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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163623
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】表示装置、制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241115BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20241115BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
A61B3/113
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079399
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 一治
【テーマコード(参考)】
2H199
4C316
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA06
2H199CA29
2H199CA32
2H199CA42
2H199CA72
2H199CA86
2H199CA92
2H199CA96
2H199CA97
4C316AA16
4C316AA21
4C316AB16
4C316FA01
4C316FA18
4C316FC04
4C316FC28
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】表示画像、レンズ、またはディスプレイなどをより適切な位置に配置可能な技術を提供する。
【解決手段】表示装置は、画像を表示する表示手段を有する。表示装置は、前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させ、ユーザの眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を実行することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にし、前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示手段と、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動手段と、
ユーザの眼球位置を取得する取得手段と、
1)前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を実行するように前記駆動手段を制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にし、2)前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を実行するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記画像の表示位置を移動させ、
前記第1の駆動および前記第2の駆動は、前記画像の表示位置を移動させる駆動である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記第1の部材を移動させ、
前記第1の駆動および前記第2の駆動は、前記第1の部材を移動させる駆動である、
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記取得手段は、撮像手段による前記ユーザの眼球の撮像に基づき、前記眼球位置を取得し、
前記所定の状態とは、前記撮像手段の画角内に前記眼球が配置された状態である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記所定の状態とは、前記眼球位置が、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方に対して所定の方向に所定量以上ズレてる状態である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1の部材は、前記ユーザの左の眼球用の第2の部材と、前記ユーザの右の眼球用の第3の部材とを有し、
前記表示手段は、前記ユーザの右の眼球用の第1の画像と、前記ユーザの左の眼球用の第2の画像とを表示し、
前記所定の状態とは、右の眼球の中心と左の眼球の中心との間隔が、前記第1の画像の中心と前記第2の画像の中心との間隔および前記第2の部材の中心と前記第3の部材の中心との間隔の少なくとも一方より小さい状態である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記第2の駆動では、前記指標および前記ユーザへの指示の少なくともいずれかが表示された際の前記ユーザの反応に基づき前記第2の目標位置を決定する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記第1の駆動後に、前記指標を表示するように前記表示手段を制御し、
前記ユーザの反応とは、前記ユーザが前記指標を注視する動作である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記第1の駆動後に、ユーザ情報を選択することを求める指示を表示するように前記表示手段を制御し、
前記ユーザの反応とは、前記ユーザによる前記ユーザ情報の選択である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
複数のユーザの眼球情報を格納する格納手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記第2の駆動では、1)選択された前記ユーザ情報に対応する眼球情報を前記格納手段から取得して、2)取得した眼球情報に基づく前記第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させるように前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第2の駆動後に、前記ユーザの眼球情報を測定する測定手段をさらに有する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1の駆動前には、前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示といずれも表示しないように前記表示手段を制御する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示装置は、前記ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイである、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項14】
