(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016367
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ズームレンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G02B15/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118428
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】荻野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】山浦 義樹
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA06
2H087MA12
2H087NA02
2H087NA14
2H087PA15
2H087PA20
2H087PB18
2H087PB20
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA41
2H087QA45
2H087RA41
2H087RA45
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA71
2H087SA72
2H087SB05
2H087SB06
2H087SB15
2H087SB22
2H087SB24
2H087SB34
2H087SB35
2H087SB36
2H087SB45
(57)【要約】
【課題】 各種諸収差及び像面湾曲に対する必要な補正により良好な画質を得、かつ全体の小型化,軽量化及び低廉化を図るなど、各性能を良好かつ合理的にバランスさせる。
【解決手段】 拡大側Eから、負の屈折力を有する第1レンズ群G1,正の屈折力を有する第2レンズ群G2,正の屈折力を有する第3レンズ群G3,正の屈折力を有する第4レンズ群G4,正又は負の屈折力を有する第5レンズ群G5,正の屈折力を有する第6レンズ群G6,を順次配してなるレンズ光学系100と、第1レンズ群G1と第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズ群G2乃至第5レンズ群G5を独立して光軸方向Dcへ移動させるズーミング調整部Mczを含む光学調整系200とを備えるとともに、第4レンズ群G4の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズ(La…(Lc…))と凹レンズ(Lb…)を光軸方向Dcへ交互に配する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側から縮小側へ順に、第1レンズ群から第6レンズ群までの六つのレンズ群を配してなるズームレンズにおいて、拡大側から縮小側へ、負の屈折力を有する第1レンズ群,正の屈折力を有する第2レンズ群,正の屈折力を有する第3レンズ群,正の屈折力を有する第4レンズ群,正又は負の屈折力を有する第5レンズ群,正の屈折力を有する第6レンズ群,を順次配してなるレンズ光学系と、前記第1レンズ群と第6レンズ群を不動とし、前記第2レンズ群乃至第5レンズ群を独立して光軸方向へ移動させるズーミング調整部を含む光学調整系とを備えるとともに、前記第4レンズ群の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズと凹レンズを光軸方向へ交互に配してなることを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記第4レンズ群は、d線に対するアッベ数をνdとしたとき、以下の〔条件式1〕を満たす正レンズを少なくとも二枚含むことを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
νd>70 … 〔条件式1〕
【請求項3】
前記第6レンズ群は、一枚の単レンズにより構成し、屈折率をndとしたとき、以下の〔条件式2〕を満たすことを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
nd>1.7 … 〔条件式2〕
【請求項4】
前記光学調整系は、前記第1レンズ群のみを光軸方向へ移動させるフォーカシング調整部を備えることを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
【請求項5】
ズーム比は、1.3-1.7倍の範囲に設定することを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
