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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163670
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両のリンク構造
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/04 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
B62K25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079486
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓希
(72)【発明者】
【氏名】工藤 健太
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DD05
3D014DD06
3D014DF12
3D014DF38
(57)【要約】
【課題】衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能にすること。
【解決手段】車体フレーム(11)と車両部品(12)とを連結するリンク機構(51)を備え、リンク機構(51)は、車体フレーム(11)に回動自在に連結される左右のフレーム連結部(52L,52R)と、左右のフレーム連結部(52L,52R)をつなぐクロスメンバ(53)とを備える鞍乗り型車両のリンク構造において、左右一方のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線は、左右他方のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線に対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線が平行でないかの少なくともいずれかである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(11)と車両部品(12)とを連結するリンク機構(51)を備え、前記リンク機構(51)は、前記車体フレーム(11)に回動自在に連結される左右のフレーム連結部(52L,52R)と、前記左右のフレーム連結部(52L,52R)をつなぐクロスメンバ(53)とを備える鞍乗り型車両のリンク構造において、
左右一方のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線は、左右他方のフレーム連結部(52R,52L)の回動軸線に対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線が平行でないかの少なくともいずれかである、
鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項2】
前記車体フレーム(11)と前記左右のフレーム連結部(52L,52R)とはブッシュ(61L、61R)を介して取り付けられる、
請求項1に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項3】
前記ブッシュ(61L、61R)は、周方向で硬度が異なる、
請求項2に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項4】
前記ブッシュ(61L、61R)は、車両上下方向の硬度と、車両前後方向の硬度とが異なる、
請求項3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項5】
前記ブッシュ(61L、61R)は、車両上下方向及び車両前後方向に対して斜めの方向の硬度が異なる、
請求項3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項6】
前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線は、車両前後方向にずれている、
請求項3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項7】
前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線は、車両上下方向にずれている、
請求項3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項8】
前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線は、車両上下方向、及び車両前後方向に対して斜めの方向にずれている、
請求項3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項9】
前記左右のフレーム連結部(52L,52R)は、前記ブッシュ(61L、61R)が挿入される筒部材(55L,55R)を有し、
前記左右一方のフレーム連結部(52L,52R)の回動軸線の少なくとも一部は、車両側面視で、前記左右他方のフレーム連結部(52R,52L)の筒部材(55R,55L)と重なる範囲に位置する、
請求項2乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項10】
前記左右他方のフレーム連結部(52R,52L)の回動軸線の少なくとも一部は、車両側面視で、前記左右一方のフレーム連結部(52L,52R)の筒部材(55L,55R)と重なる範囲に位置する、
請求項9に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項11】
前記クロスメンバ(53)の剛性は、前記左右のフレーム連結部(52L,52R)の剛性よりも低い、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項12】
前記クロスメンバ(53)は、前記リンク機構(51)の回転運動を制御するトーションバースプリングである、
請求項11に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項13】
前記車体フレーム(11)に支持される乗員用のシート(17)を備え、
前記リンク機構(51)は、前記シート(17)の下方に配置される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項14】
前記車体フレーム(11)の前後中央、又は前後中央周辺に、バッテリー若しくは燃料タンク(29)が支持され、
前記リンク機構(51)は、前記バッテリー若しくは前記燃料タンク(29)の後方に配置される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項15】
前記車両部品(12)は、スイングアーム(30)を含み、
前記リンク機構(51)は、前記スイングアーム(30)の前方に配置される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【請求項16】
前記車両部品(12)は、パワーユニット(12)を含み、
