(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163611
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法
(51)【国際特許分類】
H02P 5/46 20060101AFI20241115BHJP
B64C 27/24 20060101ALI20241115BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
H02P5/46 A
B64C27/24
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079372
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】川島 徹也
(72)【発明者】
【氏名】大野 友幹
(72)【発明者】
【氏名】高畑 良一
【テーマコード(参考)】
5H572
【Fターム(参考)】
5H572AA20
5H572EE04
5H572HC01
5H572HC04
5H572HC09
(57)【要約】
【課題】電動垂直離着陸航空機の軽量化を図り、航続可能距離の増加を図ることが可能な電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法を提供する。
【解決手段】インバータ101~108と、インバータ101~108の電力供給先を切り替える制御装置400と、を備え、インバータ101~108は、電動垂直離着陸航空機1が有する垂直用モータ211~218の個数と同数以上あり、垂直用モータ211~218は、それぞれがインバータ101~108と接続しており、水平用モータ311,312は、垂直用モータ212,213,216,217と接続しているインバータ102,103,106,107と接続しており、制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて、インバータ102,103,106,107の電力供給先を垂直用モータ212,213,216,217又は水平用モータ311,312に切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1台以上の垂直用プロペラ及び1台以上の水平用プロペラを有する電動垂直離着陸航空機用の電動推進装置において、
前記垂直用プロペラと接続する垂直用モータと、
前記水平用プロペラと接続する水平用モータと、
1台以上のインバータと、
前記インバータの電力供給先を切り替える制御部と、を備え、
前記インバータは、前記電動垂直離着陸航空機が有する前記垂直用モータの個数と同数以上あり、
前記垂直用モータは、それぞれが1台以上の前記インバータと接続しており、
前記水平用モータは、前記垂直用モータと接続している1台以上の前記インバータと接続しており、
前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記インバータの電力供給先を前記垂直用モータ又は前記水平用モータに切り替える
電動推進装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動推進装置において、
前記水平用モータの水平用モータ巻線は、2台以上の前記インバータにそれぞれ接続された複巻となっている
電動推進装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電動推進装置において、
前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機が垂直方向のみの移動から水平方向を含む移動に切り替えるタイミングにおいて、1台以上の前記インバータの電力供給先を前記垂直用モータから前記水平用モータに切り替える
電動推進装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電動推進装置において、
前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、1台以上の前記インバータの動作を停止する
電動推進装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電動推進装置において、
前記垂直用モータは、2以上の垂直用モータ巻線を備えており、
前記垂直用モータ巻線のそれぞれが前記インバータと接続している
電動推進装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電動推進装置において、
前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記垂直用モータに接続している2台以上の前記インバータのうち1台以上の前記インバータの出力先を前記水平用モータに切り替える
電動推進装置。
【請求項7】
請求項5に記載の電動推進装置において、
前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記垂直用モータに接続している2台以上の前記インバータのうち1台以上の前記インバータの動作を停止する
電動推進装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電動推進装置を備える電動垂直離着陸航空機。
【請求項9】
1台以上の垂直用プロペラと、
前記垂直用プロペラと接続する垂直用モータと、
1台以上の水平用プロペラと、
前記水平用プロペラと接続する水平用モータと、
前記垂直用モータの個数と同数以上のインバータと、を有する電動垂直離着陸航空機の飛行方法であって、
