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特開2024-163671ポリタンク、ポリタンクの製造方法、及び、プラスチック製品のリサイクル方法
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  • 特開-ポリタンク、ポリタンクの製造方法、及び、プラスチック製品のリサイクル方法 図1
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  • 特開-ポリタンク、ポリタンクの製造方法、及び、プラスチック製品のリサイクル方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163671
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】ポリタンク、ポリタンクの製造方法、及び、プラスチック製品のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/18 20060101AFI20241115BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B65D1/18 111
B65D1/18 BSF
B65D1/18 BRH
B65D1/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079488
(22)【出願日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年7月14日 下記ウェブサイトを通じて公開 「https://www.shimadzu.co.jp/news/press/-061jc7x4d1abiin.html」
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ッ松 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】林田 祟
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BB01
3E033CA01
3E033CA11
3E033DA03
3E033DE02
3E033FA03
3E033GA02
(57)【要約】
【課題】リサイクルポリエチレンを用いたポリタンク及びその製造方法、並びにプラスチック製品を有効利用するリサイクル方法を提供する。
【解決手段】ポリタンクは、ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて作製されたものである。樹脂組成物は、ポリエチレンの総量に対して45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含む。ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含む。第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンは、一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて作製されたポリタンクであって、
前記樹脂組成物は、前記ポリエチレンの総量に対して45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンである、ポリタンク。
【請求項2】
前記第1ポリエチレンは、高密度ポリエチレンであり、かつ、バージンポリエチレンであり、
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、リサイクルポリエチレンであり、
前記樹脂組成物中の低密度ポリエチレンの含有量は、前記ポリエチレンの総量に対して10質量%以上である、請求項1に記載のポリタンク。
【請求項3】
前記第2ポリエチレンは、プラスチック梱包材に含まれるポリエチレンである、請求項2に記載のポリタンク。
【請求項4】
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、
前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、かつ、
前記上面部が部分的に突出した第1突出部及び第2突出部、並びに、前記第1突出部と前記第2突出部とを繋ぐ取っ手を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の上面は、湾曲面である、請求項2に記載のポリタンク。
【請求項5】
前記第1突出部は、前記上面部の一部と、前記上面部の幅方向に延びる1つの端部に連なる前記周壁部の一部と、によって形成されている、請求項4に記載のポリタンク。
【請求項6】
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、
前記底面部と前記周壁部とによって形成される頂部のうちの少なくとも1つは、平面状の面を有するように面取りされている、請求項2に記載のポリタンク。
【請求項7】
前記ポリタンクは、廃液回収用の使い捨てポリタンクである、請求項1に記載のポリタンク。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリタンクの製造方法であって、
前記樹脂組成物を成形する工程を含む、ポリタンクの製造方法。
【請求項9】
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルポリエチレンである、請求項8に記載のポリタンクの製造方法。
【請求項10】
プラスチック製品のリサイクル方法であって、
ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてポリタンクを得る工程と、
前記ポリタンクに廃液を回収して貯留する工程と、
前記貯留する工程で使用した前記ポリタンクを廃棄する工程と、を含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンであり、
前記リサイクルポリエチレンは、前記プラスチック製品から得られるポリエチレンである、プラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項11】
前記プラスチック製品は、プラスチック梱包材であり、
前記第1ポリエチレンは、高密度ポリエチレンであり、かつ、バージンポリエチレンであり、
