(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163638
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】撮像装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/318 20150101AFI20241115BHJP
H04N 23/695 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H04B17/318
H04N23/695
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079419
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】金子 成悟
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122FK35
5C122FK37
5C122FK38
5C122FK40
5C122GC07
5C122GC52
5C122GD04
5C122GD06
5C122GE11
5C122HA13
5C122HA35
5C122HA82
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB06
5C122HB09
(57)【要約】
【課題】無線通信に影響を及ぼす変化があっても通信状態を判定できる。
【解決手段】撮像装置であって、撮像装置が接地面に取り付けられた状態において固定される固定部材と、撮像装置の撮像方向を変更するための部材であって、所定の軸周りに回転する回転部材と、外部機器と無線通信を行う無線通信手段と、外部機器との通信を可能とするための外部機器の登録操作を受け付けた場合、外部機器と無線通信手段との通信状態が正常か判定する判定手段と、を有し、判定手段は、回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって通信状態が正常か判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
前記撮像装置が接地面に取り付けられた状態において固定される固定部材と、
前記撮像装置の撮像方向を変更するための部材であって、所定の軸周りに回転する回転部材と、
外部機器と無線通信を行う無線通信手段と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器と前記無線通信手段との通信状態が正常か判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段は、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1の電力は、外部との無線通信を行うための電力である第2の電力以下であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記第2の電力で前記外部機器と通信ができたと判定した後、前記第1の電力で前記通信状態が正常か判定することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記判定手段が前記通信状態を判定する際には、前記回転部材の位置を変更しないことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記固定部材と前記回転部材を繋ぐ伝送線を有し、
前記伝送線の形状は、前記回転部材の回転位置によって変化することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記無線通信手段には、アンテナが備えられ、
前記回転部材の回転位置によって前記アンテナと電波遮蔽物の相対位置が変化することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記電波遮蔽物は、少なくとも前記固定部材と前記回転部材を繋ぐ伝送線であることを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記通信状態が正常ではない前記回転部材の回転位置があることを通知する通知手段を有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記通知手段による通知は、前記撮像装置を操作することが可能な操作画面に表示されることを特徴とする請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記回転部材の位置情報と前記回転部材の位置情報に対応した前記第1の電力のテーブルを有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記判定手段は、現在の前記回転部材の位置情報に応じて前記テーブルより前記第1の電力を決定し、前記決定した第1の電力で前記通信状態が正常か判定することを特徴とする請求項10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記回転部材の位置情報と前記回転部材の位置情報に対応した補正量のテーブルを有することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記判定手段は、前記無線通信手段が受信する電波の強度と前記補正量の差が閾値以上の場合、前記通信状態が正常であると判定することを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記第1の電力は、外部との無線通信を行うための電力である第2の電力と前記補正量に基づき算出されることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記回転部材の回転は、パン回転またはチルト回転の少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記撮像装置における撮像手段は、前記回転部材の回転に連動して回転することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項17】
接地面に対して取り付けられた状態において固定される固定部材と、撮像方向を変更するための部材であって所定の軸周りに回転する回転部材とを有する撮像装置のための制御方法であって、
外部機器と無線通信を行う無線通信工程と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器との通信状態が正常か判定する判定工程と、を有し、
前記判定工程において、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
接地面に対して取り付けられた状態において固定される固定部材と、撮像方向を変更するための部材であって所定の軸周りに回転する回転部材とを有する撮像装置のための制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
外部機器と無線通信を行う無線通信工程と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器との通信状態が正常か判定する判定工程と、を有し、
前記判定工程において、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定する
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波による通信方法である無線通信という技術が知られている。無線通信では、無線通信機構(アンテナと電子デバイス)を搭載した機器同士で通信ができるため、離れた位置にあるデバイス同士であっても物理的なケーブルの接続が不要となる。
【0003】
特許文献1では、パン回転などの駆動機構と無線通信機構を有しているカメラで、無線通信機構を搭載した外部機器と良好な無線通信を可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では電波遮蔽物で無線通信機構を覆わない構成とすることで、駆動機構があっても良好な無線通信を可能とする構成となっている。一方でパン回転やチルト回転を行うと、駆動機構によって無線通信機構の周囲にある電波遮蔽物(電気基板、ケーブルや金属部品など)の位置が変化する。電波遮蔽物の位置が変化すると、外部機器との電波強度に変化してしまう。そのため、カメラと外部機器を設置して通信確認ができたとしても、通信確認後にパン回転やチルト回転をしてしまうと、電波強度が不足して外部機器との通信が途絶えるといった通信不良が発生する可能性がある。このようにユーザーの意図しない通信不要によって、外部機器から情報を取得できなくなってしまい、正常にカメラを制御できなくなる可能性がある。また、同様にカメラから外部機器の操作ができなくなるといった不具合も発生する。
【0006】
そこで、本発明では、無線通信に影響を及ぼす変化があっても通信状態を判定できる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての撮像装置は、前記撮像装置が接地面に取り付けられた状態において固定される固定部材と、前記撮像装置の撮像方向を変更するための部材であって、所定の軸周りに回転する回転部材と、外部機器と無線通信を行う無線通信手段と、前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器と前記無線通信手段との通信状態が正常か判定する判定手段と、を有し、前記判定手段は、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無線通信に影響を及ぼす変化があっても通信状態を判定できる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る撮像装置の機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る撮像装置のハードウェア構成図である。