前記垂直用モータを、それぞれが1台以上の前記インバータと接続し、
前記水平用モータを、前記垂直用モータと接続している1台以上の前記インバータと接続し、
前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記インバータの電力供給先を前記垂直用モータ又は前記水平用モータに切り替える
電動垂直離着陸航空機の飛行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータ及び電動ブレーキへの電力供給を簡素な構成で実現する車両用制動システムの一例として、特許文献1には、インバータは、バッテリの電力を変換した電力を、インホイールモータ又は電動ブレーキのいずれか一方に供給可能であり、配線切替部は、インバータからインホイールモータ又は電動ブレーキへの配線を切り替え、車両ECUは、インバータを操作し、且つ、配線切替部に対し配線の切替を指令し、車両の駆動が要求されたとき、配線切替部に対しインホイールモータ側に配線を切り替えるように指令するとともに、車両の制動が要求されたとき、要求制動トルクに応じて、回生制動トルク又は電動ブレーキ制動トルクのいずれを用いるかを判断し、当該判断に基づき配線切替部に対し配線の切替を指令する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、新たな交通、輸送手段として注目を集めているe-VTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft:電動垂直離着陸機)は、地上と高高度を短時間で移動する過酷環境で運用され、モータ、インバータ、バッテリを含む電動推進装置には非常に高い信頼性が求められる。また機体重量は、必要となる出力、航続距離に大きく影響するため、電動システムには高い信頼性を維持した上での軽量化が求められる。
【0005】
自動車などの車輪駆動におけるモータ、インバータシステムの軽量化に関するものとして、特許文献1が挙げられる。特許文献1は、電動モータと電動ブレーキに共通のインバータを用いる構成を開示しており、部品点数を削減し、より簡素な構成でシステムを制御することを目的としている。
【0006】
垂直用と水平用の異なるプロペラとそれらを駆動するモータおよびインバータを有するリフト&クルーズタイプのe-VTOLでは、機体の運転状態によって動作する電動コンポーネントが異なるため、動作していない側が死荷重となり、軽量化に不利となるため、異なる対策が必要となる。
【0007】
本発明は、電動垂直離着陸航空機の軽量化を図り、航続可能距離の増加を図ることが可能な電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、1台以上の垂直用プロペラ及び1台以上の水平用プロペラを有する電動垂直離着陸航空機用の電動推進装置において、前記垂直用プロペラと接続する垂直用モータと、前記水平用プロペラと接続する水平用モータと、1台以上のインバータと、前記インバータの電力供給先を切り替える制御部と、を備え、前記インバータは、前記電動垂直離着陸航空機が有する前記垂直用モータの個数と同数以上あり、前記垂直用モータは、それぞれが1台以上の前記インバータと接続しており、前記水平用モータは、前記垂直用モータと接続している1台以上の前記インバータと接続しており、前記制御部は、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記インバータの電力供給先を前記垂直用モータ又は前記水平用モータに切り替える。
【0009】
また、他の一例をあげるならば、1台以上の垂直用プロペラと、前記垂直用プロペラと接続する垂直用モータと、1台以上の水平用プロペラと、前記水平用プロペラと接続する水平用モータと、前記垂直用モータの個数と同数以上のインバータと、を有する電動垂直離着陸航空機の飛行方法であって、前記垂直用モータを、それぞれが1台以上の前記インバータと接続し、前記水平用モータを、前記垂直用モータと接続している1台以上の前記インバータと接続し、前記電動垂直離着陸航空機の動作状態に応じて、前記インバータの電力供給先を前記垂直用モータ又は前記水平用モータに切り替える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動垂直離着陸航空機の軽量化を図り、航続可能距離の増加を図ることができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるe-VTOLとその駆動システムの一例を示すブロック図。
【
図2】本発明の第1の実施形態における電動推進装置を示すブロック図。
【
図3】本発明の第1の実施形態におけるe-VTOLの運転状態に応じて切り替えるインバータの出力先を示す図。
【
図4】本発明の第2の実施形態におけるe-VTOLの駆動システムの一例を示すブロック図。
【
図5】本発明の第2の実施形態におけるe-VTOLの運転状態に応じて切り替えるインバータの出力先、インバータの電力供給先モータ、切替タイミングを示す図。
【
図6】本発明の第3の実施形態におけるe-VTOLの駆動システムの一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
<第1の実施形態>
本発明の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法の第1の実施形態について
図1乃至
図3を用いて説明する。
【0014】
最初に、電動推進装置10を備える電動垂直離着陸航空機1の全体構成について
図1を用いて説明する。
