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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163643
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/593 20060101AFI20241115BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20241115BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20241115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20241115BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20241115BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241115BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241115BHJP
【FI】
A61K31/593
A61K31/573
A61P17/06
A61P43/00 121
A61K47/44
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/12
A61K47/14
A61K47/34
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079431
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福地 智也
(72)【発明者】
【氏名】梅本 翔太
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA25
4C076AA27
4C076BB31
4C076CC20
4C076DD09F
4C076DD30Z
4C076DD43Z
4C076DD46A
4C076DD47A
4C076EE23F
4C076EE53F
4C076FF51
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086DA15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA63
4C086NA03
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】ビタミンD3を含有する外用組成物において、外用組成物中の含水量を高くしても、ビタミンD3の安定性をより向上させる技術について提供すること。
【解決手段】ビタミンD3、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bを含有する、外用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンD3、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bを含有する、外用組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計含有率が0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項6】
エステル油を含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項7】
前記エステル油がトリイソオクタン酸グリセリンを少なくとも含む、請求項6に記載の外用組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上であり、
前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤A及び前記非イオン性界面活性剤Bの合計含有率が1質量%以上10質量%以下であり、
前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下であり、且つ
エステル油を含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項9】
前記ビタミンD3がカルシポトリオール、マキサカルシトール、アルファカルシドール、ファレカルシトリオール、タカルシトール、及びカルシトリオールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項10】
前記ビタミンD3がカルシポトリオールであり、前記糖質コルチコイドがベタメタゾンジプロピオン酸エステルであり、前記ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、且つ前記非イオン界面活性剤Bがポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項11】
前記非イオン界面活性剤Bが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、及びモノラウリン酸ポリグリセリルから選択される1種以上である、請求項1、2、8又は10に記載の外用組成物。
【請求項12】
さらに水を含有する、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項13】
前記外用組成物中の前記水の含有率が40質量%以上である、請求項12に記載の外用組成物。
【請求項14】
前記外用組成物中の前記水の含有率が75質量%以上である、請求項12に記載の外用組成物。
【請求項15】
前記外用組成物中の前記ビタミンD3の含有量が0.0001質量%以上0.2質量%以下である、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項16】
更に抗酸化剤を含む、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物
【請求項17】
剤型が、ゲル、液状、エアロゾル、霧状、又は泡である、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項18】
乾癬の予防又は改善に使用される、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
