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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163594
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】二次電池の冷却システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20241115BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241115BHJP
   H01M 8/04014 20160101ALI20241115BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20241115BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20241115BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/6556
H01M10/633
H01M8/04 J
H01M8/04014
H01M8/0432
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079345
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神尾 佳希
【テーマコード(参考)】
5H031
5H127
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA21
5H127BA23
5H127BA59
5H127DB99
5H127DC02
5H127DC08
5H127EE04
5H127EE13
5H127EE19
5H127FF06
(57)【要約】
【課題】専用の冷却装置を設けることなく二次電池を冷却する。
【解決手段】二次電池10の冷却システムAは、蓄電モジュール12と、蓄電モジュール12を冷却するための冷媒の流路である吸熱流路15とを有する二次電池20と、燃料の供給によって電力を発生させる燃料電池スタック20と、燃料を気体として吐出可能な状態で貯留する燃料貯留装置24と、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を気体の状態で吸熱流路15に供給する第1燃料流路25と、吸熱流路15を通過した燃料を燃料電池スタック20に供給する第2燃料流路29と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電モジュールと、前記蓄電モジュールを冷却するための冷媒の流路である吸熱流路とを有する二次電池と、
燃料の供給によって電力を発生させる燃料電池スタックと、
前記燃料を気体として吐出可能な状態で貯留する燃料貯留装置と、
前記燃料貯留装置に貯留されている前記燃料を気体の状態で前記吸熱流路に供給する第1燃料流路と、
前記吸熱流路を通過した前記燃料を前記燃料電池スタックに供給する第2燃料流路と、を備えている二次電池の冷却システム。
【請求項2】
前記第1燃料流路に設けたバルブ装置と、
前記バルブ装置と前記燃料電池スタックを接続するバイパス流路と、を備え、
前記バルブ装置は、前記吸熱流路に供給する前記燃料の流量を調節する機能と、前記バイパス流路を経由させて前記燃料電池スタックに供給する前記燃料の流量を調節する機能とを有している請求項1に記載の二次電池の冷却システム。
【請求項3】
前記二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出値に基づいて、前記バルブ装置を制御する制御装置と、を備えている請求項2に記載の二次電池の冷却システム。
【請求項4】
前記第1燃料流路に設けられ、前記第1燃料流路における前記燃料の流量を調節する第1バルブ装置と、
前記燃料貯留装置に貯留されている前記燃料を、前記吸熱流路を経由しない経路で前記燃料電池スタックに供給する直送流路と、
前記直送流路に設けられ、前記直送流路における前記燃料の流量を調節する第2バルブ装置と、を備えている請求項1に記載の二次電池の冷却システム。
【請求項5】
前記二次電池の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出値に基づいて、前記第1バルブ装置と前記第2バルブ装置を制御する制御装置と、を備えている請求項4に記載の二次電池の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の冷却システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載された二次電池を冷却する冷却装置が開示されている。この冷却装置は、外気を導入して冷却風を発生させる冷却器と、冷却器で発生した冷却風を二次電池に供給する供給用ダクトとを備えている。二次電池の温度が規定温度以上であるときに、冷却器が作動することによって、二次電池が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-176133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の冷却装置は、二次電池を冷却する機能のみを有する専用装置である。専用の冷却装置を設けることは、コストアップとなり、設置スペースが必要であり、重量が増加する等の問題がある。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、専用の冷却装置を設けることなく二次電池を冷却することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の二次電池の冷却システムは、
