(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163603
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】充電制御システム、充電制御装置、充電制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241115BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241115BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 P
H02J3/14
H02J7/02 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079359
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 和也
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】徳永 博
(72)【発明者】
【氏名】衣川 英明
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA06
5G066AE09
5G066DA03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB00
5G503CA08
5G503EA01
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】複数の電気自動車等を充電する際に、ユーザー間の不公平の発生を抑止する。
【解決手段】電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御システムであって、前記充電器と接続する前記車両ごとの個別要求充電電力量の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量の総和である総要求充電電力量に対する前記充電器と接続する前記車両それぞれについての前記個別要求充電電力量の比率を求める按分比率算出手段と、前記需要家における充電用電力量の情報と前記比率の情報とを用いて、前記充電用電力を前記車両のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量を算出する按分後電力量算出手段と、前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して、前記按分後電力量を出力する指令を行う電力制御手段とを有する充電制御システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御システムであって、
前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量である個別要求充電電力量の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量の総和である総要求充電電力量に対する前記充電器と接続する前記車両それぞれについての前記個別要求充電電力量の比率を求める按分比率算出手段と、
前記需要家において前記充電のために利用可能な充電用電力量の情報と前記比率の情報とを用いて、前記充電用電力を前記充電器と接続する前記車両のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量を算出する按分後電力量算出手段と、
前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して、前記按分後電力量(kWh)を出力する指令を行う電力制御手段と、
を有する充電制御システム。
【請求項2】
少なくとも前記需要家における契約電力の上限値の情報を記憶する記憶手段をさらに
有しており、
前記充電用電力量は、所定時間当たりの、前記契約電力の上限値及び前記需要家において前記充電器以外で用いられる電力の総和、の差により求められる、
請求項1に記載の充電制御システム。
【請求項3】
前記按分後電力量による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段と、
前記充電器のユーザーに対する情報を出力する出力手段と、
をさらに有しており、
前記出力手段は
前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、請求項1に記載の充電制御システム。
【請求項4】
前記車両に対して給電を行っている前記充電器の数に増減が生じる都度、
前記按分比率算出手段は前記比率を算出し、
前記按分後電力量算出手段は前記按分後電力量を算出し、
前記充電完了時間算出手段は前記予測充電完了時間を算出し、
前記出力手段は前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、請求項3に記載の充電制御システム。
【請求項5】
前記充電器のユーザーが情報を入力する入力手段をさらに有しており、
前記按分比率算出手段は
前記入力手段からの入力を介して前記個別要求充電電力量を取得する、
ように構成されている、請求項1に記載の充電制御システム。
【請求項6】
前記按分後電力量による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段と、
前記充電器のユーザーに対する情報を出力する出力手段と、
をさらに有しており、
前記按分比率算出手段は、
現に前記車両に対して給電を行っている前記充電器である稼働中充電器と、未だ給電を開始していないが前記入力手段を介して給電を希望する旨の入力を受けた前記充電器で
ある要求受付充電器、の前記個別要求充電電力量の情報を用いて、前記比率を算出し、
按分後電力量算出手段は、
前記要求受付充電器を含めて前記按分後電力量を算出し、
前記出力手段は
前記要求受付充電器を含めて算出された前記按分後電力量に基づく、前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、請求項5に記載の充電制御システム。
【請求項7】
前記入力手段及び前記出力手段は、通信手段を備える携帯型の情報処理端末に設けられている、
請求項6に記載の充電制御システム。
【請求項8】
電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御装置であって、
前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量である個別要求充電電力量の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量の総和である総要求充電電力量に対する前記充電器と接続する前記車両それぞれについての前記個別要求充電電力量の比率を求め、
前記需要家において前記充電のために利用可能な電力である充電用電力量の情報と前記比率の情報とを用いて、前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して前記充電用電力量を前記比率で按分した按分後電力量を出力する指令を行う、
ように構成されている、充電制御装置。
【請求項9】
情報処理装置によって電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御方法であって、
