接するソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極及び前記ドレイン電極の上の絶縁層と、を含む半導体装置である。前記半導体装置のId-Vg特性で、前記ゲート電極に供給される電圧をVgとし、前記半導体装置のしきい値電圧をVthとし、前記ゲート電極と前記酸化物半導体層とによって挟まれた前記ゲート絶縁層の静電容量をCoxとした場合、Vg=Vthにおける線形移動度によって正規化された正規化線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき4.0を超える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の概要を示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示すフローチャート図である。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図13】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図14】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
図15】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素電極及び共通電極の平面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図17】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す断面図である。
図18】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性を示す図である。
図19】本発明の一実施形態に係る半導体装置の線形移動度を示す図である。
図20】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性におけるゲート容量の依存性を示す図である。
図21】本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性におけるゲート容量の依存性を示す図である。
図22】本発明の一実施形態に係る半導体装置の線形移動度におけるゲート容量の依存性を示す図である。
図23図20の横軸を、しきい値電圧及びゲート容量で規格化した図である。
図24図21の横軸を、しきい値電圧及びゲート容量で規格化した図である。
図25図22の横軸を、しきい値電圧及びゲート容量で規格化した図である。
図26】本発明の一実施形態に係る半導体装置の正規化線形移動度におけるゲート容量の依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の各実施形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
本発明の各実施の形態において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を上又は上方という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を下又は下方という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、例えば、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。以下の説明で、例えば基板上の酸化物半導体層という表現は、上記のように基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、トランジスタの上方の画素電極と表現する場合、平面視において、トランジスタと画素電極とが重ならない位置関係であってもよい。一方、トランジスタの鉛直上方の画素電極と表現する場合は、平面視において、トランジスタと画素電極とが重なる位置関係を意味する。
【0014】
本明細書において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合により、互いに入れ替えることができる。
【0015】
「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する構造体を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルを指す場合もあり、又は表示セルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)を装着した構造体を指す場合もある。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。したがって、後述する実施形態について、表示装置として、液晶層を含む液晶表示装置、及び有機EL層を含む有機EL表示装置を例示して説明するが、本実施形態における構造は、上述した他の電気光学層を含む表示装置へ適用することができる。
【0016】
本明細書において「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、「αはA、B及びCからなる群から選択される一つを含む」、といった表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0017】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0018】
[1.第1実施形態]
図1図10を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10について説明する。
【0019】
[1-1.半導体装置10の構成]
図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の概要を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の概要を示す平面図である。図1に示す断面図は、図2に示すA1-A2線で切断したときの断面に対応する。
【0020】
図1に示すように、半導体装置10は基板100の上方に設けられている。半導体装置10は、ゲート電極105、ゲート絶縁層110、120、金属酸化物層130、酸化物半導体層140、ソース電極201、ドレイン電極203、及び絶縁層150、160を含む。ソース電極201及びドレイン電極203を特に区別しない場合、これらを併せてソース-ドレイン電極200という場合がある。本実施形態では、半導体装置10として酸化物半導体層140の下方にゲート電極105が設けられるボトムゲート型のトランジスタについて説明する。
【0021】
本実施形態では、半導体装置10としてボトムゲート型トランジスタを例示するが、半導体装置10はボトムゲート型トランジスタに限定されない。例えば、半導体装置10は、ゲート電極が酸化物半導体層140の上方及び下方の両方に設けられたデュアルゲート型トランジスタであってもよい。
【0022】
ゲート電極105は基板100の上に設けられている。ゲート絶縁層110、120は基板100及びゲート電極105の上に設けられている。ゲート絶縁層110、120は積層構造を有する。金属酸化物層130はゲート絶縁層120の上に設けられている。酸化物半導体層140は金属酸化物層130の上に設けられている。酸化物半導体層140の上に、ソース電極201及びドレイン電極203が設けられている。ソース電極201及びドレイン電極203は、酸化物半導体層140に対して上から接している。絶縁層150、160は、酸化物半導体層140、ソース電極201、及びドレイン電極203の上に設けられている。絶縁層150、160は積層構造を有する。絶縁層160は絶縁層150の上に設けられている。つまり、絶縁層150、160は、ソース電極201及びドレイン電極203を覆う。絶縁層150は酸化物半導体層140と接している。
