IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本発條株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図1
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図2
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図3
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図4
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図5
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図6
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図7
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図8
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図9
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図10
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図11
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図12
  • 特開-無励磁作動型ブレーキ装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163634
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】無励磁作動型ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 59/00 20060101AFI20241115BHJP
   F16D 55/00 20060101ALI20241115BHJP
   F16D 65/22 20060101ALI20241115BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 121/14 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 123/00 20120101ALN20241115BHJP
   F16D 125/58 20120101ALN20241115BHJP
【FI】
F16D59/00 A
F16D55/00 B
F16D65/22
F16D121:22
F16D121:14
F16D123:00
F16D125:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079411
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】飯野 信次
(72)【発明者】
【氏名】佐野 孝充
(72)【発明者】
【氏名】上津原 才司
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA44
3J058AA48
3J058AA57
3J058AA73
3J058AA78
3J058AA79
3J058AA87
3J058AA88
3J058BA23
3J058CB11
3J058CC06
3J058CC13
3J058CC19
3J058CC56
3J058CC72
3J058CC77
(57)【要約】
【課題】高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させる。
【解決手段】一対の挟み込み部材12、13のうちの他方の挟み込み部材13は、軸方向の移動が規制された状態で設けられ、カムスライダ22は、回転軸10に対して、回転移動が規制された状態で軸方向に移動可能に外装されるとともに、軸方向に2分割され、ブレーキ部11は、2分割されたカムスライダにより軸方向に挟まれたカムドライバ21を備え、カムドライバは、回転軸の回転速度の増加に伴い、カムスライダに対して移動可能に設けられ、カムドライバ、およびカムスライダには、互いに係合する第1係合部31、および第2係合部32が各別に設けられ、第1係合部および第2係合部は、カムドライバがカムスライダに対して移動したときに、2分割されたカムスライダを軸方向に相対的に離反させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取付けられるブレーキ部と、
前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、
前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、
通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、
前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、
前記カムスライダは、前記回転軸に対して、回転移動が規制された状態で前記軸方向に移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、
前記ブレーキ部は、2分割された前記カムスライダにより前記軸方向に挟まれたカムドライバを備え、
前記カムドライバは、前記回転軸の回転速度の増加に伴い、前記カムスライダに対して移動可能に設けられ、
前記カムドライバ、および前記カムスライダには、互いに係合する第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記カムドライバが前記カムスライダに対して移動したときに、2分割された前記カムスライダを前記軸方向に相対的に離反させる、無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項2】
前記カムドライバは、2分割された前記カムスライダそれぞれにおいて、前記軸方向で互いに対向する対向面上を、前記軸方向から見て前記中心軸線回りに周回する周方向の移動が規制された状態で、前記軸方向から見て前記中心軸線に交差する径方向に転がって移動する転動体とされている、請求項1に記載の無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項3】