蓄電モジュールと、前記蓄電モジュールを冷却するための冷媒の流路である吸熱流路とを有する二次電池と、
燃料の供給によって電力を発生させる燃料電池スタックと、
前記燃料を気体として吐出可能な状態で貯留する燃料貯留装置と、
前記燃料貯留装置に貯留されている前記燃料を気体の状態で前記吸熱流路に供給する第1燃料流路と、
前記吸熱流路を通過した前記燃料を前記燃料電池スタックに供給する第2燃料流路と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の冷却システムは、専用の冷却装置を設けることなく二次電池を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1の二次電池の概略構造をあらわす断面図
図2】実施形態1の冷却システムの構成をあらわすブロック図
図3】実施形態2の冷却システムの構成をあらわすブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、本開示の望ましい形態例を示す。下記の複数の形態例を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0010】
(1)本開示の二次電池の冷却システムは、蓄電モジュールと、前記蓄電モジュールを冷却するための冷媒の流路である吸熱流路とを有する二次電池と、燃料の供給によって電力を発生させる燃料電池スタックと、前記燃料を気体として吐出可能な状態で貯留する燃料貯留装置と、前記燃料貯留装置に貯留されている前記燃料を気体の状態で前記吸熱流路に供給する第1燃料流路と、前記吸熱流路を通過した前記燃料を前記燃料電池スタックに供給する第2燃料流路と、を備えている。
【0011】
本開示によれば、燃料貯留装置に気体として吐出可能な状態で貯留されている燃料を、断熱膨張により低圧気体の状態で吸熱流路に供給すると、気化ガスは、吸熱流路を通過する過程で冷媒としての機能を発揮し、蓄電モジュールの熱を奪う。吸熱流路を通過した気化ガスは、燃料電池スタックに供給されることによって、発電用の燃料として消費される。燃料電池スタック用の燃料を二次電池冷却用の冷媒として兼用させたので、二次電池を冷却するための専用の冷媒が不要である。よって、専用の冷却装置を設けることなく二次電池を冷却することができる。
【0012】
(2)(1)において、前記第1燃料流路に設けたバルブ装置と、前記バルブ装置と前記燃料電池スタックを接続するバイパス流路と、を備え、前記バルブ装置は、前記吸熱流路に供給する前記燃料の流量を調節する機能と、前記バイパス流路を経由させて前記燃料電池スタックに供給する前記燃料の流量を調節する機能とを有していることが好ましい。この構成によれば、二次電池の温度や、燃料電池スタックに要求される発電量等に基づいて、吸熱流路への燃料の供給と供給停止の切り換え、吸熱流路への燃料の供給量の調節、バイパス流路経由による燃料電池スタックへの燃料の供給と供給停止の切り換え、バイパス流路経由による燃料電池スタックへの燃料の供給量の調節を、個別に行うことができる。
【0013】
(3)(2)において、前記二次電池の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出値に基づいて、前記バルブ装置を制御する制御装置と、を備えていることが好ましい。この構成によれば、二次電池の温度に応じてバルブ装置を制御することによって、吸熱流路への燃料の供給を制御できるので、二次電池の過熱や過冷却を防止できる。吸熱流路への流量の変動に伴って、バイパス流路経由による燃料電池スタックへの燃料の供給量を、適正に調節することができる。
【0014】
(4)(1)において、前記第1燃料流路に設けられ、前記第1燃料流路における前記燃料の流量を調節する第1バルブ装置と、前記燃料貯留装置に貯留されている前記燃料を、前記吸熱流路を経由しない経路で前記燃料電池スタックに供給する直送流路と、前記直送流路に設けられ、前記直送流路における前記燃料の流量を調節する第2バルブ装置と、を備えていることが好ましい。この構成によれば、二次電池の温度や、燃料電池スタックに要求される発電量等に基づいて、吸熱流路への燃料の供給と供給停止の切り換え、吸熱流路への燃料の供給量の調節、直送流路経由による燃料電池スタックへの燃料の供給と供給停止の切り換え、直送流路経由による燃料電池スタックへの燃料の供給量の調節を、個別に行うことができる。
【0015】
