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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163612
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】低周波治療器
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20241115BHJP
   A61N 1/04 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079375
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】304062432
【氏名又は名称】株式会社 リブレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗敬
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB23
4C053BB36
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ11
4C053JJ27
(57)【要約】
【課題】治療対象部位に対して治療電流を集中させて効率良く効果的な治療を行うことができる低周波治療器を提供する。
【解決手段】人体40に接触する第1の導子5及び第2の導子6を有する低周波治療器であって、第1の導子5には、利用者の人体40の治療対象部位に接触する導電性のポイント電極10が設けられており、第2の導子6は、絶縁体で覆われた曲折自在なシート状に形成され、利用者の人体40の少なくとも胴体部の治療対象部位ではない部位に面接触するよう構成されている。このような構成により、所望の治療対象部位に対して、第1の導子5のポイント電極10を接触させ、好適な治療電流を集中させて流すことができる。よって、利用者は、治療対象部位をピンポイントに効率良く効果的に治療することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の人体に接触する第1の導子及び第2の導子を有する低周波治療器であって、
前記第1の導子には、前記人体の治療対象部位に接触する導電性のポイント電極が設けられており、
前記第2の導子は、絶縁体で覆われた曲折自在なシート状に形成され、前記人体の少なくとも胴体部の前記治療対象部位ではない部位に面接触するよう構成されていることを特徴とする低周波治療器。
【請求項2】
前記第1の導子には、前記利用者が把持する絶縁性の把持部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の低周波治療器。
【請求項3】
前記第2の導子の前記人体に接触する側の表面の面積は、1400cm以上であり、
前記絶縁体の厚みは、0.1~2mmであることを特徴とする請求項1に記載の低周波治療器。
【請求項4】
パルス波を発生するパルス電源と、
前記パルス電源で発生されたパルス波を昇圧して出力パルスを生成する出力トランスと、を具備し、
前記出力トランスの二次側回路には、当該二次側回路の内部インピーダンスを前記第2の導子及び前記人体のインピーダンス以上とする直列インピーダンス回路が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の低周波治療器。
【請求項5】
前記出力パルスの最大電圧は、500~2500Vであり、
前記人体を流れる最大実効電流値は、5mA以下であることを特徴とする請求項4に記載の低周波治療器。
【請求項6】
前記出力トランスの二次側回路には、前記第1の導子及び前記第2の導子が接続される出力端子に対して並列接続された分圧インピーダンス回路が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の低周波治療器。
【請求項7】
前記第1の導子が前記人体から離れた状態における前記出力端子の開放電圧に1000Vを超えるパルス波形が混在する場合において、
前記開放電圧の1000Vを超える前記パルス波形は、1回の治療で60000パルスを超えないよう単位時間あたりのパルス数が設定されると共に、最大値が1500V以下に制限されていることを特徴とする請求項6に記載の低周波治療器。
【請求項8】
前記第2の導子は、前記人体の前面及び背面の双方に対して同時に接触可能であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の低周波治療器。
【請求項9】
前記第2の導子には、前記人体の肩部を覆うショルダー部と、前記人体の首部が挿通される襟部と、が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の低周波治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低周波治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パルス電圧を人体に印加して治療を行う低周波治療器が知られている。
例えば、特許文献1には、生体に接触して使用される一対の電極パッドを備えた低周波治療器が開示されている。同文献に開示された低周波治療器本体には、低周波パルスを生成する波形成形・出力部が設けられており、一対の電極パッドは、導電体、ゲル層等を有し、体表面に貼着可能に設けられている。
【0003】