【
図3】本実施形態に係る撮像装置の構造例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る撮像装置のパン回転後の構造例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係る撮像装置と外部機器の配置を示す図である。
【
図6】本実施形態に係る撮像装置の通信可能距離を示す図である。
【
図7】本実施形態に係る撮像装置の各パン回転位置における通信可能距離を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る登録時送電電力を設定した通信可能距離を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る設置時における無線機器の登録処理を説明するフローチャートである。
【
図10】本実施形態に係るパン回転位置と登録時送電電力の関係を示したテーブルの一例である。
【
図11】本実施形態における情報処理装置のハードウェア構成図である。
【
図12】本実施形態に係る操作画面の表示例を示す図である。
【
図13】本実施形態に係る操作画面上の第1のエラー表示例を示す図である。
【
図14】本実施形態に係る操作画面上の第2のエラー表示例を示す図である。
【
図15】本実施形態に係る撮像装置のパン回転位置と補正量の関係を示したテーブルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は調整されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、全ての図において同一の機能を有するものは同一の数字を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
<実施形態1>
図1は、本実施形態に係る撮像装置100の機能構成を例示的に説明する機能ブロック図である。また、本実施形態に係る撮像装置100は、撮像機能を有する通信装置である。
【0012】
図1に示す各機能ブロックのうち、ソフトウェアにより実現される機能については、各機能ブロックの機能提供するためのプログラムがROM(Read Only Memory)206等のメモリに記憶される。そして、そのプログラムをRAM(Random Access Memory)205に読み出してCPU(Central Processing Unit)204が実行することにより実現される。
【0013】
ハードウェアにより実現される機能については、例えば、所定のコンパイラを用いることで、各機能ブロックの機能を実現するためのプログラムからFPGA上に自動的に専用回路を生成すればよい。FPGAとは、Field Programmable Gate Arrayの略である。また、FPGAと同様にしてゲートアレイ回路を形成し、ハードウェアとして実現するようにしてもよい。また、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)により実現するようにしてもよい。なお、
図1に示した機能ブロックの構成は一例であり、複数の機能ブロックが1つの機能ブロックを構成するようにしてもよいし、いずれかの機能ブロックが複数の機能を行うブロックに分かれてもよい。
【0014】
本実施形態に係る撮像装置100は、撮像光学系101、撮像部102、画像処理部103,エンコーダ部104、ネットワークI/F105、制御部106、記録部107、無線通信部108、回転部109を有するように構成される。
【0015】
撮像光学系101は、被写体からの光を撮像部102の受光面に集光する。単数或いは複数のレンズ群を備え、例えばズームレンズ、フォーカスレンズ等を備える。また、絞り機構を備え、被写体からの光を減衰させることが可能である。また、ND(Neutral Density)フィルタを備え、被写体からの光を減衰させることも可能である。また各レンズ、絞り機構、フィルタには位置を検出するフォトインタラプタやホール素子が備え付けられている。後述する制御部106は、フォトインタラプタやホール素子の位置情報を基に撮像光学系101を制御する。また各レンズ、絞り機構、フィルタにはモーターに連動して駆動する可動部(駆動機構)を有している。この各可動部についても、後述する撮像装置100の制御部106が制御を行う。これらの駆動機構の駆動(回転等)を制御する際、制御部106は、駆動制御手段としても機能する。尚、撮像光学系101は、NDフィルタ以外にも赤外光カットフィルタなどの挿抜機構があるフィルタを有していてもよい。
【0016】
撮像部102は、撮像素子によって構成される。撮像部102は、撮像光学系101から入光された光から、被写体の像を撮像して画像を生成する撮像手段として機能する。撮像素子は、撮像光学系101によって撮像面(受光面)に集光された被写体からの光を画素ごとに電気信号に変換して出力する。撮像素子は、設定された信号増幅率(アナログゲイン)に従って信号が増幅される。
【0017】
撮像素子は、光電変換素子からなる画素がマトリクス状に配列されたICチップである。例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサである。撮像素子は、主に可視光に高い感度を有しており、画素毎に赤(R)、緑(G)、青(B)のいずれかに高い感度を有するが、赤外光にもある程度の感度を有している。そのため、太陽光が存在する時間帯、および赤外光照明によって照らされている場所等の赤外光で明るい被写体を鮮明に撮像することができる。撮像素子は出力されたアナログ信号である電気信号をデジタル信号へとA/D変換を行う。デジタル信号は画像処理部103へ送られて信号処理される。
【0018】
画像処理部103は、変換されたデジタル信号に対してデジタルゲインによる露出調整、デモザイキング処理、ホワイトバランス処理、ガンマ処理等を含む信号処理を行ってデジタル画像を生成する。生成されたデジタル画像は記録部107に一時的に保存される。記録部107は、SRAMやDRAMといった揮発性メモリ、フラッシュメモリといった不揮発性メモリである。
【0019】
エンコーダ部104は、生成されたデジタル画像に対してMоtiоn JpegやH264、H265等の所定のファイルフォーマットに符号化処理を行う。
【0020】
ネットワークI/F105は、ネットワーク110を介して外部の情報処理装置やサーバ、記憶装置との通信に利用されるインターフェースである。エンコーダ部104で符号化処理された画像データをネットワークI/F105を利用して外部の情報処理装置やサーバ、記憶装置に送信する。情報処理装置からは、機械認識を行う領域の指定や、機械認識の種類の指定を行う。その他にも、カメラ等の撮像装置のパン・チルト・ズーム・絞り・露出の制御命令等をネットワークI/F105が受信する。
【0021】
ネットワーク110は、ネットワーク110上のローカルエリアネットワーク(LAN)であり、Ethernet(登録商標)等の通信規格を満足するルータ等から構成される。撮像装置100は、例えば情報処理装置1とLANケーブル等によって接続される。情報処理装置とはパーソナルコンピューターなどの情報機器であり、ディスプレイに撮影された画像を表示することや、表示された制御画面からユーザーが撮像装置100を制御することが可能に構成される。情報処理装置1のハードウェア構成については後述する。
【0022】
制御部106は、CPU機能を含む少なくとも1つのコンピュータであり、撮像装置100の各構成要素を統括的に制御し、各種パラメーターの設定を行う。このとき、制御部106は撮像装置100を構成する各部が協調して動作するように統括的に制御する。
【0023】
記録部107は、メモリによって構成される。メモリとはSRAMやDRAMといった揮発性メモリやフラッシュメモリといった不揮発性メモリである。
【0024】
無線通信部108は、外部の各種機器と無線通信を行う。具体的には、外部の無線機器と電波を送受信するアンテナとデータ処理を行う無線通信ドライバによって構成される。本実施形態では、無線通信部108は外部機器と無線通信を行う無線通信手段として機能する。また、扱われる無線通信はWi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Z-Wave(登録商標)などの通信規格に則ったものである。アンテナおよび無線通信ドライバは通信規格に適合したものが搭載される。無線通信部108は、同様に同一の通信規格に則った外部機器と無線で通信を行うことができる。外部機器とは、撮像装置100の外部にある機器であり、IoT(Internet of Things)デバイスや、撮像装置100とは異なる無線通信部を有する異なる撮像装置などである。本実施形態では外部機器として温度センシングデバイスを例に挙げて説明する。
【0025】