(5)(4)において、前記二次電池の温度を検出する温度センサと、前記温度センサの検出値に基づいて、前記第1バルブ装置と前記第2バルブ装置を制御する制御装置と、を備えていることが好ましい。この構成によれば、二次電池の温度に応じて第1バルブ装置を制御することによって、吸熱流路への燃料の供給を制御できるので、二次電池の過熱や過冷却を防止できる。吸熱流路への流量の変動に伴って第2バルブ装置を制御することにより、直送流路による燃料電池スタックへの燃料の供給量を、適正に調節することができる。
【0016】
<実施形態1>
本開示を具体化した実施形態1を、図1図2を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0017】
本実施形態1の冷却システムAは、例えば、車両に搭載されるものであり、二次電池10と、燃料電池スタック20と、燃料貯留装置24と、バルブ装置28と、制御装置31と、を備えている。二次電池10は、気密性を有するケース11と、蓄電モジュール12と、温度センサ14とを備えている。蓄電モジュール12は、間隔を空けて並列するように配置された複数の偏平なセル13によって構成されている。セル13は、ラミネートシートからなる外装体内に、複数枚の負極板と複数枚の正極板と複数枚のセパレータとを積層した積層電極体(図示省略)と、電解液(図示省略)とを収容した周知形態の部材である。二次電池10は、車両に搭載された電装品18に電力を供給する。二次電池10は、燃料電池スタック20の出力が不足したときに、モータ21に対して直接的に電力の供給を行うピークアシスト機能を有する。同じく二次電池10は、モータ21からの回生電力を回収して蓄える蓄電機能を有する。
【0018】
蓄電モジュール12は、ケース11内に収容されている。セル13に接する位置、又はセル13に近接する位置には、ケース11内の蓄電モジュール12の温度を検出する温度センサ14が設けられている。蓄電モジュール12が収容されたケース11内には、蓄電モジュール12を冷却するための冷媒を流動させるための吸熱流路15が構成されている。隣り合うセル13の間の空間、蓄電モジュール12とケース11の内面との間の空間が、吸熱流路15を構成している。ケース11の上面板には、ケース11の内外を連通させる流入ポート16が設けられている。ケース11の側面板の下端部には、ケース11の内外を連通させる流出ポート17が設けられている。
【0019】
燃料電池スタック20は、燃料電池スタック20に供給された燃料(図示省略)を、酸素と反応させることによって電力を発生させる装置である。燃料電池スタック20において発生させた電力は、車両走行用のモータ21や、エアコン装置(図示省略)等に供給される。燃料電池スタック20において発生した電力のうち消費されなかった余剰電力は、充電回路22を経由することによって、蓄電モジュール12に供給されて充電される。
【0020】
燃料電池スタック20に供給される燃料は、燃料貯留装置24に気体として吐出可能な状態で貯留されている。燃料貯留装置24は、タンク内に吸蔵合金を収容して構成されている。本実施形態では、燃料として水素が用いられている。水素のジュールトムソン効果の逆転温度は、-80℃と低いため、冷却システムAを車両に搭載して使用する環境下においては、気体として吐出された水素が断熱膨張するのに伴い、水素の温度が上昇していく。そのため、本実施形態1では、水素を、固溶状態または化学的結合をさせた状態で吸蔵合金に吸蔵している。吸蔵合金としては、マグネシウム基合金やバナジウム基合金等が用いられている。燃料貯留装置24に貯留されている燃料は、吸蔵合金から放出され、断熱膨張した状態で、二次電池10や燃料電池スタック20に供給されるようになっている。吸蔵合金から放出された燃料は、放出時の吸熱反応によって常温よりも低温となる。
【0021】
燃料貯留装置24には、第1燃料流路25の上流端が接続されている。第1燃料流路25の下流端は、二次電池10のケース11の流入ポート16に接続されている。第1燃料流路25は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を、気化ガスの状態で吸熱流路15に供給する流路である。第1燃料流路25の途中には、バルブ装置28が設けられている。第1燃料流路25のうちバルブ装置28よりも上流側の領域は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料をバルブ装置28に供給する上流側流路26として機能する。第1燃料流路25のうちバルブ装置28よりも下流側の領域は、燃料をバルブ装置28から吸熱流路15に供給する下流側流路27として機能する。二次電池10の流出ポート17には、第2燃料流路29の上流端が接続されている。第2燃料流路29の下流端は、燃料電池スタック20に接続されている。第2燃料流路29は、吸熱流路15を通過した燃料を燃料電池スタック20に供給する流路である。
【0022】