このような構成の低周波治療器において、電極パッドを例えば筋肉が緊張して血行が悪くなった治療体操部位に接触させることにより、波形成形・出力部から出力された低周波パルスは、電極パッドを介して人体の治療対象部位に付与される。当該治療対象部位に電気的刺激を与えることにより、筋肉を収縮または弛緩させ、血行を促進し、筋肉疲労を緩和することができる。
【0004】
また例えば、特許文献2には、ケース体の先細状の先端に第1の電極導子が設けられ、ケース体の握手部に第2の電極導子が設けられた低周波治療器が開示されている。同文献に開示された低周波治療器を用いて治療を行う際には、第1の電極導子にパルス電圧が印可され、利用者は、第2の電極導子が設けられたケース体の把手部を把持し、第1の電極導子が設けられたケース体の先端を治療対象部位に当接させる。これにより、第1の電極導子から治療対象部位、ケース体を把持する側の利用者の肩、腕、手を経由して、第2電極導子にパルス電流が流れ、治療対象部位に刺激が与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-78518号公報
【特許文献2】実用新案登録第3102861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術の低周波治療器は、治療対象部位をピンポイントに効率良く治療するために改善すべき点があった。
具体的には、特許文献1に開示された低周波治療器のように、人体に貼着される一対の電極パッドを使用する構成では、利用者が治療を求める一点の対象部位に対して集中的に効率良く電流を流すことが難しかった。そのため、所望の治療対象部位をピンポイントに刺激して血流を促進する等の優れた治療効果が得られないことがある。
【0007】
これに対して、特許文献2に開示された低周波治療器では、ケース体の先細状の先端に設けられた第1の電極導子を治療対象部位に当接させ、治療対象部位の近傍にパルス電流を流すことができる。
【0008】
しかしながら、同文献に開示された低周波治療器では、第2の電極導子は、利用者が把持するケース体の把手部に設けられている。そのため治療電流は、治療対象部位ではない、ケース体を把持する利用者の手、腕及び肩を流れることになる。このように、治療対象部位ではない健全な部位に治療電流が集中して流れることは、健全な部位に意図しない機序が発生する可能性があり好ましくない。
【0009】
また、利用者がケース体の把手部を把持することにより利用者の手が第2の電極導子に接触して通電が行われる構成であるので、利用者による把持の不良によって電流通路がオープンになり、電流が流れなくなる等の不具合が発生する恐れがある。
【0010】
また更に、第1の電極導子が接触した治療対象部位の近傍では、治療電流は、ケース体を把持する側の肩に向かう一方向的な流れとなる。そのため、治療対象部位では、第1の電極導子の接触点から片寄った方向に治療電流が流れることとなって、治療が必要な部位の近傍に好適な電流を流すことが難しいこともある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、治療対象部位に対して治療電流を集中させて効率良く効果的な治療を行うことができる低周波治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の低周波治療器は、利用者の人体に接触する第1の導子及び第2の導子を有する低周波治療器であって、前記第1の導子には、前記人体の治療対象部位に接触する導電性のポイント電極が設けられており、前記第2の導子は、絶縁体で覆われた曲折自在なシート状に形成され、前記人体の少なくとも胴体部の前記治療対象部位ではない部位に面接触するよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の低周波治療器は、利用者の人体に接触する第1の導子及び第2の導子を有し、第1の導子には、前記人体の治療対象部位に接触する導電性のポイント電極が設けられており、第2の導子は、絶縁体で覆われた曲折自在なシート状に形成され、前記人体の少なくとも胴体部の治療対象部位ではない部位に面接触するよう構成されている。このような構成により、所望の治療対象部位に対して、第1の導子のポイント電極を略点接触させ、好適な治療電流を集中させて流すことができる。よって、利用者は、治療対象部位をピンポイントに効率良く効果的に治療することができる。
【0014】
詳しくは、第1の導子のポイント電極は、治療対象部位に略点状に接触され、第2の導子は、利用者の胴体部等の治療対象部位ではない部位に広範囲に面接触するよう構成されている。治療対象部位ではない部位に対しては、第2の導子が面接触されているので、人体との広範囲な静電結合を介して治療電流が広範囲に分散されて流れる。そして、治療対象部位には、第1の導子が略点状に接続されているので、治療電流は、第1の導子が接触した治療対象部位の近傍に集中的に流れる。よって、治療対象部位ではない部分に治療電流が強く流れることを抑制し、所望の治療対象部位に治療電流を集中させて効果的な治療を行うことができる。
【0015】
また、第2の導子は絶縁されているので、従来技術の電極パッドのように人体の皮膚に直接的にゲル状の電極部を貼る必要はない。第2の導子は、着衣上から直接容易に装着できるので、衛生的であり、使用し易い。
【0016】
また、本発明の低周波治療器によれば、前記第1の導子には、前記利用者が把持する絶縁性の把持部が設けられても良い。このような構成により、利用者は、第1の導子の把持部を把持して所望の治療対象部位にポイント電極を容易に当接させることができる。そして、ポイント電極が略点状に接触した治療対象部位に対して効果的な治療電流を集中的に流すことができる。