2分割された前記カムスライダそれぞれの前記対向面には、前記カムドライバが前記軸方向に挟まれて転動する転動溝が形成され、
前記カムドライバの外周面が、前記第1係合部とされ、前記転動溝の内面が、前記第2係合部とされている、請求項2に記載の無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項4】
前記回転軸に前記軸方向に間隔をあけて設けられた第1規制部材および第2規制部材を備え、
前記電磁コイルの通電時において、前記回転軸の回転速度の増加に伴い、2分割された前記カムスライダが、互いに前記軸方向に離反したときに、前記第1規制部材および前記第2規制部材に各別に当接し、
前記電磁コイルの非通電時に、前記付勢部材が、前記一方の挟み込み部材を前記他方の挟み込み部材に向けて移動させ、2分割された前記カムスライダのうちの第1カムスライダ、および前記カムドライバを介して、2分割された前記カムスライダのうちの第2カムスライダを前記軸方向に押圧したときに、前記第2カムスライダが前記第2規制部材を弾性変形させて前記他方の挟み込み部材に当接する、請求項1から3のいずれか1項に記載の無励磁作動型ブレーキ装置。
【請求項5】
回転軸に取付けられるブレーキ部と、
前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、
前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、
通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、
前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、
前記ブレーキ部は、前記回転軸と一体に回転するカムドライバを備え、
前記カムスライダは、前記カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、
前記カムドライバは、2分割された前記カムスライダにより前記軸方向に挟まれたカム突部を備え、
前記カムドライバ、および前記カムスライダには、互いに係合する第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、
前記第1係合部および前記第2係合部は、前記カムドライバが、前記カムスライダとの間の抑止力に抗して前記カムスライダに対して前記回転軸とともに回転したときに、2分割された前記カムスライダを前記軸方向に相対的に離反させる、無励磁作動型ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無励磁作動型ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、回転軸に取付けられるブレーキ部と、ブレーキ部を回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、通電時(作動前)に、一方の挟み込み部材を、他方の挟み込み部材から軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備えた無励磁作動型ブレーキ装置が知られている。
無励磁作動型ブレーキ装置では、非通電時(作動時)に、電磁コイルから一方の挟み込み部材に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材が、付勢部材によって他方の挟み込み部材に向けて移動し、一対の挟み込み部材がブレーキ部を軸方向に挟み込み、回転軸の回転を規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-58578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の無励磁作動型ブレーキ装置では、高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる無励磁作動型ブレーキ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る無励磁作動型ブレーキ装置は、回転軸に取付けられるブレーキ部と、前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、前記カムスライダは、前記回転軸に対して、回転移動が規制された状態で前記軸方向に移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、前記ブレーキ部は、2分割された前記カムスライダにより前記軸方向に挟まれたカムドライバを備え、前記カムドライバは、前記回転軸の回転速度の増加に伴い、前記カムスライダに対して移動可能に設けられ、前記カムドライバ、および前記カムスライダには、互いに係合する第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記カムドライバが前記カムスライダに対して移動したときに、2分割された前記カムスライダを前記軸方向に相対的に離反させる。
【0007】
非通電時に、電磁コイルから一方の挟み込み部材に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材が、付勢部材によって他方の挟み込み部材に向けて移動したときに、一方の挟み込み部材が、2分割されたカムスライダのうち、一方の挟み込み部材と軸方向で対向する第1カムスライダを、もう一方の第2カムスライダ側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダおよび第2カムスライダが、カムドライバを軸方向に挟んでいるので、第2カムスライダも他方の挟み込み部材に押し当てられることで、一対の挟み込み部材がカムスライダを軸方向に挟み込み、回転軸が回転していると、挟み込み部材とカムスライダとの間にブレーキ力が生ずる。カムスライダは、回転軸に対して、回転移動が規制されているので、カムスライダを介して回転軸に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸の回転移動が停止する。
