(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163678
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】水槽および養殖支援システム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20241115BHJP
A01K 61/59 20170101ALI20241115BHJP
【FI】
A01K63/00 C
A01K61/59
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079500
(22)【出願日】2023-05-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.売買契約日 令和04年07月30日 売買契約した場所 株式会社コードリック(石川県金沢市古府3丁目45-2サンメディックビル2階) 公開者 株式会社コードリック 2.施工日 令和04年09月30日 施工場所 福岡県糸島市 公開者 株式会社コードリック
(71)【出願人】
【識別番号】520206265
【氏名又は名称】株式会社コードリック
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】松下 重宏
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA18
2B104CA01
2B104CB22
2B104CB23
2B104CB34
2B104CB42
2B104GA01
(57)【要約】
【課題】効率的な養殖を可能とする水槽および養殖支援システムを提供する。
【解決手段】水槽10は、養殖領域10wに潜砂性がある水産動物Sを収容可能な水槽であって、前記養殖領域10wに面し、断熱性を有し、前記養殖領域10w側の表面に砂を模した凹凸形状が形成された底部10bを有する。養殖支援システムは、水槽10と、前記養殖領域10wを撮影可能な撮像装置40と、前記撮像装置40が撮影した画像における前記水産動物を識別する識別領域を検出可能な制御装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
養殖領域に潜砂性がある水産動物を収容可能な水槽であって、
前記養殖領域に面し、断熱性を有し、前記養殖領域側の表面に砂を模した凹凸形状が形成された底部を有する、
水槽。
【請求項2】
前記凹凸形状の表面は、黒色である、
請求項1に記載の水槽。
【請求項3】
前記水産動物は、クルマエビである、
請求項2に記載の水槽。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の水槽と、
前記養殖領域を撮影可能な撮像装置と、
前記撮像装置が撮影した画像における前記水産動物を識別する識別領域を検出可能な制御装置と、
を備える、
養殖支援システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記識別領域に基づいて前記水産動物の大きさを推定する、
請求項4に記載の養殖支援システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記識別領域に基づいて前記水産動物の数量を推定する、
請求項4に記載の養殖支援システム。
【請求項7】
前記制御装置は、
複数の前記画像から選択された、第一画像と、前記第一画像と撮影時刻が異なる第二画像とに対して、前記水産動物の位置を示す特徴点を検出し、
前記第一画像および前記第二画像における前記特徴点の単位時間当たりの移動量に基づいて、前記水産動物の活性度を推定する、
請求項4に記載の養殖支援システム。
【請求項8】
前記制御装置は、複数の前記画像から選択された、第一画像と、前記第一画像と撮影時刻が異なる第二画像との差分に基づいて、前記水産動物の活性度を推定する、
請求項4に記載の養殖支援システム。
【請求項9】
前記養殖領域に収容された養殖水から不純物を除去可能な浄水装置をさらに備える、
請求項4に記載の養殖支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽および養殖支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エビ等の水産動物(魚介類)の養殖場として、海洋に設けられた生け簀や、マングローブが繁茂する水域において、マングローブを伐採した養殖池が利用される。このような海上の生け簀や養殖池における水産動物の養殖では、水産動物は気候変動や水質変化などの外的要因に影響されながら育成される。また、効率化の観点から、生け簀内や養殖池内において、水産動物が高密度で大量に養殖され、水産動物の成長を促すための合成飼料や病気予防のための抗生物質が投与される。
【0003】
海上の生け簀や養殖池における養殖では、外的要因によって養殖の成否が左右されることも多々あり、水質を管理するために、飼育者による監視の手間が甚大となっている。また、食べ残された合成飼料や抗生物質、大量の水産動物から排泄される糞が蓄積されて生け簀や養殖池の水質が汚染され、汚染された排水によって生け簀や養殖池の周囲の環境に悪影響を及ぼす可能性がある。特に養殖池は、水質および土壌の汚染が蓄積し、養殖池として5年程使用された後は、養殖池又は他の用途としても使用できなくなる可能性がある。汚染により養殖池が使用できなくなると、次の養殖池として別の水域のマングローブが伐採され、マングローブが急激に減少する原因となり得る。
【0004】