【請求項6】
広角側の半画角は、25-35〔゜〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1又は5記載のズームレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ等の投射光学系を備える光学機器に用いて好適なズームレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタからスクリーン等に画像を投射する投射光学系に備えるズームレンズとしては、特許文献1に記載される投射用ズームレンズ及び特許文献2に記載される投射光学系が知られている。
【0003】
特許文献1の投射用ズームレンズは、高いズーム比、小さいFナンバを持ち、倍率色収差が小さく押さえられ、高いMTF特性、解像力特性を備え、表示デバイス側がテレセントリックである投射用ズームレンズの実現を目的としたものであり、具体的には、拡大側から順に、負の第1レンズ群,正の第2レンズ群,第3レンズ群,第4レンズ群,負の第5レンズ群,正または負の第6レンズ群,正の第7レンズ群を配し、第4,第5レンズ群間に開口絞りを配してなり、変倍に際して第2~第6レンズ群が移動し、広角端から望遠端への変倍時に、第1・第2レンズ群間隔、第1・第3レンズ群間隔、第1・第4レンズ群間隔が、何れも減少するように移動が行なわれ、広角端における全系の焦点距離:fw,第1レンズ群の焦点距離:fl,第2レンズ群の焦点距離:f2,第3レンズ群の焦点距離:f3,第4レンズ群の焦点距離:f4が、1.3<|f|/fw<1.9,0.6<f2/f3<3.5,0.4<f4/f3<3.7を満足するように構成したものである。
【0004】
また、特許文献2の投射光学系は、簡易な構成で、適切な像面湾曲を調整可能な投射光学系の提供を目的としたものであり、具体的には、投射光学系を構成するに際し、光軸上のパワーと最周辺部の子午断面のパワーとが互いに異なる第1レンズと、第1レンズに隣接する第2レンズと、軸外主光線と光軸とが交わる位置に配置された絞りとを有し、第1レンズと第2レンズとの光軸方向における間隔の変化により、投射像の像面湾曲を調整することが可能に構成するとともに、さらに、所定の条件式を満たすように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-200454号公報
【特許文献2】特開2017-126036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した投射用ズームレンズ及び投射光学系をはじめ従来のズームレンズは、次のような解決すべき課題も存在した。
【0007】
即ち、この種のズームレンズを装着したプロジェクタの場合、光学画像を遠方のスクリーンに拡大投射するため、使用するズームレンズには、必要な明るさを確保しつつ、必要なズーム比や画角が要求されるとともに、球面収差,コマ収差,非点収差,像面湾曲等の諸収差に対する必要な補正による良好な画質が要求される。また、ズームレンズは、プロジェクタ本体の前面から前方に突出した状態で支持されるとともに、複数のレンズ群を有するレンズ光学系及びズーミング調整部等の各種調整部を有する光学調整系を備えるため、ズームレンズ全体の小型化,軽量化及び低廉化も要請される。
【0008】
一方、このように要請される各性能は、一部の性能項目を高めれば、他の性能項目が損なわれるなど、相互に相反する関係にもあるため、要請される各性能を高めることに加え、各要請項目、特に、球面収差,コマ収差,非点収差,像面湾曲等の諸収差を如何に良好にバランスさせるかは、この種のズームレンズにとって重要な課題となるが、従来、これらの課題に対して合理的に解決したズームレンズは必ずしも提供されていないのが実情である。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したズームレンズの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、拡大側Eから縮小側Sへ順に、第1レンズ群G1から第6レンズ群G6までの六つのレンズ群G1-G6を配してなるズームレンズ1を構成するに際して、拡大側Eから縮小側Sへ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1,正の屈折力を有する第2レンズ群G2,正の屈折力を有する第3レンズ群G3,正の屈折力を有する第4レンズ群G4,正又は負の屈折力を有する第5レンズ群G5,正の屈折力を有する第6レンズ群G6,を順次配してなるレンズ光学系100と、第1レンズ群G1と第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズ群G2乃至第5レンズ群G5を独立して光軸方向Dcへ移動させるズーミング調整部Mczを含む光学調整系200とを備えるとともに、第4レンズ群G4の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズ(La…(Lc…))と凹レンズ(Lb…)を光軸方向Dcへ交互に配したことを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、第4レンズ群G4は、d線に対するアッベ数をνdとしたとき、νd>70の〔条件式1〕を満たす正レンズLa…(Lc…)を少なくとも二枚含ませることができる。また、第6レンズ群G6は、一枚の単レンズLzにより構成し、屈折率をndとしたとき、nd>1.7の〔条件式2〕を満たすことが望ましい。他方、光学調整系200には、第1レンズ群G1のみを光軸方向Dcへ移動させるフォーカシング調整部Mcfを設けることができる。なお、ズーム比は、1.3-1.7倍の範囲に設定することができるとともに、広角側における半画角は、25-35〔゜〕の範囲に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係るズームレンズ1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 拡大側Eから縮小側Sへ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1,正の屈折力を有する第2レンズ群G2,正の屈折力を有する第3レンズ群G3,正の屈折力を有する第4レンズ群G4,正又は負の屈折力を有する第5レンズ群G5,正の屈折力を有する第6レンズ群G6,を順次配してなるレンズ光学系100と、第1レンズ群G1と第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズ群G2乃至第5レンズ群G5を独立して光軸方向Dcへ移動させるズーミング調整部Mczを含む光学調整系200とを備えるとともに、特に、第4レンズ群G4の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズ(La…(Lc…))と凹レンズ(Lb…)を光軸方向Dcへ交互に配してなるため、必要な明るさを確保しつつ、各種諸収差及び像面湾曲に対する必要な補正により良好な画質を得、かつ全体の小型化,軽量化及び低廉化を図ることができるなど、各性能を良好かつ合理的にバランスさせることができる。
【0014】
(2) 好適な態様により、第4レンズ群G4を構成するに際し、d線に対するアッベ数をνdとしたとき、νd>70の〔条件式1〕を満たす正レンズLa…(Lc…)を少なくとも二枚含ませて構成すれば、適正なアッベ数νdの範囲を確保できるため、特に、軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することができる。
【0015】
(3) 好適な態様により、第6レンズ群G6を構成するに際し、一枚の単レンズLzにより構成し、屈折率をndとしたとき、nd>1.7の〔条件式2〕を満たすように構成すれば、適正な屈折率ndの範囲を確保できるため、テレセントリック光学系のバランスを良好に保つことができることに加え、像面湾曲を良好に補正し、画質性能の向上に寄与できるとともに、最小枚数により構成することにより、ズームレンズ1の全長を短くし、小型化に寄与できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、光学調整系200に、第1レンズ群G1のみを光軸方向Dcへ移動させるフォーカシング調整部Mcfを設ければ、複数枚のレンズにより構成する第1レンズ群G1のみを移動させるフォーカシング調整部Mcfを構築することができるため、フォーカシング調整部Mcfのシンプル化及び小型化、更には、光軸Dc方向に比較的長くなるズームレンズ1の軽量化に寄与できる。加えて、フォーカシング調整時における第1レンズ群G1の移動ストロークを短くしてズームレンズ1の小径化、更には、非点収差,歪曲収差等の諸収差をバランス良く補正して画質性能の向上に寄与できる。
【0017】
(5) 好適な態様により、ズーム比を、1.3-1.7倍の範囲に設定すれば、各性能をバランス良く確保しつつ、ズームレンズ1における必要なズーム比を確保できる。
【0018】
(6) 好適な態様により、広角側の半画角を、25-35〔゜〕の範囲に設定すれば、各性能をバランス良く合理的に確保しつつ、ズームレンズ1における必要な画角を確保できるとともに、ズーム比の確保と併せ、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等の十分な光学性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る実施例1のズームレンズのWIDE側の全体レンズ構成図、