乾癬は、皮膚角化症状、鱗屑の発生、皮膚の肥厚、赤い発疹の発生等を主な症状とする皮膚疾患であり、日本国内において数十万人もの多数の患者が存在する。乾癬の皮膚症状に対しては、ビタミンD3を外用薬として使用することが知られている。また、乾癬に対して、ビタミンD3と糖質コルチコイドとを外用薬として併用することが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-518409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビタミンD3はその薬効に優れるものの、水に溶解すると安定性が低下する為、水の含有量がより多くなると、安定性の問題はより大きくなる。
【0005】
そこで、本発明は、ビタミンD3を含有する外用組成物において、外用組成物中の含水量を高くしても、ビタミンD3の安定性をより向上させる技術について提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、ビタミンD3、糖質コルチコイド、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bを含有する、外用組成物、であれば、上記課題と解決できることを見出した。本発明者はこの知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0007】
項1. ビタミンD3、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bを含有する、外用組成物。
【0008】
項2. 前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載の外用組成物。
【0009】
項3. 前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上である、項1又は2に記載の外用組成物。
【0010】
項4. 前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計含有率が0.5質量%以上10質量%以下である、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
【0011】
項5. 前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下である、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
【0012】
項6. エステル油を含有する、項1~5のいずれかに記載の外用組成物。
【0013】
項7. 前記エステル油がトリイソオクタン酸グリセリンを少なくとも含む、項6に記載の外用組成物。
【0014】
項8. 前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上であり、
前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤A及び前記非イオン性界面活性剤Bの合計含有率が1質量%以上10質量%以下であり、
前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下であり、且つ
エステル油を含有する、項1~7のいずれかに記載の外用組成物。
【0015】
項9. 前記ビタミンD3がカルシポトリオール、マキサカルシトール、アルファカルシドール、ファレカルシトリオール、タカルシトール、及びカルシトリオールからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~8のいずれかに記載の外用組成物。
【0016】
項10. 前記ビタミンD3がカルシポトリオールであり、前記糖質コルチコイドがベタメタゾンジプロピオン酸エステルであり、前記ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、且つ前記非イオン界面活性剤Bがポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~9のいずれかに記載の外用組成物。
【0017】
項11. 前記非イオン界面活性剤Bが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、及びモノラウリン酸ポリグリセリルから選択される1種以上である、項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【0018】
項12. さらに水を含有する、項1~11のいずれかに記載の外用組成物。
【0019】
項13. 前記外用組成物中の前記水の含有率が40質量%以上である、項12に記載の外用組成物。
【0020】
項14. 前記外用組成物中の前記水の含有率が75質量%以上である、項12に記載の外用組成物。
【0021】
項15. 前記外用組成物中の前記ビタミンD3の含有量が0.0001質量%以上0.2質量%以下である、項1~14のいずれかに記載の外用組成物。
【0022】
項16. 更に抗酸化剤を含む、項1~15のいずれかに記載の外用組成物
項17. 剤型が、ゲル、液状、エアロゾル、霧状、又は泡である、項1~16のいずれかに記載の外用組成物。
【0023】
項18. 乾癬の予防又は改善に使用される、項1~17のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ビタミンD3を含有し且つ組成物中の含水量を高くても、ビタミンD3の安定性がより向上した外用組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】液体組成物(実施例1、比較例1、比較例2)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図2】液体組成物(実施例2、比較例1、比較例3)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図3】液体組成物(実施例3、比較例1、比較例4)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図4】液体組成物(実施例4、比較例1、比較例5)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図5】液体組成物(実施例5、比較例1、比較例6)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図6】液体組成物(実施例6、比較例1、比較例7)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図7】液体組成物(実施例7、比較例8、比較例9)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図8】液体組成物(実施例8、比較例8、比較例10)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
