IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-制御装置 図1
  • 特開-制御装置 図2
  • 特開-制御装置 図3
  • 特開-制御装置 図4
  • 特開-制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163592
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20241115BHJP
   B60W 20/11 20160101ALI20241115BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60W20/11 ZHV
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079343
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神 義幸
(72)【発明者】
【氏名】荒木 拓海
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】山崎 義暢
(72)【発明者】
【氏名】三浦 駿太郎
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 聡宏
(72)【発明者】
【氏名】米田 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章也
(72)【発明者】
【氏名】小栗 昌己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 奨
(72)【発明者】
【氏名】草野 大志
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202BB00
3D202BB05
3D202CC12
3D202DD07
3D202DD45
(57)【要約】
【課題】リバース走行の際に不必要にエンジン始動が行われることを解消する。
【解決手段】ハイブリッド型車両に搭載される制御装置により、リバース走行の開始時に、現在の位置情報に対応して記憶されている過去のリバース走行時の情報に基づいてエンジン駆動が必要か否かの判定を行い、必要と判定された場合にエンジン始動制御を実行させるようにする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン駆動走行とモータ駆動走行が可能とされるハイブリッド型車両に搭載される制御装置であって、
一又は複数のプロセッサと、
前記プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された一又は複数の記憶媒体と、を備え、
前記プログラムは、一又は複数の命令を含み、
前記命令は、前記プロセッサに、
リバース走行の開始時に現在の位置情報に対応して記憶されている過去のリバース走行時の情報に基づいてエンジン駆動が必要か否かを判定する処理と、エンジン駆動が必要と判定された場合にエンジンを始動させる処理と、を実行させる
制御装置。
【請求項2】
前記命令は、前記プロセッサに、
リバース走行の開始時において、現在位置が、過去のリバース走行時の情報により高負荷スイッチバックを行った場所と判定した場合に、エンジン駆動が必要と判定させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記命令は、前記プロセッサに、
リバース走行の開始時において、現在位置での過去のリバース走行時の情報に基づいて計算される必要駆動力が、現在の放電電力上限値に基づいて計算される発揮可能駆動力を越える場合に、エンジン駆動が必要と判定させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記命令は、前記プロセッサに、
リバース走行の開始時において、現在位置での過去のリバース走行時の情報に基づいて計算される走行距離が、現在の電池残量に基づいて計算される走行可能距離を越える場合に、エンジン駆動が必要と判定させる
請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記命令は、前記プロセッサに、
リバース走行の開始時において、現在位置が、過去のリバース走行時の情報により高負荷スイッチバックを行った場所と判定した場合には、リバース走行利用期間中にエンジン駆動を停止させないようにする処理を実行させる
