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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163633
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】無励磁作動型ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/00 20060101AFI20241115BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20241115BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 123/00 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 125/58 20120101ALN20241115BHJP
【FI】
F16D55/00 B
F16D65/22
F16D121:14
F16D121:22
F16D123:00
F16D125:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079410
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信次
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝充
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA57
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA87
3J058AA88
3J058BA23
3J058BA44
3J058CB11
3J058CC06
3J058CC13
3J058CC19
3J058CC52
3J058CC72
3J058CC77
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転時に電磁コイルが非通電状態になっても、大きな慣性力が発生するのを抑制する。
【解決手段】一対の挟み込み部材12、13のうちの他方の挟み込み部材13は、軸方向の移動が規制された状態で設けられ、ブレーキ部11は、回転軸10と一体に回転するカムドライバ21を備え、カムスライダ22は、カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されるとともに、軸方向に2分割され、2分割されたカムスライダは、弾性部材23を軸方向に挟み、カムドライバ、およびカムスライダには、第1係合部31、および第2係合部32が各別に設けられ、カムドライバが、カムスライダに対して回転軸とともに回転したときに、第1係合部および第2係合部が互いに係合することで、2分割されたカムスライダが、軸方向に相対的に接近移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取付けられるブレーキ部と、
前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、
前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、
通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、
前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、
前記ブレーキ部は、前記回転軸と一体に回転するカムドライバを備え、
前記カムスライダは、前記カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、
2分割された前記カムスライダは、弾性部材を前記軸方向に挟み、
前記カムドライバ、および前記カムスライダには、第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、
前記カムドライバが、前記カムスライダとの間の抑止力に抗して前記カムスライダに対して前記回転軸とともに回転したときに、前記第1係合部および前記第2係合部が互いに係合することで、2分割された前記カムスライダが、前記軸方向に相対的に接近移動する、無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項2】
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記軸方向から見て前記中心軸線回りに周回する周方向、および前記軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされている、請求項1に記載の無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項3】
2分割された前記カムスライダのうち、前記電磁コイルの非通電時に前記一方の挟み込み部材が当接する第1カムスライダに、前記第2係合部が設けられ、
前記カムドライバに、第3係合部が設けられ、
2分割された前記カムスライダのうち、前記電磁コイルの非通電時に前記他方の挟み込み部材が当接する第2カムスライダに、第4係合部が設けられ、
前記第1係合部および前記第2係合部が互いに係合する際に、前記第3係合部および前記第4係合部が互いに係合する、請求項1または2に記載の無励磁作動型ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無励磁作動型ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、回転軸に取付けられるブレーキ部と、ブレーキ部を回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、通電時(作動前)に、一方の挟み込み部材を、他方の挟み込み部材から軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備えた無励磁作動型ブレーキ装置が知られている。
