(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163601
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】受変電設備の制御装置、プログラム、および制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
H02J13/00 311A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079357
(22)【出願日】2023-05-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東浦 航
(72)【発明者】
【氏名】川名 重則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴広
【テーマコード(参考)】
5G064
【Fターム(参考)】
5G064AC06
5G064CA07
5G064CB14
5G064DA02
(57)【要約】
【課題】停復電時に開閉器を適切に開放および投入させ、受変電設備を適切に通常運用に復帰させることが可能な制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、少なくとも一つの検出器と、少なくとも一つの開閉器とを備えた受変電設備において、停電の発生時および該停電からの復電時に開閉器の動作を制御する。検出器は、電源から負荷への電力の供給が停止した停電の発生を検出する。開閉器は、電源から負荷への電力の供給を遮断する開放状態と負荷に電力を供給する投入状態とを切り替える。制御装置は、停電の発生時点で投入状態の開閉器を停電の発生時に開放状態に遷移させるとともに、開放状態にした開閉器を一意に識別する識別情報を記憶する。制御装置は、識別情報を記憶した開閉器を復電時に開放状態から投入状態に復帰させ、記憶した識別情報をリセットする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から負荷への電力の供給が停止した停電の発生を検出する少なくとも一つの検出器と、前記電源から前記負荷への前記電力の供給を遮断する開放状態と前記負荷に前記電力を供給する投入状態とを切り替える少なくとも一つの開閉器と、を備えた受変電設備において、前記停電の発生時および前記停電からの復電時に前記開閉器の動作を制御する制御装置であって、
前記停電の発生時点で前記投入状態の前記開閉器を前記停電の発生時に前記開放状態に遷移させるとともに、前記開放状態にした前記開閉器を一意に識別する識別情報を記憶し、前記識別情報を記憶した前記開閉器を前記復電時に前記開放状態から前記投入状態に復帰させ、記憶した前記識別情報をリセットする
受変電設備の制御装置。
【請求項2】
前記開閉器が前記開放状態に遷移するとともに前記停電の発生を示す検出信号を前記検出器から受信したことを条件に、前記開放状態に遷移した前記開閉器の前記識別情報を記憶し、
前記識別情報が記憶された前記開閉器が前記投入状態に遷移したことを条件に、記憶した前記開閉器の前記識別情報を初期値に戻す
請求項1に記載の受変電設備の制御装置。
【請求項3】
前記開閉器が前記投入状態であるとともに前記停電の発生を示す検出信号を前記検出器から受信し、前記電源の復電投入指令を示す信号を受信していないことを条件に、前記投入状態である前記開閉器の前記識別情報を記憶し、
前記電源の復電投入指令を示す信号を受信したことを条件に、記憶した前記開閉器の前記識別情報を初期値に戻す
請求項1に記載の受変電設備の制御装置。
【請求項4】
前記電源の復電投入指令を示す信号を受信し、かつ前記電源を復旧させて前記負荷への電力供給を再開させることが可能な状態であることを条件に、前記停電の発生時に前記投入状態から前記開放状態に遷移させた前記開閉器を前記投入状態に復帰させる
請求項2または3に記載の受変電設備の制御装置。
【請求項5】
電源から負荷への電力の供給が停止した停電の発生を検出する少なくとも一つの検出器と、前記電源から前記負荷への前記電力の供給を遮断する開放状態と前記負荷に前記電力を供給する投入状態とを切り替える少なくとも一つの開閉器と、を備えた受変電設備において、前記停電の発生時および前記停電からの復電時に前記開閉器の動作を制御する制御装置で実行されるプログラムであって、
前記停電の発生時点で前記投入状態の前記開閉器を前記停電の発生時に前記開放状態に遷移させる手順と、
前記開放状態にした前記開閉器を一意に識別する識別情報を記憶する手順と、
前記識別情報を記憶した前記開閉器を前記復電時に前記開放状態から前記投入状態に復帰させる手順と、
記憶した前記識別情報をリセットする手順と、を前記制御装置に実行させる
プログラム。
【請求項6】
前記開閉器が前記投入状態であるとともに前記停電の発生を示す検出信号を前記検出器から受信し、前記電源の復電投入指令を示す信号を受信していないことを条件に、前記投入状態である前記開閉器の前記識別情報を記憶する手順と、
前記電源の復電投入指令を示す信号を受信したことを条件に、記憶した前記開閉器の前記識別情報を初期値に戻す手順と、を前記制御装置に実行させる
請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記開閉器が前記投入状態であるとともに前記停電の発生を示す検出信号を前記検出器から受信し、前記電源の復電投入指令を示す信号を受信していないことを条件に、前記投入状態である前記開閉器の前記識別情報を記憶する手順と、
前記電源の復電投入指令を示す信号を受信したことを条件に、記憶した前記開閉器の前記識別情報を初期値に戻す手順と、を前記制御装置に実行させる
請求項5に記載のプログラム。
【請求項8】
前記電源の復電投入指令を示す信号を受信し、かつ前記電源を復旧させて前記負荷への電力供給を再開させることが可能な状態であることを条件に、前記停電の発生時に前記投入状態から前記開放状態に遷移させた前記開閉器を前記投入状態に復帰させる手順を前記制御装置に実行させる
