(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163664
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電解コンデンサ素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/012 20060101AFI20241115BHJP
H01G 9/008 20060101ALI20241115BHJP
H01G 9/02 20060101ALI20241115BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
H01G9/012 309
H01G9/008 303
H01G9/02
H01G9/00 290Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079475
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000103220
【氏名又は名称】エルナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠浩
(57)【要約】
【課題】 品質低下を抑制することができる電解コンデンサ素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 電解コンデンサ素子は、陽極箔及び陰極箔が、互いに反対面側の第1セパレータ及び第2セパレータを介して巻回された巻回体と、前記陽極箔の第1位置に接続された陽極接続端子と、前記陰極箔の第2位置に接続された陰極接続端子と、前記第1セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回された第1絶縁材と、前記第2セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回され、前記陽極箔及び前記陰極箔を挟んで前記第1絶縁材とは反対側に配置された第2絶縁材とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極箔及び陰極箔が、互いに反対面側の第1セパレータ及び第2セパレータを介して巻回された巻回体と、
前記陽極箔の第1位置に接続された陽極接続端子と、
前記陰極箔の第2位置に接続された陰極接続端子と、
前記第1セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回された第1絶縁材と、
前記第2セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回され、前記陽極箔及び前記陰極箔を挟んで前記第1絶縁材とは反対側に配置された第2絶縁材とを有することを特徴とする電解コンデンサ素子。
【請求項2】
前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方の巻回される方向の長さは、前記陽極接続端子と前記陰極接続端子の間の距離の3倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項3】
前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方の巻回される方向の長さは、前記陽極接続端子と前記陰極接続端子の間の距離の10倍以下であることを特徴とする請求項1に記載の電解コンデンサ素子。
【請求項4】
前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方は、繊維を含有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電解コンデンサ素子。
【請求項5】
前記陽極接続端子と前記陰極接続端子は、前記陽極箔及び前記陰極箔をそれぞれ貫通した先にバリを有し、前記バリにより前記陽極箔及び前記陰極箔にカシメ接続され、
前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方は、前記陽極箔及び前記陰極箔の少なくとも一方の前記バリを覆うことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電解コンデンサ素子。
【請求項6】
前記第1絶縁材は、前記第1セパレータに貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電解コンデンサ素子。
【請求項7】
前記第2絶縁材は、前記第2セパレータに貼り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電解コンデンサ素子。
【請求項8】
陽極箔の第1位置に陽極接続端子を接続し、陰極箔の第2位置に陰極接続端子を接続する工程と、
前記陽極箔及び前記陰極箔を、互いに反対面側の第1セパレータ及び第2セパレータを介して巻回すことにより巻回体を生成する工程とを有し、
