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特開2024-163615粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイ
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  • 特開-粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163615
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/02 20060101AFI20241115BHJP
   C09J 133/08 20060101ALI20241115BHJP
   C09J 133/10 20060101ALI20241115BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241115BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20241115BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
C09J133/02
C09J133/08
C09J133/10
C09J163/00
C09J7/38
C09J133/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079379
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】柏村 岳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 好映
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA01
4J004DB02
4J004EA06
4J004FA08
4J040DF021
4J040DF041
4J040DF051
4J040EC002
4J040EF002
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA11
4J040GA14
4J040GA17
4J040GA20
4J040GA31
4J040HD35
4J040HD36
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040LA05
4J040LA08
4J040LA10
4J040MA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
4J040PA23
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】高極性被着体ならびに低極性被着体に対する粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性、硬化剤混合後の充分な可使時間を併せ持つ粘着剤、それを用いた粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイを提供すること。
【解決手段】(a1)炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、(a2)炭素数8~18の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)およびヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)の少なくともいずれかと、をそれぞれ特定量含有するモノマー混合物の共重合体であるアクリル系ポリマー(A)と硬化剤(B)を含有する粘着剤組成物により解決される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む粘着剤組成物であって、
アクリル系ポリマー(A)は下記モノマー(a1)と、モノマー(a2)と、モノマー(a3-1)およびモノマー(a3-2)の少なくともいずれかと、を含むモノマー混合物の共重合体であり、
モノマー混合物100質量%中に、モノマー(a1)を5~50質量%、モノマー(a2)を30~80質量%、モノマー(a3)を2~20質量%含有することを特徴とする、粘着剤組成物。
(a1)炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2)炭素数8~18の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a3)カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)およびヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)
【請求項2】
前記モノマー混合物100質量%中に、カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)を7.5質量%超16質量%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
硬化剤(B)がエポキシ系硬化剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
更にシランカップリング剤(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー混合物100質量%中、ヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)の含有率が10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
アクリル系ポリマーを構成するモノマー混合物100質量%中、窒素原子含有モノマーの含有率が10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた、粘着シート。
【請求項8】
請求項1~6いずれか1項記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層と、光透過性基材を備えることを特徴とする、積層体。
【請求項9】
請求項8記載の積層体、偏光板および光学素子を備える、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベル用途や医療用途等幅広い分野で使用されている。その中でも、マーキングフィルムやウィンドウフィルム、自動車部材、光学ディスプレイ等、長期の使用が想定される用途に用いられる粘着剤は、耐熱性や耐湿熱性、耐候性、耐光性、耐衝撃性等の耐久性が必要であり、近年粘着剤の耐久性向上に向けた検討が盛んに行われている。
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)等様々な光学ディスプレイが、表示装置として広く使用されている。また、光学ディスプレイは、表示装置としての利用に加えてタッチパネルのような入力装置として利用されている。タッチパネルには、表面の保護を目的としてカバーパネルが設置される。通常、これら光学ディスプレイを構成する部材の貼り合わせは、粘着剤層を介して行われる。
【0004】
上述した通り、長期の使用が想定される光学ディスプレイ用の粘着剤においては、高温/高湿度の環境下で被着体から浮きや剥がれが生じないこと(耐剥離性)、粘着剤層自体が白く変色しないこと(耐湿熱白化性)、粘着剤層自体が黄色く変色しないこと(耐黄変性)といった高い耐久性が要求される。また、ポリカーボネート(PC)やポリメタクリル酸メチル(PMMA)といった透明プラスチック素材からなるカバーパネルの固定用途に用いられる粘着剤においては、上記の耐久性に加えて透明プラスチックから発生するガスに起因する外観不良が生じないこと(耐アウトガス性)が必要となる。
【0005】
耐久性という点において、ディスプレイの中でも特に車載用途においては高い耐久性が要求される。特に、近年の第5世代移動通信システム(5G)、Internet of Things(IoT)、人工知能(AI)といった情報技術の革新的な進歩に起因して自動車の電装化や車外ディスプレイ搭載車の開発が進んでおり、それに伴い120℃といったより高温での耐熱性(従来は85~105℃程度)が求められるなど、その要求性能は更に厳しいものとなっている。従って、より高温での耐熱性と従来から引き続き求められる耐湿熱白化性や耐アウトガス性等を全て満たす粘着剤を開発することは大きな課題となっていた。また、パソコンのモニタやテレビのように固定して使用されるディスプレイと比較し、取り扱い上、衝撃や外力が加わりやすい上に継続的に軽量化や薄型化のニーズが存在する為、低塗布量の粘着層においても耐衝撃性が求められる。
【0006】