養殖を安定して行うために、外的要因の影響を抑えられる生育環境が求められる。また、水産動物の養殖によって、マングローブの伐採、水質および土壌の汚染が生じ、環境破壊の一因となる虞がある。そのため、陸上に設置した水槽内で水産動物を養殖する陸上養殖への転換が求められている。陸上養殖を行う養殖装置として、例えば、特許文献1に記載のある養殖装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エビ類の養殖において、従来の陸上養殖では、病気への耐性が強く水中を泳ぐために生産効率が高いバナメイエビが養殖されることが多い。一方、繊細で砂に潜る習性(潜砂性)があるクルマエビは陸上養殖が難しく、海面養殖が一般的である。
【0007】
潜砂性があるクルマエビの養殖では、生け簀や養殖池に底砂を設ける必要があるため、水上からクルマエビおよび残餌等の観察を行うのが困難である。そのため、クルマエビの養殖では、海面養殖の場合でも、養殖業者の熟練作業者が毎日素潜りをしてクルマエビの大きさや残餌量を観察して餌の量を細かく調整する必要があり、病気や環境の変化に耐えた強い個体のみが15cmを超えるクルマエビとなり出荷できるため、出荷までに甚大な手間暇がかかる。
【0008】
また、陸上養殖の場合においても、砂の中に潜ったクルマエビを観察するために、水槽の中の水を抜いて水位を下げ、砂を掘り起こしてクルマエビや残餌の観察を行う必要があり、養殖に甚大な手間暇がかかる。
【0009】
そのため、繊細で環境変化に弱く、潜砂性があるクルマエビ等の水産動物は、効率的な養殖システムが求められている。特に、従来の養殖システムでは、陸上養殖によるクルマエビの養殖は困難である。
【0010】
上記事情を踏まえ、本発明は、効率的な養殖を可能とする水槽および養殖支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る水槽は、養殖領域に潜砂性がある水産動物を収容可能な水槽であって、前記養殖領域に面し、断熱性を有し、前記養殖領域側の表面に砂を模した凹凸形状が形成された底部を有する。
【0012】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る水槽において、前記凹凸形状の表面は、黒色である。
【0013】
本発明の第三の態様は、第二の態様に係る水槽において、前記水産動物は、クルマエビである。
【0014】
本発明の第四の態様に係る養殖支援システムは、第一から第三のいずれかの態様に係る水槽と、前記養殖領域を撮影可能な撮像装置と、前記撮像装置が撮影した画像における前記水産動物を識別する識別領域を検出可能な制御装置と、を備える。
【0015】
本発明の第五の態様は、第四の態様に係る養殖支援システムにおいて、前記制御装置は、前記識別領域に基づいて前記水産動物の大きさを推定する。
【0016】
本発明の第六の態様は、第四の態様に係る養殖支援システムにおいて、前記制御装置は、前記識別領域に基づいて前記水産動物の数量を推定する。
【0017】
本発明の第七の態様は、第四の態様に係る養殖支援システムにおいて、前記制御装置は、複数の前記画像から選択された、第一画像と、前記第一画像と撮影時刻が異なる第二画像とに対して、前記水産動物の位置を示す特徴点を検出し、前記第一画像および前記第二画像における前記特徴点の単位時間当たりの移動量に基づいて、前記水産動物の活性度を推定する。
【0018】
本発明の第八の態様は、第四の態様に係る養殖支援システムにおいて、複数の前記画像から選択された、第一画像と、前記第一画像と撮影時刻が異なる第二画像との差分に基づいて、前記水産動物の活性度を推定する。
【0019】
本発明の第九の態様は、第四の態様に係る養殖支援システムにおいて、前記養殖領域に収容された養殖水から不純物を除去可能な浄水装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
第一の態様に係る水槽によれば、潜砂性がある水産動物を収容する養殖領域に面し、断熱性を有し、砂を模した凹凸形状が養殖領域側の表面に形成された底部を有するため、底砂を用いなくても、温度変化に弱く、潜砂性がある水産動物を安定して効率良く養殖できる。
【0021】
第二の態様に係る水槽によれば、底部の養殖領域側の表面に形成されたた凹凸形状は、黒色であるため、底砂がある海面養殖により近い環境で水産動物を養殖でき、潜砂性がある水産動物をより安定して効率良く養殖できる。
【0022】
第三の態様に係る水槽によれば、繊細で環境変化に弱く、潜砂性があるために従来の養殖システムでは陸上養殖が困難であるクルマエビを安定して効率良く養殖できる。
【0023】
第四の態様に係る養殖支援システムによれば、第一から第三のいずれかの態様に係る水槽と、水槽における養殖領域を撮影可能な撮像装置と、撮像装置が撮影した画像における前記水産動物を識別する識別領域を検出可能な制御装置と、を備える。
砂を模した凹凸形状を有する水槽によって底砂を用いる必要が無く、水産動物が砂の中に隠れる虞が無いため、撮像装置によって水産動物および残餌を容易に撮影できる。また制御装置は、水産動物を識別する識別領域を検出可能なため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物や残餌量を観察することができる。
【0024】
第五の態様に係る養殖支援システムによれば、制御装置は、識別領域に基づいて水産動物の大きさを推定するため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物の大きさを把握することができる。
【0025】
第六の態様に係る養殖支援システムによれば、制御装置は、識別領域に基づいて水産動物の数量を推定するため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物の数量を把握することができる。
【0026】