図9】液体組成物(実施例9、比較例8、比較例11)を60℃下で静置した場合のビタミンD3(上段)及び糖質コルチコイド(下段)の残存率(縦軸)を示す。横軸は、60℃下で静置を開始した時点からの経過週数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0027】
本明細書において、「アルキレン」の炭素原子数は、例えば2~4、好ましくは2~3、より好ましくは2である。
【0028】
本発明は、その一態様において、ビタミンD3、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、及びポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bを含有する、外用組成物(本明細書において、「本発明の外用組成物」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0029】
ビタミンD3は、活性型ビタミンD3製剤に使用可能なものである限り、特に制限されない。ビタミンD3としては、例えばカルシポトリオール(1α,24(OH)2-22-エン-24-シクロプロピル-ビタミンD3)、マキサカルシトール(22-オキサ-1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)、アルファカルシドール、ファレカルシトリオール(1,25-ジヒドロキシ-26,27-ヘキサフルオロ-ビタミンD3)、タカルシトール(1α,24(R)-ジヒドロキシビタミンD3)、カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシビタミンD3)等が挙げられる。これらの成分は、フリー体、塩、溶媒和物(例えば水和物)を包含する。これらの中でも、薬剤(特に、ビタミンD3)の安定性の観点から、好ましくはカルシポトリオール、マキサカルシトールが挙げられる。本発明の一態様においては、ビタミンD3は特に好ましくはマキサカルシトールである。本発明の別の一態様においては、ビタミンD3はカルシポトリオールである。
【0030】
ビタミンD3は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0031】
本発明の外用組成物中のビタミンD3の含有率は、特に制限されず、例えば0.0001質量%以上0.2質量%以下とすることができる。当該含有率は、好ましくは0.0002質量%以上0.1質量%以下、好ましくは0.0005質量%以上0.05質量%以下、好ましくは0.001質量%以上0.02質量%以下、好ましくは0.0015質量%以上0.01質量%以下である。
【0032】
ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油(非イオン性界面活性剤A)は、硬化ヒマシ油に酸化アルキレンを付加重合したものであり、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のものである限り、特に制限されない。酸化エチレンの平均付加モル数は、ビタミンD3の安定性の観点から、より好ましくは10以上55以下、さらに好ましくは20以上55以下、よりさらに好ましくは30以上50以下、とりわけ好ましくは35以上45以下である。ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油としては、特に好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の具体例としては、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油5ともいう)、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10ともいう)、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20ともいう)、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油30ともいう)、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40ともいう)、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50ともいう)等が挙げられる。
【0033】
非イオン性界面活性剤Aは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
本発明の外用組成物中の非イオン性界面活性剤Aの含有率は、特に制限されないが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。当該含有率は、ビタミンD3の安定性、外用組成物のべたつきの低減等の観点から、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上8質量%以下、よりさらに好ましくは1.5質量%以上6質量%以下、とりわけ好ましくは2質量%以上5質量%以下である。
【0035】
非イオン性界面活性剤Bは、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤であり、その限りにおいて特に制限されない。非イオン性界面活性剤Bとしては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、ポリオキシエチレンリノリルエーテル、ポリオキシエチレンカプリルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル、ポリオキシエチレンペンタデシルエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。
【0037】
ポリオキシアルキレングリコールとしては、例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