ここで、回転軸が高速で回転している場合には、カムドライバが、カムスライダに対して移動することで、第1係合部および第2係合部が互いに係合し、第1カムスライダおよび第2カムスライダが軸方向に相対的に離反する。この状態で、電磁コイルが非通電状態になり、一対の挟み込み部材がカムスライダを軸方向に挟み込むと、第1カムスライダおよび第2カムスライダが軸方向に相対的に離反していない場合と比べて、付勢部材の軸方向の伸長が短く制限される。これにより、回転軸が低速で回転する等して、第1カムスライダおよび第2カムスライダの軸方向の離反距離が短い場合と比べて、付勢部材の付勢力が増大して、挟み込み部材とカムスライダとの間に生ずるブレーキ力が増大することで、高速で回転している回転軸の回転速度が速やかに低下する。そして、回転軸の回転速度の低下に伴い、付勢部材が、カムドライバを、回転軸が高速で回転する前に位置していた位置に向けて復元移動させ、かつ第1カムスライダを第2カムスライダに向けて接近移動させつつ、軸方向に伸長変形することで、挟み込み部材とカムスライダとの間に生ずるブレーキ力が徐々に低下する。
以上より、高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
【0008】
前記カムドライバは、2分割された前記カムスライダそれぞれにおいて、前記軸方向で互いに対向する対向面上を、前記軸方向から見て前記中心軸線回りに周回する周方向の移動が規制された状態で、前記軸方向から見て前記中心軸線に交差する径方向に転がって移動する転動体とされてもよい。
【0009】
カムドライバが、2分割されたカムスライダそれぞれの対向面上を、周方向の移動が規制された状態で、径方向に転がって移動する転動体とされているので、回転軸が高速で回転しているときには、遠心力によって、カムドライバが対向面上を径方向の外側に向けて転動し、その後、電磁コイルが非通電状態となって、回転軸の回転速度が低下するのに伴い、付勢部材が、2分割されたカムスライダのうち、一方の挟み込み部材と軸方向で対向する第1カムスライダを、もう一方の第2カムスライダに向けて接近移動させつつ、軸方向に伸長変形するときに、カムドライバが対向面上を径方向の内側に向けて転動することとなる。
したがって、回転軸の回転速度の変動に応じて、カムドライバをカムスライダに対して応答性よく径方向に移動させることができる。
【0010】
2分割された前記カムスライダそれぞれの前記対向面には、前記カムドライバが前記軸方向に挟まれて転動する転動溝が形成され、前記カムドライバの外周面が、前記第1係合部とされ、前記転動溝の内面が、前記第2係合部とされてもよい。
【0011】
回転軸の回転速度の増加に伴い、遠心力によって、カムドライバを転動溝に沿って径方向の外側に向けて移動させた後、電磁コイルが非通電状態となって、回転軸の回転速度が低下するのに伴い、付勢部材が軸方向に伸長変形するときに、カムドライバを転動溝に沿って径方向の外側から内側に向けて移動させつつ、2分割されたカムスライダのうち、一方の挟み込み部材と軸方向で対向する第1カムスライダを、もう一方の第2カムスライダに向けて確実に接近移動させることができる。
【0012】
前記回転軸に前記軸方向に間隔をあけて設けられた第1規制部材および第2規制部材を備え、前記電磁コイルの通電時において、前記回転軸の回転速度の増加に伴い、2分割された前記カムスライダが、互いに前記軸方向に離反したときに、前記第1規制部材および前記第2規制部材に各別に当接し、前記電磁コイルの非通電時に、前記付勢部材が、前記一方の挟み込み部材を前記他方の挟み込み部材に向けて移動させ、2分割された前記カムスライダのうちの第1カムスライダ、および前記カムドライバを介して、2分割された前記カムスライダのうちの第2カムスライダを前記軸方向に押圧したときに、前記第2カムスライダが前記第2規制部材を弾性変形させて前記他方の挟み込み部材に当接してもよい。
【0013】
電磁コイルの通電時において、回転軸の回転速度の増加に伴い、第1カムスライダおよび第2カムスライダが、互いに軸方向に離反したときに、第1規制部材および第2規制部材に各別に当接するので、このときに、第1カムスライダおよび第2カムスライダが、一対の挟み込み部材に当接するのを防ぐことが可能になり、回転軸を円滑に回転させることができる。
電磁コイルの非通電時に、付勢部材が、一方の挟み込み部材を他方の挟み込み部材に向けて移動させ、第1カムスライダおよびカムドライバを介して第2カムスライダを軸方向に押圧したときに、第2カムスライダが第2規制部材を弾性変形させて他方の挟み込み部材に当接するので、一対の挟み込み部材によりカムスライダを軸方向に挟み込ませることが可能になり、挟み込み部材とカムスライダとの間に確実にブレーキ力を生じさせることができる。
【0014】
本発明の一態様に係る無励磁作動型ブレーキ装置は、回転軸に取付けられるブレーキ部と、前記ブレーキ部のカムスライダを前記回転軸の中心軸線に沿う軸方向に挟み込み可能な一対の挟み込み部材と、前記一対の挟み込み部材のうち、いずれか一方の挟み込み部材をいずれか他方の挟み込み部材に向けて付勢する付勢部材と、通電時に、前記一方の挟み込み部材を、前記他方の挟み込み部材から前記軸方向に離れる向きに吸引する電磁コイルと、を備え、前記他方の挟み込み部材は、前記軸方向の移動が規制された状態で設けられ、前記ブレーキ部は、前記回転軸と一体に回転するカムドライバを備え、前記カムスライダは、前記カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されるとともに、前記軸方向に2分割され、前記カムドライバは、2分割された前記カムスライダにより前記軸方向に挟まれたカム突部を備え、前記カムドライバ、および前記カムスライダには、互いに係合する第1係合部、および第2係合部が各別に設けられ、前記第1係合部および前記第2係合部は、前記カムドライバが、前記カムスライダとの間の抑止力に抗して前記カムスライダに対して前記回転軸とともに回転したときに、2分割された前記カムスライダを前記軸方向に相対的に離反させる。
【0015】
非通電時に、電磁コイルから一方の挟み込み部材に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材が、付勢部材によって他方の挟み込み部材に向けて移動したときに、一方の挟み込み部材が、2分割されたカムスライダのうち、一方の挟み込み部材と軸方向で対向する第1カムスライダを、もう一方の第2カムスライダ側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダおよび第2カムスライダが、カムドライバのカム突部を軸方向に挟んでいるので、第2カムスライダも他方の挟み込み部材に押し当てられることで、一対の挟み込み部材がカムスライダを軸方向に挟み込み、回転軸が回転していると、挟み込み部材とカムスライダとの間にブレーキ力が生ずる。カムスライダが、カムドライバに対して回転移動が抑止された状態で外装されていることから、カムドライバを介して回転軸に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸の回転移動が停止する。