前記巻回体を生成する工程において、前記第1セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように第1絶縁材を前記巻回体内に巻回し、前記第2セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように、前記陽極箔及び前記陰極箔を挟んで前記第1絶縁材とは反対側で第2絶縁材を前記巻回体内に巻回すことを特徴とする電解コンデンサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電解コンデンサ素子において、巻回される陽極箔及び陰極箔と一対の引出端子との各接続部分を絶縁紙で覆うことにより、陽極箔及び陰極箔の間のセパレータが引出端子により損傷することを抑制する技術が知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-286959号公報
【特許文献2】特開2022-40754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば電解コンデンサ素子の製造において、絶縁紙は、セパレータを介して陽極箔及び陰極箔を巻回す際、陽極箔及び陰極箔と一対の引出端子との各接続部分を覆うようにセパレータ上に配置されるが、製造装置の精度や振動などの各種の要因により位置ずれが生ずるおそれがある。位置ずれにより接続部分が絶縁紙で適切に覆われていない場合、引出端子によりセパレータが損傷し、例えばショート不良などの品質低下が起こるおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、品質低下を抑制することができる電解コンデンサ素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電解コンデンサ素子は、陽極箔及び陰極箔が、互いに反対面側の第1セパレータ及び第2セパレータを介して巻回された巻回体と、前記陽極箔の第1位置に接続された陽極接続端子と、前記陰極箔の第2位置に接続された陰極接続端子と、前記第1セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回された第1絶縁材と、前記第2セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように前記巻回体内に巻回され、前記陽極箔及び前記陰極箔を挟んで前記第1絶縁材とは反対側に配置された第2絶縁材とを有することを特徴とする。
【0007】
上記の電解コンデンサ素子において、前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方の巻回される方向の長さは、前記陽極接続端子と前記陰極接続端子の間の距離の3倍以上であってもよい。
【0008】
上記の電解コンデンサ素子において、前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方の巻回される方向の長さは、前記陽極接続端子と前記陰極接続端子の間の距離の10倍以下であってもよい。
【0009】
上記の電解コンデンサ素子において、前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方は、繊維を含有してもよい。
【0010】
上記の電解コンデンサ素子において、前記陽極接続端子と前記陰極接続端子は、前記陽極箔及び前記陰極箔をそれぞれ貫通した先にバリを有し、前記バリにより前記陽極箔及び前記陰極箔にカシメ接続され、前記第1絶縁材及び前記第2絶縁材の少なくとも一方は、前記陽極箔及び前記陰極箔の少なくとも一方の前記バリを覆ってもよい。
【0011】
上記の電解コンデンサ素子において、前記第1絶縁材は、前記第1セパレータに貼り付けられてもよい。
【0012】
上記の電解コンデンサ素子において、前記第2絶縁材は、前記第2セパレータに貼り付けられてもよい。
【0013】
本発明の電解コンデンサ素子の製造方法は、陽極箔の第1位置に陽極接続端子を接続し、陰極箔の第2位置に陰極接続端子を接続する工程と、前記陽極箔及び前記陰極箔を、互いに反対面側の第1セパレータ及び第2セパレータを介して巻回すことにより巻回体を生成する工程とを有し、前記巻回体を生成する工程において、前記第1セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように第1絶縁材を前記巻回体内に巻回し、前記第2セパレータ上で前記第1位置及び前記第2位置に対向するように、前記陽極箔及び前記陰極箔を挟んで前記第1絶縁材とは反対側で第2絶縁材を前記巻回体内に巻回すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、電解コンデンサ素子の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、アルミ電解コンデンサの一例を示す側面図である。
【
図2】
図2は、電解コンデンサ素子の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のA-A線に沿った巻回体の巻回構造の一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、羽子板部近傍の巻回構造の一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、巻回方向に展開された陽極箔及び陰極箔の外側の面の正面図である。
【
図6】
図6は、巻回方向に展開された陽極箔及び陰極箔の内側の面の正面図である。
【
図7】
図7は、絶縁シートを陽極箔の位置と陰極箔の位置とに個別に配置した場合を示す正面図である。
【
図8】