【0023】
酸化物半導体層140は、透光性を有し、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層140を形成することができる。以下、酸化物半導体層140の構成について説明するが、多結晶構造を有する酸化物半導体をPoly-OSという場合がある。
【0024】
Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、例えば0.1μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、断面SEM観察、断面TEM観察、又は電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0025】
上述したように、Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は0.1μm以上であるため、10nm以上30nm以下の膜厚を有する酸化物半導体層140では、膜厚方向に沿って1つの結晶粒のみが含まれる領域が存在する。
【0026】
ゲート絶縁層110の膜厚は、例えば、50nm以上500nm以下、50nm以上400nm以下、50nm以上300nm以下、50nm以上150nm以下、又は50nm以上100nm以下である。ゲート絶縁層120の膜厚は、例えば、10nm以上200nm以下又は10nm以上100nm以下である。ゲート絶縁層110、120の合計膜厚は、例えば、100nm以上700nm以下、100nm以上500nm以下、100nm以上400nm以下、100nm以上250nm以下、100nm以上200nm以下、又は100nm以上150nm以下である。
【0027】
金属酸化物層130の膜厚は、例えば、1nm以上10nm以下又は1nm以上5nm以下である。本実施形態では、金属酸化物層130として酸化アルミニウムが用いられる。酸化アルミニウムは酸素又は水素などのガスに対する高いバリア性を備えている。バリア性とは、酸素又は水素などのガスが、酸化アルミニウムを透過することを抑制する機能をいう。つまり、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層から酸素又は水素などのガスが放出されても、当該ガスは酸化アルミニウム膜の上に設けられる層に移動しない。又は、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層から酸素又は水素などのガスが放出されても、当該ガスは酸化アルミニウム膜の下に設けられる層に移動しない。
【0028】
酸化物半導体層140の膜厚は、10nm以上50nm以下、10nm以上40nm以下、又は10nm以上30nm以下である。絶縁層150の膜厚は、50nm以上300nm以下、60nm以上200nm以下、又は70nm以上150nm以下である。
【0029】
配線109は、ゲート電極105と同一の層に形成される。つまり、配線109は、ゲート電極105と同様に基板100及びゲート絶縁層110と接している。配線209は、ソース電極201及びドレイン電極203と同一の層に形成される。つまり、配線209は、絶縁層150と接している。配線109と重なる領域において、ゲート絶縁層110、120にはコンタクトホール111が設けられている。配線209は、コンタクトホール111を介して配線109と接続されている。配線109及び配線209は、ゲート配線として機能する。
【0030】
図2に示すように、平面視において、酸化物半導体層140は、ゲート電極105と重畳している。D1方向は、ソース電極201とドレイン電極203とを結ぶ方向であり、D2方向は、D1方向と直交する方向である。半導体装置10において、チャネル領域は、ゲート電極105と酸化物半導体層140とが重なる領域であって、ソース電極201とドレイン電極203とによって挟まれた領域である。チャネル長Lは、D1方向におけるチャネル領域の長さであり、D1方向におけるソース電極201とドレイン電極203との間の長さに対応する。チャネル幅Wは、D2方向におけるチャネル領域の幅であり、D2方向における酸化物半導体層140の幅に対応する。平面視において、ソース電極201と重畳する酸化物半導体層140の領域はソース領域であり、ドレイン電極203と重畳する酸化物半導体層140の領域はドレイン領域である。つまり、チャネル領域は、ソース領域とドレイン領域との間に位置する。
【0031】
平面視において、金属酸化物層130の平面パターンは、酸化物半導体層140の平面パターンと略同一である。言い換えると、金属酸化物層130の端部と酸化物半導体層140の端部は略一致している。図1及び図2を参照すると、酸化物半導体層140の下面は金属酸化物層130によって覆われている。特に、本実施形態に係る半導体装置10では、酸化物半導体層140の下面の全てが、金属酸化物層130によって覆われている。
【0032】
配線109、209はD1方向に延びている。D2方向において、配線109の幅は配線209の幅より大きい。配線209のD1方向の反対側の端部にコンタクトホール111が設けられている。図2では、配線109が配線209とともにD1方向に延びた構成を例示したが、この構成に限定されない。配線209が配線109のD1方向における端部を越えてD1方向に延びていてもよい。D2方向における配線109の幅は、配線209の幅と同じであってもよく、配線209より小さくてもよい。
【0033】
[1-2.半導体装置10の電気特性]
ゲート容量Coxは、半導体装置10をオン状態に制御する電圧がゲート電極105に供給された場合に、キャリアが生成された状態の酸化物半導体層140とゲート電極105との間に設けられた誘電体(ゲート絶縁層110、120及び金属酸化物層130)の静電容量である。具体的には、ゲート容量Coxは、チャネル領域におけるゲート絶縁層110、120及び金属酸化物層130の膜厚及び誘電率に基づいて算出される。
【0034】
本実施形態に係る半導体装置10は、上記の構成を備えることで、従来の酸化物半導体(例えば、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4の組成比を有し、アモルファス構造を有する酸化物半導体)を用いた半導体装置(従来の半導体装置)に比べて高い線形移動度を得ることができる。線形移動度とは、トランジスタの電気特性において、線形領域における移動度を意味する。本実施形態における線形移動度は、ソース電極201とドレイン電極203との間の電圧が0.1Vである場合における半導体装置10のId-Vg特性から算出される移動度である。ソース電極201に0Vを供給した場合においてドレイン電極203に供給される電圧をドレイン電圧Vdという。
【0035】
半導体装置10において、チャネルとして機能する酸化物半導体層140では、従来の酸化物半導体に比べて、膜中の欠陥が少ない。その結果、本実施形態に係る半導体装置10の電気特性から算出される移動度は、従来の半導体装置の電気特性から算出される移動度に比べて高い。特に、従来の半導体装置では、ドレイン電圧Vd及びゲート電圧Vgが低い場合に高い移動度を得ることができなかったのに対して、本実施形態に係る半導体装置10では、ドレイン電圧Vd及びゲート電圧Vgが低い場合であっても高い移動度を得ることができる。ゲート電圧Vgは、ゲート電極105に供給される電圧である。
【0036】
半導体装置の電気特性(Id-Vg特性)に基づいて移動度を算出する場合、酸化物半導体層に形成された欠陥の量及びゲート容量Coxの差が移動度の値に影響するため、酸化物半導体層の物性及び半導体層の構造に起因した移動度の違いを評価することは難しい。
【0037】