ここで、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバが、カムスライダとの間の抑止力に抗して回転軸とともにカムスライダに対して回転する。この際、軸方向の移動が規制されている他方の挟み込み部材に、第2カムスライダが当接していることから、カムドライバがカムスライダに対して回転するのに伴い、第1係合部および第2係合部が互いに係合することで、第1カムスライダが、一方の挟み込み部材を介して付勢部材を軸方向に圧縮変形させつつ、第2カムスライダから軸方向に離反する向きに移動する。これにより、付勢部材の付勢力が増大し、挟み込み部材とカムスライダとの間に生ずるブレーキ力が増大することで、回転軸の回転速度が速やかに低下する。
以上より、高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
カムスライダが、カムドライバに対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されているので、慣性モーメントが小さいときには、前述のブレーキ力が生ずると、このブレーキ力が、カムドライバを介して回転軸に及ぼされて回転軸の回転移動が停止する一方、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバが、カムスライダとの間の抑止力に抗して回転軸とともにカムスライダに対して回転する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、高速で回転している回転軸を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置であって、電磁コイルの通電状態を示す縦断面図である。
図2図1において、回転軸が高速で回転している状態を示す図である。
図3】第1実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置の回転軸が高速で回転しているときに、電磁コイルが非通電状態となったときを示す図である。
図4図3において、回転軸が低速で回転、若しくは停止している状態を示す図である。
図5】カムスライダを対向面側から見た平面図である。
図6】第2実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置であって、電磁コイルの通電時に、回転軸が高速で回転している状態を示す模式図である。
図7】第2実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置の回転軸が高速で回転しているときに、電磁コイルが非通電状態となったときを示す模式図である。
図8図7において、回転軸が低速で回転、若しくは停止している状態を示す模式図である。
図9】第3実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置であって、電磁コイルの通電状態を示す側面図である。
図10図9の軸方向に沿う縦断面図である。
図11図10に示す部分から中心軸線を中心に90°離れた部分の軸方向に沿う縦断面図である。
図12】第3実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置であって、電磁コイルの非通電状態を示す側面図である。
図13図12において、ブレーキ力が増大した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、無励磁作動型ブレーキ装置の第1実施形態を、図1図5を参照しながら説明する。
無励磁作動型ブレーキ装置1は、ブレーキ部11と、一対の挟み込み部材12、13と、付勢部材14と、電磁コイル15と、を備え、例えば、ハウジング16内に収容された状態でモータM等の回転軸10に装着されて用いられる。
以下、回転軸10の中心軸線Oに沿う方向を軸方向といい、軸方向のうち、ブレーキ部11に対して電磁コイル15が位置している側を一方側といい、これとは反対側を他方側という。軸方向から見て中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、軸方向から見て中心軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0019】
ハウジング16は、軸方向の一方側の端部が底壁部により閉塞され、かつ軸方向の他方側の端部が開口した有底筒状に形成されている。ハウジング16は、中心軸線Oと同軸に配設されている。
ハウジング16の底壁部には、軸方向に貫く第1穴部35が形成されている。第1穴部35は、中心軸線Oと同軸に配設されている。第1穴部35のうち、軸方向の一方側に位置する一方側部分35aの内径は、軸方向の他方側に位置する他方側部分35bの内径より小さくなっている。
ハウジング16の底壁部において、第1穴部35より径方向の外側に位置する部分に、軸方向の他方側に向けて開口した第2穴部17が、周方向に間隔をあけて複数形成されている。第2穴部17のうち、軸方向の一方側に位置する一方側部分17aの内径は、軸方向の他方側に位置する他方側部分17bの内径より小さくなっている。図示の例では、第2穴部17は、2つ設けられ、第1穴部35を径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。なお、第2穴部17は3つ以上設けてもよい。
第2穴部17の一方側部分17aには、軸体18が嵌合されて固定されている。軸体18は、ハウジング16の底壁部から軸方向の他方側に突出している。
【0020】
一対の挟み込み部材12、13は、ブレーキ部11の後述するカムスライダ22を軸方向に挟み込み可能となるように、軸体18に取付けられている。一対の挟み込み部材12、13は、軸方向に間隔をあけて設けられている。一対の挟み込み部材12、13は、中心軸線O回りの回転が規制されている。一対の挟み込み部材12、13のうち、軸方向の一方側に位置する一方の挟み込み部材12は、軸体18に軸方向に移動可能に取付けられている。一対の挟み込み部材12、13のうち、軸方向の他方側に位置する他方の挟み込み部材13は、軸体18に軸方向の移動が規制された状態で取付けられている。挟み込み部材12、13は、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0021】