請求項6または7に記載のプログラム。
【請求項9】
電源から負荷への電力の供給が停止した停電の発生を検出する少なくとも一つの検出器と、前記電源から前記負荷への前記電力の供給を遮断する開放状態と前記負荷に前記電力を供給する投入状態とを切り替える少なくとも一つの開閉器と、を備えた受変電設備において、前記停電の発生時および前記停電からの復電時に前記開閉器の動作を制御する制御方法であって、
前記停電の発生時点で前記投入状態の前記開閉器を前記停電の発生時に前記開放状態に遷移させ、
前記開放状態にした前記開閉器を一意に識別する識別情報を記憶し、
前記識別情報を記憶した前記開閉器を前記復電時に前記開放状態から前記投入状態に復帰させ、
記憶した前記識別情報をリセットする
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、受変電設備の制御装置、プログラム、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ビル、工場、病院などには、電力の配送電系統における電路の保護、電力の制御、設備の監視などを図るために受変電設備が備えられている。受変電設備は、例えば金属容器(筐体)によって外部から隔てられた空間に主回路導体、母線、電力ケーブル(電源線)、接地装置、変流器、真空遮断器(開閉器)などを収容して構成されている。開閉器は、例えば一対の電極の各々の接点同士を接離させ、これらの電極間を導電状態または絶縁状態に切り替えて電流を適宜遮断する。
【0003】
受変電設備は、停復電時の安全対策として、例えば停電時に開閉器を自動的に開放し、復電時に開閉器を自動的に投入する制御装置(停復電制御機構)を備える。開閉器が開放された状態は、例えば電極間が絶縁状態となって電流が遮断された状態である。開閉器が投入された状態は、例えば電極間が導通状態となって電流が流れる状態(通電状態)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62-225126号公報
【特許文献2】特許第5989436号公報
【特許文献3】特許第3132017号公報
【特許文献4】特許第3473930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
受変電設備を停電時から適切に通常運用に復帰させるためには、停電が発生した際に開閉器を一旦開放させ、復電した際に該開閉器を適切に投入することが求められる。
そこで、停復電時に開閉器を適切に開放および投入させ、受変電設備を適切に通常運用に復帰させることが可能な制御装置、プログラム、および制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の制御装置は、少なくとも一つの検出器と、少なくとも一つの開閉器とを備えた受変電設備において、停電の発生時および該停電からの復電時に前記開閉器の動作を制御する。前記検出器は、電源から負荷への電力の供給が停止した停電の発生を検出する。前記開閉器は、前記電源から前記負荷への前記電力の供給を遮断する開放状態と前記負荷に前記電力を供給する投入状態とを切り替える。前記制御装置は、前記停電の発生時点で前記投入状態の前記開閉器を前記停電の発生時に前記開放状態に遷移させるとともに、前記開放状態にした前記開閉器を一意に識別する識別情報を記憶する。そして、前記制御装置は、前記識別情報を記憶した前記開閉器を前記復電時に前記開放状態から前記投入状態に復帰させ、記憶した前記識別情報をリセットする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る受変電設備を含む受変電システムのシステム構成を概略的に示すブロック図。
【
図2】第1の実施形態に係る受変電設備の構成を概略的に示す模式図。
【
図3】第1の実施形態に係る停復電制御処理における制御装置の制御フロー図。
【
図4】第1の実施形態における停電状態における受変電設備の状態を概略的に示す模式図。
【
図5】第1の実施形態における電源の復旧(停電からの復電)後における受変電設備の状態を概略的に示す模式図。
【
図6】第1の実施形態における停復電制御処理において、制御装置が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための状態記憶回路図(展開接続図)。
【
図7】第1の実施形態における停復電制御処理において、制御装置が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための制御ブロック図(処理の流れを示す模式図)。
【
図8】第2の実施形態における停復電制御処理において、制御装置が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための状態記憶回路図(展開接続図)。
【
図9】第2の実施形態における停復電制御処理において、制御装置が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための制御ブロック図(処理の流れを示す模式図)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る受変電設備の制御装置について、図面を参照して説明する。受変電設備は、例えば、ビル、工場、病院などの施設に備えられ、電力の配送電系統における電路の保護、電力の制御、施設設備の監視などを図るための装置である。受変電設備の一例として、スイッチギヤが挙げられる。スイッチギヤは、例えば接地された金属製の筐体を有し、該筐体の内部に各種回路を構成する導体、該回路に接続される開閉器、変成器、避雷器などの各種の電気機器が収容されている。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、このような受変電設備2を含む受変電システム1のシステム構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示す例において、受変電システム1は、受変電設備2、電源4および負荷6によって構成されている。受変電設備2は、電源4から送電された高電圧の電力を受電し、変圧(降圧)する。電源4は、例えば商用電源(商用発電所など)である。受変電設備2によって変圧(降圧)された電力は、各種の負荷6に供給される。負荷6は、受変電設備2から供給された電力によって動作する各種の電気機器である。