これまでも、ディスプレイ用の粘着剤に要求される耐久性を満たすための検討は多くなされている。例えば、特許文献1に記載の粘着剤では、耐湿熱白化性と耐アウトガス性付与のためにヒドロキシ基含有アクリル酸エステルと窒素含有アクリル酸エステルを共重合したアクリル系粘着剤を使用しているが、120℃での耐熱性や耐光性が不十分であった。また、特許文献2に記載の粘着剤においては、表示ムラ抑制のためにモノマーとして炭素数4~8のアクリル酸アルキルエステルとN-(2-ヒドロキシエチル)アクリルアミドを共重合したアクリル系粘着剤を使用しているが、120℃における耐熱性や耐湿熱白化性、耐アウトガス性、粘着性が不十分であった。
【0007】
一方で特許文献3には、高温環境下によっても気泡の発生が抑制され、かつ被着体に対して優れた密着性を発揮する光学用粘着シートが開示され、実施例1~4にはモノマー成分100重量部中にアクリル酸4-ヒドロキシブチル(4HBA)を25~30重量部含むモノマー混合物を共重合して得られるアクリル系ポリマーと高Tgアクリル系ポリマー、架橋性化合物、光重合開始剤を混合した粘着剤組成物が記載されている。しかし、このようなヒドロキシ基を多量に有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物はガラス面等の高極性の被着体に対しては良好な密着性を示すもののシクロオレフィンポリマー等の低極性の被着体に対する粘着力が不足するという問題があった。
【0008】
更に、近年ではディスプレイの需要増減が激しく粘着シートの状態で長期間在庫される場合が増えてきており、上記全ての要求品質を満たしたとしても粘着剤組成によっては長時間高温環境下に晒されることによる粘着力低下の懸念がある。
【0009】
要求性能の高まりや粘着剤のハンドリング性に加えて、粘着シートが用いられる産業界において、石油資源の枯渇や、石油由来製品の燃焼による二酸化炭素の排出が問題視されている。そこで、包装材分野を皮切りに光学分野、半導体分野等さまざまな産業において、石油由来材料に代えて生物由来材料を用いる事による石油資源の節約が試みられている。
【0010】
アクリル系ポリマーを主成分とする粘着剤において、生物由来材料の比率を向上させる方法として、生物から産生される直鎖アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸をエステル化して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含むモノマー混合物を共重合してアクリル系ポリマーを得る方法が挙げられる。生物由来の直鎖アルコールは、現在比較的安価かつ安定的な物量で流通していることから工業的に使用可能である。例えば、特許文献4には炭素数12~24のアルキル基を有するバイオマス由来アクリレートを含むモノマー混合物を共重合して得られる粘着剤が開示されているが、耐熱保持試験の条件は低温短時間であり、高温条件下での耐久性は不十分であるのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2017-106000号公報
【特許文献2】特開2007-264092号公報
【特許文献3】特開2022-069221号公報
【特許文献4】特開2020-105308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、高極性被着体および低極性被着体に対する粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性、耐衝撃性、ならびに硬化剤混合後の充分な可使時間を併せ持つ粘着剤、それを用いた熱経時後も充分な粘着力を有する粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む粘着剤組成物であって、
アクリル系ポリマー(A)は下記モノマー(a1)と、モノマー(a2)と、モノマー(a3-1)およびモノマー(a3-2)の少なくともいずれかと、を含むモノマー混合物の共重合体であり、
モノマー混合物100質量%中に、モノマー(a1)を5~50質量%、モノマー(a2)を30~80質量%、モノマー(a3)を2~20質量%含有することを特徴とする、粘着剤組成物。
(a1)炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2)炭素数8~18の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a3)カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)およびヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)
【0014】
また本発明は、硬化剤(B)がエポキシ系硬化剤を含むことを特徴とする上記粘着剤組成物に関する。
【0015】
また本発明は、更にシランカップリング剤(C)を含むことを特徴とする上記粘着剤組成物に関する。
【0016】
また本発明は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー混合物100質量%中、ヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)の含有率が10質量%以下であることを特徴とする上記粘着剤組成物に関する。
【0017】
また本発明は、アクリル系ポリマーを構成するモノマー混合物100質量%中、窒素原子含有モノマーの含有率が10質量%以下であることを特徴とする上記粘着剤組成物に関する。
【0018】
また本発明は、上記粘着剤組成物からなる粘着剤層を備えた、粘着シートに関する。
【0019】
また本発明は、上記粘着シートと光透過性基材を備えることを特徴とする、積層体に関する。
【0020】
また本発明は、上記積層体、偏光板および光学素子を備える、ディスプレイに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、高極性被着体および低極性被着体に対する粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性、耐衝撃性、ならびに硬化剤混合後の充分な可使時間を併せ持つ粘着剤、それを用いた熱経時後も充分な粘着力を有する粘着シート、積層体および該積層体を備えるディスプレイの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の積層体を、部分的に示す概略断面図である。
図2】本発明の積層体の使用例であるディスプレイを、部分的に示す概略断面図である。
図3】本発明の粘着シートを、部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の粘着剤、粘着シート、積層体およびディスプレイについて説明するが、これに限定されない。
なお、本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを含み、(メタ)アクリロキシ基とは、アクリロキシ基およびメタクリロキシ基を含む。モノマーとは、エチレン性不飽和基を有する単量体である。
また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
さらに、被着体とは、粘着シートの粘着剤層を貼り付ける相手方を指す。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0024】
《粘着剤組成物》
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー(A)および硬化剤(B)を含む。
【0025】
<アクリル系ポリマー(A)>
アクリル系ポリマー(A)は、以下に記すモノマー(a1)と、モノマー(a2)と、モノマー(a3-1)およびモノマー(a3-2)の少なくともいずれかと、を含むモノマー混合物の共重合体であり、モノマー混合物100質量%中に、(a1)を5~50質量%、(a2)を30~80質量%、モノマー(a3)を2~20質量%以下含有することを特徴とする。
【0026】
[モノマー(a1)]
(a1)は炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。但し本明細書においては、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、炭素数1~4のアルキル基を有していてもモノマー(a3)とし、窒素原子等のカルボキシ基およびヒドロキシ基以外の官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーはその他モノマーとする。
【0027】
(a1)の含有率はモノマー混合物100質量%中に5~50質量%であり、好ましくは17~47質量%であり、更に好ましくは22~42質量%、最も好ましくは27~37質量%である。(a1)の含有率が5質量%未満であると粘着層の凝集力が低下し粘着力、耐熱性、耐光性が不足する。(a1)の含有率が50質量%を超えると粘着層のタックが低下し粘着力、耐熱性、耐光性が不足する。