前記情報処理装置が、前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量である個別要求充電電力量の情報を得るステップと、
前記情報処理装置が、前記需要家において前記充電のために利用可能な充電用電力量を算出するステップと、
前記情報処理装置が、前記個別要求充電電力量の総和である総要求充電電力量に対する前記充電器と接続する前記車両のそれぞれについての前記個別要求充電電力量の比率を求めるステップと、
前記情報処理装置が、前記充電用電力と前記比率とを用いて、前記充電用電力を前記充電器と接続する前記車両のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量を算出するステップと、
前記情報処理装置が、前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して、前記按分後電力量を出力する指令を行うステップと、
を有する充電制御方法。
【請求項10】
コンピュータに請求項9の充電制御方法に記載の各ステップを実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御システム、充電制御装置、充電制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車(Electric Vehicle:EV)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)など、電力を駆動源とし、外部からの電力の供給が可能な蓄電池を内蔵している自家用車両が普及してきている。
【0003】
上記のような車両(以下、EV等ともいう)の普及に伴い、EV等(の蓄電池)を充電可能な施設も増加しており、分譲マンションなどの集合住宅においてもEV等を充電可能な駐車スペースを複数設けることが多くなってきている。
【0004】
ところで、上記のように充電可能な駐車スペースにおいてEV等の充電を行う場合には、EV等の充電に使用する電力と施設の他の箇所(例えば集合住宅における共用部分及び専有部分)において使用される電力(kW)との合計が、所定の上限値を上回ることが無いようにすることが求められる。ここでいう上限値とは、例えば高圧契約(いわゆるデマンド契約)であれば過去12か月間の使用電力のピーク値、低圧契約であれば主開閉器(ブレーカー)の容量から導かれる値などである。
【0005】
このようなニーズに対する技術として、急速充電による電力ピークを抑制しつつ複数台の電気自動車を急速充電し得る電気自動車の充電制御方法が提案されている(特許文献1)。特許文献1には、所定時間において、急速充電器への新規接続により急速充電器と接続された電気自動車のバッテリM3の充電により、充電時の電力(kW)
の合計が契約電力Y(kW)を超える場合の超過積算値Bが、急速充電器と接続状態にある電気自動車のバッテリM1~M3の充電電力の合計が契約電力Y(kW)を超えない場合の差分積算値A1+A2+A3よりも少ないという条件を満足するように、急速充電器を制御する技術が開示されている。これによれば、所定時間(例えば30分間)における平均使用電力(kW)を契約電力(kW)以下に抑えることができ、デマンド値を更新することなく複数の電気自動車を充電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-191471号公報(特許第6864550号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1に記載の技術は、いわゆるデマンド契約下における急速充電を前提として、所定時間内の平均使用電力(kW)が(現在の)契約電力(kW)を超えないように、充電を開始した順にしたがって複数台のEV等への充電量を制御するものである。
【0008】
しかしながら、集合住宅の駐車スペースなどでの充電は、通常いわゆる普通充電による充電であり、充電完了までに時間を要し、また、ユーザーによって次回の走行までに充電を希望する電力量(kWh)はさまざまである。このため、特許文献1の技術のように、単に充電開始順に(いわば早い者勝ちで)充電電力量(kWh)を割り当てるのでは、ユーザーの充電希望電力量(kWh)や充電の開始順によっては、ユーザー間で不公平感が
生じる、という問題がある。また、例えば夜間の駐車中に充電を行うユーザーが複数いた場合、少量の充電で足りるのにも関わらず充電順が後になったばかりに翌日の車両使用時にも全く充電できていない、といった不便が生じる場合もある。さらに、集合住宅に設置された充電器で充電を行い、これによりデマンド値の更新などが生じた場合などには、EV等を使用しない者とEV充電用に電力量(kWh)を使用する者との間で軋轢が生じるおそれもある。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、複数の電気自動車等を充電する際に、ユーザー間の不公平の発生を抑止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御システムであって、
前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量(kWh)である個別要求充電電力量(kWh)の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量(kWh)の総和である総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器と接続する前記車両それぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求める按分比率算出手段と、
前記需要家において前記充電のために利用可能な充電用電力量(kWh)の情報と前記比率の情報とを用いて、前記充電用電力量(kWh)を前記充電器と接続する前記車両のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量(kWh)を算出する按分後電力量(kWh)算出手段と、
前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して、前記按分後電力量(kWh)を出力する指令を行う電力制御手段と、
を有する充電制御システムである。
【0011】
ここで、電力を動力源とする車両、には電気自動車のみならず、外部からの電力供給により充電可能な蓄電池を備えるPHV、PHEVなども含まれる。また、「前記充電のために利用可能な電力」とは、需要家においてその時点で充電のために用いることができる電力のことである。
【0012】
このような構成であれば、充電器での充電に用いることが可能な電力を、複数の充電器にそれぞれ接続されたEV等において充電を希望する電力量(kWh)に応じて按分したうえで、当該按分された電力量(kWh)分の充電を確保することができる。このため、特に集合住宅の駐車スペースに設けられる充電器を用いて夜間にEV等を充電するような利用態様の場合、複数ユーザーに先着順で充電電力量(kWh)を分配することに比べて、利用者間の不公平感を低減することができる。より具体的な例でいうと、先に充電を開始したユーザーが大容量の充電を行ったために、後から充電を開始したユーザーは翌日の使用開始時までに全く充電できなかった、というような事態を防止することができる。
【0013】