例えば、半導体装置の酸化物半導体層に欠陥が形成されている場合、欠陥の量は、当該半導体装置のId-Vg特性におけるしきい値電圧Vthに影響する。具体的には、半導体装置のゲート電極に電圧を供給すると、ゲート電圧Vgが小さい範囲ではチャネルに励起された電荷によって欠陥が埋められ、当該電荷がドレイン電流Idに寄与しないため、Id-Vg特性の立ち上がり電圧は本来の立ち上がり電圧よりも高電圧側にシフトする。
【0038】
しきい値電圧Vthは、ドレイン電圧Vdが0.1Vである場合におけるId-Vg特性において、半導体装置に「チャネル幅W/チャネル長L×10nA」の電流が流れるときのゲート電圧Vgである。
【0039】
さらに、ゲート容量Coxは、ゲート絶縁層の膜厚及びゲート絶縁層として用いられる材質の誘電率等に依存する。したがって、同じゲート電圧Vgが供給された場合であっても、ゲート容量Coxが大きいほどチャネルに生じるキャリア濃度が高くなる。そのため、同じゲート電圧で移動度を比較した場合、ゲート容量Coxが大きい方がチャネルへのキャリア発生量が多いため、移動度が高い。つまり、ゲート絶縁層の膜厚によってチャネルに蓄積される電荷量が変わるため、移動度を正しく評価できない可能性がある。
【0040】
上記のように、酸化物半導体層に形成された欠陥の影響及びゲート容量Coxによる移動度への影響を小さくするため、本実施形態では、測定されたId-Vg特性に対して、しきい値電圧Vth及びゲート容量Coxによる規格化が行われる。具体的には、Id-Vg特性において、横軸を「ゲート電圧Vg」から「(ゲート電圧Vg-しきい値電圧Vth)×ゲート容量Cox」に変換することによって当該規格化が行われる。なお、ゲート電圧Vg×ゲート容量Coxはチャネルに励起される電荷量に相当する。
【0041】
詳細は後述するが、上記のように規格化されたId-Vg特性における線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき20cm/Vsを超える。さらに、当該線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき30cm/Vsを超える。
【0042】
さらに、(Vg-Vth)×Coxを横軸とする線形移動度がVg=Vthにおける線形移動度によって規格化された正規化線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき3.0を超える。さらに、当該正規化線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき4.0を超える。
【0043】
[1-3.半導体装置10の各部材の材質]
基板100として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板100が可撓性を備える必要がある場合、基板100として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、樹脂を含む基板が用いられる。基板100として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板100の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物が導入されてもよい。特に、半導体装置10がトップエミッション型のディスプレイである場合、基板100が透明である必要はないため、基板100の透明度を悪化させる不純物が用いられてもよい。表示装置ではない集積回路に半導体装置10が用いられる場合は、基板100としてシリコン基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板、又は、ステンレス基板などの導電性基板など、透光性を備えない基板が用いられる。
【0044】
ゲート電極105、ソース-ドレイン電極200、及び配線109、209として、一般的な金属材料が用いられる。例えば、これらの部材として、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又は化合物が用いられる。ゲート電極105、ソース-ドレイン電極200、及び配線109、209として、上記の材料が単層で用いられてもよく積層で用いられてもよい。
【0045】
ゲート絶縁層110、120、及び絶縁層150、160として、一般的な絶縁性材料が用いられる。例えば、ゲート絶縁層120及び絶縁層150として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの酸素を含む無機絶縁層が用いられる。ゲート絶縁層110及び絶縁層160として、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化酸化アルミニウム(AlN)などの窒素を含む無機絶縁層が用いられる。ただし、ゲート絶縁層110及び絶縁層160として、上記のような酸素を含む無機絶縁層が用いられてもよい。ゲート絶縁層120及び絶縁層150として、上記のような窒素を含む無機絶縁層が用いられてもよい。
【0046】
絶縁層150として、熱処理によって酸素を放出する機能を備える絶縁層が用いられる。つまり、絶縁層150として、酸素を過剰に含む酸化物絶縁層が用いられる。絶縁層150が酸素を放出する熱処理の温度は、例えば、600℃以下、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。つまり、絶縁層150は、例えば、基板100としてガラス基板が用いられた場合における半導体装置10の製造工程で行われる熱処理温度で酸素を放出する。
【0047】
ゲート絶縁層120として、欠陥が少ない絶縁層が用いられる。例えば、ゲート絶縁層120における酸素の組成比と、ゲート絶縁層120と同様の組成の絶縁層(以下、「他の絶縁層」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、ゲート絶縁層120における酸素の組成比の方が当該他の絶縁層における酸素の組成比より当該絶縁層に対する化学量論比に近い。具体的には、ゲート絶縁層120及び絶縁層150の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、ゲート絶縁層120として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比は、絶縁層150として用いられる酸化シリコンにおける酸素の組成比に比べて、酸化シリコンの化学量論比に近い。例えば、ゲート絶縁層120として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0048】
上記のSiO及びAlOは、酸素(O)より少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。SiN及びAlNは、窒素より少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物及びアルミニウム化合物である。
【0049】
金属酸化物層130として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物層130として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられる。「アルミニウムを主成分とする金属酸化物層130」とは、金属酸化物層130に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層130に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0050】