請求項1から請求項4のいずれかに記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は制御装置に関し、特にハイブリッド車両がリバース走行を行う際の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
HEV(Hybrid Electric Vehicle)と呼ばれるいわゆるハイブリッド車両では、走行時にモータの駆動力とエンジンの駆動力が、選択的に或いは共に走行に用いられるように逐次制御される。
【0003】
下記特許文献1には、位置情報に応じて走行モードを切り替える技術が開示されている。下記特許文献2には、ある地点でリバース登坂した経験を基にバッテリー制御する構成として、リバース登坂を行なった際の放電電力の最大値を確保するために必要であった蓄電装置のSOC(State Of Charge)の必要量を取得することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-232671号公報
【特許文献2】特許第6805748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HEVとしての車種においては、リバース走行の場合、車両が停止していなければエンジン始動ができないシステムを持つものがある。このような車種の場合、シフトレバーがリバースポジションとされる際に、エンジン始動を行うようにすることが多い。リバース走行中に駆動力が足りなくなった場合や、SOCが低下した場合に備えるためである。ところがこのため、運転者がシフトポジションにするたびにエンジンが始動されてしまうことになる。
【0006】
またモータによるリバース走行中にエンジン始動が可能な車種でも、リバース走行時に無用なエンジン始動を避けるようにしたい。例えば駐車場に入るときなどは、さほどの駆動力は不要で、走行距離も少ないため、通常のアルゴリズムでエンジン始動されると、結果的に無用なエンジン始動となることもある。
【0007】
そこで本発明はリバース走行の場合においてエンジン始動をより適切に実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態は、エンジン駆動走行とモータ駆動走行が可能とされるハイブリッド型車両に搭載される制御装置であって、一又は複数のプロセッサと、前記プロセッサによって実行されるプログラムが記憶された一又は複数の記憶媒体と、を備え、前記プログラムは、一又は複数の命令を含み、前記命令は、前記プロセッサに、リバース走行の開始時に現在の位置情報に対応して記憶されている過去のリバース走行時の情報に基づいてエンジン駆動が必要か否かを判定する処理と、エンジン駆動が必要と判定された場合にエンジンを始動させる処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、過去にエンジン駆動によるリバース走行が不要であった場所などにおいて、リバース走行を行う際にエンジンが始動されないようになる。従って不要なエンジン駆動が抑制されて騒音や振動が生じる機会を低減し、また燃費性能も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態の車両内の制御構成のブロック図である。
図2】実施の形態のHEV制御部の機能の説明図である。
図3】実施の形態のリバース走行開始時のエンジン始動の判定アルゴリズムの説明図である。
図4】実施の形態のリバース走行データの記憶処理のフローチャートである。
図5】実施の形態のリバース走行開始時のエンジン始動判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は実施の形態のHEVとしての車両1に搭載される制御構成例を示している。
【0012】
車両1は制御構成として、HEV制御部2、エンジン制御部3、モータ制御部4、トランスミッション制御部5、操舵制御部6、ブレーキ制御部7、位置情報処理部8、電池制御部9、バス15などを備えている。
また車両の駆動用モータに電源電圧を供給する車載電池部10を備えている。
なお図1は車両1の主な制御構成を示したもので、これら以外の各種の構成も備える。また必ずしも図1の構成の全てが設けられるものでもない。
【0013】