また、無線通信部108は、アンテナ304へ送電する電波強度を変更することが可能である。アンテナ304へ送電する電波強度は、アンテナに供給する電力を増やすほど増大し、電力を減らすほど減少する。無線通信部108は、外部機器の登録中と登録後で異なる電力設定が自動反映される。以下、外部機器の登録中に設定される送電電力を登録時送電電力(第1の電力)と呼称する。また、外部機器の登録後に設定される送電電力であり、外部機器との無線通信を行うための送電電力を通常時送電電力(第2の電力)と呼称する。外部機器の登録後は、撮像装置100と外部機器が所定のデータ通信を所定の頻度で行う。また、無線通信部108は、受電する電波強度を測定することが可能である。
【0026】
回転部109は、パン回転やチルト回転を行う駆動機構(回転機構)である。モーターおよびモーターをドライブするデバイスによって構成される。パン回転は、撮像部102を水平方向(左右)に回転する機構であり、チルト回転は、撮像部102を鉛直方向(上下)に回転する機構である。また、本実施形態では、説明を明瞭にするためにパン回転を例に挙げて説明するが、チルト回転についても同様である。
【0027】
以下、
図2を参照して撮像装置100のハード構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るハードウェア構成図である。
【0028】
レンズドライバ201は、
図1の撮像光学系101を構成するレンズドライバである。ズームレンズやフォーカスレンズを駆動するためにレンズに取り付けられたモーターに駆動信号を送る。撮像素子202は、
図1の撮像部102を構成する撮像素子であるため、詳細な説明は省略する。I/Fドライバ203は、撮像装置を外部機器と有線接続する際に、その規格に合わせてフォーマット変換を行う。
【0029】
CPU204は、
図1の制御部106の役割だけでなく、各機能の制御も行う。RAM205は、揮発性メモリであり、
図1の記録部107を構成するため、詳細な説明は省略する。ROM206は、不揮発性メモリであり、
図1の記録部107を構成するため、詳細な説明は省略する。無線通信ドライバ207は、
図1の無線通信部108を構成する無線通信用のドライバであるため、詳細な説明は省略する。無線通信ドライバ207は、撮像装置100を外部機器と無線通信で接続する際に、その規格に合わせてフォーマット変換を行う。
【0030】
パンドライバ208は、
図1の回転部109を構成するパン回転を行うドライバである。パンドライバ208は、パン駆動を行うためにモーターに駆動信号を送る。尚、チルト回転についても同様である。
【0031】
以下、
図3を参照して、本実施形態に係る撮像装置100の構造について説明する。
図3は、本実施形態に係る撮像装置100の構造例を示す図である。本実施形態では、円盤上の中心に撮像部があるドーム状の構造である撮像装置を例に挙げて説明するが、これに限定されず、無線通信部108と回転部109を有する構造であれば何れの構造であってもよい。また、金属物質は電波を遮蔽する性質がある一方、非金属物質は電波を透過しやすい性質がある。そのため、本実施形態では、銅やアルミなどの金属物質を電波遮蔽物として説明し、プラスチックやガラス、樹脂などの非金属物質を非電波遮蔽物として説明する。
【0032】
ドーム部301は、鏡筒ユニット302を内部に配置している。ドーム部301は、可視光を透過するプラスチックやガラスなどの材料で形成される。ドーム部301は、
図3に示すようにドーム形状、即ち、半円形状に構成されるため、鏡筒ユニット302は、撮像装置100の周囲を撮影することが可能となる。鏡筒ユニット302は、撮像光学系101を構成するレンズおよび撮像部102を構成する撮像素子で構成される。鏡筒ユニット302は、後述する可動部308に固定される。
【0033】
外装303は、撮像装置100の外装であり、電波の経路を確保するために樹脂などの非電波遮蔽物によって構成される。ただし、電波の経路が確保できる範囲で外装303の一部が電波遮蔽物で合ってもよい。また、外装303がアルミなどの電波遮蔽物で構成されて電波の経路が確保できない場合には外装303の外側にアンテナ304を取り付けるなどして、外部機器との通信経路を確保する必要がある。また、外装303の一部あるいは全体が固定部(固定部材)305と同様に接地面に対して固定される。
【0034】
固定部305は、撮像装置100を三脚や天井などの接地面に対して固定する(取り付ける)。本実施形態では、撮像装置100を接地面に対して固定する固定部材として機能する。固定部305は、三脚や天井などの接地面に対して撮像装置100を設置した場合に、回転部109によって接地面と位置関係が変わらない構造部として機能する。固定部305にはLANケーブルや電源用のケーブルが接続される。
【0035】
固定部基板306は、固定部305に接続されるケーブルのコネクタ311が搭載された基板である。アンテナ304は、無線通信部108を構成するアンテナであり、固定部基板306上の無線通信ドライバ207に接続される。即ち、本実施形態においては、無線通信手段にアンテナ304が備えられている。尚、固定部基板306が1枚の例を挙げて説明したが、複数枚で構成されていてもよい。例えば、アンテナ304と無線通信ドライバ207を搭載した無線通信部108を有するモジュール基板等の基板があってもよい。また、無線通信ドライバ207は、アンテナ304へ供給する送電電力を変更することが可能である。
【0036】
回転機構307は、モーター、パンドライバ、ギア、ドライブシャフト等によって構成される駆動機構である。と可動部308は、回転機構307によって固定部305に対して所定の方向の軸周りに回転可能に構成される回転部(回転部材)でもある。具体的には、水平方向に回転する(パン回転する)。また、このとき、鏡筒ユニット302も可動部308に固定されているため、可動部308の回転に連動して回転される。本実施形態では、可動部308は、固定部305に対して所定の方向(水平方向または鉛直方向)の軸周りに回転する回転部材としても機能する。尚、回転部109が回転部材として機能してもよい。また、回転機構307及び可動部308の駆動(回転等)の駆動は、制御部106によって制御され、これらの駆動を制御する際、制御部106は回転制御手段として機能する。この回転制御手段によって駆動(回転等)される部材を回転部材であるものとする。
【0037】
可動部基板309は、可動部308に配置され、可動部308の回転に連動してパン回転する。撮像素子が搭載されている基板も可動部308の基板である。可動部基板309にも固定部基板306と同様にケーブルのコネクタ311が搭載される。尚、可動部基板309は固定部基板306と同様に1枚に限らず、複数枚あってもよい。
【0038】
伝送線路310は、固定部基板306と可動部基板309とを電気的に接続するケーブルである。即ち、伝送線路310は、固定部材と回転部材とを繋いでいる。伝送線路310は、細線同軸ケーブルやフレキシブルケーブルなどの金属を含む電波遮蔽物である。伝送線路310は、回転機構307の回転位置(回転角度)によって形状が柔軟に変化する。即ち、伝送線路310は、回転機構307の駆動に伴い回転動作する可動部308の回転位置によって形状が夫々異なるように構成される。
【0039】
コネクタ311は、ケーブルを基板と接続するコネクタであり、パン回転による基板の回転と同様に固定部305に対する位置が変化する。コネクタ311は、金属を含む電気部品であるため電波遮蔽物である。基板にはコネクタ311以外にも金属を含む電気部品が複数搭載され、コネクタ311と同様にパン回転による基板の回転と同様に固定部305に対する位置が変化する。
【0040】
回転軸312及び回転方向313は、パン回転の回転軸と回転方向が明瞭となるように図示している。撮像装置100は、回転軸312を中心に回転方向313に回転する(所定の方向の軸周りに回転する)ことが可能である。尚、回転方向313は、反時計回りを例として図示しているが、時計回りであってもよい。
【0041】
撮像装置100において、回転機構307によって可動部308が回転することで、アンテナ304と電波遮蔽物(伝送線路310、可動部基板309、不図示の電気部品、不図示のビスなど)との位置関係が変化する。そのため、回転機構307の回転状態によって、アンテナ304の電波特性が変化する。
【0042】
また、固定部305及び可動部308には基板、電気部品、モーター、ビス、板金などの電波遮蔽物が少なくともひとつ含まれる。また、外装303はすべてが接地面に対して固定されている必要はなく、外装303が固定部305と可動部308で分離され、外装303の一部が可動部308と同様に回転してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、アンテナ304は、固定部305側に配置される固定部基板306の無線通信ドライバ207に接続されるが、固定部305と可動部308のどちら側に配置されていてもよい。アンテナ304が可動部308に配置される場合には、可動部308にない電波遮蔽物(伝送線路310や固定部基板306、不図示のビスなど)との位置関係が変化する。
【0044】
図4を参照して、撮像装置100におけるパン回転について説明する。
図4は、本実施形態に係る撮像装置100がパン回転(可動部308が水平方向に回転)した後の構造例である。
図4に示す撮像装置100は、
図3に示した撮像装置100をパン回転させた様子を示している。
【0045】
図4に示すように、撮像装置100の可動部308がパン回転することで、鏡筒ユニット302、伝送線路310、可動部基板および可動部基板上の電気部品(本実施形態ではコネクタ311)がアンテナ304に対して位置が変化していることがわかる。本実施形態における撮像装置100では、可動部308のパン回転によって回転位置(回転角度)が変化した場合、アンテナ304と電波遮蔽物の相対位置が変化する。そして、アンテナ304と電波遮蔽物の相対位置が変化することで電波強度の特性が変化することがわかる。