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、前記プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルポリエチレンである、請求項10に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、前記ポリエチレンの総量に対して10質量%以上45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含む、請求項11に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項13】
さらに、前記プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルよってポリエチレンを得る工程を含む、請求項11又は12に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項14】
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、
前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、かつ、
前記上面部が部分的に突出した第1突出部及び第2突出部、並びに、前記第1突出部と前記第2突出部とを繋ぐ取っ手を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の上面は、湾曲面である、請求項11又は12に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項15】
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、
前記底面部と前記周壁部とによって形成される頂部のうちの少なくとも1つは、平面状の面を有するように面取りされている、請求項11又は12に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【請求項16】
前記廃棄する工程は、前記貯留する工程で使用した前記ポリタンクを再利用することなく廃棄する、請求項11又は12に記載のプラスチック製品のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリタンク、ポリタンクの製造方法、及び、プラスチック製品のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水、燃料、及び液状の化学薬品等の液状物を保存するための容器として、合成樹脂を用いて形成されたポリタンクが知られている。特許文献1には、環境保全への配慮から、廃棄燃料タンクに由来する廃棄高密度ポリエチレンを用いて、燃料タンクを作製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-502506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリタンクには剛性等の強度が要求されるため、特許文献1に記載されているように、高密度ポリエチレン(硬質ポリエチレン)を用いてポリタンクが作製されることが多い。一方、包装材や容器として用いられるプラスチック製品には、低密度ポリエチレン(軟質ポリエチレン)が用いられることもある。そのため、ポリタンクとは異なるプラスチック製品をリサイクルしてポリタンクを製造する場合、プラスチック製品に含まれるポリエチレンの種類を考慮する必要がある。
【0005】
本発明は、リサイクルポリエチレンを用いたポリタンク及びその製造方法、並びにプラスチック製品を有効利用するリサイクル方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて作製されたポリタンクであって、
前記樹脂組成物は、前記ポリエチレンの総量に対して45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンである、ポリタンクに関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、プラスチック製品のリサイクル方法であって、
ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてポリタンクを得る工程と、
前記ポリタンクに廃液を回収して貯留する工程と、
前記貯留する工程で使用した前記ポリタンクを廃棄する工程と、を含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンであり、
前記リサイクルポリエチレンは、前記プラスチック製品に含まれるポリエチレンである、プラスチック製品のリサイクル方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リサイクルポリエチレンを用いたポリタンク及びその製造方法、並びにプラスチック製品を有効利用するリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るポリタンクを模式的に示す斜視図である。
図2図1に示すポリタンクの上面を模式的に示す上面図である。
図3図1に示すポリタンクの側面を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
(ポリタンク)
図1は、本発明の一実施形態に係るポリタンクを模式的に示す斜視図である。ポリタンク1は、ポリエチレン(以下、「PE」ともいう。)を含む樹脂組成物(以下、「PE組成物」ともいう。)を用いて作製されたPE製の容器である。ポリタンク1は、その内部に液状物等の内容物を貯留する貯留空間を有することができる。ポリタンク1は、その形状を保持可能な自立強度を有し、貯留空間に内容物が貯留されていてもされていなくても、その形状を保持するように自立している。ポリタンクは、好ましくはPE組成物のブロー成形品である。
【0011】
PE組成物は、樹脂成分としてPEを含む。PEは、エチレンに由来する構成単位の含有割合がすべての繰り返し構成単位に対して50モル%以上である重合体をいう。PE中のエチレンに由来する構成単位の含有割合は、70モル%以上であってもよく、80モル%以上であってもよく、90モル%以上であってもよい。上記の含有割合は、例えば核磁気共鳴法(NMR)によって測定することができる。
【0012】