バルブ装置28には、第1燃料流路25から分岐したバイパス流路30の上流端が接続されている。バイパス流路30の下流端は、燃料電池スタック20に接続されている。バイパス流路30は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を、吸熱流路15(二次電池10)を経由させずに、気化ガスの状態で燃料電池スタック20に供給する流路である。バルブ装置28は、上流側流路26から下流側流路27に至る流路と、上流側流路26からバイパス流路30に至る流路を、個別に開閉する開閉機構(図示省略)を有する。バルブ装置28は、これらの流路を開いた状態において、各々の流路における燃料の流量を調節する流量調節機構(図示省略)を有している。
【0023】
バルブ装置28の開閉機構と流量調節機構は、車両用ECUからなる制御装置31によって制御される。制御装置31には、温度センサ14からの検出情報、車両走行時におけるアクセルペダルの操作情報、ステアリングの操作情報、ブレーキペダルの操作情報等が入力される。制御装置31は、入力された上記の各種情報に基づいて、バルブ装置28の開閉機構と流量調節機構を制御する。
【0024】
次に、本実施形態1の作用を説明する。二次電池10の温度が正常の範囲内であり、蓄電モジュール12を冷却する必要がない場合は、制御装置31の制御により、バルブ装置28は、下流側流路27への流路を閉じ、下流側流路27への燃料の供給を停止する。この間に、発電の必要があれば、制御装置31の制御により、バルブ装置28は、上流側流路26からバイパス流路30への流路を開き、上流側流路26とバイパス流路30を通る経路で、燃料電池スタック20への燃料供給を行う。
【0025】
二次電池10の温度が上昇すると、温度センサ14からの検出情報に基づいて制御装置31がバルブ装置28を制御することによって、上流側流路26から下流側流路27への流路が開き、低温の燃料(気化ガス)が、冷媒として吸熱流路15内に供給される。気化ガス状態の燃料は、吸熱流路15を通過する過程でセル13の熱を奪う。これにより、二次電池10の蓄電モジュール12が冷却される。吸熱流路15を通過した燃料は、第2燃料流路29を経由することによって、燃料電池スタック20に供給される。
【0026】
二次電池10が冷却されている間、燃料電池スタック20は、吸熱流路15を経由して供給された燃料によって発電を行う。吸熱流路15を経由した燃料だけでは発電量が不足する場合は、バイパス流路30を経由して燃料電池スタック20に燃料を供給する。二次電池10が冷却されている間、燃料電池スタック20において必要以上の電力が発生されている場合は、燃料電池スタック20で発生させた電力のうち余剰電力を、充電回路22を介すことによって蓄電モジュール12に供給し、二次電池10を充電する。
【0027】
本実施形態1の冷却システムAは、二次電池10と、燃料の供給によって電力を発生させる燃料電池スタック20と、燃料を気体として吐出可能な状態で貯留する燃料貯留装置24と、第1熱膨張部材と、第2燃料流路29とを備えている。二次電池10は、蓄電モジュール12と、蓄電モジュール12を冷却するための冷媒の流路である吸熱流路15とを有する。第1燃料流路25は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を気化ガスの状態で吸熱流路15に供給する。第2燃料流路29は、吸熱流路15を通過した燃料を前記燃料電池スタック20に供給する。
【0028】
燃料貯留装置24に気体として吐出可能な状態で貯留されている燃料を、気化反応させて断熱膨張した状態で吸熱流路15に供給すると、気化ガスは、吸熱流路15を通過する過程で冷媒としての機能を発揮し、蓄電モジュール12の熱を奪う。吸熱流路15を通過した気化ガスは、燃料電池スタック20に供給されることによって、発電用の燃料として消費される。燃料電池スタック20用の燃料を二次電池10冷却用の冷媒として兼用させたので、二次電池10を冷却するための専用の冷媒が不要である。よって、専用の冷却システムAを設けることなく二次電池10を冷却することができる。
【0029】
冷却システムAは、第1燃料流路25に設けたバルブ装置28と、バイパス流路30とを有する。バイパス流路30は、バルブ装置28と燃料電池スタック20を接続する。バルブ装置28は、吸熱流路15に供給する燃料の流量を調節する流量調節機能と、バイパス流路30を経由させて燃料電池スタック20に供給する燃料の流量を調節する流量調節機能とを有している。この流量調節機能は、流量を0まで絞り、燃料の経路を閉じる機能も含む。この構成によれば、二次電池10の温度や、燃料電池スタック20に要求される発電量等に基づいて、吸熱流路15への燃料の供給と供給停止の切り換え、吸熱流路15への燃料の供給量の調節、バイパス流路30経由による燃料電池スタック20への燃料の供給と供給停止の切り換え、バイパス流路30経由による燃料電池スタック20への燃料の供給量の調節を、個別に行うことができる。
【0030】
冷却システムAは、二次電池10の温度を検出する温度センサ14と、温度センサ14の検出値に基づいてバルブ装置28を制御する制御装置31と、を備えている。制御装置31は、二次電池10の温度、走行状態、アクセルワーク、電装品18の使用状態等に基づいて、バルブ装置28による吸熱流路15と燃料電池スタック20への燃料の供給形態を、下記の4つのモードに切り換える。
【0031】