また、前記充電制御システムは、少なくとも前記需要家における契約電力(kW)の上限値の情報を記憶する記憶手段をさらに有しており、
前記充電用電力量(kWh)は、所定時間当たりの、前記契約電力の上限値及び前記需要家において前記充電器以外で用いられる電力の総和、の差により求められるのであってもよい。
【0014】
ここで、「契約電力(kW)の上限値」とは、例えば、低圧契約ではブレーカー容量、高圧契約では過去12カ月間の最大デマンド値などとすることができる。また、「前記充電器以外で用いられる電力の総和」とは、例えば、集合住宅の専用部分での使用電力と(
充電器以外の)共用部分での使用電力の合計などである。これによれば、EV等の充電によって、高圧契約の場合に最大デマンド値が更新されてしまう、低圧契約の場合ブレーカーがトリップする、といったことを防止することができる。また、EV等への充電に用いることができる電力はいわば契約電力(kW)内の余剰電力ということになるため、充電器を利用しない非EVユーザーへの悪影響を防止することができる。これにより、集合住宅内のEV等のユーザーと非ユーザーとの間で軋轢を生じることを防止することができる。
【0015】
また、前記充電制御システムは、
前記按分後電力量(kWh)による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量(kWh)の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段と、
前記充電器のユーザーに対する情報を出力する出力手段と、
をさらに有しており、
前記出力手段は
前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、ように構成されていてもよい。
【0016】
このような構成によれば、ユーザーは希望する電力量(kWh)を充電するためにどれだけ時間を要するのかを容易に把握することができる。
【0017】
また、前記充電制御システムは、
前記車両に対して給電を行っている前記充電器の数に増減が生じる都度、
前記按分比率算出手段は前記比率を算出し、
前記按分後電力量(kWh)算出手段は前記按分後電力量(kWh)を算出し、
前記充電完了時間算出手段は前記予測充電完了時間を算出し、
前記出力手段は前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力するのであってもよい。
【0018】
このような構成であれば、充電器から給電を受ける車両の増減に応じて按分比率が変わり、これによって充電完了までに要する時間に変動が生じる度に、充電器を利用中のユーザーは、その変動した時間の情報を確認することができる。これにより、希望する要領の充電完了までに許容できない程度の時間を要することが判明した場合に、充電を途中で切り上げて、他の充電手段の利用を検討するなどの対応を取ることができる。
【0019】
また、前記充電制御システムは、
前記充電器のユーザーが情報を入力する入力手段をさらに有しており、
前記按分比率算出手段は
前記入力手段からの入力を介して前記個別要求充電電力量(kWh)を取得する、ように構成されていてもよい。
【0020】
ここで、入力手段から入力される情報は個別要求充電電力量(kWh)そのものであってもよいが、必ずしもそれに限られない。例えば、次回の走行予定距離の入力を受け付け、その他の情報(例えば接続される車両のいわゆる電費性能、蓄電池の残容量など)と組み合わせて個別要求充電電力量(kWh)を算出することも、ここでいう「個別要求充電電力量(kWh)を取得する」に含まれる。
【0021】
また、前記充電制御システムは、
前記按分後電力量(kWh)による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量(kWh)の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段
と、
前記充電器のユーザーに対する情報を出力する出力手段と、
をさらに有しており、
前記按分比率算出手段は、
現に前記車両に対して給電を行っている前記充電器である稼働中充電器と、未だ給電を開始していないが前記入力手段を介して給電を希望する旨の入力を受けた前記充電器である要求受付充電器、の前記個別要求充電電力量(kWh)の情報を用いて、前記比率を算出し、
按分後電力量(kWh)算出手段は、
前記要求受付充電器を含めて前記按分後電力量(kWh)を算出し、
前記出力手段は
前記要求受付充電器を含めて算出された前記按分後電力量(kWh)に基づく、前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されていてもよい。
【0022】
このような構成であれば、ユーザーは充電を開始する前(即ち、電力の売買契約が成立し料金の支払いが発生する前)に、充電器を使用して希望する電力量(kWh)の充電を終えるまでにどれだけの時間を要するのかを確認することができる。
【0023】
また、前記入力手段及び前記出力手段は、通信手段を備える携帯型の情報処理端末であってもよい。このような構成であれば、ユーザーは自己の保有するスマートフォンなどを用いて情報の入出力を行うことができ、利便性を高めることができる。
【0024】
また、本発明は次のような充電制御装置としても捉えることができる。即ち、
電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御装置であって、
前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量(kWh)である個別要求充電電力量(kWh)の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量(kWh)の総和である総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器と接続する前記車両それぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求め、
前記需要家において前記充電のために利用可能な電力である充電用電力量(kWh)の情報と前記比率の情報とを用いて、前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して前記充電用電力を前記比率で按分した按分後電力量(kWh)を出力する指令を行う、
ように構成されている、充電制御装置である。
【0025】
また、本発明は次のような電力制御方法としても捉えることができる。即ち、
電力を動力源とする車両に積載された蓄電池に充電可能な充電器を複数有する需要家の前記充電器による充電を制御する充電制御方法であって、
前記充電器と接続する前記車両ごとの前記充電器からの供給を求める電力量(kWh)である個別要求充電電力量(kWh)の情報を得るステップと、
前記需要家において前記充電のために利用可能な電力である充電用電力量(kWh)を算出するステップと、
前記個別要求充電量の総和である総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器と接続する前記車両のそれぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求めるステップと、
前記充電用電力と前記比率とを用いて、前記充電用電力量(kWh)を前記充電器と接続する前記車両のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量(kWh)を算出するステップと、