PEは、エチレンの単独重合体であってもよく、エチレンとエチレンと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。エチレンと共重合可能な単量体としては、α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンは、炭素数が3以上20以下のα-オレフィンが挙げられ、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、及び6-メチル-1-ヘプテン等が挙げられる。
【0013】
PEの含有量は、PE組成物中の全樹脂成分に対して、85質量%以上100質量%以下であってもよく、90質量%以上99質量%以下であってもよく、95質量%以上98質量%以下であってもよく、また100質量%であってもよい。PE組成物は、PE以外の樹脂成分を含んでいてもよく、例えばPE以外のポリプロピレン等のポリオレフィンを含んでいてもよい。
【0014】
PE組成物は、PEの総量に対して45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレン(以下「LDPE」ともいう。)を含む。PE組成物中のLDPEの含有量は、PEの総量に対して、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよく、また、通常5質量%以上であり、10質量%以上であってもよく、15質量%以上であってもよい。PE組成物中のLDPEは、後述するバージンポリエチレン(以下「バージンPE」ともいう。)であってもよく、リサイクルポリチレン(以下「リサイクルPE」ともいう。)であってもよく、これらの両方であってもよい。
【0015】
PE製のポリタンクはHDPEを用いて作製されることが多い。これに対し、後述するリサイクルPEを用い、HDPEに加えてLDPEを含むPE組成物を用いて作製したポリタンク1は、PEとしてバージンPEのみを含むPE組成物を用いて得られたポリタンクに比較すると、剛性等の強度及び耐薬品性等が低下することがある。リサイクルPEを含むPE組成物を用いる場合であっても、LDPEの含有量が上記した範囲内であることにより、ポリタンク1の強度の低下を抑制することができる。後述するように、ポリタンク1は使い捨てポリタンクとして用いられ得るが、LDPEの含有量を上記の範囲内とすることにより、使い捨てポリタンクとしての使用に耐え得る十分な強度及び耐薬品性を確保することができる。
【0016】
PEは、下記に示す条件[a]及び条件[b]を満たす第1ポリエチレン(以下、「第1PE」ともいう。)及び第2ポリエチレン(以下、「第2PE」ともいう。)を含む。
[a]第1PE及び第2PEのうちの一方が高密度ポリエチレン(以下「HDPE」ともいう。)であり、他方がLDPEである。
[b]第1PE及び第2PEのうちの一方がバージンPEであり、他方がリサイクルPEである。
【0017】
条件[a]及び条件[b]を満たす第1PE及び第2PEの具体的な組み合わせとしては、下記に示す[i]又は[ii]が挙げられる。
[i]第1PEは、HDPEであり、かつ、バージンPEであり、
第2PEは、LDPEであり、かつ、リサイクルPEである。
[ii]第1PEは、LDPEであり、かつ、リサイクルPEであり、
第2PEは、HDPEであり、かつ、バージンPEである。
【0018】
第1PEは、1種のPEであってもよいが、上記した条件[a]及び条件[b]を満たす2種以上のPEの混合物であってもよい。第2PEも同様に、1種のPEであってもよいが、上記した条件[a]及び条件[b]を満たす2種以上のPEの混合物であってもよい。
【0019】
本明細書においてHDPEは、密度が0.941g/cm以上であるものをいい、0.941g/cm以上0.970g/cm以下であることができる。本明細書においてLDPEは、密度が0.941g/cm未満であるものをいい、0.910g/cm以上0.940g/cm以下であってもよく、0.91g/cm以上0.92g/cm以下であってもよい。LDPEは、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」ともいう。)であってもよく、LLDPEの密度は、上記したLDPEの密度の範囲内であればよいが、0.918g/cm以上0.925g/cm以下であってもよい。PEの密度は、JIS K7112のD法(密度勾配管法、23℃)に準拠して測定することができる。
【0020】
バージンPEは、未使用のPEであり、リサイクルされていないPEをいう。バージンPEは、石油由来のPEであってもよく、バイオマスを原料として製造されたバイオマス由来のPEであってもよい。バイオマス由来のPEは、サトウキビ等の植物から得たバイオエタノールを脱水して製造したエチレンをモノマーとして用いたものであってもよく、トール油又はパーム油を分解して得たエチレンをモノマーとして用いたものであってもよい。
【0021】
リサイクルPEは、使用済みのPEをリサイクル(再生利用)したものであり、例えば溶融成形等の加工によって得られた製品(プラスチック製品)を用いて得られるPEである。ここでいう溶融成形には、原料としてのPEを提供するためにペレット状に加工する溶融成形は含まない。リサイクルPEは、メカニカルリサイクルによって得られたPEであってもよく、ケミカルリサイクルによって得られたPEであってもよく、メカニカルリサイクル及びケミカルリサイクルを併用して得られたPEであってもよい。
【0022】
メカニカルリサイクルは、化学反応を伴わずにPEを再生する方法である。メカニカルサイクルでは例えば、プラスチック製品を、選別、粉砕、及び洗浄して、異物及び汚染物質を除去した後に、ペレット化又は再結晶化等を行い、ポリタンク1の原料(PE組成物)として使用できる形態(ペレット又は粉体等)とすることにより、リサイクルPEを得ることができる。
【0023】
ケミカルリサイクルは、化学反応を伴ってプラスチック製品等からリサイクルPEを生成する方法である。例えば、プラスチック製品を化学的に分解してエチレン等のモノマー得、これを重合することにより、リサイクルPEを得ることができる。あるいは、プラスチック製品又は食用油等の廃棄物をガス化し、得られた一酸化炭素及び水素を含む合成ガスから触媒を用いてエタノール等のアルコール類を得、このアルコール類を転化したエチレンを用いてPEを得てもよい。
【0024】
リサイクルPEは、メカニカルリサイクルによって得られたPEであることが好ましい。リサイクルPEは、プラスチック製品に含まれるPEであることが好ましく、ポリタンク以外のプラスチック製品に含まれるPEであることがより好ましく、プラスチック梱包材に含まれるPEであることがさらに好ましい。プラスチック梱包材に含まれるPEは、LDPEであることが好ましい。
【0025】