【0017】
また、利用者が把持する第1の導子の把持部は絶縁されているので、治療の際、把持部を把持する利用者の治療対象部位でない指、手及び腕等に治療電流が集中して流れることはない。よって、健全な部位に対して治療による意図しない悪影響が及ぶことを抑止することができる。
【0018】
また、利用者が把持する把持部に治療電流を流す構成ではなく、利用者の胴体部に面接触された第2の導子を介して治療電流が流れる構成であるので、利用者による把持の不良によって治療電流の流れ不良等が発生する恐れはない。よって、安定した治療電流による効果的な治療を行うことができる。
【0019】
また、本発明の低周波治療器によれば、前記第2の導子の前記人体に接触する側の表面の面積は、1400cm以上であり、前記絶縁体の厚みは、0.1~2mmであっても良い。これにより、好適なインピーダンスとなる容量結合により第2の導子を人体の広い範囲に密着させることができる。第2の導子が人体の広い範囲に分散されることにより、治療対象部位ではない部位には、刺激電流に至らない電流密度の低い電流を流すことができる。よって、第1の導子のみに筋刺激となる治療電流を集中させる効果的な治療を行うことができる。
【0020】
また、本発明の低周波治療器は、パルス波を発生するパルス電源と、前記パルス電源で発生されたパルス波を昇圧して出力パルスを生成する出力トランスと、を具備し、前記出力トランスの二次側回路には、前記二次側回路の内部インピーダンスを前記第2の導子及び前記人体のインピーダンス以上とする直列インピーダンス回路が設けられても良い。これにより、絶縁体で覆われた第2の導子を介して、第2の導子と人体との密着状況の違いによるインピーダンスの変化の影響を受け難い安定的な治療電流を流すことができる。
【0021】
また、本発明の低周波治療器によれば、前記出力パルスの最大電圧は、500~2500Vであり、前記人体を流れる最大実効電流値は、5mA以下であっても良い。これにより、第1の導子が接触する所望の治療対象部位に対して、安全な電流値で、治療に好適な局部的刺激を与えることができる。
【0022】
また、本発明の低周波治療器は、前記出力トランスの二次側回路には、前記第1の導子及び前記第2の導子が接続される出力端子に対して並列接続された分圧インピーダンス回路が設けられていても良い。これにより、高電圧の出力パルスを利用する低周波治療において、電撃ショックや感電の原因を減らして安全性を高めることができる。
【0023】
また、本発明の低周波治療器では、前記第1の導子が前記人体から離れた状態における前記出力端子の開放電圧に1000Vを超えるパルス波形が混在する場合において、前記開放電圧の1000Vを超える前記パルス波形は、1回の治療で60000パルスを超えないよう単位時間あたりのパルス数が設定されると共に、最大値が1500V以下に制限されても良い。これにより、第2の導子が利用者の皮膚に接触する瞬間等に発生する微小な放電や治療電流の集中を減らし、皮膚のピリピリ感、かぶれ、炎症等の発生を防止することができる。
【0024】
また、本発明の低周波治療器によれば、前記第2の導子は、前記人体の前面及び背面の双方に対して同時に接触可能であっても良い。これにより、第2の導子により治療電流の通電面積を好適に確保して、第1の導子が接触する所望の治療対象部位に対して電流値の変動が少ない安定した治療電流を集中的に流すことができる。
【0025】
また、本発明の低周波治療器は、前記第2の導子に、前記人体の肩部を覆うショルダー部と、前記人体の首部が挿通される襟部と、が形成されても良い。これにより、第2の導子の装着が容易になると共に、第2の導子を胸部、肩部及び背部に対して安定的に密着固定することができる。よって、利用者は、所望の治療対象部位を効率良くピンポイントに治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る低周波治療器の接触導子を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る低周波治療器の絶縁導子を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る絶縁導子の(A)他の例を示す平面図、(B)他の例の使用状態を示す図、である。
図6】本発明の実施形態に係る絶縁導子の更に他の例を示す図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図8】本発明の他の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る低周波治療器の概略構成を示す回路図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る接触導子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る低周波治療器1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す図である。図1を参照して、低周波治療器1は、低周波の電気的刺激を利用して身体の痛みを緩和する等の治療を行う治療装置であり、特に、治療対象部位に対してピンポイントに高効率な治療を行うことができることを特徴とする。
【0028】
具体的には、低周波治療器1は、人体40に印加される低周波を生成する治療電気出力装置2を備えると共に、人体40に接触する第1の導子としての接触導子5、及び第2の導子として直接または着衣を介して人体40に接触する絶縁導子6を備えている。