画像を表示する表示手段を有する表示装置の制御方法であって、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動ステップと、
ユーザの眼球位置を取得する取得ステップと、
前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にする第1の制御ステップと、
前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御する第2の制御ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
【請求項15】
コンピュータを、請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、制御方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」と記す)は、ユーザに画像が見えるようにするため、表示用部材(接眼レンズおよびディスプレイなど)を備える。一般的に、表示画像(または表示用部材)とユーザの眼球の位置との差分が大きい場合には、ユーザが視認する画像の画質が劣化してしまう。
【0003】
また、ユーザの左右の眼球の間隔は、個人によりバラつきがある。このバラつきに起因する画質の劣化を防ぐためには、左右の眼球の間隔に合わせて、表示画像または表示用部材の位置調整を行う必要がある。特許文献1には、眼球位置を取得するカメラを備え、取得した眼球位置に応じて表示画像および表示用部材の位置を調整するHMDが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-232718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、表示画像または表示用部材の位置の調整を高精度に行うためには、眼球の位置を高精度に検出する必要がある。そして、この眼球の位置の検出には、ユーザへの指示または指標などを表示する必要がある。しかし、このような表示は表示用部材の位置調整などの前に行われるため、上記の位置ズレが大きい可能性がある。このような場合には、指示または指標の視認性が悪く、またユーザが指示または指標を適切に視認できずに、眼球の位置検出精度が悪化する可能性がある。このため、表示画像または表示用部材を適切な位置に配置できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、眼球に対して、表示画像、レンズ、またはディスプレイなどをより適切な位置に配置可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、
画像を表示する表示手段と、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動手段と、
ユーザの眼球位置を取得する取得手段と、
1)前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を実行するように前記駆動手段を制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にし、2)前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を実行するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置である。
【0008】
本発明の1つの態様は、
画像を表示する表示手段を有する表示装置の制御方法であって、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動ステップと、
ユーザの眼球位置を取得する取得ステップと、
前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にする第1の制御ステップと、
前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御する第2の制御ステップと、
を有することを特徴とする制御方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、眼球に対して、表示画像、レンズ、またはディスプレイなどをより適切な位置に配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係るHMDの構成を説明する図である。
図2】実施形態1に係るHMDの構成を説明する図である。
図3】HMDに生じる課題を説明する図である。
図4】実施形態1に係る位置調整の処理のフローチャートである。
図5】実施形態1に係る第1の駆動前の状態を示す図である。
図6】実施形態1に係る第1の駆動後の状態を示す図である。
図7】実施形態2に係る位置調整の処理のフローチャートである。
図8】実施形態2に係る第1の駆動後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を実施するための実施形態について説明する。
【0012】
<実施形態1>
まず、実施形態1に係るHMD1について説明する。図1A図1B図2Aおよび図2Bを用いてHMD1の構造について説明する。図1Aは、HMD1の外観図である。図1Bは、HMD1に含まれるHMD本体11の外観図である。図2Aは、HMD1が有する構成(ディスプレイ121a、ディスプレイ121b、接眼レンズ122a、接眼レンズ122b、眼球カメラ123a、眼球カメラ123b)を表す図である。図2Bは、左の眼球91aおよび右の眼球91bの画像である。
【0013】
なお、以下では、図1Aおよび図1Bに示すように、ユーザから見て左右方向を「X方向」と呼び、上下方向を「Y方向」と呼び、前後方向(視線方向)を「Z方向」と呼ぶ。
【0014】
HMD1は、ユーザの頭部に装着する表示装置である。図1Aに示すように、HMD1は、HMD本体11と装着機構13を有する。HMD本体11は、装着機構13により保持されており、ユーザの眼前に配置される。装着機構13は、ユーザの頭部に固定される鉢巻状の部材である。
【0015】
図1Bに示すように、HMD本体11は、ユーザの左の眼球に対応するような画像(左
の眼球用の画像)を表示する表示ユニット12a、および、ユーザの右の眼球に対応するような画像(右の眼球用の画像)を表示する表示ユニット12bを有する。表示ユニット12aおよび表示ユニット12bはそれぞれ、表示用部材を有する。また、HMD本体11は、表示ユニット12aをX方向に駆動する駆動部として回転モータ14aを有し、表示ユニット12bをX方向に駆動する駆動部として回転モータ14bを有している。