PE組成物は、上記条件[a]及び条件[b]を満たす第1PE及び第2PEを含む。これにより、廃棄物となったプラスチック製品から得られるPEを有効利用してポリタンク1を作製することができるため、プラスチック製品の廃棄量を低減することができる。
【0026】
第1PE及び第2PEは、上記条件[i]を満たすことが好ましい。条件[i]を満たす場合、PE組成物中のLDPEの含有量は、PEの総量に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよい。LDPEの含有量が上記の範囲内であることにより、PE組成物中のリサイクルPEの含有量を増やすことができるため、廃棄されるプラスチック製品の廃棄量を低減して、リサイクル効率を向上することができる。
【0027】
第1PE及び第2PEが上記条件[i]を満たす場合、第2PEは、プラスチック製品であるプラスチック梱包材に含まれるLDPEであってもよい。プラスチック梱包材としては、ストレッチフィルム、及び、梱包の際に用いられる緩衝材等が挙げられる。緩衝材は、気泡緩衝材及びエアークッション等のように、樹脂フィルムにより形成され、気体が封入される気体室を有するプラスチック緩衝材である。第2PEは、1種類のプラスチック梱包材に含まれるLDPEであってもよく、2種類以上のプラスチック梱包材に含まれるLDPEの混合物であってもよい。プラスチック梱包材は、工場等の製造現場において多量に排出されて廃棄されているため、有効利用することが求められる。プラスチック梱包材は柔軟性を有するため、LDPEを用いて作製されていることが多い。そのため、プラスチック梱包材に含まれるLDPEを再利用して、ポリタンク1の原料として用いることにより、廃棄されるプラスチック梱包材を有効利用することができる。
【0028】
第1PE及び第2PEの合計含有量は、PE組成物中のPEの総量に対して、85質量%以上100質量%以下であってもよく、90質量%以上99質量%以下であってもよく、95質量%以上98質量%以下であってもよく、また100質量%であってもよい。PE組成物に含まれるPEは、第1PE及び第2PE以外の他のPEを含んでいてもよい。例えば、第1PE及び第2PEが上記条件[i]を満たす場合、リサイクルPEであるHDPE及びバージンPEであるLDPEのうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。第1PE及び第2PEが上記条件[ii]を満たす場合、バージンPEであるHDPE及びリサイクルPEであるLDPEのうちの少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0029】
PE組成物は、樹脂成分以外に、1種又は2種以上の添加剤及び充填剤等を含んでいてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、光安定剤、着色剤、顔料、染料、紫外線吸収剤等が挙げられる。充填剤としては、タルク、マイカ等が挙げられる。
【0030】
上記したように、ポリタンク1の内部の貯留空間に貯留される内容物は、公知のポリエチレン製のポリタンクに貯留することができる内容物であれば特に制限されず、例えば液状物であってもよい。液状物としては、水、燃料、液状の化学薬品、及びこれらの混合物等が挙げられ、廃液であってもよい。化学薬品としては、アンモニア、カ性ソーダ、水酸化カリウム、アセチレン、イソプロピルアルコール、クエン酸、酢酸、亜硝酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、クレオソート油、フッ化アルミニウム、これらのうちの1以上と水とを含む液状物等が挙げられる。
【0031】
ポリタンク1は、廃液回収用の使い捨てポリタンクであってもよく、例えば使用済みの化学薬品等の廃液を回収した後に廃棄されるものであってもよい。使い捨てポリタンクは、一度使用した後に廃棄されるものであってもよく、例えば廃液を貯留した後に再利用することなく、焼却等によって廃棄するものであってもよい。化学薬品の廃液を貯留したポリタンクは通常、再使用されずに廃棄されるため、ポリタンク1は、特に化学薬品の廃液回収用の使い捨てポリタンクとして好適に用いることができる。
【0032】
リサイクルPEは、バージンPEに比べると、溶融成形等による熱履歴の回数の違い等から物性(特性)が低下している場合がある。そのため、PEとしてバージンPEのみを含むPE組成物を用いて得られたポリタンク(以下、「バージンPEのポリタンク」ともいう。)に比べると、リサイクルPEを含むPE組成物を用いて得られたポリタンクは、強度及び耐薬品性等の諸特性が低下することがある。しかし、ポリタンク1を使い捨てポリタンクとして使用する場合には、バージンPEのポリタンクと同程度の特性を有していなくても、使い捨て使用に耐え得る特性を有していればよい。上記したようにPE組成物中のLDPEの含有量を調整して作製されたポリタンク1は、リサイクルPEを含んでいても使い捨てポリタンクとしての使用に耐え得る程度に十分な特性を有することができる。また、廃棄されるプラスチック製品をそのまま廃棄せず、ポリタンク1の原料として有効利用した上で廃棄されるため、リサイクル効率を向上することもできる。
【0033】
(ポリタンクの構造)
次に、図面に基づいてポリタンクの構造をより詳細に説明する。図2は、図1に示すポリタンクの上面を模式的に示す上面図である。図3は、図1に示すポリタンクの側面を模式的に示す側面図である。
【0034】
図1に示すように、ポリタンク1は、例えば全体形状が略直方体形状又は略立方体形状である。ポリタンク1の容量は、3Lであってもよく、4Lであってもよく、5Lであってもよく、10Lであってもよく、20Lであってもよい。
【0035】
ポリタンク1は、貯留空間を形成する容器本体10を有し、さらに容器本体10が有する口部11に取り付け可能な蓋部(図示せず)を有することができる。口部11は、ポリタンク1の内部空間である貯留空間に内容物を注入したり、貯留空間の内容物をポリタンク1の外部に排出したりするために用いられる。口部11は、容器本体10に設けられていれば、後述する上面部20、底面部12、及び周壁部13のうちのいずれに設けてもよいが、上面部20に設けることが好ましい。容器本体10が有する口部11は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。蓋部は、口部11を開閉可能に設けられ、口部11を覆った状態で口部11に係止するものであってもよい。蓋部を口部11に係止する方法は特に限定されず、例えば螺着、嵌合、及び凹部と凸部とによる係止が挙げられる。