【0028】
モノマー(a1)の例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも粘着力、耐熱性の点でメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0029】
[モノマー(a2)]
(a2)は炭素数8~18の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーである。このような炭素数の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは生物由来材料の入手が可能なため、これらを用いることにより生物由来材料の比率を向上させることができる。また、粘着剤層全体の極性を低下できるため低極性の被着体に対する粘着力を高めることができる。また、アルキル基が直鎖状であることにより、粘着剤層中で部分的に結晶化し、耐熱性を高めることができる。
【0030】
モノマー(a2)の例として、ノルマルオクチル(メタ)アクリレート、ノルマルノニル(メタ)アクリレート、ノルマルデシル(メタ)アクリレート、ノルマルウンデシル(メタ)アクリレート、ノルマルドデシル(メタ)アクリレート、ノルマルトリデシル(メタ)アクリレート、ノルマルテトラデシル(メタ)アクリレート、ノルマルペンタデシル(メタ)アクリレート、ノルマルヘキサデシル(メタ)アクリレート、ノルマルヘプタデシル(メタ)アクリレート、ノルマルオクタデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
(a2)の含有率はモノマー混合物100質量%中に30~80質量%であり、好ましくは37~67質量%であり、更に好ましくは42~62質量%、最も好ましくは47~57質量%である。(a2)の含有率が30質量%を下回ると充分な生物由来材料を粘着剤、粘着層に用いることができず、また低極性の被着体に対する粘着力が不足する為このような被着体への貼り合せに用いることができない。(a2)の含有率が80質量%を超えると粘着層の凝集力が低下し粘着力、耐熱性、耐光性が不足する。
【0032】
(a2)100質量%中、炭素数12~14の直鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーの含有率が30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。このような比率とすることで被着体の極性を問わず高い粘着力を得やすい。
【0033】
(a2)100質量%中、メタクリレートの含有率が35質量%以上であることが好ましく、45質量%がより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましい。粘着力と耐熱性の観点でメタクリレートの含有率は高い方が好ましく、(a2)100質量%中のメタクリレートの含有率は100質量%であっても良い。
【0034】
[モノマー(a3)]
(a3)はカルボキシ基を有するモノマー(a3-1)およびヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)である。(a3)は、カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)およびヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)の両方を含んでも良いし、いずれか一方のみを含んでも良いが、カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)を含むことが好ましい。カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)を含むことで、粘着層の凝集力を高まり、粘着力および耐熱性を高めやすくなる他、耐衝撃性を高めることができる。
【0035】
(a3)の含有率はモノマー混合物100質量%中に2~20質量%であり、好ましくは7.5質量%超19質量%以下、更に好ましくは8~12質量%、である。2質量%以上とすることで耐湿熱性を確保でき、20質量%以下とすることでアウトガスを低減でき、更に十分な硬化剤混合後可使時間を確保することができる。
【0036】
カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)としては分子内にカルボキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
これらのうち、粘着力の観点で(メタ)アクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
【0037】
カルボキシ基を有するモノマー(a3-1)の含有率はモノマー混合物100質量%中に7.5質量%を超えて16質量%以下であることが好ましく、より好ましくは7.5質量%を超えて12質量%以下、更に好ましくは8~10質量%である。7.5質量%を超えることで耐衝撃性を確保でき、16質量%以下とすることでアウトガスを低減でき、低極性の被着体に対する粘着力を確保し、更に十分な硬化剤混合後可使時間を確保することができる。
【0038】
ヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)としては、分子内にヒドロキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、等が挙げられる。
これらのうち、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが粘着力および耐湿熱性の観点より好ましい。
【0039】
ヒドロキシ基を有するモノマー(a3-2)の含有率はモノマー混合物100質量%中に10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、2質量%以下であることが最も好ましい。ヒドロキシ基含有モノマーを10質量%以下とすることで低極性の被着体に対する粘着力を確保し、粘着シートの熱経時の際にヒドロキシ基と(a3)のカルボキシ基との反応が起こりにくくなるために粘着力低下を避けやすくなる。
【0040】
[窒素原子含有モノマー]
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は更に、窒素原子含有モノマーを含むことができる。このようなモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ窒素原子を有するモノマーを有するものを特に制限なく用いることができる。このようなモノマーの中でも環状構造を有するモノマーが好ましく、環状構造内に窒素原子を有するものがより好ましい。
【0041】
窒素原子含有モノマーの例として、N-ビニルラクタム類、ビニルピリジン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルフォリン等の環状アミド類、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルカルボン酸アミド類、アクリロニトリル、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。N-ビニルラクタム類は環状のラクタム環を有する単量体であり、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、およびこれらの水素原子の1つまたは2つ以上が、置換基で置換された構造を有する化合物が挙げられる。置換基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数3~20のカルボキシエステル基、炭素数1~20のアミノ基が挙げられ、ヒドロキシ基やカルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、次亜リン酸(塩)基等の酸性基は含まない。
これらの中でも、環状アミド類、N-ビニルラクタム類が好ましく、N-ビニルラクタム類がより好ましい。
【0042】
窒素原子含有モノマーの含有率はモノマー混合物100質量%中に5質量%以下が好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。5質量%以下とすることで耐熱黄変性、耐光黄変性を高めやすくなる。
【0043】
[その他モノマー]