第七の態様に係る養殖支援システムによれば、制御装置は、撮像装置が撮影した複数の画像から選択された、第一画像と、第一画像と撮影時刻が異なる第二画像とに対して、水産動物の位置を示す特徴点を検出し、第一画像および第二画像における特徴点の単位時間当たりの移動量に基づいて水産動物の活性度を推定するため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物の体調等を把握することができる。
【0027】
第八の態様に係る養殖支援システムによれば、制御装置は、撮像装置が撮影した複数の画像から選択された、第一画像と、第一画像と撮影時刻が異なる第二画像との差分に基づいて、水産動物の活性度を推定するため、水槽内の水中を縦横無尽に泳ぎ、特徴点による移動量の測定が難しい稚エビ等の水産動物に対しても、容易に体調等を把握することができる。
【0028】
第九の態様に係る養殖支援システムによれば、養殖領域に収容された養殖水から不純物を除去可能な浄水装置をさらに備えるため、養殖水の汚染による水産動物の病気を防ぐことができる。また、汚染された排水によって周囲の環境が汚染されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本実施形態に係る養殖支援システムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】同養殖支援システムにおける養殖領域を模式的に示す断面図である。
【
図3】同養殖支援システムの制御装置が出力した第一検出画像の一例である。
【
図4】同制御装置における水産動物の大きさおよび数量の推定方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示すフローチャートにおける推定方法の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】同制御装置における水産動物の活性度の推定方法の一例を示すフローチャートである。
【
図7】同制御装置が出力した第二検出画像の一例である。
【
図8】同制御装置における水産動物の活性度の推定方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る養殖支援システムを模式的に示す斜視図である。
図2は、本実施形態に係る養殖支援システムにおける養殖領域を模式的に示す断面図である。
【0031】
養殖支援システム1は、
図1および
図2に示すように、水槽10と、浄水装置20と、制御装置30と、撮像装置40と、を備える。
【0032】
水槽10は、
図2に示すように、水槽10の底面を形成する底部10bと、水槽10の側面を形成する側壁10sとを備える。底部10bおよび側壁10sに囲まれた領域には、養殖領域10wが形成されている。底部10bおよび側壁10sは、養殖領域10wに面して設けられている。
【0033】
本実施形態において、水槽10は、鉛直上側に開口を有し、鉛直上側から見た平面視において長方形をなす箱形状である。水槽10の形状はこれに限られず、例えば、上側から見た平面視において、六角形や八角形などの多角形状でもよいし、円形状でもよい。
【0034】
水槽10の養殖領域10wには、
図1に示すように、養殖水Wおよび水産動物Sが収容されている。養殖水Wは、養殖対象である水産動物Sが生息するために必要な水であり、例えば、海水である。養殖水Wには、養殖対象である水産動物Sの生息環境に合わせた水を使用できる。
【0035】
水産動物Sは、例えば、エビ等の甲殻類、魚類又は貝類等の魚介類である。本実施形態において、水産動物Sは、主にクルマエビである。水産動物Sは、クルマエビに限られず、他の魚介類であってもよい。
【0036】
底部10bおよび側壁10sの大きさおよび厚さは、例えば、養殖する水産動物Sの数量や水槽10を設置する環境によって適宜の大きさおよび厚さを採用できる。底部10bおよび側壁10sは、例えば、水産動物Sを養殖するのに十分な強度を有する強化発泡スチロールで形成され、断熱性を有する。
【0037】
底部10bおよび側壁10sが断熱性を有することで、水槽10の周囲の温度変化によって養殖水Wの温度が急激に変化するのを抑制できる。底部10bおよび側壁10sは、十分な断熱性を維持できる厚さを有するのが望ましい。
【0038】
特に、気温の低い冬場などの養殖に適さない気候において、養殖水Wの水温が低下して水産動物Sが病気にかかる虞や、温度変化によって水産動物Sにストレスがかかるのを抑制できる。
【0039】
底部10bおよび側壁10sの養殖領域10w側の表面には、砂を模した凹凸形状が形成されている。砂を模した凹凸形状は、例えば、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって形成される樹脂化合物であるポリウレアを強化発泡スチロールの表面に塗装することで形成されている。
【0040】
底部10bおよび側壁10sは、ポリウレア等の耐水性のある塗料によって表面を覆われているため、養殖領域10wに収容された養殖水Wは、底部10bおよび側壁10sに染み込む虞が無い。また、養殖水Wは、水槽10と後述する浄水装置20との循環を除いて、水槽10の外側へ漏れない。
【0041】
底部10bおよび側壁10sの養殖領域10w側の表面には、砂を模した凹凸形状が形成されているため、水産動物Sに対して、水槽10の内部に砂が敷いてあるように錯覚させることができる。そのため、水産動物Sが、潜砂性があり、底砂がある環境に生息するクルマエビ等であっても、水産動物Sにかかるストレスを軽減して養殖することができる。
【0042】
また、側壁10sが砂を模した凹凸形状を有することで、水産動物Sは、底部10bだけでなく、側壁10sにも定着しやすい。そのため、底部10bのみに水産動物Sが定着する場合と比較して、より多くの水産動物Sを養殖することができる。
【0043】