【0029】
治療電気出力装置2は、治療のための低周波を発生する装置である。治療電気出力装置2には、人体40に接触して出力パルスを印加する接触導子5が配線12を介して接続されており、人体40に面接触して出力パルスを人体40との間の容量結合を介して印加する絶縁導子6が配線21を介して接続されている。
【0030】
第1の導子としての接触導子5は、利用者の治療対象部位の近傍に接触して、治療電気出力装置2で生成された低周波を治療対象部位の近傍に印加する部材である。接触導子5には、利用者が把持する絶縁性の把持部11と、当該利用者の治療対象部位に略点接触する導電性のポイント電極10と、が設けられている。
【0031】
第2の導子としての絶縁導子6は、利用者の胴体部等の少なくとも治療対象部位ではない部位に面接触するよう構成された曲折自在なシート状の部材である。例えば、絶縁導子6は、椅子等に座る利用者の座部や背部等に密着するよう構成されても良い。また、シート状の絶縁導子6は、利用者の胴体部等に密着するよう、利用者が横たわるベッド等の敷布団等の上面に設けられても良いし、横たわる利用者の上に掛けられても良い。また、絶縁導子6が密着する人体40の部位は、背部、腹部及び胸部等の胴体部の他、首部、腕部若しくは脚部等であっても良い。これにより、第2の導子は、従来技術の電極パッドのようにゲル状の電極部を人体40に貼り付けることなく、着衣の上から容易に装着することができる。
【0032】
このような構成の低周波治療器1により、利用者は、絶縁導子6に胴体部等を密着させた状態で、接触導子5の把持部11を把持し、所望の治療対象部位に対して、ポイント電極10を略点状に接触させて、好適な治療電流を集中して流すことができる。
【0033】
図2は、低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図2を参照して、低周波治療器1の治療電気出力装置2は、パルス波を発生するパルス電源3と、パルス電源3で発生されたパルス波を昇圧して出力パルスを生成する出力トランス4と、を具備する。
【0034】
パルス電源3は、図示しない交流電源または直流電源に接続されて、低周波治療のためのパルス波を生成し、出力トランス4の一次側回路に供給する装置である。パルス電源3から出力されるパルス波のパルス幅は、例えば、0.1~0.3msである。パルス電源3から出力されるパルス波は、例えば、1.7~5kHzのパルス群からなるバースト構成でも良い。また、パルス電源3からは、例えば、パルス幅50μs以下若しくは周波数5kHz以下のパルス群のバースト波が出力されても良い。
【0035】
出力トランス4は、一次側回路がパルス電源3の出力側に接続され、パルス電源3から入力されるパルス波の電圧を出力電圧まで昇圧する。具体的には、出力トランス4は、パルス電源3で生成されたパルス波を、例えば、最大電圧が500~2500Vの出力パルスに昇圧して出力する。
【0036】
出力トランス4の二次側回路には、一端側に接触導子5が接続され、他端側に絶縁導子6が接続される。具体的には、出力トランス4の二次側回路の一端側には、接触導子5を例えば着脱自在に接続する出力端子22が設けられている。接触導子5につながる配線12は、出力端子22に接続され、接触導子5は、配線12及び出力端子22を介して、出力トランス4の二次側回路の一端に接続される。
【0037】
他方、出力トランス4の二次側回路の他端側には、絶縁導子6を例えば着脱自在に接続する出力端子23が設けられている。絶縁導子6につながる配線21は、出力端子23に接続され、絶縁導子6は、配線21及び出力端子23を介して、出力トランス4の二次側回路の他端に接続される。
【0038】
このような回路構成により、図1及び図2を参照して、出力トランス4から出力される出力パルスは、利用者の人体40に略点状に接触する接触導子5と、容量結合を介して面接触する絶縁導子6と、を介して印加される。これにより、接触導子5と絶縁導子6を介して、利用者の人体40に治療電流が流れる。利用者は、治療が必要な部位の近傍に、接触導子5を当接させ、治療電流をピンポイントに集中させて好適な治療を行うことができる。
【0039】
なお、図示を省略するが、治療電気出力装置2には、制御装置、操作部、表示部及び各種センサ類等が設けられている。制御装置は、所定の演算を実行して出力パルスの周波数、出力電位、出力電流、タイマその他を制御する装置である。操作部は、利用者が操作指令を入力する装置である。表示部は、周波数、出力電位、出力電流、タイマ等の各種設定条件及び出力状況等を表示するものである。
【0040】
図3は、接触導子5を模式的に示す図である。図3を参照して、前述のとおり、接触導子5は、第1の導子であり、治療電気出力装置2(図1参照)に接続され、利用者の治療対象部位の近傍に接触して、治療電気出力装置2で生成された出力パルスを印加する部材である。
【0041】
接触導子5は、例えば、略円柱状若しくは略楕円柱状の形態をなし、その一端側には、治療時に利用者が把持する絶縁性の把持部11が形成されている。把持部11が形成された側の端部には、治療電気出力装置2に接続される配線12が接続されている。
【0042】
接触導子5の先端側、即ち把持部11が形成され配線12が接続された端部側に対して反対側の端部近傍には、側方に突出し、利用者の治療対象部位に略点接触する、導電性のポイント電極10が設けられている。
【0043】
ポイント電極10は、ステンレス鋼その他金属材料等の導電性の材料から形成され、ポイント電極10には、治療電気出力装置2に接続される配線12が接続されている。配線12は、接触導子5の把持部11側の端部から挿入され、把持部11の内部を通過してポイント電極10に接続されている。