図8は、アルミ電解コンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、巻回体を生成する巻回装置の概略構成の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、巻回体を生成する巻回装置の概略構成の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態]
(アルミ電解コンデンサの構成)
図1は、アルミ電解コンデンサ1の一例を示す側面図である。
図1の紙面において、アルミ電解コンデンサ1の中心線Lcを挟んだ右半分には、その内部の断面が示されている。
【0017】
アルミ電解コンデンサ1は、電解コンデンサの一例であり、具体的には導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサである。アルミ電解コンデンサ1は、電子回路基板に実装され、例えばカップリング、デカップリング、及び平滑化などに用いられる。
【0018】
アルミ電解コンデンサ1は、電解コンデンサ素子10、ケース11、封口体12、座板13、一対の羽子板部112、一対の丸棒部111、及び一対のリード部110を有する。羽子板部112、丸棒部111、及びリード部110は電解コンデンサ素子10の引き出し電極であり、丸棒部111は羽子板部112の先端から延び、リード部110は丸棒部111の先端から延びている。なお、
図1には一方の羽子板部112及び丸棒部111のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の羽子板部112及び丸棒部111が設けられている。
【0019】
ケース11は、アルミニウムにより形成され、上部の開口が塞がった円筒形状を有する。ケース11は、電解コンデンサ素子10及び封口体12を覆い、アルミ電解コンデンサ1の外装として機能する。なお、ケース11の形状は円筒形状に限定されず、角筒形状であってもよい。
【0020】
封口体12は、例えばブチルゴムなどの弾性部材により形成された略円柱形状の部材である。封口体12は、電解コンデンサ素子10に隣接し、ケース11下部の開口を封口する。
【0021】
電解コンデンサ素子10は、後述するように、陽極箔、陰極箔、及びセパレータ(電解紙)を重ねて巻回した構成を有する。電解コンデンサ素子10の内部には一対の羽子板部112が配置され、電解コンデンサ素子10の底部からは一対の丸棒部111が延びている。
【0022】
羽子板部112、丸棒部111、及びリード部110はアルミニウムなどから形成されている。一対の羽子板部112は、陽極箔及び陰極箔に対し、それぞれカシメ接続されており、アルミ電解コンデンサ1の陽極端子及び陰極端子として機能する。各丸棒部111は、封口体12に形成された一対の貫通孔120にそれぞれ挿通されている。なお、
図1には一方の貫通孔120のみが示されているが、中心線Lを挟んだ対称な位置に他方の貫通孔120が設けられている。
【0023】
リード部110は平板形状を有し、L字形状に屈曲し、その先端側の部分は座板13の板面に沿って延びている。リード部110の丸棒部111側の部分は座板13の貫通孔130に挿通されている。リード部110は、電子回路基板のリフロー工程において、電子回路基板上のパッドにはんだ付けされる。
【0024】
座板13は、樹脂などにより形成された板状部材であり、ケース11及び封口体12の下部に設けられている。座板13は、実装対象の電子回路基板に対してケース11及び封口体12を支持する。座板13には、リード部110の貫通孔130、及びリード部110の屈曲した先端部分を収容する溝部131が設けられている。溝部131は座板13の底面に沿って中央近傍から外側へ延びている。座板13の底面は、電子回路基板に対するアルミ電解コンデンサ1の実装面となるため、板状のリード部110を電子回路基板上のパッドにはんだ付けすることが可能となる。なお、本実施形態では表面実装タイプのアルミ電解コンデンサ1を挙げるが、後述する実施例は、座板13がないリードタイプにも適用することができる。
【0025】
(電解コンデンサ素子の構成)
図2は、電解コンデンサ素子10の一例を示す斜視図である。
図2において、
図1と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。なお、
図2では、リード部110の屈曲前の状態が示されている。電解コンデンサ素子10は、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ(電解紙)103,104を巻回した巻回体100と、陽極箔101及び陰極箔102に接続された一対の引き出し電極19a,19bとを有する。引き出し電極19aは陽極側端子であり、引き出し電極19bは陰極側端子である。
【0026】
陽極箔101及び陰極箔102は、例えばアルミニウム、タンタル、チタン、及びニオブ等の弁金属およびその合金箔並びに蒸着箔等により形成されている。陽極箔101の表面には、電極面積が増加するようにエッチング処理が施されている。これにより、電解コンデンサ素子10は所定の静電容量を確保する。さらに陽極箔101の表面には極薄の酸化被膜が形成されている。このため、陽極箔101は、他の部材から絶縁されている。酸化被膜が誘電体として機能することで、電解コンデンサ素子10がコンデンサとして機能する。陽極箔101の厚みは、例えば5~200(μm)である。この厚み範囲によると、陽極箔101の強度と容量の発現量の間に適切なバランス関係が実現できるため、好ましい。
【0027】