前記リンク機構(51)は、前記パワーユニット(12)に連結される、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り型車両には、車体フレームにユニットスイングエンジンを揺動自在に連結するリンク機構を備える構成を採用したものがある。この種のリンク機構は、車体フレームに回動自在に連結される左右のフレーム連結部と、左右のフレーム連結部をつなぐクロスメンバと、車体フレームに当接してリンク機構の揺動範囲を規制するストッパーと、を備えている(例えば特許文献1)。ストッパーは、例えばラバー等の衝撃緩和材で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-076820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成は、左右のフレーム連結部の回動軸線が同一線上に並ぶため、リンク機構の回動量を規制する構成を設けない場合には、リンク機構が車体フレームに当接するまで回動してしまう可能性がある。そのため、リンク機構が車体フレームへ当接することを回避するための衝撃緩和材からなるストッパーが必要であり、当該ストッパーを省略することが困難であった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車体フレームと車両部品とを連結するリンク機構を備え、前記リンク機構は、前記車体フレームに回動自在に連結される左右のフレーム連結部と、前記左右のフレーム連結部をつなぐクロスメンバとを備える鞍乗り型車両のリンク構造において、左右一方のフレーム連結部の回動軸線は、左右他方のフレーム連結部の回動軸線に対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、前記左右のフレーム連結部の回動軸線が平行でないかの少なくともいずれかである、鞍乗り型車両のリンク構造。
【発明の効果】
【0006】
衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
図2】パワーユニットを周辺構成と共に示す左側面図である。
図3】パワーユニットを周辺構成と共に左上方から示す斜視図である。
図4】リンク機構を示す図である。
図5】リンク機構を複数方向から示す図である。
図6】リンク機構の動作状態を模式的に示す図である。
図7】比較例に係る鞍乗り型車両のリンク機構を周辺構成と共に示す斜視図である。
図8】比較例のリンク機構の斜視図である。
図9】ブッシュの仕様の一例を示す図である。
図10】ブッシュの仕様の一例を示す図である。
図11】左右のフレーム連結部の回動軸線が平行でない場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム30と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18と、ヘッドパイプ18から後下方に延びるダウンフレーム19と、ダウンフレーム19の下部から後方に延びる左右一対のロアフレーム20と、各ロアフレーム20から上方に延びる左右一対のリアフレーム21とを備える。シート17は、リアフレーム21に支持される。
【0011】
フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル22は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0012】
パワーユニット12は、リアフレーム21の下方を車両前後方向に延びる。
パワーユニット12は、後輪15を揺動自在に支持するスイングアーム30と後輪15を駆動するエンジン31とが一体に設けられるユニットスイングエンジンである。
エンジン31は、内燃機関である。エンジン31は、クランク軸を収納するクランクケース32と、クランクケース32から前方に延出するシリンダー部33とを備える。シリンダー部33は、クランクケース32から前方に延出し、左右のリアフレーム21間に位置する。なお、パワーユニット12は、エンジン31を有する構成に限定されず、公知のパワーユニットを広く適用でき、例えば、バッテリーによって駆動されるモータを有する構成でもよい。
【0013】
スイングアーム30は、クランクケース32の左右一方側(本実施形態では左側)から後方に延出し、後輪15の左右一方を通って後方に延びる。後輪15は、スイングアーム30の後端部に設けられた車軸15aに支持される。
スイングアーム30は、プーリー及びVベルトを用いた無段変速機を収容し、この無段変速機を介してエンジン31の駆動力を後輪15に伝達する。また、後輪15とリアフレーム21との間にはリアサスペンション35が介挿される。
【0014】
鞍乗り型車両10は、鞍乗り型車両10の各部を覆う車体カバー25と、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップフロア28と、パワーユニット12が使用する燃料を蓄える燃料タンク29とを備える。なお、パワーユニット12がモータを有する構成の場合、燃料タンク29に代えて、例えば、駆動モータのエネルギー源となるバッテリー、又は制御装置等が配置される。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップフロア28は、シート17よりも下方に設けられる。燃料タンク29は、ステップフロア28の下方で車体フレーム11に支持されることによって、車体フレーム11の前後中央周辺に支持される。なお、燃料タンク29を車体フレーム11の前後中央に配置してもよい。
【0015】
図2は、パワーユニット12を周辺構成と共に示す左側面図である。図3は、パワーユニット12を周辺構成と共に左上方から示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、パワーユニット12は、パワーユニット12の前上方に設けられるリンク機構51を介して、車体フレーム11の後部を構成する左右一対のリアフレーム21に揺動自在に連結される。図1に示すように、パワーユニット12は、乗員用のシート17の下方、かつ、燃料タンク29の後方に配置されており、リンク機構51もシート17の下方、かつ、燃料タンク29の後方に配置されている。また、リンク機構51は、スイングアーム30の前方に配置される。
リンク機構51は、本発明の「車体フレームと車両部品とを連結するリンク機構」の一例であり、パワーユニット12は、本発明の「車両部品」の一例である。
【0016】
図3に示すように、リンク機構51は、左右のリンク部材52L,52Rと、左右のリンク部材52L,52Rをつなぐクロスメンバ53と、を備える。左側のリンク部材52Lの前部は、車幅方向に延びる左側の回動軸線JLを基準にして回動自在に左側のリアフレーム21に連結される。また、右側のリンク部材52Rの前部は、車幅方向に延びる右側の回動軸線JRを基準にして回動自在に右側のリアフレーム21に連結される。
左右のリンク部材52L,52Rは、本発明の「左右のフレーム連結部」の一例である。
【0017】
左側の回動軸線JLは、右側の回動軸線JRに対し、車両上下方向及び車両前後方向にずれている。本実施形態では、左側の回動軸線JLと右側の回動軸線JRとは互いに平行であるが、平行でなくてもよい。