ここで、回転軸10には、第1規制部材33および第2規制部材34が軸方向に間隔をあけて設けられている。第1規制部材33および第2規制部材34は、環状に形成され、回転軸10に外装されて固定されている。第1規制部材33の外径は、一方の挟み込み部材12の内径より小さく、第2規制部材34の外径は、他方の挟み込み部材13の内径より小さくなっている。第1規制部材33は、一方の挟み込み部材12の内側に挿入され、第2規制部材34は、他方の挟み込み部材13の内側に挿入されている。第2規制部材34は、弾性変形可能に形成されている。第1規制部材33における軸方向の他方側を向く面は、一方の挟み込み部材12における軸方向の他方側を向く面より軸方向の他方側に位置している。第2規制部材34における軸方向の一方側を向く面は、他方の挟み込み部材13における軸方向の一方側を向く面より軸方向の一方側に位置している。
【0022】
付勢部材14は、第2穴部17の他方側部分17bに挿入されている。付勢部材14は、軸方向に延びるコイルスプリングとなっている。付勢部材14の内側に、軸体18が挿入されている。付勢部材14は、一方の挟み込み部材12を軸方向の他方側に向けて付勢している。
【0023】
電磁コイル15は、環状に形成され、ハウジング16の第1穴部35の他方側部分35b内に収容されている。電磁コイル15は、中心軸線Oと同軸に配設されている。電磁コイル15の内側に、回転軸10が挿入されている。電磁コイル15は、通電時に、図1および図2に示されるように、一方の挟み込み部材12を、他方の挟み込み部材13から軸方向に離れる向きに吸引する。
第1穴部35の一方側部分35aには、ボールベアリング36が嵌合されており、ボールベアリング36の内輪内に回転軸10が嵌合されている。
【0024】
ブレーキ部11は、回転軸10に取付けられる。ブレーキ部11は、カムスライダ22と、カムドライバ21と、を備えている。
【0025】
カムスライダ22は、回転軸10に設けられている。カムスライダ22は、一対の挟み込み部材12、13同士の間に設けられている。カムスライダ22は、電磁コイル15の通電時には、一対の挟み込み部材12、13から軸方向に離れている。カムスライダ22は、電磁コイル15の非通電時に、付勢部材14の付勢力により一対の挟み込み部材12、13に当接して軸方向に挟まれて、カムスライダ22と挟み込み部材12、13との間にブレーキ力を生じさせる。
図示の例では、カムスライダ22は、回転軸10に対して、回転移動が規制された状態で軸方向に移動可能に外装されている。カムスライダ22は環状に形成されており、カムスライダ22の内周面、および回転軸10の外周面には、互いが周方向に噛み合うスプライン部37が設けられている。
【0026】
カムスライダ22は、軸方向に2分割されている。
以下、カムスライダ22のうち、軸方向の一方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に一方の挟み込み部材12に当接する方を第1カムスライダ24といい、カムスライダ22のうち、軸方向の他方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に他方の挟み込み部材13に当接する方を第2カムスライダ25という。
第1カムスライダ24および第2カムスライダ25はそれぞれ、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0027】
カムドライバ21は、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25により軸方向に挟まれている。カムドライバ21は、回転軸10の回転速度の増加に伴い、カムスライダ22に対して移動可能に設けられている。
カムドライバ21は、第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれにおいて、軸方向で互いに対向する対向面上を、周方向の移動が規制された状態で径方向に転がって移動する転動体とされている。図示の例では、カムドライバ21は、回転軸10の回転速度の増加に伴い、遠心力によって径方向の外側に向けて移動可能に設けられている。カムドライバ21は球状に形成されている。カムドライバ21は、周方向に等間隔をあけて複数設けられている。なお、カムドライバ21は、円柱状に形成されてもよい。
【0028】
カムドライバ21、およびカムスライダ22には、互いに係合する第1係合部31、および第2係合部32が各別に設けられている。第1係合部31および第2係合部32は、カムドライバ21がカムスライダ22に対して移動したときに、2分割されたカムスライダ22を軸方向に相対的に離反させる。
【0029】
図5に示されるように、第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれの前記対向面には、カムドライバ21が軸方向に挟まれて転動する転動溝38が形成されている。転動溝38は、径方向に延びている。転動溝38は、周方向に等間隔をあけて複数設けられている。第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれの転動溝38の深さは、径方向の外側に向かうに従い浅くなっている。第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれの転動溝38の溝底面は、径方向の外側に向かうに従い軸方向に互いに近付く向きに延びている。
なお、第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれの前記対向面の全体が、径方向の外側に向かうに従い軸方向に互いに近付く向きに延び、かつ転動溝38の溝深さを径方向の全長にわたって同じにしてもよい。
カムドライバ21が、転動溝38の溝底面を径方向の外側に向けて転動することで、第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25が、軸方向に相対的に離反する。すなわち、カムドライバ21の外周面が第1係合部31とされ、転動溝38の溝底面が第2係合部32とされている。なお、カムドライバ21は、転動溝38の内面のうち、溝底面から離れた状態で側面を転動してもよい。
【0030】
次に、無励磁作動型ブレーキ装置1の作用について説明する。
【0031】