一方、陰極箔102の表面には酸化被膜が形成されていない。なお、陰極箔102の表面にもエッチング処理が施されてもよい。また、陰極箔102の表面には、酸化被膜が形成されてもよいし、無機層またはカーボン層が形成されていてもよい。
【0028】
セパレータ103,104は陽極箔101及び陰極箔102の間に挟まれた状態で巻回される。セパレータ103,104はセルロース、レーヨン、及びガラス繊維などから選択される少なくとも1種類以上を材料とする。巻回体100は、陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103,104を巻回すことにより形成された略円柱状の素子である。本実施形態では、この略円柱形状の高さに沿って電解コンデンサ素子10の高さ方向を規定する。一対の引き出し電極19a,19bは、高さ方向において巻回体100の下方に延びる。高さ方向は、各引き出し電極19a,19bの丸棒部111が延びる方向に実質的に一致する。
【0029】
巻回体100は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において電解液及び導電性高分子の分散液または溶液に浸漬される。これにより、セパレータ103,104には電解液及び導電性高分子層が保持される。セパレータ103,104の厚みは、例えば1~100(μm)である。この厚み範囲によると、セパレータ103,104の強度、絶縁性、空隙率、及び導電性物質のバランスが良好に保たれるため、好ましい。
【0030】
電解液は、多価アルコール、スルホン化合物、ラクトン化合物、カーボネート化合物、多価アルコールのジエーテル化合物、1価のアルコールなどを含むことができる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリアルキレングリコール、グリセリン、の少なくとも一つを含むことが望ましい。ポリアルキレングリコールとしては、平均分子量が200~1000のポリエチレングリコール、平均分子量が200~5000のポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0032】
ラクトン化合物としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどを用いることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどを溶媒として含むことができる。特に、エチレングリコール、ポリアルキレングリコール、γ-ブチロラクトン、スルホランを用いることが望ましい。
【0033】
電解液は、溶質を含んでいてもよい。溶質として、酸成分、塩基成分、酸成分および塩基成分からなる塩、ニトロ化合物、フェノール化合物等を用いることができる。
【0034】
酸成分は、有機酸、無機酸、有機酸と無機酸との複合化合物を用いることができる。有機酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、1,6-デカンジカルボン酸、1,7-オクタンジカルボン酸、アゼライン酸などのカルボン酸などを用いることができる。無機酸としては、硼酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸エステル、リン酸ジエステルなどを用いることができる。
【0035】
有機酸と無機酸との複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジシュウ酸、ボロジグリコール酸等を用いることができる。
【0036】
塩基成分は、1級~3級アミン、4級アンモニウム、4級化アミジニウム等を用いることができる。1級~3級アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、アニリンなどを用いることができる。4級アンモニウムとしては、例えば、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムなどを用いることができる。4級化アミジニウムとしては、例えば、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。
【0037】
導電性高分子は、導電性を有する高分子であれば特に限定されるものではない。例えば、導電性高分子として、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンおよびこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種の高分子を用いる。導電性高分子として、一般的に、p-トルエンスルホン酸およびポリスチレンスルホン酸(PSS)等からなる群より選択される少なくとも1種の酸をドーパントとするポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が用いられる。
【0038】
(巻回構造)
図3は、
図2のA-A線に沿った巻回体100の巻回構造の一例を示す概略断面図である。
図3において、
図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図3には、略円柱状の巻芯Axを中心として巻回された陽極箔101、陰極箔102、セパレータ103,104が部分的に示されている。なお、以降の説明において、陽極端子側の羽子板部112を羽子板部112a、陰極端子側の羽子板部112を羽子板部112bと表記する。なお、羽子板部112aは陽極接続端子の一例であり、羽子板部112bは陰極接続端子の一例である。