前記車両と接続する前記充電器のそれぞれに対して、前記按分後電力量(kWh)を出
力する指令を行うステップと、
を有する電力制御方法である。
【0026】
また、本発明は上記の方法に係る各ステップをコンピュータに実行させるプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。また、上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の電気自動車等を充電する際に、ユーザー間の不公平の発生を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態の一例に係る充電制御装置を含む充電制御システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の一例に係る充電制御装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3Aは、実施形態の一例に係るユーザー端末の機能ブロック図である。
図3Bは、実施形態の一例に係るユーザー端末の出力部に表示される画面の第1の例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態の一例に係る充電制御システムにおいて、複数の充電器間における充電量の按分について説明する説明図である。
【
図5】
図5Aは、実施形態の一例に係るユーザー端末の出力部に表示される画面の第2の例を示す図である。
図5Bは、実施形態の一例に係るユーザー端末の出力部に表示される画面の第3の例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の一例に係るユーザー端末の出力部に表示される画面の第4の例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態の一例に係る充電制御装置において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の各例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0030】
<適用例>
本発明は例えば
図1、
図2に示すような充電制御装置10として適用することができる。
図1は本適用例に係る充電制御装置10が適用される充電制御システム1の概略を示す概略図である。
図2は、本適用例に係る充電制御装置10の機能ブロック図である。本適用例に係る充電制御システム1は、例えば分譲マンションなどの集合住宅における給配電システムなどとして実現可能である。
【0031】
図1に示すように、本適用例に係る充電制御システム1は、商用電力系統50に接続される高圧受電設備(キュービクル)20と、キュービクル20を介して電力の供給を受ける集合住宅の共用部21(例えば廊下の電灯やエレベータなど)と、居住者の専有部22(例えば各戸で使用される電気機器など)、複数の充電器30a、30b、30cと、充電制御装置10と、通信ネットワークNを含んで構成される。また、後述のように、充電器30a、30b、30cにEV等の電力を駆動源とする車両(以下、単にEVともいう)40a、40b、40cが接続される際に、当該EV及びそのユーザーが保有するユーザー端末(例えばスマートフォンなどの携帯情報端末)41もシステムの一部を構成する。なお、
図1では電力の接続関係を実線で、情報通信の接続関係を破線で示している。
【0032】
充電器30a、30b、30cは、EV40a、40b、40cと接続してキュービクル20から配電された電力をEVの蓄電池(図示せず)に供給するための電力ライン(図示せず)の他に、それぞれ電力計測部31a、31b、31c、及び通信部32a、32b、32cを備えている。なお、以下では充電器30a、30b、30c、電力計測部31a、31b、31c、通信部32a、32b、32c、EV40a、40b、40cについて、特に区別して説明する必要が無い場合には、充電器30、電力計測部31、通信部32、EV40、とも記載する。
【0033】
また、図示しないが、キュービクル20、共用部21、専有部22にもそれぞれ電力計が取り付けられており、消費電力を計測可能となっている。キュービクル20の電力計は、共用部21、専有部22、及び各充電器30a、30b、30cの消費電力の全体を計測することになる。
【0034】
充電制御装置10は、図示しないがCPU(Central Processing Unit)などの処理装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの主記憶装置、HDD、フラッシュメモリなどの補助記憶装置を備える汎用のコンピュータとして実現することができる。なお、充電制御装置10は、キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど入力装置、ディスプレイ、プリンタ、スピーカなどの出力装置、通信手段(有線、無線を問わない)などを具備していてもよい。
【0035】
充電制御装置10は、通信ネットワークNを介してキュービクル20、各充電器30a、30b、30c、ユーザー端末41と接続され、これらから取得する情報に基づいて、充電器30からEV40への充電電力の制御を行う。即ち、本適用例における充電制御装置10は本発明に係る充電制御装置に相当する。
【0036】
図2が示すように、充電制御装置10は、機能部として、制御部100、記憶部120、通信部130を有している。制御部100は上述の処理装置を含んで構成され、充電制御装置10全体の制御を司る。また、制御部100は機能モジュールとして、ユーザー情報取得部101、電力需要予測部102、充電用電力量算出部103、按分比率算出部104、按分後電力量算出部105、充電完了時間算出部106、予測料金算出部107、UI(User Interface)生成部108、決済処理部109、電力制御指令信号生成部110、を備えている。各機能モジュールは、例えば、記憶装置に格納されたプログラムを演算処理装置が読み込み実行することにより実現してもよい。
【0037】
図3Aはユーザー端末41の機能構成を示すブロック図である。ユーザー端末41は、例えばスマートフォンやタブレット端末、腕時計型のウェアラブル端末などの携帯型情報処理端末などであり、制御部411、入力部412、出力部413、記憶部414、通信部415の各機能部を備えている。制御部411はユーザー端末41の制御を司る手段であり、例えば、CPUなどによって構成される。また、入力部412は出力部413と一体となったタッチパネルディスプレイなどを採用することができる。記憶部414は、主記憶部、補助記憶部などを含んで構成され、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、その他、通信ネットワークNを介して取得する各種データが格納される。また、通信部415は、例えば無線通信のための無線通信回路などを含んで構成される。
【0038】
本適用例に係る充電制御システム1において、複数の充電器30にそれぞれEV40が接続されて充電が行われる場合、充電制御装置10は、充電器30からの充電に用いることができる電力(以下、充電用電力ともいう)を算出したうえで、これらのEV40(の蓄電池)に対して、それぞれのEV40が充電を希望している電力量(kWh)に応じた
比率で充電電力量(kWh)を按分したうえで、給電が行われるように各充電器を制御する。