水槽10は、底部10bおよび側壁10sの養殖領域10w側の表面に砂を模した凹凸形状が形成されているため、底砂を用いなくても潜砂性がある水産動物Sを養殖することができる。底砂を敷いて養殖する場合と比較して、養殖作業者は、砂の中から水産動物Sを回収しなくても観察でき、また、砂に残餌が混ざることが無いため、残餌量を容易に把握できる。さらに、砂の中に嫌気菌が集まって有害物質が発生することを抑制できるため、養殖水Wが汚染されるのを抑制することができる。
【0044】
底部10bおよび側壁10sの養殖領域10w側の表面に形成された凹凸形状は、黒色であることが望ましい。表面の色を黒色にすることで、上記の凹凸形状は、より砂に近い見た目になるため、潜砂性がある水産動物Sにかかるストレスをより軽減することができる。上記の凹凸形状の表面は、黒色に限られず、黒色に近い明度である色(明度が低い色)や、海底に堆積された砂のように日光を吸収しやすい色などでもよい。上記の凹凸形状の表面は、水産動物Sが砂と錯覚できる色であればよく、例えば、茶色でもよい。
【0045】
浄水装置20は、水産動物Sの排泄物や残餌によって汚染された養殖水Wを浄化する装置であり、水槽10の近傍に設けられている。浄水装置20は、
図1に示すように、ろ過部21と、浄化部22と、水管23と、を備える。
【0046】
養殖支援システム1において、水槽10、ろ過部21および浄化部22は、水管23を介して接続されている。水槽10に収容された養殖水Wは、水管23を通って水槽10、ろ過部21および浄化部22の内部を循環している。
【0047】
ろ過部21は、内部を流れる養殖水Wを濾過し、養殖水Wから不純物を取り除く濾過装置である。ここで、不純物は、例えば、水産動物Sが食べ残した残餌や水産動物Sが排泄した糞である。養殖水Wは、水槽10から水管23を通ってろ過部21へ流入し、ろ過部21によって不純物が取り除かれる。
【0048】
不純物を取り除くことで養殖水Wは酸素を吸収しやすくなる。養殖水Wの酸素濃度を高めることで、水産動物Sの栄養吸収と免疫機能を活性化し、水産動物Sの成長を促進できる。また、水産動物Sを病害に強くすることができる。さらに、水産動物Sが酸欠になるのを抑制できる。
【0049】
浄化部22は、内部を流れる養殖水Wに含まれるアンモニアや硝酸等を微生物によって分解し、養殖水Wを浄化するバイオ浄化装置である。養殖水Wは、ろ過部21から水管23を通って浄化部22へ流入し、浄化部22によって浄化される。
【0050】
微生物によって養殖水Wに含まれるアンモニアや硝酸等を分解することで、水産動物Sの病害を抑制できる。また、養殖水Wや水産動物Sから生じる臭いを軽減できる。
【0051】
浄化部22で浄化された養殖水Wは、水管23を通って水槽10の養殖領域10wに再び流入する。
【0052】
水管23は、例えば、円筒状の水管である。水管23の形状および長さは、養殖支援システム1が設置される環境や循環させる養殖水Wの水量によって適宜の形状および長さを採用できる。また、
図1に示す例では、浄化部22と水槽10とを接続する水管23は1本であるが、水管23は、複数に分岐して養殖水Wを水槽10に流入させてもよい。
【0053】
また、水管23は、浄化部22から流出した養殖水Wが、水槽10の開口に対して上側から流入するように設けられてもよい。
【0054】
養殖支援システム1が浄水装置20を備えることで、閉鎖循環式の養殖システムであっても養殖水Wの汚染を防ぐことができ、水産動物Sを効率よく養殖できる。
【0055】
制御装置30は、養殖支援システム1の全体を制御する。
制御装置30は、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御装置30の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0056】
撮像装置40は、例えば、周囲を撮影可能なカメラである。撮像装置40は、養殖領域10wを撮影可能に設けられている。
図2に示す例では、養殖支援システム1は、複数の撮像装置40を備えるが、養殖支援システム1が備える撮像装置40の個数は、水槽10の大きさや撮像装置40の性能等によって適宜の個数を採用できる。
【0057】
撮像装置40は、制御装置30によって制御され、養殖領域10wを撮影する。撮像装置40は、水槽10の上側に設けられ、水槽10を俯瞰して養殖領域10wの全体を撮影してもよいし、養殖領域10wに設けられ、養殖水Wの中で養殖領域10wの全体又は一部を撮影してもよい。撮像装置40を養殖水Wの中に設ける場合、撮像装置40として、防水機能を有する水中カメラを採用できる。
【0058】
撮像装置40は、養殖水Wの中にいる水産動物Sを精度良く撮影するため、養殖領域10wに設けられた水中カメラであることが望ましい。また、水産動物Sを精度良く撮影するため、養殖支援システム1は、水産動物Sを照らす照明装置(不図示)を備えるのが望ましい。制御装置30が照明装置を点灯し、照明装置によって照らされた水産動物Sを撮像装置40によって撮影することで、水産動物Sを精度良く撮影することができる。水産動物Sを照らす照明装置は、例えば、カメラのフラッシュのように撮像装置40に付属した照明装置でもよい。
【0059】
撮像装置40によって撮影された画像は、制御装置30に送信される。制御装置30は、受信(取得)した画像に画像処理を施す。
図3は、制御装置30が画像処理を施して出力した第一検出画像PP1の一例である。
【0060】
制御装置30は、撮像装置40から取得した画像に画像処理を施して識別領域P1および情報領域P2を検出し、識別領域P1と情報領域P2とを含む第一検出画像PP1を出力する。制御装置30から出力された第一検出画像PP1は、ディスプレイ等の表示装置(不図示)やスマートフォン又はタブレット等の端末装置(不図示)に送信され、養殖作業者は、表示装置又は端末装置に表示された第一検出画像PP1を確認できる。識別領域P1の検出方法については後述する。
【0061】
識別領域P1は、水産動物Sを識別する識別器である。