【0036】
容器本体10は、上面部20、底面部12、及び、上面部20と底面部12とを繋ぐ周壁部13を有し、これらが貯留空間を形成するように一体的に成形されていてもよい。ポリタンク1の底面部12は、ポリタンク1を床又は地面に置くときに床又は地面に接する面であり、貯留空間を挟んで底面部12と対向し、上面に位置する面が上面部20である。例えば、図1に示すように略直方体形状のポリタンク1では、周壁部13は、幅方向Wに平行な一対の壁部13a,13bと、壁部13a,13bを繋ぐ一対の壁部13c,13dとを有することができる(図1図2)。
【0037】
壁部13a,13bの面の幅方向の長さ(壁部13cと壁部13dとの間の距離であり、壁部13c,13dの厚みを含む。)は、例えば13cm以上17cm以下とすることができ、14cm以上16cm以下であってもよく、15cmであってもよい。壁部13c,13dの面の幅方向の長さ(壁部13aと壁部13bとの間の距離であり、壁部13a,13bの厚みを含む。)は、例えば22cm以上26cm以下とすることができ、23cm以上25cm以下とすることができ、24cmであってもよい。周壁部13の高さは、例えば26cm以上30cm以下とすることができ、27cm以上29cm以下であってもよく、28cmであってもよい。周壁部13の高さは、底面部12と上面部20との間の距離をいい(底面部12及び上面部20の厚みを含む。)、上面部20は、後述する第1突出部21及び第2突出部22が突出を開始する位置(第1突出部21及び第2突出部22が突出していない位置)を基準とする。
【0038】
上面部20、底面部12、及び周壁部13(壁部13a~13d)は、それぞれ独立して、単層構造であってもよく多層構造であってもよいが、いずれも単層構造であることが好ましい。周壁部13の厚みは、例えば1mm以上5mm以下であってもよく、1.2mm以上4mm以下であってもよく、1.3mm以上3.5mm以下であってもよい。
【0039】
容器本体10は、上記したPE組成物を成形することにより形成することができ、例えば、ブロー成形により容器本体10を形成することができる。容器本体10は、角部が面取りされたR形状を有することが好ましい。角部は2つの面(例えば、上面部20と壁部13b、底面部12と壁部13c)が合流する部分で形成される領域をいう。一方、底面部12と周壁部13とによって形成される頂部のうちの少なくとも1つは、平面状の面(以下、「カット面」ともいう)18を有するように面取りされていることが好ましい(図1及び図3)。頂部とは、図1に示すように全体形状が略直方体形状又は略立方体形状である場合、その頂点を含む部分いい、3つの面が合流する部分で形成される頂点部分を含む領域をいう。底面部12と周壁部13とによって形成される頂部は、底面部12と隣り合う2つの壁部(例えば、壁部13bと壁部13c)とが合流する部分で形成される頂点部分を含む領域である。カット面18は、R形状を有するように面取りされた頂部(すなわち、丸みを帯びた形状のコーナー部)を、平面状に加工した面であってもよい。容器本体10において、頂部のうちの少なくとも1つの頂部がカット面18を有するように面取りされていればよいが、底面部12と周壁部13とによって形成されるすべての頂部がカット面18を有するように面取りされていることが好ましい。
【0040】
PE組成物はLDPEを含むため、成形加工時に流動しやすい。そのため、LDPEを含まずHDPEを含む組成物を用いた場合に比較すると、PE組成物が金型に定着しにくくなり、金型のポリタンクの角部及び頂部を形成する領域において特に定着しにくくなる。金型内でPE組成物が定着しにくくなると、成形加工によって得られたポリタンクの厚みにばらつきが生じてポリタンクの強度及び耐薬品性等の特性が低下したり、外観形状が低下することがある。本実施形態のポリタンク1では、上記のように、容器本体10の角部がR形状を有するように面取りされ、また、カット面18を有するように頂部が面取りされている。これにより、角部及び頂部の角度を、面取り前よりも緩やかな角度にすることができるため、金型内でのPE組成物を良好に定着させやすく、ポリタンク1に必要な厚みを確保しやすくなる。
【0041】
カット面18は、頂部が3つの直線状の辺によって形成され、この3つの辺が集まる部分に頂点が形成されると仮定した場合に、頂部の頂点から上面部20の方向に3cm以上5cm以下(好ましくは3cm以上4cm以下)の範囲内にある1地点、及び、頂部の頂点から当該頂部に連なる底面部12の2辺に沿った方向にそれぞれ3cm以上5cm以下(好ましくは3cm以上4cm以下)の範囲内にある2地点を結ぶ面をカットするように形成することが好ましい。頂部の頂点から3cm以上の地点でカットすることによりPE組成物が金型に定着しやすくなり、5cm以下の地点でカットすることにより、ポリタンク1を床又は地面に置いたときの安定性を確保することができる。
【0042】
容器本体10は、上面部20が部分的に突出した第1突出部21及び第2突出部22を有し、この第1突出部21と第2突出部22とを繋ぐ取っ手24を有することができる。第1突出部21及び第2突出部22は、容器本体10の内部(貯留空間)側から外部に向けて突出している。第1突出部21及び第2突出部22は、その内部が空洞であり、貯留空間に連通していてもよい。取っ手24の内部も空洞であり、第1突出部21及び第2突出部22の内部空間に連通していてもよい。
【0043】
第1突出部21及び第2突出部22は、周壁部13のうちの壁部13aに隣接する2つの壁部13c,13dを上面部20側で繋ぎ、かつ、上面部20の幅方向W全体にわたって突出するように設けることができる。これにより、第1突出部21及び第2突出部22は、それぞれ独立して、壁部13c,13dに連なるように設けられる。第1突出部21と第2突出部22とは、上面部20を平面視でみたときに(図2)、互いに平行に形成されていてもよく、その形状は同じであってもよく異なっていてもよい。
【0044】
第1突出部21及び第2突出部22の上面は、湾曲面であることが好ましい。第1突出部21及び第2突出部22の上面は、ポリタンク1を上面部20側からみたときに確認できる第1突出部21及び第2突出部22の表面をいう。第1突出部21及び第2突出部22の上面は、図1に示すように上面全体が曲面であり、平坦面を含んでいないことが好ましく、図3に示すポリタンク1を壁部13aからみた側面図において、直線状部分を有さず、全体が弓形に湾曲した形状であることが好ましい。
【0045】