【0010】
図2は、本実施形態に係る受変電設備2の構成を概略的に示す模式図である。
図2に示すように、受変電設備2は、主回路導体21と、母線22と、分岐線23と、検出器24と、開閉器25と、制御装置26とを備えている。
【0011】
主回路導体21は、受変電設備2の主回路を構成する導体であり、電源4に繋がる電力ケーブルなどと接続し、該電源4から送電された高電圧の電力を受電する。電源4から主回路導体21で受電された電力は、変圧器(主変圧器)27で変圧(降圧)される。変圧器27は、例えば電磁誘導などを利用して交流電力の電圧を変換する。
【0012】
母線22は、電源4から送電されて変圧器27で変圧された電力を受けるとともに、分岐線23に分電(分流)する。
【0013】
分岐線23は、母線22から分岐して負荷6に接続する電線である。
図2に示す例では、母線22から三本の分岐線23a,23b,23cが分岐している。これらの分岐線23a,23b,23cの各々が接続する負荷6は、異なるものであっても共通するものであっても構わない。母線22から分岐する分岐線23の本数は、図示例には限定されず、二本以下、四本以上であっても構わない。
【0014】
検出器24は、停電状態、つまり電源4から負荷6への電力供給が停止した状態を検出する。検出器24は、例えば不足電圧継電器である。不足電圧継電器は、回路の電圧低下を検出するために設置され、電圧が整定値を下回ると動作し、停電や欠相などにおける回路の電圧低下を検出する。これにより、検出器24は、電源4の停電の発生有無を検出可能となる。検出器24は、電源4の停電の発生有無の検出結果を示す情報(例えば停電信号や復電信号)を制御装置26に付与する。停電信号は、例えば電源4からの供給電力の電圧が所定の基準値(下限値)よりも低下したことを示す信号である。
【0015】
図2に示す例では、二つの検出器24a,24bが備えられている。一方の検出器(以下、第1の検出器という)24aは、変圧器27と母線22との間で主回路導体21に接続され、変圧器27で変圧された電力の電圧を検出する。第1の検出器24aは、第1の計器用変圧器28aを介して主回路導体21に接続されている。他方の検出器(以下、第2の検出器という)24bは、母線22に接続され、母線22における電力の電圧を検出する。第2の検出器24bは、第2の計器用変圧器28bを介して母線22に接続されている。
【0016】
開閉器25は、電源4から負荷6への電力供給を遮断する状態(開放状態)と、電源4からの電力を負荷6に供給する状態(投入状態)とを切り替える。開放状態は、電源4からの電力が遮断されて負荷6に供給されない状態、つまり電力の遮断により負荷6が動作不能な状態である。投入状態は、電源4からの電力が負荷6に供給される状態、つまり電力の供給により負荷6が動作可能な状態である。開閉器25は、例えば真空バルブなどの遮断器である。遮断器は、停電時や過負荷時などにおいて電力回路や電気機器に対する電力供給を遮断し、これらの電力回路や電気機器を保護する。開閉器25は、動作状態、つまり開放状態と投入状態のいずれの状態であるかを示す情報(例えば信号)を制御装置26に付与する。
【0017】
図2に示す例では、四つの開閉器25s,25a,25b,25cが備えられている。四つの開閉器25は二つに大別される。一方の開閉器(以下、第1の開閉器という)25sは、主幹開閉器である。他方の開閉器(以下、第2の開閉器という)25a,25b,25cは、分岐開閉器(フィーダ)である。第1の開閉器25sは、変圧器27と母線22との間に配置され、電源4から負荷6へ供給される電力を主回路導体21において適宜遮断する。第2の開閉器25a,25b,25cは、母線22と負荷6との間に配置され、電源4から負荷6へ供給される電力を分岐線23において適宜遮断する。第2の開閉器25aは分岐線23aに設けられ、第2の開閉器25bは分岐線23bに設けられ、第2の開閉器25cは分岐線23cに設けられている。
【0018】
図2に示す例において、第1の開閉器25s、第2の開閉器25aおよび第2の開閉器25bは、いずれも投入状態となっている。したがって、分岐線23a,23bにおいては、電源4から負荷6へ電力が供給されている。これに対し、第2の開閉器25cは、開放状態となっている。したがって、分岐線23cにおいては、電源4から負荷6へ電力が供給されていない。なお、
図2においては、投入状態の開閉器25を黒色、開放状態の開閉器25を白色で示して区別する。
【0019】
制御装置26は、受変電設備2の動作、例えばその構成要素である検出器24、開閉器25、変圧器27、第1の計器用変圧器28aおよび第2の計器用変圧器28bなどの動作を制御する。本実施形態において、制御装置26は、これらの構成要素の動作制御を行い、受変電設備2に対して停復電制御を行う。停復電制御は、電源4が停電状態となり電力供給が停止した場合および該停電状態が解消して電源4からの電力供給が再開された状態(復電状態)となった場合に、受変電設備2に対して行われる制御である。例えば停復電制御において、制御装置26は、受変電設備2に接続された電源4が停電状態となっていないか、つまり電源4からの電力供給が停止していないか監視する。電源4が停電状態となった場合、制御装置26は、受変電設備2に対して停電制御を行うことで、負荷6に対する電源4からの電力供給を停止させる。その後に電源4の停電状態が解消すると、制御装置26は、受変電設備2に対して復電制御を行うことで、負荷6に対する電源4からの電力供給を再開させる。
【0020】
ただし、受変電設備2は、電源4の停電時に電力供給を継続させる自家発電装置を備えていてもよい。これにより、電源4が停電状態となった場合であっても、停復電制御において電力供給元を電源4から自家発電装置に切り替え、負荷6に対する電力供給を停止させることなく、継続させることが可能となる。