【0046】
以下、
図3および
図4を参照して、パン回転によるアンテナ304と電波遮蔽物の位置関係を補足で説明する。ここではアンテナ304と伝送線路310を例に挙げて説明するが、電波遮蔽物は伝送線路310に限定されない。
【0047】
図4に示す撮像装置100のパン回転位置(回転角度)においては、アンテナ304の直上に伝送線路310がある状態となる。そのため、
図3に示す撮像装置100のパン回転位置に対してアンテナ304の電波経路が塞がれる分、電波強度が悪化しやすい傾向となる。
【0048】
これに対して、
図3に示す撮像装置100のパン回転位置においては、アンテナ304の直上を含むアンテナ304の周辺に伝送線路310がない状態となる。そのため、
図4に示す撮像装置100の状態よりも、伝送線路310によってアンテナ304の電波経路が塞がれないため、電波強度が良化しやすい傾向となる。このように、撮像装置100の可動部308がパン回転をすることで、電波強度が変化することが分かる。また、撮像装置100内には伝送線路310以外にも電波遮蔽物が存在し、電波強度がパン回転位置によって変化する。電波強度の変化については
図6を参照して詳細を後述して説明する。
【0049】
以下、
図5を参照して撮像装置100と外部機器との関係を示す。
図5は、本実施形態に係る撮像装置100と外部機器の配置の一例を示した図である。
【0050】
温度センシングデバイス500は、アンテナ501と温度センサ502を有している。温度センシングデバイス500は、温度センサ502を用いて、温度センシングデバイス500周囲の温度情報を取得することが可能な機器である。
【0051】
撮像装置100のアンテナ304と温度センシングデバイス500のアンテナ501が電波を送受信することで、撮像装置100と温度センシングデバイス500はそれぞれのアンテナを介して、相互に無線通信を用いて、データ通信を行うことが可能である。また、温度センシングデバイス500は、温度センサ502で取得した温度情報を撮像装置100にアンテナ501を用いて無線の電波として送信する。撮像装置100はアンテナ304を用いて、温度センシングデバイス500から送電された電波を受信する。
【0052】
尚、外部機器として温度センシングデバイス500を例に挙げて説明したが、そのほかのIoTデバイスや撮像装置など、無線機能を有するデバイスにも適用可能である。また、外部機器は温度センサなどの入力機能ではなく、スピーカーなどの出力機能を有していてもよい。
【0053】
撮像装置100は、受信した温度情報を取得し、温度情報をユーザーに通知することが可能である。また、撮像装置100は、温度情報に応じて撮影素子やレンズ、パン回転、やチルト回転などの制御変更を行うことが可能である。この温度情報の通知や温度情報に応じて撮影素子やレンズ、パン回転、やチルト回転などの制御は撮像装置100の制御部106が行う。
【0054】
以下、
図6を参照して撮像装置100の通信可能距離について説明する。
図6は、本実施形態に係る撮像装置100の通信可能距離の例を模式的に示した図である。
【0055】
図6では、撮像装置100が温度センシングデバイス500と無線通信を行える範囲の例を示している。無線通信を行える範囲は、撮像装置100のアンテナ304と温度センシングデバイス500のアンテナ501で正しく情報を通信できるだけの電波強度がある範囲となる。本実施形態では、通信が正常に行える臨界の距離を通信可能距離と呼称する。本実施形態における通信可能距離は、撮像装置100の通常時送電電力による電波強度と撮像装置100の構造によって決定されるものとする。
【0056】
撮像装置100の電波は、理想的には無指向性であり、撮像装置100から電波は同心円状に広がる。しかし、実際にはアンテナ304と撮像装置100内の電波遮蔽物の位置関係によって、電波の経路が変化して、電波強度が方向によって変化する。そのため、通信可能距離は
図6に示しているように方向によっても変化することが分かる。
図6は、XY平面上の撮像装置100の通信可能距離を示している。
【0057】
また、
図3及び
図4で示したように撮像装置100の可動部308のパン回転位置によって電波の経路が変わる。
図6では撮像装置100の可動部308のパン回転位置による通信可能距離の違いを示している。
図6では、
図3におけるパン回転位置の通信可能距離600を実線で例示している。さらに、
図4におけるパン回転位置の通信可能距離601を点線で例示している。
図3及び
図4では電波遮蔽物について伝送線路310を例に挙げて説明したが、実際には伝送線路310以外の電波遮蔽物の影響を受けて変化する。
図3と
図4に例示する撮像装置100の可動部308のパン回転位置において、どちらのパン回転位置の通信可能距離が長くなるかは、伝送線路310以外の電波遮蔽物の影響を受けて変化する。また、電波の経路は撮像装置100と温度センシングデバイス500を設置する環境によっても大きく変化する。これは壁や床などによって電波が反射、吸収されるためである。
【0058】
本実施形態では、登録を実施するパン回転位置の電波強度に対して、最も不利なパン回転位置との電波強度の差を算出し、その電波強度の差だけ、登録時送電電力を通常時送電電力よりも下げた状態で登録時の通信状態の判定を行う。即ち、登録時送電電力は通常時送電電力以下となるように設定される。
【0059】
図6に温度センシングデバイス500を配置した場合について説明する。このとき、撮像装置100が
図3のパン回転位置(通信可能距離600)の状態では、電波強度が十分あり、撮像装置100と温度センシングデバイス500が無線通信できることがわかる。しかし、撮像装置100が
図4のパン回転位置(通信可能距離601)の状態では、電波強度が足りず、撮像装置100と温度センシングデバイス500が無線通信できないことがわかる。そのため、
図6に示す通信可能距離600の状態でユーザーが撮像装置100と温度センシングデバイス500を設置した場合を想定する。この場合、設置後にユーザーがパン回転をして
図4のパン回転位置にした際、温度センシングデバイス500との通信が正常に行えなくなる可能性がある。
【0060】
本実施形態では、撮像装置100の可動部308の各パン回転位置における無線通信の通信状態を撮像装置100の制御部106が自動的に判定することで、撮像装置100と外部機器の設置時に、容易に通信状態を検査可能となる。
【0061】
また、
図6では、説明の都合上2か所の撮像装置100におけるパン回転位置を例に挙げて通信可能距離を説明したが、通信可能距離は、
図6で示した2か所のパン回転位置だけではなく、すべてのパン回転位置で異なる。従って、通信状態を検査する際、すべてのパン回転位置で外部機器との通信状態を判定することが好ましい。
【0062】
以下、
図7を参照して登録時のパン回転位置における登録時の送信電力について説明する。
図7は、本実施形態に係る撮像装置100の各パン回転位置における通信可能距離を示した図である。
【0063】
図7には、
図6の通信可能距離600、通信可能距離601に追加してパン回転位置の異なる通信可能距離602、通信可能距離603、通信可能距離604を図示している。これらの通信可能距離は、すべて異なるパン回転位置における通信可能距離であることを示している。ここでは図示を明瞭とするために、合計5つの通信可能距離のみ図示しているが、パン回転の可動範囲すべてで通信可能距離を測定することが望ましい。
【0064】
図7では、パン回転位置によって通信可能距離が変化する様子を示している。また、通信可能距離601及び通信可能距離603においては、温度センシングデバイス500が通信可能距離よりも外にあるため、通信状態が正常ではないことが分かる。一方、通信可能距離600、通信可能距離602、及び通信可能距離604においては、温度センシングデバイス500が通信可能距離より内にあるため、通信状態が正常ではあることが分かる。
【0065】
本実施形態では、送電電力を登録時送電電力に変更して通信状態を判定することで、容易に撮像装置100と外部機器との通信状態の検査を行う。
図7の矢印は、送電電力の補正量700を示している。登録時送電電力は、通常時送電電力から補正量700を減算することで算出される。補正量700は、現在のパン回転位置の通信可能距離から、異なるパン回転位置における通信可能距離を減算した値である。さらに補正量700は撮像装置100からの方向毎に算出され、かつ、最大の値となるものが補正量700である。補正量700の算出に用いる通信可能距離600の点を点701、補正量700の算出に用いる通信可能距離604の点を点702とする。点701と点702は撮像装置100から同一方向に存在し、その大きさが通信可能距離における最大となる点である。このとき点702は、点701よりも小さい値である。
【0066】
図8を参照して、登録時送電電力について説明する。
図8は、本実施形態に係る登録時送電電力を設定した通信可能距離を示した図である。
【0067】
図8では、現在のパン回転位置における通常時送電電力の通信可能距離600と、通信可能距離600と同一のパン回転位置における登録時送電電力の通信可能距離703を示している。通信可能距離703は、通信可能距離600に対して補正量700よりも少ない送電電力の場合の距離となる。
【0068】