第1突出部21は、上面部20の一部と、上面部20の幅方向Wに延びる1つの端部に連なる周壁部13の一部(図1及び図2では、壁部13aの上面部20側の部分)と、によって形成することができる。このとき、容器本体10の壁部13a側の外面では、第1突出部21と壁部13aとが段差のない面(面一)に形成され、その表面は平坦面であってもよい。第1突出部21の上面は壁部13c,13dの外面に連なるように設けられ、第1突出部21の上面と壁部13c,13dの外面とは、段差なく連続的に延在する連続面(面一)に形成されていることが好ましい。
【0046】
第2突出部22は、例えば図1及び図2に示すように、上面部20の中央部に設けることができる。例えば口部11を上面部20に設ける場合、口部11を壁部13b側に設け、口部11よりも壁部13a側に第2突出部22を形成することができる。第2突出部22の上面も、第1突出部21の上面と同様に、壁部13c,13dの外面に連なるように設けられ、第2突出部22の上面と壁部13c,13dの外面とは、段差なく連続的に延在する連続面(面一)に形成されていることが好ましい。第1突出部21及び第2突出部22の湾曲面の形状は、同じであってもよく異なっていてもよい。
【0047】
上記したように、LDPEを含むPE組成物は成形加工時に流動しやすいため、金型に定着しにくくなることがある。第1突出部21及び第2突出部22の上面が湾曲面であることにより、当該上面が平坦面を含むように形成された場合に比較して、成形加工時に金型内にPE組成物を良好に定着させやすい。第1突出部21と壁部13aとが段差なく面一に形成され、また、第1突出部21及び第2突出部22の上面と壁部13c,13dの外面とが段差のない連続面を形成することにより、成形加工時に金型内にPE組成物をより一層良好に定着させやすくなる。これにより、成形加工によって得られたポリタンクの厚みにばらつきが生じてポリタンクの強度及び耐薬品性等の特性が低下したり、外観形状が低下することを抑制することができる。
【0048】
取っ手24は、例えば、第1突出部21及び第2突出部22の幅方向Wの中央から、第1突出部21と第2突出部22とを繋ぐように設けられる。取っ手の下面側には、指を挿入可能な隙間が形成されており、この隙間に指を挿入して取っ手24を把持することにより、ポリタンク1を運搬することができる。
【0049】
取っ手24は、第1突出部21及び第2突出部22の上面に、取っ手24の上面が連なるように設けることができる。取っ手24の上面は、ポリタンク1を上面部20側からみたときに確認できる取っ手24の表面をいう(図2)。取っ手24の上面は、第1突出部21及び第2突出部22の上面のうちの最も突出した部分に連なっていてもよい。取っ手24の上面と第1突出部21及び第2突出部22の上面とは、段差なく連続的に延在する連続面(面一)に形成されていることが好ましい。取っ手24の角部も、面取りされたR形状を有することが好ましい。
【0050】
ポリタンク1は、取っ手24にリブ25を有していてもよく、周壁部13にリブ15を有していてもよい。リブ15,25を設けることにより、ポリタンク1の強度を向上させることができる。リブ15,25は、容器本体10の外部から内部に向けて凸状(容器本体10の外表面からみて凹状)に形成されることが好ましい。取っ手24のリブ25は、図1に示すように、第1突出部21から第2突出部22の方向に向かって延在するものであってもよく、取っ手24の側面に設けられていてもよい。周壁部13に設けられるリブ15は、例えば壁部13c,13dに設けられ、角が面取りされた四角形状に形成されていてもよい。
【0051】
ポリタンク1の周壁部13には、貯留空間に貯留された内容物の量を示す目盛16が付されていてもよい。目盛16は、例えば図1に示すように、周壁部13のうちいずれかの壁部13a~13dに設けることができ、例えばリブ15が設けられていない壁部13bに設けることができる。
【0052】
(ポリタンクの製造方法)
本実施形態のポリタンクの製造方法は、上記したポリタンク1の製造方法であり、PE組成物を成形する工程を含む。PE組成物、並びに、PE組成物に含まれるPE、第1PE、及び第2PEは、上記で説明したものが挙げられる。PE組成物の成形方法としては、ブロー成形、射出成形等が挙げられるが、ブロー成形であることが好ましい。ブロー成形では、例えば、金型に挟み込んだPE組成物に空気を吹き込んで、ポリタンク1を成形することができる。
【0053】
上記製造方法では、リサイクルPEを含むPE組成物を用いてポリタンク1を製造しているため、プラスチック製品のリサイクル効率を向上することができる。また、LDPEの含有量を調整しているため、使い捨てポリタンク等としての使用に耐え得る強度を有するポリタンクを製造することができる。
【0054】
ポリタンク1の製造方法では、第2PEがLDPEであり、かつ、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルPEであってもよい。この場合、ポリタンク1の製造方法は、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルによってPEを得る工程を含んでいてもよい。メカニカルリサイクルによってPEを得る工程では、例えばプラスチック梱包材を、選別、粉砕、及び洗浄等してリサイクルPEを得ることができる。プラスチック梱包材としては、上記したものが挙げられる。
【0055】
第2PEがプラスチック梱包材から得られるLDPEであることにより、製造現場において多量に排出されるプラスチック梱包材を有効利用することができ、プラスチック梱包材のリサイクル効率を向上することができる。
【0056】
(プラスチック製品のリサイクル方法)
本実施形態のプラスチック製品のリサイクル方法は、プラスチック製品から得られるPE(リサイクルPE)を用いてポリタンク1を得、ポリタンク1を使用した後に廃棄する方法である。具体的には、上記リサイクル方法は、PE組成物を用いてポリタンク1を得る工程と、ポリタンク1に廃液を回収して貯留する工程と、貯留する工程で使用したポリタンク1を廃棄する工程と、を含む。PE組成物は、第1PE及び第2PEを含む。第1PE及び第2PEは、上記した条件[a]及び条件[b]を満たし、かつ、リサイクルPEは、プラスチック製品から得られるPEである。
【0057】
PE組成物、並びに、PE組成物に含まれるPE、第1PE、及び第2PEは、上記したものであることができる。例えば、PE組成物のLDPEの含有量は上記で説明した範囲とすることができ、例えばPEの総量に対して10質量%以上40質量%以下とすることができる。PE組成物に含まれる成分及び含有量は、上記で説明した成分及び含有量が挙げられる。第1PE及び第2PEは、上記した条件[i]又は条件[ii]を満たすことができる。