図1に示されるように、電磁コイル15の通電時に、回転軸10の回転速度が低く、カムドライバ21が、転動溝38の径方向の内端部に位置している状態から、回転軸10の回転速度が増加すると、カムドライバ21の外周面(第1係合部31)が、転動溝38の溝底面(第2係合部32)に当接した状態で、遠心力によって、カムドライバ21が転動溝38を径方向の外側に向けて転動し、カムドライバ21が径方向の外側に向けて移動する。これにより、図2に示されるように、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、軸方向に相対的に離反する。
この際、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、第1規制部材33および第2規制部材34に各別に当接することで、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、一対の挟み込み部材12、13に当接することはない。
【0032】
電磁コイル15が、図1および図2に示される通電状態から非通電状態になると、電磁コイル15から一方の挟み込み部材12に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材12が、付勢部材14によって他方の挟み込み部材13に向けて移動し、一方の挟み込み部材12が、第1カムスライダ24を第2カムスライダ25側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、カムドライバ21を軸方向に挟んでいるので、図3および図4に示されるように、第2カムスライダ25が、第2規制部材34を弾性変形させながら他方の挟み込み部材13に押し当てられる。これにより、一対の挟み込み部材12、13がカムスライダ22を軸方向に挟み込み、回転軸10が回転していると、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間にブレーキ力が生ずる。カムスライダ22は、回転軸10に対して、回転移動が規制されているので、カムスライダ22を介して回転軸10に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する。
【0033】
ここで、図2に示されるように、回転軸10が高速で回転し、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が軸方向に互いに離反しているときに、電磁コイル15が非通電状態になり、図3に示されるように、一対の挟み込み部材12、13がカムスライダ22を軸方向に挟み込むと、図4に示されるような、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が軸方向に相対的に離反していない場合と比べて、付勢部材14の軸方向の伸長が短く制限される。
これにより、回転軸10が低速で回転する等して、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の軸方向の離反距離が短い場合と比べて、付勢部材14の付勢力が増大して、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間に生ずるブレーキ力が増大することで、回転軸10の回転速度が速やかに低下する。そして、回転軸10の回転速度の低下に伴い、カムドライバ21に生ずる遠心力が低下し、図4に示されるように、付勢部材14が、カムドライバ21を径方向の内側に向けて復元移動させ、かつ第1カムスライダ24を第2カムスライダ25に向けて接近移動させつつ、軸方向に伸長変形することで、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間に生ずるブレーキ力が徐々に低下する。
【0034】
以上説明したように、本実施形態による無励磁作動型ブレーキ装置1によれば、高速で回転している回転軸10を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
【0035】
カムドライバ21が、第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれの対向面上を、周方向の移動が規制された状態で、径方向に転がって移動する転動体とされているので、回転軸10が高速で回転しているときには、図2に示されるように、遠心力によって、カムドライバ21が対向面上を径方向の外側に向けて転動し、その後、図3に示されるように、電磁コイル15が非通電状態となって、回転軸10の回転速度が低下するのに伴い、図4に示されるように、付勢部材14が、第1カムスライダ24を第2カムスライダ25に向けて接近移動させつつ、軸方向に伸長変形するときに、カムドライバ21が対向面上を径方向の内側に向けて転動することとなる。
したがって、回転軸10の回転速度の変動に応じて、カムドライバ21をカムスライダ22に対して応答性よく径方向に移動させることができる。
【0036】
第1カムスライダ24、および第2カムスライダ25それぞれにおいて、カムドライバ21が軸方向に挟まれて転動する転動溝38の溝底面(第2係合部32)が、径方向の外側に向かうに従い軸方向に互いに近付く向きに延びているので、回転軸10の回転速度の増加に伴い、遠心力によって、カムドライバ21が径方向の外側に向けて移動したときに、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25を軸方向に相対的に確実に離反させることができるとともに、その後、電磁コイル15が非通電状態となって、回転軸10の回転速度が低下するのに伴い、付勢部材14が軸方向に伸長変形するときに、カムドライバ21を径方向の外側から内側に向けて移動させつつ、第1カムスライダ24を第2カムスライダ25に向けて確実に接近移動させることができる。
【0037】
図2に示されるように、電磁コイル15の通電時において、回転軸10の回転速度の増加に伴い、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、互いに軸方向に離反したときに、第1規制部材33および第2規制部材34に各別に当接するので、このときに、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、一対の挟み込み部材12、13に当接するのを防ぐことが可能になり、回転軸10を円滑に回転させることができる。
【0038】