酸化物半導体層140として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。酸化物半導体層140は多結晶構造を有する。多結晶構造を有する酸化物半導体層140は、Poly-OS技術を用いて作製することができる。
【0051】
例えば、酸化物半導体層140として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、及び酸素(O)を含む酸化物半導体を用いることができる。例えば、酸化物半導体層140として、In:Ga:Zn:O=1:1:1:4の組成比を有する酸化物半導体を用いることができる。ただし、本実施形態で使用されるIn、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体は上記の組成に限定されず、上記とは異なる組成の酸化物半導体が用いられてもよい。例えば、移動度を向上させるためにInの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。一方、バンドギャップを大きくし、光照射による影響を小さくするためにGaの比率が上記より大きい酸化物半導体層が用いられてもよい。
【0052】
例えば、Inの比率が上記より大きい酸化物半導体層140として、インジウム(In)を含む2以上の金属を含む酸化物半導体が用いられてもよい。この場合、酸化物半導体層140において、全金属元素に対するインジウム元素の比率が原子比率で50%以上であってもよい。酸化物半導体層140として、インジウムに加えて、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ジルコニア(Zr)、ランタノイドが用いられてもよい。酸化物半導体層140として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0053】
酸化物半導体層140として、In、Ga、Zn、及びOを含む酸化物半導体に他の元素が添加されていてもよく、例えばAl、Snなどの金属元素が添加されていてもよい。上記の酸化物半導体以外にもIn、Gaを含む酸化物半導体(IGO)、In、Znを含む酸化物半導体(IZO)、In、Sn、Znを含む酸化物半導体(ITZO)、及びIn、Wを含む酸化物半導体などが酸化物半導体層140として用いられてもよい。
【0054】
インジウム元素の比率が大きい場合、酸化物半導体層140が結晶化しやすい。上記のように、酸化物半導体層140において、全金属元素に対するインジウム元素の比率が50%以上である材料を用いることで、多結晶構造を有する酸化物半導体層140を容易に得ることができる。インジウム以外の金属元素として、ガリウムを含むことが好ましい。ガリウムは、インジウムと同じ第13族元素に属する。そのため、酸化物半導体層140の結晶性がガリウムによって阻害されることなく、酸化物半導体層140は多結晶構造を有する。
【0055】
酸化物半導体層140の詳細な製造方法は後述するが、酸化物半導体層140は、スパッタリング法を用いて形成することができる。スパッタリング法によって形成される酸化物半導体層140の組成は、スパッタリングターゲットの組成に依存する。酸化物半導体層140が多結晶構造を有する場合であっても、スパッタリングターゲットの組成と酸化物半導体層140の組成とは略一致する。この場合、酸化物半導体層140の金属元素の組成は、スパッタリングターゲットの金属元素の組成に基づき特定することができる。
【0056】
酸化物半導体層140が多結晶構造を有する場合、X線回折(X-ray Diffraction:XRD)法を用いて、酸化物半導体層の組成を特定してもよい。具体的には、XRD法によって取得された酸化物半導体層の結晶構造及び格子定数に基づき、酸化物半導体層の金属元素の組成を特定することができる。さらに、酸化物半導体層140の金属元素の組成は、蛍光X線分析又は電子プローブマイクロアナライザ(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)分析などを用いて特定することもできる。ただし、酸化物半導体層140に含まれる酸素元素は、スパッタリングのプロセス条件などにより変化するため、この限りではない。
【0057】
[1-4.半導体装置10の製造方法]
図3図10を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明するフローチャートである。図4図10は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を示す模式的な断面図である。以下では、図3に示すフローチャートの各ステップを順に説明する。
【0058】
図3のステップS1001(「GE形成」)では、基板100の上にゲート電極105が形成される(図4参照)。同一ステップでゲート電極105とともに配線109が形成される。ゲート電極105及び配線109は、スパッタリング法又は真空蒸着法などのPVD(Physical Vapor Deposition)法によって成膜される。
【0059】
図3のステップS1002(「GI形成」)では、ゲート電極105及び配線109の上にゲート絶縁層110、120が形成される(図4参照)。ゲート絶縁層110、120は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法又はスパッタリング法によって成膜される。例えば、ゲート絶縁層110として窒素を含む絶縁材料が用いられる。この構成によって、基板100から酸化物半導体層140に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。ゲート絶縁層120として酸素を含む絶縁材料が用いられる。
【0060】
ゲート絶縁層120として、欠陥が少ない酸化絶縁層が用いられる。絶縁層120として欠陥が少ない酸化絶縁層を形成するために、350℃以上の成膜温度で絶縁層120を成膜することができる。
【0061】
図3のステップS1003(「MO成膜」)では、ゲート絶縁層110、120の上に、金属酸化物層130が形成される(図5参照)。金属酸化物層130は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0062】
金属酸化物層130として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物層130として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられる。
【0063】
図3のステップS1004(「OS成膜」)では、金属酸化物層130の上に酸化物半導体層140が形成される(図5参照)。酸化物半導体層140は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD)によって成膜される。
【0064】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体層140を結晶化させる場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体層140はアモルファス(酸化物半導体の結晶成分が少ない状態)であることが好ましい。つまり、酸化物半導体層140の成膜方法は、成膜直後の酸化物半導体層140ができるだけ結晶化しない条件であることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体層140が成膜される場合、被成膜対象物(基板100及びその上に形成された構造物)の温度を制御しながら酸化物半導体層140が成膜される。