【0039】
即ち、EV40を充電器30に接続した順に早い者勝ちで充電のための電力を使用できるのではなく、ユーザーが次回走行に要する電力量(kWh)の程度に応じた割合で、電力の充電を行うことができるため、後から充電を開始したユーザーが次回の使用開始時までに全く充電できなかった、というような事態を防止することができる。
【0040】
<実施形態>
続けて、本発明の実施形態について、図面に基づいてさらに詳しく説明していく。本実施形態に係る充電制御装置10は、上述のように汎用のコンピュータによって構成されている。なお充電制御装置10は1台のコンピュータにより構成してもよいし、複数のコンピュータにより構成してもよい。あるいは、充電制御装置10の機能の一部をネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現してもよい。
【0041】
記憶部120は、主記憶装置、補助記憶装置を含んで構成され、制御部100を機能させるためのプログラムの他、様々な情報が保存される。具体的には、例えば、需要家の電力契約に係る情報、需要家の使用電力計測値(使用実績)、需要家の今後の使用電力の予測値、充電用電力量算出に係る情報(計算式や係数など)、後述の給電按分比率算出に係る情報、EVの蓄電容量と走行距離との変換に係る情報、充電料金の請求に係る情報、ユーザーによって入力される一時的な情報(例えば、ユーザー毎の希望充電量、希望走行距離などの情報、決済手段に係る情報など)などが保存される。なお、これらの情報は、テーブル形式で保存されていてもよい。また、これらの情報は、格納されている情報を相互に参照・連動可能な、いわゆる関係データベースとして機能するように構成されていてもよい。即ち、需要家の今後の使用電力の予測値は使用実績のデータを参照することで更新されるようになっていてもよい。
【0042】
また、通信部130は、例えば、通信IC(Integrated Circuits)などの集積回路を用いて実現され、通信ネットワークNを介してシステムの他の構成要素(キュービクル20、充電器30、ユーザー端末41)や、外部のシステムなどとの間でデータの送受信を実行する。
【0043】
(機能モジュール)
続けて、制御部100が備える各機能モジュールについて説明する。ユーザー情報取得部101は、充電器30での充電制御にあたり必要なユーザー個別の情報を取得する。例えば、ユーザーが充電を希望する充電電力量(kWh)の情報はユーザーしか知り得ないため、このような情報を、ユーザー端末41からの入力を受け付けることで取得する。ユーザー端末41は、例えばスマートフォンなどの入力手段及び画像表示手段を備える端末であり、ユーザー情報取得部101は通信ネットワークNを介して、UI生成部108が生成する情報入力画面をユーザー端末41に表示させるとともに、これに対する入力を受け付けることで情報を取得することができる。
【0044】
図3Bにこのような情報入力画面の一例を示す。
図3Bに示すように、ユーザー情報入力画面は、希望する充電電力量(kWh)そのものの入力を求めるのではなく、充電を希望するEV40の電費性能、次回の走行希望距離、蓄電池の現在の残容量、充電器への連続した接続が可能な時間、などの情報を入力するようになっていてもよい。勿論、希望する充電電力量(kWh)そのものの値を入力するようになっていてもよい。なお、ここで入力を受け付けた情報は、一旦記憶部120のそれぞれの情報が保存される領域に記憶される。
【0045】
また、ユーザー情報取得部101は、ユーザー端末41からの情報入力受付に限らず、他の手段によっても必要な情報を取得することができる。例えば、充電器30に接続されたEV40の接続端子を介して蓄電池の残容量の値(また、可能であれば電費性能に係る情報)を取得することも可能である。また、制御部100での演算のために記憶部120からデータを読み出すことは当然に行われる。
【0046】
電力需要予測部102は、記憶部120に蓄積されている電力量使用実績データなどに基づいて、需要家において充電器30からの充電を除いた共用部21及び専有部22で使用する電力量(kWh)の需要を予測する。即ち今後の共用部21及び専有部22での今後の電力使用量(kWh)の予測値を算出する。また、算出された予測値はさらに記憶部120に保存されてもよい。
【0047】
充電用電力量算出部103は、需要家における契約電力に係る情報(例えば過去12カ月の最大のデマンド値)と、電力需要予測部102により算出された予測値に基づいて、充電器30での充電に使用できる電力量(kWh)を算出する。本実施形態に係る充電制御システム1において、商用電力系統50から供給される電力は、キュービクル20を介して、充電器30だけでなく、共用部21や専有部22の設備に対しても給電される。これらの設備については、EV40を利用しないユーザーであっても利用するものであり、EV40への充電のみに利用される充電器30への給電よりも共用部21や専有部22への給電優先度が高い。このため、契約電力の上限値から共用部21や専有部22で使用する電力(の予測値)を減じて残った分の電力を、充電量電力とするようになっている。例えば、契約電力が60kWの集合住宅において、共用部21と専有部22の電力使用量の予測値が58kWである場合、充電用電力は2kWとなる。そして、当該充電用電力を所定時間(例えば5時間)分積算して充電用電力量を算出する。
【0048】
按分比率算出部104は、複数の充電器30が使用される場合に、各充電器と接続するEV40ごとの充電器30からの希望充電電力量(個別要求充電電力量(kWh))の情報を用いて、それぞれの個別要求充電電力量(kWh)の総和である総要求充電電力量(kWh)を求め、該総要求充電電力量(kWh)に対する、各充電器30に接続されるEV40ごとの個別要求充電電力量(kWh)の比率(以下、給電按分比率ともいう)を求める。具体的には、例えば、充電器30a、30bにそれぞれEV40a、40bが接続され、EV40aの個別要求充電電力量(kWh)が15kWh、EV40bの個別要求容量が5kWhであった場合、総要求充電電力量(kWh)が20kWhとなる。ここから、EV40aの按分比率を75%(15/20×100)、EV40bの給電按分比率を15%(5/20×100)として算出する。
【0049】
なお、各EV40における個別要求充電電力量(kWh)は、ユーザー情報取得部101が取得する情報に基づいて求めることができる。各ユーザーが希望充電電力量(kWh)として個別要求充電電力量(kWh)そのものの値を入力するのであってもよいし、その他の情報を用いて個別要求充電電力量(kWh)を算出するのであってもよい。例えば、充電を希望するEV40の電費性能、次回の走行希望距離、蓄電池の現在の残容量などの情報に基づいて個別要求充電電力量(kWh)を求めることができる。
図4を用いてこのような場合の例を説明する。
【0050】
図4は、充電器30a、30b、30cに接続され、充電を希望するEV40a、40b、40cそれぞれについての次回走行予定距離、蓄電池の残容量、電費性能の情報、個別要求充電量、給電按分比率、を一覧形式の表にしたものである。
図4に示すようにEV40aについては、次回走行予定が100km、蓄電池の残容量は2kWh、電費性能0.17kWhである。これらの情報はユーザーがすべて都度入力するのであってもよいし、例えば登録ユーザー情報として予め記憶部120に保存されるのであってもよいし、一