図3に示す例では、水産動物Sはエビ(クルマエビ)である。また、識別領域P1は、
図3に示すように水産動物Sを囲う矩形領域であり、1匹の水産動物Sに対して1つの識別領域P1が検出される。すなわち、第一検出画像PP1に写っている水産動物Sの個体数と同じ個数の識別領域P1が検出される。ただし、水産動物Sの姿勢によっては水産動物Sを正確に識別できず、第一検出画像PP1に写っている水産動物Sの一部に対して識別領域P1が検出されない場合もある。水産動物Sの姿勢については後述する。
【0062】
情報領域P2は、各識別領域P1において、撮影された水産動物Sに関する所望の情報を表示する領域である。情報領域P2に表示される情報として、例えば、「成体(成エビ)」、「稚魚(稚エビ)」など、水産動物Sの成長度合いを示す情報が挙げられる。養殖作業者が、養殖する水産動物Sに関する十分な知識を有さない場合でも、情報領域P2に表示された情報を確認することで、水産動物Sに関する情報(例えば、成長度合い)を容易に把握することができる。
【0063】
図3に示す例では、情報領域P2は、識別領域P1の内部に設けられた矩形領域である。情報領域P2に水産動物Sに関する情報を表示する必要が無い場合、制御装置30は、情報領域P2を検出せず、第一検出画像PP1に情報領域P2が含まれなくてもよい。
【0064】
次に、制御装置30による養殖支援システム1の制御方法において、水産動物Sの大きさおよび数量の推定方法について説明する。
図4は、水産動物Sの大きさおよび数量の推定方法を示すフローチャートである。
【0065】
(ステップS100)
まず、制御装置30は、照明装置を点灯させ、養殖領域10w内にいる水産動物Sを照明装置で照らす(ステップS100)。このとき、水産動物Sがエビである場合、エビは夜行性で光を避ける傾向があるため、照明装置を点灯する時間および光量は最小限であるのが望ましい。また、照明装置を点灯させなくても水産動物Sを精度良く撮影することができる場合は、ステップS100は省略されてもよい。
【0066】
(ステップS200)
次に、制御装置30は、撮像装置40を制御し、水産動物Sを撮影する(ステップS200)。撮像装置40は、撮影した画像を制御装置30に送信する。
【0067】
このとき、撮像装置40は、養殖領域10wにおける複数の領域を撮影した画像を制御装置30に送信してもよい。例えば、養殖支援システム1が複数の撮像装置40を備える場合、制御装置30は、各撮像装置40が撮影した画像を取得する。
【0068】
また、撮像装置40は、養殖領域10wにおける複数の領域の画像を撮影可能なように撮影位置又は撮影角度を変更可能な機構を備えていてもよい。その場合、制御装置30は、撮像装置40の撮影位置又は撮影角度を変更し、撮像装置40は、撮影位置又は撮影角度が互いに異なる複数の画像を撮影し、各画像を制御装置30に送信する。
【0069】
(ステップS300)
制御装置30は、ステップS200で撮像装置40から取得した画像に処理を施し、第一検出画像PP1を出力する(ステップS300)。このとき、出力された第一検出画像PP1は少なくとも識別領域P1を有していればよく、情報領域P2を有さなくてもよい。ステップS300において、制御装置30は、撮像装置40から取得した画像において、水産動物Sを識別する識別領域P1を検出し、水産動物Sの判定を行う。
【0070】
制御装置30は、例えば、機械学習された学習済みモデルを使用して水産動物Sの判定を行う。例えば、上記の学習済みモデルは、訓練データ又は検証データとして水産動物Sの位置座標ラベル付きの画像を用いた物体検知の機械学習によって生成される。
【0071】
また、制御装置30は、テンプレートマッチング等のパターンマッチング手法を用いて識別領域P1を検出し、水産動物Sの判定を行ってもよい。
【0072】
(ステップS400)
次に、制御装置30は、水産動物Sの撮影を完了するか否かを判断する(ステップS400)。ステップS400において、水産動物Sの撮影を完了しない場合、制御装置30は、ステップS500に移行する。
【0073】
ここで、水産動物Sの撮影が完了していないため、養殖支援システム1は、水産動物Sを再び撮影する必要がある。例えば、水産動物Sの動きが速く、撮像装置40が撮影した動画像に対して制御装置30が適切に識別領域P1を検出できないとき、制御装置30は、水産動物Sの撮影を完了しないと判断する。
【0074】
(ステップS500)
ステップS500において、制御装置30は、所定の時間(例えば、10分間)待機する。ステップS400において、水産動物Sの動きが速いために水産動物Sを判定できていない場合、所定の時間待機することで、水産動物Sの動きが落ち着くのを待つ。
【0075】
制御装置30は、所定の時間待機した後、ステップS200に戻り、撮像装置40によって再び水産動物Sを撮影し、ステップS200以降の工程を実行する。
【0076】
(ステップS600)
制御装置30は、ステップS400において、水産動物Sの撮影を完了すると判断した場合、ステップS600に移行する。このとき、制御装置30が検出した識別領域P1によって、水産動物Sが適切に判定されている。制御装置30は、ステップS300で検出した識別領域P1に基づいて、大きさおよび数量推定工程(ステップS600)を実行する。
【0077】
(ステップS601)
図5は、
図4におけるステップS600の詳細を示すフローチャートである。
まず、数量推定工程(ステップS601)について説明する。
【0078】
ステップS601において、制御装置30は、第一検出画像PP1に写っている水産動物Sの数量(個体数)を推定する。制御装置30は、ステップS300で検出した識別領域P1の個数を数えることで水産動物Sの数量を算出する。
【0079】