無励磁作動型ブレーキ装置では、非通電時(作動時)に、電磁コイルから一方の挟み込み部材に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材が、付勢部材によって他方の挟み込み部材に向けて移動し、一対の挟み込み部材がブレーキ部を軸方向に挟み込み、回転軸の回転を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-58578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の無励磁作動型ブレーキ装置では、回転軸が回転しているときに、電磁コイルが非通電状態になると、回転軸が急停止し、慣性モーメントが大きい場合には大きな慣性力が発生することで、例えば故障しやすくなる等のおそれが考えられる。
【0005】
本発明は、回転軸の回転時に電磁コイルが非通電状態になっても、大きな慣性力が発生するのを抑制することができる無励磁作動型ブレーキ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る無励磁作動型ブレーキ装置は、回転軸に取付けられるブレーキ部と、前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、前記ブレーキ部は、前記回転軸と一体に回転するカムドライバを備え、前記カムスライダは、前記カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、2分割された前記カムスライダは、弾性部材を前記軸方向に挟み、前記カムドライバ、および前記カムスライダには、第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、前記カムドライバが、前記カムスライダとの間の抑止力に抗して前記カムスライダに対して前記回転軸とともに回転したときに、前記第1係合部および前記第2係合部が互いに係合することで、2分割された前記カムスライダが、前記軸方向に相対的に接近移動する。
【0007】
非通電時に、電磁コイルから一方の挟み込み部材に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材が、付勢部材によって他方の挟み込み部材に向けて移動したときに、一方の挟み込み部材が、2分割されたカムスライダのうち、一方の挟み込み部材と軸方向で対向する第1カムスライダを、もう一方の第2カムスライダ側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダおよび第2カムスライダが、弾性部材を軸方向に挟んでいるので、第2カムスライダも他方の挟み込み部材に押し当てられることで、一対の挟み込み部材がカムスライダを軸方向に挟み込み、回転軸が回転していると、挟み込み部材とカムスライダとの間にブレーキ力が生ずる。カムスライダが、カムドライバに対して回転移動が抑止された状態で外装されていることから、カムドライバを介して回転軸に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸の回転移動が停止する。
ここで、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバが、カムスライダとの間の抑止力に抗して回転軸とともにカムスライダに対して回転する。この際、カムドライバがカムスライダに対して回転するのに伴い、第1係合部および第2係合部が互いに係合することで、第1カムスライダが、弾性部材を圧縮変形させつつ、第2カムスライダに向けて軸方向に接近移動する。これにより、付勢部材の付勢力が低減され、挟み込み部材とカムスライダとの間に生ずるブレーキ力が低減され、カムスライダを挟み込み部材に対して摺動させることが可能になり、慣性モーメントが大きい場合において、回転軸の回転時に電磁コイルが非通電状態になっても、大きな慣性力が生ずるのを抑制することができる。
カムスライダが、カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されているので、回転軸が通常の速度で回転しているときには、前述のブレーキ力が生ずると、このブレーキ力が、カムドライバを介して回転軸に及ぼされて回転軸の回転移動が停止する一方、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバが、カムスライダとの間の抑止力に抗して回転軸とともにカムスライダに対して回転する。
【0008】
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記軸方向から見て前記中心軸線回りに周回する周方向、および前記軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされてもよい。
【0009】
第1係合部および第2係合部が、周方向および軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされているので、カムドライバがカムスライダに対して回転軸とともに回転したときに、互いに係合することで、第1カムスライダを、第2カムスライダに向けて軸方向に接近移動させることが可能な第1係合部および第2係合部を簡易な構成で確実に実現することができる。
【0010】
2分割された前記カムスライダのうち、前記電磁コイルの非通電時に前記一方の挟み込み部材が当接する第1カムスライダに、前記第2係合部が設けられ、前記カムドライバに、第3係合部が設けられ、2分割された前記カムスライダのうち、前記電磁コイルの非通電時に前記他方の挟み込み部材が当接する第2カムスライダに、第4係合部が設けられ、前記第1係合部および前記第2係合部が互いに係合する際に、前記第3係合部および前記第4係合部が互いに係合してもよい。
【0011】
カムドライバ、および第2カムスライダに、第3係合部および第4係合部が各別に設けられているので、前述のように第1係合部および第2係合部が互いに係合したときに、第3係合部および第4係合部も互いに係合することで、カムドライバから第1カムスライダおよび第2カムスライダにそれぞれ及ぼされる周方向の力の向きおよびその大きさが互いに同じになる。したがって、第1カムスライダおよび第2カムスライダの相対的な周方向の位置を維持することが可能になり、第1カムスライダと第2カムスライダとの間の弾性部材に生ずる負荷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、回転軸の回転時に電磁コイルが非通電状態になっても、大きな慣性力が発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置の作動前(通電時)を示す側面図である。
図2図1の軸方向に沿う縦断面図である。
図3】一実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置の作動時(非通電時)を示す側面図である。