図1は第1の実施形態におけるe-VTOLとその駆動システムの一例を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す電動垂直離着陸航空機1は、電動推進装置10(
図2参照)、8台の垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208、水平用プロペラ301,302、等を備えている。
【0016】
このうち、電動推進装置10は、垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208とそれぞれ機械的に接続されている垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218、水平用プロペラ301,302とそれぞれ機械的に接続されている水平用モータ311,312、8台のインバータ101,102,103,104,105,106,107,108、これらインバータ101,102,103,104,105,106,107,108の電力供給先を切り替える制御装置400、配線切替部222,223,226,227,322,323,326,327等により構成される。
【0017】
このように、本実施形態の電動推進装置10では、インバータ101,102,103,104,105,106,107,108は、電動垂直離着陸航空機1が有する垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218の個数と同数以上設けられている。
【0018】
また、8台の垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218は、それぞれが8台のインバータ101,102,103,104,105,106,107,108と電気的に接続されている。
【0019】
電動推進装置10では、インバータ101の出力電流により垂直用モータ211で垂直用プロペラ201を、インバータ102の出力電流により垂直用モータ212で垂直用プロペラ202を、インバータ103の出力電流により垂直用モータ213で垂直用プロペラ203を、インバータ104の出力電流により垂直用モータ214で垂直用プロペラ204を、インバータ105の出力電流により垂直用モータ215で垂直用プロペラ205を、インバータ106の出力電流により垂直用モータ216で垂直用プロペラ206を、インバータ107の出力電流により垂直用モータ217で垂直用プロペラ207を、インバータ108の出力電流により垂直用モータ218で垂直用プロペラ208を、それぞれ駆動する。
【0020】
また、水平用モータ311の水平用モータ巻線は、垂直用モータ212,216と接続している2台のインバータ102,106と接続しており、水平用モータ312の水平用モータ巻線は、垂直用モータ213,217と接続している2台のインバータ103,107と接続していることにより、2台のインバータ102,106の出力電流により水平用モータ311で水平用プロペラ301が駆動され、2台のインバータ103,107の出力電流により水平用モータ312で水平用プロペラ302が駆動される。
【0021】
図2は第1の実施形態に係るe-VTOLの電動推進装置10のブロック図を示している。なお、インバータ103,107側の系統については、水平用モータ以外の構成の各々の符号の1桁目のうち「2」を「3」に、「6」を「7」に置き換えることで説明されることから、
図2では図示の都合で記載及び説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、電動推進装置10のうち、インバータ102は2つの出力先を持ち、それぞれに取り付けられた配線切替部222,322によって出力先を垂直用モータ212、水平用モータ311に切り替えることが可能である。
【0023】
同様に、インバータ106は2つの出力先を持ち、それぞれに取り付けられた配線切替部226,326によって出力先を垂直用モータ216、水平用モータ311に切り替えることが可能である。
【0024】
水平用モータ311は、2つの異なる巻線を有する二重巻線モータであり、インバータ102からの出力配線と、インバータ106からの出力配線がそれぞれ異なる巻線に接続されている。
【0025】
なお、水平用モータ311,312のそれぞれが二重巻線になっている形態を示したが、二重巻線ではなく、一重巻線であってもよい。この場合、インバータ102,106と水平用モータ311との間に連結用の構成を別途追加することが望ましい。
【0026】
配線切替部222,226,322,326は、リレー等の機械式スイッチでもよいし、半導体スイッチング素子を用いてもよい。
【0027】
制御装置400は、これらの配線切替部222,226,322,326の状態を制御する構成である。
【0028】
本実施形態の制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて、インバータ102,103,106,107の電力供給先を垂直用モータ212,213,216,217又は水平用モータ311,312に切り替える。例えば、制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1が垂直方向のみの移動から水平方向を含む移動に切り替えるタイミングにおいて、インバータ102,103,106,107の電力供給先を垂直用モータ212,213,216,217から水平用モータ311,312に切り替えることができ、また電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて、インバータ102,103,106,107の動作を停止することができる。