HEV制御部2、エンジン制御部3、モータ制御部4、トランスミッション制御部5、操舵制御部6、ブレーキ制御部7、位置情報処理部8、電池制御部9は、それぞれCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイクロコンピュータ(プロセッサ)を備えて構成され、互いがバス15を介してデータ通信可能に接続されている。
【0014】
HEV制御部2は、要求駆動力に基づき、エンジン制御部3とモータ制御部4に対する指示を行って車両1の動作をコントロールする。
具体的に、HEV制御部2は、要求駆動力に基づいて、エンジンに要求される駆動力であるエンジン要求駆動力と、モータジェネレータに要求される駆動力であるモータ要求駆動力とを算出し、エンジン要求駆動力に基づく駆動指示をエンジン制御部3に対して行うと共にモータ要求駆動力に基づく駆動指示をモータ制御部4に対して行う。
【0015】
エンジン制御部3は、エンジン要求駆動力に応じて、エンジン関連アクチュエータとして設けられた各種アクチュエータを制御する。エンジン関連アクチュエータとしては、例えばスロットル弁を駆動するスロットルアクチュエータや燃料噴射を行うインジェクタ等のエンジン駆動に係る各種のアクチュエータが設けられる。エンジン制御部3は、エンジン要求駆動力に基づき、燃料噴射タイミング、燃料噴射パルス幅、スロットル開度等の制御を行って、エンジン出力を制御する。また、エンジン制御部3は、エンジンの始動/停止の制御を行う。
【0016】
モータ制御部4は、モータ要求駆動力に応じて、不図示のモータ駆動部を制御することで、モータジェネレータの動作制御を行う。モータ駆動部は、モータジェネレータの駆動回路を有する電気回路部として構成されている。モータ制御部4は、モータ要求駆動力に基づき、モータジェネレータを力行回転させるべき場合はモータ駆動部に対する指示を行ってモータジェネレータを力行回転させ、モータジェネレータを回生回転させるべき場合にはモータ駆動部に対する指示を行ってモータジェネレータを回生回転させる。
またモータ制御部4は、モータジェネレータの電源として車両1が備える走行用バッテリー(車載電池部10における電池11)の充電状態などの情報(SOC)に応じてモータジェネレータの出力制限などを行う。
【0017】
トランスミッション制御部5は、車両1に設けられた所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、トランスミッション関連アクチュエータとして設けられた各種のアクチュエータを制御する。トランスミッション関連アクチュエータとしては、例えば車両1が有する自動変速機の変速制御を行うための変速用アクチュエータや、前後進切替機構の動作を制御するための前後進切替用アクチュエータ等が設けられる。
【0018】
操舵制御部6は、運転者のハンドル操作等に基づいて操舵アクチュエータ(例えばパワーステアリングモータ等、操舵角を変更可能に設けられたアクチュエータ)の駆動制御を行い、操舵角の制御を行う。
【0019】
ブレーキ制御部7は、車両1に設けられた所定のセンサからの検出信号や操作子による操作入力情報等に基づき、ブレーキ関連アクチュエータとして設けられた各種のアクチュエータを制御する。ブレーキ関連アクチュエータとしては、例えば、ブレーキブースターからマスターシリンダへの出力液圧やブレーキ液配管内の液圧をコントロールするための液圧制御アクチュエータ等、ブレーキ関連の各種のアクチュエータが設けられる。
【0020】
位置情報処理部8は、車両1の位置を特定する処理を行う。例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)により取得する緯度・経度の情報として車両1の現在位置を判定する。また現在位置の情報から地図情報を参照することで、現在位置の環境を判定することができる。例えば道路上、トンネル内、屋内駐車場、自宅ガレージ、屋外駐車場など、現在位置がどのような場所であるかを判定することができる。
【0021】
電池制御部9は車載電池部10に関しての制御、例えば電池11の冷却動作を実行させる制御などを行う。また電池制御部9はSOCを算出し、例えばモータ制御部4やHEV制御部2などに提供する。また電池制御部9は現在の電池11の容量に応じた瞬時出力である放電電力上限値Woutをモータ制御部4やHEV制御部2などに提供する。
【0022】
車載電池部10は電池11とその周辺の充放電回路や冷却機構などにより構成されている。
【0023】