部の情報をEV40との通信によって取得するのであってもよい。いずれにせよ、これらの情報から、100km×0.17kWh-2kWhの計算により、次回走行後の蓄電池の残容量を考慮しない場合の個別要求充電量を15kWhとして求めることができる。EV40bについても同様である。
【0051】
按分後電力量算出部105は、充電を希望するEV40ごとに求められた給電按分比率を充電用電力量(kWh)に乗ずることによって、充電を希望するEV40ごとに充電器30から供給される電力量(kWh)の値(以下、按分後電力量(kWh)ともいう)を求める。例えば、
図4の例で、充電用電力量が10kWh(2kw×5時間)である場合を考えると、EV40aについての按分後電力量は7.5kWhということになる。同様に、EV40bについては、2.5kWhということになる。
【0052】
充電完了時間算出部106は、充電を希望するEV40ごとに個別要求充電電力量(kWh)の充電が完了するまでに要する時間(以下、充電完了時間ともいう)を算出する。例えば、按分後電力量算出部105が算出した按分後電力量が個別要求充電電力量を満たす場合に、各EV40に対して、個別要求充電電力量を満たすまで1台ずつ順次充電を行うのであれば、充電が行われる順番を加味したうえで充電完了時間を算出するようにしてもよい。また、複数のEV40を並行して充電する場合には、例えば充電器30によるEV40への充電が可能な所定時間(例えば、24時から5時までの5時間)を充電完了時間としてもよい。一方、按分後充電電力量が個別要求充電電力量に満たない場合においては、上記の所定時間内に充電が完了しない旨の結果を出力するようになっていてもよい。また、配分する充電時間の算出には、外気温や各EV40の蓄電残量(例えば申告値)などの情報を用いてもよい。
【0053】
予測料金算出部107は、電力量(kWh)の単価(例えば、1kWh当たりの金額)と、予測の充電電力量(kWh)との乗算により、ユーザーに請求される料金の予測額(以下、予測料金ともいう)を算出する。電力量の単価は例えば記憶部120に格納しておけばよい。なお、予測料金は、想定される充電電力量(kWh)に応じて算出され、必ずしも個別要求充電電力量(kWh)の全てを充電した場合の金額になるわけではない。
【0054】
例えば、充電器30からEV40へ充電できる時間が限られており、個別要求充電電力量(kWh)を充足するだけの充電ができないことが想定される。具体的には、需要家において充電器30からEV40への充電に電力を使用できる時間を「午後10時から翌朝の午前5時まで」などと定めている場合や、単純に充電器30にEV40を接続できる時間があまりないといった場合が考えられる。
【0055】
このようなケースについて
図4のEV40aを例にして説明すると、充電器30aにEV40aを接続して充電を受けることができる時間が5時間の場合に、充電可能な電力量(kWh)(按分後電力量)は7.5kWhとなる。即ち、個別要求充電電力量(kWh)は15kWhであるものの、予測される充電量は7.5kWhであるため、予測料金は単価に7.5を乗じた金額が算出されることになる。
【0056】
UI生成部108は、上述した
図3Bのようなユーザー入力画面や、充電可能電力量(kWh)や充電完了時間或いは利用料金などの種々の情報をユーザーに提示する申込確認画面、充電完了時間や所定時間までに充電可能な電力量(kWh)に変更があった場合にその旨をユーザーに通知する内容変更通知画面、などの様々なUIを生成する。
図5A、
図5B、
図6にUI生成部108が生成するUIの表示画面例を示す。
【0057】
図5A及び
図5Bは、それぞれユーザーが入力した条件に基づいて算出された内容を示すとともに、充電器30による充電を行うか否かを確認する申込確認画面の一例である。
ここで、申込確認画面に表示される情報は、未だ充電が行われていない充電器30を用いて充電を行った場合の仮の情報である。即ち、按分比率算出部104は、現にEV40に対して給電を行っている充電器30である稼働中充電器と、未だ給電を開始していないがユーザー端末41を介して給電を希望する旨の入力を受けた充電器30である要求受付充電器、の個別要求充電電力量(kWh)の情報を用いて、給電按分比率を算出し、按分後電力量算出部105は、要求受付充電器を含めて按分後電力量(kWh)を算出している。そして、ユーザー端末41の出力部413には、
図5Bのように、要求受付充電器を含めて算出された按分後電力量(kWh)に基づく予測充電完了時間及び/又は現在時刻に予測充電完了時間を加算した時刻の情報が出力される。
【0058】
一方、
図6は、充電器30による充電の開始後(或いは、開始前であっても利用の申し込み後)に、申し込み時から充電電力量(kWh)や充電時間に変更が生じた場合に、ユーザーにその旨を伝える内容変更通知画面の一例を示している。充電制御装置10は、EV40に対して給電を行っている充電器30の数に増減が生じる度に、これに応じて給電按分比率、按分後電力量(kWh)、などを再計算する。即ち、充電器30から電力の供給を受けるEV40の数が増減すると、EV40一台あたりの按分比率が変わり、これによって按分後電力量(kWh)も変更される。そうすると、充電電力量(kWh)が変わらない場合には充電時間が変わり、充電時間が変わらない場合には充電電力量(kWh)が変わることになる。例えば、
図4に示す例では充電器30cの枠は利用が無い状態であるが、充電器30cで新たにEV40cが充電を開始したような場合には、EV40a、40bについては按分比率が低下することになり、充電時間が増加するか充電電力量(kWh)が減少してしまう。
【0059】
このような変動が発生した場合には、UI生成部108は、充電を申し込んだ時点から生じた変更の内容を示すUIを作成するとともに、通信ネットワークNを介してユーザー端末41に送信し、ユーザー端末41の出力部413において当該UIが表示される。そうすることで、ユーザーは条件の変更を把握するとともに、その場での充電を継続するか、充電を中止して別の手立てを講じるかを決定することが可能になる。
【0060】
決済処理部109は、実際に充電を行った充電量についての決済処理を実行する。決済に係る情報の一部は記憶部120に格納されていてもよい。また、決済処理部109は必要に応じて通信ネットワークNを通じて外部(例えば信販会社など)のシステムと連携して決済に係る処理を実行してもよい。
【0061】
電力制御指令信号生成部110は、各充電器30に対して、按分後電力量(kWh)でEV40への充電を行うように電力を出力させる制御信号を生成し、通信ネットワークNを介して各充電器30に当該制御信号を送信する。これによって、各充電器30に接続されたEV40への充電が実行される。
【0062】
(処理の流れ)
次に、
図7のフローチャートを参照して、本実施形態に係る充電制御装置10で行われる処理の流れの一例を説明する。
図7に示すように、充電制御装置10は先ず、EVタイプ別の電費情報、電力量の単価などの料金情報、充電料金の請求に係る情報、需要家の電力契約に係る情報などの、各種情報のテーブルを記憶部120において設定する処理を実行する(S101~S104)。
【0063】
続けて、充電制御装置10は、キュービクル20などから使用電力に係る情報を取得し(S105)、需要家において将来に亘る所定時間内において今後使用される電力量の予測値を算出する処理を実行する(S106)。そして、充電制御装置10は、電力契約テーブルを参照するとともに(S107)、ステップS106で算出した予測電力量を用い