【0065】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体層140に結晶成分が含まれる。酸化物半導体層140に結晶成分が含まれると、その後のOSアニールによって結晶粒径を大きくすることができない。上記のように被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことで、酸化物半導体層140に含まれる結晶成分を低減ができる。
【0066】
例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。特に、本実施形態の酸化物半導体層140の成膜温度は、50℃以下であることが好ましい。基板100を冷却しながら酸化物半導体層140の形成を行うことで、成膜直後の状態で結晶成分が少ない酸化物半導体層140を得ることができる。本実施形態では、酸化物半導体層140の形成を50℃以下の成膜温度で行い、後述するOSアニールを400℃以上の加熱温度で行う。
【0067】
スパッタリングプロセスでは、酸素分圧10%以下の条件下でアモルファス構造を有する酸化物半導体層140が成膜される。酸素分圧が高いと、酸化物半導体層140に含まれる過剰な酸素によって成膜直後の酸化物半導体層140に結晶成分が含まれてしまう。そのため、酸素分圧が低い条件の下で酸化物半導体層140の成膜が行われることが好ましい。酸素分圧は、例えば、1%以上5%以下又は2%以上4%以下である。酸素分圧が1%未満の条件では、成膜装置内の酸素の分布が不均一となりやすい。その結果、酸化物半導体層中の酸素の組成も不均一となり、結晶成分が多く含まれる酸化物半導体層が成膜される、又は後にOSアニール処理を行っても結晶化しない酸化物半導体層が成膜される。
【0068】
図3のステップS1005(「OSパターン形成」)では、酸化物半導体層140のパターンが形成される(図6参照)。酸化物半導体層140の上にレジストマスク(図示しない)を形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体層140をエッチングすることで当該パターンが形成される。酸化物半導体層140のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングとして、酸性のエッチャントを用いてエッチングを行うことができる。エッチャントとして、例えば、シュウ酸、PAN、硫酸、過酸化水素水、又はフッ酸を用いることができる。これにより、パターン状の酸化物半導体層140を形成することができる。その後、レジストマスクを除去する。
【0069】
パターン状の酸化物半導体層140の形成(すなわち、酸化物半導体層140のパターニング)は、OSアニール前に行われることが好ましい。OSアニール後の酸化物半導体層140は、エッチング耐性が高いため、エッチングによる加工が困難である。
【0070】
図3のステップS1006(「OSアニール」)では、パターン状の酸化物半導体層140が形成された後に、酸化物半導体層140に対して加熱処理(OSアニール)が行われる。OSアニールでは、酸化物半導体層140が形成された基板100が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下、又は350℃以上450℃以下である。到達温度での保持時間は、15分以上120分以下、又は30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、アモルファス構造を有する酸化物半導体層140が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層140(Poly-OS)が形成される。
【0071】
図3のステップS1007(「MOパターン形成」)では、基板100の全面に成膜された金属酸化物層130がパターニングされる(図7参照)。加熱処理によって十分に結晶化された酸化物半導体層140は、高いエッチング耐性を有する。そのため、結晶化された酸化物半導体層140をマスクとして、金属酸化物層130をパターニングすることができる。金属酸化物層130のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングとして、例えば希釈フッ酸(DHF)が用いられる。酸化物半導体層140をマスクとして金属酸化物層130をエッチングすることで、フォトリソグラフィ工程を省略することができる。酸化物半導体層140をマスクとして金属酸化物層130をパターニングする工程を省略してもよい。
【0072】
図3のステップS1008(「コンタクト形成」)では、ゲート絶縁層110、120にコンタクトホール111が形成される(図7参照)。コンタクトホール形成によって、配線109の上面が露出する。配線209と配線109とを接続する必要がない場合には、ステップS1008の工程を省略してもよい。
【0073】
図3のステップS1009(「SD形成」)では、ソース電極201、ドレイン電極203、及び配線209が形成される(図8参照)。ソース電極201、ドレイン電極203、及び配線209は、スパッタリング法によって成膜され、フォトリソグラフィ工程及びエッチング工程によって形成される。コンタクトホール111を介して配線209と配線109とが接続される。
【0074】
ソース電極201、ドレイン電極203、及び配線209のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングとして混酸アルミニウム溶液又は過酸化水素水及びアンモニア水の混合溶液(H/NH溶液)を用いることができる。ドライエッチングとして、六フッ化硫黄ガス(SF)などのフッ素を含むガス又は塩素ガス(Cl)などの塩素を含むガスを用いることができる。
【0075】
Poly-OSは、エッチング耐性に優れる。具体的には、ソース電極201及びドレイン電極203の形成で用いられるエッチング液又はエッチングガスに対するエッチングレートが非常に小さい。これは、Poly-OSが、当該エッチング液又はエッチングガスによってほとんどエッチングされないことを意味する。したがって、半導体装置10では、酸化物半導体層140上に直接導電膜を成膜し、導電膜をパターニングしてソース電極201及びドレイン電極203を形成しても、酸化物半導体層140のチャネル領域はほとんどエッチングされない。その結果、ソース電極201、ドレイン電極203、及び配線209として用いることができる導電材料の選択性が向上する。例えば、ソース電極201及びドレイン電極203を形成するために、MoW、Al、MoWの積層構造、又はMoW合金の単層構造を用いた導電膜をウェットエッチングで加工した場合であっても、酸化物半導体層140が膜減りすることを抑制することができる。
【0076】
図3のステップS1010(「SiOx形成」)では、酸化物半導体層140、ソース電極201、及びドレイン電極203の上に絶縁層150を成膜する(図9参照)。絶縁層150として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁層150として、酸化シリコン(SiO)又は酸化窒化シリコン(SiO)などが用いられる。
【0077】
絶縁層150は、ゲート絶縁層110、120と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。絶縁層150における酸素の組成比を増加させるためには、比較的低温(例えば、350℃未満の成膜温度)で成膜すればよい。さらに、絶縁層150を成膜した後に、絶縁層150の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。
【0078】
図3のステップS1011(「MO成膜」)では、絶縁層150の上に金属酸化物層190を成膜する(図9参照)。金属酸化物層190は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD)によって成膜される。
【0079】