図2には、HEV制御部2に設けられる、エンジンの始動/停止に関する制御を行う機能として、リバース走行データ記憶処理部21、リバース時エンジン始動判定部22、エンジン始動制御部23を示している。これらはHEV制御部2においてソフトウェアプログラムで実現される処理機能をブロック的に示したものであり、それぞれが独立したプログラムモジュールと考えてもよいし、1つのプログラムにおける処理機能を分けて示したものと考えても良い。
【0024】
また図2には記憶部24を示しているが、記憶部24はHEV制御部2の内部記憶部でもよいし、外部の記憶部でもよい。記憶部24はHEV制御部2がデータの書き込み及び読み出しが可能な記憶領域であればよい。
【0025】
エンジン始動制御部23は、通常の前進走行時(フォワード走行時)に、エンジンの始動や停止の判定を行い、図1のエンジン制御部3に対して判定に応じた制御信号SGmを出力するアルゴリズムである。
詳述は避けるが、例えば走行速度、道路勾配、要求トルク、SOC、放電電力上限値Wout、シフトポジション、現在位置情報等の各種判定要素情報を入力し、それらに基づいてエンジン始動又はエンジン停止を判定する。つまりHEVにおいて通常備えられている、エンジンについての始動/停止の制御アルゴリズムを、ここではエンジン始動制御部23として示している。但し本実施の形態では、エンジン始動制御部23は、リバース走行時には、次に述べるリバース時エンジン始動判定部22による判定に従って、エンジン始動制御を行うものとしている。
【0026】
本実施の形態の車両1では、エンジン始動制御部23に加えてリバース走行に関するリバース走行データ記憶処理部21、リバース時エンジン始動判定部22を備える。
【0027】
リバース走行データ記憶処理部21は、リバース走行利用期間における各種データを生成し、記憶部24に記憶させる処理機能である。
なお本開示では「リバース走行利用期間」という用語を用いるが、これはリバース走行を行っている期間を指す。但しリバース走行(後進)とフォワード走行(前進)を細かく繰り返す、いわゆるスイッチバックも想定し、そのフォワード走行の期間も含めてスイッチバック走行を行っている期間についても「リバース走行利用期間」とする。
【0028】
リバース走行データ記憶処理部21が記憶部24に記憶させるリバース走行データとしては、例えば位置情報処理部8から供給される現在の位置情報、リバース走行利用期間の走行距離、リバース走行利用期間に必要になった駆動力などを含む。
【0029】
リバース時エンジン始動判定部22は、リバース走行開始時点で、現在の位置情報において、記憶部24に過去に記憶されたリバース走行データを参照し、エンジン始動判定を行う処理機能である。例えば判定処理に応じてエンジン始動フラグF1やEV禁止フラグF2を設定し、エンジン始動制御部23に提供する。
【0030】
リバース時エンジン始動判定部22が実行する処理を図3に模式的に示す。リバース時エンジン始動判定部22では、処理として高負荷スイッチバック判定50、推定必要駆動力取得60、発揮可能駆動力算出61、比較62、推定走行距離取得70、走行可能距離算出71、比較72、論理積80という各処理によってエンジン始動フラグF1、EV禁止フラグF2が設定される。
【0031】
エンジン始動フラグF1は、リバースポジションとなったときにエンジン始動制御部23にエンジン始動を指示するフラグである。
EV禁止フラグF2は、エンジン始動制御部23に、リバース走行開始後、前進走行を含む所定時間、エンジン停止によるモータ駆動力のみによる走行とすることを禁止させるフラグである。
【0032】
高負荷スイッチバック判定50は、記憶部24から読み出した、現在位置における過去のリバース走行データから、現在位置で過去に駆動力の負荷の高いスイッチバック走行を行ったか否かを判定する処理である。
例えば高負荷スイッチバック判定50では、過去のリバース走行データにより、スイッチバック回数が所定数より多いか否かであるとか、上り勾配があるなどして所定以上の駆動力を要したか否かなどを判定要素として、現在位置が、高負荷のスイッチバックを行う場所であるか否かを判定する。
高負荷スイッチバック判定50の処理により、高負荷スイッチバックと判定された場合は、EV禁止フラグF2はオンとされ、また論理積80を介してエンジン始動フラグF1もオンとされる。
【0033】
推定必要駆動力取得60、発揮可能駆動力算出61、比較62は、駆動力の観点の判定処理である。推定必要駆動力取得60の処理で、過去のリバース走行データに基づいて現在位置から始まるリバース走行利用期間で必要とされる駆動力が求められる。発揮可能駆動力算出61の処理で、現在の放電電力上限値Woutから現在の発揮可能駆動力が求められる。