て、EVの充電のために用いることができる充電用電力量Pを算出する(S108)。さらに、充電制御装置10は、個々の充電器30に接続されたEV40について、各ユーザーが次回使用時に走行を希望する距離の情報、各EV40の蓄電池の残容量の情報を取得する(S109、S110)。例えば、新規に充電器30に接続したEV40についてはユーザー端末41から、既に充電器30からの充電が実行されているEV40については記憶部120のテーブルから、これらの情報を取得することができる。そして、充電制御装置10は、EVタイプに応じた電費性能に係る情報のテーブルを参照し、ステップS109及びS110で取得した情報を用いて、各充電器30に接続されたEV40ごとの個別要求充電電力量を算出する(S112)。
【0064】
さらに、充電制御装置10は充電器30に接続された全てのEV40の個別要求充電電力量の総和(総要求充電電力量)Hの値を算出し(S113)、これがステップS108で算出した充電用電力量Pの値よりも大きいか否かを判断する(S114)。ここで、P<Hであると判断した場合には、充電制御装置10は、総要求充電電力量Hに対する充電器30(に接続されるEV40)それぞれについての給電按分比率を算出する(S115)。続けて、充電制御装置10は、充電用電力量PとステップS115で算出した給電按分比率とを用いて、充電器30に接続されるEV40それぞれについて、按分後充電電力量を算出する(S116)。そして、充電制御装置10は、算出した按分後充電電力量をユーザー端末41に送信するなどして出力する処理を行い(S117)、ステップS118に進む。
【0065】
一方、充電制御装置10はステップS114で、P<Hではないと判断した場合には、ステップS118に進み、ステップS118の処理を実行する。ステップS118では、充電制御装置10は、充電器30によるEV40への充電を実行するか否かの申込情報を含む契約情報の入力を受け付ける(S118)。ここで、契約情報の入力は、例えばユーザー端末41のUIなどを介して入力された情報を受信することによって行われる。なお、ステップS114でP<Hであった場合には、ユーザーの希望通りの充電電力量ではなく按分後充電電力量がステップS117で出力されてユーザーに提示される。このため、充電制御装置10がステップS118で受け付ける入力情報は、P<Hである場合には案分後充電電力量での充電を実行するか否かについてのユーザーの意思が含まれる。
【0066】
そして、充電制御装置10は、ステップS118で入力を受け付けた情報に基づいて、各充電器30に接続されたEV40のユーザーごとに、充電の意思があるか否か(充電の申し込みがあったか否か)を判断する(S119)。ここで、充電の意思がないと判断した場合には、ステップS121に進む。
【0067】
一方、S119において、充電の意思がある(申込があった)と判断した場合には、充電制御装置10は、対象の充電器30について電力の出力を行うための制御信号を生成して送信するなどの充電電力制御処理を実行する(S120)。そして、充電器30からEV40への充電が終了すると、充電料金の精算に係る決済処理を実行し(S121)、対応する充電器30に係る充電処理を一旦終了する。
【0068】
ステップS121では、契約内容を記録し、使用電力量及び料金単価(料金テーブルを参照)の情報を用いて請求額を計算し、決済方法に応じた料金精算などが行われる。なお、ステップS119で、充電の意思がないと判断された場合であっても、上述のように充電器30に接続されるEV40の増減によって充電の途中であっても按分後充電電力量が変更される場合がある。この場合には改めてユーザーにその内容での充電を行う意思があるか否かが判定されることになるため、按分後充電電力量が変更された場合に充電の意思が無くなる(即ち、ステップS119の判断でNOとなる)場合もある。その場合には、ステップS121で既に充電が行われた分について、決済処理が実行される。なお、上記
のルーチンの全部又は一部は適宜のタイミングで繰り返し実行される。
【0069】
以上のような本実施形態に係る充電制御システム1によれば、EV40ユーザーの要求充電量電力量(kWh)に応じた按分を行うため、ユーザー間の不公平感を抑止できる。また、按分したうえでの充電予測電力量(kWh)及び/または充電完了時間をユーザー端末41に示すことで、ユーザーはその充電器30による充電を行うか(或いは、充電を継続するか)否かの判断を行うことができる。また、需要家のEV充電以外のピーク電力(kW)と利用上限(契約電力(kW))との差分をEV充電用に使用することにより、非EVユーザーとEVユーザー間の衝突を回避することができる。
【0070】
<変形例>
なお、上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、個別要求充電電力量(kWh)の算出方法の例として、次回走行予定距離に電費性能を乗じた値から蓄電池の残容量を減じる計算を行う例を示したが、実際には蓄電池の残量は次回走行後にも、ある程度の余裕を残しておく方が望ましい。このため、例えば、次回走行予定距離に電費性能を乗じた値に、蓄電池の最大容量の20%の値を加え、その値から蓄電池の現在の残容量を減じる、といった計算によって個別要求充電電力量(kWh)を求めるようにしてもよい。
【0071】
また、上述のように、総要求充電電力量(kWh)に対して十分な電力供給が可能であれば、電力を複数のEVで按分する必要はない。需要家において充電器30による充電可能な時間(例えば夜間の所定時間)の充電用電力量を求め、当該電力量が総要求充電電力量(kWh)を上回っているのであれば、各EVには要求通りの充電を行うことが可能であるため、個別要求充電電力量(kWh)に応じた按分を行う必要はない。
【0072】
また、上記実施形態では、充電制御装置10の記憶部120に種々のデータが保存されていたが、これらのデータは充電制御装置10とは別体のデータサーバなどに保存されるのであってもよい。即ち、充電制御システム1は別途データサーバを含む構成であってもよい。
【0073】
また、上記実施形態において、ユーザーからの入力を受け付ける入力手段、及びユーザーに情報を提供する出力手段は、ユーザーが保有するユーザー端末41に備えられるものであったが、これに替えて或いはこれに加えて充電器30にこのような入力手段、出力手段を設けるのであってもよい。
【0074】
また、上記実施形態では一の集合住宅に設置される充電器30を対象として説明を行ったが、充電制御システム1(充電制御装置10)は、複数の集合施設(需要家)に配置される充電器の充電制御を行うように設計されていてもよい。例えば、複数の需要家それぞれのデータテーブルを記憶部に保持しておくことで、そのような実施形態にも対応可能である。
【0075】
(付記1)
電力を動力源とする車両(40a、40b、40c)に積載された蓄電池に充電可能な充電器(30a、30b、30c)(30a、30b、30c)を複数有する需要家の前記充電器(30a、30b、30c)による充電を制御する充電制御システム(1)であって、
前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)ごとの前記充電器(30a、30b、30c)からの供給を求める電力量である個別要求充電電力量(kWh)の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量(kWh)の総和で