左右のリンク部材52L,52Rの後部は、車幅方向に延びる軸線JB(図2参照)を基準にして回動自在にパワーユニット12に連結される。軸線JBは、パワーユニット12に対する左右のリンク部材52L,52Rの回動軸線である。
【0018】
図4及び図5はリンク機構51を示す図である。具体的には、図4には、リンク機構51の斜視図を示すと共に、符号αでリンク機構51の左側面図を示している。図5には、リンク機構51を複数方向から示している。図5中の符号LCは、車幅中心を示している。なお、車幅中心LCは、リンク機構51の車幅方向の中心位置と一致している。
図4及び図5に示すように、左側のリンク部材52Lは、車幅方向に延びる筒部材55Lを有する。筒部材55Lの中心軸は、左側の回動軸線JLと一致する。筒部材55Lには、ブッシュ61Lが挿入され、このブッシュ61Lの中央孔を貫通する左側の揺動軸62L(図5参照)を介して筒部材55Lと左側のリアフレーム21とが回動自在に連結される。
【0019】
ブッシュ61Lは、弾性部材で形成され、ラバーブッシュ及びゴムブッシュ等と称される任意のブッシュを適用可能である。このブッシュ61Lによって左側の揺動軸62Lを左側の回動軸線JLに沿って保持すると共に、ブッシュ61Lが弾性変形することによって、左側の揺動軸62Lを左側の回動軸線JRに対して所定範囲内で傾けることが可能になる。
【0020】
さらに、左側のリンク部材52Lは、筒部材55Lから後側かつ下方に延出する複数のフランジ部57L(以下、左側フランジ57Lと表記する)を有し、これら左側フランジ部57Lを介してクロスメンバ53の左側端部が接合される。左側フランジ部57Lには、左側の回動軸線JLと平行に延びる軸線JBに沿って延びる孔部58Lが形成される。この孔部58Lに通された不図示の揺動軸を介して左側フランジ部57Lとパワーユニット12とが回動自在に連結される。
【0021】
右側のリンク部材52Rは、車幅方向に延びる筒部材55Rを有する。筒部材55Rの中心軸は、上記の右側の回動軸線JRと一致する。この筒部材55Lには、ブッシュ61Rが挿入され、このブッシュ61Rの中央孔を貫通する右側の揺動軸62R(図5参照)を介して筒部材55Lと左側のリアフレーム21とが回動自在に連結される。
【0022】
ブッシュ61Rは、弾性部材で形成され、ラバーブッシュ及びゴムブッシュ等と称される任意のブッシュを適用可能である。このブッシュ61Rによって右側の揺動軸62Rを右側の回動軸線JRに沿って保持すると共に、ブッシュ61Rが弾性変形することによって、右側の揺動軸62Rを右側の回動軸線JRに対して所定範囲内で傾けることが可能になる。
【0023】
右側のリンク部材52Rにも、左側のリンク部材52Lと同様に、フランジ部57R(以下、右側フランジ部57Rと表記する)を介してクロスメンバ53が接合される。クロスメンバ53の右側部分には、後方かつ下方に延びる他のフランジ部58R(以下、右側フランジ部58Rと表記する)が接合される。右側フランジ部58Rに、軸線JBに沿って延びる孔部59Rが形成され、この孔部59Rに通された不図示の揺動軸を介して右側フランジ部57Rとパワーユニット12とが回動自在に連結される。
【0024】
クロスメンバ53は、車幅中心LCに対して直交する方向に延びるクロスメンバ主部53Aを備える。さらに、クロスメンバ53は、クロスメンバ主部53Aと左側のリンク部材52Lとをつなぐクロスメンバ左部53Lと、クロスメンバ主部53Aと右側のリンク部材52Rとをつなぐクロスメンバ右部53Rとを備える。
クロスメンバ主部53Aは、車幅方向に延びる筒部材55Lであり、かつ、クロスメンバ左部53L及びクロスメンバ右部53Rよりも車幅方向に長い部材である。そのため、クロスメンバ主部53Aは、クロスメンバ53のうち、相対的に弾性変形しやすい部位となっており、例えば、周方向へのねじれや、軸線方向に沿った曲げ(撓みとも称する)等が相対的にしやすい部位となっている。なお、クロスメンバ53の形状や構造は変更してもよい。
【0025】
図5に示すように、本構成では、左側のリンク部材52L,52Rの車体フレーム11に対する左側の回動軸線JLと、右側のリンク部材52L,52Rの車体フレーム11に対する右側の回動軸線JRとが、同一線上ではなく、車両上下方向及び車両前後方向にずれている。
左右の回動軸線JL,JRが、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれている場合、リンク部材52L,52Rを含むリンク機構51の一部が弾性変形しないと、リンク機構51が回動することは困難である。また、リンク機構51が弾性変形した場合、元の状態に戻ろうとする復元力が発生するので、左右の回動軸線JL,JRが同一軸線上の場合よりもリンク機構51が回動し難くなる。
【0026】
図4及び図5に示すように、左側の回動軸線JLは、車両側面視で、右側のリンク部材52Rの筒部材55Rと重なる範囲に位置するので、車両側面視で、左側の筒部材55Lを右側の筒部材55Rに近づけて配置できる。さらに、右側の回動軸線JRは、車両側面視で、左側のリンク部材52Lの筒部材55Lと重なる範囲に位置するので、車両側面視で、右側の筒部材55Rを左側の筒部材55Lに近づけて配置できる。これらにより、左右のリンク部材52L,52Rの配置に必要なスペースの大型化を抑制でき、つまり、リンク機構51の配置に必要なスペースの大型化を抑制できる。なお、左右の筒部材55R,55Lは、同径でもよいし、同径でなくてもよい。
【0027】
ここで、リンク機構51の一部が弾性変形する、とは、具体的には、クロスメンバ53のねじれや曲げ(特に、クロスメンバ主部53Aのねじれや曲げ)、及び、ブッシュ61L,61Rの撓みが発生した状態である。なお、クロスメンバ53及びブッシュ61L,61R以外の部分が弾性変形してもよく、例えば、左右のリンク部材52L,52Rの一部が弾性変形してもよい。
また、リンク機構51が回動する、とは、リンク機構51全体が回動する場合に限定されず、左右のリンク部材52L,52Rの一方が回動する場合も含んでいる。
【0028】
本構成では、リンク機構51の一部の弾性変形を伴ってリンク機構51が回動するので、リンク機構51の回動範囲を規制することができ、リンク機構51の一部が車体フレーム11に当接するような過剰な回動を規制することが可能である。
なお、本構成において、クロスメンバ53の剛性は、左右のリンク部材52L,52Rの剛性よりも低く、リンク機構51の中でも相対的に弾性変形しやすい部位を構成する。本構成のクロスメンバ53は、左右のリンク部材52L,52Rをつなぐつなぎ部材、及び、リンク機構51の剛性を向上させる補強部材であると共に、リンク機構51の回転運動を制御するために使用されるばねの一種であるトーションバースプリングである。
【0029】
図6は、リンク機構51の動作状態を模式的に示す図である。図6には、鞍乗り型車両10が、ステップS1で示す「通常時」の状態から、ステップS2で示す「リアサスペンション35が縮んだ状態」へ姿勢変化する場合を示している。
ステップS1の状態は、鞍乗り型車両10が自重でリアサスペンション35が縮んだ状態(いわゆる1G状態)であり、例えば、水平の路面を加速も減速もしていない走行状態である。
