(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163646
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】車両後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 33/027 20060101AFI20241115BHJP
B62D 33/037 20060101ALI20241115BHJP
B62D 33/04 20060101ALN20241115BHJP
【FI】
B62D33/027 Z
B62D33/037 K
B62D33/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079435
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝啓
(57)【要約】
【課題】荷台の容積を拡大することが可能な車両後部構造を提供する。
【解決手段】車両後部構造は、車両後部に設けられた荷台103を有し、荷台103は、水平なフロア106と、フロア106の車幅方向の端部から起立している第1サイドゲート108と、第1サイドゲート108に重なっていて移動することにより第1サイドゲート108よりも後方に延びる第2サイドゲート110と、フロア106の後端から起立していて後側に傾倒することでフロア106よりも後方に延び荷台103の容積を拡大する第1リアゲート112と、傾倒した第1リアゲート112の後端から起立する第2リアゲート116と、移動した第2サイドゲート110に起立した第2リアゲート116を係合するゲートロックハンドル117・ストッパ122とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、
前記荷台は、
水平なフロアと、
前記フロアの車幅方向の端部から起立していて後方に延長可能なサイドゲートと、
前記フロアの後端から起立している第1リアゲートと、
前記第1リアゲートの上端から下方に延び該第1リアゲートに重なっている第2リアゲートとを備え、
前記第1リアゲートが後側に傾倒し、該傾倒した第1リアゲートの後端から前記第2リアゲートが起立することで前記荷台の容積が拡大され、
前記荷台はさらに、前記起立した第2リアゲートを前記後方に延長されたサイドゲートに係合するロック手段を備えることを特徴とする車両後部構造。
【請求項2】
前記荷台はさらに、前記傾倒した第1リアゲートを前記後方に延長されたサイドゲートに係合する係合手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項3】
前記係合手段は、前記第1リアゲートの車幅方向の端部に配置された第1係合部と、
前記サイドゲートの下端部に配置された第2係合部とを含むことを特徴とする請求項2に記載の車両後部構造。
【請求項4】
前記荷台はさらに、前記傾倒した第1リアゲートの下面に設けられたロアメンバであって、前記フロアの下側に位置する車両の骨格部材に接合されるロアメンバを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【請求項5】
前記起立している第1リアゲートおよび該第1リアゲートに重なっている第2リアゲートは、前記サイドゲートに係合されていることを特徴とする請求項1に記載の車両後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、荷台が設けられたトラックなどの車両の荷台部構造が開示されている。荷台フロアの車幅方向の両端部には車体前後方向に延在する壁部が立設されていて、荷台フロアの後端部には可倒式扉が設けられている。荷台フロアの後端には、下方に凹んだ凹部が形成されている。この凹部は上記の可倒式扉が分割され車両後方に倒れることで露出する。したがって凹部にはスペアタイヤなどの荷物を車体後方から容易に出し入れすることができ、凹部に対する車体後方からのアクセス性が改善される、と特許文献1は述べている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラックのキャビンの前端部は、前突時に潰れることで乗員の安全を確保するクラッシャブルゾーンとなっている。このクラッシャブルゾーンを増大させると、キャビンはその分だけ後方へ下がる。走行する車両の長さには法規上の制限があるため、キャビンが後方へ下がれば、その分だけ荷台の容積は減少する。したがって減少したトラックの荷台の容積を一時的にでも拡大したいという要請が存在する。