【0044】
このように配線12が把持部11側の端部に接続され、その反対側、即ち先端側、の端部近傍の側面にポイント電極10が設けられているので、接触導子5を把持して移動させる作業は容易である。利用者は、接触導子5をしっかりと把持して所望の治療対象部位に対して安全且つ容易にポイント電極10を押し当てることができる。
【0045】
また、把持部11は、絶縁性の材料から形成されているので、治療の際、把持部11を把持する利用者の治療対象部位ではない手及び腕部等に配線12から治療電流が流れることはない。よって、健全な部位に対して治療による意図しない悪影響が及ぶことを抑止することができる。
【0046】
また、低周波治療器1は、利用者が把持する把持部11に治療電流を流す構成ではないので、利用者の把持の不良によって治療電流の流れ不良等が発生する恐れはない。よって、安定した治療電流による効果的な治療を行うことができる。
【0047】
ポイント電極10は、例えば、略円錐台状の形態をなし、その上底部が利用者の人体40(図1参照)に略点接触する。詳しくは、治療対象部位に接触するポイント電極10の先端、即ち上底面は、例えば、略湾曲面状に形成されており、治療対象部位に接触する面の直径は、約φ3~25mmである。このような形態により、ポイント電極10は、治療対象部位に対して好適な押圧刺激でピンポイントに接触して好適な治療電流を流すことができる。
【0048】
具体的には、利用者は、接触導子5の把持部11を把持して所望の治療対象部位にポイント電極10を容易に接触させることができる。そして、一点の治療対象部位に対して効果的な治療電流を集中的に流すことができる。よって、利用者は、治療対象部位をピンポイントに効率良く効果的に治療することができる。
【0049】
図4は、絶縁導子6を模式的に示す斜視図であり、絶縁導子6の内部構造を断面で示している。図4を参照して、絶縁導子6は、第2の導子であり、配線21を介して治療電気出力装置2(図1参照)に接続されるシート状電極13と、シート状電極13を覆う絶縁性の絶縁体14と、を有する。
【0050】
シート状電極13は、導電性のシート状の材料から形成された電極であり、治療電気出力装置2に接続されている。シート状電極13には、治療電気出力装置2で生成された電位が印加され、治療電流は、シート状電極13から絶縁体14を介して絶縁導子6の表面に密着した人体40(図1参照)に流れる。
【0051】
シート状電極13は、人体40に密着するよう曲折自在に形成されている。例えば、シート状電極13は、銅、アルミニウムその他導電性の材料からなる可撓性を有する箔状の部材から形成されても良い。また、シート状電極13は、導電性の材料からなる可撓性を有する線状の材料、若しくは、可撓性を有する線状の材料及び箔状の材料との組み合わせによって形成されても良い。また、シート状電極13は、導電性の布から形成されても良い。また、シート状電極13は、複数の導電性のシート状の電極材料が、それぞれ所定の領域の電極を構成するよう、曲折可能に分散配置されるよう形成されても良い。
【0052】
絶縁体14は、絶縁性の材料から形成された柔軟なシート状の部材であり、シート状電極13の表面及び裏面を覆うよう設けられている。例えば絶縁体14は、軟質ポリ塩化ビニル樹脂その他合成樹脂等から形成されても良い。
【0053】
このように、シート状電極13が絶縁体14で覆われたシート状の絶縁導子6は、図1に示すように、治療を行う利用者の胴体部等の治療対象部位ではない部位に広範囲に密着する。これにより、治療電流は、絶縁導子6が密着した治療対象部位ではない部分では広い範囲に分散され、集中して強く流れることが抑制され、接触導子5が接触した治療対象部位の近傍のみに集中的に流れる。よって、低周波治療器1は、所望の治療対象部位の一点のみに治療電流を集中させて効果的な治療を行うことができる。
【0054】
ここで、図1ないし図4を参照して、絶縁導子6の一実施例を更に詳細に説明する。絶縁導子6の人体40に接触する側の表面の面積は、例えば1400cm以上である。例えば、絶縁導子6の平面寸法は、約35cm×40cmでも良い。これにより、小柄な体形の利用者であっても、人体40の前面若しくは背面に絶縁導子6を密着させることができる。
【0055】
また、上記の表面積になるよう形成された絶縁導子6において、人体40に接触する側の絶縁体14の厚みは、0.1~2mm、好ましくは、0.1~1mmであっても良い。これにより、絶縁導子6を人体40の広い範囲に密着させることができると共に、好適なインピーダンスとなる容量結合が可能となる。よって、接触導子5に治療電流を集中させる効果的な治療を行うことができる。
【0056】
また、絶縁導子6は、衣服を介して利用者に密着するよう使用されても良い。衣服の厚みは、例えば2~5mmであっても良い。絶縁導子6は、衣服を介して装着できるので、皮膚組織や汗等の生体組織が付着せず衛生的であり、洗浄することなく繰り返し使用可能である。
【0057】
例えば、絶縁導子6の表面積が約1400cm、絶縁体14の厚みが約0.1mm、着衣の厚みが約3mmである場合、誘電率を2とすると、着衣を含む絶縁導子6の静電容量は約800pFとなる。前述のとおり、出力パルスのパルス幅は、例えば0.1~0.3mS程度である。パルス波を半波として近似的に周波数換算すると、1.7~5kHzである。このときの着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20は、約40~117kΩである。