ここで距離と電力の関係を、式(1)、式(2)、及び式(3)を用いて以下に示す。Pt(dBm)は送電する電波の電力である。Prr(dBm)は、送電するアンテナからの距離D(m)における電波の電力である。PrP(dBm)は、撮像装置100から点701までの距離DP(m)における電波の電力である。PrQ(dBm)は、撮像装置100から点702までの距離DQ(m)における電波の電力である。式(1)は、自由空間における電波の伝送特性を示している式である。本実施形態では、光速c(m/s)は、真空中の速度である3.00×10^8(m/s)を用いるが、より正確に算出する場合には、通過物質の屈折率で除算する。また、本実施形態では、電波の周波数を900MHzとして計算する。
【0069】
Prr=(λ/4×π×D)^2×Pt ・・・(1)
PrP=(λ/4×π×DP)^2×Pt ・・・(2)
PrQ=(λ/4×π×DQ)^2×Pt ・・・(3)
【0070】
また、λは電波の波長であり、式(4)を用いて以下に示す。
【0071】
λ=c/f ・・・(4)
【0072】
λは、上記式(4)に示すように電波の周波数f(Hz)と光速c(m/s)から算出される。PrP(dBm)とPrQ(dBm)の比が補正量700となる。ここで、補正量700を、補正量Px(dB)として、式(5)を用いて以下に示す。このとき、補正量Px(dB)は、0以上の値となる。
【0073】
Px=20×log(PrQ/PrP)=20×log(DP/DQ) ・・・(5)
【0074】
また、ここでは自由空間における電波の伝送特性の計算式から求めたが、実環境に合わせて任意に変形することや、モデリングを用いたシミュレーションを用いてもよい。
【0075】
以上の各式を用いることで、補正量Px(dB)を求めることができる。補正量Px(dB)は、補正量700と同義である。登録時送電電力をPB(dB)、通常時送電電力をPA(dB)とすると、式(6)として示すことができる。
【0076】
PB(dBm)=PA(dBm)-Px(dB) ・・・(6)
【0077】
上記式(6)で示した登録時送電電力PBを用いて通信状態の判定を行うことで、パン回転位置による通信可能距離の減少を予測した、通信状態の検査が可能となる。このように、登録時送電電力(第1の電力)PBは、通常時送電電力(第2の電力)PAと補正量700に基づき算出することができる。また、式(1)から式(6)では距離から電力へ変換を行ったが、距離ではなく直接電波強度を測定するようにしてもよい。
【0078】
図6、
図7及び
図8に示した通信可能距離は、同一環境設置における通信可能距離である。実際の設置環境での通信可能な距離は壁や床などの周囲の環境にも依存して変化する。しかし、設置環境毎でパン回転の位置毎に通信可能距離を取得するのは時間がかかる。これに対して、本実施形態では、登録時送電電力PBを用いることで、パン回転をすることなく、容易に通信状態の検査を行うことが可能となる。
【0079】
図6、
図7及び
図8の通信可能距離は、設計者がシミュレーションまたは実測によって取得する値であり、ユーザーが取得する必要は必ずしもない。また、設計者は後述する
図10で示す、パン回転位置と登録時送電電力PBのテーブル1000を撮像装置100の不揮発性メモリ等に格納(記録)する。尚、本実施形態では、通信可能距離を測定して算出しているが、電波の電力量を測定してもよい。
【0080】
以下、
図9を参照して、設置時における無線機器の登録方法の手順について説明する。
図9は、本実施形態に係る撮像装置100の処理を示すフローチャートである。以下の各処理は、撮像装置100の制御部106(CPU204)がROM206等に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。また、各工程(ステップ)について先頭にSを付けて表記することで、工程(ステップ)の表記を省略する。また、
図9に示す各判定処理を行う際、制御部106は判定手段としても機能する。各判定処理とは、S901、S902、S906、S910における判定処理である。また、
図9に示す各通知処理を行う際、制御部106は、通知手段としても機能する。各通知処理とは、S904、S910における通知処理である。
【0081】
まず、S900において、制御部106は、アンテナ304に送る送電電力を通常時送電電力PAとなるように設定をする。
【0082】
次に、S901において、制御部106は、ユーザーから新規の無線機器(外部機器)との通信を可能とするための当該無線機器の登録操作があるか否かを判定する。判定の結果、新規の無線機器の登録操作がない場合には、新規の無線機器の登録操作の判定待ち(ループ)の状態となる。一方、新規の無線機器の登録操作があった場合には、無線機器(外部機器)の登録を受け付け、S902へ移行する。尚、S901においては、ユーザーによってディスプレイ800に表示される操作画面801で新規登録ボタン812が選択された場合(押下された場合)に、新規の無線機器の登録操作があったと判定する。この際のユーザー操作は後述して説明する。
【0083】
次に、S902において、制御部106は、撮像装置100のパン回転位置(S902の時点における位置)は変更せずに停止した状態、且つ通常時送電電力PAのままで無線機器と正常に通信ができるか否かを判定する。判定の結果、通常時送電電力PAのままで正常に通信できていないと判定された場合には、S904に移行する。一方、通常時送電電力PAのままで正常に通信できていると判定された場合には、S903に移行する。本実施形態では、撮像装置100におけるパン回転位置は変更せずに外部機器との通信状態の判定及び外部機器の登録作業を行う。そして、通常時送電電力PA及び登録時送電電力PBの2種類の電力で外部機器との通信状態が正常か判定を行うことで、パン回転位置(可動部308の回転位置)を変更せずとも通信状態の検査を容易に行うことができる。尚、このときのパン回転位置(現在の可動部308のパン回転位置)を登録時パン回転位置と呼称する。
【0084】
次に、S903において、制御部106は、登録時送電電力PBに設定するためのテーブルを参照する。当該テーブルには、パン回転位置毎に登録時送電電力PBが記録されている。制御部106は、テーブルの登録時パン回転位置を参照して、登録時送電電力PBを決定する。テーブルについては
図10を参照して後述して説明する。
【0085】
次に、S904において、制御部106は、通常時送電電力PAでは、通信が正常に行えないため、ユーザーに対し、通知(エラー通知)を行う。この際のエラー通知は、後述するユーザーが確認及び操作可能でありディスプレイ800に表示される操作画面801上に表示する。また、後述する
図13で、S904におけるエラーの通知例を示す。エラー通知後にS901へ移行する。ここで、S901へ移行する際、エラー通知に対して、ユーザーによってディスプレイ800に表示される操作画面801で再試行ボタン813が選択された場合に、再試行を選択したとしてS901へ移行した後、S902へと移行する。一方、エラー通知に対して、ユーザーによってディスプレイ800に表示される操作画面801でキャンセルボタン815が選択された場合に、キャンセルを選択したとして、S901へ移行し、新規の無線機器登録の待機状態となる。この際のユーザー操作は後述して説明する。
【0086】
次に、S905において、制御部106は、アンテナ304に送る送電電力をS903で決定された登録時送電電力PBとなるように設定をする。設定後は、S906へ移行する。
【0087】
次に、S906において、制御部106は、登録時送電電力PBを用いて無線機器との通信状態の判定を行う。判定の結果、無線機器との通信状態が正常な場合には、S907へ移行する。一方、無線機器との通信状態が正常ではない場合には、S908へ移行する。
【0088】
次に、S907において、制御部106は、アンテナ304に送る送電電力を登録時送電電力PBから通常時送電電力PAとなるように設定する。設定後は、S911へ移行する。
【0089】
次に、S908において、制御部106は、アンテナ304に送る送電電力を登録時送電電力PBから通常時送電電力PAとなるように設定する。設定後は、S909へ移行する。
【0090】
次に、S909において、制御部106は、登録時送電電力PBで通信が正常に行えないため、ユーザーに対し、通知(エラー通知)を行う。ただしこのとき、通常時送電電力PAでは通信が正常に行えるため、ユーザーへはこのまま登録を完了することが選択できるようにすることが望ましい。後述する
図12で、S909におけるエラー通知の例を示す。エラーを通知後にS910へ移行する。
【0091】
次に、S910において、制御部106は、ユーザーがS909で通知されたエラーを無視することを選択したか否かを判定する。判定の結果、エラーを無視することが選択された場合には、S911に移行する。一方、エラーを無視する以外が選択された場合には、S901に移行する。尚、S910においては、ユーザーによって、ディスプレイ800に表示される操作画面801で無視ボタン814が選択された場合に、ユーザーがエラーを無視したと判定する。また、ユーザーによって、ディスプレイ800に表示される操作画面801で再試行ボタン813またはキャンセルボタン815が選択された場合に、ユーザーがエラーを無視していないと判定する。この際のユーザー操作は後述して説明する。
【0092】
次に、S911において、無線機器の登録を完了する。以降は、通常時送電電力PAで登録された無線機器との通信を行う。
【0093】