【0021】
制御装置26は、CPU、メモリ、記憶装置(不揮発メモリ)、入出力回路、タイマ、表示器などを含み、所定の演算処理を実行する。例えば、制御装置26は、各種データを入出力回路により読み込み、記憶装置からメモリに読み出したプログラムを用いてCPUで演算処理し、処理結果に基づいて検出器24、開閉器25、変圧器27、第1の計器用変圧器28aおよび第2の計器用変圧器28bなどの動作制御を行う。
【0022】
制御装置26は、このような動作制御を行う動作制御部261を有する。動作制御部261は、上述した各々の構成要素(動作制御対象)の動作、例えば停復電制御を行うための所定の演算処理をCPUに実行させるプログラム(停復電制御プログラム)を含んで構成されている。動作制御部261は、例えば制御装置26の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶されて実行時にメモリに読み出される。動作制御部261は、検出器24や開閉器25などの動作制御対象との間で制御信号やデータ信号を有線もしくは無線を介して送受信する。すなわち、動作制御部261と動作制御対象とは、有線もしくは無線により電気的に接続されている。
【0023】
なお、
図2に示す例では、制御装置26が受変電設備2の構成要素の一部とされているが、制御装置26は受変電設備2から独立して構成されていてもよい。この場合、例えば制御装置26と受変電設備2との間で制御信号やデータ信号を送受信するための通信モジュールなどを制御装置26および受変電設備2の双方が備えていればよい。
【0024】
以下、受変電設備2における停復電制御を行うための処理(以下、停復電制御処理という)、具体的には停電の発生時および該停電からの復電時に開閉器25の動作を制御する制御方法について、制御装置26の制御フローに従って説明する。
図3には、停復電制御処理における制御装置26の制御フローを示す。制御装置26は、停復電制御処理を行う際、例えば動作制御部261である停復電制御プログラムを記憶装置(不揮発メモリ)からメモリに読み出し、CPUで実行する。
【0025】
停復電制御処理にあたって、制御装置26は、受変電設備2を稼働させ、負荷6に対する電源4からの電力供給を開始させる。負荷6に対して電源4から電力供給されていることは、停復電制御処理の前提条件である。受変電設備2が稼働し、負荷6に対して電源4から電力供給がされていることをトリガーとして、制御装置26は、停復電制御処理を実行可能となる。したがって、受変電設備2が稼働していない場合、例えば受変電設備2の計画停止やメンテナンスなど、電源4の停電時以外で受変電設備2が停止している場合、停復電制御処理は実行されない。
【0026】
本実施形態において、かかる前提条件下では、第1の開閉器25s、第2の開閉器25aおよび第2の開閉器25bが投入状態となっており、第2の開閉器25cが開放状態となっている(
図2参照)。
【0027】
このような前提条件下において、制御装置26は、停電検出条件を判定する。
図3に示す例では、停電検出条件として第1の停電検出条件および第2の停電検出条件が判定される。第1の停電検出条件は、第1の検出器24aが停電の発生を検出したか否かの判定条件である。第2の停電検出条件は、第2の検出器24bが停電の発生を検出したか否かの判定条件である。
【0028】
制御装置26は、停電検出条件としてまず、第1の停電検出条件を判定する(S101)。例えば、制御装置26は、第1の検出器24aから停電の発生を示す検出信号を受信した場合、第1の停電検出条件が成立すると判定する。一方、制御装置26は、第1の検出器24aから停電の発生を示す検出信号を受信していない場合、第1の停電検出条件が成立しないと判定する。
【0029】
第1の停電検出条件が成立しないと判定した場合(S101においてNo)、制御装置26は、停復電制御処理を終了する。そして、上述した前提条件が満たされていれば、つまり受変電設備2が稼働して負荷6に対して電源4から電力供給がされている間、停復電制御処理を繰り返す。停復電制御処理を繰り返す際の待機時間(インターバル)は任意に設定可能である。例えば、制御装置26は、待機時間を実質的にゼロとして停復電制御処理を常に繰り返してもよいし、所定の待機時間(インターバル)が経過した後、新たに停復電制御処理の実行を開始してもよい。
【0030】
これに対し、第1の停電検出条件が成立すると判定した場合(S101においてYes)、制御装置26は、主幹開閉器である第1の開閉器25sを投入状態から開放状態に遷移させる(S102)。これにより、変圧器27と母線22との間での電力の供給経路が遮断される。
【0031】
第1の開閉器25sを開放状態に遷移させると、制御装置26は、第2の停電検出条件を判定する(S103)。例えば、制御装置26は、第2の検出器24bから停電の発生を示す検出信号を受信した場合、第2の停電検出条件が成立すると判定する。一方、制御装置26は、第2の検出器24bから停電の発生を示す検出信号を受信していない場合、第2の停電検出条件が成立しないと判定する。
【0032】
第2の停電検出条件が成立しないと判定した場合(S103においてNo)、制御装置26は、停復電制御処理を終了する。この場合、第1の停電検出条件が成立しないと判定した場合(S101においてNo)と同様に、制御装置26は停復電制御処理を繰り返す。
【0033】
これに対し、第2の停電検出条件が成立すると判定した場合(S103においてYes)、制御装置26は、分岐開閉器(フィーダ)である第2の開閉器25a,25bを投入状態から開放状態に遷移させる(S104)。これにより、母線22と負荷6との間で、分岐線23a,23bにおける電力の供給経路が遮断される。なお、本実施形態の前提条件下においては第2の開閉器25cが開放状態となっているため、制御装置26は、第2の開閉器25cを制御することなく、開放状態のまま維持させる。これにより、母線22と負荷6の間での電力の供給経路がすべて遮断される。