【
図2】同実施例1のズームレンズにおける光学調整系の原理構成図、
【
図3】同実施例1のズームレンズのTELE側の全体レンズ構成図、
【
図4】同実施例1のズームレンズのWIDE側の基準距離の縦収差図、
【
図5】同実施例1のズームレンズのTELE側の基準距離の縦収差図、
【
図6】同実施例2のズームレンズのWIDE側の全体レンズ構成図、
【
図7】同実施例2のズームレンズのTELE側の全体レンズ構成図、
【
図8】同実施例2のズームレンズのWIDE側の基準距離の縦収差図、
【
図9】同実施例2のズームレンズのTELE側の基準距離の縦収差図、
【
図10】同実施例3のズームレンズのWIDE側の全体レンズ構成図、
【
図11】同実施例3のズームレンズのTELE側の全体レンズ構成図、
【
図12】同実施例3のズームレンズのWIDE側の基準距離の縦収差図、
【
図13】同実施例3のズームレンズのTELE側の基準距離の縦収差図、
【
図14】同実施例4のズームレンズのWIDE側の全体レンズ構成図、
【
図15】同実施例4のズームレンズのTELE側の全体レンズ構成図、
【
図16】同実施例4のズームレンズのWIDE側の基準距離の縦収差図、
【
図17】同実施例4のズームレンズのTELE側の基準距離の縦収差図、
【
図18】同実施形態に係るズームレンズの光学特性表
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0021】
まず、本実施形態の実施例1に係るズームレンズ1のレンズ光学系100及び光学調整系200について
図1-
図5を参照して説明する。
【0022】
なお、このズームレンズ1は、プロジェクタに用いる投射レンズ(ズームレンズ)、即ち、投射ズーム光学系に適用することを想定している。
【0023】
図1中、Eはスクリーン等の拡大側を示し、Sは液晶パネル等の画像表示素子となる縮小側(縮小共役側)を示している。したがって、拡大側E(OBJ)が光軸Dc方向の前方となり、縮小側Sが光軸Dc方向の後方となる。
【0024】
レンズ光学系100は、
図1に示すように、拡大側Eから縮小側Sへ順に配した、第1レンズ群G1から第6レンズ群G6までの六つのレンズ群G1,G2,G3,G4,G5,G6を備えるとともに、第6レンズ群G6に対する縮小側Sには、模式図で示したプリズムPrを備える。
【0025】
第1レンズ群G1は、全体で負の屈折力を有し、拡大側Eから順に、拡大側Eに凸面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL1,拡大側Eに凸面を有する負メニスカスレンズを用いた負レンズL2,L3,L4,両凹レンズを用いた負レンズL5,を配して構成する。各レンズL1,L2,L3,L4,L5はいずれも単レンズである。このように、第1レンズ群G1は、五枚のレンズにより構成されるとともに、
図2に示すように、第1レンズ群G1のみを光軸方向Dcへ移動させる光学調整系200におけるフォーカシング調整部Mcfを構築することができるため、フォーカシング調整部Mcfのシンプル化及び小型化、更には、光軸Dc方向に比較的長くなるズームレンズ1の軽量化に寄与できる。加えて、フォーカシング調整時における第1レンズ群G1の移動ストロークを短くしてズームレンズ1の小径化、更には、非点収差,歪曲収差等の諸収差をバランス良く補正して画質性能の向上に寄与できる。
【0026】
第2レンズ群G2は、全体で正の屈折力を有し、拡大側Eから順に、第一接合レンズJ1,第二接合レンズL2を配して構成する。この場合、第一接合レンズJ1は、拡大側Eから順に、拡大側Eに凹面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL6と拡大側Eに凹面を有する負メニスカスレンズを用いた負レンズL7のバルサムレンズにより構成するとともに、第二接合レンズJ2は、拡大側Eから順に、両凹レンズL8と両凸レンズL9のバルサムレンズにより構成する。
【0027】
第3レンズ群G3は、正の屈折力を有する単レンズ、即ち、一枚の両凸レンズを用いた正レンズL10により構成する。
【0028】
一方、第4レンズ群G4は、全体で正の屈折力を有し、基本的な構成として、各レンズを全て単レンズにより構成するとともに、凸レンズ(La,Lc,Le)と凹レンズ(Lb,Ld)を光軸方向Dcへ交互に配して構成する。具体的には、拡大側Eから順に、両凸レンズを用いた正レンズLa,両凹レンズを用いた負レンズLb,両凸レンズを用いた正レンズLc,拡大側Eに凹面を有する負メニスカスレンズを用いた負レンズLd,拡大側Eに凹面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズLeを備える。