以下、外部機器との通信状態の判定方法について説明する。撮像装置100は、後述する無線機器の新規登録ボタン812の入力を受け、相互通信の準備(ペアリング)を行う。登録時の初回(一回目)のみアドレス取得などを行う必要があるため、温度センシングデバイス500を手動で操作する。本実施形態では、温度センシングデバイス500を初回のみは手動で操作するが、以降の通信状態の確認では、相互通信の準備(ペアリング)ができている状態となるため手動の操作は不要になる。従ってユーザーは、温度センシングデバイス500の手動操作が初回の一回のみで撮像装置100が自動で通信状態の判定が可能となる。
【0094】
図9に示すS902およびS906において、撮像装置100はエラーレートモードへ移行する。撮像装置100は、温度センシングデバイス500へエラーレートモードの指令を無線通信で送る。撮像装置100からエラーレートモードが温度センシングデバイス500に送信されたら、温度センシングデバイス500は、エラーレートモードに移行する。そして、撮像装置100は、温度センシングデバイス500へテスト信号を無線通信で送信する。温度センシングデバイス500は、撮像装置100からテスト信号を受信した場合、当該テスト信号に応じた所定の信号を撮像装置100に送信する。撮像装置100の制御部106は、温度センシングデバイス500から送信された所定の信号を受信後、当該所定の信号からエラーレートを算出してその結果を基に通信状態を判定する。エラーレートの算出方法としては、例えば、BER(Bit Error Rate)、PER(Packet Error Rate)がある。また、エラーレートには閾値を設けて、正常に通信できているかを判定する。撮像装置100の制御部106は、エラーレートが閾値を超えている場合(閾値以上の場合)は、正常に通信できていないと判断(判定)する。一方、エラーレートが閾値を超えていない場合(閾値未満の場合)は、正常に通信できていると判断(判定)する。
【0095】
尚、撮像装置をパン回転させるような回転部がない撮像装置であれば、
図7に示すS901とS902で示した手順を踏めばよいため、正常に通信できるか否かの検査をすることはできる。しかし、撮像装置をパン回転させるような回転部(例えば、回転部109)がある装置においては、パン回転位置をユーザーが細かく変更しながら、上記の操作を繰り返し実施する必要が出てしまう。そのため、ユーザーは撮像装置100の回転角度の指示、温度センシングデバイス500の手動登録操作、撮像装置100の無線機器の新規登録操作をパン回転位置毎に繰り返し実施することになり、ユーザーの負担が増大する。
【0096】
これに対し、本実施形態の撮像装置100によれば、撮像装置100がパン回転位置に応じて、送信電力を低減して通信状態を判定することで、ユーザーの煩雑な操作が不要となり、容易に通信状態の検査を行うことが可能となる。
【0097】
以下、
図10を参照して、パン回転位置と登録時送電電力の関係を示したテーブルについて説明する。
図10は、本実施形態に係るパン回転位置と登録時送電電力の関係を示したテーブル1000の一例である。本実施形態における撮像装置100は、パン回転の可動範囲として-170度から+170度の範囲で駆動するものとする。テーブル1000には可動範囲である-170度から+170度の範囲でパン回転位置に対して、それぞれ登録時送電電力が設定される。尚、テーブル1000では、5度刻みの例を示しているが、これに限定されない。刻みは細かいほど精度としては高くなるが、不揮発性メモリに記録するデータ量も大きくなるため、刻み幅の範囲内で登録時送電電力の変化が小さくなる刻み幅に設計者が設定することが望ましい。また、5度の刻みの範囲内の登録時送電電力はそのパン回転位置内で最も小さくなる値に設定することが望ましい。
【0098】
設計者は、登録時送電電力をテーブルに記録する場合に、電波吸収帯を敷き詰めた外部反射の少ない環境で測定するか、実際のユースケースに近い環境で測定を行う。また、測定は実際に測定してもよいし、電磁界シミュレーションを用いて算出してもよい。また、本実施形態では、通常時送電電力(第2の電力)で通信できることを確認した後に、パン回転位置による損失分を加味した登録時送電電力(第1の電力)で通信状態を判定するため、外部機器の受信のアンテナ特性に依らず検査が可能である。
【0099】
本実施形態における撮像装置100はネットワーク110を介して、パーソナルコンピューターで構成される情報処理装置1に接続される。そして、情報処理装置1のディスプレイ800に撮像装置100を操作可能とする操作画面801を表示する。尚、撮像装置100は、ネットワーク110に限らず、有線等の回線を介して情報処理装置1と接続されてもよい。
【0100】
図11は、本実施形態における情報処理装置1のハードウェア構成を示す図である。
図8に示すように、本実施形態における情報処理装置1は、CPU11、ROM12、RAM13、二次記憶装置14、通信デバイス15、映像出力装置16、入力装置17、接続バス18で構成されている。
【0101】
CPU(プロセッサ)11は、中央演算装置であり、ROM12やRAM13に格納された制御プログラムを実行することにより、情報処理装置1の制御を行う。即ち、情報処理装置1における各構成要素を統括的に制御する。ROM12は、不揮発性メモリであり、制御プログラムや各種パラメタデータを記憶する。制御プログラムは、CPU11で実行され、情報処理装置1が実施する各処理を実現する。RAM13は、揮発性メモリであり、画像や制御プログラム及びその実行結果を一時的に記憶する。二次記憶装置14は、ハードディスクやフラッシュメモリなどの書き換え可能な二次記憶装置であり、通信デバイス15を介して、受信したデータを記憶する。また、制御プログラム、各種設定内容、処理結果等を記憶する。これら情報は、RAM13に出力され、CPU11がプログラムの実行に利用する。
【0102】
通信デバイス15は、無線通信ユニットであり、各種装置と通信を行う。尚、通信デバイス15は、有線通信に限らず、有線通信ユニットであってもよい。映像出力装置16は、撮像装置100やRAM13等から取得した画像または映像や、撮像装置100の操作画面をディスプレイ800(表示装置)に出力する。尚、ディスプレイ800は、回線を介して接続可能に別途用意してもよいが、情報処理装置1と一体で構成するようにしてもよい。入力装置17は、ユーザー入力を受け付けるマウス、キーボードである。その他、タッチパネル式のディスプレイ等の入力装置であってもよい。接続バス18は、情報処理装置1を構成する各装置を接続して相互にデータ通信を行う。
【0103】
尚、本実施形態では、情報処理装置1における処理は、情報処理装置1のCPU11を用いてソフトウェアで実現することとするが、情報処理装置1の処理の一部または全部をハードウェアで実現するようにしても構わない。ハードウェアとして専用回路(ASIC)やプロセッサ(リコンフィギュラブルプロセッサ、DSP)などを用いることができる。また、情報処理装置1における処理の一部または全部を撮像装置100の制御部106が行うようにしてもよい。
【0104】
以下、
図12を参照して、ユーザーが操作可能にディスプレイ800に表示される撮像装置100の操作画面801について説明する。
図12は、本実施形態に係る操作画面801の表示例である。
【0105】
ディスプレイ800は、撮像装置100の操作画面801を表示する。操作画面801は、撮像装置100の制御部106または情報処理装置1のCPU11によってディスプレイ800に表示される。操作画面801は、入力装置17等を用いてユーザーが撮像装置100の各種動作を操作可能とする画面である。各種動作としては、例えば、パン回転動作、チルト回転動作、またはズーム動作等である。操作画面801内には撮影された画像や撮像装置100のステータス情報、ユーザーが撮像装置100を操作するUI(ユーザーインターフェース)やGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)が複数表示される。GUIは、Graphical User Interfaceの、頭字語であり、コンピュータグラフィクスとポインティングデバイスを用いて直感的な操作を提供するユーザーインターフェースである。
【0106】
操作画面801に表示される各UIやGUIは、入力装置17であるマウスやタッチパネルを介した、クリックやドラッグによって操作が可能である。尚、入力装置17以外のマウスやタッチパネルを介した、クリックやドラッグによって各操作が行われてもよい。
【0107】
表示画像802は、撮像装置100が撮影している画像であり、表示画像802は操作画面801上に表示される。パン回転バー803は、撮像装置100のパン回転の可動範囲を示している。GUI804は、パン回転バー803に配置されるGUIであり、具体的にはスクロールバースライダーである。パン回転バー803におけるGUI804の位置は、撮像装置100の現在のパン回転位置を示している。GUI804は、パン回転バー803をスライドするように移動(図中の左右方向に移動)することができる。そして、ユーザーは、入力装置17を用いてこのGUI804を左右にドラッグドロップすることで、ドロップ位置に対応したパン回転位置まで撮像装置100をパン回転させることができる。尚、ユーザーがパン回転を行う操作例としては、他にもパン回転バー803内のある特定の位置をユーザーが入力装置17を用いてクリックすることで、撮像装置100はクリック位置に対応したパン回転位置までパン回転をさせることができる。
【0108】