図6には、ステップS1の状態について、リンク機構51を周辺構成と共に左側方から示す図とA-A断面を示している。ステップS1の状態の場合、リンク機構51の各部は弾性変形していない状態か、実質的に弾性変形していないとみなせる程度の僅かな弾性変形が生じた状態である。そのため、クロスメンバ53に着目すると、クロスメンバ主部53Aの軸線JCは、車幅中心LCに対して直交する方向(車幅方向と一致)に直線状に延びている。
【0030】
ステップS1の状態に対し、後輪15に荷重が入力すると(ステップS1A)、左右のリンク部材52L,52Rのうちの一方(本構成では相対的に下側に位置する左側のリンク部材52L)が車体フレーム11に対して回動し始め(ステップS1B)、ステップS2で示す「リアサスペンション35が縮んだ状態」へ鞍乗り型車両10が姿勢変化する。
この場合、左右のリンク部材52L,52Rの回動軸線JL,JRが同一線上ではないので、他方のリンク部材に相当する右側のリンク部材52Rが回動しない。右側のリンク部材52Rが回動しないので、作用反作用の法則により、リンク機構51の左側に反作用による力が作用する。これによって、クロスメンバ53のねじれや曲げ、ブッシュ61L,61Rの撓み等といったリンク機構51の弾性変形を伴いつつリンク機構51が回動し、リアサスペンション35が縮んだ状態となる。
【0031】
この弾性変形では、左右の回動軸線JL,JRのずれを吸収するようにリンク機構51が変形するので、変形の程度によっては左右のリンク部材52L,52Rの両方が回動する場合もある。
図6には、ステップS2の状態について、リンク機構51を周辺構成と共に左方から示す図とB-B断面を示している。図6のステップS2では、クロスメンバ53のうちのクロスメンバ主部53Aがねじれに加えて、車幅中心LCに対して直交する方向から斜めに撓んでいる場合を例示している。
【0032】
後輪15に入力する荷重が大きいほど、リンク機構51の弾性変形量が大きくなり、リンク機構51が元の状態に戻ろうとする復元力も大きくなるので、リンク機構51の回動が抑制される。これにより、リンク機構51の一部が車体フレーム11に当接するような過剰な回動が規制される。
【0033】
なお、リアサスペンション35を縮める力が作用した場合に限定されず、リアサスペンション35を伸ばす力が作用した場合についても、リンク機構51の一部の弾性変形を伴ってリアサスペンション35が伸びた状態になる。そのため、リアサスペンション35が伸びる場合も、リンク機構51の回動範囲が規制され、リンク機構51の一部が車体フレーム11に当接するような過剰な回動が規制される。
このように、リンク機構51の過剰な回動が規制されるので、リンク機構51が車体フレーム11へ当接することを回避するための衝撃緩和材からなるストッパーを省略できる。つまり、本構成は、リンク機構51の揺動範囲を規制するための衝撃緩和材からなるストッパーを省略できる。
【0034】
次いで、本実施形態のリンク機構51の比較例について説明する。
図7は、比較例に係る鞍乗り型車両10Xのリンク機構51Xを周辺構成と共に左上方から示す斜視図である。図8は、比較例のリンク機構51Xの斜視図であり、符号βでリンク機構51Xの左側面図である。
鞍乗り型車両10Xは、リンク機構51Xを除いて、本実施形態の鞍乗り型車両10と同じ構成である。そのため、同様の部材は同一の符号を付して重複説明を省略する。
【0035】
比較例のリンク機構51Xでは、左側のリンク部材52Lの車体フレーム11に対する左側の回動軸線JLと、右側のリンク部材52L,52Rの車体フレーム11に対する右側の回動軸線JRとが、同一線上である。そのため、リンク機構51Xの回動量を規制する構成を設けない場合、リンク機構51Xが車体フレーム11に当接するまで容易に回動する。したがって、リンク機構51Xの車体フレーム11への直接の当接を回避するための衝撃緩和材からなるストッパーである第1ストッパー91及び第2ストッパー92が必要である。
【0036】
具体的には、比較例では、左側のリンク部材52Lが、上方に延びる上アーム部93と、下方に延びる下アーム部94とを一体に備える。そして、上アーム部93の前面に、ラバー等の衝撃緩和材からなる第1ストッパー91を備えると共に、下アーム部94の前面に、ラバー等の衝撃緩和材からなる第2ストッパー92を備える。
【0037】
リンク機構51Xは、後輪15から入力する荷重が増大すると、同一軸線上の回動軸線JL,JRを基準にしてリアサスペンション35を縮める側に回動する。この場合、入力する荷重によっては、リンク機構51Xが車体フレーム11に当接するまで回動するおそれがあるものの、第1ストッパー91が、車体フレーム11(リアフレーム21、又は、リアフレーム21に設けた別部材)に当接するので、リンク機構51の車体フレーム11への直接の当接が回避される。これにより、第1ストッパー91によって、リンク機構51のリアサスペンション35縮み側への回動範囲が規制される。
【0038】
また、リンク機構51Xは、後輪15から入力する荷重が減少すると、同一軸線上の回動軸線JL,JRを基準にしてリアサスペンション35を伸ばす側に回動する。この場合、入力する荷重によっては、リンク機構51が車体フレーム11に当接するまで回動するおそれがあるものの、第2ストッパー92が、車体フレーム11(リアフレーム21、又はリアフレーム2121に設けた別部材)に当接するので、リンク機構51の車体フレーム11への直接の当接が回避される。これにより、第2ストッパー92により、リンク機構51のリアサスペンション35伸び側への回動範囲が規制される。
【0039】
このように、比較例では、リンク機構51の回動範囲を規制するために、第1ストッパー91及び上アーム部93からなる部分(図8に示す部分Ar1)を設けると共に、第2ストッパー92及び下アーム部94からなる部分(図8に示す部分Ar2)を設ける必要がある。
これに対し、本構成では、部分Ar1、Ar2を設ける必要がないので、図4等に示すように、リンク機構51を小型化することができ、かつ、部品点数を低減できる。リンク機構51を小型化できる分、リンク機構51の配置自由度が向上し、また、レイアウトスペースがより制約される小型車両にリンク機構51を搭載しやすくなる。また、リンク機構51の部品点数が低減するので、リンク機構51の組立性の向上、及びコスト低減に有利である。
【0040】
上記図2図6では、リンク機構51の左側の回動軸線JLは、右側の回動軸線JRに対し、車両上下方向及び車両前後方向にずれている場合を例示したが、これに限定されず、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれていればよい。左側の回動軸線JLが、右側の回動軸線JRに対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれていれば、リンク機構51の回動を抑制し、衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能である。
【0041】
また、左側の回動軸線JLと右側の回動軸線JRとの車両上下方向及び車両前後方向のオフセット量については、オフセット量を大きくすることによって、リンク機構51の回動量を大きくし、オフセット量を小さくすることによって、リンク機構51の回動量を小さくすることが可能である。
また、左右のブッシュ61L、61Rの硬度を調整することによっても、リンク機構51の回動量を調整することが可能である。例えば、硬度が低いブッシュ61L、61Rに交換することによって、リンク機構51の回動量を大きくし、硬度が高いブッシュ61L、61Rに交換することによって、リンク機構51の回動量を小さくすることが可能である。