なお、荷台の容積を拡大することで車両長さが法規上の制限を超えても、通行許可申請をすれば走行は可能である。しかしながら、例えば特許文献1は、トラックの荷台の容積の拡大について言及していない。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑み、荷台の容積を拡大することが可能な車両後部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立していて後方に延長可能なサイドゲートと、フロアの後端から起立している第1リアゲートと、第1リアゲートの上端から下方に延び第1リアゲートに重なっている第2リアゲートとを備え、第1リアゲートが後側に傾倒し、傾倒した第1リアゲートの後端から第2リアゲートが起立することで荷台の容積が拡大され、荷台はさらに、起立した第2リアゲートを後方に延長されたサイドゲートに係合するロック手段を備えることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の他の代表的な構成は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立している第1サイドゲートと、第1サイドゲートに重なっていて移動することにより第1サイドゲートよりも後方に延びる第2サイドゲートと、フロアよりも後方に延びさらに起立するように展開することで荷台の容積を拡大するリアゲートと、移動した第2サイドゲートを展開したリアゲートの起立した部位に係合するロック手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のさらに他の代表的な構成は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立している第1サイドゲートと、第1サイドゲートに重なっていて移動することにより第1サイドゲートよりも後方に延びる第2サイドゲートと、フロアの後端から起立していて後側に傾倒することでフロアよりも後方に延び荷台の容積を拡大する第1リアゲートと、傾倒した第1リアゲートの後端から起立する第2リアゲートと、移動した第2サイドゲートに起立した第2リアゲートを係合するロック手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、荷台の容積を拡大することが可能な車両後部構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による車両後部構造の実施例を適用したトラックの側面図である。
【
図4】
図3の荷台の容積を拡大する際の本実施例の挙動の前半を示す斜視図である。
【
図5】
図3の荷台の容積を拡大する際の本実施例の挙動の後半を示す斜視図である。
【
図8】
図5のサイドゲートヒンジを拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図8のサイドゲートヒンジを第1サイドゲートを除去して示す斜視図である。
【
図10】
図9のサイドゲートヒンジを上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立していて後方に延長可能なサイドゲートと、フロアの後端から起立している第1リアゲートと、第1リアゲートの上端から下方に延び第1リアゲートに重なっている第2リアゲートとを備え、第1リアゲートが後側に傾倒し、傾倒した第1リアゲートの後端から第2リアゲートが起立することで荷台の容積が拡大され、荷台はさらに、起立した第2リアゲートを後方に延長されたサイドゲートに係合するロック手段を備えることを特徴とする。
【0012】
本実施形態によれば、互いに重なった状態、すなわち折り畳まれた状態で荷台の後端から起立している第1・第2リアゲートを後側へ展開することによって、後方に延長されたサイドゲートに第2リアゲートを係合でき、第1リアゲートの分だけ荷台の容積を車両後方へ拡大することができる。
【0013】
上記荷台はさらに、傾倒した第1リアゲートを後方に延長されたサイドゲートに係合する係合手段を備えるとよい。
【0014】
上記構成によれば、第1リアゲートをサイドゲートに直接支持させることができる。したがって第1リアゲートの後傾を規制し、例えばフロアと略平行になるよう、所望の姿勢に第1リアゲートを維持することができる。また第1リアゲートにかかった荷重をサイドゲートに直接分散することができる。
【0015】
上記係合手段は、第1リアゲートの車幅方向の端部に配置された第1係合部と、サイドゲートの下端部に配置された第2係合部とを含むとよい。
【0016】