そして比較62により、推定必要駆動力が発揮可能駆動力を越えていると判定された場合、論理積80を介してエンジン始動フラグF1がオンとされる。
【0034】
推定走行距離取得70、走行可能距離算出71、比較72は、走行距離の観点の判定処理である。推定走行距離取得70の処理で、過去のリバース走行データに基づいて現在位置から始まるリバース走行利用期間で必要とされる走行距離が求められる。走行可能距離算出71の処理で、現在のSOCから現在のモータによる走行可能距離が求められる。そして比較72により、推定走行距離が走行可能距離を越えていると判定された場合、論理積80を介してエンジン始動フラグF1がオンとされる。
【0035】
図2に示したエンジン始動制御部23は、通常のフォワード走行時は上述のように所定の判定処理でエンジンの始動/停止を判定するが、リバース走行開始においては、リバース時エンジン始動判定部22により設定されたエンジン始動フラグF1に応じてエンジン始動の制御を行う。
【0036】
以下、これらの処理機能を備えたHEV制御部2の具体的な処理例を説明する。
図4は、HEV制御部2がリバース走行データ記憶処理部21の機能によって実行する処理例である。
【0037】
HEV制御部2は、ステップS101で運転者によりシフトレバーがリバースポジションになったか否かを監視する。なお自動運転を想定し、自動運転アルゴリズムによりリバースポジションになったことを監視するものとしてもよい。
リバースポジションとなることで、HEV制御部2はリバース走行利用期間が開始されると判定する。
リバースポジションになっていなければHEV制御部2は図4の処理を終了し、例えば所定時間後、再びステップS101から開始する。
【0038】
ステップS102でHEV制御部2は、リバース走行利用期間を終了したか否かを判定する。例えばシフトレバーがリバースポジションから他のポジション(ドライブ、ニュートラル、パーキング等のポジション)に変更されてから所定時間を経過した時点で、リバース走行利用期間の終了と判定することが考えられる。所定時間とは、例えばスイッチバック走行ではないと判定できる時間とする。これは、スイッチバックの過程のフォワード走行期間をリバース走行利用期間に含めるためである。
【0039】
HEV制御部2は、リバース走行利用期間はステップS103,S104,S105を繰り返し実行する。
ステップS103でHEV制御部2は現在位置情報を取得する。
ステップS104でHEV制御部2は、リバース走行利用期間の開始時点からの走行距離を計算/更新する。
ステップS105でHEV制御部2は、現在の駆動力を取得し、リバース走行利用期間内の最大の駆動力を更新する。
【0040】
ステップS102でリバース走行利用期間を終了したと判定したら、HEV制御部2はステップS106で、リバース走行利用期間に得た情報から、記憶部24に記憶させるリバース走行データを生成する。
例えばリバース走行利用期間のおける実際の終了時点を確定させる。リバースポジションではなくなって所定時間を経過してリバース走行利用期間の終了とするため、最後にリバースポジションではなくなったタイミングを実際のリバース走行利用期間の終了時点とする。そしてその終了時点以後にステップS103からステップS105で得られたデータは破棄する。これにより破棄されていないデータは、実際のリバース走行利用期間に取得されたデータとなる。
【0041】
HEV制御部2はリバース走行利用期間に取得されたデータから、まず記憶すべき位置情報を生成する。リバース走行利用期間の開始時点の位置情報だけでもよいが、リバース走行利用期間に走行したある程度の範囲の位置情報をリバース走行データに含めてもよい。またリバース走行利用期間における各時点の駆動力をリバース走行データに含めてもよいし、最大の駆動力、平均の駆動力などをリバース走行データに含めても良い。またリバース走行利用期間における走行距離をリバース走行データに含める。
【0042】
またスイッチバック走行の判定のために、リバース走行利用期間中の各時点のシフトチェンジの情報や各時点の駆動力をリバース走行データに含める。或いは、各時点の情報からスイッチバック走行が行われたか否かを判定し、スイッチバック走行有無の情報をリバース走行データに含めてもよい。
【0043】
ステップS107でHEV制御部2は、これらのようにして生成したリバース走行データを記憶部24に記憶する。