【0034】
図4は、本実施形態における停電状態、換言すれば第1の停電検出条件および第2の停電検出条件の双方が成立した場合における受変電設備2の状態を概略的に示す模式図である。
図4に示すように、
図2に示す前提条件下、つまり通常運用時と異なり、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25b,25cのすべてが白色で示す開放状態となっている。
【0035】
次いで、制御装置26は、停電状態となる前に投入状態であった開閉器25、つまり停電発生時点で投入状態の開閉器25を一意に識別する識別情報(以下、投入状態情報という)を記憶する(S105)。換言すれば、制御装置26は、停電状態となった際に開放状態に遷移させた開閉器25の投入状態情報を記憶する。例えば、制御装置26は、開閉器25の識別IDなどに紐付けられた設定値を所定値に設定し、その設定値を投入状態情報として記憶する。所定値は、投入状態を示す値であり、設定値の初期値(開放状態を示す値)とは異なる値である。一例として、停復電制御処理の開始時、制御装置26は、前提条件下(通常運用時)において投入状態となっている開閉器25の識別IDに紐付けられた設定値を所定値に設定してメモリに保持し、停電状態となった際、保持した設定値を記憶装置(不揮発メモリ)に書き出す。これにより、停電前、つまり通常運用時に投入状態であった開閉器25の投入状態情報が記憶装置に記憶される。
【0036】
本実施形態の前提条件下では、制御装置26は、例えば第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bの各々の識別IDに紐付けられた設定値を所定値に設定して記憶し、書き出す。
【0037】
そして、投入状態であった開閉器25の識別情報を記憶すると、制御装置26は、復電条件を判定する。
図3に示す例では、復電条件として第1の復電条件および第2の復電条件が判定される。第1の復電条件は、第1の検出器24aが電源4の復旧(停電からの復電)を検出したか否かの判定条件である。第2の復電条件は、第2の検出器24bが電源4の復旧(停電からの復電)を検出したか否かの判定条件である。
【0038】
制御装置26は、復電条件としてまず、第1の復電条件を判定する(S106)。例えば、制御装置26は、第1の検出器24aから電源4の復旧(復電)を示す検出信号を受信する(もしくは停電の発生を示す検出信号を受信しなくなる)とともに、その他の復電条件が成立する場合、第1の復電条件が成立すると判定する。その他の復電条件は、電源4を復旧させて負荷6への電力供給を再開させることが可能な状態となっている場合に成立する条件であり、復電させるための前提条件である。その他の復電条件は、例えば復電してからどの程度経過した場合に開閉器25に投入指令を出すかなどのタイマ情報が設定されていること、負荷6である電気機器に故障が発生しておらずもしくは故障が解消されて通電可能な状態となっていることなどの条件である。一方、制御装置26は、第1の検出器24aから電源4の復旧(復電)を示す検出信号を受信していない場合(もしくは停電の発生を示す検出信号の受信が継続している場合)、あるいは上記その他の復電条件が成立しない場合、第1の復電条件が成立しないと判定する。
【0039】
制御装置26は、第1の復電条件が成立するまで、第1の復電条件の判定を繰り返す。第1の復電条件が成立しないと判定した場合(S106においてNo)、第1の復電条件の判定を繰り返す際の待機時間(インターバル)は任意に設定可能である。例えば、制御装置26は、待機時間をゼロとして第1の復電条件の判定を繰り返してもよいし、所定の待機時間(インターバル)が経過した後、第1の復電条件を再度判定してもよい。
【0040】
これに対し、第1の復電条件が成立すると判定した場合(S106においてYes)、制御装置26は、投入状態情報を読み出す(S107)。例えば、制御装置26は、記憶装置(不揮発メモリ)に記憶された開閉器25の識別IDに紐付けられた設定値を読み出し、メモリに保持する。これにより、停電状態に遷移する前に投入状態であった開閉器25の識別IDなどを特定可能となる。
【0041】
そして、制御装置26は、読み出した投入状態情報に基づいて、停電状態に遷移する前に投入状態であった開閉器25のみを投入状態に遷移(復帰)させる。ここでは、制御装置26は、主幹開閉器である第1の開閉器25sを開放状態から投入状態に遷移させる(S108)。これにより、変圧器27と母線22との間で遮断されていた電力の供給経路が接続される。すなわち、第1の復電条件は、主幹開閉器の投入状態への遷移(復帰)可否の判定条件に相当する。
【0042】
主幹開閉器(第1の開閉器25s)を投入状態に遷移させると、制御装置26は、第2の復電条件を判定する(S109)。例えば、制御装置26は、第2の検出器24bから電源4の復旧(復電)を示す検出信号を受信する(もしくは停電の発生を示す検出信号を受信しなくなる)とともに、その他の復電条件が成立する場合、第2の復電条件が成立すると判定する。その他の復電条件は、第1の復電条件の判定時と同一の条件である。一方、制御装置26は、第2の検出器24bから電源4の復旧(復電)を示す検出信号を受信していない場合(もしくは停電の発生を示す検出信号の受信が継続している場合)、あるいは上記その他の復電条件が成立しない場合、第2の復電条件が成立しないと判定する。
【0043】
制御装置26は、第2の復電条件が成立するまで、第2の復電条件の判定を繰り返す。第2の復電条件が成立しないと判定した場合(S109においてNo)、第2の復電条件の判定を繰り返す際の待機時間(インターバル)は任意に設定可能である。例えば、制御装置26は、待機時間をゼロとして第2の復電条件の判定を繰り返してもよいし、所定の待機時間(インターバル)が経過した後、第2の復電条件を再度判定してもよい。
【0044】
これに対し、第2の復電条件が成立すると判定した場合(S109においてYes)、制御装置26は、S107と同様に投入状態情報を読み出す(S110)。