【0042】
但し、いずれの方法も、リンク機構51の回動量を調整するには、左右の回動軸線JL,LRのオフセット量が異なるリンク機構51を製作したり、硬度が異なるブッシュ61L、61Rを用意したりする必要がある。また、オフセット量を多くするほど広いレイアウトスペースが必要になり、小型車両にリンク機構51を搭載できなくなるおそれが生じる。
本構成では、ブッシュ61L、61Rに、周方向の固さが異なるものを採用し、これらブッシュ61L、61Rの向きを変更することによって、容易にリンク機構51の回動量を調整可能である。
【0043】
図9及び図10は、左右の回動軸線JL,JRの位置関係に応じたブッシュ61L、61Rの向きの一例を示す図である。具体的には、図9及び図10に示す仕様ST1~ST8は、左右のブッシュ61L、61Rの向きを規定するものである。
ここで、図9及び図10において、符号RDは、左右の回動軸線JL,JRの位置関係から特定される左右のリンク部材52L,52Rが回動しやすい方向を示しており、以下、「リンク回動方向RD」と表記する。また、各仕様ST1~ST8のブッシュ61L、61Rの「HARD」は、ブッシュ61L、61Rの硬度が相対的に高い方向(固い方向に相当)を示し、「SOFT」は、ブッシュ61L、61Rの硬度が相対的に低い方向(柔らかい方向に相当)を示している。ブッシュ61L、61Rは、「HARD」の方向と「SOFT」の方向とが直交する環形状のブッシュである。
【0044】
仕様ST1では、左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらし、ブッシュ61L、61Rを、車両上下方向の硬度が高く、車両前後方向の硬度が低い向きに配置している。
左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらすので、左右のリンク部材52L,52Rの配置に必要な車両前後方向のスペースを低減することができる。そのため、車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両に好適である。
左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらした場合、リンク回動方向RDが車両前後方向に沿う方向となる。リンク回動方向RDにおいてブッシュ61L、61Rの硬度は低いので、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓みやすくなる。
これにより、仕様ST1にすることによって、左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に大きく設定できる。
【0045】
仕様ST2では、左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらし、ブッシュ61L、61Rを、車両上下方向の硬度が低く、車両前後方向の硬度が高い向きに配置している。
仕様ST2では、仕様ST1に対し、ブッシュ61L、61Rの向きが90°異なるだけであり、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓み難くなる。
これにより、仕様ST2にすることによって、左右の回動軸線JL,JRを車両上下方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に小さく設定できる。
【0046】
仕様ST3では、左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらし、ブッシュ61L、61Rを、車両上下方向の硬度が低く、車両前後方向の硬度が高い向きに配置している。
左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらすので、左右のリンク部材52L,52Rの配置に必要な車両上下方向のスペースを低減することができる。そのため、車両上下方向のレイアウトスペースが制約される小型車両に好適である。
左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらした場合、リンク回動方向RDが車両上下方向に沿う方向となる。リンク回動方向RDにおいてブッシュ61L、61Rの硬度は低いので、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓みやすくなる。
これにより、仕様ST3にすることによって、左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に大きく設定できる。
【0047】
仕様ST4では、左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらし、ブッシュ61L、61Rに、車両上下方向の硬度が高く、車両前後方向の硬度が低いものを採用している。
仕様ST4では、仕様ST4に対し、ブッシュ61L、61Rの向きが90°異なるだけであり、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓み難くなる。
これにより、仕様ST4にすることによって、左右の回動軸線JL,JRを車両前後方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に小さく設定できる。
【0048】
仕様ST5では、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両後方に対して斜めの方向にずらし、ブッシュ61L、61Rを、車両前上方から車両後下方に沿う斜めの方向の硬度が低く、車両前下方から車両後上方に沿う斜めの方向の硬度が高い向きに配置している。
左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両後方に対して斜めの方向にずらすので、車両上下方向及び車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両に好適である。
また、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両後方に対して斜めの方向にずらした場合、リンク回動方向RDが車両前上方から車両後下方に沿う斜め方向となる。リンク回動方向RDにおいてブッシュ61L、61Rの硬度は低いので、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓みやすくなる。
これにより、仕様ST5にすることによって、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両後方に対して斜めの方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に大きく設定できる。
【0049】
仕様ST6では、仕様ST5に対し、ブッシュ61L、61Rの向きが90°異なるだけであり、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓み難くなる。
