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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163684
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】撮像装置および撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20241115BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/63 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079508
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲生
(72)【発明者】
【氏名】栃尾 貴之
【テーマコード(参考)】
5C122
【Fターム(参考)】
5C122EA12
5C122FG11
5C122FH01
5C122FK08
5C122FK37
5C122FK41
5C122GA01
5C122GA23
5C122GC14
5C122HB01
5C122HB05
5C122HB06
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】シャッタチャンスを逃すことなく、かつダーク補正を行うことが可能な撮像装置等を提供する。
【解決手段】撮像装置(100)は、被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能である。撮像装置は、所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する撮像部(115)と、画像データ及び撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する記録部(140)と、撮像部を制御する制御部(135)とを有する。制御部は、通常撮像動作を複数回行った後、各撮影条件に対応するダーク画像 を用いて各画像データにダーク補正動作を行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、前記画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能な撮像装置であって、
所定の撮影条件でシャッタを開いて前記通常撮像動作を行い、画像データを生成する撮像部と、
前記画像データ及び前記撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する記録部と、
前記撮像部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通常撮像動作を複数回行った後、各撮影条件に対応するダーク画像を用いて各画像データにダーク補正動作を行う、撮像装置。
【請求項2】
ユーザから、前記ダーク補正動作を行う実行タイミングの指定を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
前記実行タイミングは、前記通常撮像動作の終了直後のタイミングとは異なるタイミングを含む、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と同じ条件で前記ダーク画像を撮像し、撮像した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記記録部は、基準ダーク画像と、前記基準ダーク画像から前記ダーク画像を生成するための規則を保持しており、
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と、前記規則とに基づいて前記基準ダーク画像から前記ダーク画像を生成し、生成した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記記録部は、複数の撮影条件ごとに撮像された複数のダーク画像の画像データを保持しており、
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件に基づいて、前記複数のダーク画像のうちから1枚のダーク画像を選択し、選択した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記少なくとも1枚の画像データの撮影条件が、前記ダーク補正が必要な条件に該当するか否かを判定し、前記ダーク補正が必要な条件に該当すると判断した場合、前記ダーク補正動作を行う、請求項3から5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の画像データの各々の撮影条件が同じである場合、共通の前記ダーク画像を用いて前記複数の画像データにダーク補正動作を行う、請求項3から5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
互いに通信可能な撮像装置とサーバ装置とによって構成された撮像システムであって、
前記撮像装置は、
所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する撮像部と、
前記画像データ及び前記撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する記録部と、
前記撮像部を制御する制御部と、
ユーザから、前記サーバ装置と連携して前記ダーク補正動作を行う指定を受け付けるユーザインタフェースと、
前記撮影条件および前記指定を送信する第1通信回路と
を有し、
前記サーバ装置は、
前記撮影条件および前記指定を受信する第2通信回路と、
前記撮影条件に基づいて前記画像データに用いられるダーク画像を決定するサーバ制御部と
を備え、
前記サーバ制御部は、前記撮像装置からの前記撮影条件に基づいて前記ダーク画像を決定し、
前記撮像装置および前記サーバ装置の一方は、前記画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行う、撮像システム。
【請求項9】
前記サーバ装置は、基準ダーク画像、および所与の撮影条件と前記基準ダーク画像とから前記ダーク画像を生成するための規則を記憶し、または、前記撮像装置の複数の撮影条件ごとの複数のダーク画像を記憶するサーバ記憶装置を備え、
前記サーバ制御部は、
前記撮像装置からの前記撮影条件に基づいて前記サーバ記憶装置に記憶される前記基準ダーク画像と前記規則とを用いて生成されるダーク画像、または前記サーバ記憶装置に記憶される前記複数のダーク画像から選択されるダーク画像を、前記ダーク画像として決定する、請求項8に記載の撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置および撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