上記構成によれば、第1リアゲートの車幅方向の端部とサイドゲートの下端部にそれぞれ第1・第2係合部が配置されているため、第1・第2係合部によって荷台の広さが狭まる事を最小限に抑えることができる。
【0017】
上記荷台はさらに、傾倒した第1リアゲートの下面に設けられたロアメンバであって、フロアの下側に位置する車両の骨格部材に接合されるロアメンバを備えるとよい。
【0018】
上記構成によれば、ロアメンバを介して第1リアゲートが骨格部材に接合されるため、第1リアゲートに荷重が加わった場合に骨格部材の剛性を利用して第1リアゲートを支持することが可能となる。
【0019】
上記起立している第1リアゲートおよび第1リアゲートに重なっている第2リアゲートは、サイドゲートに係合されているとよい。
【0020】
積載する荷物量によっては、荷崩れを防ぐため、荷台の容積を拡大すべきでない場合もある。上記構成によれば、荷台の容積を拡大しない場合には、折り畳んだ第1リアゲート・第2リアゲートをサイドゲートに係合しておくことができる。したがって、車両の乗員は、荷台の容積を拡大するか否かを自由に選択可能である。言い換えれば、荷台の容積を一時的に拡大して大量の荷物輸送を行うことができる一方で、荷下ろしをすれば荷台を元に戻して車両を再びコンパクトにすることができる。
【0021】
本発明の他の一実施の形態は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立している第1サイドゲートと、第1サイドゲートに重なっていて移動することにより第1サイドゲートよりも後方に延びる第2サイドゲートと、フロアよりも後方に延びさらに起立するように展開することで荷台の容積を拡大するリアゲートと、移動した第2サイドゲートを展開したリアゲートの起立した部位に係合するロック手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
本実施形態によれば、互いに重なった状態で荷台の車幅方向の端部から起立している第1・第2サイドゲートのうち、第2サイドゲートを移動させることにより、展開したリアゲートの起立した部位に第2サイドゲートを係合することができる。これにより、第2サイドゲートが第1サイドゲートよりも後方に延びた分だけ、荷台の容積を車両後方へ拡大することができる。
【0023】
上記荷台はさらに、第2サイドゲートを第1サイドゲートに軸支するサイドゲートヒンジを備え、第2サイドゲートは、サイドゲートヒンジを介して第1サイドゲートに対して後方に回動することによって、第1サイドゲートよりも後方に延びるとよい。
【0024】
上記構成によれば、第2サイドゲートは第1サイドゲートに軸支されているため、後方に例えばスライド移動させる場合と異なり、延長長さを左右で揃えやすく、荷台の容積の拡大が行いやすい。
【0025】
また、リアゲートにかかる荷重は、第2サイドゲートを介して、軸支を行うサイドゲートヒンジに集中する。そこで、第1サイドゲート・第2サイドゲートの、サイドゲートヒンジが取り付けられた部分の剛性を向上させれば、荷重を第1サイドゲートにまで分散させやすくなり、リアゲートによる荷台の容積の拡大を安定して維持できる。
【0026】
上記荷台はさらに、第1サイドゲートに上下方向にわたって接合されたサイドゲートリンフォースを備え、サイドゲートヒンジは、サイドゲートリンフォースを介して第1サイドゲートに取り付けられているとよい。
【0027】
上記構成によれば、サイドゲートヒンジの支持剛性が向上し、安定して車両後方へ荷台の容積を拡大することが可能となる。
【0028】
上記荷台はさらに、第1サイドゲートの周縁に設けられ車幅方向内側へ凸になっている外枠を備え、サイドゲートリンフォースは、外枠に接合されているとよい。
【0029】
上記構成によれば、第1サイドゲートの外枠は、車幅方向内側に凸となっていることで、上下方向荷重に対する剛性が向上している。したがって、荷台のうち第2サイドゲートによって拡大された領域にかかった荷重は、サイドゲートヒンジを介して、サイドゲートリンフォースだけでなく、外枠にも伝わる。これにより、荷台のうち拡大された領域をより強固に支持することが可能となる。
【0030】
上記サイドゲートヒンジは、第1サイドゲートおよび移動する前の第2サイドゲートの後端同士を軸支するとよい。
【0031】
上記構成によれば、第2サイドゲートの前後方向の長さ分だけ、荷台の容積を延長することが可能となる。
【0032】