これにより、仕様ST6にすることによって、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両後方に対して斜めの方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に小さく設定できる。
【0050】
仕様ST7では、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両前方に対して斜めの方向にずらし、ブッシュ61L、61Rを、車両前下方から車両後上方に沿う斜めの方向の硬度が低く、車両前上方から車両後下方に沿う斜めの方向の硬度が高い向きに配置している。
左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両前方に対して斜めの方向にずらすので、車両上下方向及び車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両に好適である。
左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両前方に対して斜めの方向にずらした場合、リンク回動方向RDが車両前下方から車両後上方に沿う方向となる。リンク回動方向RDにおいてブッシュ61L、61Rの硬度は低いので、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓みやすくなる。
これにより、仕様ST7にすることによって、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両前方に対して斜めの方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に大きく設定できる。
【0051】
仕様ST8では、仕様ST7に対し、ブッシュ61L、61Rの向きが90°異なるだけであり、左右のリンク部材52L,52Rがリンク回動方向RDに回動する際にブッシュ61L、61Rが撓み難くなる。
これにより、仕様ST8にすることによって、左側の回動軸線JLに対し、右側の回動軸線JRを車両上方及び車両前方に対して斜めの方向にずらした構成で、リンク機構51の過剰な回動を規制しながら、リンク機構51の回動量を相対的に小さく設定できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、所定の車両部品に相当するパワーユニット12とを連結するリンク機構51を備え、リンク機構51は、車体フレーム11に回動自在に連結される左右のフレーム連結部として機能する左右のリンク部材52L,52Rと、左右のリンク部材52L,52Rをつなぐクロスメンバ53とを備える。この構成の下、左右一方のリンク部材52Lの回動軸線JLは、左右他方のリンク部材52Rの回動軸線JRに対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているので、リンク機構51の弾性変形を伴ってリンク機構51が回動することになり、リンク機構51の過剰な回動を規制できる。これにより、リンク機構51が車体フレーム11へ当接することを回避するための衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能になる。
【0053】
また、車体フレーム11と左右のリンク部材52L,52Rとはブッシュ61L、61Rを介して取り付けられるので、ブッシュ61L、61Rの撓みを利用してリンク機構51を回動させやすくなる。また、ブッシュ61L、61Rの硬度調整によってリンク機構51の回動量を調整することも可能である。
【0054】
また、ブッシュ61L、61Rを、周方向で硬度が異なるものにすることによって、リンク機構51の回動量を大きくするようにブッシュ61L、61Rを配置したり、リンク機構51の回動量を小さくするようにブッシュ61L、61Rを配置したりすることが可能になる。これにより、リンク機構51の回動量を容易に調整できる。
具体的には、図9の仕様1~2に例示するように、左右の回動軸線JL,JRが車両上下方向にオフセットするときは、ブッシュ61L、61Rの車両前後方向の硬度を低く、又は高くするようにブッシュ61L、61Rを配置することによって、リンク機構51の回動量を大きくしたり、小さくしたりすることが可能である。図9の仕様3~4に例示するように、左右の回動軸線JL,JRが車両前後方向にオフセットするときは、ブッシュ61L、61Rの車両上下方向の硬度を低く、又は高くするようにブッシュ61L、61Rを配置することで、リンク機構51の回動量を大きくしたり、小さくしたりすることが可能である。
【0055】
また、図10の仕様5~8に例示するように、左右の回動軸線JL,JRが車両上下方向及び車両前後方向に対して斜めの方向にオフセットするときは、ブッシュ61L、61Rの車両上下方向及び車両前後方向に対して斜めの方向の硬度を低く、又は高くするように配置することによって、リンク機構51の回動量を大きくしたり、小さくしたりすることが可能である。
なお、ブッシュ61L、61Rの両方が、周方向で硬度が異なる場合を例示したが、ブッシュ61L、61Rのいずれか一方だけが周方向で硬度が異なってもよい。この場合、周方向で硬度が異なるブッシュを、仕様1~8に例示するように配置することで、リンク機構51の回動量を容易に調整できる。
【0056】
また、左右のリンク部材52L,52Rの回動軸線JL,JRを、車両前後方向にずらすことによって、左右のリンク部材52L,52Rの配置に必要な車両上下方向のスペースを低減することができる。これにより、車両上下方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構51を配置しやすくなる。この場合、図9の仕様3~4に例示したように、ブッシュ61L、61Rの車両上下方向の硬度に応じて、リンク機構51の回動量を容易に調整できる。
【0057】
また、左右のリンク部材52L,52Rの回動軸線JL,JRを、車両上下方向にずらすことによって、左右のリンク部材52L,52Rの配置に必要な車両前後方向のスペースを低減することができる。これにより、車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構51を配置しやすくなる。この場合、図9の仕様1~2に例示したように、ブッシュ61L、61Rの車両前後方向の硬度に応じて、リンク機構51の回動量を容易に調整できる。
【0058】
また、左右のリンク部材52L,52Rの回動軸線JL,JRを、車両上下方向、及び車両前後方向に対して斜めの方向にずらすことによって、車両上下方向及び車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構51を配置しやすくなる。この場合、図10の仕様5~8に例示したように、ブッシュ61L、61Rの車両上下方向、及び車両前後方向に対して斜めの方向の硬度に応じて、リンク機構51の回動量を容易に調整できる。
【0059】
また、左側のリンク部材52Lの回動軸線JLは、車両側面視で、右側のリンク部材52Rの筒部材55Rと重なる範囲に位置するので、車両側面視で、左側の筒部材55Lを右側の筒部材55Rに近づけて配置でき、リンク機構51の大型化を抑制できる。