【0016】
図2Aは、表示ユニット12aおよび表示ユニット12bに含まれる表示用部材を表す図である。左側の表示ユニット12aは、ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122aを有している。右側の表示ユニット12bは、ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122bを有している。以下では、ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122aをまとめて、「表示用部材120a」と呼ぶ。ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122bをまとめて、「表示用部材120b」と呼ぶ。
【0017】
ディスプレイ121aおよびディスプレイ121bはそれぞれ、表示画像を表示する。ユーザは、接眼レンズ122aおよび接眼レンズ122bを介して表示画像を見る。左側の表示ユニット12aと右側の表示ユニット12bはそれぞれ、ユーザの眼球に対して赤外光を投光する複数のIRED素子124を有する。左側の表示ユニット12aは、左の眼球を観察する眼球カメラ123a(撮像部)を有する。右側の表示ユニット12bは、右の眼球を観察する眼球カメラ123b(撮像部)を有する。
【0018】
図2Bは、眼球カメラ123aによってユーザの左の眼球91aが撮像された画像と、眼球カメラ123bによってユーザの右の眼球91bが撮像された画像を示す。眼球カメラ123aは、左の瞳孔911aの輪郭および赤外光の反射光を観察し、表示ユニット12aに対する眼球91aの2次元または3次元の相対位置を取得する。眼球カメラ123bも、眼球カメラ123aと同様に、表示ユニット12bに対する眼球91bの2次元または3次元の相対位置を取得する。
【0019】
上述の構成において、HMD1は、眼球91aおよび眼球91bの位置に応じて回転モータ14aおよび回転モータ14bを駆動して、表示ユニット12aおよび表示ユニット12bをそれぞれX方向に移動させる。これにより、表示用部材120aを左の眼球91aの前に、表示用部材120bを右の眼球91bの前に、精度よく配置できる。なお、回転モータ14aおよび回転モータ14bにより、表示用部材120aおよび表示用部材120bを駆動する際には、表示画像も同時にX方向に移動する。
【0020】
ここで、図3A図3Dを用いて、上記のHMD1の課題について述べる。図3Aは、表示用部材(表示用部材120aおよび表示用部材120b)と眼球(眼球91aおよび眼球91b)とをY方向から見た図である。図3Bは、ディスプレイ121aに表示する表示画像IM1a、および、ディスプレイ121bに表示する表示画像IM1bを示している。
【0021】
図3Cは、知覚画像IM2aおよび知覚画像IM2bを示している。知覚画像IM2aは、接眼レンズ122aを介してユーザの左の眼球91aが認識する画像である。知覚画像IM2bは、接眼レンズ122bを介してユーザの右の眼球91bが認識する画像である。なお、ユーザは接眼レンズ122aを介して表示画像IM1aを見るため、図3Aに示すように、ユーザは、眼球91aから見てディスプレイ121aよりも離れた位置に、知覚画像IM2aが表示されているように認識する。同様に、ユーザは接眼レンズ122bを介して表示画像IM1bを見るため、図3Aに示すように、ユーザは、眼球91aから見てディスプレイ121aよりも離れた位置に、知覚画像IM2bが表示されているように認識する。
【0022】
図3Dは、眼球91aおよび眼球91bによって、表示画像IM1aおよび表示画像IM1bを同時にユーザが見た場合にユーザが認識する画像IM3を示す。つまり、画像IM3は、知覚画像IM2aおよび知覚画像IM2bがユーザの脳内で合成された場合に、ユーザが認識する画像である。
【0023】
図3Aでは、左の眼球91aのZ方向正面に表示用部材120a(ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122a)がX方向にズレなく配置されている。一方で、右の眼球91bのZ方向正面に表示用部材120b(ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122b)がX方向に大きくズレて配置されている。
【0024】
ディスプレイ121aに表示された表示画像IM1aを、ユーザの左の眼球91aが接眼レンズ122aを介して見ると、知覚画像IM2aとして視認される。ディスプレイ121aに表示された表示画像IM1bを、ユーザの右の眼球91bが接眼レンズ122bを介して見ると、知覚画像IM2bとして視認される。
【0025】
なお、HMD1では、表示用部材120a(ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122a)のX方向の中心と表示画像IM1a(知覚画像IM2a)のX方向の中心とは、常に一致する。このため、表示用部材120aをX方向に駆動すると、表示画像IM1a(知覚画像IM2a)も同時にX方向に駆動される。同様に、表示用部材120bのX方向の中心と表示画像IM1b(知覚画像IM2b)のX方向の中心とは、常に一致する。このため、表示用部材120bをX方向に駆動すると、表示画像IM1b(知覚画像IM2b)も同時にX方向に駆動される。
【0026】
また、眼球カメラ123aは、瞳孔911aの位置を検出可能である。眼球カメラ123aは、瞳孔911bの位置を検出可能である。図3Aにおいて、ユーザの眼球位置92aおよび眼球位置92bを正確に検出するためには、眼球カメラ123aおよび眼球カメラ123bが検出する瞳孔911aおよび瞳孔911bの位置に加えて、眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bが必要である。
【0027】
これに対し、図3Bに示す表示画像IM1aおよび表示画像IM1bには、注視指標D1が中央に表示され、注視指標D1を注視することをユーザに求める指示D2が表示される。なお、「ユーザが注視指標D1を注視する」とは、注視指標D1の範囲を一定期間以上継続してユーザが見続けていることを示す。
【0028】
ユーザが中央の注視指標D1を注視している状態であれば、HMD1は、眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bを既知と仮定できる。例えば、HMD1のゴーグルによって眼球91aの位置がおおよそ固定されるため、知覚画像IM2aと瞳孔911aの位置との距離DS1は、おおよそ特定の値に固定される。そして、眼球91aを撮像した撮像画像を参照すれば、注視指標D1の位置である注視点P1の位置と瞳孔911aの位置との距離DS2も算出可能である。そして、tanθ1a=DS2/DS1が成立するため、眼球角度θ1aは、距離DS1と距離DS2に応じて算出可能である。