【0058】
ポリタンク1を得る工程は、例えば上記したPE組成物を、ブロー成形等によって成形することによってポリタンク1を得ることができる。ポリタンク1は、上記で説明した構造を有するものが挙げられ、例えば上記した第1突出部21、第2突出部22、取っ手24、面取りされた角部、及び、平面状のカット面18を有するように面取りされた頂部を有することができる。
【0059】
プラスチック製品は、プラスチックを用いて作製された製品であれば特に制限されないが、例えば、ポリタンク以外のプラスチック製品であって、プラスチックの包装材及び容器等が挙げられる。プラスチック製品としては、ストレッチフィルム及び緩衝材等のプラスチック梱包材が挙げられる。上記のリサイクル方法で用いるプラスチック製品は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい。
【0060】
上記のリサイクル方法は、プラスチック製品としてプラスチック梱包材をリサイクルすることが好ましい。この場合、第1PE及び第2PEは、条件[i]を満たし、かつ、第2PEは、LDPEであり、かつ、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルPEであることが好ましい。上記リサイクル方法は、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルによってPE(LDPE)を得る工程を含んでいてもよい。メカニカルリサイクルによってPEを得る工程では、例えばプラスチック製品を、選別、粉砕、及び洗浄等してリサイクルPEを得ることができる。第2PEは、1種類のプラスチック梱包材に含まれるLDPEであってもよく、2種類以上のプラスチック梱包材に含まれるLDPEの混合物であってもよい。
【0061】
上記したように、プラスチック梱包材は、工場等の製造現場において多量に排出されて廃棄される。プラスチック梱包材は、LDPEを用いて作製されていることが多い。そのため、プラスチック梱包材に含まれるLDPEをリサイクルPEとして用いることにより、廃棄されるプラスチック梱包材を有効利用することができる。
【0062】
ポリタンク1に廃液を貯留する工程では、例えば使用済みの化学薬品等の廃液を、ポリタンク1(容器本体10)の口部11から供給して回収し、ポリタンク1の容器本体10が有する貯留空間に廃液を貯留する。
【0063】
ポリタンク1を廃棄する工程では、貯留する工程で使用したポリタンク1を廃棄する。廃棄する工程での廃棄方法は特に限定されないが、ポリタンク1を焼却する方法が挙げられる。廃棄する工程では、貯留する工程で使用したポリタンク1を再利用することなく廃棄してもよい。ポリタンク1を例えば化学薬品の廃液の回収に用いる場合、通常ポリタンク1は再利用されない。そのため、上記リサイクル方法は、化学薬品等の廃液回収用の使い捨てポリタンクを得る場合に好適に採用することができる。
【0064】
上記したように、リサイクルPEは、バージンPEに比べると物性(特性)が低下する場合がある。しかし、例えば上記したPEの配合を採用すれば、使い捨てポリタンクとしての使用に耐え得る十分な特性をポリタンク1に付与することができる。また、ポリタンク1として上記した構造を採用することにより、金型へのPE組成物の定着が良好となり、ポリタンク1の厚みにばらつきが生じて強度及び耐薬品性等の特性が低下したり、外観形状が低下することを抑制することもできる。このように、上記リサイクル方法によれば、廃棄されるプラスチック製品をそのまま廃棄するのではなく、ポリタンク1の原料として有効利用した上で廃棄することができる。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
〔実施例〕
(PE組成物の調製)
第1PEとして、HDPEであるバージンPEを準備した。第1PEは、石油由来のバージンPEである。第2PEとして、LDPEのリサイクルPEを準備した。第2PEは、プラスチック梱包材であるストレッチフィルム及び気泡緩衝材のメカニカルリサイクルによって得たLDPEである。PEとして第1PE及び第2PEを用い、第2PEの含有量がPEの総量(ここでは、第1PE及び第2PEの合計量)に対して40質量%となるようにしてPE組成物を得た。PE組成物中のLDPEの含有量は、PEの総量に対して40質量%である。
【0067】
(ポリタンクの作製)
PE組成物を用い、ブロー成形により内容量が10L及び3Lの略直方体形状のポリタンクを作製した。作製したポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有しており、容器本体が上面部、底面部、及び、上面部と底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されたものであった。また、容器本体は、図1に示す上面部20のように、上面部が部分的に突出した第1突出部及び第2突出部、並びに、第1突出部と第2突出部とを繋ぐ取っ手を有し、上面部に口部が形成されており、第1突出部及び前記第2突出部の上面が湾曲面であった。容器本体は、図1及び図3に示すように、底面部と周壁部とによって形成される4つの頂部がいずれもカット面18を有するように面取りされていた。10Lのポリタンクの周壁部の厚みは3.3mmであり、3Lのポリタンクの周壁部の厚みは1.3mmであった。
【0068】
(ポリタンクの強度の評価)
周壁部のうちの1つの壁部が床に対面するようにポリタンクを置き、当該壁部に貯留空間を挟んで対向する壁部側を手で強く押圧したが、いずれのポリタンクにも破損は見られなかった。
【0069】
(ポリタンクの耐薬品性の評価)
作製した10Lのポリタンクに強酸を貯留し、室内で1ヶ月保管したところ、ポリタンクにピンホールが発生したり、ポリタンクの底面部及び周壁部等が薄膜化したりする等の異常は確認されなかった。3Lのポリタンクにアセトニトリルを貯留したもの、及び、3Lのポリタンクに無機廃液を貯留したものを、室内で1年間保管したところ、ポリタンクにピンホールが発生したり、ポリタンクの底面部及び周壁部等が薄膜化したりする等の異常は確認されなかった。
【0070】
[態様]
上述した複数の例示的な実施態様及び実施例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0071】
(第1項)一態様に係る前記ポリタンクは、
ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いて作製されたポリタンクであって、