本発明のさらに他の一実施の形態は、車両後部に設けられた荷台を有する車両後部構造において、上記荷台は、水平なフロアと、フロアの車幅方向の端部から起立している第1サイドゲートと、第1サイドゲートに重なっていて移動することにより第1サイドゲートよりも後方に延びる第2サイドゲートと、フロアの後端から起立していて後側に傾倒することでフロアよりも後方に延び荷台の容積を拡大する第1リアゲートと、傾倒した第1リアゲートの後端から起立する第2リアゲートと、移動した第2サイドゲートに起立した第2リアゲートを係合するロック手段とを備えることを特徴とする。
【0033】
本実施形態によれば、互いに重なった状態で荷台の車幅方向の端部から起立している第1・第2サイドゲートのうち第2サイドゲートを移動させ、第1リアゲートを後側に傾倒させ、第2リアゲートを第1リアゲートの後端から起立させることができる。これにより、第2サイドゲートが第1サイドゲートよりも後方に延びた分(第1リアゲートの分)だけ、荷台の容積を車両後方へ拡大することができる。
【0034】
上記第1リアゲートがフロアの後端から起立しているとき、第2リアゲートは、第1リアゲートの上端から下方に延び第1リアゲートに重なっていて、第2サイドゲートは、移動する前に、第1サイドゲートのフロア側に重なっているとよい。
【0035】
積載する荷物量によっては、荷崩れを防ぐため、荷台の容積を拡大すべきでない場合もある。上記構成によれば、荷台の容積を拡大しない場合には、第2リアゲートは折り畳んで第1リアゲートに重ねて収納しておくことができ、第2リアゲートは邪魔にならない。したがって、車両の乗員は、荷台の容積を拡大するか否かを自由に選択可能である。言い換えれば、荷台の容積を一時的に拡大して大量の荷物輸送を行うことができる一方で、荷下ろしをすれば荷台を元に戻して車両を再びコンパクトにすることができる。
【0036】
さらに、荷台を元に戻したとき、第2サイドゲートは第1サイドゲートのフロア側(内側)に重なっているため、車幅は大きくならず、狭い道でも快適に運転することができる。
【0037】
上記荷台はさらに、傾倒した第1リアゲートを移動した第2サイドゲートに係合する係合手段を備えるとよい。
【0038】
上記構成によれば、第1リアゲートを第2サイドゲートに直接支持させることができる。したがって第1リアゲートの後傾を規制し、例えばフロアと略平行になるよう、所望の姿勢に第1リアゲートを維持することができる。また第1リアゲートにかかった荷重を第2サイドゲートに直接分散することができる。
【0039】
上記荷台はさらに、第1サイドゲートおよび第2サイドゲートにそれぞれ設けられた周辺よりも剛性の高い第1剛性部材および第2剛性部材と、第1剛性部材および第2剛性部材のそれぞれを介して第1サイドゲートと第2サイドゲートとを軸支するサイドゲートヒンジとを備え、第2サイドゲートは、サイドゲートヒンジを介して第1サイドゲートに対して後方に回動することによって、第1サイドゲートよりも後方に延びるとよい。
【0040】
上記構成によれば、第2サイドゲートは第1サイドゲートに軸支されているため、後方に例えばスライド移動させる場合と異なり、延長長さを左右で揃えやすく、荷台の容積の拡大が行いやすい。
【0041】
また、第1リアゲートにかかる荷重は、第2サイドゲートを介して、軸支を行うサイドゲートヒンジに集中する。しかし上記構成によれば、第1サイドゲートおよび第2サイドゲートは、第1剛性部材および第2剛性部材によって、それぞれ、サイドゲートヒンジが取り付けられた部分の剛性が向上している。そのため、荷重を第1サイドゲートにまで分散させやすくなり、第1リアゲートによる荷台の容積の拡大を安定して維持できる。
【0042】
上記荷台はさらに、傾倒した第1リアゲートの下面に設けられたロアメンバであって、フロアの下側に位置する車両の骨格部材に接合されるロアメンバを備えるとよい。
【0043】
上記構成によれば、ロアメンバを介して第1リアゲートが骨格部材に接合されるため、第1リアゲートに荷重が加わった場合に骨格部材の剛性を利用して第1リアゲートを支持することが可能となる。
【0044】
上記サイドゲートヒンジは、第1サイドゲートおよび移動する前の第2サイドゲートの後端同士を軸支するとよい。
【0045】
上記構成によれば、第2サイドゲートの前後方向の長さ分だけ、荷台の容積を延長することが可能となる。
【実施例0046】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0047】
図1は、本発明による車両後部構造の実施例を適用したトラックの側面図である。
図1その他のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、上下方向をそれぞれ矢印U(upward)、D(downward)で示す。
【0048】