【0029】
また、成人であれば、人の眼球の大きさは、おおよそ同じ大きさである。このため、HMD1は、一般的な眼球の大きさと瞳孔911aの位置と眼球角度θ1aとに基づき、眼球位置92aを高精度に検出することができる。HMD1は、一般的な眼球の大きさと瞳孔911bの位置と眼球角度θ1bに基づき、眼球位置92bを高精度に検出することができる。
【0030】
このとき、図3Aに示すように、左の眼球91aに対して、表示画像IM1aおよび表示用部材120a(ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122a)がX方向にズレな
く配置されていれば、画像の表示性能は十分高い。このため、図3Bに示す知覚画像IM2aのように、表示画像IM1aの画質を損なわない画像をユーザは視認できる。
【0031】
一方で、右の眼球91bに対して、表示画像IM1および表示用部材120b(ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122b)がX方向にズレて配置されていると、視認される画像の表示性能が低下してしまう。表示性能の低下としては様々な現象があるが、本件では画像の滲みを一例として説明する。具体的には、図3Bに示す知覚画像IM2bのように、表示した注視指標D1および指示D2が滲んで見えるため、視認性が低下してしまう。
【0032】
また、一般的に人間は、左の視軸A1aおよび右の視軸A1bが互いに平行である状態よりも外側に、視軸A1aおよび視軸A1bを同時に向ける動作が困難である。このため、眼球91aおよび眼球91bの間隔L1が2つの表示用部材(および2つの表示画像の表示位置)の中心間隔(中心同士の距離)L2がより小さい場合には、眼球91aおよび眼球91bによって左右の注視指標D1を同時に注視可能でないことがある。例えば、ユーザの利き目が右の眼球91bである場合には、右の眼球91bのみ注視指標D1を注視し、左の眼球91aは、右の眼球91aの視軸A1bと並行な方向を向いてしまい、注視指標D1を注視できないことがある(図3A参照)。
【0033】
図3Aおよび図3Cにおいて、知覚画像IM2aにおける眼球91aの注視点および、知覚画像IM2aにおける眼球91bの注視点を、注視点P1として表している。この例では、左の眼球91aは注視指標D1を注視しているが、右の眼球91bは注視指標D1を注視していない。左の眼球91aが注視指標D1を注視していないことに起因して、HMDは左の眼球91aの眼球角度θ1aを誤って検出してしまうため、眼球位置92aの位置の検出精度が低下してしまう。
【0034】
また、眼球91aおよび眼球91bにおいて注視点P1の位置が異なる場合には、ユーザは、図3Dで示すように2つの画像がズレて重なったように認識してしまう。さらに、右の眼球91bにより視認された知覚画像IM2b自体も、表示性能の低下のため滲んでいる。
【0035】
以上のように、表示画像および表示用部材をユーザの眼球に対して適切に配置しようとした場合に、画像の視認性の悪化および眼球の位置の検出精度の悪化が起きてしまう可能性があった。
【0036】
そこで、図4のフローチャートを参照して、HMD1における表示用部材120aおよび表示用部材120bの位置調整の処理(表示画像IM1aおよび表示画像IM1bの表示位置の調整の処理)を説明する。以下では、HMD1に含まれる制御部がプログラムを実行することにより、図4のフローチャートの処理が実現される。ここで、制御部は、プロセッサなどにより実現される。
【0037】
図5A図5Dは、図4のフローチャートの処理の開始前の状態を表す。図5Aに示す、表示用部材(表示用部材120aおよび表示用部材120b)と眼球(眼球91aおよび眼球91b)との位置関係は、図3Aに示す位置関係と同じである。この時点では、図5Bに示すように、ディスプレイ121aに表示される表示画像IM1a、およびディスプレイ121bに表示される表示画像IM1bには、注視指標D1および指示D2が含まれていない。この結果、ユーザは、図5Cおよび図5Dに示すように、注視指標D1および指示D2を含まない画像を認識する。
【0038】
ステップS1002において、制御部は、眼球カメラ123aにより眼球91aを検出
し、眼球カメラ123bにより眼球91bを検出する。そして、制御部は、眼球位置92aおよび眼球位置92bを検出する。なお、注視指標D1が表示されていないため、眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bは不明である。このため、眼球位置92aおよび眼球位置92bの検出の精度は低い状態である。
【0039】
ステップS1003において、制御部は、眼球91aおよび眼球91bが所定の状態であるか否かを判定する。所定の状態は、例えば、下記の第1の状態~第3の状態の3つの状態のいずれかである。これらの状態の判定には、眼球位置の高い検出精度は不要であり、検出精度が十分な高さでなくとも実現可能である。
【0040】
第1の状態は、眼球カメラ123aの画角内に眼球91aが配置されており、かつ、眼球カメラ123bの画角内に眼球91bが配置された状態である。つまり、第1の状態は、眼球カメラ123aが取得した撮像画像に眼球91aが写っており、かつ、眼球カメラ123bが取得した撮像画像に眼球91bが写っている状態であるともいえる。
【0041】
第2の状態は、表示画像IM1aの表示位置に対し眼球位置92aがX方向に所定量以上ズレている状態、または、表示画像IM1bの表示位置に対し眼球位置92bがX方向に所定量以上ズレている状態である。第2の状態は、表示用部材120aの位置に対し眼球位置92aがX方向に所定量以上ズレている状態、または、表示用部材120bに対し眼球位置92bがX方向に所定量以上ズレている状態であってもよい。
【0042】
第3の状態は、眼球91aと眼球91bとの中心間隔L1が、表示用部材120aと表示用部材120bとの中心間隔L2よりも短い状態である。第3の状態は、眼球91aと眼球91bとの中心間隔L1が、表示画像IM1aと表示画像IM1bとの中心間隔L2よりも短い状態であってもよい。
【0043】
ステップS1003にて、眼球91aおよび眼球91bが所定の状態であると判定された場合には、ステップS1004に進む。眼球91aおよび眼球91bが所定の状態でないと判定された場合には、ステップS1006に進む。
【0044】