【0045】
そして、制御装置26は、分岐開閉器(フィーダ)である第2の開閉器25を開放状態から投入状態に遷移させる(S111)。その際、制御装置26は、読み出した投入状態情報に基づいて、停電状態に遷移する前に投入状態であった第2の開閉器25のみを投入状態に遷移(復帰)させる。すなわち、第2の復電条件は、分岐開閉器(フィーダ)の投入状態への遷移(復帰)可否の判定条件に相当する。
【0046】
上述したとおり、停電状態では第2の開閉器25a,25b,25cのすべてが開放状態となっており、母線22と負荷6の間での電力の供給経路がすべて遮断されている(
図4参照)。一方、本実施形態の前提条件下では、第2の開閉器25aおよび第2の開閉器25bが投入状態となっており、第2の開閉器25cが開放状態となっている(
図2参照)。
【0047】
したがって、制御装置26は、第2の開閉器25a,25bのみを開放状態から投入状態に遷移させ、第2の開閉器25cは開放状態をそのまま維持させる。これにより、母線22と負荷6の間での電力の供給経路のうち、遮断されていた第2の開閉器25a,25bを経由する供給経路、つまり分岐線23a,23bは接続される。これに対し、第2の開閉器25cを経由する電力の供給経路、つまり分岐線23cは、停電からの復帰後(復電後)も遮断されたままとなる。その結果、受変電設備2の状態は、
図4に示す停電状態から
図5に示すように、前提条件下、つまり通常運用時の状態に戻る。
図5は、電源4の復旧(停電からの復電)後における受変電設備2の状態を概略的に示す模式図である。
【0048】
続けて、制御装置26は、投入状態情報をリセットする(S112)。具体的には、電源4の復旧(停電からの復電)時に開放状態から投入状態に遷移させた開閉器25に対する投入状態情報を所定値から初期値に戻す。一例として、制御装置26は、投入状態に遷移させた開閉器25の識別IDなどに紐付けられた設定値を初期値に戻して記憶装置(不揮発性メモリ)に書き出す。これにより、投入状態に遷移させた開閉器25の投入状態情報がリセットされて記憶装置に記憶される。
【0049】
図2および
図4に示す例においては、第2の開閉器25a,25bの投入状態情報が所定値から初期値に戻され、記憶装置に記憶される。これに対し、第2の開閉器25cの投入状態情報は初期値のまま維持され、記憶装置に引き続き記憶される。
【0050】
制御装置26は、受変電設備2が稼働している間、一連の停復電制御処理の各々の処理(S101~S112)を選択的に実行する。すなわち、受変電設備2が稼働している間、一連の停復電制御処理が繰り返される。そして、受変電設備2の稼働が停止されると、一連の停復電制御処理も終了する。
【0051】
このように、本実施形態の停復電制御処理においては、開閉器25の投入状態情報の書き込みとリセットが随時行われる。次に、かかる投入状態情報の書き込みとリセットについて説明する。
図6は、制御装置26が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための状態記憶回路図(展開接続図)であり、左から右へ制御が順次進行することを示す。
図6において上下のP(Positive),N(Negative)は制御母線(電源ライン)である(後述する
図8においても同様)。
図7は、制御装置26が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための制御ブロック図(処理の流れを示す模式図)であり、AND条件を満たすことで、該ANDの右方に示す処理が実行されることを示す。
【0052】
図6において、接点61および接点62は、電源4の停電発生時に開閉器25が投入状態である場合に動作する。接点61は、開閉器25が投入状態から開放状態に遷移した際のパルスの立ち上がりを検出して閉じる。接点61が閉じた状態は、
図7に示す「開閉器 開放状態」71を満たす状態に相当する。一方、接点61が開いた状態は、該「開閉器 開放状態」71を満たさない状態に相当する。
【0053】
接点62は、停電発生時に制御装置26が停電の発生を示す検出信号を検出器24から受信すると閉じる。接点62が閉じた状態は、
図7に示す「停電信号検出ON」72を満たす状態に相当する。一方、接点62が開いた状態は、該「停電信号検出ON」72を満たさない状態に相当する。
【0054】
接点63は、開閉器25が投入状態では開き、開閉器25が開放状態では閉じる。接点63が閉じた状態は、
図7に示す「開閉器 投入状態」74を満たさない状態に相当する。一方、接点63が開いた状態は、該「開閉器 投入状態」74を満たす状態に相当する。
【0055】
その他条件64は、例えば制御装置26によって停復電制御を自動で行う自動モードで受変電設備2が稼働している場合に成立し、該停復電制御を手動で行う手動モードで受変電設備2が稼働している場合に成立しない条件である。その他条件64が成立する場合は、
図7に示す「その他条件」73を満たす状態に相当する。一方、その他条件64が成立しない場合は、該「その他条件」73を満たさない状態に相当する。
【0056】
補助リレー65は、電源4の停電発生時に開閉器25が投入状態である場合に動作する。補助リレー65の動作をトリガーとして、停電発生時には制御装置26の記憶装置に投入状態情報が書き込まれ、復電時には該投入状態情報がリセットされる。補助リレー65は、例えば動作時にコイルを励磁させ、接点66および接点67を閉じる。
【0057】
接点68は、電源4の復電投入指令がなされた場合に閉じる。接点68が閉じた状態は、
図7に示す「復電投入指令ON」75を満たす状態に相当する。一方、接点68が開いた状態は、該「復電投入指令ON」75を満たさない状態に相当する。復電投入指令は、例えば復電投入指令を示す信号が電源4から制御装置26に送信されることで、受変電設備2に対してなされる。復電投入指令がなされた場合、例えば復電投入指令を示す信号として、電源4の復旧(復電)を示す検出信号が検出器24から制御装置26に送信される(もしくは停電の発生を示す検出信号の送信が停止する)。換言すれば、この場合、復電条件(第1の復電条件および第2の復電条件)が成立する。