ステップS601において、例えば、制御装置30は、1m2当たりの水産動物Sの数量を算出する。このとき、1つの第一検出画像PP1に写る領域の面積が1m2未満である場合、制御装置30は、撮影された領域が互いに異なる複数の第一検出画像PP1に基づいて1m2当たりの水産動物Sの数量を算出してもよい。
【0080】
(ステップS602)
また、ステップS600において、制御装置30は、姿勢推定工程(ステップS602)を実行する。ステップS602において、制御装置30は、ステップS300で検出した識別領域P1に基づいて、水産動物Sの姿勢を推定する。ここで、水産動物Sの姿勢とは、「水産動物Sが真っ直ぐな体勢をとっている」、「水産動物Sが曲がった体勢をとっている」など、水産動物Sの体勢を示す。
【0081】
制御装置30は、例えば、機械学習された学習済みモデルを使用して水産動物Sの姿勢を推定する。例えば、上記の学習済みモデルは、訓練データ又は検証データとして水産動物Sの位置座標ラベルおよび姿勢ラベル付きの画像を用いた物体検知および姿勢推定の機械学習によって生成される。
【0082】
また、制御装置30は、テンプレートマッチング等のパターンマッチング手法を用いて水産動物Sの姿勢を推定してもよい。
【0083】
制御装置30は、第一検出画像PP1において、識別領域P1の座標を算出し、水産動物Sの姿勢を推定する。制御装置30は、水産動物Sの姿勢を推定した後、ステップS603に移行する。
【0084】
(ステップS603)
ステップS603において、制御装置30は、ステップS602で推定した結果に基づいて、識別領域P1に表示された水産動物Sの姿勢が、真っ直ぐであるか又は曲がっているかを判断する。また、制御装置30は、水産動物Sの全長が識別領域P1内に写っているかを判断する。
【0085】
制御装置30は、姿勢が真っ直ぐであり、かつ、全長が写っている水産動物Sに対しては、後述するステップS604において、水産動物Sの大きさを推定することができる。一方、姿勢が曲がっている水産動物S又は姿勢が真っ直ぐであっても全長が写っていない水産動物Sに対しては、大きさを推定することが難しい。
以下、姿勢が真っ直ぐであり、かつ、全長が写っている水産動物Sを、「大きさ推定可能個体」と称する。また、姿勢が曲がっている水産動物S又は姿勢が真っ直ぐであっても全長が写っていない水産動物Sを、「大きさ推定難個体」と称する。
【0086】
制御装置30は、ステップS602で推定した結果が「大きさ推定難個体」である水産動物Sに対しては、ステップS604に移行せず、養殖支援システム1の制御を終了する。このとき、制御装置30は、ステップS601で推定した水産動物Sの数量を出力する。
【0087】
(ステップS604)
制御装置30は、ステップS603において、「大きさ推定可能個体」であると判断した識別領域P1の水産動物Sに対して、大きさ推定工程(ステップS604)を実行する。
【0088】
ステップS604において、制御装置30は、例えば、マーカを利用して水産動物Sの大きさを推定する。
例えば、養殖領域10wの底部10bにマーカを設置しておき、ステップS200において、撮像装置40は、マーカおよび水産動物Sが写った画像を撮影する。制御装置30は、撮影した画像に対して、テンプレートマッチング等の手法を用いてマーカを検出する。また、制御装置30の記憶部(不図示)には、マーカの実測の大きさ(寸法)が予め記憶されている。
【0089】
制御装置30は、第一検出画像PP1において、検出したマーカと、水産動物Sを囲った識別領域P1との大きさを比較し、水産動物Sの大きさを推定する。水産動物Sの大きさは、機械学習された学習済みモデルを使用して推定されてもよい。
【0090】
制御装置30は、ステップS604で水産動物Sの大きさを推定した後、養殖支援システム1の制御を終了する。このとき、制御装置30は、ステップS601で推定した水産動物Sの数量と、ステップS604で推定した水産動物Sの大きさとを出力する。
【0091】
制御装置30が出力した水産動物Sの大きさおよび数量の推定結果は、前述の表示装置又は端末装置に送信および表示される。養殖作業者は、表示された推定結果を確認することで、養殖されている水産動物Sの大きさおよび数量を容易に把握することができる。
【0092】
養殖作業者は、水産動物Sの大きさを把握することで水産動物Sの成長度合いを把握し、水産動物Sの成長および数量に合わせて餌の量を決定することができる。また、養殖作業者は、水産動物Sの数量によって、養殖領域10wにおける水産動物Sの生存率や生育環境の状況を観察することができる。
【0093】
上記の水産動物Sの大きさおよび数量の推定方法において、撮像装置40は、動画を撮影して制御装置30に送信してもよいが、制御装置30による処理がより容易である画像を使用するのが望ましい。制御装置30が動画を処理する場合、例えば、制御装置30は、撮像装置40が撮影した動画において、動画から抽出した所定のフレーム(画像)に対して画像処理を施すことで第一検出画像PP1を出力できる。
【0094】
次に、水産動物Sの活性度の推定方法について説明する。
図6は、制御装置30における水産動物Sの活性度の推定方法の一例を示すフローチャートである。
図7は、
図6に示すフローチャートにおいて、制御装置30が出力した第二検出画像PP2の一例である。
【0095】
ここで、活性度とは、給餌後の水産動物Sの活性(給餌活性)の度合いを示す。養殖作業者は、水産動物Sの活性度を把握することで、水産動物Sの体調の把握や給餌量の決定をすることができる。また、例えば、水産動物Sがエビである場合、水産動物Sが活性する時刻(活性時刻)は毎日変化し、活性時刻に対して適切な時刻に給餌することで効率的に給餌することができる。そのため、水産動物Sの活性度を推定することで、より効率的に養殖することができる。
【0096】
図6および
図7を参照して、特徴点追跡による水産動物Sの活性度の推定方法を説明する。本実施形態において、後述する特徴点追跡は、主に成エビのようにある程度の大きさがあり、底部10bで活動する水産動物Sの活性度の推定に有効である。