ステップS1004において、制御部は、眼球91aおよび眼球91bを所定の状態でない状態にするために、表示用部材120aおよび表示用部材120bのそれぞれのX方向の第1の目標位置を算出(決定)する。ここでは、制御部は、ステップS1002で検出した眼球位置92aおよび眼球位置92bに基づき第1の目標位置を算出する。「第1の目標位置」とは、上記の所定の状態を解消するために、対象物(表示用部材または表示画像)の中心位置を移動させる先の位置である。
【0045】
例えば、表示用部材120aおよび表示用部材120bを第1の目標位置に移動させた場合に、表示用部材120aと表示用部材120bとの中心間隔が、眼球位置92aと眼球位置92bとの中心間隔によりも小さくなるように、第1の目標位置が算出される。または、眼球91aに対する表示用部材120aのX方向のズレ量、および、眼球91bに対する表示用部材120bのX方向のズレ量が所定値よりも小さくなるように、第1の目標位置が算出される。
【0046】
ステップS1005において、制御部は、第1の駆動を行うことにより、眼球91aおよび眼球91bを所定の状態でない状態にする。第1の駆動は、回転モータ14aの回転により表示用部材120a(表示画像IM1a)を第1の目標位置に移動させ、回転モータ14bの回転により表示用部材120b(表示画像IM1b)を第1の目標位置に移動させる処理である。
【0047】
ステップS1006において、制御部は、図6Bに示すように、ディスプレイ121aに表示画像IM1aを表示し、ディスプレイ121bに表示画像IM1bを表示する。表示画像IM1aおよび表示画像IM1bのそれぞれには、注視指標D1と、注視指標D1を注視することを求める指示D2が含まれる。ユーザが注視指標D1を注視することで、上述のように、眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bを既知とできる。このため、制御部は、眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bに基づき、眼球位置92aおよび眼球位置92bを高精度に検出することができる。
【0048】
なお、ステップS1005で、制御部は、表示用部材120aおよび表示用部材120bを駆動した。このため、図6Aに示す左の眼球91aと表示用部材120aのX方向のズレ量と、右の眼球91bと表示用部材120bのX方向のズレ量とは、図3Aに示す右の眼球91bと表示用部材120bのX方向のズレ量に比べて小さい。これにより、図6Cに示すユーザが視認する知覚画像IM2aおよび知覚画像IM2bでは、注視指標D1および指示D2の滲みが抑制されている。また、ステップS1006の時点では、眼球91aと眼球91bとの間隔L1は、表示用部材120aと表示用部材120bとの中心間隔L2よりも大きい。このため、眼球91aの視軸A1a、および眼球91bの視軸A1bは、平行より内側を向いている。そして、眼球91aおよび眼球91bはそれぞれ、注視指標D1を容易に注視することができる。また、眼球91aおよび眼球91bが画像における同一の位置を注視できるために、ユーザは、図6Dに示すように、滲みなどのない画像を認識できる。
【0049】
ステップS1007において、制御部は、表示用部材120aおよび表示用部材120bのX方向の第2の目標位置を算出(決定)する。ここでは、制御部は、ステップS1006で注視指標D1および指示D2を表示した際のユーザの反応に基づき、第2の目標位置を算出する。実施形態1では、ユーザの反応とは、ユーザが注視指標D1を注視する動作である。「第2の目標位置」は、眼球のX方向の位置を目標として算出される位置である。
【0050】
ステップS1007では、図6Aおよび図6Cに示す注視点P1のように、眼球91aおよび眼球91bが注視指標D1を適切に注視しているため、HMD1が眼球角度θ1aおよび眼球角度θ1bを正しく把握できる。このため、ステップS1007では、ステップS1004で行われた第1の目標位置の算出時よりも高精度に、眼球位置92aおよび眼球位置92bが検出可能である。また、図3Aおよび図3Cに示すような眼球91aおよび眼球91bが注視指標D1を注視できない状態も起きにくく、眼球位置92aおよび眼球位置92bの検出の精度の低下も起きにくい。このため、適切に第2の目標位置が算出可能である。
【0051】
ステップS1008において、制御部は、第2の駆動を行う。第2の駆動では、第1の駆動と同様に、回転モータ14aを回転して表示用部材120aを第2の目標位置に移動させ、回転モータ14bを回転して表示用部材120bを第2の目標位置に移動させる。
【0052】
ステップS1009において、制御部は、左の眼球91aに対する表示用部材120a(表示画像IM1a)のX方向のズレ量、および右の眼球91bに対する表示用部材120b(表示画像IM1b)のX方向のズレ量が目標範囲内であるか否かを判定する。2つのズレ量が目標範囲内であると判定された場合には、ステップS1010に進む。一方で、2つのズレ量のうちの少なくともいずれかが目標範囲外であると判定された場合には、ステップS1007に戻る。この場合には、ステップS1007およびS1008の処理が再度を実行される。
【0053】
ステップS1010まで進んだ時点で、表示用部材120aおよび表示用部材120b
の位置調整は完了している。また、表示画像IM1aおよび表示画像IM1bの位置調整も完了している。
【0054】
ステップS1010において、制御部は、ディスプレイ121aおよびディスプレイ121bのそれぞれに注視指標D1を表示する。
【0055】
ステップS1011において、制御部は、ユーザの眼球情報を取得する。近年のHMDでは、ユーザの視線情報を用いる機能が多くあり、視線情報の算出にはユーザの眼球情報が必要である場合がある。眼球情報とは、例えば、眼球の直径の情報、または、角膜の半径の情報などである。ステップS1011において、制御部は、眼球カメラ123aおよび眼球カメラ123bが眼球91aおよび眼球91bを撮像した画像に基づき、眼球91aの眼球情報および眼球91bの眼球情報を取得する。
【0056】
制御部は、注視指標D1の表示位置を変えつつ、ステップS1010で注視指標D1を表示し、ステップS1011で眼球情報を取得することを繰り返す。ステップS1010の処理の開始時点で、表示用部材120aが眼球91aに対してX方向にズレが少なく配置され、かつ、表示用部材120bが眼球91bに対してX方向にズレが少なく配置されている。このため、表示性能の低下が抑制されており、ユーザは、滲みのない注視指標D1を視認することができる。
【0057】
以下では、HMD1の動作について述べる。眼球位置92aと表示用部材120aとのX方向の位置ズレ、または、眼球位置92bと表示用部材120bとのX方向の位置ズレが大きい状態では、注視指標D1および指示D2が表示されると、注視指標D1および指示D2の視認性が低い(図3D参照)。また、眼球91aおよび眼球91aのいずれかが注視指標D1を適切に注視できないため、眼球位置92aおよび眼球位置92bの位置検出精度が悪くなる可能性があった。