図4図3において、ブレーキ力が低減した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、無励磁作動型ブレーキ装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
無励磁作動型ブレーキ装置1は、ブレーキ部11と、一対の挟み込み部材12、13と、付勢部材14と、電磁コイル15と、を備え、例えば、ハウジング16内に収容された状態でモータ等の回転軸10に装着されて用いられる。
以下、回転軸10の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向のうち、ブレーキ部11に対して電磁コイル15が位置している側を一方側といい、これとは反対側を他方側という。軸方向から見て中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸方向から見て中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
ハウジング16は、軸方向の一方側の端部が底壁部により閉塞され、かつ軸方向の他方側の端部が開口した有底筒状に形成されている。ハウジング16は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
ハウジング16の底壁部には、軸方向に貫く穴部35が形成されている。穴部35は、中心軸線Oと同軸に配設されている。穴部35のうち、軸方向の一方側に位置する一方側部分35aの内径は、軸方向の他方側に位置する他方側部分35bの内径より小さくなっている。
ハウジング16の底壁部において、穴部35より径方向の外側に位置する部分に、軸方向の他方側に向けて開口した凹部17が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。凹部17のうち、軸方向の一方側に位置する一方側部分17aの内径は、軸方向の他方側に位置する他方側部分17bの内径より小さくなっている。図示の例では、凹部17は、2つ設けられ、穴部35を径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。なお、凹部17は3つ以上設けてもよい。
凹部17の一方側部分17aには、軸体18が嵌合されて固定されている。軸体18は、ハウジング16の底壁部から軸方向の他方側に突出している。
【0016】
一対の挟み込み部材12、13は、ブレーキ部11の後述するカムスライダ22を軸方向に挟み込み可能となるように、軸体18に取付けられている。一対の挟み込み部材12、13は、軸方向に間隔をあけて設けられている。一対の挟み込み部材12、13は、中心軸線O回りの回転が規制されている。一対の挟み込み部材12、13のうち、軸方向の一方側に位置する一方の挟み込み部材12は、軸体18に軸方向に移動可能に取付けられている。一対の挟み込み部材12、13のうち、軸方向の他方側に位置する他方の挟み込み部材13は、軸体18に軸方向の移動が規制された状態で取付けられている。挟み込み部材12、13は、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。一対の挟み込み部材12、13の各内側に、ブレーキ部11の後述するカムドライバ21の軸方向の両端部が挿入されている。
【0017】
付勢部材14は、凹部17の他方側部分17bに挿入されている。付勢部材14は、軸方向に延びるコイルスプリングとなっている。付勢部材14の内側に、軸体18が挿入されている。付勢部材14は、一方の挟み込み部材12を軸方向の他方側に向けて付勢している。
【0018】
電磁コイル15は、環状に形成され、ハウジング16の穴部35の他方側部分35b内に収容されている。電磁コイル15は、中心軸線Oと同軸に配設されている。電磁コイル15の内側、および穴部35の一方側部分35aに、回転軸10が挿入されている。電磁コイル15は、通電時に、図1および図2に示されるように、一方の挟み込み部材12を、他方の挟み込み部材13から軸方向に離れる向きに吸引する。
【0019】
ブレーキ部11は、回転軸10に取付けられる。ブレーキ部11は、回転軸10と一体に回転するカムドライバ21と、カムドライバ21に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されたカムスライダ22と、を備えている。
【0020】
カムドライバ21は、軸方向に延びる筒状に形成されている。カムドライバ21は、回転軸10に、周方向の移動が規制された状態で、軸方向に移動可能に外嵌されている。
カムスライダ22は、一対の挟み込み部材12、13同士の間に設けられている。カムスライダ22は、電磁コイル15の通電時には、一対の挟み込み部材12、13から軸方向に離れている。カムスライダ22は、電磁コイル15の非通電時に、一対の挟み込み部材12、13に当接して軸方向に挟まれて、カムスライダ22と挟み込み部材12、13との間にブレーキ力を生じさせる。これにより、カムスライダ22が、カムドライバ21に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されていることから、カムドライバ21を介して回転軸10に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する。
【0021】
カムスライダ22は、軸方向に2分割されている。
以下、カムスライダ22のうち、軸方向の一方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に一方の挟み込み部材12に当接する方を第1カムスライダ24といい、カムスライダ22のうち、軸方向の他方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に他方の挟み込み部材13に当接する方を第2カムスライダ25という。
【0022】
第1カムスライダ24および第2カムスライダ25はそれぞれ、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1カムスライダ24および第2カムスライダ25それぞれにおける開口周縁部には、軸方向で互いに対向する向きに突出する第1筒体26および第2筒体27が各別に設けられている。第1筒体26および第2筒体27は、カムドライバ21を径方向の外側から囲っている。第1筒体26および第2筒体27は、軸方向に離れている。
【0023】
第1カムスライダ24および第2カムスライダ25は、弾性部材23を軸方向に挟んでいる。