金属酸化物層190として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物層190として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)などの無機絶縁層が用いられる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物層とは、金属酸化物層に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物層190全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物層190に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物層190全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0080】
金属酸化物層190の膜厚は、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下である。金属酸化物層190として、酸化アルミニウムが用いられることが好ましい。酸化アルミニウムは酸素又は水素などのガスに対する高いバリア性を備えている。ここで、バリア性とは、酸素又は水素などのガスが、酸化アルミニウムを透過することを抑制する機能をいう。つまり、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層に移動させないことを意味する。又は、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層に移動させないことを意味する。
【0081】
図3のステップS1012(「酸化アニール」)では、酸化物半導体層140の上に絶縁層150及び金属酸化物層190が成膜された状態で、加熱処理が行われる。ここで、酸化アニールは、例えば、300℃以上450℃以下で行ってもよい。これにより、絶縁層150から放出された酸素が酸化物半導体層140に供給される。金属酸化物層190が基板100を覆うように設けられることで、絶縁層150から放出された酸素が金属酸化物層190の外部に放出されてしまうことを抑制することができる。
【0082】
酸化物半導体層140が成膜されてから酸化物半導体層140の上に絶縁層150が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層140には多くの酸素欠陥が発生する。しかしながら、ステップS1012の酸化アニールによって、絶縁層150から放出した酸素が酸化物半導体層140に供給され、酸素欠陥が修復される。
【0083】
図3のステップS1013(「MO除去」)では、金属酸化物層190が除去される(図10参照)。金属酸化物層190は、例えば、希釈フッ酸(DHF)を用いて除去することができる。
【0084】
図3のステップS1014(「SiNx成膜」)では、絶縁層150の上に絶縁層160が成膜される(図1参照)。絶縁層160として、窒素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、絶縁層160として、窒化シリコン(SiN)又は窒化酸化シリコン(SiN)などが用いられる。絶縁層160は、ゲート絶縁層110と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。
【0085】
以上のステップにより、図1に示す半導体装置10を製造することができる。
【0086】
[2.第2実施形態]
図11図15を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置を用いた表示装置について説明する。以下に示す実施形態では、上記の第1実施形態で説明した半導体装置10が液晶表示装置の回路に適用された構成について説明する。
【0087】
[2-1.表示装置20の概要]
図11は、本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す平面図である。図11に示すように、表示装置20は、アレイ基板300、シール部310、対向基板320、フレキシブルプリント回路基板330(FPC330)、及びICチップ340を有する。アレイ基板300及び対向基板320はシール部310によって貼り合わせられている。シール部310に囲まれた液晶領域22には、複数の画素回路301がマトリクス状に配置されている。液晶領域22は、後述する液晶素子311と平面視において重なる領域である。
【0088】
シール部310が設けられたシール領域24は、液晶領域22の周囲の領域である。FPC330は端子領域26に設けられている。端子領域26はアレイ基板300が対向基板320から露出された領域であり、シール領域24の外側に設けられている。シール領域24の外側とは、シール部310が設けられた領域及びシール部310によって囲まれた領域の外側を意味する。ICチップ340はFPC330上に設けられている。ICチップ340は各画素回路301を駆動させるための信号を供給する。
【0089】
[2-2.表示装置20の回路構成]
図12は、本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。図12に示すように、画素回路301が配置された液晶領域22に対してD3方向の反対方向(列方向)に隣接する位置にはソースドライバ回路302が設けられており、液晶領域22に対してD4方向及びその反対方向(行方向)に隣接する位置にはゲートドライバ回路303が設けられている。ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303は、上記のシール領域24に設けられている。ただし、ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303が設けられる領域はシール領域24に限定されず、画素回路301が設けられた領域の外側であれば、どの領域でもよい。
【0090】
ソースドライバ回路302からソース配線304がD3方向に延びており、D3方向に配列された複数の画素回路301に接続されている。ゲートドライバ回路303からゲート配線305がD4方向に延びており、D4方向に配列された複数の画素回路301に接続されている。
【0091】
端子領域26には端子部306が設けられている。端子部306とソースドライバ回路302とは接続配線307で接続されている。同様に、端子部306とゲートドライバ回路303とは接続配線307で接続されている。FPC330が端子部306に接続されることで、FPC330が接続された外部機器と表示装置20とが接続され、外部機器からの信号によって表示装置20に設けられた各画素回路301が駆動する。
【0092】
第1実施形態に示す半導体装置10は、画素回路301、ソースドライバ回路302、及びゲートドライバ回路303に含まれるトランジスタとして用いられる。
【0093】
[2-3.表示装置20の画素回路301]
図13は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。図13に示すように、画素回路301は半導体装置10、保持容量素子350、及び液晶素子311などの素子を含む。半導体装置10はゲート電極105、ソース電極201、及びドレイン電極203を有する。ゲート電極105はゲート配線305に接続されている。ソース電極201はソース配線304に接続されている。ドレイン電極203は保持容量素子350及び液晶素子311に接続されている。本実施形態では、説明の便宜上、符号「201」で示された電極をソース電極といい、符号「203」で示された電極をドレイン電極というが、符号「201」で示された電極がドレイン電極として機能し、符号「203」で示された電極がソース電極として機能してもよい。