アクリル系ポリマー(A)を構成するモノマー混合物は任意成分として、前記(a1)~(a3)および窒素原子含有モノマー以外にその他モノマーを含有しても良い。例としては、脂環構造を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、分岐アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、メトキシエチルアクリレート等のアルコキシ系(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン等のビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基を有するモノマー等が挙げられる。
その他モノマーの含有率はモノマー混合物100質量%中15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが最も好ましい。
【0044】
(アクリル系ポリマー(A)の製造)
アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー混合物を重合し、製造することができる。
重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましい。重合温度は60~120℃の沸点反応が好ましい。また、重合時間は5~12時間程度が好ましい。
【0045】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、等のパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0046】
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等の2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)等の2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等の1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
【0047】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
【0048】
(重量平均分子量(Mw))
アクリル系ポリマー(A)の重量平均分子量は、50万~150万が好ましく、60万~120万がより好ましい。重量平均分子量を上述した範囲内にすることで高温/高湿度の環境下での耐剥離性や耐アウトガス性、耐光性がより向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。
【0049】
<硬化剤(B)>
本発明の粘着剤組成物は硬化剤(B)を含む。粘着剤に配合する硬化剤としては上記モノマー(a3)のカルボキシ基および/またはヒドロキシ基と熱等により反応して結合を形成するものが好ましい。硬化剤の配合により粘着剤層の凝集力が向上し、粘着力、耐熱性、耐光性が向上する。
【0050】
硬化剤としては、エポキシ系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤、アジリジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、金属キレート系硬化剤、メラミン系硬化剤等の公知の硬化剤の中から、粘着剤中の重合体が有する官能基との反応性を考慮して適宜1種または2種以上選択できるが、粘着力、耐光性、耐衝撃性の観点でエポキシ系硬化剤を含むことが好ましい。
【0051】
エポキシ系硬化剤は、例えばN,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、テトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン(以上、4官能エポキシ化合物の例)、グリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、等が挙げられ、これらを適宜1種または2種以上選択できる。粘着力、耐熱性の観点で4官能エポキシ化合物を硬化剤(B)100質量%中50質量%以上含んでいることが好ましい。エポキシ系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.05~0.4質量部含むことが好ましく、0.1~0.3質量部含むことがより好ましい。含有量が0.05質量部以上になると凝集力がより向上し、0.4質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0052】
イソシアネート系硬化剤は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネートとしては例えば、芳香族ポリイソシアネート系、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましく、耐黄変性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体がさらに好ましい。イソシアネート系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して1~5質量部含むことが好ましく、2~4質量部含むことが更に好ましい。含有量が1質量部以上になると凝集力がより向上し、5質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0053】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0054】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0055】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0056】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0057】
オキサゾリン系硬化剤は、分子中に2個以上のオキサゾリン基を有するものであり低分子化合物であっても重合体であってもよい。低分子化合物のオキサゾリン系硬化剤としては、例えば、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン、2,2’-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2、2’-ヘキサメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス-(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-(1,3-フェニレン)-ビス-(2-オキサゾリン)、ビス-(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス-(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。重合体のオキサゾリン系硬化剤としては、その構成成分として付加重合性オキサゾリンを必須成分とする重合体が挙げられる。上記付加重合性オキサゾリンとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等が挙げられる。オキサゾリン系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して3~10質量部含むことが好ましい。含有量が3質量部以上になると凝集力がより向上し、10質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0058】
アジリジン系硬化剤は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4'-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。アジリジン系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して1~5質量部含むことが好ましい。含有量が1質量部以上になると凝集力がより向上し、5質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0059】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。カルボジイミド系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.1~3質量部含むことが好ましい。含有量が0.1質量部以上になると凝集力がより向上し、3質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0060】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウム等の多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート等が挙げられる。金属キレートを用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.1~0.5質量部含むことが好ましく、0.2~0.4質量部含むことが更に好ましい。含有量が0.1質量部以上になると凝集力がより向上し、0.5質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0061】