図6に示す活性度の推定方法は、水産動物Sに給餌した後に実行される。
【0097】
(ステップS110)
例えば、養殖作業者は、水産動物Sに給餌した後、制御装置30に接続されたキーボード等の入力装置を使用して、制御装置30による養殖支援システム1の制御を開始する。養殖支援システム1の制御が開始されると、まず、制御装置30は、撮像装置40を制御し、養殖領域10wを撮影する(ステップS110)。
【0098】
このとき、
図4に示すステップS100と同様に、照明装置によって養殖領域10wを照らした状態で撮影してもよい。
【0099】
また、ステップS110において、撮像装置40は、複数の画像を撮影し、制御装置30に送信する。
【0100】
(ステップS210)
次に、制御装置30は、特徴点追跡工程(ステップS210)を実行する。ステップS210において、制御装置30は、ステップS110で撮像装置40から取得した複数の画像に処理を施し、第二検出画像PP2を出力する。
【0101】
ここで、制御装置30は、
図7に示すように、撮像装置40から取得した複数の画像に対して特徴点P3を抽出する。特徴点P3は、撮像装置40から取得した画像にSIFT(Scale-Invariant Feature Transform)等の特徴点抽出アルゴリズムを適用することで検出(抽出)される。
【0102】
特徴点P3は、撮像装置40が撮影した画像において、水産動物Sに対して、特徴的な点として検出された点(特徴点)である。制御装置30は、撮像装置40から取得した複数の画像に対して特徴点P3の検出を行う。
【0103】
制御装置30は、複数の画像から選択された第一画像および第二画像に対して水産動物Sの特徴点P3を検出する。
ここで、第一画像は、撮像装置40が撮影した複数の画像から選択された画像であり、所定の撮影時刻における画像である。第二画像は、撮像装置40が撮影した複数の画像から選択された画像であり、第一画像と撮影時刻が異なる画像である。
【0104】
制御装置30は、撮像装置40が撮影した動画を取得し、取得した動画のフレーム毎に特徴点抽出アルゴリズムを適用して特徴点P3を検出してもよい。また、制御装置30は、機械学習された学習済みモデルを使用して特徴点P3を検出してもよい。
【0105】
(ステップS310)
次に、制御装置30は、活性測定工程(ステップS310)を実行する。ステップS310において、制御装置30は、ステップS210で第一画像および第二画像に対して検出した特徴点P3の単位時間当たりの移動量を算出し、算出した特徴点P3の移動量を水産動物Sの移動量として出力する。
【0106】
制御装置30が特徴点P3を検出する画像は、第一画像および第二画像に限られず、制御装置30は、例えば、撮像装置40から取得した複数の画像から3つの画像(第一~第三画像)を選択し、各画像に対して特徴点P3を検出してもよい。
【0107】
例えば、第一~第三画像の撮影時刻は、第一~第三画像の順で早い時刻に撮影されたとする。その場合、制御装置30は、第一画像と第二画像とに対して、特徴点P3の移動距離(第一移動距離)を算出する。また、第二画像と第三画像とに対して、特徴点P3の移動距離(第二移動距離)を算出する。
【0108】
制御装置30は、この第一移動距離と第二移動距離との総和を水産動物Sの総移動距離とし、特徴点P3の単位時間当たりの移動量を算出する。すなわち、制御装置30は、撮影時刻が異なる複数の画像のうち、最後に検出された特徴点P3の線分路の長さの総和を水産動物Sの総移動距離として出力する。
【0109】
制御装置30が特徴点P3を検出する画像は、3つより多くてもよい。また、制御装置30は、機械学習された学習済みモデルを使用して特徴点P3の移動量を算出してもよい。
【0110】
出力された水産動物Sの移動量は、前述の表示装置又は端末装置に送信および表示される。養殖作業者は、この移動量を活性度として用いて、水産動物Sの体調の把握や給餌量の決定をすることができる。
【0111】
また、ステップS210で生成された第二検出画像PP2は、
図7に示すように、
図3に示す第一検出画像PP1と同様に識別領域P1又は情報領域P2を有していてもよい。
【0112】
次に、水産動物Sの活性度の推定方法において、
図6の特徴点追跡による推定方法と異なる推定方法について説明する。
【0113】
図8は、制御装置30における水産動物Sの活性度の推定方法の一例を示すフローチャートである。
図8を参照して、フレーム差分計算による水産動物Sの活性度の推定方法を説明する。
【0114】
本実施形態において、フレーム差分計算は、主に稚エビのように体長が小さく、養殖水Wの中を満遍なく漂っている水産動物Sの活性度の推定に有効である。
図8に示す活性度の推定方法は、水産動物Sに給餌した後に実行される。
【0115】
(ステップS120)
例えば、養殖作業者は、水産動物Sに給餌した後、制御装置30に接続されたキーボード等の入力装置を使用して、制御装置30による養殖支援システム1の制御を開始する。養殖支援システム1の制御が開始されると、まず、制御装置30は、撮像装置40を制御し、養殖領域10wを撮影する(ステップS120)。
【0116】
このとき、
図4に示すステップS100と同様に、照明装置によって養殖領域10wを照らした状態で撮影してもよい。
【0117】
また、ステップS120において、撮像装置40は、複数の画像を撮影し、制御装置30に送信する。
【0118】
(ステップS220)
次に、制御装置30は、フレーム差分計算工程(ステップS220)を実行する。ステップS220において、制御装置30は、まず、撮像装置40が撮影した複数の画像から選択された第一画像および第二画像をグレースケールにする。次に、制御装置30は、グレースケール化した第一画像および第二画像に対して、ノイズを軽減するために平滑化フィルタをかける。