【0094】
[2-4.表示装置20の断面構造]
図14は、本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。図14に示すように、表示装置20は、半導体装置10が用いられた表示装置である。本実施形態では、半導体装置10が画素回路301に用いられた構成を例示するが、半導体装置10がソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303を含む周辺回路に用いられてもよい。以下の説明において、半導体装置10の構成は図1に示す半導体装置10と同様なので、説明を省略する。
【0095】
ソース電極201及びドレイン電極203の上に絶縁層360が設けられている。絶縁層360の上に、複数の画素に共通して設けられる共通電極370が設けられている。共通電極370の上に絶縁層380が設けられている。絶縁層360、380には開口381、382が設けられている。絶縁層380の上及び開口381の内部に画素電極390が設けられている。画素電極390はドレイン電極203に接続されている。絶縁層380の上及び開口382の内部に電極395が設けられている。電極395は、共通電極370とともに保持容量素子350を構成する。
【0096】
図15は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素電極及び共通電極の平面図である。図15に示すように、共通電極370は、平面視で画素電極390と重なる重畳領域と、画素電極390と重ならない非重畳領域とを有する。画素電極390と共通電極370との間に電圧を供給すると、重畳領域の画素電極390から非重畳領域の共通電極370に向かって横電界が形成される。この横電界によって液晶素子311に含まれる液晶分子が動作することで、画素の階調が決定される。
【0097】
[3.第3実施形態]
図16及び図17を用いて、本発明の一実施形態に係る半導体装置を用いた表示装置について説明する。本実施形態では、上記の第1実施形態で説明した半導体装置10が有機EL表示装置の回路に適用された構成について説明する。表示装置20の概要及び回路構成は図11及び図12に示すものと同様なので、説明を省略する。
【0098】
[3-1.表示装置20の画素回路301]
図16は、本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。図16に示すように、画素回路301は駆動トランジスタ11、選択トランジスタ12、保持容量素子210、及び発光素子DOなどの素子を含む。駆動トランジスタ11及び選択トランジスタ12は半導体装置10と同様の構成を備えている。選択トランジスタ12のソース電極は信号線211に接続され、選択トランジスタ12のゲート電極はゲート線212に接続されている。駆動トランジスタ11のソース電極はアノード電源線213に接続され、駆動トランジスタ11のドレイン電極は発光素子DOの一端に接続されている。発光素子DOの他端はカソード電源線214に接続されている。駆動トランジスタ11のゲート電極は選択トランジスタ12のドレイン電極に接続されている。保持容量素子210は駆動トランジスタ11のゲート電極及びドレイン電極に接続されている。信号線211には、発光素子DOの発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線212には、上記の階調信号を書き込む画素行を選択する信号が供給される。
【0099】
[3-2.表示装置20の断面構造]
図17は、本発明の一実施形態に係る表示装置の断面図である。図17に示す表示装置20の構成は、図14に示す表示装置20と類似しているが、図17の表示装置20の絶縁層360よりも上方の構造が図14の表示装置20の絶縁層360よりも上方の構造と相違し、図17の表示装置20では図14の表示装置20の保持容量素子350に係る構成が設けられていない点において相違する。以下、図17の表示装置20の構成のうち、図14の表示装置20と同様の構成については説明を省略し、両者の相違点について説明する。
【0100】
図17に示すように、表示装置20は、絶縁層360の上方に、発光素子DOに含まれる画素電極390、発光層392、及び共通電極394を有する。画素電極390は絶縁層360の上及び開口381の内部に設けられている。画素電極390の上に絶縁層362が設けられている。絶縁層362には開口363が設けられている。開口363は発光領域に対応する。つまり、絶縁層362は画素を画定する。開口363によって露出した画素電極390の上に発光層392及び共通電極394が設けられている。画素電極390及び発光層392は、各画素に対して個別に設けられている。一方、共通電極394は、複数の画素に共通して設けられている。発光層392は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。
【0101】
第2実施形態及び第3実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置を液晶表示装置及び有機EL表示装置に適用した構成について例示したが、これら以外の表示装置(例えば、有機EL表示装置以外の自発光型表示装置又は電子ペーパ型表示装置)に当該半導体装置を適用してもよい。また、中小型の表示装置から大型の表示装置まで、特に限定することなく上記半導体装置の適用が可能である。
【実施例0102】
[半導体装置10の電気特性]
図18図26を用いて、上記実施形態に係る半導体装置10の電気特性を説明する。図18は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性(Id-Vg特性)を示す図である。図18に示す各Id-Vg特性は、縦軸であるIdが対数表示された型対数グラフである。当該電気特性の測定条件は以下の通りである。図18では、図1に示す半導体装置10において、ゲート絶縁層110、120の膜厚が異なる半導体装置10の電気特性が示されている。
【0103】
[測定条件]
・チャネル領域CHのサイズ:W/L=6.0μm/6.0μm
・ソース-ドレイン間電圧:0.1V、10V
・ゲート電圧:-40V~+40V(特性Fは-30V~+30V)
・測定環境:室温、暗室
【0104】
図18に示す6個の電気特性は、ゲート絶縁層110、120の膜厚が異なる半導体装置10の電気特性である。つまり、これらの電気特性を示す半導体装置10は、異なるゲート容量Coxを有する。本実施例において、ゲート絶縁層110として窒化シリコンが用いられ、ゲート絶縁層120として酸化シリコンが用いられている。図中では、窒化シリコン\酸化シリコンの膜厚が表記されている。当該膜厚は、図18の左上から右に向かって、窒化シリコン\酸化シリコン=400\100nm(特性A)、300\100nm(特性B)、150\100nm(特性C)である。同様に、当該膜厚は、図18の左下から右に向かって、窒化シリコン\酸化シリコン=150\50nm(特性D)、100\50nm(特性E)、50\50nm(特性F)である。
【0105】
図18には、各膜厚条件におけるゲート容量Coxが表記されている。ゲート容量Coxは、図18の左上から右に向かって、1.0e-8[F/cm](特性A)、1.3e-8[F/cm](特性B)、1.9e-8[F/cm](特性C)である。同様に、ゲート容量Coxは、図18の左下から右に向かって、2.5e-8[F/cm](特性D)、3.2e-8[F/cm](特性E)、4.5e-8[F/cm](特性F)である。ゲート容量Coxは、窒化シリコンの比誘電率として6.5を用い、酸化シリコンの比誘電率として4.1を用いて計算された。
【0106】