【0058】
これに対し、実施形態1に係る図4のフローチャートの開始前(第1の駆動前)の時点では、図5Bに示すように、表示画像IM1aおよび表示画像IM1bには、注視指標D1および指示D2が含まれていない。このため、図5Dに示すように、ユーザが認識する画像は、図3Dに示す画像に比べて視認性がよい。
【0059】
ステップS1005にて、第1の駆動が行われた後では、図6Aに示すように、眼球位置92aと表示用部材120aの位置とのX方向のズレ、および、眼球位置92bと表示用部材120bの位置とのX方向のズレが減少する。このため、注視指標D1および指示D2の視認性が改善する。この時点から、注視指標D1および指示D2が表示されるため、図6Dに示すユーザが認識する画像は、図3Dに示す画像に比べて視認性がよい。
【0060】
また、注視指標D1を適切に注視できるため、眼球位置92aおよび眼球位置92bの検出の精度の低下を抑制可能である。そして、第2の駆動において、より適切な位置に表示用部材(表示用部材120aおよび表示用部材120b)および表示画像(表示画像IM1aおよび表示画像IM1b)を配置することができる。
【0061】
なお、HMD1では、表示用部材120aのX方向の中心と表示画像IM1aのX方向の中心は常に一致し、かつ、表示用部材120bのX方向の中心と表示画像IM1bのX方向の中心は常に一致していた。そして、表示用部材120aとともに表示画像IM1aの表示位置も同時に移動し、かつ、表示用部材120bとともに表示画像IM1bの表示位置も同時に移動していた。しかし、表示用部材120aおよび表示画像IM1aのうちの一方のみが移動し、表示用部材120bおよび表示画像IM1bのうちの一方のみが移動してもよい。表示画像IM1a(表示画像IM1b)の表示位置のみを駆動する方法と
しては、ディスプレイの画像を表示する位置を変える手法などが挙げられる。
【0062】
なお、HMD1では、注視指標D1と指示D2の両方を含む画像が表示される。しかし、注視指標D1と指示D2のいずれか一方のみを含む画像が表示されてもよい。
【0063】
なお、図3Aでは、眼球位置92aに対して表示用部材120a(表示画像IM1a)がX方向にズレている状態、または、眼球位置92aに対して表示用部材120b(表示画像IM1b)がX方向にズレている状態であった。また、左右の眼球の中心間隔が左右の表示用部材(左右の表示画像の表示位置)の中心間隔より小さい状態であった。このような状態では、画像の視認性の悪化および眼球位置の検出精度が悪化する。
【0064】
このため、上記の状態を所定の状態とし、この状態であったら第1の駆動が行われることが好ましい。または、眼球カメラ123aおよび眼球カメラ123bの画角内に眼球が配置された状態を所定の状態とし、必ず第1の駆動が行われてもよい。
【0065】
なお、HMD1の第1の駆動では、眼球位置に基づき表示用部材(表示画像)の第1の目標位置を算出している。眼球位置を用いずに、平均的なユーザの眼球位置を第1の目標位置とする手法も考えられるが、この手動では第1の駆動後において、表示用部材(表示画像)の位置が適切でない可能性が高まってしまう。このため、第1の駆動では、眼球位置に基づき表示用部材(表示画像)の第1の目標位置を算出することが好ましい。
【0066】
さらに、表示用部材120aと表示用部材120bの(表示画像IM1aと表示画像IM1bの)中心間隔が、眼球位置92aと眼球位置92bの中心間隔よりも大きいと、上述のように適切に指標を注視できない可能性が高まってしまう。このため、「表示用部材120aと表示用部材120bの(表示画像IM1aと表示画像IM1bの)中心間隔が、眼球位置92aと眼球位置92bの中心間隔よりも小さくすることができる第1の目標位置」が算出されることが好ましい。
【0067】
なお、HMD1において、第2の駆動では、少なくとも表示画像IM1aおよび表示画像IM1bを表示した際に取得されるユーザの反応に基づき、第2の目標位置を算出している。ユーザの反応とは、ユーザが注視指標D1を注視する動作である。これにより、眼球位置92aおよび眼球位置92bの位置検出の精度を向上することができ、第2の駆動において、眼球91aおよび眼球91bに対して、表示用部材120aおよび表示用部材120bをより適切に配置することができる。
【0068】
以上より、第2の駆動では少なくとも表示画像IM1aおよび表示画像IM1bを表示した際に取得されるユーザの反応に基づき、第2の目標位置を算出することが好ましい。さらに表示画像には注視指標D1が含まれ、ユーザの反応はユーザが注視指標D1を注視する動作であることが好ましい。
【0069】
なお、HMD1は、ステップS1010およびステップS1011のように第2の駆動を実行した後に、ユーザの眼球情報を測定している。HMD1は、眼球情報を測定する際には、複数回にわたり指標を表示して、ユーザに指標を注視させる。このとき、第2の駆動の後であるため、眼球91aに対して表示用部材120aに対してズレが少なく配置されており、表示用部材120bが眼球91bに対してズレが少なく配置されている。このため、眼球情報の測定時において表示される注視指標D1においても、表示性能の低下は抑制され、滲みなく視認することができる。以上より、第2の駆動の後に、ユーザの眼球情報を測定することが好ましい。
【0070】
上記の説明では、第1の駆動および第2の駆動では、表示用部材120aおよび表示用
部材120bを同時に駆動させていたが、表示用部材120aおよび表示用部材120bのいずれか一方のみが駆動されてもよい。例えば、表示用部材120aのみが駆動される場合には、所定の状態は、眼球カメラ123aの画角内に眼球91aが配置されている状態、または、表示用部材120aの位置に対し眼球位置92aがX方向に所定量以上ズレている状態などである。また、表示用部材120aの位置が調整される場合とは、ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122aの両方の位置が調整される場合であると説明したが、ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122aのいずれか一方の位置が調整されてもよい。表示用部材120bの位置が調整される場合も、同様に、ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122bのいずれか一方の位置が調整されてもよい。
【0071】
<実施形態2>