【0038】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、例えばモノステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、モノイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステルとしては、例えばテトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ヘキサステアリン酸ポリオキシエチレンソルビット、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビット、及びポリオキシエチレンソルビットミツロウ等が挙げられる。
【0040】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばモノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、ジステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリグリセリル等が挙げられる。
【0041】
また、上記以外の非イオン界面活性剤Bとして、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル(高級アルコールとグリセリンの反応で出来るエーテル)も例として挙げられる。
【0042】
非イオン性界面活性剤のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値は、薬剤(特に、ビタミンD3)の安定性をより効果的に向上させる観点から、好ましくは6以上、より好ましくは6.5以上、さらに好ましくは7以上、よりさらに好ましくは7~19、とりわけ好ましくは7~18である。
【0043】
非イオン性界面活性剤Bは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
本発明の外用組成物中の非イオン性界面活性剤Bの含有率は、特に制限されないが、例えば0.002質量%以上10質量%以下である。当該含有率は、ビタミンD3の安定性、外用組成物のべたつきの低減等の観点から、好ましくは0.005質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.02質量%以上10質量%以下、よりさらに好ましくは0.05質量%以上8質量%以下、とりわけ好ましくは0.1質量%以上6質量%以下、とりわけより好ましくは0.2質量%以上4質量%以下、とりわけさらに好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。
【0045】
本発明の外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計含有率は、特に制限されないが、例えば0.1質量%以上20質量%以下である。当該含有率は、ビタミンD3の安定性、外用組成物のべたつきの低減等の観点から、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、より好ましくは1質量%以上12質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下、よりさらに好ましくは3質量%以上8質量%以下、好ましくは4質量%以上6質量%以下である。
【0046】
非イオン性界面活性剤Aと非イオン性界面活性剤Bとの合計中の非イオン性界面活性剤Aの含有率は、特に制限されないが、例えば10質量%以上99.9質量%以下である。当該含有率は、ビタミンD3の安定性、外用組成物のべたつきの低減等の観点から、好ましくは20質量%以上99.5質量%以下、より好ましくは30質量%以上99質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上95質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以上92質量%以下、とりわけ好ましくは45質量%以上90質量%以下である。
【0047】
本発明の外用組成物は、エステル油を含有することが好ましい。エステル油により、ビタミンD3の安定性をより向上させることができる。エステル油は、脂肪酸とアルコールとのエステルからなる油性成分であって、常温(20℃)で液体のものである限り、特に制限されない。
【0048】
エステル油としては、例えば以下の具体例が挙げられる。
【0049】
コハク酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジオクチル、等の二塩基酸のエステル油。
【0050】
乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、乳酸オクチルドデシル、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリオクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、等の水酸基を有するエステル油;
ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ブチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、等の直鎖脂肪酸と低級アルコールとのエステル油;
カプリン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸デシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、オレイン酸デシル、オレイン酸オレイル、等の直鎖脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油;ラウリン酸シソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸イソデシル、オレイン酸オクチルドデシル、リシノール酸オクチルドデシル、等の直鎖脂肪酸と分岐鎖を有するアルコールとのエステル油;
イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、等の分岐鎖を有する脂肪酸と低級アルコールとのエステル油;
2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、2-エチルヘキサン酸ステアリル、イソステアリン酸ヘキシル、イソステアリン酸2-ヘキシルデシル等の分岐鎖を有する脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル油;