【0039】
陽極箔101及び陰極箔102は、互いに反対面側のセパレータ103,104を介して巻回されている。セパレータ103,104は、陽極箔101及び陰極箔102を挟んで互いに反対側で巻回されている。なお、セパレータ103は第1セパレータの一例であり、セパレータ104は第2セパレータの一例である。
【0040】
羽子板部112aは陽極箔101の位置Paにカシメ接続され、羽子板部112bは陰極箔102の位置Pbにカシメ接続されている。位置Paと位置Pbは、例えば巻芯Axを挟んで対称な位置関係にある。羽子板部112a,112b間の距離Laはアルミ電解コンデンサ1の設計に基づき決定される。羽子板部112a,112bの各板面は、巻芯Axから見て電解コンデンサ素子10の外側に面している。
【0041】
羽子板部112aは陽極箔101の外側の面上に設けられ、陽極箔101の内側の面上においてカシメ接続されている。羽子板部112bは陰極箔102の外側の面上に設けられ、陰極箔102の内側の面上においてカシメ接続されている。セパレータ103は、陽極箔101の外側の面と陰極箔102の内側の面の間に配置され、セパレータ104は、陽極箔101の内側の面と陰極箔102の外側の面の間に配置されている。
【0042】
このため、セパレータ103は、羽子板部112aの板面と、羽子板部112bのカシメ接続部とに対向する。また、セパレータ104は、羽子板部112bの板面と、羽子板部112aのカシメ接続部とに対向する。このため、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において羽子板部112a,112bに外力が加わると、セパレータ103,104は、その厚みが薄いほど、羽子板部112a,112b及びその背面のカシメ接続部との当接部分などが損傷するおそれがある。
【0043】
そこで、絶縁シート5a,5bが、それぞれ、セパレータ103,104上で陽極箔101の位置Paと陰極箔102の位置Pbとに対向するように巻回体100内に巻回されている。このため、セパレータ103,104の引張強度が、絶縁シート5a、5bが無い場合より増加し、羽子板部112a,112b及びその背面のカシメ接続部からセパレータ103,104に圧力が加わっても、セパレータ103,104の損傷を抑制することができる。なお、絶縁シート5aは第1絶縁材の一例であり、絶縁シート5bは第2絶縁材の一例である。
【0044】
例えば、絶縁シート5aはセパレータ103と陰極箔102の間に配置され、絶縁シート5bはセパレータ104と陽極箔101の間に配置されている。また、絶縁シート5a、5bは、例えば、十分な量の電解液及び導電性高分子を保持できるように、セパレータ103,104と同様の繊維、あるいは2以上の繊維を混抄した不織布を含有する。また、絶縁シート5a、5bの厚みは、例えば30(μm)以上であり、絶縁シート5a、5bの密度は、例えば0.4(g/cm3)である。
【0045】
図4は、羽子板部112a近傍の巻回構造の一例を示す断面図である。具体的には
図4は、
図2の羽子板部112a近傍を拡大して示す。本例では、一方の羽子板部112aを挙げるが、他方の羽子板部112b近傍も同様の巻回構造となる。
【0046】
羽子板部112aの幅方向の中央部分には、その厚み方向に陽極箔101ごと貫通する開口Hが設けられている。開口Hは、羽子板部112aが陽極箔101の位置Paにカシメ接続されるとき、羽子板部112aの複数個所に対して針状部材8を貫通させることにより形成される(矢印D参照)。これにより、針状部材8の貫通により陽極箔101の反対面には羽子板部112aのバリBが形成される。バリBは、陽極箔101を羽子板部112aとの間で挟むように開口Hの外側に押し広げられる。
【0047】
このように、羽子板部112aは陽極箔101を貫通した先のバリBにより陽極箔101にカシメ接続される。なお、他方の羽子板部112bも同様に陰極箔102を貫通した先のバリにより陰極箔102にカシメ接続される。
【0048】
羽子板部112aは絶縁シート5aにより覆われ、バリBは絶縁シート5bにより覆われている。絶縁シート5aはセパレータ103に重なり、絶縁シート5bはセパレータ104に重なる。このため、セパレータ103,104の引張強度が向上する。したがって、例えば羽子板部112aの板面の角E1がセパレータ103を損傷させるおそれが低減され、バリBの先端E2がセパレータ104を損傷させるおそれが低減される。
【0049】
本例では、絶縁シート5aはセパレータ103を介して羽子板部112aを覆い、絶縁シート5bは直接的にバリBを覆うが、これに限定されない。仮に絶縁シート5aが直接的に羽子板部112aを覆い、絶縁シート5bがセパレータ104を介してバリBを覆う場合でもセパレータ103,104の引張強度は同様に向上する。しかし、バリBによるセパレータ103,104の突き破りを抑制する観点からすると、絶縁シート5a,5bは直接的にバリBに当接することが好ましい。
【0050】
図5は、巻回方向に展開された陽極箔101及び陰極箔102の外側の面101a,102aの正面図である。
図5は、
図3の矢印V1a及びV1bに沿って羽子板部112a,112bをそれぞれ視たときの陽極箔101及び陰極箔102を示す。羽子板部112aは陽極箔101の外側の面101a上に接続され、羽子板部112bは陰極箔102の外側の面102a上に接続されている。
【0051】
また、
図6は、巻回方向に展開された陽極箔101及び陰極箔102の内側の面101b,102bの正面図である。