図1に示すように、トラック100は乗員が乗り込むキャビン102と、後部に設けられた荷台103とを有する。キャビン102の前端部は、前突時に潰れることで乗員の安全を確保するクラッシャブルゾーン104となっている。このクラッシャブルゾーン104を増大させると、キャビン102はその分だけ車両後方へ下がる。トラック100の長さには法規上の制限があるため、キャビン102が車両後方へ下がれば、その分だけ荷台103の容積は減少する。したがって減少したトラック100の荷台103の容積を一時的にでも拡大したいという要請が存在する。
【0049】
(荷台のサイドゲート・リアゲート)
図2は
図1の荷台103の斜視図である。荷台103は、水平なフロア106と、フロア106の車幅方向の端部から起立している第1サイドゲート108と、第1サイドゲート108のフロア106側に重なっている第2サイドゲート110とを備える。以下、トラック100の右側の第1サイドゲート108・第2サイドゲート110を代表して用いて本実施例を説明するが、トラックの左側も同様の構造であるため、説明を省略する。
【0050】
図3は
図2の荷台103の一部を拡大した拡大図である。
図3に示すように、荷台103は、第2サイドゲート110を第1サイドゲート108に軸支するサイドゲートヒンジ109を備える。サイドゲートヒンジ109は、第1サイドゲート108および第2サイドゲート110の後端同士を軸支している。
【0051】
図3に示すように、荷台103はさらに、フロア106の後端からヒンジ111(
図4または
図5)を介して起立している第1リアゲート112と、第1リアゲート112の上端にヒンジ114を介して軸支された第2リアゲート116とを備える。第2リアゲート116は、第1リアゲート112の上端から下方に延び、第1リアゲート112に重なっている。本実施例では第2リアゲート116は第1リアゲート112の前側(フロア106側)に重なっているが、第1リアゲート112の後側に重なってもよい。
【0052】
図3に示すように、起立している第1リアゲート112とこれに重なっている第2リアゲート116は、第2リアゲート116に取り付けられているゲートロックハンドル117によって、サイドゲートヒンジ109を介して、第1サイドゲート108に係合されている。
【0053】
(荷台の容積の拡大)
図4は
図3の荷台103の容積を拡大する際の本実施例の挙動の前半を示す斜視図である。当初、
図3に示したように、第1リアゲート112・第2リアゲート116は、互いに重なった状態、すなわち折り畳まれた状態で荷台103の後端から起立している。この状態から、まず
図4に示すように、第1リアゲート112・第2リアゲート116を後側へ展開する。すなわち第1リアゲート112を、ヒンジ111を用いて後側に傾倒させ、フロア106と略平行にする。これによって第1リアゲート112はフロア106よりも後方に延び、第1リアゲート112の分だけ荷台103の容積を車両後方へ拡大することができる。
【0054】
次に、
図4に示すように、傾倒した第1リアゲート112の後端からヒンジ114を用いて第2リアゲート116を起立させる。
【0055】
図5は
図3の荷台103の容積を拡大する際の本実施例の挙動の後半を示す斜視図である。
図4の状態から、
図4の矢印120に示すように、第2サイドゲート110を、サイドゲートヒンジ109を介して第1サイドゲート108に対して後方に回動させる。これによって、
図5に示すように、第2サイドゲート110は、第1サイドゲート108よりも後方に延びる。
【0056】
既に述べたように、サイドゲートヒンジ109は、第1サイドゲート108および移動(回動)する前の第2サイドゲート110の後端同士を軸支していたため、第2サイドゲート110の前後方向の長さ分だけ荷台103は延長され、荷台103の容積が拡大される。この第2サイドゲート110の前後方向の長さは、必然的に、第1リアゲート112の前後方向の長さと等しい。
【0057】
本実施例では上述のように第2サイドゲート110は回動することによって後方に移動するが、第2サイドゲート110は、
図4に矢印121で示すように、第1サイドゲート108に沿って直線的に後方にスライド移動させてもよい。いずれの構成を採用するにせよ、第2サイドゲート110は、移動することによって第1サイドゲート108よりも後方に延びる。
【0058】
ただし本実施例のような第2サイドゲート110が回動する構成を採用すれば、第2サイドゲート110を後方にスライド移動させる場合と異なり、荷台103の延長長さを左右で揃えやすく、荷台103の容積の拡大が行いやすい利点がある。
【0059】
(ロック手段)
図6は
図5の荷台103を後方から見た斜視図である。