チルト回転バー805は、撮像装置100のチルト回転の可動範囲を示している。GUI806は、チルト回転バー805に配置されるGUIである、具体的にはスクロールバースライダーである。チルト回転バー805におけるGUI806の位置は、撮像装置100の現在のチルト回転位置(回転角度)を示している。GUI806は、チルト回転バー805をスライドするように移動(図中の上下方向に移動)することができる。そして、ユーザーは、入力装置17を用いてこのGUI804を上下にドラッグドロップすることで、ドロップ位置に対応したチルト回転位置まで撮像装置100をチルト回転させることができる。尚、ユーザーがチルト回転を行う操作例としては、他にもチルト回転バー805内のある特定の位置をユーザーが入力装置17を用いてクリックすることで、撮像装置100はクリック位置に対応したチルト回転位置までチルト回転させることができる。
【0109】
フォーカスバー807は、撮像装置100のフォーカスレンズの可動範囲を示している。GUI808は、フォーカスバー807に配置されるGUIであり、具体的にはスクロールバースライダーである。フォーカスバー807におけるGUI808の位置は、撮像装置100の現在のフォーカス位置を示している。GUI808は、フォーカスバー807をスライドするように移動(図中の上下方向に移動)することができる。そして、ユーザーは、入力装置17を用いてこのGUI808を上下にドラッグドロップすることで、ドロップ位置に対応したフォーカス位置とすることができる。尚、ユーザーがフォーカス調整を行う操作例としては、他にもフォーカスバー807内のある特定の位置をユーザーが入力装置17を用いてクリックすることで、撮像装置100のフォーカス位置をクリック位置に対応したフォーカス位置とすることができる。尚、GUI804、806、808は、
図9では、丸形状で示しているが矩形や三角形状等、どのような形状で表示されていてもよい。
【0110】
ステータスバー809には、撮像装置100の設定情報やエラーメッセージが表示される。例えば、撮像装置100の撮像素子のゲインやシャッタースピード、ズーム倍率、フォーカス位置、パン回転位置、チルト回転位置などである。即ち、撮像装置100からの各通知がステータスバー809に表示される。
【0111】
入力画面810には、パンチルトボタン811、新規登録ボタン812、再試行ボタン813、無視ボタン814、キャンセルボタン815等、複数のボタンが配置されている。
【0112】
パンチルトボタン811は、ボタンをクリックまたは長押しすることでパン回転またはチルト回転の指示を出すことが可能である。また、パンチルトボタンには、矢印などを明示して回転方向がユーザーにわかるようにすることが望ましい。
【0113】
新規登録ボタン812は、撮像装置100へ新規の無線機器(外部機器)の登録操作を行うためのボタンである。新規登録ボタン812が押された場合に、撮像装置100は、無線機器の登録操作における入力を受け付けて、
図7のS901からS902へ移行する。
【0114】
以下、
図13を参照してエラーメッセージの表示(第1のエラー表示)について説明をする。
図13は、本実施形態に係る操作画面801に表示される第1のエラー表示例である。尚、
図13に示しているエラーメッセージは
図9のS910に対応している。
【0115】
エラーメッセージは、ステータスバー809に表示される。このときのエラーメッセージを例として図中に記載しているが、設計者が任意のメッセージを表示できる。また、エラーメッセージが表示された際、ステータスバー809内で、且つエラーメッセージの下部に再試行ボタン813(第2のボタン)、無視ボタン814(第1のボタン)、キャンセルボタン815(第3のボタン)も表示される。これらの各ボタンは、撮像装置100の制御部106(通知手段)の通知に連動して表示され、ユーザーからのクリック操作を受け付けることができる。例えば、
図9のS909でエラー通知されることで、エラーメッセージがステータスバー809に表示され、S910に移行した場合を例に挙げて説明する。
【0116】
ここで、再試行ボタン813がクリック選択(押下)された場合には、エラーメッセージを無視していないとして、S910からS901へ移行する。そして、さらにS902に移行する。この時に、
図13に示しているエラーメッセージの例にもあるように、撮像装置100の制御部106は、ユーザーへ無線機器を近づけることを推奨するメッセージを表示することが望ましい。
【0117】
無視ボタン814がクリック選択された場合には、エラーメッセージを無視したとして、S910からS911へ移行する。キャンセルボタン815が選択された場合には、エラーメッセージを無視していないとして、S910からS901へ移行する。そして、S901においては待機状態となる。
【0118】
以下、
図14を参照して、ユーザーがエラー通知を無視した場合の表示方法について説明する。
図14は、本実施形態に係る操作画面801に表示される第2のエラー表示例である。
【0119】
図14に示すエラーメッセージ(第2のエラー表示)は、
図9のS904に対応している。
図14では
図13とは異なり、通常時送電電力でも通信が正常に行えない状態であることを示している。そのため、
図14に示しているように撮像装置100の制御部106は、無線機器との通信ができないことをユーザーへ通知する。その際、再試行ボタン813とキャンセルボタン815は配置するが、無視ボタン814を配置しない。このように、第2のエラー表示が通知された際には、通常時送電電力でも通信が正常に行えない状態であるため、無視ボタン814を配置しないことが望ましい。
【0120】
また、撮像装置100は、受信特性も確認することが望ましい。そのため、本実施形態における撮像装置100は、受信した電波から電波強度Pr(dBm)を算出する。このとき、受信可能な電波強度に閾値Pt(dBm)を設けておく。さらにこのとき、補正量Px(dB)分だけ損失しても通信できるか判定する。このときの判定方法を、式(7)に示す。
【0121】
Pt≧Pr×Px ・・・(7)
【0122】
撮像装置100の制御部106は、受信の電波強度Prを補正量Px分だけ減らした値が、閾値Pt以上の場合には正常に通信ができると判定する。一方、閾値Pt未満の場合に正常に通信ができないと判定する。上記式(7)では、補正量Pxを用いて説明したが、より精度を上げる場合には、設計者が受信の電波強度を測定して、補正量Pyを算出してもよい。
【0123】
補正量Pxは、設計者が送電の電波強度を測定して算出するのに対して、補正量Pyは設計者が受電の電波強度を測定して算出する。測定するものが異なるだけで、算出方法は同様である。受信の電波強度を測定する場合には、特定の外部機器を撮像装置100から特定の距離、離れた位置に置き、受信の電波強度を測定する。そこから外部機器の設置方向のみを変更して受信の電波強度を測定する。さらに、これを撮像装置100の可動部308におけるパン回転位置毎に繰り返し測定することで、パン回転位置毎の受信の電波強度から算出された通信可能距離が生成できる。補正量Pyは、算出された通信可能距離から、補正Pxと同様にパン回転位置の変化による損失分を算出することができる。このとき、補正量Pxまたは補正量Pyは、パン回転位置毎にテーブルとして不揮発性メモリ等に格納(記録)される。
【0124】
以下、
図15を参照して補正量Pxのテーブルについて説明する。
図15は、本実施形態に係るパン回転位置と補正量(補正情報)の関係を示したテーブル1001の一例である。
図15のテーブル1001は、
図10のパン回転位置と登録時送電電力のテーブルに対して、パン回転位置と補正量Pxのテーブルであり、
図10のテーブル1000とは異なる。また、
図15では、パン回転位置と補正量Pxの関係を示したテーブルを例示したが、補正量Pyを用いる場合についても同様である。
【0125】
図10では、パン回転位置と登録時送電電力のテーブルを示したが、パン回転位置毎に各方向に対する送電の電波強度(あるいは通信可能距離)のテーブルを持っていてもよい。このとき、外部機器の撮像装置100に対する方向がわかる場合には、外部機器の方向の送電の電波強度を参照する。現在のパン回転位置の送電の電波強度と、パン回転の可動範囲内で最小の送電の電波強度の差から、補正量を算出する。この補正量を用いて登録時送電電力を決定することで、過剰な減算をすることなく適切な値に設定することができる。計算式は参照するテーブルが異なるものの、上記した式(1)から式(6)と同様である。
【0126】
外部機器の方向を検出する方法としては、無線通信を用いたAoA(Angle of Arrival)やAoD(Angle of Departure)がある。その他にも撮像装置100と外部機器にGPS(Global Positioning System)搭載してもよい。また、撮像装置100が取得する画像から外部機器を検出して方向を判定する画像認識が挙げられる。
【0127】
尚、本実施形態で示した補正量については、電波強度のばらつきを加味して所定のマージンを載せて計算することが望ましい。
【0128】
また、補正量を一意に算出する方法に記載したが、補正量を段階的に増やしてもよい。段階的に増やす場合には、その都度、通信状態の判定を行うことが望ましい。増やした補正量の大きさによって、エラーメッセージを変更することで、ユーザーへ通信がどの程度正常に行えているかを知らせることができる。例えば、補正量が小さいときでも通信状態が正常ではない場合は、「通信状況:低」といった強調表示を行う。また、補正量が小さいときは通信状態が正常だが、補正量が大きいときに通信状態が正常ではなくなる場合は、「通信状態:中」といった程度がユーザーに分かるように通知を行う。また、通信状態が不安定な場合には、メッセージではなく、色で協調するなどの強調表示でユーザーに通知をするようにしてもよい。
【0129】