図6は、
図3の矢印V2a及びV2bに沿って羽子板部112a,112bの裏側のバリBをそれぞれ視たときの陽極箔101及び陰極箔102を示す。羽子板部112aのバリBは陽極箔101の内側の面101b上に設けられ、羽子板部112bのバリBは陰極箔102の内側の面102b上に設けられている。
【0052】
図5及び
図6は、陽極箔101及び陰極箔102と一方の絶縁シート5aとの重複範囲を中心として示し、他方の絶縁シート5bは中略して示している。また、
図5及び
図6は、巻回方向(紙面横方向)における絶縁シート5aの位置を揃えた状態で陽極箔101及び陰極箔102を示している。
【0053】
絶縁シート5a,5bはセパレータ103,104ごとに設けられている。絶縁シート5a,5bは、それぞれ、巻回された状態で陽極箔101の位置Paと陰極箔102の位置Pbの間の領域に重なるように巻回方向の長さLbが設定されている。このため、絶縁シート5aは、セパレータ103上で位置Pa,Pbとそれぞれ対向し、羽子板部112aと、羽子板部112bのバリBを覆うことができる。また、絶縁シート5bはセパレータ104上で位置Pa,Pbとそれぞれ対向し、羽子板部112bと、羽子板部112aのバリBを覆うことができる。
【0054】
したがって、絶縁シート5a,5bは、羽子板部112a,112b及びそのバリBによるセパレータ103,104の損傷を抑制するとともに、羽子板部112a,112bが設けられた位置Pa,Pbにまたがる長さLbを確保することが可能となる。したがって、絶縁シート5a,5bは、仮に陽極箔101の位置Paと陰極箔102の位置Pbとに個別に配置された場合よりもセパレータ103,104との接触面積が増加するため、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において巻回す際、位置ずれしにくい。
【0055】
図7は、絶縁シート6a,6b,7a,7bを陽極箔101の位置Paと陰極箔102の位置Pbとに個別に配置した場合を示す正面図である。
図7において、
図5と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
絶縁シート6a,6b,7a,7bは、絶縁シート5a,5bと同様の絶縁材である。絶縁シート6aはセパレータ103上で羽子板部112aを覆い、絶縁シート6bはセパレータ104上で羽子板部112aの裏側のバリ(不図示)を覆う。絶縁シート7aはセパレータ104上で羽子板部112bを覆い、絶縁シート7bはセパレータ103上で羽子板部112bの裏側のバリ(不図示)を覆う。
【0057】
絶縁シート6aは、陽極箔101上の一方の羽子板部112aだけを覆い、陰極箔102上の他方の羽子板部112bを覆っていない。このため、絶縁シート6aは、巻回方向において、陽極箔101の位置Pa近傍の領域だけに対向する長さLbしか有していない。また、絶縁シート7aは、陰極箔102上の一方の羽子板部112bだけを覆い、陽極箔101上の他方の羽子板部112aを覆っていない。このため、絶縁シート6bは、巻回方向において、陰極箔102の位置Pb近傍の領域だけに対向する長さLbしか有していない。また、絶縁シート6b,7bも同様に位置Pa,Pb近傍の領域だけに対向する長さLbしか有していない。
【0058】
このように、絶縁シート6a,6b,7a,7bの長さLbは、実施形態の絶縁シート5a,5bの長さLbより短いため、セパレータ103,104との接触面積が小さく、アルミ電解コンデンサ1の製造工程において巻回す際、位置ずれしやすい。
【0059】
これに対し、実施形態の絶縁シート5a,5bは、それぞれ、巻回体100において位置Pa,Pbの両方と対向できる長さLbを有するため、セパレータ103,104の引張強度を向上するだけでなく、位置ずれを抑制することができる。したがって、セパレータ103,104の損傷が抑制されるため、電解コンデンサ素子10の品質低下が抑制される。
【0060】
絶縁シート5a,5bの巻回される方向の長さLbは、各羽子板部112a,112bの間の距離Laの3倍以上であると、
図7に示されるような個別の絶縁シート6a,6bを設けた場合より格段にショート不良が抑えられるため、好ましい。また、絶縁シート5a,5bの巻回される方向の長さLbは、各羽子板部112a,112bの間の距離Laの10倍以下であると、巻回体100の直径を適切な大きさに抑えられるため、電解コンデンサ素子10をケース11に収容して封口体12で封口することが容易となり、好ましい。
【0061】
なお、本実施形態において、羽子板部112a,112bは陽極箔101及び陰極箔102の外側の面101a,102a上にそれぞれ配置されるが、これに限定されず、内側の面101b,102b上に配置されてもよい。したがって、絶縁シート5a,5bは、羽子板部112a及びその裏側のバリBと、羽子板部112b及びその裏側のバリBとのうち、何れか2つを覆うことができる。例えば絶縁シート5aが羽子板部112b及びその裏側のバリBを覆い、絶縁シート5bが羽子板部112a及びその裏側のバリBを覆ってもよい。
【0062】
また、絶縁シート5a,5bの長さは互いに同一であってもよいが、相違してもよい。例えば、一方のセパレータ104上の絶縁シート5bを他方のセパレータ103上の絶縁シート5aの1.1倍程度長くすることにより、巻回体100の巻き回しの精度を向上することが可能である。
【0063】
(アルミ電解コンデンサの製造方法)
次にアルミ電解コンデンサ1の製造方法を述べる。
