(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163614
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20241115BHJP
B60K 37/00 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60K37/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079378
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 悠樹
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA05
3D344AA14
3D344AA27
3D344AB01
3D344AC13
3D344AC25
3D344AD11
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる車載表示装置を提供する。
【解決手段】車載表示装置100は、車両1のダッシュボード2の中に位置し、画像を表す表示光Lを発する表示器10と、表示器10から発せられ、フロントガラス3に向かう表示光Lを通過させる筒状体20と、備える。筒状体20には、デフロスター50による風であるデフロスター風Dを筒状体20の中に送る送風口21aが形成されている。デフロスター風Dは、送風口21aから筒状体20を通ってフロントガラス3に到る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュボードの中に位置し、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記表示器から発せられ、前記車両のフロントガラスに向かう前記表示光を通過させる筒状体と、を備え、
前記筒状体には、デフロスターによる風であるデフロスター風を前記筒状体の中に送る送風口が形成されており、
前記デフロスター風は、前記送風口から前記筒状体を通って前記フロントガラスに到る、
車載表示装置。
【請求項2】
前記送風口の下端は、前記送風口の上端よりも後方に位置する、
請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記送風口から前記筒状体の中へ送られた前記デフロスター風を受ける傾斜面を有し、前記傾斜面によって前記デフロスター風を前記フロントガラスに向けて案内するガイド部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記表示器は、
前記フロントガラスに向く表示面を有し、
前記筒状体の下方に位置すると共に、前記表示面が前記送風口から送られる前記デフロスター風を受けることが可能な位置に設けられる、
請求項3に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記デフロスターの送風方向を制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記デフロスターの送風モードを、前記ガイド部の前記傾斜面に向けて前記デフロスター風を送る第1送風モードと、前記表示面に向けて前記デフロスター風を送る第2送風モードとに切り替えることが可能であり、
前記車両に設けられたセンサーからの出力に基づき、前記表示器の温度が設定閾値を超えた、又は、前記表示器の埃の量が設定閾値を超えたと判別すると、前記デフロスターの送風モードを、前記第1送風モードから前記第2送風モードに切り替える、
請求項4に記載の車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載表示装置として、例えば特許文献1には、車両のダッシュボードの中に設けられ、車両のフロントガラスに向けて画像を表す表示光を発することで、運転者等のユーザに当該画像を視認させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の車載表示装置では、ダッシュボードにおいて、表示光が発せられる開口の位置を避けた位置に、デフロスターによる風をフロントガラスに送る送風口を設ける必要があった。しかしながら、この構造では、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを充分に行うことができない虞がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る車載表示装置は、
車両のダッシュボードの中に位置し、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記表示器から発せられ、前記車両のフロントガラスに向かう前記表示光を通過させる筒状体と、を備え、
前記筒状体には、デフロスターによる風であるデフロスター風を前記筒状体の中に送る送風口が形成されており、
前記デフロスター風は、前記送風口から前記筒状体を通って前記フロントガラスに到る。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、簡潔な構成で、フロントガラスの表示光を受ける領域の曇り止めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載表示装置の車両への搭載態様を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る車載表示装置100は、