【0058】
その他復電条件69は、上述したS106で説明したその他の復電条件であり、例えば復電してからどの程度経過した場合に開閉器25に投入指令を出すかなどのタイマ情報が設定されている場合、負荷6である電気機器に故障が発生しておらずもしくは故障が解消しており通電可能な状態となっている場合などに成立し、そうでない場合に成立しない条件である。その他復電条件69が成立する場合は、
図7に示す「その他復電条件」76を満たす状態に相当する。一方、その他復電条件69が成立しない場合は、該「その他復電条件」76を満たさない状態に相当する。
【0059】
補助リレー65の動作をトリガーとして、接点67が閉じ、さらに接点68が閉じてかつその他復電条件69が成立すると、投入状態情報に基づいて所定の開閉器25、具体的には停電前に投入状態であった開閉器25が開放状態から投入状態(
図6に示す「開閉器 投入」6Aおよび
図7に示す「開閉器 投入」77に示す状態)に遷移する。
【0060】
図7に示すように、「開閉器 開放状態」71および「停電信号検出ON」72が満たされる場合、AND条件A71が成立する。「その他条件」73が満たされ、「開閉器 投入状態」74のNOT条件N71が満たされる場合、換言すれば「開閉器 投入状態」74が満たされない場合、AND条件A72が成立する。そして、AND条件A71およびAND条件A72がいずれも成立すると、AND条件A73が成立し、投入状態情報が記憶される(
図3のS105および
図7の記憶装置Mの「SET」に相当)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bの各々の識別IDに紐付けられた設定値が所定値に設定され、制御装置26の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶される。
【0061】
これに対し、「その他条件」73が満たされ、「開閉器 投入状態」74が満たされる場合、AND条件A72は成立しない。したがってこの場合、投入状態情報は記憶されない。一方、この場合にはAND条件A72のNOT条件N72が成立し、投入状態情報がリセットされる(
図3のS112および
図7の記憶装置Mの「RESET」に相当)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bの各々の識別IDに紐付けられた設定値が所定値から初期値に戻され、制御装置26の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶される。
【0062】
そして、「復電投入指令ON」75および「その他復電条件」76が満たされる場合、AND条件A74が成立する。この場合、
図7の記憶装置Mの「SET」に相当するAND条件A73が成立していると、AND条件A75が成立し、投入状態情報に基づいて所定の開閉器25、具体的には停電前に投入状態であった開閉器25が開放状態から投入状態に遷移する(
図7に示す「開閉器 投入」77)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bが開放状態から投入状態に遷移する。
【0063】
ここで、停復電制御処理における開閉器25の投入状態情報の書き込みとリセットのタイミングは、
図6および
図7に示す例には限定されない。例えば投入状態情報の書き込みとリセットを
図8および
図9に示すタイミングで実行してもよい。以下、
図8および
図9に示す例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態における受変電システムのシステム構成は、
図1に示す第1の実施形態の受変電システム1と同様である。また、第2の実施形態における受変電設備2の構成は、
図2に示す第1の実施形態の受変電設備2と同様である。第2の実施形態においては、制御装置26の動作制御部261に含まれる停復電制御プログラム、換言すれば開閉器25の動作を制御する制御方法の一部が第1の実施形態とは異なる。
【0064】
(第2の実施形態)
図8は、本実施形態の制御装置26が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための状態記憶回路図(展開接続図)である。
図9は、本実施形態の制御装置26が投入状態情報の書き込みとリセットを行うための制御ブロック図(処理の流れを示す模式図)である。
【0065】
図8において、接点81および接点82は、電源4の停電発生時に開閉器25が投入状態である場合に動作する。接点81は、開閉器25が投入状態である場合に閉じる。接点81が閉じた状態は、
図9に示す「開閉器 投入状態」91を満たす状態に相当する。一方、接点81が開いた状態は、該「開閉器 投入状態」91を満たさない状態に相当する。
【0066】
接点82は、接点62と同様に、停電発生時に制御装置26が停電の発生を示す検出信号を検出器24から受信すると閉じる。接点82が閉じた状態は、
図9に示す「停電信号検出ON」92を満たす状態に相当する。一方、接点82が開いた状態は、該「停電信号検出ON」92を満たさない状態に相当する。
【0067】
接点83は、電源4の復電投入指令がなされた場合に開く。接点83が開いた状態は、
図9に示す「復電投入指令ON」94を満たさない状態に相当する。一方、接点83が閉じた状態は、該「復電投入指令ON」94を満たす状態に相当する。復電投入指令がなされた場合、例えば電源4の復旧(復電)を示す検出信号が検出器24から制御装置26に送信される(もしくは停電の発生を示す検出信号の送信が停止する)。またこの場合、復電条件(第1の復電条件および第2の復電条件)が成立する。
【0068】
その他条件84は、その他条件64と同様である。その他条件84が成立する場合は、
図9に示す「その他条件」93を満たす状態に相当する。一方、その他条件84が成立しない場合は、該「その他条件」93を満たさない状態に相当する。