本実施形態では、常に同一のパン回転位置で通信状態の判定を実施したが、登録時送電電力を使用する場合は、特定のパン回転位置に回転駆動してから通信状態を判定してもよい。このとき、特定のパン回転位置の登録時送電電力だけを設定すればよくなるため、テーブルが不要となる。これにより不揮発性メモリのデータ容量が削減される。この場合、通常時送電電力に再設定された段階で、撮像装置100は元のパン回転位置に戻ることが望ましい。
【0130】
本実施形態では、外部機器が1つの場合を例に示したが、複数の無線通信デバイスであってもよい。また、本実施形態では、パン回転を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、モーターによって回転し、この回転動作に伴って電波遮蔽物とアンテナ304の相対位置が変わる回転機構すべてに対して同様に適用が可能である。そのため、パン回転だけでなく、チルト回転、ズームレンズ、フォーカスレンズ、挿抜機構があるフィルタなどの駆動機構に対しても同様に適用が可能である。即ち、本実施形態の回転部材は1つ以上であってよく、複数構成されていてもよい。
【0131】
ここで、複数の駆動機構(回転部材)に対して、通信状態の判定を行う場合には、複数の駆動機構の位置(駆動位置、回転位置)を行列で表現して、すべての組み合わせについて検査、判定することが望ましい。
【0132】
また、
図6で説明した通信可能距離は設置環境によっても変化する。そのため設置環境が変わる場合には、再度確認することが望ましい。また、
図6では撮像装置100を起点とした無線通信を可能な距離の例を示している。そして、
図6では、説明を明瞭にするためにX軸(横)とY軸(縦)の2軸平面で記載しているが、実際にはZ軸(高さ)を含めた三軸の立体である。
【0133】
本実施形態で示した撮像装置100の回転動作中に無線機器との接続確認を行う方法は、撮像装置100の無線機器登録のモードとして用意しておき、ユーザーが選択できるようにしておくことが望ましい。これにより、ユーザーが明らかに無線機器を近くに置いている場合には接続確認を省略することが可能となる
【0134】
また、エラー通知は操作画面に表示する以外にも、音、光や振動などのユーザーが認識できるもので通知してもよく、これらの音、光や振動などの通知と上記した操作画面801への通知とを組み合わせて通知するようにしてもよい。
【0135】
以上、本実施形態における撮像装置100(撮像機能を有する通信装置)によれば、装置間の無線通信の通信状態の変化を容易に検査できる。
【0136】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また、本発明は例えば、システム、装置、方法、プログラム若しくは記録媒体(記憶媒体)等としての実施態様をとることが可能である。具体的には、複数の機器(例えば、ホストコンピュータ、インターフェース機器、撮像装置、WEBアプリケーション等)から構成されるシステムに適用してもよいし、また、1つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0137】
また、例えば、
図1に示す各機能部の一部または全部の機能が撮像装置100とは異なる装置に含まれるようにしてもよい。具体的には、撮像装置100とは異なる装置またはストレージデバイスがこれらの機能部を有し、撮像装置100と有線または無線接続に基づく通信を行うことにより各実施形態の機能が実現されるようにしてもよい。異なる装置としては、例えば、情報処理装置1やサーバ等の外部機器である。また、例えば、
図1における1または複数の機能部が撮像装置100とは異なる1または複数のコンピュータにより実現されるようにしてもよい。また、
図1における各機能部の一部または全部の機能が撮像装置100とは異なる1または複数の装置が有するようにしてもよい。
【0138】
本実施形態の開示は、以下の構成、方法、及びプログラムを含む。
【0139】
(構成1)
撮像装置であって、
前記撮像装置が接地面に取り付けられた状態において固定される固定部材と、
前記撮像装置の撮像方向を変更するための部材であって、所定の軸周りに回転する回転部材と、
外部機器と無線通信を行う無線通信手段と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器と前記無線通信手段との通信状態が正常か判定する判定手段と、を有し、
前記判定手段は、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定することを特徴とする撮像装置。
【0140】
(構成2)
前記第1の電力は、外部との無線通信を行うための電力である第2の電力以下であることを特徴とする構成1に記載の撮像装置。
【0141】
(構成3)
前記判定手段は、前記第2の電力で前記外部機器と通信ができたと判定した後、前記第1の電力で前記通信状態が正常か判定することを特徴とする構成2に記載の撮像装置。
【0142】
(構成4)
前記判定手段が前記通信状態を判定する際には、前記回転部材の位置を変更しないことを特徴とする構成1乃至3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0143】
(構成5)
前記固定部材と前記回転部材を繋ぐ伝送線を有し、
前記伝送線の形状は、前記回転部材の回転位置によって変化することを特徴とする構成1乃至4のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0144】
(構成6)
前記無線通信手段には、アンテナが備えられ、
前記回転部材の回転位置によって前記アンテナと電波遮蔽物の相対位置が変化することを特徴とする構成1乃至5のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0145】
(構成7)
前記電波遮蔽物は、少なくとも前記固定部材と前記回転部材を繋ぐ伝送線であることを特徴とする構成6に記載の撮像装置。
【0146】
(構成8)
前記通信状態が正常ではない前記回転部材の回転位置があることを通知する通知手段を有することを特徴とする構成1乃至7のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0147】
(構成9)
前記通知手段による通知は、前記撮像装置を操作することが可能な操作画面に表示されることを特徴とする構成8に記載の撮像装置。
【0148】
(構成10)
前記回転部材の位置情報と前記回転部材の位置情報に対応した前記第1の電力のテーブルを有することを特徴とする構成1乃至9のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0149】
(構成11)
前記判定手段は、現在の前記回転部材の位置情報に応じて前記テーブルより前記第1の電力を決定し、前記決定した第1の電力で前記通信状態が正常か判定することを特徴とする構成10に記載の撮像装置。
【0150】
(構成12)
前記回転部材の位置情報と前記回転部材の位置情報に対応した補正量のテーブルを有することを特徴とする構成1乃至11のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0151】
(構成13)
前記判定手段は、前記無線通信手段が受信する電波の強度と前記補正量の差が閾値以上の場合、前記通信状態が正常であると判定することを特徴とする構成12に記載の撮像装置。
【0152】
(構成14)
前記第1の電力は、外部との無線通信を行うための電力である第2の電力と前記補正量に基づき算出されることを特徴とする構成12または13に記載の撮像装置。
【0153】
(構成15)
前記回転部材の回転は、パン回転またはチルト回転の少なくともいずれかであることを特徴とする構成1乃至14のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0154】
(構成16)
前記撮像装置における撮像手段は、前記回転部材の回転に連動して回転することを特徴とする構成1乃至15のいずれか1つに記載の撮像装置。
【0155】
(構成17)
接地面に対して取り付けられた状態において固定される固定部材と、撮像方向を変更するための部材であって所定の軸周りに回転する回転部材とを有する撮像装置のための制御方法であって、
外部機器と無線通信を行う無線通信工程と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器との通信状態が正常か判定する判定工程と、を有し、
前記判定工程において、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定する
ことを特徴とする制御方法。
【0156】
(構成18)
接地面に対して取り付けられた状態において固定される固定部材と、撮像方向を変更するための部材であって所定の軸周りに回転する回転部材とを有する撮像装置のための制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
外部機器と無線通信を行う無線通信工程と、
前記外部機器との通信を可能とするための前記外部機器の登録操作を受け付けた場合、前記外部機器との通信状態が正常か判定する判定工程と、を有し、
前記判定工程において、前記回転部材の回転角度に応じて決定される第1の電力によって前記通信状態が正常か判定する
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0157】
100 撮像装置
101 撮像光学系
102 撮像部
103 画像処理部
104 エンコーダ部
105 ネットワークI/F
106 制御部
107 記録部
108 無線通信部
109 回転部