続いて、実施形態2に係るHMD2について述べる。HMD2は、HMD1と同様に、表示用部材120a(ディスプレイ121aおよび接眼レンズ122a)および表示用部材120b(ディスプレイ121bおよび接眼レンズ122b)を有する。HMD2における各部材の説明および構造に関しては、HMD1と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
図7を参照して、HMD2における表示用部材120aおよび表示用部材120bの位置調整を説明する。図7におけるステップS2002~S2005は、図4におけるステップS1002~S1005と同じであるため、説明を省略する。
【0073】
ステップS2005の終了時には、図8Aに示すように、第1の駆動が完了している。図8Aでは、眼球91aに対する表示用部材120a(表示画像IM1a)のX方向のズレ量は、図3Aに示す左の眼球91aに対する表示用部材120a(表示画像IM1a)のX方向のズレ量に比べて小さい。図8Aでは、眼球91bに対する表示用部材120b(表示画像IM1b)のX方向のズレ量も、図3Aに示す右の眼球91bに対する表示用部材120b(表示画像IM1b)のX方向のズレ量に比べて小さい。
【0074】
ステップS2006において、制御部は、図8Bに示すように、ディスプレイ121aに表示画像IM1aを表示し、ディスプレイ121bに表示画像IM1bを表示する。表示画像IM1aおよび表示画像IM1bにはそれぞれ、「HMD2を装着しているユーザの情報の選択を求める指示D3」が含まれる。図8Cに示すユーザが視認する表示画像IM1aおよび表示画像IM1bでは、滲みが抑制されている。また、ユーザは、眼球91aおよび眼球91bにより同時に表示画像IM1aおよび表示画像IM1bを見ることによって、図8Dで示すようなズレのない画像を認識できる。
【0075】
ステップS2007において、制御部は、ユーザによって自身の情報(ユーザの情報)を選択する操作を受け付ける。
【0076】
ステップS2008において、制御部は、表示用部材120aおよび表示用部材120bをX方向に駆動する際の第2の目標位置を算出する。ここでは、制御部は、ステップS2006で指示D3を表示した際のユーザの反応に基づき、第2の目標位置を算出する。実施形態2に係る、ユーザの反応とは、ユーザの情報の選択の操作である。ユーザの情報が選択されることにより、HMD2は、当該ユーザの情報に紐づく眼球情報(事前に測定されていたユーザの眼球情報)を参照することができる。このように、制御部は、事前に測定された眼球情報を用いることより、「注視指標を表示してユーザに注視させること」を行わなくとも、高精度に眼球位置92aおよび眼球位置92bの位置を検出できる。よって、制御部は、第2の目標位置を適切に算出することができる。なお、複数のユーザの眼球情報は、予め測定された後に、メモリなどの格納部に格納されている。このため、制御部は、格納部に格納された複数のユーザの眼球情報のうちから、選択されたユーザ情報に対応する眼球情報を取得する。
【0077】
ステップS2009において、制御部は、ステップS1008と同様に、第2の駆動を行う。
【0078】
ステップS2010において、制御部は、ステップS1009と同様に、眼球91aに対する表示用部材120a(表示画像IM1a)のX方向のズレ量が目標範囲内であるか否かを判定する。また、制御部は、眼球91bに対する表示用部材120b(表示画像IM1b)のX方向のズレ量が目標範囲内であるか否かを判定する。2つのズレ量が目標範囲内であると判定された場合には、本フローチャートの処理が終了する。2つのズレ量のうちの少なくともいずれかが目標範囲外であると判定された場合には、ステップS2008に戻る。
【0079】
以下では、HMD2の動作について述べる。HMD2は、第2の駆動では、表示画像IM1aおよび表示画像IM1bを表示した際に取得されるユーザの反応に基づき、第2の目標位置を算出する。
【0080】
HMD2では、HMD1とは異なり、ユーザの反応は、ユーザの情報の選択である。選択されたユーザの情報に紐づくユーザの眼球情報を用いれば、眼球位置92aおよび眼球位置92bの検出精度を向上することができる。このため、第2の駆動において、眼球91aおよび眼球91bに対して、表示用部材120aおよび表示用部材120bをより適切に配置することができる。また、第2の駆動において、眼球91aおよび眼球91bに対して、表示画像IM1aおよび表示画像IM1b(知覚画像IM2aおよび知覚画像IM2b)をより適切に配置することができる。
【0081】
なお、各実施形態では、表示用部材120aおよび表示用部材120bは、レンズ(光学素子)とディスプレイである(網膜投影型)としたが、これには限られない。表示用部材120aおよび表示用部材120bは、レーザ光源とミラー(MEMSミラー)であってもよい(網膜走査型)。この場合には、レーザ光源が発した光が、ミラーで反射した後に、ユーザの眼の網膜に届く。このことによって、表示用部材120aおよび表示用部材120bは、ユーザの眼の網膜上に画像を描画(表示)する。なお、ミラーの代わりに、光学パワーを有する(例えば、光の軌道を変更可能な)任意の光学素子が用いられてもよく、例えば、プリズムまたは回折光学素子が用いられてもよい。
【0082】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
【0083】
また、上記において、「AがB以上の場合にはステップS1に進み、AがBよりも小さい(低い)場合にはステップS2に進む」は、「AがBよりも大きい(高い)場合にはステップS1に進み、AがB以下の場合にはステップS2に進む」と読み替えてもよい。逆に、「AがBよりも大きい(高い)場合にはステップS1に進み、AがB以下の場合にはステップS2に進む」は、「AがB以上の場合にはステップS1に進み、AがBよりも小さい(低い)場合にはステップS2に進む」と読み替えてもよい。このため、矛盾が生じない限り、「A以上」は、「Aよりも大きい(高い;長い;多い)」と読み替えてよく、「A以下」は、「Aよりも小さい(低い;短い;少ない)」と読み替えてもよい。そして、「Aよりも大きい(高い;長い;多い)」は、「A以上」と読み替えてもよく、「Aよりも小さい(低い;短い;少ない)」は「A以下」と読み替えてもよい。
【0084】
なお、上記の各実施形態(各変形例)の各機能部は、個別のハードウェアであってもよいし、そうでなくてもよい。2つ以上の機能部の機能が、共通のハードウェアによって実
現されてもよい。1つの機能部の複数の機能のそれぞれが、個別のハードウェアによって実現されてもよい。1つの機能部の2つ以上の機能が、共通のハードウェアによって実現されてもよい。また、各機能部は、ASIC、FPGA、DSPなどのハードウェアによって実現されてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、装置が、プロセッサと、制御プログラムが格納されたメモリ(記憶媒体)とを有していてもよい。そして、装置が有する少なくとも一部の機能部の機能が、プロセッサがメモリから制御プログラムを読み出して実行することにより実現されてもよい。