【0058】
また、同様の絶縁導子6を用いて、着衣の厚みを約5mmとすると、着衣を含む絶縁導子6の静電容量は約486pF、絶縁インピーダンス20は、約65~193kΩである。即ち、絶縁インピーダンス20は、例えば、最大で約193kΩ、最小で約40kΩとなる。
【0059】
前述のとおり、治療電気出力装置2は、出力トランス4で昇圧された最大電圧が500~2500Vの出力パルスを出力する。これにより、絶縁導子6のシート状電極13と人体40との間の絶縁インピーダンス20が高い状態においても、好適な治療電流を流すことができる。また、治療電気出力装置2の出力電圧は、治療対象部位に好適な治療電流が流れるよう、治療対象部位との密着状況、利用者の着衣状況等に応じて調整されても良い。
【0060】
なお、人体40を流れる最大実効電流値は、5mA以下であっても良い。これにより、接触導子5が接触する所望の治療対象部位に対して、安全な電流値で、治療に好適な局部的刺激を与えることができる。
【0061】
また、図2を参照して、接触導子5が人体40から離れた状態における出力端子22、23の開放電圧に1000Vを超えるパルス波形が混在する場合には、単位時間当たりのパルス数及び電圧の最大値が制限されても良い。
【0062】
具体的には、開放電圧の1000Vを超えるパルス波形は、1回の治療で60000パルスを超えないよう単位時間あたりのパルス数が設定される。例えば、タイマ設定により60分間の治療が行われる場合には、約17pps(パルス数毎秒)の出力パルスに設定され、タイマ設定30分間の治療では、約33pps、タイマ設定10分間の治療では、約100ppsの出力パルスに設定される。
そして、出力端子22、23の開放電圧の最大値は、1500V以下になるよう制限される。
【0063】
このような制御により、絶縁導子6が利用者の皮膚に接触する瞬間等に発生する微小な放電や治療電流の集中を減らし、皮膚のピリピリ感、かぶれ、炎症等の発生を防止することができる。
【0064】
図5(A)及び(B)は、絶縁導子6の変形例を示す図であり、図5(A)は、平面図、図5(B)は、使用状態を模式的に示す図、である。図5(A)及び(B)に示すように、絶縁導子6は、人体40の前面及び背面の双方に対して同時に接触可能な形態に形成されても良い。
【0065】
例えば、絶縁導子6は、利用者が着衣する略胴衣状等の形態に形成されても良い。絶縁導子6は、略長方形シート状に形成され、絶縁導子6の中央近傍には、利用者の肩部に掛けられるショルダー部17が形成されている。絶縁導子6は、ショルダー部17において、絶縁導子6を利用者の胸部、腹部等に密着する前身頃15と、利用者の背部に密着する後身頃16と、に折り曲げ自在である。
【0066】
絶縁導子6の略中央、即ちショルダー部17の略中央には、利用者が首を通すよう開口する襟部18が形成されている。また、襟部18から前身頃15の下端までは、前身頃15を右前身頃と左前身頃に分ける前開き部19が形成されても良い。
【0067】
前開き部19等には、右前身頃と左前身頃を連結する紐、面ファスナ、チャック、ボタン等の留め部材が設けられても良い。また、前身頃15及び後身頃16の左右両側辺部近傍には、前身頃15と後身頃16を連結する留め部材が設けられても良い。
【0068】
このような構成により、絶縁導子6の着脱が容易になる。利用者は、絶縁導子6を人体40の前面及び背面に容易且つ安定的に密着させることができる。そして、絶縁導子6により治療電流の通電面積を好適に確保して、接触導子5(図3参照)が接触する所望の治療対象部位に対して電流値の変動が少ない安定した治療電流を集中的に流すことができる。よって、利用者は、効率良く所望の治療対象部位をピンポイントに治療することができる。
【0069】
図6は、絶縁導子6の更に他の例を模式的に示す図である。図6を参照して、絶縁導子6は、利用者の胴体部に帯状に巻かれるよう略円筒状に曲折自在に形成されても良い。略円筒状に巻かれた絶縁導子6の両端辺近傍には、両端辺を連結する紐、面ファスナ、チャック、ボタン等の留め部材が設けられても良い。
【0070】
このような形態によっても、利用者は、絶縁導子6を容易に、人体40の前面及び背面の双方に対して同時に接触させるよう装着することができる。これにより、絶縁導子6により治療電流の通電面積を好適に確保して、接触導子5(図3参照)が接触する所望の治療対象部位に対して電流値の変動が少ない安定した治療電流を集中的に流すことができる。
【0071】
なお、図示を省略するが、絶縁導子6は、複数に分割されたシート状の形態であっても良い。例えば、絶縁導子6は、2つのシート状に形成され、一方が椅子等に載置され利用者の座部、腰部、背部等に密着し、他方が利用者の腹部、脚部等に密着するよう載せられる形態でも良い。このような構成によっても、人体40の各部に対して密着性、安定性、着脱性に優れ、治療に適した電流が流れ易く、電流変動が少ない絶縁導子6が得られる。
【0072】
次に、図7から図12を参照して、低周波治療器1の実施形態を変形した例について詳細に説明する。なお、図7から図12では、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
図7は、本発明の他の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図7を参照して、出力トランス4の二次側回路には、直列接続された直列インピーダンス回路24が設けられても良い。
【0074】