メラミン系硬化剤は、例えば完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、一部にイミノ基を有するイミノ基型メラミン樹脂等が代表的なものとして挙げられる。メラミン系硬化剤を用いる場合、粘着剤組成物中のアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.1~10質量部含むことが好ましい。含有量が0.1質量部以上になると凝集力がより向上し、10質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために充分な粘着力と耐熱性、耐光性を得やすい。
【0062】
<シランカップリング剤(C)>
本発明の粘着剤組成物はシランカップリング剤(C)を含むことが好ましい。シランカップリング剤(C)を含むことで、粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐光性を向上させることができる。シランカップリング剤(C)はアクリル系ポリマー(A)100質量部に対して0.05~1質量部含むことが好ましく、0.1~0.5質量部であることがより好ましい。0.05~1質量部とすることで耐熱性、耐アウトガス性、耐光性を両立することが容易となる。
【0063】
シランカップリング剤(C)としては、(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物、ビニル基を有するアルコキシシラン化合物、アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、メルカプト基を有するアルコキシシラン化合物、またはエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
市販品として具体的には、例えば、KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE-403(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、KBM-303(2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)(以上、信越化学工業株式会社製)、BYK-325N(ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン)(ビックケミージャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0064】
塩素化ポリオレフィンとしては、塩素化ポリプロピレン、酸変性塩素化ポリプロピレン、アクリル変性塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン、塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマー等が挙げられ、アクリル系ポリマー等との相溶性がよく、効果的に極性を下げられる観点から、塩素化ポリプロピレン、または塩素化エチレン酢酸ビニルコポリマーが好ましい。
市販品として具体的には、例えば、スーパークロン 390S(塩素化ポリプロピレン、塩素含有率36%)、スーパークロン BX(塩素化EVA、塩素含有率18%)(以上、日本製紙株式会社製)が挙げられる。
【0065】
《粘着シート》
粘着シートは、本発明の粘着剤組成物からなる粘着剤層を備える。
【0066】
本発明の粘着シートは、粘着剤層の少なくとも片面に剥離フィルムが貼り合された構成が好ましい。具体的には、粘着剤層の両面に剥離フィルムが形成された構成あるいは粘着剤層の片面に剥離フィルムが形成され粘着剤のもう一方の面に光透過性基材を備える構成の何れかであり、かつ該粘着剤層が本発明の粘着剤組成物により形成された粘着剤層である。
【0067】
<剥離フィルム>
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料等が挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0068】
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿等の苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、PETフィルム又はシートが好適である。
【0069】
透明プラスチック基材の厚さは、特に限定されず、例えば、10~200μmが好ましく、25~150μmがより好ましい。
【0070】
本発明の粘着シートは、高極性被着体ならびに低極性被着体に対し優れた粘着性や耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性を有するため、LCDやOLED等の表示装置やタッチパネルのような入力装置といった光学ディスプレイ部材の形成や、それらの部材同士の貼り合わせのための粘着剤として好適である。光学部材としては特に限定されることなく、PETフィルム、COPフィルム、偏光板、位相差板、楕円偏光板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、赤外線/電磁波カットフィルム、前面用反射防止フィルム、表面保護フィルム、ITO(酸化インジウムスズ)層を有するフィルム、酸化亜鉛(ZnO)層を有するフィルム、金属ナノ粒子を塗布や印刷することで得られるフィルム、カーボンナノチューブを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、グラフェンを含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、導電性高分子を含む分散液を塗布や印刷することにより得られるフィルム、SUS等で形成された金属板、金属メッシュ、さらにはこれらが積層されているものが挙げられる。
【0071】
粘着剤組成物の塗工には、適当な液状媒体を添加して粘度を調整することもできる。具体的には、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、またはその他の炭化水素系溶剤等が挙げられる。ただし、水やアルコールは、アクリル系ポリマー(A)とイソシアネート系硬化剤(B)との反応阻害を引き起こす可能性があるため、慎重に使用する必要がある。
【0072】
塗工方法は特に制限は無く、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。また、乾燥硬化方法は特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線、減圧法や活性エネルギー線を利用したものが挙げられるが、耐アウトガス性の観点で60~180℃での熱風もしくは蒸気加熱が好ましい。
【0073】
粘着剤層の厚みは、2~1000μmが好ましく、5~500μmがさらに好ましい。なお、粘着剤層は単層でも、2層以上の積層いずれの形態でもよい。
【0074】
《積層体》
積層体は、光透過性基材と粘着剤層を備え、前記粘着剤層は、本発明の粘着シートを用いて形成される。具体的には、例えば、本発明の粘着シートから剥離フィルムを剥離し、光透過性基材に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。
本発明の積層体は、例えば、光透過性基材/粘着剤層/偏光板の構成を有する。この場合、光透過性基材、粘着剤層、および偏光板を、この順に備えることが好ましい。これにより、透明性に優れた積層体とできる。
【0075】
<光透過性基材>
光透過性基材としては透明プラスチック基材が用いられる。このような光透過性基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリシクロオレフィン(COP)、ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリプロピレン等のプラスチック材料等が挙げられる。特に、PETフィルム、またはPCが好ましく耐久性の面でPCがさらに好ましい。
なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、光透過性基材は、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理等の適宜な表面処理が施されていてもよい。