【0029】
図3は第1の実施形態におけるe-VTOLの運転状態と、それに応じた制御装置400によるインバータ102,103,106,107の電力供給切り替え先を示している。表に記されていないインバータ101,104,105,108は、各々接続されている垂直用モータ211,214,215,218のみに電力を供給する。
【0030】
垂直方向に最大の出力が必要になる離陸時には8台すべての垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208を駆動するため、出力先を切り替え可能なインバータ102,103,106,107の出力先を垂直用モータ212,213,216,217に接続する。
【0031】
続いて前方に進みながら高度を上げる上昇運転に切り替わる場合は、8台の垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208のうち6台の垂直用プロペラ201,202,203,204,205,208を用いて高度を維持するとともに、出力先をインバータ106,107をそれぞれ水平用モータ311,312へ切り替えて水平用プロペラ301,302を動作させることで水平方向の推力を得る。
【0032】
前方に進みながら高度を上げる上昇運転に切り替わった後で更に水平方向の速度が上昇し、翼からの揚力で高度を維持できるようになると、垂直用プロペラ202,203を停止して、インバータ102,103の出力先を水平用モータ311、312へ切り替えて水平用プロペラ301,302の動作量を増やして、水平方向の推力をさらに上昇させる。
【0033】
十分な高度に達し巡行運転に移る場合、上昇運転よりも水平方向への必要な推力は小さくなるため、インバータ102,103を停止し、高効率に低出力運転を行う。
【0034】
なお、
図3に示すパターンは一例であり、インバータ102,103とインバータ106,107との駆動パターンは逆にすることが可能である。また、巡行運転の際に、インバータ102,103,106,107のいずれも駆動することも可能である。
【0035】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0036】
上述した本発明の第1の実施形態の電動推進装置10は、8台の垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208及び2台の水平用プロペラ301,302を有する電動垂直離着陸航空機1用であって、垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208と接続する垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218と、水平用プロペラ301,302と接続する水平用モータ311,312と、8台のインバータ101,102,103,104,105,106,107,108と、インバータ101,102,103,104,105,106,107,108の電力供給先を切り替える制御装置400と、を備え、インバータ101,102,103,104,105,106,107,108は、電動垂直離着陸航空機1が有する垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218の個数と同数以上あり、垂直用モータ211,212,213,214,215,216,217,218は、それぞれが8台のインバータ101,102,103,104,105,106,107,108と接続しており、水平用モータ311,312は、垂直用モータ212,213,216,217と接続している4台のインバータ102,103,106,107と接続しており、制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて、インバータ102,103,106,107の電力供給先を垂直用モータ212,213,216,217又は水平用モータ311,312に切り替える。
【0037】
このような本実施形態の構成により、それぞれのモータに各1台のインバータを搭載する場合に比べて全体でのインバータ台数を削減することができ、軽量化の効果が期待できる。また、電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて水平方向のモータに接続されるインバータ台数を調整することで低出力時の高効率運転が可能になるため、軽量化と合わせて航続距離の増加が期待できる。
【0038】
また、水平用モータ311の水平用モータ巻線は、2台のインバータ102,106にそれぞれ接続された複巻となっており、水平用モータ312の水平用モータ巻線は、2台のインバータ103,107にそれぞれ接続された複巻となっているため、いずれかのインバータ102,103,106,107が故障した際にも運航を継続できるとともに、配線を結合するための結合インダクタ等が不要となることから、冗長性を担保しつつ軽量化を確実に達成することができる。
【0039】
更に、制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1が垂直方向のみの移動から水平方向を含む移動に切り替えるタイミングにおいて、4台のインバータ102,103,106,107の電力供給先を垂直用モータ212,213,216,217から水平用モータ311,312に切り替えることで、移動モードの切り替えをスムーズに行うことができ、より安全な飛行を実現することができる。