前記樹脂組成物は、前記ポリエチレンの総量に対して45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンである。
【0072】
第1項に記載のポリタンクによれば、リサイクルポリエチレンを有効利用したポリタンクを提供することができる。
【0073】
(第2項)第1項に記載のポリタンクにおいて、
前記第1ポリエチレンは、高密度ポリエチレンであり、かつ、バージンポリエチレンであり、
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、リサイクルポリエチレンであり、
前記樹脂組成物中の低密度ポリエチレンの含有量は、前記ポリエチレンの総量に対して10質量%以上である。
【0074】
(第3項)第2項に記載のポリタンクにおいて、
前記第2ポリエチレンは、プラスチック梱包材に含まれるポリエチレンである。
【0075】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載のポリタンクにおいて、
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、
前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、かつ、
前記上面部が部分的に突出した第1突出部及び第2突出部、並びに、前記第1突出部と前記第2突出部とを繋ぐ取っ手を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の上面は、湾曲面である。
【0076】
(第5項)第4項に記載のポリタンクにおいて、
前記第1突出部は、前記上面部の一部と、前記上面部の幅方向Wに延びる1つの端部に連なる前記周壁部の一部と、によって形成されている。
【0077】
(第6項)第1項~第5項のいずれか1項に記載のポリタンクにおいて、
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、
前記底面部と前記周壁部とによって形成される頂部のうちの少なくとも1つは、平面状の面を有するように面取りされている。
【0078】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載のポリタンクにおいて、
前記ポリタンクは、廃液回収用の使い捨てポリタンクである。
【0079】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載のポリタンクの製造方法であって、
前記樹脂組成物を成形する工程を含む。
【0080】
(第9項)第8項に記載のポリタンクの製造方法であって、
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルポリエチレンである。
【0081】
(第10項)プラスチック製品のリサイクル方法であって、
ポリエチレンを含む樹脂組成物を用いてポリタンクを得る工程と、
前記ポリタンクに廃液を回収して貯留する工程と、
前記貯留する工程で使用した前記ポリタンクを廃棄する工程と、を含み、
前記ポリエチレンは、第1ポリエチレン及び第2ポリエチレンを含み、
前記第1ポリエチレン及び前記第2ポリエチレンは、
一方が高密度ポリエチレンであり、他方が低密度ポリエチレンであり、かつ、
一方がバージンポリエチレンであり、他方がリサイクルポリエチレンであり、
前記リサイクルポリエチレンは、前記プラスチック製品から得られるポリエチレンである。
【0082】
第10項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法によれば、プラスチック製品に含まれるポリエチレンを用いてポリタンクを得るため、プラスチック製品をそのまま廃棄するのではなく、ポリタンクの原料として有効利用した上で廃棄することができる。
【0083】
(第11項)第10項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
前記プラスチック製品は、プラスチック梱包材であり、
前記第1ポリエチレンは、高密度ポリエチレンであり、かつ、バージンポリエチレンであり、
前記第2ポリエチレンは、低密度ポリエチレンであり、かつ、前記プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルにより得られたリサイクルポリエチレンである。
【0084】
(第12項)第11項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
前記樹脂組成物は、前記ポリエチレンの総量に対して10質量%以上45質量%以下の範囲で低密度ポリエチレンを含む。
【0085】
(第13項)第11項又は第12項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
さらに、前記プラスチック梱包材のメカニカルリサイクルよってポリエチレンを得る工程を含む。
【0086】
(第14項)第10項~第13項のいずれか1項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、
前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、かつ、
前記上面部が部分的に突出した第1突出部及び第2突出部、並びに、前記第1突出部と前記第2突出部とを繋ぐ取っ手を有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部の上面は、湾曲面である。
【0087】
(第15項)第10項~第14項のいずれか1項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
前記ポリタンクは、貯留空間を形成する容器本体を有し、
前記容器本体は、前記貯留空間を形成するように、上面部、底面部、及び、前記上面部と前記底面部とを繋ぐ周壁部が一体的に成形されており、
前記底面部と前記周壁部とによって形成される頂部のうちの少なくとも1つは、平面状の面を有するように面取りされている。
【0088】
(第16項)第10項~第15項のいずれか1項に記載のプラスチック製品のリサイクル方法であって、
前記廃棄する工程は、前記貯留する工程で使用した前記ポリタンクを再利用することなく廃棄する。
【符号の説明】
【0089】
1 ポリタンク、10 容器本体、11 口部、12 底面部、13 周壁部、13a~13d 壁部(周壁部)、15 リブ、16 目盛、18 カット面、20 上面部、21 第1突部、22 第2突部、24 取っ手、25 リブ。
図1
図2
図3