【0076】
図1に、本発明の積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。図1において3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層であり、4は偏光板である。
【0077】
図1で示される積層体では、光透過性基材(カバーパネル)が、粘着剤層を介して、偏光板に貼付されている。
【0078】
<積層体の製造>
積層体の製造方法は、例えば、粘着剤層の両面に剥離フィルムを有する粘着シートから剥離フィルムを剥離し、それぞれ光透過性可撓性基材、もしくは偏光板等の被着体に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。また、粘着剤層の片面に剥離フィルム、もう一方の面に光透過性基材を備える粘着シートから剥離フィルムを剥離し、光透過性可撓性基材もしくは偏光板等の被着体に粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することができる。更に、光透過性可撓性基材上に粘着剤層を直接形成後、粘着剤層に、被着体、または別の粘着シートが備える粘着剤層を貼り付けて積層体を形成することもできる。
【0079】
《ディスプレイ》
ディスプレイは、本発明の積層体、偏光板および光学素子を備える。これにより、本発明のディスプレイは視認性に優れる。
光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0080】
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。図2において、3は光透過性基材(カバーパネル)、1は粘着剤層1、4は偏光板、5は粘着剤層2、6は窒化ケイ素等のバリア層、7は有機EL層、8はポリイミド等の支持体、9は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が図2に限定されることはない。
【0081】
図2で示されるディスプレイでは、光透過性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤層(粘着剤層1)を介して、偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層(粘着剤層2)を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤から形成された透明粘着剤層が、光透過性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着剤層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
例えば、図2において、本発明の粘着剤層は、粘着剤層1、および粘着剤層2のいずれにも用いることができる。
一般に、粘着剤層1と粘着剤層2を比較した場合、粘着剤層に要求される要求品質は粘着剤層1の方が要求は高く、本発明の粘着剤は、基材への密着性および、接着性が良好であることから、粘着剤層1に用いられることが好ましい。このとき、粘着剤層2を形成するための粘着剤は、本発明の粘着剤を用いてもよく、従来公知の粘着剤を用いてもよい。
【0082】
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
【実施例0083】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」をそれぞれ示すものとする。また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
【0084】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。装置は、株式会社島津製作所製GPC装置:LC-GPCシステム「Prominence」を用いた。また、カラムには、東ソー社製:TSKgel α-Mを用い、2本を直列に連結した。溶離液として、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、40℃で測定した。Mwの決定は、標準物質としてMwが既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
【0085】
<アクリル系ポリマーの製造例>
(アクリル系ポリマー(A-1))
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下管を備えた反応装置を使用して、モノマー(a1)としてメチルアクリレート(MA)34部、モノマー(a2)としてドデシルアクリレート(DDA)24部およびドデシルメタクリレート(DDMA)31部、モノマー(a3)としてアクリル酸(AA)9部、その他モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を2部、以上のそれぞれ半量のモノマー混合物、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを0.2部、溶剤として酢酸エチル60部を反応槽に仕込み、残りの半量のモノマー混合物および酢酸エチル60部、アゾビスイソブチロニトリルを0.2部添加して混合した溶液を滴下管から約2時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて6時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈し、不揮発分30%、アクリル系ポリマー溶液(A-1)を得た。又、得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)を表1に示す。
【0086】
(アクリル系ポリマー(A-2~A-45、A’-1~A’-6))
表1~4記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系ポリマー(A-1)の製造と同様の方法でアクリル系ポリマー(A-2~A-45、A’-1~A’-6)を合成した。又、得られたアクリル系ポリマーの重量平均分子量を表1~4に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
なお、略号は以下の通りである。
[モノマー(a1)]
MA:メチルアクリレート(アルキル基の炭素数1)
MMA:メチルメタクリレート(アルキル基の炭素数1)
EA:エチルアクリレート(アルキル基の炭素数2)
BMA:n-ブチルメタクリレート(アルキル基の炭素数4)
[モノマー(a2)]
OA:ノルマルオクチルアクリレート(アルキル基の炭素数8)
OMA:ノルマルオクチルメタクリレート(アルキル基の炭素数8)
DA:ノルマルデシルアクリレート(アルキル基の炭素数10)
DMA:ノルマルデシルメタクリレート(アルキル基の炭素数10)
DDA:ノルマルドデシルアクリレート(アルキル基の炭素数12)
DDMA:ノルマルドデシルメタクリレート(アルキル基の炭素数12)
TrDA:ノルマルトリデシルアクリレート(アルキル基の炭素数13)
TrDMA:ノルマルトリデシルメタクリレート(アルキル基の炭素数13)
TeDA:ノルマルテトラデシルアクリレート(アルキル基の炭素数14)
TeDMA:ノルマルテトラデシルアクリレート(アルキル基の炭素数14)
HDA:ノルマルヘキサデシルアクリレート(アルキル基の炭素数16)
HDMA:ノルマルヘキサデシルメタクリレート(アルキル基の炭素数16)
ODA:ノルマルオクタデシルアクリレート(アルキル基の炭素数18)
ODMA:ノルマルオクタデシルメタクリレート(アルキル基の炭素数18)
[モノマー(a3)]
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート
4HBA:4-ヒドロキシノルマルブチルアクリレート
[その他モノマー]
2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
iDA:イソデシルアクリレート
iDMA:イソデシルメタクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
THFA:テトラヒドロフルフリルアクリレート
NVP:n-ビニル-2-ピロリドン
NVCL:n-ビニル-ε-カプロラクタム
ACMO:アクリロイルモルフォリン
AAm:アクリルアミド
【0092】
実施例および比較例で使用した材料を下記に記す。
<硬化剤(B)>
B-1:「TETRAD-X」(三菱ガス化学株式会社製N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)
B-2:「TG3DAS」(三井化学ファイン株式会社製、テトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン)