【0040】
また、制御装置400は、電動垂直離着陸航空機1の動作状態に応じて、4台のインバータ102,103,106,107の動作を停止することにより、省エネ運転を実現することができる。
【0041】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法について
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は第2の実施形態におけるe-VTOLの駆動システムの一例を示すブロック図、
図5はe-VTOLの運転状態に応じて切り替えるインバータの出力先、インバータの電力供給先モータ、切替タイミングを示す図である。
【0042】
図4に示す本実施形態の電動垂直離着陸航空機1Aでは、垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208と機械的に接続されている垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aを二重巻線モータとして、それぞれのモータに2台ずつのインバータ101a,101b,102a,102b,103a,103b,104a,104b,105a,105b,106a,106b,107a,107b,108a,108bを接続する。
【0043】
また、制御装置400Aは、電動垂直離着陸航空機1Aの動作状態に応じて、垂直用モータ212A,213A,216A,217Aに接続している2台以上のインバータ102a,102b,103a,103b,106a,106b,107a,107bのうち1台以上のインバータ102b,103b,106b,107bの出力先を水平用モータ311,312に切り替えることができ、更に電動垂直離着陸航空機1Aの動作状態に応じて、垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aに接続している2台以上のインバータ102a,102b,103a,103b,106a,106b,107a,107bのうち1台以上のインバータ102b,103b,106b,107bの動作を停止する。
【0044】
2台の水平用モータ311,312も同じく二重巻線モータであり、2台ずつのインバータ102b,103b,106b,107bの出力配線が接続されている。
【0045】
インバータ101a,101b,102a,102b,103a,103b,104a,104b,105a,105b,106a,106b,107a,107b,108a,108bのうち複数台(インバータ102b,103b,106b,107b)は、垂直用と水平用に出力を切り替えられるようにする構成である。
【0046】
図5は、第2の実施形態におけるe-VTOLの運転状態に応じたインバータの電力供給切り替え先を示す。
【0047】
図5に記されていないインバータ101a,101b,104a,104b,105a,105b,108a,108bは、垂直用モータ211A,214A,215A,218Aのみに電力を供給するものとする。
【0048】
出力先を切り替え可能な4台のインバータ102b,103b,106b,107bのうち、離陸時はすべてのインバータ102b,103b,106b,107bで垂直用モータ212A,213A,216A,217Aに出力を供給する。出力先を切り替えられない4台のインバータ102b,103b,106b,107bは、この離陸時から垂直用モータ212A,213A,216A,217Aに出力を供給する。
【0049】
離陸から上昇に切り替わるタイミングで2台のインバータ106b,107bの出力先を水平用モータ311,312に切り替える。その後で、残る2台のインバータ102b,103bの出力先を水平用モータ311,312に切り替える。
【0050】
更に水平方向の速度が上昇し、翼からの揚力で高度を維持できるようになると、出力先を切り替えられないインバータ102b,103b,106b,107bの垂直用モータ212A,213A,216A,217Aへの出力の供給を停止する。
【0051】
十分な高度に達し巡行運転に移る場合、上昇運転よりも水平方向への必要な推力は小さくなるため、インバータ102b,103bを停止し、高効率に低出力運転を行う。
【0052】
その他の構成・動作は前述した第1の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0053】
本発明の第2の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法においても、前述した第1の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法とほぼ同様な効果が得られる。
【0054】
また、垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aは、2以上の垂直用モータ巻線を備えており、垂直用モータ巻線のそれぞれがインバータ101a,101b,102a,102b,103a,103b,104a,104b,105a,105b,106a,106b,107a,107b,108a,108bと接続していることにより、垂直用のモータも二重巻線として2台のインバータで動作させる場合、通常の1台のインバータで動作させる場合に比べて1台当たりの出力容量は小さくなるため、水平用モータへの出力切り替えをより詳細に実施することができる。また、いずれかのインバータが故障した場合にも飛行が継続可能であり、より冗長性を担保することができる。
【0055】