弾性部材23は、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25それぞれにおいて、第1筒体26および第2筒体27より径方向の外側に位置する部分に当接している。弾性部材23は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。図示の例では、弾性部材23は、2つ設けられ、第1筒体26および第2筒体27を径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。弾性部材23は、軸方向に延びるコイルスプリングとなっている。弾性部材23の内側に、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25に形成された突起24a、25aが挿入されている。
【0024】
ここで、カムドライバ21には、軸方向に間隔をあけて2つのスナップリング19が取付けられており、2つのスナップリング19同士の間にカムスライダ22が設けられている。第1カムスライダ24および第2カムスライダ25は、弾性部材23によって軸方向に互いに離反する向きに付勢され、スナップリング19に各別に軸方向に押し当てられている。これにより、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25は、軸方向に互いに接近する向きの移動が許容され、かつ軸方向に互いに離反する向きの移動が規制された状態で、カムドライバ21に装着されている。
【0025】
カムドライバ21、およびカムスライダ22には、第1係合部31、および第2係合部32が各別に設けられている。第1係合部31、および第2係合部32は、カムドライバ21が、カムスライダ22との間の抑止力に抗してカムスライダ22に対して中心軸線O回りに回転軸10とともに回転したときに、互いに係合することで、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、軸方向に相対的に接近移動する。第1係合部31、および第2係合部32は、前述のように互いに係合することで、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25のうち、少なくとも第1カムスライダ24を、第2カムスライダ25に向けて軸方向に接近移動させる。
第1係合部31および第2係合部32は、周方向および軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされている。
【0026】
図示の例では、カムドライバ21の外周面に、径方向の外側に向けて突出するカム突部30が形成されている。カム突部30は、径方向の外側から見た正面視で、軸方向の向きが互いに逆となる2つの台形が、それぞれの上底を介して軸方向に連ねられた形状を呈する。これらの2つの台形は、軸方向の向きが互いに逆となる他は、互いに同じ大きさで同じ形状に形成されている。
カム突部30のうち、径方向の外側から見た正面視で軸方向の一方側に位置する台形の一組の脚部分が、第1係合部31となっている。一組の第1係合部31は、軸方向の他方側に向かうに従い、周方向に互いに近付く向きに延びている。
【0027】
ここで、第1カムスライダ24の第1筒体26には、径方向に貫き、かつ軸方向の他方側に向けて開口した第1凹欠き部26aが形成されている。第2カムスライダ25の第2筒体27には、径方向に貫き、かつ軸方向の一方側に向けて開口した第2凹欠き部27aが形成されている。第1凹欠き部26a内に、カム突部30における軸方向の一方側の端部が挿入され、第2凹欠き部27aに、カム突部30における軸方向の他方側の端部が挿入されている。
【0028】
第1凹欠き部26aの周方向の両端部には、周方向に互いに接近する向きに張り出した第1張出突起28が各別に形成され、第2凹欠き部27aの周方向の両端部には、周方向に互いに接近する向きに張り出した第2張出突起29が各別に形成されている。
第1張出突起28および第2張出突起29は、径方向の外側から見た正面視で、軸方向の向きが互いに逆となる他は、同じ大きさで同じ形状を呈する。
【0029】
第1張出突起28のうち、軸方向の一方側を向き、かつ第1カムスライダ24と軸方向で対向する面は、もう一方の第1張出突起28から周方向に離れるに従い軸方向の一方側に向けて延びている。この面が、カム突部30の第1係合部31と係合する第2係合部32となっている。第2係合部32の軸方向の他方側の端部は、第1係合部31の軸方向の一方側の端部と周方向に対向している。
【0030】
カムドライバ21、および第2カムスライダ25には、第3係合部33、および第4係合部34が各別に設けられている。
第3係合部33、および第4係合部34は、第1係合部31および第2係合部32が互いに係合するのに同期して、互いに係合することで、カムドライバ21から第1カムスライダ24および第2カムスライダ25にそれぞれ及ぼされる周方向の力の向きおよびその大きさを互いに同じにし、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の相対的な周方向の位置を維持する。
第3係合部33および第4係合部34は、周方向および軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされている。
【0031】
第3係合部33は、カム突部30を構成する前述した2つの台形のうち、軸方向の他方側に位置する台形の一組の脚部分となっている。一組の第3係合部33は、軸方向の一方側に向かうに従い、周方向に互いに近付く向きに延びている。
第4係合部34は、第2張出突起29のうち、軸方向の他方側を向き、かつ第2カムスライダ25と軸方向で対向する面となっている。第4係合部34は、もう一方の第2張出突起29(第4係合部34)から周方向に離れるに従い軸方向の他方側に向けて延びている。第4係合部34の軸方向の一方側の端部は、第3係合部33の軸方向の他方側の端部と周方向に対向している。
【0032】
次に、無励磁作動型ブレーキ装置1の作用について説明する。
【0033】