【0029】
また、第4レンズ群G4を構成するに際しては、三枚の正レンズLa,Lc,Leの光学条件、即ち、d線に対するアッベ数をνdとしたとき、次の〔条件式1〕を満たすように構成する。
νd>70 … 〔条件式1〕
【0030】
このように、第4レンズ群G4を構成するに際し、〔条件式1〕を満たす正レンズLa,Lc,Leを少なくとも二枚(実施例1は三枚)含ませて構成すれば、適正なアッベ数νdの範囲を確保できるため、特に、軸上色収差と倍率色収差を良好に補正することができる利点がある。
【0031】
第5レンズ群G5は、全体で正又は負の屈折力を有し、実施例1は、拡大側Eから順に、拡大側Eに凹面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL11,両凹レンズL12と両凸レンズL13のバルサムレンズを用いた第三接合レンズJ3,両凸レンズを用いた正レンズL14を配して構成する。
【0032】
第6レンズ群G6は、正の屈折力を有する単レンズ、即ち、一枚の両凸レンズを用いた単レンズ(正レンズ)Lzにより構成する。また、第6レンズ群G6を構成するに際し、屈折率をndとしたとき、次の〔条件式2〕を満たすように構成する。
nd>1.7 … 〔条件式2〕
【0033】
このように、第6レンズ群G6を、〔条件式2〕を満たすように構成すれば、適正な屈折率ndの範囲を確保できるため、テレセントリック光学系のバランスを良好に保つことができることに加え、像面湾曲を良好に補正し、画質性能の向上に寄与できるとともに、最小枚数により構成することにより、ズームレンズ1の全長を短くし、小型化に寄与できる。
【0034】
他方、ズームレンズ1は、
図2に原理構成図で示すズーミング調整部Mcz、及び前述したフォーカシング調整部Mcfを含む光学調整系200を備える。
【0035】
この場合、ズーミング調整部Mczは、第1レンズ群G1と第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズ群G2乃至第5レンズ群G5、即ち、第2レンズ群G2,第3レンズ群G3,第4レンズ群G4,第5レンズ群G5をそれぞれ独立して光軸Dc方向へ移動させる機能を備える。また、フォーカシング調整部Mcfは、五枚のレンズL1-L5により構成される第1レンズ群G1のみを光軸方向Dcへ移動させる機能を備える。
【0036】
[表1]は実施例1に係るズームレンズ1のレンズデータ(面データ)を示す。
【0037】
【0038】
[表1]の面データは、拡大側Eから数えたレンズ面の面番号をiで示し、この面番号iは、
図1に示した符号(数字)に一致する。これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)をそれぞれ示す。nd(i)及びνd(i)はd線(587.56〔nm〕)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚或いは空気空間を示す。なお、曲率半径R(i)と面間隔D(i)の単位は〔mm〕である。曲率半径R(i)のINFINITYは平面である。屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)の空欄は空気であることを示す。
【0039】
図18に、実施例1を含む各実施例に係るズームレンズ1の(a)レンズ条件,(b)光学特性,(c)Fナンバーを示す。実施例1において、(a)レンズ条件は、「G4」(第4レンズ群)の正レンズ「La」のアッベ数νdは「70.4362」、正レンズ「Lc」のアッベ数νdは「81.6087」、正レンズ「Le」のアッベ数νdは「70.4362」であり、いずれのレンズLa,Lc,Leも「νd>70」の〔条件式1〕を満たす。「G6」(第6レンズ群)」の屈折率ndは「1.80610」であり、「nd>1.7」の〔条件式2〕を満たす。
【0040】
また、実施例1の(b)光学特性において、ズーム比は「1.559」倍を得ている。このように、ズームレンズ1のズーム比を、1.3-1.7倍の範囲に設定すれば、各性能をバランス良く確保しつつ、ズームレンズ1における必要なズーム比を確保できる。WIDE(広角側)の半画角は、「31.8」〔゜〕を得ている。このように、ズームレンズ1の半画角を、25-35〔゜〕の範囲に設定すれば、各性能をバランス良く合理的に確保しつつ、ズームレンズ1における必要な画角を確保できるとともに、ズーム比の確保と併せ、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等の十分な光学性能を確保できる。