図1に示すように、車両1のダッシュボード2(インストルメントパネルを含む)に設けられ、車両1のフロントガラス3(ウインドシールド)の下端領域に設けられたセラミック形成部3aに向けて画像を表す光(以下、表示光L)を発する。
【0011】
セラミック形成部3aは、フロントガラス3のうち、黒色のセラミックが焼付塗装によって形成された部分であり、通称、黒セラ部と呼ばれる。フロントガラス3におけるセラミック形成部3aの内面には、表示光Lをユーザ4に向けて反射させる反射鏡面が形成される。ユーザ4は、例えば、車両1の運転者である。
【0012】
なお、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内面(ユーザ4に向く面)に設けられていてもよいし、フロントガラス3の外面に設けられていてもよい。また、フロントガラス3が複数枚のガラスの合わせガラスから構成される場合、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内部に設けられていてもよい。
【0013】
セラミック形成部3aで反射した表示光Lは、ユーザ4側へと向かう。ユーザ4は、自身の視点をアイボックス5内におくことで、表示光Lが表す画像の虚像を視認することができる。当該画像は、ユーザ4にとって、セラミック形成部3aに表示されているように見える。当該画像は、例えば、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う)を示す。車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の周囲の情報などの車両1の外部情報を含んでいてもよい。
【0014】
車載表示装置100は、表示器10と、筒状体20と、ガイド部30と、制御部40と、を備える。
【0015】
図1は、車載表示装置100の車両1への搭載態様を示す図である。なお、同図において着色された部分は各構成の概略断面を示す。また、同図では、車両1の方向として、前方Fd、後方Bd、上方Ud、下方Ddを示した。以下の説明で用いる、前、後、上、下の各方向は、特に断りがない場合は、図示の方向に従う。
【0016】
表示器10は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等からなり、ダッシュボード2の中に設けられる。表示器10は、フロントガラス3に向く表示面10aに車両情報を示す画像を表示する。表示面10aからフロントガラス3(具体的にはセラミック形成部3a)に向けて、当該画像を表す表示光Lが発せられる。例えば、表示面10aは、表示器10のうちフロントガラス3に最も近い面であって、画像の表示可能領域に相当する面である。
【0017】
筒状体20は、例えばダッシュボード2の一部によって形成され、表示器10から発せられ、フロントガラス3に向かう表示光Lを通過させる。つまり、筒状体20は、表示器10とフロントガラス3の間に位置する。なお、筒状体20は、ダッシュボード2に組み合わされる部材であってもよい。表示器10は、筒状体20の下端の下方に位置し、筒状体20の内部に表示光Lを発する。筒状体20の上端は、ダッシュボード2から表示光Lが発せられる部分である開口部20aを形成する。
【0018】
本実施形態の筒状体20は、その外周及び内周が概ね四角形状の角筒状に形成されている。筒状体20は、筒状体20のうち後方に位置し、且つ、前方に向く内側面21を有する。内側面21は、車両1のダッシュボード2の天面2aと繋がる。
【0019】
筒状体20の内側面21には、車両1に搭載されたデフロスター50による風であるデフロスター風Dを筒状体20の中に送る送風口21aが形成されている。デフロスター50と送風口21aの間にはダクト51が設けられ、デフロスター50からのデフロスター風Dは、ダクト51を通って、送風口21aから筒状体20の中に送られる。そして、デフロスター風Dは、送風口21aから筒状体20を通ってフロントガラス3に到る。つまり、筒状体20は、表示光Lの光路だけでなく、デフロスター風Dの流路としても用いられる。車載表示装置100によれば、このように簡潔な構成の筒状体20を用いて、フロントガラス3の表示光Lを受ける領域の曇り止めを行うことができる。
【0020】
図1に示すように、送風口21aの下端は、送風口21aの上端よりも後方に位置する。この位置関係により、送風口21aの像がフロントガラス3で反射してユーザ4に視認されること(送風口21aの像映り)を抑制することができる。なお、送風口21aの形状及び位置は、ユーザ4がアイボックス5に視点をおいたときに、送風口21aの像映りが生じることを抑制できれば任意である。例えば、送風口21aの上端よりも内側面21の上端が前方に位置するように、内側面21を傾斜させることで、送風口21aの像映りを抑制してもよい。ただし、この場合においても、送風口21aの下端は、送風口21aの上端よりも後方に位置していることが好ましい。
【0021】
筒状体20は、黒色等の吸光部材で構成される、又は、反射を低減するための表面処理が施されて構成される。これにより、筒状体20の内部に入り込んだ後に反射する太陽光、セラミック形成部3a以外の箇所で反射する表示光Lなどの迷光が、アイボックス5に到達することを抑制することができる。
【0022】
ガイド部30は、送風口21aから筒状体20の中へ送られたデフロスター風Dを受ける傾斜面31を有し、傾斜面31によってデフロスター風Dをフロントガラス3に向けて案内する。傾斜面31は、その後端よりも前端が上方に位置するように傾斜していればよく、凹状の曲面であってもよいし、平面であってもよい。ガイド部30は、(i)送風口21aと前後方向において概ね対向する位置に設けられ、且つ、(ii)ガイド部30の像がフロントガラス3で反射してユーザ4に視認されることを避けるべく、表示器10の表示面10aを避けた位置に設けられる。