夜景、花火、星空などをデジタルカメラで撮影する場合、長時間露光が行われることがある。長時間露光で撮影を行うと、イメージセンサの点キズや暗電流によるシェーディングが大きくなり、撮影した画像の画質の劣化が発生する。
【0003】
そのような画質劣化への対策として、いわゆる「ダーク補正」が知られている。一般に「ダーク補正」とは、被写体像を撮像して本画像を取得した後に、シャッタを閉じた状態で同じ露光時間でさらに撮影を行ってダーク画像を取得し、本画像からダーク画像を減算する処理を言う。
【0004】
本画像を取得した直後にダーク画像を取得すると、ダーク画像が取得されるまでの期間中はシャッタチャンスを逃す可能性がある。そこで特許文献1は、本画像を取得する前に予めダーク画像を取得しておき、本画像の取得後すぐにダーク補正を行う技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-76978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、ダーク画像の取得から所定時間以上経過した後に本画像が取得されると、撮像条件が変化したとしてダーク補正は行われない。つまり、画質の劣化は解消されない。
【0007】
本開示の目的は、シャッタチャンスを逃すことなく、かつダーク補正を行うことが可能な撮像装置および撮像システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示において、撮像装置は、被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能である。撮像装置は、撮像部と、記録部と、制御部とを含む。撮像部は、所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する。記録部は、画像データ及び撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する。制御部は撮像部を制御する。さらに制御部は、通常撮像動作を複数回行った後、各撮影条件に対応するダーク画像を用いて各画像データにダーク補正動作を行う。
【0009】
本開示において、撮像システムは、互いに通信可能な撮像装置とサーバ装置とによって構成されている。撮像装置は、撮像部と、記録部と、制御部と、ユーザインタフェースと、第1通信回路とを含む。所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する。記録部は、画像データ及び撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する。制御部は撮像部を制御する。ユーザインタフェースは、ユーザから、サーバ装置と連携してダーク補正動作を行う指定を受け付ける。第1通信回路は、撮影条件および指定を送信する。サーバ装置は、第2通信回路と、サーバ制御部とを含む。第2通信回路は、撮影条件および指定を受信する。サーバ制御部は、撮影条件に基づいて画像データに用いられるダーク画像を決定する。サーバ制御部は、撮像装置からの撮影条件に基づいてダーク画像を決定する。そして、撮像装置およびサーバ装置の一方は、画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示の例示的な実施形態によれば、シャッタチャンスを逃すことなく、かつダーク補正を行うことが可能な撮像装置および撮像システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の例示的な実施形態1にかかるデジタルカメラのハードウェア構成図
図2】デジタルカメラの表示モニタに表示されるメニュー設定画面の例を示す図
図3】実施形態1のデジタルカメラにおけるダーク補正動作の手順を例示するフローチャート
図4】ダーク補正動作を実行するタイミングを説明するための図
図5】画像ファイルのデータ構造の一例を示す図
図6】撮影条件が一致する複数回の通常撮像動作が行われた場合のダーク補正動作の手順を説明するための図
図7】撮影条件が一致しない場合及び一致する場合のダーク撮影の実行方法を説明するための図
図8】イメージセンサの暗電流の温度特性を示すグラフ
図9】本開示の例示的な実施形態2にかかる撮像システムの構成例を示す図
図10】本開示の例示的な実施形態2にかかるデジタルカメラの表示モニタに表示されるメニュー設定画面の例を示す図
図11】サーバ装置のハードウェア構成図
図12】撮像システムを構成するデジタルカメラ及びサーバ装置の動作を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、発明者(ら)は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図しない。
【0014】
1.実施形態1
実施形態1では、本開示に係る撮像装置の一例として、被写体を撮像して動画データを記録可能なデジタルカメラについて説明する。
【0015】
1-1.デジタルカメラの構成例
図1は、本実施形態にかかるデジタルカメラ100のハードウェア構成図である。図1に示すデジタルカメラ100は、例えば一眼タイプのデジタルカメラ、コンパクトタイプのデジタルカメラである。以下、デジタルカメラ100の構成要素の概要を説明する。
【0016】
本実施形態のデジタルカメラ100は、イメージセンサ115と、温度センサ116と、画像処理エンジン120と、表示モニタ130と、コントローラ135とを備える。さらに、デジタルカメラ100は、バッファメモリ125と、カードスロット140と、フラッシュメモリ145と、操作部150と、通信モジュール160とを備える。また、デジタルカメラ100は、光学系110及びレンズ駆動部112を備える。デジタルカメラ100は、さらに、マイクロフォン161と、マイク用のアナログ/デジタル(A/D)コンバータ165と、音声処理エンジン170とを備える。
【0017】
光学系110は、フォーカスレンズ、ズームレンズ、絞り、シャッタ等を含む。フォーカスレンズは、イメージセンサ115上に形成される被写体像のフォーカス状態を変化させるためのレンズである。ズームレンズは、光学系で形成される被写体像の倍率を変化させるためのレンズである。フォーカスレンズ等は、それぞれ1枚又は複数枚のレンズで構成される。
【0018】
レンズ駆動部112は、光学系110におけるフォーカスレンズ等を駆動する。レンズ駆動部112はモータを含み、コントローラ135の制御に基づいてフォーカスレンズを光学系110の光軸に沿って移動させる。レンズ駆動部112においてフォーカスレンズを駆動する構成は、DCモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、または超音波モータなどで実現できる。