直列インピーダンス回路24は、治療電気出力装置2の内部抵抗とみなせる回路であって、出力トランス4の二次側回路の内部インピーダンスを絶縁導子6と人体40相互間の容量インピーダンス以上とする。直列インピーダンス回路24としては、例えば、抵抗25を採用し得る。
【0075】
このように直列インピーダンス回路24が設けられることにより、絶縁体14で覆われた絶縁導子6が人体40に密着される構成において、絶縁導子6と人体40との密着状況の違いによる着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20の変化の影響を受け難い安定的な治療電流を流すことができる。また、これによりポイント電極10と人体40の皮膚との間の接触抵抗の影響を少なくでき、安定した治療電流を得ることができる。
【0076】
図8は、本発明の他の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図8を参照して、直列インピーダンス回路24として、例えば、直列接続されたコンデンサ26、コンデンサ27が設けられても良い。このような構成によっても絶縁導子6と人体40との密着状況の違い等による絶縁導子6の絶縁インピーダンス20等の変化の影響が少ない安定的な治療電流を流すことができる。
【0077】
図9は、本発明の他の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図9に示すように、直列インピーダンス回路24として、例えば、並列接続されたコンデンサ26及び抵抗28と、並列接続されたコンデンサ27及び抵抗29と、が出力トランス4の二次側回路に直列接続されても良い。このような構成によっても絶縁導子6と人体40との密着状況の違い等による絶縁導子6の絶縁インピーダンス20等の変化の影響が少ない安定的な治療電流を流すことができる。特に、このような構成によって周波数特性を安定化することができる。
【0078】
図7ないし図9を参照して、直列インピーダンス回路24について更に詳しく説明する。着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20は、着衣状態、衣服の種類、着衣の厚み、絶縁導子6と人体40との接触面積、接触圧力等の違いによって大きく変化する。
【0079】
そのため、直列インピーダンス回路24のインピーダンスは、例えば、着衣の厚みが約3mmである場合、着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20と同等である40~100kΩ以上が良い。また、着衣の厚みが約5mmのときは、直列インピーダンス回路24のインピーダンスは、絶縁インピーダンス20と同等の65~193kΩ以上が良い。
【0080】
また、出力パルスの周波数が5kHz以上である場合には、直列インピーダンス回路24のインピーダンスは、40kΩ以上であり、周波数が約1kHzなら直列インピーダンス回路24のインピーダンスは、193kΩ以上が良い。
【0081】
例えば、出力パルスの電圧が約1000V、直列インピーダンス回路24のインピーダンスが約200kΩであり、着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20が100~300kΩで変動した場合に、出力電流は、ベクトル計算で2.8~4.5mA程度となる。出力電流の変化範囲は62~100%である。
【0082】
また、直列インピーダンス回路24のインピーダンスが約1000kΩであれば、絶縁インピーダンス20が100~300kΩの範囲で変動しても、出力電流は、0.958~0.995mAと、大きく変化しない。即ち、直列インピーダンス回路24によって治療電気出力装置2の内部インピーダンスを十分大きくすれば、絶縁導子6等の絶縁インピーダンス20が変動しても出力電流への影響を抑えることができる。
【0083】
なお、図7ないし図9に示した回路構成の他にも、直列インピーダンス回路24は、図示しない抵抗、図示しないコンデンサ等の直列、並列回路によって構成されても良い。直列インピーダンス回路24によって着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20と同等以上、好ましくは2倍以上、のインピーダンスが挿入されることにより、治療電流の安定化を図ることができる。
【0084】
図10は、本発明の他の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図10を参照して、出力トランス4の二次側回路には、出力トランス4に並列接続される分圧インピーダンス回路30が設けられても良い。
【0085】
具体的には、分圧インピーダンス回路30は、直列インピーダンス回路24に対しては直列であって、接触導子5及び絶縁導子6が接続される出力端子22、23に対して並列に、即ち出力端子22と出力端子23を接続するように設けられている。
【0086】
分圧インピーダンス回路30は、例えば、コンデンサ31から構成されても良い。また、分圧インピーダンス回路30は、図示しない抵抗から構成されても良い。また、分圧インピーダンス回路30は、図示しないコンデンサ、図示しない抵抗等が並列または直列に接続された回路の組み合わせ等によって構成されても良い。
【0087】
ここで、分圧インピーダンス回路30は、接触導子5が人体40に接触されていないときの出力端子22、23の開放電圧が1500V以下となるよう設定されても良い。例えば、分圧インピーダンス回路30のインピーダンスは、直列インピーダンス回路24のインピーダンスの3倍以上の値である。
【0088】