これにより、リバース走行が行われる毎に、その位置情報に対応してリバース走行データが記憶される。自宅ガレージなどで何度も同じ場所でリバース走行を行うと、各リバース走行機会のリバース走行データが蓄積される。そのため過大なデータ量となることを避けるため、同一箇所では、最新の所定数のリバース走行データを記憶し、古いリバース走行データは消去するとよい。これにより、同一箇所での道路状況やガレージ形態の変化なども反映したデータとなる。
【0044】
次に図5により、HEV制御部2が、リバース時エンジン始動判定部22の機能によって実行するエンジン始動フラグF1、EV禁止フラグF2の設定処理例を説明する。
HEV制御部2は図5の処理を例えば所定時間毎に繰り返し実行する。
【0045】
HEV制御部2は、ステップS201では、リバース走行の開始タイミングか否かを判定する。これはシフトレバーがリバースポジションになった最初のタイミングを監視する処理である。リバース走行の開始タイミングでなければHEV制御部2はステップS205でフラグリセットを行って図5の処理を終了する。フラグリセットとは、エンジン始動フラグF1、EV禁止フラグF2をリセットする処理である。
【0046】
リバース走行利用期間の開始タイミングと判定した場合、HEV制御部2はステップS202で現在の位置情報を取得する。
【0047】
ステップS203でHEV制御部2は、記憶部24に、現在の位置情報に対応するリバース走行データが記憶されているか否かを判定する。過去に、現在と同じ場所でリバース走行が行われ、図4の処理が実行されていれば、リバース走行データが記憶されているが、現在と同じ場所でリバース走行が行われていなければ、リバース走行データは記憶されていない。
なお現在位置と同じ場所とは、厳密に緯度・経度が一致する場所だけでなく、ほぼ同じと判定できる範囲であればよい。
【0048】
リバース走行データが記憶されていなければ、HEV制御部2は図5の処理を終える。一方、記憶部24に現在位置についての過去のリバース走行データが記憶されている場合は、HEV制御部2はステップS204に進み、記憶部24に記憶されている1又は複数のリバース走行機会のリバース走行データを読み出す。
【0049】
ステップS207でHEV制御部2は、リバース走行データを参照して、過去に現在位置で高負荷のスイッチバック走行が行われたか否かを判定する。高負荷のスイッチバック走行が行われたと判定した場合は、HEV制御部2はステップS220に進み、EV禁止フラグF2をオンとし、さらにステップS221でエンジン始動フラグF1をオンとして図5の処理を終える。
【0050】
HEV制御部2は、過去のリバース走行データから、現在位置では高負荷のスイッチバック走行が行われていないと判定した場合は、ステップS208に進み、現在の放電電力上限値Woutを取得し、現在のモータ駆動によるリバース走行での発揮可能駆動力を計算する。
【0051】
そしてステップS209で、現在の発揮可能駆動力よりも高い駆動力が必要か否かを判定する。即ち過去のリバース走行データから、現在位置における推定必要駆動力を取得又は算出し、推定必要駆動力が発揮可能駆動力を上回っているか否かを判定する。現在の発揮可能駆動力よりも高い駆動力が必要と判定した場合は、HEV制御部2はステップS221に進み、エンジン始動フラグF1をオンとして図5の処理を終える。
【0052】
現在の発揮可能駆動力よりも高い駆動力は必要ではないと判定した場合は、HEV制御部2はステップS210で、現在のSOCを取得し、現在のモータ駆動によるリバース走行での走行可能距離を計算する。
【0053】
そしてステップS211で、走行可能距離より長い距離の走行が行われると予測されるか否かを判定する。即ち過去のリバース走行データから、現在位置における推定走行距離を取得又は算出し、推定走行距離が走行可能距離を上回っているか否かを判定する。現在の走行可能距離より推定走行距離が長い場合は、HEV制御部2はステップS221に進み、エンジン始動フラグF1をオンとして図5の処理を終える。
【0054】
現在の走行可能距離より推定走行距離が短い場合は、HEV制御部2はエンジン始動フラグF1をオフとしたまま図5の処理を終える。
【0055】
リバース走行の開始時、例えば運転者がシフトレバーをリバースポジションとしたときに、以上の図5の処理でフラグ設定が行われる。そしてHEV制御部2はエンジン始動制御部23の機能により、リバース走行開始時は、エンジン始動フラグF1に従ってエンジン始動制御を行う。これにより、リバース走行の開始時に過去の状況から、モータ駆動力のみのリバース走行が可能とあると判定されれば、エンジン始動は行われない。