【0064】
図8は、アルミ電解コンデンサ1の製造工程の一例を示すフローチャートである。アルミ電解コンデンサ1の製造にあたって、陽極箔101、陰極箔102、セパレータ103,104、及び絶縁シート5a,5bなどを準備する。
【0065】
例えば、陽極箔101の厚みは5~200(μm)であり、セパレータの厚みは1~100(μm)である。また、絶縁シート5a,5bの厚みは30(μm)である。陽極箔101及び陰極箔102の各表面には、エッチング処理によりピットが形成されている。陽極箔101には化成処理が施され、エッチング処理された表面上に酸化被膜の誘電体層が形成されている。
【0066】
まず、陽極箔101の位置Paに引き出し電極19aをカシメ接続し、陰極箔102の位置Pbに引き出し電極19bをカシメ接続する(ステップSt1)。次に、陽極箔101、セパレータ103、陰極箔102、及びセパレータ104をこの順に積層して巻回し、外側表面を巻止めテープで固定することで巻回体100を生成する(ステップSt2)。陽極箔101及び陰極箔102はセパレータ103,104を介して巻回され、セパレータ103,104は、陽極箔101及び陰極箔102を挟んで互いに反対側で巻回される。これにより、導電性高分子液及び電解液に浸漬する前段階の電解コンデンサ素子10が生成される。
【0067】
また、巻回体100の生成工程において、セパレータ103上で位置Pa及び位置Pbに対向するように絶縁シート5aを巻回体100に巻回し、セパレータ104上で位置Pa及び位置Pbに対向するように絶縁シート5bを巻回体100に巻回す。絶縁シート5bは、陽極箔101及び陰極箔102を挟んで絶縁シート5aとは反対側に配置される。
【0068】
図9は、巻回体100を生成する巻回装置9の概略構成の一例を示す図である。巻回装置9は、陽極箔101を巻装したリール101Rと、陰極箔102を巻装したリール102Rと、セパレータ103を巻装したリール103Rと、セパレータ104を巻装したリール104Rと、絶縁シート5aを巻装したリール5aRと、絶縁シート5bを巻装したリール5bRとを有する。
【0069】
陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103,104は、ローラ93,95,92,94を介して引き出し方向D1~D4にそれぞれ引き出される。陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103,104は、下流側のクランプローラ96を通過することにより重ね合わせられて、
図3に示されるように巻芯Axの周面に渦巻状に巻き回される。巻芯Axの上流側にはカッター97が配置されている。カッター7は、所定長分の陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103,104が巻回された後、巻回方向に対して略直交方向D5に移動して陽極箔101、陰極箔102、及びセパレータ103,104を切断する。
【0070】
絶縁シート5aはリール5aRから引き出され、ローラ92の上流側に配置されたクランプローラ90によりセパレータ103に重ね合わせられる。絶縁シート5bはリール5bRから引き出され、ローラ94の上流側に配置されたクランプローラ91によりセパレータ104に重ね合わせられる。リール5aRは、絶縁シート5aが陽極箔101の所定領域にだけ重ね合わせられるように絶縁シート5aを送出し、リール5aLは、絶縁シート5bが陰極箔102の所定領域にだけ重ね合わせられるように絶縁シート5bを送出する。
【0071】
図10は、巻回体100を生成する巻回装置9の概略構成の他の例を示す図である。
図10において、
図9と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0072】
巻回装置9は絶縁シート5a,5bの貼付装置98,99を有する。貼付装置98は、ローラ92の上流側に配置され、絶縁シート5aを陽極箔101に貼り付ける。貼付装置99は、ローラ94の上流側に配置され、絶縁シート5bを陰極箔102に貼り付ける。ここで、絶縁シート5a,5bの各貼付面には、例えばアクリル系などの粘着剤が予め塗布されている。このように絶縁シート5a,5bを陽極箔101及び陰極箔102に貼り付けることにより、絶縁シート5a,5bの位置ずれが、より効果的に抑制される。
【0073】
再び
図8を参照すると、巻回体100を例えばリン酸アンモニウム水溶液に浸漬させて陽極箔101に対して所定電圧を印加しながら再化成処理を施して、酸化被膜を修復し、陽極箔101の切り口に表面に誘電体層を形成する(ステップSt3)。
【0074】
次に減圧雰囲気中で、導電性高分子の分散液に巻回体100を浸漬し、巻回体100に分散液を含浸させる(ステップSt4)。なお、導電性高分子の分散液に代えて、導電性高分子を含む溶液に巻回体100を浸漬してもよい。
【0075】
次に巻回体100を乾燥させる(ステップSt5)。このとき、巻回体100内のセパレータ103,104に含浸された導電性高分子液のうち、溶媒である水分は蒸発して導電性高分子層が形成される。
【0076】
次に減圧雰囲気中で電解液を電解コンデンサ素子10に含浸させる(ステップSt6)。次に電解コンデンサ素子10をケース11に収容して封口体12によって封口する(ステップSt7)。このとき、電解コンデンサ素子10から延びる引き出し電極19a,19bは封口体12の貫通孔120に挿通される。その後、アルミ電解コンデンサ1に定格電圧を印加しながらエージング処理を行なってもよい。このようにしてアルミ電解コンデンサ1の製造工程は行われる。