第1のモードは、吸熱流路15への燃料の供給と、バイパス流路30の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給とを行う形態である。第2のモードは、吸熱流路15への燃料の供給を行い、バイパス流路30の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を停止する形態である。第3のモードは、吸熱流路15への燃料の供給を停止し、バイパス流路30の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を行う形態である。第4のモードは、吸熱流路15への燃料の供給と、バイパス流路30の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を停止する形態である。
【0032】
この構成によれば、二次電池10の温度に応じてバルブ装置28を制御することによって、吸熱流路15への燃料の供給を制御できるので、二次電池10の過熱や過冷却を防止できる。吸熱流路15への流量の変動に伴って、バイパス流路30経由による燃料電池スタック20への燃料の供給量を、適正に調節することができる。
【0033】
二次電池10の吸熱流路15に燃料が供給されている状態では、ケース11の上面板に配置した流入ポート16から低温の燃料がケース11(吸熱流路15)内に流入し、ケース11の下端部に配置した流出ポート17からケース11(吸熱流路15)外へ流出する。ケース11内では、燃料(冷媒)が流入ポート16から流出ポート17に向かって下向きに流れる。ケース11内(吸熱流路15内)の温度は、下端側よりも上端側の方が高いのであるが、低温の燃料はケース11の上端部に流入するので、ケース11内の上端部では、高温の蓄電モジュール12と低温の燃料(冷媒)との間の温度勾配が大きい。よって、蓄電モジュール12から燃料(冷媒)への熱伝達率が高く、蓄電モジュール12を効果的に冷却することができる。
【0034】
<実施形態2>
次に、本開示を具体化した実施形態2を図3を参照して説明する。本実施形態2の冷却システムBは、燃料貯留装置24から燃料電池スタック20に燃料を供給する経路の一部を、上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0035】
本実施形態2の冷却システムBは、二次電池10と、燃料電池スタック20と、燃料貯留装置24と、第1燃料流路25と、第2燃料流路29と、第1バルブ装置41と、第2バルブ装置42と、制御装置43と、を備えている。二次電池10と、燃料電池スタック20と、燃料貯留装置24と、第1燃料流路25と、第2燃料流路29は、実施形態1と同じ構成である。
【0036】
燃料貯留装置24には、直送流路40の上流端が接続されている。直送流路40の下流端は、燃料電池スタック20に接続されている。直送流路40は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を、吸熱流路15(二次電池10)を経由させずに、気化ガスの状態で燃料電池スタック20に供給する流路である。
【0037】
第1燃料流路25の途中には、第1バルブ装置41が設けられている。第1バルブ装置41は、第1燃料流路25を開閉する開閉機構(図示省略)を有する。第1バルブ装置41は、第1燃料流路25を開いた状態において、第1燃料流路25における燃料の流量を調節する流量調節機構(図示省略)を有している。直送流路40の途中には、第2バルブ装置42が設けられている。第2バルブ装置42は、直送流路40を開閉する開閉機構(図示省略)を有する。第2バルブ装置42は、直送流路40を開いた状態において、直送流路40における燃料の流量を調節する流量調節機構(図示省略)を有している。
【0038】
第1バルブ装置41の開閉機構と流量調節機構、及び第2バルブ装置42の開閉機構と流量調節機構は、車両用ECUからなる制御装置43によって制御される。制御装置43には、温度センサ14からの検出情報、車両走行時におけるアクセルペダルの操作情報、ステアリングの操作情報、ブレーキペダルの操作情報等が入力される。制御装置43は、入力された上記の各種情報に基づいて、第1バルブ装置41の開閉機構と流量調節機構、及び第2バルブ装置42の開閉機構と流量調節機構を、個別に制御する。
【0039】
次に、本実施形態2の作用を説明する。二次電池10の温度が正常の範囲内であり、蓄電モジュール12を冷却する必要がない場合は、制御装置43の制御により、第1バルブ装置41が第1燃料流路25を閉じるので、二次電池10(吸熱流路15)への燃料(冷媒)の供給は停止する。この間に、発電の必要があれば、制御装置43の制御により、第2バルブ装置42が直送流路40を開くので、燃料貯留装置24の燃料が、直送流路40を通る経路で燃料電池スタック20へ供給される。
【0040】
二次電池10の温度が上昇すると、温度センサ14からの検出情報に基づいて制御装置43が第1バルブ装置41を制御することによって、第1燃料流路25が開き、低温の燃料(気化ガス)が、冷媒として吸熱流路15内に供給される。気化ガス状態の燃料は、吸熱流路15を通過する過程でセル13の熱を奪うので、二次電池10の蓄電モジュール12が冷却される。吸熱流路15を通過した燃料は、第2燃料流路29を経由することによって、燃料電池スタック20に供給される。
【0041】