【0056】
また、高負荷のスイッチバック走行が行われる場所であった場合は、EV禁止フラグF2により、エンジン始動制御部23は、スイッチバック過程の前進時も含めて一定時間、モータ駆動のみに切り替えることをしない。従ってスイッチバック中のリバース走行でないときに、エンジン停止が発生せず、頻繁にエンジン始動/停止が生じることはない。なお、EV禁止フラグF2による禁止時間は、固定の時間でもよいが、リバース走行データから過去のスイッチバックの時間を判定し、その判定に応じて設定されるものでもよい。
【0057】
以上の実施の形態の構成及び効果をまとめると次のようになる。
実施の形態の車両1の制御装置であるHEV制御部2は、リバース走行の開始時に、現在の位置情報に対応して記憶されている過去のリバース走行データに基づいてエンジン駆動が必要か否かの判定を行い、必要と判定された場合にエンジン始動制御を実行させるようにしている。
これにより、過去にエンジン駆動によるリバース走行が不要であった場所などにおいて、リバース走行を行う際にエンジンが始動されないようになる。例えば自宅ガレージ内等で不必要なエンジン始動を避けることができるため、HEVの振騒性能、実用燃費性能を向上させることができる。
【0058】
実施の形態では、HEV制御部2は、リバース走行の開始時において、現在位置が、過去のリバース走行時の情報により高負荷スイッチバックを行った場所と判定した場合に、エンジン駆動が必要と判定させるものとした。高負荷のスイッチバックを行った箇所であれば、今回のリバース走行利用期間も高負荷のスイッチバックを行う可能性が高いため、エンジン始動をさせておくことで、リバース走行利用期間の途中で駆動力が不足することを避けることができる。
【0059】
実施の形態では、HEV制御部2は、リバース走行の開始時において、現在位置での過去のリバース走行時の情報に基づいて計算される必要駆動力が、現在の放電電力上限値Woutに基づいて計算される発揮可能駆動力を越える場合に、エンジン駆動が必要と判定させるものとした。
過去のリバース走行時の情報を記憶しておくことで、現在の場所でのリバー走行利用期間で必要な駆動力を推定できる。推定される必要な駆動力を現在の放電電力上限値Woutから計算される発揮可能駆動力と比較することで、発揮可能駆動力が十分であればエンジン始動不要と判定できる。一方で、発揮可能駆動力が推定される必要な駆動力に満たない場合は、エンジン始動を行うことで、リバース走行利用期間の途中で駆動力が不足することを避けることができる。
【0060】
実施の形態では、HEV制御部2は、リバース走行の開始時において、現在位置での過去のリバース走行時の情報に基づいて計算される走行距離が、現在の電池残量に基づいて計算される走行可能距離を越える場合に、エンジン駆動が必要と判定させるものとした。
過去の情報から、現在の場所でのリバー走行利用期間で必要な走行距離を推定できる。推定される走行距離と現在のSOCから計算される走行可能距離と比較して、走行可能距離が十分足りていればエンジン始動不要と判定できる。一方で、走行可能距離が推定される走行距離に満たない場合は、エンジン始動を行うことで、リバース走行利用期間の途中で電池残量不足が生ずることを避けることができる。例えば長い路地をバックしていく場所なども想定して、適切にエンジン始動を行うか否かを判定できる。
【0061】
実施の形態では、HEV制御部2は、リバース走行の開始時において、現在位置が、過去のリバース走行時の情報により高負荷スイッチバックを行った場所と判定した場合には、リバース走行利用期間中にエンジン駆動を停止させない制御を実行させるものとした。
例えばEV禁止フラグF2により、エンジン停止とならないようにすることで、スイッチバックによりリバース走行とフォワード走行が繰り返される場合に、エンジンの始動、停止が頻繁に繰り返されないようにすることができる。
【0062】
なお、図4図5の処理例は一例に過ぎない。他にも同等の効果を実現するための処理例は各種考えられる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
2 HEV制御部
3 エンジン制御部
4 モータ制御部
5 トランスミッション制御部
6 操舵制御部
7 ブレーキ制御部
8 位置情報処理部
9 電池制御部
10 車載電池部
11 電池
21 リバース走行データ記憶処理部
22 リバース時エンジン始動判定部
23 エンジン制御部
24 記憶部
F1 エンジン始動フラグ
F2 EV禁止フラグ
図1
図2
図3
図4
図5