【0085】
(その他の実施形態)
本発明は、上記の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0086】
上記の実施形態の開示は、以下の構成、方法、およびプログラムを含む。
(構成1)
画像を表示する表示手段と、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動手段と、
ユーザの眼球位置を取得する取得手段と、
1)前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を実行するように前記駆動手段を制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にし、2)前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を実行するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする表示装置。
(構成2)
前記駆動手段は、前記画像の表示位置を移動させ、
前記第1の駆動および前記第2の駆動は、前記画像の表示位置を移動させる駆動である、
ことを特徴とする構成1に記載の表示装置。
(構成3)
前記駆動手段は、前記第1の部材を移動させ、
前記第1の駆動および前記第2の駆動は、前記第1の部材を移動させる駆動である、
ことを特徴とする構成1または2に記載の表示装置。
(構成4)
前記取得手段は、撮像手段による前記ユーザの眼球の撮像に基づき、前記眼球位置を取得し、
前記所定の状態とは、前記撮像手段の画角内に前記眼球が配置された状態である、
ことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の表示装置。
(構成5)
前記所定の状態とは、前記眼球位置が、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方に対して所定の方向に所定量以上ズレてる状態である、
ことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の表示装置。
(構成6)
前記第1の部材は、前記ユーザの左の眼球用の第2の部材と、前記ユーザの右の眼球用の第3の部材とを有し、
前記表示手段は、前記ユーザの右の眼球用の第1の画像と、前記ユーザの左の眼球用の
第2の画像とを表示し、
前記所定の状態とは、右の眼球の中心と左の眼球の中心との間隔が、前記第1の画像の中心と前記第2の画像の中心との間隔および前記第2の部材の中心と前記第3の部材の中心との間隔の少なくとも一方より小さい状態である、
ことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の表示装置。
(構成7)
前記制御手段は、前記第2の駆動では、前記指標および前記ユーザへの指示の少なくともいずれかが表示された際の前記ユーザの反応に基づき前記第2の目標位置を決定する、ことを特徴とする構成1から6のいずれかに記載の表示装置。
(構成8)
前記制御手段は、前記第1の駆動後に、前記指標を表示するように前記表示手段を制御し、
前記ユーザの反応とは、前記ユーザが前記指標を注視する動作である、
ことを特徴とする構成1から7のいずれかに記載の表示装置。
(構成9)
前記制御手段は、前記第1の駆動後に、ユーザ情報を選択することを求める指示を表示するように前記表示手段を制御し、
前記ユーザの反応とは、前記ユーザによる前記ユーザ情報の選択である、
ことを特徴とする構成1から7のいずれかに記載の表示装置。
(構成10)
複数のユーザの眼球情報を格納する格納手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記第2の駆動では、1)選択された前記ユーザ情報に対応する眼球情報を前記格納手段から取得して、2)取得した眼球情報に基づく前記第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させるように前記駆動手段を制御する、
ことを特徴とする構成9に記載の表示装置。
(構成11)
前記第2の駆動後に、前記ユーザの眼球情報を測定する測定手段をさらに有する、
ことを特徴とする構成1から10のいずれかに記載の表示装置。
(構成12)
前記制御手段は、前記第1の駆動前には、前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示といずれも表示しないように前記表示手段を制御する、
ことを特徴とする構成1から11のいずれかに記載の表示装置。
(構成13)
前記表示装置は、前記ユーザの頭部に装着するヘッドマウントディスプレイである、
ことを特徴とする構成1から12のいずれかに記載の表示装置。
(方法)
画像を表示する表示手段を有する表示装置の制御方法であって、
前記表示手段の第1の部材と前記画像の表示位置との少なくとも一方を移動させる駆動ステップと、
ユーザの眼球位置を取得する取得ステップと、
前記眼球位置が所定の状態である場合には、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を第1の目標位置に移動させる第1の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御することにより、前記眼球位置を前記所定の状態でない状態にする第1の制御ステップと、
前記ユーザが注視する位置を示す指標と前記ユーザへの指示との少なくともいずれかを前記第1の駆動後に表示するように前記表示手段を制御した後に、前記ユーザの反応に基づく第2の目標位置に、前記画像の表示位置と前記第1の部材の少なくとも一方を移動させる第2の駆動を前記駆動ステップにおいて実行するように制御する第2の制御ステップと、
を有することを特徴とする制御方法。
(プログラム)
コンピュータを、構成1から13のいずれかに記載の表示装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0087】
1:HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、
120a,120b:表示用部材、
121a,121b:ディスプレイ、
122a,122b:接眼レンズ、
123a,123b:眼球カメラ、
14a,14b:回転モータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8