【0041】
さらに、実施例1の(c)Fナンバーにおいて、広角側(WIDE)のFNoは「1.765、望遠側(TELE)のFNoは「2.16」であり、十分な明るさを確保できる。なお、(b)に示すように、広角側(WIDE)の全系焦点距離fwは「29.91」〔mm〕であり、望遠側(TELE)の全系焦点距離ftは「46.63」〔mm〕である。
【0042】
図1及び
図2は、実施例1に係るズームレンズ1をWIDE側に調整した際における各レンズL1…の光軸Dc方向の位置を示すとともに、
図3は、TELE側に調整した際における各レンズL1…の光軸Dc方向の位置を示す。
【0043】
図4及び
図5は、実施例1に係るズームレンズ1の基準距離OBJ(E)=2932mmにおける縦収差図を示す。
図4はWIDE側、
図5はTELE側を示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(610nm,550nm,460nm),非点収差(550nm),歪曲収差(550nm)を示す。各スケール目盛(1目盛)は、±0.10mm,±0.10mm,±1.0%である。
【0044】
実施例1に係るズームレンズ1は、
図4及び
図5に示すように、いずれの縦収差も、大きな乱れがなく良好な収差特性、即ち、投射性能(光学性能)が得られていることを確認できる。
【0045】
このように、本実施形態(実施例1)に係るズームレンズ1は、基本的な構成として、拡大側Eから縮小側Sへ、負の屈折力を有する第1レンズ群G1,正の屈折力を有する第2レンズ群G2,正の屈折力を有する第3レンズ群G3,正の屈折力を有する第4レンズ群G4,正又は負の屈折力を有する第5レンズ群G5,正の屈折力を有する第6レンズ群G6,を順次配してなるレンズ光学系100と、第1レンズ群G1と第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズ群G2乃至第5レンズ群G5を独立して光軸方向Dcへ移動させるズーミング調整部Mczを含む光学調整系200とを備えるとともに、特に、第4レンズ群G4の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズ(La,Lc,Le)と凹レンズ(Lb,Ld)を光軸方向Dcへ交互に配してなるため、必要な明るさを確保しつつ、各種諸収差及び像面湾曲に対する必要な補正により良好な画質を得、かつ全体の小型化,軽量化及び低廉化を図ることができるなど、各性能を良好かつ合理的にバランスさせることができるズームレンズ1を提供できる。特に、ズームレンズ1における必要な画角を確保できるとともに、ズーム比の確保と併せ、スクリーンに投射するプロジェクタ等の十分な光学性能を確保することができる。
実施例2の第1レンズ群G1は実施例1と同じである。また、実施例2における第2レンズ群G2,第3レンズ群G3,第5レンズ群G5及び第6レンズ群G6は、細部のレンズ特性が異なる点を除いて、基本的なレンズ構成は実施例1と同じとなる。
一方、第4レンズ群G4は、基本的な構成として、各レンズを全て単レンズにより構成するとともに、凸レンズ(La,Lc,Le)と凹レンズ(Lb,Ld)を光軸方向Dcへ交互に配して構成する点は実施例1と同じになるが、次の点が異なる。即ち、実施例1は、正レンズLeを拡大側Eに凹面を有する正メニスカスレンズを用いて構成したが、実施例2は、正レンズLeを両凸レンズを用いて構成した点が異なるとともに、二枚の正レンズLc,Leのみの光学条件を「νd>70」〔条件式1〕を満たすように構成した。なお、ズーミング調整部Mcz及びフォーカシング調整部Mcfを含む光学調整系200も実施例1と同じになる。
また、実施例2の(b)光学特性において、ズーム比は「1.558」倍を得ている。WIDE(広角側)の半画角は、「31.9」〔゜〕を得ている。さらに、実施例2の(c)Fナンバーにおいて、広角側(WIDE)のFNoは「1.74」、望遠側(TELE)のFNoは「2.16」である。なお、(b)光学特性において、広角側(WIDE)の全系焦点距離fwは「30.01」〔mm〕であり、望遠側(TELE)の全系焦点距離ftは「46.76」〔mm〕である。
このように、実施例2に係るズームレンズ1も、本発明に係るズームレンズ1の基本的な構成を備えている。特に、第4レンズ群G4の各レンズを全て単レンズにより構成し、かつ凸レンズ(La,Lc,Le)と凹レンズ(Lb,Ld)を光軸方向Dcへ交互に配するとともに、〔条件式1〕を満たす少なくとも二枚の正レンズLc,Leを含むようにしたため、実施例1と同様の効果を得ることができる。