図3および図4に示されるように、電磁コイル15の非通電時に、付勢部材14が、一方の挟み込み部材12を他方の挟み込み部材13に向けて移動させ、第1カムスライダ24およびカムドライバ21を介して第2カムスライダ25を軸方向に押圧したときに、第2カムスライダ25が第2規制部材34を弾性変形させて他方の挟み込み部材13に当接するので、一対の挟み込み部材12、13によりカムスライダ22を軸方向に挟み込ませることが可能になり、挟み込み部材12、13とカムスライダ22との間に確実にブレーキ力を生じさせることができる。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態に係る無励磁作動型ブレーキ装置2を、図6図8を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0040】
本実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置2では、第1規制部材33および第2規制部材34が設けられておらず、第2カムスライダ25は、第1カムスライダ24を介して回転軸10に外装され、第1カムスライダ24の内周縁部に、軸方向の他方側に向けて延びる第1取付筒51が設けられ、第2カムスライダ25の内周縁部に、軸方向の一方側に向けて延びる第2取付筒52が設けられている。
第1取付筒51は、回転軸10に対して、回転移動が規制された状態で軸方向に移動可能に外装されている。第1取付筒51の内周面、および回転軸10の外周面には、互いが周方向に噛み合うスプライン部が設けられている。
第2取付筒52は、第1取付筒51に対して、回転移動が規制された状態で軸方向に移動可能に外装されている。第2取付筒52の内周面、および第1取付筒51の外周面には、互いが周方向に噛み合うスプライン部が設けられている。
【0041】
第1取付筒51の外周面において、第2カムスライダ25より軸方向の他方側に位置する部分に、第3規制部材54が設けられている。第3規制部材54は、環状に形成され、第1取付筒51に外装されて固定されている。
回転軸10の回転速度の増加に伴い、遠心力によって、図6および図7に示されるように、カムドライバ21が転動溝38を径方向の外側に向けて移動し、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25が、軸方向に互いに離反したときに、第3規制部材54が、第2カムスライダ25に当接することで、第1カムスライダ24が、第2カムスライダ25に対してこれ以上軸方向の一方側に移動することが規制される。
【0042】
この際、電磁コイル15の通電時には、図6に示されるように、第1カムスライダ24は、一方の挟み込み部材12から軸方向の他方側に離れている。なお、この際、第1カムスライダ24は、一方の挟み込み部材12に当接していてもよい。
電磁コイル15の通電時に、回転軸10が高速で回転している場合に、第2カムスライダ25が、他方の挟み込み部材13に摺接しても、第2カムスライダ25から他方の挟み込み部材13に軸方向の押圧力が生じにくいため、第2カムスライダ25と他方の挟み込み部材13との間にブレーキ力が生じにくい。
なお、電磁コイル15の通電時に、第2カムスライダ25が、他方の挟み込み部材13から軸方向の一方側に離れ、第1カムスライダ24が、一方の挟み込み部材12に当接していてもよい。
【0043】
回転軸10の外周面において、第1取付筒51より軸方向の他方側に位置する部分に、第4規制部材55が設けられている。第4規制部材55は、環状に形成され、回転軸10に外装されて固定されている。
図7および図8に示されるような、電磁コイル15の非通電時において、図8に示されるように、回転軸10が低速で回転、若しくは停止することで、付勢部材14が軸方向に伸長変形し、カムドライバ21が転動溝38における径方向の内端部に位置し、第1カムスライダ24が最も軸方向の他方側に位置した状態で、第1取付筒51が第4規制部材55に当接する。
【0044】
なお、第4規制部材55は設けなくてもよい。
また、第2取付筒52の内周面、および第1取付筒51の外周面に、前述のスプライン部を設けず、カムドライバ21を、転動溝38の内面のうちの周方向を向く両側面に当接させることで、第1カムスライダ24および第2カムスライダ25の周方向の相対移動を規制してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による無励磁作動型ブレーキ装置2によれば、第1実施形態と同様に、高速で回転している回転軸10を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
【0046】
次に、本発明の第3実施形態に係る無励磁作動型ブレーキ装置3を、図9図13を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0047】
本実施形態の無励磁作動型ブレーキ装置3では、第1規制部材33および第2規制部材34が設けられておらず、ブレーキ部11が、回転軸10と一体に回転するカムドライバ41と、カムドライバ41に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されたカムスライダ42と、を備えている。
【0048】
カムドライバ41は、軸方向に延びる筒状に形成されている。カムドライバ41は、回転軸10に、周方向の移動が規制された状態で、軸方向に移動可能に外嵌されている。カムドライバ41の軸方向の両端部は、一対の挟み込み部材12、13の各内側に挿入されている。
カムスライダ42は、電磁コイル15の非通電時に、一対の挟み込み部材12、13に当接して軸方向に挟まれて、カムスライダ42と挟み込み部材12、13との間にブレーキ力を生じさせる。カムスライダ42が、カムドライバ41に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されていることから、カムドライバ41を介して回転軸10に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する。
【0049】
カムスライダ42は、軸方向に2分割されている。
以下、カムスライダ42のうち、軸方向の一方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に一方の挟み込み部材12に当接する方を第1カムスライダ44といい、カムスライダ42のうち、軸方向の他方側に位置し、電磁コイル15の非通電時に他方の挟み込み部材13に当接する方を第2カムスライダ45という。