【実施例0077】
上記の製造工程に従ってアルミ電解コンデンサ1のサンプルNo.1~4を10000個ずつ作製した。また、サンプルNo.1~4の評価のため、比較対象のサンプルNo.5を作製した。サンプルNo.5は、サンプルNo.1~4と異なり、
図7に示された形態と同様に、羽子板部112a及びその裏側のバリBと、羽子板部112b及びその裏側のバリBとを個別に覆う合計4枚の絶縁シート6a,6b,7a,7bを有する。これに対し、サンプルNo.1~4は、羽子板部112a,112bを覆う絶縁シート5aと、羽子板部112a,112bの裏側のバリBを覆う絶縁シート5bとの合計2枚を有する。
【0078】
サンプルNo.1~5のケース11の直径は18(mm)とし、サンプルNo.1~5の高さ方向のサイズは40(mm)とした。また、陽極箔101の厚みは120(μm)とし、セパレータ103,104の厚みは30(μm)とし、絶縁シート5a,5b,6a,6bの厚みは40(μm)とした。
【0079】
【0080】
表1は、サンプルNo.1~5の各種のパラメータと評価結果を示す。サンプルNo.1~4の絶縁シート5a,5bの使用数は2枚である。サンプルNo.1の絶縁シート5a,5bの長さLbは20.0(mm)であり、サンプルNo.2の絶縁シート5a,5bの長さLbは24.0(mm)であり、サンプルNo.3の絶縁シート5a,5bの長さLbは80.0(mm)であり、サンプルNo.4のcの長さLbは88.0(mm)である。
【0081】
また、サンプルNo.5の絶縁シート6a,6b,7a,7bの使用数は4枚である。サンプルNo.5の絶縁シート6a,6b,7a,7bの長さLbは10.0(mm)である。また、サンプルNo.1~5の引き出し電極19a,19b間の距離(電極間距離)Laは8.0(mm)である。
【0082】
端子間距離Laに対する絶縁シート5a,5b,6a,6bの長さLbの比(Lb/La)は上記の各数値から算出される。サンプルNo.1のLb/Laは2.5であり、サンプルNo.2のLb/Laは3.0であり、サンプルNo.3のLb/Laは10.0であり、サンプルNo.4のLb/Laは11.0であり、サンプルNo.5のLb/Laは1.25である。
【0083】
サンプルNo.1~5の評価として、ショート不良率(不良率)(%)と、巻回体100の直径(素子径)(mm)とを測定した。不良率はエージング機のショート検出機構により測定し、素子径はノギスにより測定した。
【0084】
サンプルNo.1の不良率は2.15(%)であり、サンプルNo.2の不良率は1.54(%)であり、サンプルNo.3の不良率は0.42(%)であり、サンプルNo.4の不良率は0.37(%)であった。また、サンプルNo.5の不良率は3.61(%)であった。サンプルNo.5は、羽子板部112a,112bとそのバリBに絶縁シート6a,6b,7a,7bが個別に設けられ、その長さLbが最も短いため、絶縁シート6a,6b,7a,7bが位置ずれしやすく、不良率が最も高かった。
【0085】
改善率(%)は、サンプルNo.5の不良率に対するサンプルNo.1~4の不良率の比を示す。サンプルNo.1は、サンプルNo.1~4の中で絶縁シート5a,5bの長さLbが最短であるため、改善率は最も低い40(%)であった。また、サンプルNo.4は、サンプルNo.1~4の中で絶縁シート5a,5bの長さLbが最長であるため、改善率は最も高い90(%)であった。また、サンプルNo.2の改善率は57(%)であり、サンプルNo.3の改善率は88(%)であった。
【0086】
このように絶縁シート5a,5bの長さLbが長いほど、位置ずれは抑制されるが、巻回体100の直径(素子径)が大きくなるため、電解コンデンサ素子10をケース11に収容して封口体12で封口することが難しくなる。サンプルNo.5の素子径は15.70(mm)であった。サンプルNo.1の絶縁シート5a,5bの長さLbは、サンプルNo.1~4の中で最短であるため、その素子径は最小となる15.68(mm)であった。サンプルNo.4の絶縁シート5a,5bの長さLbは、サンプルNo.1~4の中で最長であるため、その素子径は最大となる16.01(mm)であった。また、サンプルNo.2の素子径は15.70(mm)であり、サンプルNo.3の素子径は15.97(mm)であった。
【0087】
径増加率(%)は、サンプルNo.5の素子径に対するサンプルNo.1~4の素子径の比を示す。上記の素子径の測定結果から、サンプルNo.1の径増加率は-0.1(%)であり、サンプルNo.2の径増加率は0(%)であり、サンプルNo.3の径増加率は+1.7(%)であり、サンプルNo.4の径増加率は+2.0(%)であった。
【0088】
改善率及び径増加率の各評価結果に基づきサンプルNo.1~4を判定した。判定は、改善率>50(%)以上、かつ、径増加率<2.0(%)の2条件が満たされる場合、「〇」(優)とし、2条件の一方だけが満たされる場合、「△」(良)とした。上記の基準に従い、サンプルNo.1及びNo.4の判定は「△」とし、サンプルNo.2及びNo.3の判定は「〇」とした。
【0089】
以上より、Lb/Laは、不良率の観点から3.0以上であることが好ましく、素子径の観点から10.0以下であることが好ましい。
【0090】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。