図6に示すように、荷台103の容積を拡大した後、第2サイドゲート110に設けられたストッパ122に、既に述べたゲートロックハンドル117を係合させることができる。これにより、起立した第2リアゲート116は、回動して後方に移動した第2サイドゲート110に係合し、荷台103の容積の拡大が完了する。ゲートロックハンドル117とストッパ122とを総称してロック手段と呼ぶ。ゲートロックハンドル117とストッパ122との位置関係は、逆にしてもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、当初、第1サイドゲート108・第2サイドゲート110は、互いに重なった状態で荷台103の車幅方向の端部から起立している。そして、第2サイドゲート110を移動(回動)させ、第1リアゲート112を後側に傾倒させ、第2リアゲート116を第1リアゲート112の後端から起立させることができる。これにより、第2サイドゲート110が第1サイドゲート108よりも後方に延びた分(第1リアゲート112の分)だけ、荷台103の容積を車両後方へ拡大することができる。
【0061】
(係合手段)
図5に示すように、第1リアゲート112には、リンフォース123を介してヒンジブラケット124が設けられている。一方、第2サイドゲート110には、係合ピン126が設けられている。ヒンジブラケット124と係合ピン126とを総称して係合手段と呼ぶ。
【0062】
ヒンジブラケット124には、係合ピン126と係合するための穴128が設けられている。ヒンジブラケット124は、
図4に示す状態から回動し、
図5に示す状態になるよう、車幅方向外側に立ち上がり、その穴128に係合ピン126を係合させる。本実施例によれば、このようにして、傾倒した第1リアゲート112を移動(回動)した第2サイドゲート110に係合することができる。
【0063】
かかる構成によれば、荷台103の容積の拡大が完了した後に、後傾した第1リアゲート112を回動した第2サイドゲート110に直接支持させることができる。したがって第1リアゲート112の後傾を規制し、例えばフロア106と略平行になるよう、所望の姿勢に第1リアゲート112を維持することができる。また第1リアゲート112にかかった荷重を第2サイドゲート110に直接分散することができる。
【0064】
係合手段は例えば艤装ボルトにしてもよいが、本実施例のように係合ピン126を用いれば、ヒンジブラケット124を回動させることによって手軽にヒンジブラケット124に引っ掛けたり外したりすることができるため、利便性が高い。
【0065】
図5に示すように、本実施例では、ヒンジブラケット124は、第1リアゲート112の車幅方向の端部に配置されている。一方、係合ピン126は、第2サイドゲート110の下端部に配置されている。かかる構成によれば、これらの係合手段によって荷台103の広さが狭まる事を最小限に抑えることができる。ただし係合手段(ヒンジブラケット124・係合ピン126)の位置は、本実施例のそれに限られないし、これらの係合手段に加えて他の係合手段を追加してもよい。
【0066】
(ロアメンバ)
図7は、
図5の荷台103の側面図である。
図7(a)は
図5の荷台103を外側から見た側面図であり、
図7(b)は
図5の荷台103のA-A断面図である。
図7(a)に示すように、荷台103はさらに、傾倒した第1リアゲート112の下面に設けられたロアメンバ130を備える。ロアメンバ130は、フロア106の下側に位置する車両の骨格部材(アンダーフレーム132)に接合されている。
【0067】
図7(b)のA-A断面に示すように、ロアメンバ130は、第1リアゲート112の上面に設けられたロアメンバリンフォース134とともに、締結ボルト136によって第1リアゲート112に締結されている。
【0068】
そして
図5に示すように、ロアメンバ130が第1リアゲート112の下面に接合されている接合箇所は、ロアメンバリンフォース134の下方であるから、第1リアゲート112の車幅方向中央よりも第2サイドゲート110寄りである。また、この接合箇所は、傾倒した第1リアゲート112を第2サイドゲート110に係合する係合手段(ヒンジブラケット124・係合ピン126)と、前後方向における位置が実質的に等しい。
【0069】
かかる構成によれば、ロアメンバ130を介して第1リアゲート112がアンダーフレーム132に接合されるため、第1リアゲート112に荷重が加わった場合にアンダーフレーム132の剛性を利用して第1リアゲート112を支持することが可能となる。
【0070】
(サイドゲートヒンジ)
図8は