また、右側のリンク部材52Rの回動軸線JRは、車両側面視で、左側のリンク部材52Lの筒部材55Lと重なる範囲に位置するので、車両側面視で、右側の筒部材55Rを左側の筒部材55Lに近づけて配置でき、リンク機構51の大型化を抑制できる。これにより、レイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構51を搭載しやすくなる。
【0060】
また、クロスメンバ53の剛性は、左右のリンク部材52L,52Rの剛性よりも低いので、リンク機構51の左右の回動軸線JL,JRをずらした構成でも、クロスメンバ53が弾性変形することによって、リンク機構51が回動しやすくなる。
しかも、クロスメンバ53は、リンク機構51の回転運動を制御するトーションバースプリングであるので、クロスメンバ53によって、リンク機構51をスムーズに回動させたり、過剰な回動を規制したりしやすくなる。また、クロスメンバ53の形状調整等によって、リンク機構51の回動量を調整することも可能である。
【0061】
また、リンク機構51は、乗員用のシート17の下方に配置されるので、シート17に着座した乗員や積載物の重量により、リンク機構がダイレクトに回動されやすくなるが、ストッパーを設けなくてもリンク機構の過度な回動を抑制できる。
また、車体フレーム11の前後中央、又は前後中央周辺に、燃料タンク29若しくはバッテリーからなる重量物を支持し、リンク機構51は、その重量物の後方に配置されるので、重量物が鞍乗り型車両10の重心付近に配置されてマスの集中化を図ることができ、かつ、リンク機構51が回動した際に重量物の上下動を抑え、乗り心地を向上しやすくなる。
【0062】
また、リンク機構51は、スイングアーム30の前方に配置されるので、リンク機構51を基準にしてスイングアーム30が回動する構成で、ストッパーを設けなくてもリンク機構51の過度な回動を抑制できる。
また、リンク機構51は、パワーユニット12に連結されるので、重量物であるパワーユニット12をリンク機構51に連結した構成で、ストッパーを設けなくてもリンク機構51の過度な回動を抑制できる。
【0063】
また、上述の実施形態では、左右一方のリンク部材52Lの回動軸線JLを、左右他方のリンク部材52Rの回動軸線JRに対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずらすことによって、リンク機構51の弾性変形を伴ってリンク機構51が回動するようにする場合を説明したが、これに限定されない。
例えば、図11に例示するように、左右の回動軸線JL,JRが平行でない場合も、リンク機構51の弾性変形を伴ってリンク機構51が回動することになり、リンク機構51の過剰な回動を規制できる。なお、図11には、リンク機構51については回動軸線JL,JR,JBだけを示している。図11では、左側の回動軸線JLが、左側にいくほど車両後方となる傾きに設定され、右側の回動軸線JRが、右側にいくほど車両後方となる傾きに設定される場合を例示しており、換言すると、左右の回動軸線JL,JRは、車両後方に向けて末広がりである。左右の回動軸線JL,JRが平行でない場合は、車両後方に向けて末広がりの態様に限定されず、任意の方向に向けて末広がりの態様でもよいし、末広がり以外の任意の態様でもよい。
【0064】
すなわち、本発明は、左右の回動軸線JL,JRが、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、左右の回動軸線JL,JRが平行でないかの少なくともいずれかであることによって、リンク機構51の過剰な回動を規制でき、リンク機構51が車体フレーム11へ当接することを回避するための衝撃緩和材からなるストッパーを省略可能である。
また、リンク機構51の回動を適度に規制できる範囲で、左右の回動軸線JL,JRをずらす量(オフセット量と言うこともできる)や、傾ける量(角度と言うこともできる)は任意に設定すればよい。
【0065】
また、左右の回動軸線JL,JRが平行でない場合についても、左右のブッシュ61L、61Rの硬度を調整したり、周方向の固さが異なる左右のブッシュ61L、61Rの向きを上記のように変更したりすることによって、リンク機構51の回動量を容易に調整可能である。
また、左右の回動軸線JL,JRが平行でない場合に、左側の回動軸線JLの少なくとも一部を、車両側面視で、右側のリンク部材52Rの筒部材55Rと重なる範囲に位置させてもよいし、右側の回動軸線JRの少なくとも一部を、車両側面視で、左側のリンク部材52Lの筒部材55Lと重なる範囲に位置させたりしてもよい。これらにより、リンク機構51の大型化を抑制し、レイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構51を搭載しやすくなる。
【0066】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様を示すものである。本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。
例えば、左右のリンク部材52L,52Rの形状や構造を変更してもよいし、車体フレーム11の形状や構造を変更してもよい。また、本発明を、図1に示すスクータ型の自動二輪車のリンク構造に適用する場合を説明したが、スクータ型の自動二輪車に限定されず、任意の鞍乗り型車両のリンク構造に本発明を適用してもよい。さらに、本発明を、パワーユニット以外の車両部品と車体フレーム11とを連結するリンク構造に適用してもよい。
【0067】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0068】
(構成1)車体フレームと車両部品とを連結するリンク機構を備え、前記リンク機構は、前記車体フレームに回動自在に連結される左右のフレーム連結部と、前記左右のフレーム連結部をつなぐクロスメンバとを備える鞍乗り型車両のリンク構造において、左右一方のフレーム連結部の回動軸線は、左右他方のフレーム連結部の回動軸線に対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、前記左右のフレーム連結部の回動軸線が平行でないかの少なくともいずれかである、鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右一方のフレーム連結部の回動軸線は、左右他方のフレーム連結部の回動軸線に対し、車両上下方向及び車両前後方向の少なくともいずれかにずれているか、左右のフレーム連結部の回動軸線が平行でないかの少なくともいずれかであるので、リンク機構の弾性変形を伴ってリンク機構が回動することになり、リンク機構の過剰な回動を規制できる。これにより、リンク機構が車体フレームへ当接することを回避するための衝撃緩和材からなるストッパーを省略することが可能になる。
【0069】
(構成2)前記車体フレームと前記左右のフレーム連結部とはブッシュを介して取り付けられる、構成1に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、ブッシュの撓みを利用してリンク機構を回動させやすくなる。
【0070】
(構成3)前記ブッシュは、周方向で硬度が異なる、構成2に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、リンク機構の回動量を大きくするようにブッシュを配置したり、リンク機構の回動量を小さくするようにブッシュを配置したりすることが可能になり、リンク機構の回動量を容易に調整できる。