図18の各グラフ中に示す実線の水平線は、ドレイン電流Idが10-7[A]であり、移動度が50[cm/Vs]である目盛りの位置に示されている。ドレイン電流Idは、目盛りごとに1桁電流値が変化する。移動度は、目盛りごとに10[cm/Vs]ずつ値が変化する。図18の各グラフ中に示す実線の鉛直線は、ゲート電圧が0[V]である目盛りの位置に示されている。ゲート電圧は、目盛りごとに10[V]ずつ値が変化する。
【0107】
図18の各グラフにおいて、左向きの矢印が付された電気特性は、半導体装置10のId-Vg特性を示す。各グラフにおけるId-Vg特性は、2種類表示されている。2種類のId-Vg特性のうち、相対的に電流が大きなId-Vg特性(実線)はドレイン電圧Vdが10Vの場合の特性であり、相対的に電流が小さなId-Vg特性(点線)はドレイン電圧Vdが0.1Vの場合の特性である。図18の各グラフにおいて、右向きの矢印が付された電気特性は、ドレイン電圧Vdが0.1Vの場合のId-Vg特性から計算された半導体装置10の移動度(線形移動度)を示す。図18に示すように、ほとんどの条件において、特段異常がない良好な電気特性が得られており、線形移動度が30[cm/Vs]以上である。
【0108】
なお、窒化シリコン\酸化シリコン=50\50nmの条件における半導体装置10では、ゲート電極105に+30Vより高い電圧、又は-30Vより低い電圧を印加すると半導体装置10が破壊されてしまうため、ゲート電極105に印加される電圧は-30V~+30Vである。
【0109】
図19は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の線形移動度を示す図である。図19に示す線形移動度は、図18に示すドレイン電圧Vdが0.1Vの場合のId-Vg特性から得られる移動度の最大値をプロットしたグラフである。図19において「○」で示されたプロットは、第1実施形態に係る半導体装置10の移動度を示す。「×」で示されたプロットは、参考データとして、従来の半導体装置の移動度を示す。
【0110】
第1実施形態に係る半導体装置10では、ゲート容量Coxの値が大きいほど線形移動度が大きい傾向がある。いずれの条件においても、半導体装置10の線形移動度は、従来の半導体装置の線形移動度よりも大きい。
【0111】
図20及び図21は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の電気特性におけるゲート容量の依存性を示す図である。図20は、ドレイン電流Id(縦軸)が線形表示された線形グラフである。図21は、ドレイン電流Id(縦軸)が対数表示された型対数グラフである。図20及び図21に示すId-Vg特性のうち実線で表示された特性A~Fは、第1実施形態に係る半導体装置10の特性である。図20及び図21において、点線で表示された特性は、参考データとして、従来の半導体装置の特性(従来の特性)である。図20及び図21に示すように、ゲート絶縁層110、120の膜厚が小さい(ゲート容量Coxが大きい)ほどId-Vg特性の立ち上がりが急峻かつ多くの電流を流す。
【0112】
図22は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の線形移動度におけるゲート容量の依存性を示す図である。図22に示すように、線形移動度はId-Vg特性におけるドレイン電流Idと同様の傾向を示しており、ゲート絶縁層110、120の膜厚が大きいほど線形移動度が小さく、ゲート絶縁層110、120の膜厚が小さいほど線形移動度が大きい傾向がある。いずれの条件においても、半導体装置10の線形移動度は、従来の酸化物半導体が用いられた半導体装置の線形移動度よりも大きい。
【0113】
しかし、第1実施形態で説明したとおり、上記のId-Vg特性は、酸化物半導体層に形成された欠陥の影響及びゲート容量Coxによる移動度への影響を受けている。したがって、これらの影響を小さくするために、上記のId-Vg特性に対して、しきい値電圧Vth及びゲート容量Coxによる規格化を行った。その結果を図23図25に示す。具体的には、図20図22に対して横軸を「ゲート電圧Vg」から「(ゲート電圧Vg-しきい値電圧Vth)×ゲート容量Cox」に変換することで図23図25に示すId-Vg特性及び線形移動度を得た。図23図25における特性A’~F’は、図20図22における特性A~Fに対応する。
【0114】
図23図25に示すように、上記のように規格化を行うことで、ゲート容量Coxによる影響が小さくなり、Id-Vg特性及び線形移動度において、特性A’~F’の差が小さくなり、特性A’~F’と従来の特性との差が顕著になった。図25に示すように、規格化されたId-Vg特性における線形移動度は、特性A’~F’のいずれの場合であっても、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき20cm/Vs、25cm/Vs、又は30cm/Vsを超える。さらに、当該線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき30cm/Vs又は35cm/Vsを超える。上記の線形移動度の値は、従来の特性が達成することができない値である。
【0115】
図26は、本発明の一実施形態に係る半導体装置の正規化線形移動度におけるゲート容量の依存性を示す図である。上記の通り、正規化線形移動度とは、(Vg-Vth)×Coxを横軸とする線形移動度を、Vg=Vthにおける線形移動度によって規格化した移動度である。図26に示す正規化線形移動度は、図25に示す線形移動度と同様の挙動を示す。正規化線形移動度は、特性A’~F’のいずれの場合であっても、(Vg-Vth)×Cox=5×10-7C/cmのとき3.0、3.5、又は4.0を超える。さらに、当該正規化線形移動度は、(Vg-Vth)×Cox=1×10-6C/cmのとき4.0又は4.5を超える。上記の正規化線形移動度の値は、従来の特性が達成することができない値である。
【0116】
上記のように、第1実施形態に係る半導体装置10では、ゲート絶縁層110、120の膜厚に伴うゲート容量Coxによらず、従来の半導体装置では達成することができないような線形移動度及び正規化線形移動度を得ることができる。
【0117】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、又は工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0118】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0119】
10:半導体装置、 11:駆動トランジスタ、 12:選択トランジスタ、 20:表示装置、 22:液晶領域、 24:シール領域、 26:端子領域、 100:基板、 105:ゲート電極、 109:配線、 110、120:ゲート絶縁層、 111:コンタクトホール、 130:金属酸化物層、 140:酸化物半導体層、 150、160:絶縁層、 190:金属酸化物層、 200:ソース-ドレイン電極、 201:ソース電極、 203:ドレイン電極、 209:配線、 210:保持容量素子、 211:信号線、 212:ゲート線、 213:アノード電源線、 214:カソード電源線、 300:アレイ基板、 301:画素回路、 302:ソースドライバ回路、 303:ゲートドライバ回路、 304:ソース配線、 305:ゲート配線、 306:端子部、 307:接続配線、 310:シール部、 311:液晶素子、 320:対向基板、 330:フレキシブルプリント回路基板、 340:ICチップ、 350:保持容量素子、 360:絶縁層、 362:絶縁層、 363:開口、 370:共通電極、 380:絶縁層、 381:開口、 382:開口、 390:画素電極、 392:発光層、 394:共通電極、 395:電極、 DO:発光素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26