B-3:「スミエポキシ ELMー434」(住友化学株式会社製、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン)
B-4:「スミエポキシ ELM100」(住友化学株式会社製、N-[2-メチル-4-(オキシラニルメトキシ)フェニル]-N-(オキシラニルメチル)オキシランメタンアミン)
B-5:「デナコール EX-313」(ナガセケミカル株式会社製、グリセロールポリ(ジ、トリ)グリシジルエーテル)
B-6:「GAN」(日本化薬株式会社製 N,N-ジグリシジルアニリン)
B-7:「コロネートL」(東ソー社製、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートのアダクト体)
B-8:「アルミキレートA」(川研ファインケミカル株式会社製 アルミニウムトリス(アセチルアセトネート))
【0093】
<シランカップリング剤(C)>
KBE-403:(3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)
KBM-303:(〔2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル〕トリメトキシシラン、信越化学工業社製)
【0094】
<実施例1>
アクリル系ポリマー(A-1)100部に対して、硬化剤(B)として(B-1)「TETRAD-X」(三菱ガス化学株式会社製N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン)を0.25部、及びシランカップリング剤(C)としてKBE-403(3-グリシドオキシプロピルトリエトキシシラン、信越化学工業社製)を0.1部配合し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を、コンマコーターを使用して、剥離性シートとして厚さ38μmの剥離ライナー(SP-PET-O1-BU:三井化学東セロ社製)上に乾燥後の厚みが100μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥させた後、粘着剤層に剥離性シートとして厚さ75μmの剥離ライナー(SP-PET-O3-B3:三井化学東セロ社製)を貼り合せ、この状態で23℃にて7日間エージングさせ、粘着シートを得た。
【0095】
<実施例2~66、比較例1~6>
表5、6に示すように、アクリル系ポリマー、硬化剤およびシランカップリング剤の種類ならびに配合量を変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ粘着剤組成物および粘着シートを得た。
【0096】
【表5】
【0097】
【表6】
【0098】
《粘着剤組成物および粘着シートの物性値と評価》
本発明の粘着剤組成物および粘着シートの粘着力、耐熱性(剥離、黄変)、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性(剥離、黄変)、硬化剤添加後可使時間、粘着シート熱経時後粘着力、耐衝撃性の評価を下記の方法で行った。結果を表7、8に示す。
【0099】
<対ガラス粘着力>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅25mm×長さ100mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。この試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、23℃-相対湿度50%(50%RH)雰囲気で、粘着剤層をガラス板に貼り付け、さらにJIS Z-0237に準じてロールで圧着した。圧着してから24時間経過後、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)にて剥離強度(剥離角度180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。[評価基準]
◎:剥離強度が25N/25mm以上。優良。
○:剥離強度が21N/25mm以上、25N/25mm未満。良好。
△:剥離強度が18N/25mm以上、21N/25mm未満。やや良好。
▲:剥離強度が15N/25mm以上、18N/25mm未満。実用可。
×:剥離強度が15N/25mm未満。実用不可。
【0100】
<対低極性フィルム粘着力>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅25mm×長さ100mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。この試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、23℃-相対湿度50%(50%RH)雰囲気で、粘着剤層を50μm厚のシクロオレフィンフィルムに貼り付け、さらにJIS Z-0237に準じてロールで圧着した。圧着してから24時間経過後、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)にて剥離強度(剥離角度180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。
[評価基準]
◎:剥離強度が20N/25mm以上。優良。
○:剥離強度が17N/25mm以上、20N/25mm未満。良好。
△:剥離強度が14N/25mm以上、17N/25mm未満。やや良好。
▲:剥離強度が12N/25mm以上、14N/25mm未満。実用可。
×:剥離強度が12N/25mm未満。実用不可。
【0101】
<耐熱性(剥離)>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、23℃-50%RHの雰囲気で、ラミネーターを用いて厚さ0.5mmのポリカーボネート(PC)板(ユーピロンNF2000:三菱ガス化学社製)に粘着剤層を貼り合わせた。次いで、粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、上記同様ラミネーターを用いてガラス板に貼り合わせた。それを50℃の雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持することでPC板/粘着剤層/ガラス板の順に積層した試験片を作製し、120℃の環境下で1000時間放置した。それを23℃-50%RHにて24時間冷却したのち、試験片の剥離度合いを目視で評価した。
[評価基準]
◎:剥離面積が全体の5%未満。優良。
○:剥離面積が全体の5%以上15%未満。良好。
△:剥離面積が全体の15%以上30%未満。やや良好。
▲:剥離面積が全体の30%以上50%未満。実用可。
×:剥離面積が全体の50%以上。実用不可。
【0102】
<耐光性(黄変)>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、23℃-50%RHの雰囲気で、ラミネーターを用いてガラス板に粘着剤層を貼り合わせた。次いで、粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、上記同様ラミネーターを用いてガラス板に貼り合わせた。それを50℃の雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持することでガラス板/粘着剤層/ガラス板の順に積層した試験片を作製し、120℃の環境下で1000時間放置した。それを23℃-50%RHにて1時間冷却した後、b*値を測定し、耐熱試験前のb*値との差Δb*を算出した。なお、b*値は日本電色工業社製分光色差計SE6000を用いて、D65光源、視野角2°の条件で測定した。
[評価基準]
◎:Δb*が0.8未満。優良。
○:Δb*が0.8以上1.3未満。良好。
△:Δb*が1.3以上2.0未満。やや良好。
▲:Δb*が2.0以上3.0未満。実用可。
×:Δb*が3.0以上。実用不可。
【0103】
<耐湿熱白化性(ガラス構成)>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、23℃-50%RHの雰囲気で、ラミネーターを用いてガラス板に粘着剤層を貼り合わせた。次いで、粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、上記同様ラミネーターを用いてガラス板に貼り合わせた。それを50℃の雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持することでガラス板/粘着剤層/ガラス板の順に積層した試験片を作製し、85℃-85%RHの環境下で1000時間放置した。それを23℃-50%RHにて1時間冷却した後、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製TurbidimeterNDH5000Wを用いて測定した。