【0119】
ここで、第一画像および第二画像は、前述の特徴点追跡による活性度の推定方法と同様に、撮影時刻が互いに異なる画像である。
【0120】
(ステップS320)
次に、制御装置30は、活性測定工程(ステップS320)を実行する。ステップS320において、制御装置30は、ステップS220で平滑化フィルタをかけた第一画像と第二画像との間での輝度の差分を算出し、算出した差分を給餌活性のスコア(点数)として出力する。
【0121】
ここで、前述の特徴点追跡による活性度の推定方法と同様に、制御装置30は、3つ以上の画像に対してステップS220およびステップS320を実行してもよい。
【0122】
例えば、制御装置30は、第一~第三画像を撮像装置40から取得する。第一~第三画像の撮影時刻は、第一~第三画像の順で早い時刻に撮影されたとする。その場合、制御装置30は、第一画像と第二画像との間での輝度の差分(第一差分)と、第二画像と第三画像との間での輝度の差分(第二差分)を算出し、第一差分と第二差分との総和を給餌活性のスコアとして出力する。
【0123】
制御装置30が差分を算出する画像は、3つより多くてもよい。また、制御装置30は、機械学習された学習済みモデルを使用して差分を算出してもよい。
【0124】
出力された給餌活性のスコアは、前述の表示装置又は端末装置に送信および表示される。養殖作業者は、この給餌活性のスコアを活性度として用いて、水産動物Sの体調の把握や給餌量の決定をすることができる。
【0125】
稚エビのように体長が小さく、養殖水Wの中を満遍なく漂っている水産動物Sに対しては、前述の特徴点追跡を用いて活性度の推定を行うことが難しい。
図8に示すフレーム差分計算を用いた活性度の推定方法を用いることで、特徴点追跡を適用するのが難しい稚エビに対しても活性度の推定を行うことができる。
【0126】
本実施形態の水槽10および養殖支援システム1によれば、養殖領域10wに潜砂性がある水産動物Sを収容可能な水槽10は、養殖領域10wに面し、断熱性を有し、砂を模した凹凸形状が養殖領域10w側の表面に形成された底部10bを有する。そのため、水産動物Sに水槽10の養殖領域10wに底砂があると錯覚させることができ、底砂を設けなくても、温度変化に弱く、潜砂性がある水産動物S(例えば、クルマエビ)を安定して効率良く養殖できる。
【0127】
また、本実施形態の養殖支援システム1によれば、砂を模した凹凸形状を有する水槽10と、養殖領域10wを撮影可能な撮像装置40と、撮像装置40が撮影した画像における水産動物Sを識別する識別領域P1を検出可能な制御装置30と、を備えるため、水槽10に底砂を設ける必要が無く、水産動物S(例えば、クルマエビ)が砂の中に隠れる虞が無いため、撮像装置40によって水産動物Sおよび残餌を容易に撮影できる。そのため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物Sや残餌量を容易に観察することができる。
【0128】
また、制御装置30は、識別領域P1に基づいて、水産動物Sの大きさを推定する。そのため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物Sの大きさ(成長度合い)を把握し、成長度合いに合わせて餌の量を決定することができ、潜砂性がある水産動物Sを安定して効率良く養殖できる。
【0129】
また、制御装置30は、識別領域P1に基づいて、水産動物Sの数量を推定する。そのため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物の数量を把握し、数量に合わせて餌の量を決定することができる。また、養殖作業者は、水産動物Sの数量によって、養殖領域10wにおける水産動物Sの生存率や生育環境の状況を観察することができる。その結果、潜砂性がある水産動物Sを安定して効率良く養殖できる。
【0130】
また、制御装置30は、撮像装置40が撮影した画像に基づいて、水産動物Sの活性度を推定できる。そのため、養殖作業者は、水を抜いて水位を下げる等の工程を行うこと無く、水産動物の体調等を把握し、潜砂性がある水産動物Sを安定して効率良く養殖できる。
【0131】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0132】
(変形例1)
上記実施形態の養殖支援システム1は、水槽10を1つ備えるが、養殖支援システムの態様はこれに限定されない。養殖支援システムは、複数の水槽10を備えていてもよい。
例えば、養殖支援システムは、設置場所の広さや養殖する水産動物Sの数量等によって適宜の個数の水槽10を備えることができる。養殖支援システムが複数の水槽10を備える場合、各水槽10の養殖水Wがろ過部21および浄化部22の内部を循環するように水管23を配置することで、上記実施形態の養殖支援システム1と同様に、各水槽10の養殖水Wが汚染されるのを抑制できる。
【0133】
(変形例2)
上記実施形態の水槽10は、底部10bおよび側壁10sが砂を模した凹凸形状を有するが、水槽10の態様はこれに限定されない。水槽は、少なくとも底部10bが砂を模した凹凸形状を有していればよい。
例えば、養殖する水産動物Sがクルマエビである場合、潜砂性があるクルマエビの成体は、主に底部10bに生息する。そのため、側壁が砂を模した凹凸形状を有さなくても、少なくとも底部10bが砂を模した凹凸形状を有していれば、クルマエビに底部10bの凹凸形状を砂と錯覚させてストレスを軽減できるため、安定して養殖できる。
【符号の説明】
【0134】
1 養殖支援システム
10 水槽
10b 底部
10s 側壁
10w 養殖領域
20 浄水装置
30 制御装置
40 撮像装置
S 水産動物
PP1 第一検出画像(第一画像、第二画像)
PP2 第二検出画像(第一画像、第二画像)
P1 識別領域
P3 特徴点