【0069】
補助リレー85は、補助リレー65と同様に、電源4の停電発生時に開閉器25が投入状態である場合に動作する。補助リレー85の動作をトリガーとして、停電発生時には制御装置26の記憶装置に投入状態情報が書き込まれ、復電時には該投入状態情報がリセットされる。補助リレー85は、例えば動作時にコイルを励磁させ、接点86および接点87を閉じる。
【0070】
接点88は、接点68と同様に、電源4の復電投入指令がなされた場合に閉じる。接点88が閉じた状態は、
図9に示す「復電投入指令ON」94を満たす状態に相当する。一方、接点88が開いた状態は、該「復電投入指令ON」94を満たさない状態に相当する。復電投入指令がなされた場合、例えば復電投入指令を示す信号として、電源4の復旧(復電)を示す検出信号が検出器24から制御装置26に送信される(もしくは停電の発生を示す検出信号の送信が停止する)。またこの場合、復電条件(第1の復電条件および第2の復電条件)が成立する。
【0071】
その他復電条件89は、上述したS106で説明したその他の復電条件であり、その他の復電条件69と同様である。その他復電条件89が成立する場合は、
図9に示す「その他復電条件」96を満たす状態に相当する。一方、その他復電条件89が成立しない場合は、該「その他復電条件」96を満たさない状態に相当する。
【0072】
補助リレー85の動作をトリガーとして、接点87が閉じ、さらに接点88が閉じてかつその他復電条件89が成立すると、投入状態情報に基づいて所定の開閉器25、具体的には停電前に投入状態であった開閉器25が開放状態から投入状態(
図8に示す「開閉器 投入」8Aおよび
図9に示す「開閉器 投入」96に示す状態)に遷移する。
【0073】
図9に示すように、「開閉器 投入状態」91および「停電信号検出ON」92が満たされる場合、AND条件A9が成立する。「その他条件」93が満たされ、「復電投入指令ON」94のNOT条件N91が満たされる場合、換言すれば「復電投入指令ON」94が満たされない場合、AND条件A92が成立する。そして、AND条件A91およびAND条件A92がいずれも成立すると、AND条件A93が成立し、投入状態情報が記憶される(
図3のS105および
図9の記憶装置Mの「SET」に相当)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bの各々の識別IDに紐付けられた設定値が所定値に設定され、制御装置26の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶される。
【0074】
これに対し、「その他条件」93が満たされ、「復電投入指令ON」94が満たされる場合、AND条件A92は成立しない。したがってこの場合、投入状態情報は記憶されない。一方、この場合にはAND条件A92のNOT条件N92が成立し、投入状態情報がリセットされる(
図3のS112および
図9の記憶装置Mの「RESET」に相当)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bの各々の識別IDに紐付けられた設定値が所定値から初期値に戻され、制御装置26の記憶装置(不揮発メモリ)に記憶される。
【0075】
そして、「復電投入指令ON」94および「その他復電条件」95が満たされる場合、AND条件A94が成立する。この場合、
図9の記憶装置Mの「SET」に相当するAND条件A93が成立していると、AND条件A95が成立し、投入状態情報に基づいて所定の開閉器25、具体的には停電前に投入状態であった開閉器25が開放状態から投入状態に遷移する(
図9に示す「開閉器 投入」96)。本実施形態では一例として、第1の開閉器25sおよび第2の開閉器25a,25bが開放状態から投入状態に遷移する。
【0076】
このように、第1および第2の実施形態によれば、電源4の停電時には、投入状態の開閉器25を自動的に開放し、復電時に該開閉器25を自動的に投入することができる。その際、受変電設備2が複数の開閉器25を備え、通常運用にはその一部が開放状態とされている場合であっても、停電時に投入状態であった開閉器25のみを投入状態に復帰させ、停電時に開放状態であった開閉器25は開放状態のまま維持させることができる。
【0077】
すなわち、停電の発生時には、その時点で投入状態である開閉器25の投入状態情報を書き出して記憶する。停電からの復電時には、記憶した投入状態情報を読み出し、該投入状態情報に応じて開閉器25を投入状態に復帰させる。これにより、停電時に投入状態であった開閉器25のみを投入状態に復帰させることができるとともに、停電時に開放状態であった開閉器25は開放状態のまま維持させることができる。
【0078】
さらに、停電からの復電時には、記憶した投入状態情報がリセットされる。これにより、通常運用時における開閉器25の動作(投入もしくは開放)の切り替え自由度を高めることができる。すなわち、複数の開閉器25の動作の切り替え態様に関わらず、停電時に投入状態であった開閉器25のみを投入状態に適切に復帰させることができる。その結果、復電時において、受変電設備2を停電前の状態に適切に戻すことができる。
【0079】
したがって、第1および第2の実施形態に係る制御装置26、該制御装置26で実行される停復電制御プログラム、および開閉器25の動作を制御する制御方法によれば、電源4の停復電時に開閉器25を適切に開放および投入させることができ、受変電設備2を適切に通常運用に復帰させることができる。
【0080】
以上、本発明の各実施形態(変形例を含む)を説明したが、上述した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1…受変電システム、2…受変電設備、4…電源、6…負荷、21…主回路導体、22…母線、23,23a,23b,23c…分岐線、24,24a,24b…検出器、25,25a,25b,25c,25s…開閉器、26…制御装置、27…変圧器(主変圧器)、28a…第1の計器用変圧器、28b…第2の計器用変圧器。