【0071】
(構成4)前記ブッシュは、車両上下方向の硬度と、車両前後方向の硬度とが異なる、構成3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右のフレーム連結部の回動軸線が車両上下方向にオフセットするときは、ブッシュの車両前後方向の硬度を低く、又は高くするようにブッシュを配置することによって、リンク機構の回動量を調整できる。また、左右のフレーム連結部の回動軸線が車両前後方向にオフセットするときは、ブッシュの車両上下方向の硬度を低く、又は高くするようにブッシュを配置することによって、リンク機構の回動量を調整できる。
【0072】
(構成5)前記ブッシュは、車両上下方向及び車両前後方向に対して斜めの方向の硬度が異なる、構成3に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右のフレーム連結部の回動軸線が車両上下方向にオフセットするときは、ブッシュの車両上下方向及び車両前後方向に対して斜めの方向の硬度を低く、又は高くするようにブッシュを配置することによって、リンク機構の回動量を調整できる。
【0073】
(構成6)前記左右のフレーム連結部の回動軸線は、車両前後方向にずれている、構成1乃至4のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右のフレーム連結部の配置に必要な車両上下方向のスペースを低減することができ、車両上下方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構を配置しやすくなる。
【0074】
(構成7)前記左右のフレーム連結部の回動軸線は、車両上下方向にずれている、構成1乃至3、及び5のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右のフレーム連結部の配置に必要な車両前後方向のスペースを低減することができ、車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構を配置しやすくなる。
【0075】
(構成8)前記左右のフレーム連結部の回動軸線は、車両上下方向、及び車両前後方向に対して斜めの方向にずれている、構成1乃至3、及び5のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、車両上下方向及び車両前後方向のレイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構を配置しやすくなる。
【0076】
(構成9)前記左右のフレーム連結部は、前記ブッシュが挿入される筒部材を有し、前記左右一方のフレーム連結部の回動軸線の少なくとも一部は、車両側面視で、前記左右他方のフレーム連結部の筒部材と重なる範囲に位置する、構成2乃至8のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、車両側面視で、左右一方の筒部材を左右他方の筒部材に近づけて配置でき、リンク機構の大型化を抑制し、レイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構を搭載しやすくなる。
【0077】
(構成10)前記左右他方のフレーム連結部の回動軸線の少なくとも一部は、車両側面視で、前記左右一方のフレーム連結部の筒部材と重なる範囲に位置する、構成9に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、車両側面視で、左右他方の筒部材を左右一方の筒部材に近づけて配置でき、リンク機構の大型化を抑制し、レイアウトスペースが制約される小型車両にリンク機構を搭載しやすくなる。
【0078】
(構成11)前記クロスメンバの剛性は、前記左右のフレーム連結部の剛性よりも低い、構成1乃至10のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、左右のフレーム連結部の回動軸線をずらした構成でも、クロスメンバが弾性変形することによって、リンク機構が回動しやすくなる。
【0079】
(構成12)前記クロスメンバは、リンク機構の回転運動を制御するトーションバースプリングである、構成1乃至11のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、クロスメンバによって、リンク機構をスムーズに回動させたり、過剰な回動を規制したりしやすくなる。
【0080】
(構成13)前記車体フレームに支持される乗員用のシートを備え、前記リンク機構は、前記シートの下方に配置される、構成1乃至12のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、シートに着座した乗員や積載物の重量により、リンク機構がダイレクトに回動されやすくなるが、ストッパーを設けなくてもリンク機構の過度な回動を抑制できる。
【0081】
(構成14)前記車体フレームの前後中央、又は前後中央周辺に、バッテリー若しくは燃料タンクが支持され、前記リンク機構は、前記バッテリー若しくは前記燃料タンクの後方に配置される、構成1乃至13のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、バッテリー若しくは燃料タンクからなる重量物が鞍乗り型車両の重心付近に配置されてマスの集中化を図ることができ、かつ、リンク機構が回動した際に重量物の上下動を抑え、乗り心地を向上しやすくなる。
【0082】
(構成15)前記車両部品は、スイングアームを含み、前記リンク機構は、前記スイングアームの前方に配置される、構成1乃至14のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、リンク機構を基準にしてスイングアームが回動する構成で、ストッパーを設けなくてもリンク機構の過度な回動を抑制できる。
【0083】
(構成16)前記車両部品は、パワーユニットを含み、前記リンク機構は、前記パワーユニットに連結される、構成1乃至15のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両のリンク構造。
この構成によれば、重量物であるパワーユニットをリンク機構に連結した構成で、ストッパーを設けなくてもリンク機構の過度な回動を抑制できる。
【符号の説明】
【0084】
10,10X 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
12 パワーユニット(車両部品)
19 ダウンフレーム
20 ロアフレーム
21 リアフレーム
35 リアサスペンション
51,51X リンク機構
52L,52R リンク部材(フレーム連結部)
53 クロスメンバ
61L、61R ブッシュ
62L,62R 揺動軸
91 第1ストッパー
92 第2ストッパー
93 上アーム部
94 下アーム部
JL 左側の回動軸線
JR 右側の回動軸線
JB 軸線(パワーユニットに対するリンク部材の回動軸線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11