ジオクタン酸エチレングリコール、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル酸・カプリン酸)プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジオレイン酸ジプロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリカプリル酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリトール、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、等の脂肪酸と多価アルコールとのエステル油;
ネオペンタン酸オクチルドデシル、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、イソペラルゴン酸2-エチルヘキシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、イソパルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸オクチルドデシル、等の分岐鎖を有する脂肪酸と分岐鎖を有するアルコールとのエステル油。
【0051】
本発明の外用組成物は、上記具体例の中でも、ビタミンD3の安定性等の観点から、好ましくは二塩基酸のエステル油を含有することができる。二塩基酸のエステル油として、同様の観点から、より好ましくは主鎖の炭素数が4~8(好ましくは5~7)のジカルボン酸(好ましくは直鎖状のジカルボン酸)とアルキルアルコール(好ましくは炭素数2~10、好ましくは3~10、より好ましくは3~6のアルキルアルコール)とのジエステル(好ましくは対称ジエステル)を含有することができる。
【0052】
本発明は、その一態様において、エステル油がトリイソオクタン酸グリセリンを少なくとも含むことができる。
【0053】
エステル油は、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0054】
本発明の外用組成物がエステル油を含有する場合、本発明の外用組成物中のエステル油の含有率は、特に制限されず、例えば0質量%超10質量%以下である。当該含有率は、ビタミンD3の安定性等の観点から、好ましくは0.005質量%以上10質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上8質量%以下、よりさらに好ましくは0.2質量%以上6質量%以下、とりわけ好ましくは0.5質量%以上4質量%以下、とりわけより好ましくは1質量%以上2質量%以下である。
【0055】
本発明の外用組成物は、糖質コルチコイドを含有することが好ましい。本発明によれば、ビタミンD3がより安定であり、且つ糖質コルチコイドも安定な外用組成物を提供することができる。
【0056】
糖質コルチコイドは、ステロイド製剤に使用可能なものである限り、特に制限されない。糖質コルチコイドとしては、例えばコルチゾン、ハイドロコルチゾン、コルチゾール、コルチコステロン等のコルチゾン類、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン等のプレドニゾロン類、デキサメタゾン、ベタメタゾン及びその誘導体等が挙げられる。誘導体としては、例えばリン酸エステル、吉草酸エステル、酪酸エステル、プロピオン酸エステル等のエステルが挙げられ、該エステルは1種の酸のエステルであっても、混合酸のエステルでもよい。これらの中でも、好ましくはベタメタゾン又はそのエステルが挙げられる。エステルの中でも、好ましくはベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル等が挙げられる。
【0057】
糖質コルチコイドは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0058】
本発明の外用組成物が糖質コルチコイドを含有する場合、本発明の外用組成物中の糖質コルチコイドの含有率は、特に制限されず、例えば0.001質量%以上2質量%以下とすることができる。当該含有率は、好ましくは0.002質量%以上1質量%以下、好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下、好ましくは0.015質量%以上0.1質量%以下である。
【0059】
本発明の外用組成物は、通常、水を含有する。本発明の組成物中の水の含有率は、例えば40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、よりさらに好ましくは75質量%以上、とりわけ好ましくは80質量%以上、とりわけさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。該含有率の上限は、例えば95質量%、90質量%、85質量%、又は80質量%であることができる。上記下限及び上限は、任意に組合わせることができる。本発明の外用組成物は、水の含有量がより多く、ビタミンD3の安定性の問題がより大きくなる状況であっても、ビタミンD3の安定性を効果的に向上させることが可能である。
【0060】
本発明の外用組成物が水を含有する場合、本発明の外用組成物のpHは、ビタミンD3の安定性等の観点から、好ましくは6~8、より好ましくは6.5~7.5、さらに好ましくは6.7~7.3、よりさらに好ましくは6.8~7.2、とりわけ好ましくは6.9~7.1である。
【0061】
本発明の一態様において、本発明の外用組成物は、上記以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、例えば、炭化水素類(例えば、流動パラフィン(例えば軽質流動パラフィン)、スクワラン等)、溶剤(例えば、ベンジルアルコール、メチルエチルケトン、N-アルキルピロリドン、アルキレンカーボネート、アセトン、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、濃グリセリン、ポリエチレングリコール、へキシレングリコール、炭酸プロピレン等)、水溶性高分子(例えば、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、キトサン、ポビドン、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、カラギーナン等)、抗酸化剤、pH調整剤、防腐剤、保存剤、安定化剤、アミノ酸、キレート剤等が挙げられる。これらは、1種単独で用いることもできるし、任意の2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、本発明の外用組成物は、他の成分として、上記したビタミンD3及び糖質コルチコイド以外の薬効成分、例えば、保湿剤、抗炎症剤、ビタミン剤、抗菌剤、殺菌剤、抗ウイルス剤、ステロイド、抗生物質、抗掻痒剤、抗免疫抑制剤、局所麻酔剤、美白剤等を含有することができる。
【0062】
本発明の一態様において、本発明の外用組成物は、炭化水素類(炭化水素油)を含有する。
【0063】
本発明の一態様において、本発明の外用組成物は、抗酸化剤を含有する。
【0064】
本発明の外用組成物中の他の成分の含有率は、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、特に制限されない。該含有率は、例えば、0質量%以上10質量%以下、0質量%以上5質量%以下、0質量%以上2質量%以下、0質量%以上1質量%以下、又は0質量%以上0.1質量%以下である。
【0065】
本発明の外用組成物は、皮膚への塗布に用いることができる。本発明の外用組成物は皮膚への適用のためのもの(毛髪への適用のためのもの(例えばシャンプー、リンス)を除く)であることができる。本発明の外用組成物は、皮膚外用医薬、化粧料等の皮膚外用組成物の形態であることが好ましい。本発明の外用組成物は、塗布後に除去しない態様で用いられるものであり、泡立て使用した後に水で除去する(例えば洗い流す)ことを前提とした洗浄剤とは区別されるものである。
【0066】
本発明の外用組成物は、薬剤の形態は特に限定されず、化粧品または医薬部外品の形態として公知の形態を採ることができる。このような公知の形態の中でも、たとえば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、パウダー剤、パップ剤、不織布などのシートに薬液を含浸させたシート剤、リップ用乳化物などをあげることができる。なかでも、使用感が良い点で、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤、ローション剤が好ましく、液剤(透明性を有する)が特に好ましい。
【0067】
本発明の一態様において、本発明の外用組成物の剤型は、ゲル、液状、エアロゾル、霧状、又は泡である。
【0068】
本発明の外用組成物は、各成分を溶媒と共に混合することにより調製することができる。本発明の組成物は、好ましくは可溶化状態である。可溶化状態とは、界面活性剤がミセルを形成し、透明かつ均一に溶解し、一相の溶液となっている状態をいう。また、可溶化状態は、マイクロエマルションの状態を含む。マイクロエマルションは、100nm以下の微細な粒子径の乳化粒からなり、熱力学的に安定なミセル溶液である。可溶化状態であることは、外観が透明であることをもって確認できる。また、常法により、粒子サイズを測定することにより可溶化状態を確認することもできる。可溶化状態の組成物は、必要に応じて各成分を加温下で溶解して、その後冷却することにより得ることが可能である。
【0069】
本発明の外用組成物は、非ガス型泡吐出装置に充填される組成物であることが好ましい。ここで、非ガス型泡吐出装置とは、噴射剤に依らずに発泡させる機構を備えるものを意味する。すなわち、本発明の外用組成物は、非ガス型泡吐出装置により発泡して用いるためのものとすることが好ましい。非ガス型泡吐出装置としては、例えばスクリーン型泡吐出装置が挙げられる。スクリーン型泡吐出装置とは、液体を加圧し、ネット状のスクリーン(メッシュ)を通過させることにより、空気と混合せしめ、発泡させる機構のものを意味する。スクリーン型泡吐出装置としては、例えばポンプ型泡吐出装置、チューブ型泡吐出装置、スクイズ型泡吐出装置等が挙げられる。これらの中でも、ポンプ型泡吐出装置が好適である。
【0070】
非ガス型泡吐出装置としては、公知のもの、市販されているもの等を採用することができる。例えばポンプ型泡吐出装置であれば、特開2012-45525号公報、特開2008-307478号公報等に記載のものを使用することができる。
【0071】
本発明の外用組成物は、例えば乾癬の予防又は改善に使用することができる。
【0072】
「改善」とは、症状を減弱する又は消失することのみならず、症状の悪化が継続している状態において症状の悪化の程度を抑制する又は症状の悪化を止めることを包含する。
【0073】
乾癬としては、特に制限されず、例えば尋常性乾癬、乾癬性関節炎、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬等が挙げられる。
【0074】
本発明の外用組成物のヒトを含む哺乳動物への適用は、例えば毎日若しくは数日間に1回行うことができ、継続して適用することが好ましい。本発明の外用組成物を継続して適用する場合の適用期間は、好ましくは2週間以上、より好ましくは3週間以上、さらに好ましくは4週間以上である。
【実施例0075】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0076】
材料
以下の試験例で使用した材料の詳細は以下の通りである。POEはポリオキシエチレンを意味し、POPはポリオキシプロピレンを意味する。
【0077】
(a1.原薬:ビタミンD3)
・カルシポトリオール一水和物
・マキサカルシトール。
【0078】
(a2.原薬:糖質コルチコイド)
・ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
・ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル。
【0079】
(b.非イオン性界面活性剤A)
・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HLB値12.5)。「40」は酸化エチレンの平均付加モル数を示す。
【0080】
(c1.非イオン性界面活性剤B:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)
・POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB値12.5)
・POEラウリルエーテル(HLB値14.5)。
【0081】
(c2.非イオン性界面活性剤B:ポリオキシアルキレングリコール)
・POEPOPグリコール(HLB値10.9)。
【0082】
(c3.非イオン性界面活性剤B:ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル)
・モノステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB値17.5)。