図2に示す変形例のように、ガイド部30は、筒状体20と一体に形成されていてもよい。
【0023】
制御部40は、車載表示装置100の全体動作を制御するマイクロコンピュータからなり、各種データを格納するメモリと、メモリに格納された動作プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを備える。制御部40は、例えば、ダッシュボード2の中に配設されたPCB(Printed Circuit Board)に実装される。
【0024】
制御部40は、表示器10の表示動作を制御すると共に、デフロスター50の送風方向を制御する。デフロスター50は、少なくとも、車両1の前後方向に延びる水平軸に対して上下方向に傾く向きにデフロスター風Dの向きを調整可能である。
【0025】
制御部40は、デフロスター50の送風モードを、ガイド部30の傾斜面31に向けてデフロスター風Dを送る第1送風モードと、表示面10aに向けてデフロスター風Dを送る第2送風モードとに切り替えることが可能である。第2送風モードは、第1送風モードの場合よりもデフロスター風Dが下方に傾いて送風口21aから筒状体20に送り出されるモードである。表示器10は、少なくともデフロスター50が第2送風モードである場合に、表示面10aが送風口21aから送られるデフロスター風Dを受けることが可能な位置に設けられている。
【0026】
車両1の中には、図示せぬ構成として、サーミスタ等の温度センサー、埃センサーが搭載されている。制御部40は、これらのセンサーからの出力に基づき、表示器10の温度、及び、表示器10の埃の量を特定可能である。温度センサーの配設位置は、表示器10の一部、あるいは表示器10の近傍であることが好ましいが、これに限られない。制御部40が表示器10の想定温度を特定することができれば、温度センサーの配設位置は任意である。同様に、埃センサーの位置は、表示器10の一部、あるいは表示器10の近傍であることが好ましいが、これに限られない。埃センサーからの出力に基づき、制御部40が表示器10の表示面10aに埃がたまっていると見做すことのできる限りにおいて、埃センサーの配設位置は任意である。
【0027】
ここで、デフロスター50が第1送風モードで運転しているとする。制御部40は、車両1に設けられた上記センサーからの出力に基づき、表示器10の温度が設定閾値を超えた、又は、表示器10の埃の量が設定閾値を超えたと判別すると、デフロスター50の送風モードを、第1送風モードから第2送風モードに切り替える。一方、制御部40は、車両1に設けられた上記センサーからの出力に基づき、表示器10の温度が設定閾値以下、又は、表示器10の埃の量が設定閾値以下であると判別すると、デフロスター50の送風モードを、第2送風モードから第1送風モードに復帰させる(切り替える)。このような制御を実行することにより、必要な場合に、デフロスター風Dによって、表示器10の温度を下げることができ、表示面10aの上の埃を飛ばすことができる。上記の設定閾値は、メモリに予め定められていればよい。
【0028】
なお、「制御部40は、車両1に設けられた上記センサーからの出力に基づき、表示器10の温度が設定閾値を超えた、又は、表示器10の埃の量が設定閾値を超えたと判別すると」とは、「表示器10の温度が設定閾値を超えること」と「表示器10の埃の量が設定閾値を超えること」の少なくともいずれかの条件が満たされた場合を含み、いずれか一方の条件が満たされた場合も含む。同様に、「制御部40は、車両1に設けられた上記センサーからの出力に基づき、表示器10の温度が設定閾値以下、又は、表示器10の埃の量が設定閾値以下であると判別すると」とは、「表示器10の温度が設定閾値以下となること」と「表示器10の埃の量が設定閾値以下となること」の少なくともいずれかの条件が満たされた場合を含み、いずれか一方の条件が満たされた場合も含む。したがって、車両1には、温度センサーと埃センサーの一方のみが設けられていてもよい。
【0029】
なお、本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0030】
車載表示装置100は、フロントガラス3の透過領域に向けて表示光Lを発し、フロントガラス3で反射した表示光Lによって、表示光Lが表す画像の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であってもよい。この場合、ダッシュボード2の中に位置する表示器10から発せられる表示光Lを1枚又は複数枚のミラーで反射させてから、フロントガラス3に到達させる構成を採用することができる。車載表示装置100がヘッドアップディスプレイ装置として構成される場合、筒状体20は、表示器10からフロントガラス3までの表示光Lの光路の一部を囲んでいればよい。そして、表示器10は、表示面10aがフロントガラス3に向いていなくてよく、筒状体20の下方に位置していなくともよい。
【0031】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0032】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0033】
100…車載表示装置
1…車両
2…ダッシュボード、2a…天面
3…フロントガラス、3a…セラミック形成部
4…ユーザ、5…アイボックス
10…表示器、10a…表示面、L…表示光
20…筒状体、20a…開口部
21…内側面、21a…送風口
30…ガイド部、31…傾斜面
40…制御部
50…デフロスター、51…ダクト、D…デフロスター風