ある総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)それぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求める按分比率算出手段(104)と、
前記需要家において前記充電のために利用可能な電力である充電用電力量(kWh)の情報と前記比率の情報とを用いて、前記充電用電力を前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力を算出する按分後電力量(kWh)算出手段(105)と、
前記車両と接続する前記充電器(30a、30b、30c)のそれぞれに対して、前記按分後電力量(kWh)を出力する指令を行う電力制御手段(110)と、
を有する充電制御システム(1)。
【0076】
(付記2)
少なくとも前記需要家における契約電力(kW)の上限値の情報を記憶する記憶手段(120)をさらに有しており、
前記充電用電力量(kWh)は、所定時間当たりの、前記契約電力(kW)の上限値及び前記需要家において前記充電器(30a、30b、30c)以外で用いられる電力(kW)の総和、の差により求められる、
付記1に記載の充電制御システム(1)。
【0077】
(付記3)
前記按分後電力量(kWh)による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量(kWh)の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段(106)と、
前記充電器(30a、30b、30c)のユーザーに対する情報を出力する出力手段(413)と、
をさらに有しており、
前記出力手段(413)は
前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、付記1又は2に記載の充電制御システム。
【0078】
(付記4)
前記車両(40a、40b、40c)に対して給電を行っている前記充電器(30a、30b、30c)の数に増減が生じる都度、
前記按分比率算出手段は前記比率を算出し、
前記按分後電力値算出手段は前記按分後電力量(kWh)を算出し、
前記充電完了時間算出手段は前記予測充電完了時間を算出し、
前記出力手段は前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、付記3に記載の充電制御システム(1)。
【0079】
(付記5)
前記充電器(30a、30b、30c)のユーザーが情報を入力する入力手段(412)をさらに有しており、
前記按分比率算出手段(104)は
前記入力手段(412)からの入力を介して前記個別要求充電量(kWh)を取得する、
ように構成されている、付記1から4のいずれか一項に記載の充電制御システム(1)。
【0080】
(付記6)
前記按分後電力量(kWh)による給電を行った場合に前記個別要求充電電力量(kWh)の充電が完了するまでに要する予測充電完了時間を算出する、充電完了時間算出手段(106)と、
前記充電器(30a、30b、30c)のユーザーに対する情報を出力する出力手段(413)と、
をさらに有しており、
前記按分比率算出手段(104)は、
現に前記車両(40a、40b、40c)に対して給電を行っている前記充電器である稼働中充電器と、未だ給電を開始していないが前記入力手段を介して給電を希望する旨の入力を受けた前記充電器である要求受付充電器、の前記個別要求充電電力量(kWh)の情報を用いて、前記比率を算出し、
按分後電力量(kWh)算出手段(105)は、
前記要求受付充電器を含めて前記按分後電力量(kWh)を算出し、
前記出力手段(413)は
前記要求受付充電器を含めて算出された前記按分後電力量(kWh)に基づく、前記予測充電完了時間及び/又は現在時刻に前記予測充電完了時間を加算した時刻の情報を出力する、
ように構成されている、付記5に記載の充電制御システム(1)。
【0081】
(付記7)
前記入力手段(412)及び前記出力手段(413)は、通信手段(415)を備える携帯型の情報処理端末(41)に設けられている、
付記6に記載の充電制御システム(1)。
【0082】
(付記8)
電力を動力源とする車両(40a、40b、40c)に積載された蓄電池に充電可能な充電器(30a、30b、30c)を複数有する需要家の前記充電器(30a、30b、30c)による充電を制御する充電制御装置(10)であって、
前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)ごとの前記充電器(30a、30b、30c)からの供給を求める電力量(kWh)である個別要求充電電力量(kWh)の情報、を用いて、前記個別要求充電電力量(kWh)の総和である総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)それぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求め、
前記需要家において前記充電のために利用可能な充電用電力量(kWh)の情報と前記比率の情報とを用いて、前記車両(40a、40b、40c)と接続する前記充電器(30a、30b、30c)のそれぞれに対して前記充電用電力量(kWh)を前記比率で按分した按分後電力量(kWh)を出力する指令を行う、
ように構成されている、充電制御装置(10)。
【0083】
(付記9)
情報処理装置によって電力を動力源とする車両(40a、40b、40c)に積載された蓄電池に充電可能な充電器(30a、30b、30c)を複数有する需要家の前記充電器(30a、30b、30c)による充電を制御する充電制御方法であって、
前記情報処理装置が前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)ごとの前記充電器(30a、30b、30c)からの供給を求める電力量(kWh)である個別要求充電電力量(kWh)の情報を得るステップ(S101)と、
前記情報処理装置が前記需要家において前記充電のために利用可能な充電用電力量(kWh)を算出するステップ(S102)と、
前記情報処理装置が前記個別要求充電電力量(kWh)の総和である総要求充電電力量(kWh)に対する前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)のそれぞれについての前記個別要求充電電力量(kWh)の比率を求めるステップ(S103)と、
前記情報処理装置が前記充電用電力と前記比率とを用いて、前記充電用電力を前記充電器(30a、30b、30c)と接続する前記車両(40a、40b、40c)のそれぞれに応じた前記比率で按分した按分後電力量(kWh)を算出するステップ(S104)と、
前記情報処理装置が前記車両(40a、40b、40c)と接続する前記充電器(30a、30b、30c)のそれぞれに対して、前記按分後電力量(kWh)を出力する指令を行うステップ(S105)と、
を有する充電制御方法。
【0084】
(付記10)
コンピュータに付記9の充電制御方法に記載の各ステップを実行させるプログラム。
【符号の説明】
【0085】
1・・・充電制御システム
10・・・充電制御装置
20・・・キュービクル
21・・・共用部
22・・・専用部
30a、30b、30c・・・充電器
31a、31b、31c・・・計測部
32a、32b、32c・・・通信部
40a、40b、40c・・・EV
41・・・ユーザー端末
50・・・商用電力系統
N・・・通信ネットワーク