第1カムスライダ44および第2カムスライダ45はそれぞれ、環状の板状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0050】
ここで、カムドライバ41には、図10および図11に示されるように、軸方向に間隔をあけて2つのスナップリング19が取付けられており、2つのスナップリング19同士の間にカムスライダ42が設けられている。スナップリング19は、弾性変形可能に形成されている。第1カムスライダ44および第2カムスライダ45は、スナップリング19に各別に軸方向に当接、若しくは近接している。
【0051】
カムドライバ41、およびカムスライダ42には、互いに係合する第1係合部46、および第2係合部47が各別に設けられている。第1係合部46、および第2係合部47は、カムドライバ41が、カムスライダ42との間の抑止力に抗してカムスライダ42に対して中心軸線O回りに回転軸10とともに回転したときに、第1カムスライダ44、および第2カムスライダ45を軸方向に相対的に離反させる。
【0052】
図示の例では、カムドライバ41の外周面に、径方向の外側に向けて突出するカム突部30が形成されている。カム突部30は、カムドライバ41の外周面から突出した円柱状に形成されている。カム突部30は、2つ設けられ、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。カム突部30は、第1カムスライダ44、および第2カムスライダ45により軸方向に挟まれている。
カム突部30の外周面が、第1係合部46となっている。なお、第1係合部46は、カムドライバ41のうち、カム突部30以外の部分に設けてもよい。
【0053】
第1カムスライダ44には、径方向に貫き、かつ軸方向の他方側に向けて開口した第1凹欠き部44aが形成されている。第2カムスライダ45には、径方向に貫き、かつ軸方向の一方側に向けて開口した第2凹欠き部45aが形成されている。第1凹欠き部44aおよび第2凹欠き部45aそれぞれ、2つ設けられ、中心軸線Oを径方向に挟む両側に1つずつ設けられている。
【0054】
第1凹欠き部44aおよび第2凹欠き部45aは、径方向の外側から見て周方向に延びる基準線に対して対称形状を呈し、かつ同じ大きさに形成されている。第1凹欠き部44aの内面は、一対の傾斜面を備え、これらの傾斜面は、周方向に互いに離れるに従い軸方向の他方側に向けて延びている。第2凹欠き部45aの内面は、一対の傾斜面を備え、これらの傾斜面は、周方向に互いに離れるに従い軸方向の一方側に向けて延びている。第1凹欠き部44aおよび第2凹欠き部45aそれぞれの一対の傾斜面は、カム突部30の外周面に当接している。
第1凹欠き部44aおよび第2凹欠き部45aそれぞれの一対の傾斜面が、第2係合部47となっている。
【0055】
次に、無励磁作動型ブレーキ装置3の作用について説明する。
【0056】
電磁コイル15が、図9から図11に示される通電状態から非通電状態になると、電磁コイル15から一方の挟み込み部材12に及ぼされる吸引力が消失することで、一方の挟み込み部材12が、付勢部材14によって他方の挟み込み部材13に向けて移動する。これにより、一方の挟み込み部材12が、第1カムスライダ44に当接して第1カムスライダ44を第2カムスライダ45側に向けて押圧する。この際、第1カムスライダ44および第2カムスライダ45が、カム突部30を軸方向に挟んでいるので、図12に示されるように、第2カムスライダ45も他方の挟み込み部材13に押し当てられることで、一対の挟み込み部材12、13がカムスライダ42を軸方向に挟み込み、回転軸10が回転していると、挟み込み部材12、13とカムスライダ42との間にブレーキ力が生ずる。これにより、カムスライダ42が、カムドライバ41に対して回転移動が抑止された状態で外装されていることから、カムドライバ41を介して回転軸10に前述のブレーキ力が及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する。
【0057】
ここで、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバ41が、カムスライダ42との間の抑止力に抗して回転軸10とともにカムスライダ42に対して回転する。この際、軸方向の移動が規制されている他方の挟み込み部材13に、第2カムスライダ45が当接していることから、カムドライバ41がカムスライダ42に対して回転するのに伴い、図13に示されるように、カム突部30の外周面(第1係合部46)が、第1凹欠き部44aおよび第2凹欠き部45aそれぞれの傾斜面(第2係合部47)を摺動することで、第1カムスライダ44が、一方の挟み込み部材12を介して付勢部材14を軸方向に圧縮変形させつつ、第2カムスライダ45から軸方向に離反する向きに移動する。これにより、付勢部材14の付勢力が増大し、挟み込み部材12、13とカムスライダ42との間に生ずるブレーキ力が増大することで、回転軸10の回転速度が速やかに低下する。
【0058】
以上説明したように、本実施形態による無励磁作動型ブレーキ装置3によれば、高速で回転している回転軸10を、衝撃力を抑えつつ短時間で停止させることができる。
カムスライダ42が、カムドライバ41に対して、回転移動が抑止された状態で移動可能に外装されているので、慣性モーメントが小さいときには、前述のブレーキ力が生ずると、このブレーキ力が、カムドライバ41を介して回転軸10に及ぼされて回転軸10の回転移動が停止する一方、慣性モーメントが大きい場合には、前述のブレーキ力が生じていても、カムドライバ41が、カムスライダ42との間の抑止力に抗して回転軸10とともにカムスライダ42に対して回転する。
【0059】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態、および変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3 無励磁作動型ブレーキ装置
10 回転軸
11 ブレーキ部
12 一方の挟み込み部材
13 他方の挟み込み部材
14 付勢部材
15 電磁コイル
21、41 カムドライバ
22、42 カムスライダ
24、44 第1カムスライダ
25、45 第2カムスライダ
31、46 第1係合部
32、47 第2係合部
33 第1規制部材
34 第2規制部材
O 中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13