更に、制御装置400Aは、電動垂直離着陸航空機1Aの動作状態に応じて、垂直用モータ212A,213A,216A,217Aに接続している2台以上のインバータ102a,102b,103a,103b,106a,106b,107a,107bのうち1台以上のインバータ102b,103b,106b,107bの出力先を水平用モータ311b,312bに切り替えることで、離陸から上昇への移行時に垂直方向から水平方向への出力の切り替えをよりスムーズに行うことが期待できる。
【0056】
また、制御装置400Aは、電動垂直離着陸航空機1Aの動作状態に応じて、垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aに接続している2台以上のインバータ102a,102b,103a,103b,106a,106b,107a,107bのうち1台以上のインバータ102b,103b,106b,107bの動作を停止することにより、省エネ運転を実現することができる。
【0057】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法について
図6を用いて説明する。
図6は第3の実施形態におけるe-VTOLの駆動システムの一例を示すブロック図である。
【0058】
図6に示す本実施形態の電動垂直離着陸航空機1Bは、垂直用プロペラ201,202,203,204,205,206,207,208と機械的に接続されている垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aを二重巻線モータとして、それぞれの垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aに各2台のインバータ101a,101b1,102a,102b,103a,103b,104a,104b1,105a,105b1,106a,106b,107a,107b,108a,108b1を接続する。
【0059】
インバータ101a,101b1,102a,102b,103a,103b,104a,104b1,105a,105b1,106a,106b,107a,107b,108a,108b1のうち、複数台のインバータ101b1,102b,103b,104b1,105b1,106b,107b,108b1は、垂直用と水平用に出力を切り替えられるようにする構成である。
【0060】
本実施形態においても、制御装置400Bは、電動垂直離着陸航空機1Bの動作状態に応じて、垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aに接続しているインバータ101a,101b1,102a,102b,103a,103b,104a,104b1,105a,105b1,106a,106b,107a,107b,108a,108b1のうちインバータ101b1,102b,103b,104b1,105b1,106b,107b,108b1の出力先を水平用モータ311b,312bに切り替える。
【0061】
また、制御装置400Bは、電動垂直離着陸航空機1Bの動作状態に応じて、垂直用モータ211A,212A,213A,214A,215A,216A,217A,218Aに接続しているインバータ101a,101b1,102a,102b,103a,103b,104a,104b1,105a,105b1,106a,106b,107a,107b,108a,108b1のうち1台以上のインバータ101a,101b1,102a,102b,103a,103b,104a,104b1,105a,105b1,106a,106b,107a,107b,108a,108b1の動作を停止する。
【0062】
第2の実施形態との違いは、水平用モータ311bは四重巻線モータであり、4台のインバータ101b1,102b,105b1,106bからの出力配線が接続されているとともに、水平用モータ312bも四重巻線モータであり、4台のインバータ103b,104b1,107b,108b1からの出力配線が接続されている。
【0063】
その他の構成・動作は前述した第1の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0064】
本発明の第3の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法においても、前述した第1の実施形態の電動推進装置、電動垂直離着陸航空機、及び飛行方法とほぼ同様な効果が得られるとともに、更に垂直方向と水平方向の推力のバランスをさらに細かく調整が可能となる。
【0065】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0066】
また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B…電動垂直離着陸航空機
10…電動推進装置
101,101a,101b,101b1,102,102a,102b,103,103a,103b,104,104a,104b,104b1,105,105a,105b,105b1,106,106a,106b,107,107a,107b,107b,108,108a,108b,108b1…インバータ
201,202,203,204,205,206,207,208…垂直用プロペラ
211,211A,212,212A,213,213A,214,214A,215,215A,216,216A,217,217A,218,218A…垂直用モータ
222,223,226,227,322,323,326,327…配線切替部
301,302…水平用プロペラ
311,311b,312,312b…水平用モータ
400,400A,400B…制御装置