図5のサイドゲートヒンジ109を拡大して示す斜視図である。サイドゲートヒンジ109は、既に述べたように、第2サイドゲート110を第1サイドゲート108に対して後方に回動させる部材である。サイドゲートヒンジ109は、上下に延びるヒンジ軸109Aと、ヒンジ軸109Aに軸支されて回動し第2サイドゲート110にボルト142によって連結されている連結部109Bと、ヒンジ軸109Aを指示するL字型のブリッジ部109Cとを有する。ブリッジ部109Cは、ヒンジ軸109Aの上下2箇所において、ボルト144によって第1サイドゲート108に連結されている。また、サイドゲートヒンジ109は、ゲートロックハンドル117を係合させるサイドゲート係合部109Dを有している(
図3等も参照)。このサイドゲート係合部109Dは、本実施例では貫通穴であるが、ゲートロックハンドル117を係合させることができれば、係合ピンやフックなどでもよい。
【0071】
図8に示すように、第1サイドゲート108には、周辺よりも剛性の高い第1剛性部材として、サイドゲートリンフォース140と、外枠146とが設けられている。サイドゲートリンフォース140は、第1サイドゲート108に上下方向にわたって接合されている補強部材である。外枠146は、第1サイドゲート108の周縁に設けられていて、車幅方向内側へ凸になっている部材である。サイドゲートリンフォース140は、外枠146に接合されている。
【0072】
図9は
図8のサイドゲートヒンジ109を第1サイドゲート108を除去して示す斜視図であり、
図10は
図9のサイドゲートヒンジ109を上方から見た平面図である。
図9および
図10に示すように、第2サイドゲート110にも、周辺よりも剛性の高い第2剛性部材として外枠148が設けられている。外枠148は、第2サイドゲート110の周縁に設けられていて、車幅方向内側へ凸になっている部材である。
【0073】
第1リアゲート112にかかる荷重は、第2サイドゲート110を介して、軸支を行うサイドゲートヒンジ109に集中する。しかし、
図8に示すように、サイドゲートヒンジ109は、第1剛性部材(サイドゲートリンフォース140・外枠146)および第2剛性部材(外枠148)のそれぞれを介して、第1サイドゲート108と第2サイドゲート110とを軸支している。これら第1剛性部材および第2剛性部材は、上下方向荷重に対して強い剛性を有する。
【0074】
このように第1サイドゲート108および第2サイドゲート110は、それぞれ、サイドゲートヒンジ109が取り付けられた部分の剛性を向上させている。そのため、サイドゲートリンフォース140および外枠146を介して、荷重を第1サイドゲート108に分散させやすくなり、第1リアゲート112による荷台103の容積の拡大を安定して維持できる。
【0075】
(荷台の容積の拡大の任意性)
再び
図3を参照する。荷台103の容積を拡大しない場合には、第1リアゲート112はフロア106の後端から起立している。このとき、第2リアゲート116は、第1リアゲート112の上端から下方に延び第1リアゲート112に重なっている。すなわち第2リアゲート116は、折り畳んで第1リアゲート112に重ねて収納しておくことができるため、荷台103の容積を拡大しない場合も邪魔にならない。
【0076】
そして折り畳んだ第1リアゲート112・第2リアゲート116は、既に述べたように、ゲートロックハンドル117によって、第1サイドゲート108に係合しておくことができるため、この収納状態を維持できる。
【0077】
一方、
図3に示すように、第2サイドゲート110も、荷台103の容積を拡大しない場合には、第1サイドゲート108のフロア106側に重なった収納状態にしておくことができる。
【0078】
積載する荷物量によっては、荷崩れを防ぐため、荷台103の容積を拡大すべきでない場合もあるところ、本実施例によれば、トラック100の乗員は、荷台103の容積を拡大するか否かを自由に選択可能である。言い換えれば、荷台103の容積を一時的に拡大して大量の荷物輸送を行うことができる一方で、荷下ろしが済めば各種ゲートを収納して荷台103を元に戻し、トラック100を再びコンパクトにすることができる。
【0079】
さらに、荷台103を元に戻したとき、第2サイドゲート110は第1サイドゲート108のフロア106側(内側)に重なっているため、トラック100の車幅は大きくならず、狭い道でも快適に運転することができる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0081】
また本発明は、特許請求の範囲の従属関係に関わらず、請求項および実施例に記載の発明同士を自由に組み合わせて実施することができるものである。