【0083】
(c4.非イオン性界面活性剤B:ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル)
・テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB値15.5)。
【0084】
(c5.非イオン性界面活性剤B:ポリグリセリン脂肪酸エステル)
・モノラウリン酸ポリグリセリル(HLB値15.5)。
【0085】
(d.エステル油)
・アジピン酸ジイソプロピル
・トリイソオクタン酸グリセリン。
【0086】
(e.pH調整剤)
・水酸化ナトリウム
・クエン酸ナトリウム水和物
・クエン酸水和物。
【0087】
試験例1.原薬安定性の評価試験1
表1及び表2(数字の単位は質量%であり、空欄は0を示す。)に示す処方に従って、液体組成物(実施例1~9、比較例1~11)を調製した。具体的には、上記a群(a1及びa2)とd1群を溶解し、その後c群(c1あるいはc2あるいはc3あるいはc4あるいはc5)を添加し、再度溶解する。その後、水を添加し攪拌溶解して、液体組成物を得た。液体組成物のpHは、表1及び表2の通り、pH調整剤の添加(表中、適量は0.002~0.01質量%)によりpH7.0になるように調整した。
【0088】
得られた液体組成物のビタミンD3及び糖質コルチコイドの安定性を測定した。具体的には、液体組成物を60℃下で静置し、1週間後、2週間後、及び3週間後のビタミンD3及び糖質コルチコイドそれぞれの含有量をHPLC分析により、検体のピーク面積を自動積分法により測定し、ビタミンD3及び糖質コルチコイドそれぞれの残存率を算出した。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
結果を図1図9に示す。ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤Aと、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤Bとを組み合わせることにより、ビタミンD3の安定性の向上に関して相乗効果が得られることが分かった。また、この組み合わせは、糖質コルチコイドの安定性に対して悪影響を与えないことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-10-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用組成物であって、
ビタミンD3、酸化アルキレンの平均付加モル数が55以下のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油である非イオン性界面活性剤A、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油以外の非イオン性界面活性剤である非イオン性界面活性剤B、及び水を含有し、
前記ビタミンD3がカルシポトリオール、マキサカルシトール、アルファカルシドール、ファレカルシトリオール、タカルシトール、及びカルシトリオールからなる群より選択される少なくとも1種であり、且つ
前記外用組成物中の前記水の含有率が40質量%以上である
外用組成物。
【請求項2】
前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計含有率が0.5質量%以上10質量%以下である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項6】
エステル油を含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項7】
前記エステル油がトリイソオクタン酸グリセリンを少なくとも含む、請求項6に記載の外用組成物。
【請求項8】
前記非イオン性界面活性剤Bが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記非イオン性界面活性剤BのHLB値が6以上であり、
前記外用組成物中の前記非イオン性界面活性剤A及び前記非イオン性界面活性剤Bの合計含有率が1質量%以上10質量%以下であり、
前記非イオン性界面活性剤Aと前記非イオン性界面活性剤Bとの合計中の前記非イオン性界面活性剤Aの含有率が10質量%以上99.9質量%以下であり、且つ
エステル油を含有する、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項9】
前記ビタミンD3がカルシポトリオール及びマキサカルシトールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項10】
前記ビタミンD3がカルシポトリオールであり、糖質コルチコイドとしてベタメタゾンジプロピオン酸エステルを含有し、前記ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油がポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であり、且つ前記非イオン界面活性剤Bがポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項11】
前記非イオン界面活性剤Bが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、及びモノラウリン酸ポリグリセリルから選択される1種以上である、請求項1、2、8又は10に記載の外用組成物。
【請求項12】
前記外用組成物中の前記水の含有率が50質量%以上である、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項13】
前記外用組成物中の前記水の含有率が60質量%以上である、請求項12に記載の外用組成物。
【請求項14】
前記外用組成物中の前記水の含有率が75質量%以上である、請求項12に記載の外用組成物。
【請求項15】
前記外用組成物中の前記ビタミンD3の含有量が0.0001質量%以上0.2質量%以下である、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項16】
更に抗酸化剤を含む、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物
【請求項17】
剤型が、ゲル、液状、エアロゾル、霧状、又は泡である、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項18】
乾癬の予防又は改善に使用される、請求項1~10のいずれかに記載の外用組成物。