このように分圧インピーダンス回路30のインピーダンスが、直列インピーダンス回路24のインピーダンスの3倍以上の値であるとすると、出力電圧の分圧比、即ち出力トランス4の出力電圧に対する出力端子22、23の開放電圧の比率は、約0.75となる。例えば、出力トランス4で昇圧された出力パルスの電圧が2000Vである場合、出力端子22、23の開放電圧は、約1500Vとなる。
【0089】
また、直列インピーダンス回路24のインピーダンスは、着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20と人体40のインピーダンスとの合計インピーダンスと同等以上が良い。分圧インピーダンス回路30のインピーダンスは、絶縁インピーダンス20と人体40のインピーダンスの合計インピーダンスの3倍以上の値が望ましい。
【0090】
このように、分圧インピーダンス回路30のインピーダンスが、絶縁インピーダンス20と人体40のインピーダンスの合計インピーダンスの3倍以上の値であるとすると、出力電流の約75%以上の電流が治療電流として人体40を流れることになる。
【0091】
このように出力端子22、23に並列接続された分圧インピーダンス回路30が設けられることにより、高電圧の出力パルスを利用する低周波治療において、電撃ショックや感電の原因を減らして安全性を高めることができる。
【0092】
また、図示しない制御装置によって、着衣を含む絶縁導子6の絶縁インピーダンス20及び人体40のインピーダンスの変化に合わせて直列インピーダンス回路24のインピーダンス及び分圧インピーダンス回路30のインピーダンスを調整する制御が行われても良い。
【0093】
即ち、出力パルスの開放電圧の最高値を安全な電圧値である、例えば1500V以下に分圧制御し、且つ、出力電流の多くを治療電流として治療対象部位に流すことができる。よって、安全で効果的な治療を行うことができる。
【0094】
なお、上記の例では、出力パルスの開放電圧の最高値を1500V以下に抑えるとしたが、最高電圧の設定値は、治療状況等に応じて調整可能である。例えば、開放電圧の最大値が、200V以下になるよう制御されても良い。
【0095】
図11は、本発明の他の実施形態に係る低周波治療器1の概略構成を示す回路図である。図11を参照して、接触導子5には、複数のポイント電極10が設けられても良い。例えば接触導子5として、第1のポイント電極10a及び第2のポイント電極10bからなる一対のポイント電極10が設けられても良い。
【0096】
また、第1のポイント電極10a及び第2のポイント電極10bが互いに逆極性となるよう分極する分極回路32等が設けられても良い。分極回路32は、例えば、第1のポイント電極10a及び第2のポイント電極10bにそれぞれ逆極性に接続された一対のダイオード33等から構成されても良い。また、分極回路32には、ダイオード33に対して並列接続された一対の抵抗34等が設けられても良い。このような構成により、種々の波形パターンで治療に好適な電流を流すことができる。
【0097】
図12は、本発明の他の実施形態に係る接触導子5を模式的に示す図である。図12に示すように、複数のポイント電極10、例えば、第1のポイント電極10a及び第2のポイント電極10bを有する接触導子5は、利用者の治療対象部位の近傍に装着されるよう曲折自在に構成されても良い。
【0098】
具体的には、例えば、接触導子5は、利用者の首部、肩部その他治療対象部位の近傍に巻かれる略帯状等に形成されても良い。接触導子5には、ポイント電極10と人体40との接触圧力を保つために、ポイント電極10を人体40に向かって押圧するよう接触導子5の本体を撓ませる例えばバネ部材等が設けられても良い。また、接触導子5は、自重によってポイント電極10を人体40に押圧するよう構成されても良い。
【0099】
第1のポイント電極10a及び第2のポイント電極10bは、それぞれが人体40の治療対象部位に略点状に接触できる形態であれば良い。例えばポイント電極10は、直径25mm程度の小径円形状の接触面を有する形状であっても良い。即ち、ポイント電極10としては、接触部が絶縁導子6(図4参照)よりも小面積であり、人体40に略点接触する形態であれば種々の形態を採用し得る。
【0100】
このように複数のポイント電極10が人体40に接触する構成によっても、治療対象部位の近傍のみに治療電流を集中させて効果的な治療を行うことができる。即ち、治療対処部位ではない部位に広範囲に密着する絶縁導子6によって、治療対象部位ではない部位には治療電流を集中させることなく分散して流し、治療対象部位の近傍にそれぞれ略点接触する複数のポイント電極10によって治療対象部位に治療電流を集中的に流すことができる。これにより、高効率な治療が行われる。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0102】
1 低周波治療器
2 治療電気出力装置
3 パルス電源
4 出力トランス
5 接触導子
6 絶縁導子
10 ポイント電極
10a 第1のポイント電極
10b 第2のポイント電極
11 把持部
12 配線
13 シート状電極
14 絶縁体
15 前身頃
16 後身頃
17 ショルダー部
18 襟部
19 前開き部
20 絶縁インピーダンス
21 配線
22 出力端子
23 出力端子
24 直列インピーダンス回路
25 抵抗
26 コンデンサ
27 コンデンサ
28 抵抗
29 抵抗
30 分圧インピーダンス回路
31 コンデンサ
32 分極回路
33 ダイオード
34 抵抗
40 人体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12