二次電池10が冷却されている間、燃料電池スタック20は、吸熱流路15を経由して供給された燃料によって発電を行う。吸熱流路15を経由した燃料だけでは発電量が不足する場合は、直送流路40を経由して燃料電池スタック20に燃料が供給される。二次電池10が冷却されている間、燃料電池スタック20において必要以上の電力が発生されている場合は、燃料電池スタック20で発生させた電力のうち余剰電力を、充電回路22を介すことによって蓄電モジュール12に供給し、二次電池10を充電する。
【0042】
本実施形態2の冷却システムBは、第1燃料流路25に設けた第1バルブ装置41と、直送流路40と、第2バルブ装置42と、を備えている。第1バルブ装置41は、第1燃料流路25における燃料(冷媒)の流量を調節する。直送流路40は、燃料貯留装置24に貯留されている燃料を、第1燃料流路25と吸熱流路15を経由しない経路で燃料電池スタック20に供給する流路である。第2バルブ装置42は、直送流路40に設けられ、直送流路40における燃料の流量を調節する。
【0043】
この構成によれば、二次電池10の温度や、燃料電池スタック20に要求される発電量等に基づいて、吸熱流路15への燃料の供給と供給停止の切り換え、吸熱流路15への燃料の供給量の調節、直送流路40経由による燃料電池スタック20への燃料の供給と供給停止の切り換え、直送流路40経由による燃料電池スタック20への燃料の供給量の調節を、個別に行うことができる。
【0044】
冷却システムBは、二次電池10(蓄電モジュール12)の温度を検出する温度センサ14と、制御装置43とを備えている。制御装置43は、温度センサ14の検出値に基づいて、第1バルブ装置41と第2バルブ装置42を制御する。この構成によれば、二次電池10の温度に応じて第1バルブ装置41を制御することによって、吸熱流路15への燃料の供給を制御できるので、二次電池10の過熱や過冷却を防止できる。吸熱流路15への流量の変動に伴って第2バルブ装置42を制御することにより、直送流路40による燃料電池スタック20への燃料の供給量を、適正に調節することができる。
【0045】
制御装置43は、二次電池10の温度、走行状態、アクセルワーク、電装品の使用状態等に基づいて、第1バルブ装置41と第2バルブ装置42を、夫々、2つのモードに切り換える。第1バルブ装置41は、吸熱流路15への燃料(冷媒)の供給を行う冷却モードと、吸熱流路15への燃料の供給を停止する非冷却モードとに切り替わる。冷却モードでは、吸熱流路15に供給する燃料(冷媒)の流量の調整も行う。第2バルブ装置42は、直送流路40を経由して燃料電池スタック20に燃料を供給する発電モードと、直送流路40の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を停止する非発電モードとに切り替わる。発電モードでは、燃料電池スタック20に供給する燃料の流量の調整も同時に行う。
【0046】
第1バルブ装置41のモード切換えと第2バルブ装置42のモード切換えは、互いに独立して行われるので、吸熱流路15と燃料電池スタック20への燃料の供給形態を、下記の4つのモードに切り換えることができる。第1のモードは、吸熱流路15への燃料供給と、直送流路40の経由による燃料電池スタック20への燃料供給とを行う形態である。第2のモードでは、吸熱流路15への燃料の供給を行い、直送流路40の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を停止する形態である。第3のモードは、吸熱流路15への燃料の供給を停止し、直送流路40の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を行う形態である。第4のモードは、吸熱流路15への燃料の供給と、直送流路40の経由による燃料電池スタック20への燃料の供給を停止する形態である。
【0047】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
燃料貯留装置は、吸蔵合金を用いずに、タンクのみで構成してもよい。
燃料電池スタックに供給する燃料は、水素に限らず、メチルシクロヘキサン、ギ酸、エタノール、メタノール、ヒドラジン、アンモニアボラン、ジメチルエーテル、ホルムアルデヒドなどでもよい。
上記の燃料のうち、冷却システムを使用する環境温度よりも逆転温度が低い燃料については、吸蔵合金により吸蔵状態で貯留する。上記の燃料のうち、冷却システムを使用する環境温度よりも逆転温度が高い燃料の貯留方法は、液体状態、気体状態、吸蔵状態のいずれでもよい。
燃料貯留装置に貯留されている上記の燃料を吸熱流路に供給する際には、気体の状態にすることが好ましい。したがって、アンモニアのように液体のままで燃料電池スタックに供給される燃料は、本願発明の冷却システムとしては適さない。
【符号の説明】
【0048】
A,B…冷却システム
10…二次電池
12…蓄電モジュール
14…温度センサ
15…吸熱流路
20…燃料電池スタック
24…燃料貯留装置
25…第1燃料流路
28…バルブ装置
29…第2燃料流路
30…バイパス流路
31,43…制御装置
40…直送流路
41…第1バルブ装置
42…第2バルブ装置
図1
図2
図3