[評価基準]
◎:HAZEが1.0未満。優良。
○:HAZEが1.0以上2.0未満。良好。
△:HAZEが2.0以上3.5未満。やや良好。
▲:HAZEが3.5以上5.0未満。実用可。
×:HAZEが5.0以上。実用不可。
【0104】
<耐湿熱白化性(PC構成)>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層をPETフィルム(東洋紡績(株)製、A-4300、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅40mm×長さ60mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。次いで、試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、厚さ0.5mmのポリカーボネート(PC)板(ユーピロンNF2000:三菱ガス化学社製)に貼り合わせた。それを50℃の雰囲気下で0.5MPaの圧力をかけて20分間保持することでPETフィルム/粘着剤層/PC板の順に積層した試験片を作製し、85℃-85%RHの環境下で240時間放置した。それを23℃-50%RHにて1時間冷却した後、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製TurbidimeterNDH5000Wを用いて測定した。
[評価基準]
◎:HAZEが1.5未満。優良。
○:HAZEが1.5以上2.5未満。良好。
△:HAZEが2.5以上4.0未満。やや良好。
▲:HAZEが4.0以上5.5未満。実用可。
×:HAZEが5.5以上。実用不可。
【0105】
<耐アウトガス性>
耐湿熱白化性(PC構成)の評価と同様の手順で試験片を作製後、85℃-85%RHの環境下で72時間放置した。そして23℃-50%RHの雰囲気に1時間放置したのち、試験片の外観を目視で観察した。
[評価基準]
◎:気泡、浮きがない。優良。
○:気泡または粘着剤層の浮きがごく僅かにある(気泡であれば1個以上5個未満、浮きであれば浮いた面積が全体の3%未満)。良好。
△:気泡または粘着剤層の浮きが僅かにある(気泡であれば5個以上15個未満、浮きであれば浮いた面積が全体の3%以上5%未満)。やや良好。
▲:気泡または粘着剤層の浮きがある(気泡であれば15個以上30個未満、浮きであれば浮いた面積が全体の5%以上10%未満)。実用可。
×:気泡または粘着剤層の浮きが多数ある(気泡であれば30個以上、浮きであれば浮いた面積が全体の10%以上)。実用不可。
【0106】
<耐光性(剥離)>
表面保護コート剤(東洋インキ社製、YL454UR、アクリル系ワニス)100部に対して硬化剤としてD-172Nを10部混合して塗液を配合し、バーコーターを用いて厚さ0.5mmのポリカーボネート(PC)板(ユーピロンNF2000:三菱ガス化学社製)に塗布した。その後、40℃にて72時間エージングし、表面保護層を有するPC板を作製した。ユーピロンNF2000に代えて上述した表面保護層を有するPC板を用いる以外は、耐熱性(剥離)の評価と同様の手順で試験片を作製後、Q-Lab社製キセノン耐候性試験機を用いてブラックパネル温度83℃、照度60W/mの条件で500時間光を照射した。それを23℃-50%RHにて24時間冷却したのち、試験片の剥離度合いを目視で評価した。
[評価基準]
◎:剥離面積が全体の5%未満。優良。
○:剥離面積が全体の5%以上15%未満。良好。
△:剥離面積が全体の15%以上25%未満。やや良好。
▲:剥離面積が全体の25%以上50%未満。実用可。
×:剥離面積が全体の50%以上。実用不可。
【0107】
<耐光性(黄変)>
耐熱性(黄変)の評価と同様の手順で試験片を作製後、Q-Lab社製キセノン耐候性試験機を用いてブラックパネル温度63℃、照度85W/mの条件で1000時間光を照射した。それを23℃-50%RHにて1時間冷却した後、b*値を測定し、耐光性試験前のb*値との差Δb*を算出した。なお、b*値は日本電色工業社製分光色差計SE6000を用いて、D65光源、視野角2°の条件で測定した。
[評価基準]
◎:Δb*が1.0未満。優良。
○:Δb*が1.0以上2.0未満。良好。
△:Δb*が2.0以上3.5未満。やや良好。
▲:Δb*が3.5以上5.0未満。実用可。
×:Δb*が5.0以上。実用不可。
【0108】
<硬化剤添加後の可使時間>
25℃雰囲気で硬化剤を混合した直後の粘着剤組成物の粘度をB型粘度計(ローター:3、回転数:12rpm、測定時間:1分間 単位:mPa・s)で測定した。同粘着剤組成物を25℃雰囲気下で12時間放置し、前記同様に粘度を測定した。粘着剤組成物を放置した前後の粘度の変化率を計算し、下記基準でポットライフを評価した。
粘度の変化率は、硬化剤混合直後の粘度をVa、25℃雰囲気下で12時間放置した後の粘度をVbとしたときに、式1で表される。
(式1) 粘度の変化率=(Vb―Va)/Va×100
◎:粘度変化20%未満。(優良)
○:粘度変化20%以上40%未満(良好)
△:粘度変化40%以上70%未満。(やや良好)
▲:粘度変化70%以上100%未満。(実用可)
×:粘度変化100%以上。(実用不可)
【0109】
<粘着シート熱経時後粘着力>
得られた粘着シートを80℃の環境下で720時間放置した後、23℃-50%RHの雰囲気に24時間放置した。その後、粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ100μm)に貼り合わせ、幅25mm×長さ100mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。この試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、23℃-50%RHの雰囲気で、粘着剤層をガラス板に貼り付け、さらにJIS Z-0237に準じてロールで圧着した。圧着してから24時間経過後、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)にて剥離強度(剥離角度180°、剥離速度300mm/分;単位N/25mm幅)を測定した。[評価基準]
◎:剥離強度が23N/25mm以上。優良。
○:剥離強度が20N/25mm以上、23N/25mm未満。良好。
△:剥離強度が16N/25mm以上、20N/25mm未満。やや良好。
▲:剥離強度が13N/25mm以上、16N/25mm未満。実用可。
×:剥離強度が13N/25mm未満。実用不可。
【0110】
<耐衝撃性試験>
得られた粘着シートの38μm剥離ライナーを剥がし、粘着剤層を基材であるPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA-4360、厚さ50μm)に貼り合わせ、幅100mm×長さ200mmのサイズに切り取り試験用粘着シートを作製した。この試験用粘着シートのもう一方の75μm剥離ライナーを剥がし、23℃-50%RHの雰囲気で、粘着剤層を30μm厚のガラス板に貼り付け、スーパーカッターを用いて幅70mm×長さ150mmに切り出し、試験用積層体とした。貼付24時間後、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、評価用ペンを試験用積層体のPETフィルムの最表面から10cmの高さにペン先が位置し尚且つペン先が下向きとなるように保持し、その位置から評価用ペンを落下させた。評価用ペンとして、質量が5.4gであり、ペン先の直径が0.75mmのペンを用いた。評価用ペンを落下させた後の試験用積層体について、光学顕微鏡(Keyence社製、VHK―8000)で、20倍の接眼レンズを用いて観察を行い以下の基準で評価を行った。
◎:PETフィルム及びガラス板にクラックなし
○:PETフィルムにクラックなし、ガラス板にクラックあり
×:PETフィルム及びガラス板にクラックあり
【0111】
【表7】
【0112】
【表8】
【0113】
表7、8に示すように、本発明の粘着剤組成物は、粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性、硬化剤混合後の可使時間、粘着シート熱経時後粘着力、耐衝撃性の点で優れた結果であった。一方、比較例の粘着剤組成物は、粘着力、耐熱性、耐湿熱白化性、耐アウトガス性、耐光性、硬化剤混合後の可使時間、粘着シート熱経時後粘着力、耐衝撃性のすべてを満足することはできなかった。
これらの結果より、本発明の粘着剤組成物は、光学部材の貼り合せに好適に用いることができるといえる。
【符号の説明】
【0114】
図1図2図3の符号について下記に説明する。
1 粘着剤層1
2 剥離フィルム
3 フィルム基材(カバーパネル)
4 偏光板
5 粘着剤層2
6 バリア層
7 有機EL層
8 支持体
9 有機ELセル
図1
図2
図3