電磁コイル15が、図1および図2に示される通電状態から非通電状態になると、電磁コイル15から一方の挟み込み部材12に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材12が、付勢部材14によって他方の挟み込み部材13に向けて移動する。これにより、一方の挟み込み部材12が、第1カムスライダ24に当接して第1カムスライダ24を第2カムスライダ25側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、弾性部材23を軸方向に挟んでいるので、図3に示されるように、第2カムスライダ25も他方の挟み込み部材13に押し当てられることで、一対の挟み込み部材12、13がカムスライダ22を軸方向に挟み込み、回転軸10が回転していると、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間にブレーキ力が生ずる。これにより、カムスライダ22が、カムドライバ21に対して回転移動が抑止された状態で外装されていることから、カムドライバ21を介して回転軸10に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する。
【0034】
ここで、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバ21が、カムスライダ22との間の抑止力に抗して回転軸10とともにカムスライダ22に対して回転する。
【0035】
したがって、カムドライバ21が、カムスライダ22に対して中心軸線O回りに回転するのに伴い、図4に示されるように、第1係合部31および第2係合部32が互いに係合することで、第1カムスライダ24が、弾性部材23を圧縮変形させつつ、第2カムスライダ25に向けて軸方向に接近移動する。これにより、付勢部材14の付勢力が低減され、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間に生ずるブレーキ力が低減され、カムスライダ22が挟み込み部材12、13に対して摺動する。
【0036】
また、カムドライバ21、およびカムスライダ22には、第3係合部33および第4係合部34が各別に設けられていることから、第1係合部31および第2係合部32が互いに係合するのに同期して、第3係合部33および第4係合部34が互いに係合することで、カムドライバ21から第1カムスライダ24および第2カムスライダ25にそれぞれ及ぼされる周方向の力の向きおよびその大きさが互いに同じになる。したがって、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の周方向の相対位置が維持される。
この際、カムドライバ21が、回転軸10、挟み込み部材12、13、およびカムスライダ22に対して、軸方向の他方側に向けて移動する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態による無励磁作動型ブレーキ装置1によれば、慣性モーメントが大きい場合には、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間にブレーキ力が生じていても、カムドライバ21が、カムスライダ22との間の抑止力に抗してカムスライダ22に対して回転軸10とともに回転する。この際、カムドライバ21がカムスライダ22に対して回転するのに伴い、第1係合部31および第2係合部32が互いに係合することで、第1カムスライダ24が、弾性部材23を圧縮変形させつつ、第2カムスライダ25に向けて軸方向に接近移動する。
これにより、付勢部材14の付勢力が低減され、前述のブレーキ力が低減され、カムスライダ22を挟み込み部材12、13に対して摺動させることが可能になり、慣性モーメントが大きい場合において、回転軸10の回転時に電磁コイル15が非通電状態になっても、大きな慣性力が生ずるのを抑制することができる。
【0038】
カムスライダ22が、カムドライバ21に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されているので、回転軸10が通常の速度で回転しているときには、前述のブレーキ力が生ずると、このブレーキ力が、カムドライバ21を介して回転軸10に及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する一方、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバ21が、カムスライダ22との間の抑止力に抗して回転軸10とともにカムスライダ22に対して回転する。
【0039】
第1係合部31および第2係合部32が、周方向および軸方向の双方に交差する方向に延び、かつこの方向に摺接する傾斜面とされているので、カムドライバ21がカムスライダ22に対して中心軸線O回りに回転軸10とともに回転したときに、互いに係合することで、第1カムスライダ24を、第2カムスライダ25に向けて軸方向に接近移動させることが可能な第1係合部31および第2係合部32を簡易な構成で確実に実現することができる。
【0040】
カムドライバ21、および第2カムスライダ25に、第3係合部33および第4係合部34が各別に設けられているので、前述のように第1係合部31および第2係合部32が互いに係合したときに、第3係合部33および第4係合部34も互いに係合することで、カムドライバ21から第1カムスライダ24および第2カムスライダ25にそれぞれ及ぼされる周方向の力の向きおよびその大きさが互いに同じになる。したがって、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の相対的な周方向の位置を維持することが可能になり、第1カムスライダ24と第2カムスライダ25との間の弾性部材23に生ずる負荷を抑えることができる。
【0041】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば、第3係合部33および第4係合部34は設けなくてもよい。
カムドライバ21が、カムスライダ22との間の抑止力に抗してカムスライダ22に対して中心軸線O回りに回転軸10とともに回転し、第1係合部31、および第2係合部32が互いに係合したときに、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の双方を、互いに軸方向に接近移動させてもよい。
第1係合部31および第2係合部32は、常に互いに当接していてもよく、第3係合部33および第4係合部34は、常に互いに当接していてもよい。
【0043】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 無励磁作動型ブレーキ装置
10 回転軸
11 ブレーキ部
12 一方の挟み込み部材
13 他方の挟み込み部材
14 付勢部材
15 電磁コイル
21 カムドライバ
22 カムスライダ
23 弾性部材
24 第1カムスライダ
25 第2カムスライダ
31 第1係合部
32 第2係合部
33 第3係合部
34 第4係合部
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4