【0019】
なお、デジタルカメラ100が一眼タイプのデジタルカメラの場合、光学系110及びレンズ駆動部112は鏡筒(図示せず)に収容されている。鏡筒はデジタルカメラ100に着脱可能であってもよい。
【0020】
イメージセンサ115は、光学系110を介して形成された被写体像を撮像して、撮像データを生成する。撮像データは、イメージセンサ115による撮像画像を示す画像データを構成する。イメージセンサ115は、所定のフレームレート(例えば、60フレーム/秒)で新しいフレームの画像データを生成する。イメージセンサ115における、撮像データの生成タイミングおよび電子シャッタ動作は、コントローラ135によって制御される。イメージセンサ115は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ、またはNMOSイメージセンサなど、種々のイメージセンサを用いることができる。
【0021】
イメージセンサ115は、動画像、静止画像の撮像動作、スルー画像の撮像動作等を実行する。スルー画像は主に動画像であり、ユーザが例えば静止画像の撮像のための構図を決めるために表示モニタ130に表示される。スルー画像、動画像及び静止画像は、それぞれ本実施形態における撮像画像の一例である。イメージセンサ115は、本実施形態における撮像部の一例である。
【0022】
デジタルカメラ100は、レンズ110等の光学系を介して入射した外部の光をイメージセンサ115で受けて、例えば4K解像度の画像を取得し、表示、記録等の処理を行うことができる。「4K解像度の画像」とは、例えば4096画素×2160画素または3840画素×2160画素の画像である。本明細書において、「画像」は、動画像及び静止画像のいずれも含み得る。
【0023】
温度センサ116は、イメージセンサ115に接触して、またはその近傍に設けられており、イメージセンサ115の温度を検出する。
【0024】
画像処理エンジン120は、イメージセンサ115から出力された撮像データに対して各種の処理を施して画像データを生成したり、画像データに各種の処理を施して、表示モニタ130に表示するための画像を生成したりする。各種処理としては、ホワイトバランス補正、ガンマ補正、YC変換処理、電子ズーム処理、圧縮処理、伸張処理等が挙げられるが、これらに限定されない。画像処理エンジン120は、ハードワイヤードな電子回路で構成してもよいし、プログラムを用いたマイクロコンピュータ、プロセッサなどで構成してもよい。
【0025】
表示モニタ130は、種々の情報を表示することが可能な装置であり、例えば、液晶ディスプレイデバイスまたは有機ELデバイスであり得る。
【0026】
操作部150は、デジタルカメラ100の外装に設けられた操作釦や操作レバー等のハードキーの総称であり、使用者による操作を受け付ける。操作部150は、例えば、レリーズ釦、モードダイヤル、タッチパネル、カーソルボタン、ジョイスティックを含む。操作部150はユーザによる操作を受け付けると、ユーザ操作に対応した操作信号をコントローラ135に送信する。
【0027】
コントローラ135はCPU等を含み、CPUがプログラム(ソフトウェア)を実行することで本開示にかかる処理、機能を実現する。コントローラ135は、CPUに代えて、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。すなわち、コントローラ135は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現できる。コントローラ135は1つまたは複数のプロセッサで構成してもよい。また、コントローラ135は、画像処理エンジン120および/または音声処理エンジン170などと共に1つの半導体チップで構成されてもよい。本明細書では、コントローラ135を「制御部」と呼ぶことがある。
【0028】
バッファメモリ125は、画像処理エンジン120やコントローラ135のワークメモリとして機能する記録媒体である。バッファメモリ125は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などにより実現される。フラッシュメモリ145は不揮発性の記録媒体である。また、図示していないが、コントローラ135は各種の内部メモリを有してもよく、例えばROMを内蔵してもよい。ROMには、コントローラ135が実行する様々なプログラムが記憶されている。また、コントローラ135は、CPUの作業領域として機能するRAMを内蔵してもよい。
【0029】
カードスロット140は、着脱可能なメモリカード142が挿入される手段である。カードスロット140は、メモリカード142を電気的及び機械的に接続可能である。メモリカード142は、内部にフラッシュメモリ等の記録素子を備えた外部メモリである。メモリカード142は、画像処理エンジン120で生成される画像データなどのデータを格納できる。
【0030】
通信モジュール160は、通信規格IEEE802.11またはWi-Fi規格等に準拠した通信、および/または、4Gまたは5G等の規格に準拠して通信を行う通信回路である。デジタルカメラ100は、通信モジュール160を介して、他の機器と通信することができる。デジタルカメラ100は、通信モジュール160を介して、他の機器と直接通信を行ってもよいし、アクセスポイント経由で通信を行ってもよい。通信モジュール160は、インターネット等の通信ネットワークに接続可能であってもよい。
【0031】
マイクロフォン161は、デジタルカメラ100に内蔵された1つまたは複数のマイクロフォン素子を含む。マイクロフォン161は、マイクロフォン素子によって収音された音声を電気信号であるアナログ信号に変換して出力する。なお、マイクロフォン161は、デジタルカメラ100の外部にあるマイクロフォン素子を含んでもよい。
【0032】
マイクロフォン用のA/Dコンバータ165は、マイクロフォン161からのアナログ信号をデジタル信号の音声データに変換する。音声処理エンジン170は、マイクロフォン用のA/Dコンバータ165等の音声取得部から出力された音声データを受信して、受信した音声データに対して種々の音声処理を施す。
【0033】
1-2.動作
1-2-1.個々の撮影条件に応じてダーク画像を取得する例
本開示によるデジタルカメラ100は、被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能である。
【0034】
ダーク補正は、イメージセンサ115の点キズまたは白傷、暗電流による明暗のむら、すなわちシェーディングによって発生するノイズを除去する技術である。具体的には、ダーク補正は、通常撮影動作によって被写体像を撮影して得られた画像データからノイズのみを含むダーク画像データを減算することによって行われる。ノイズは、ISO感度が相対的に高くなるほど、シャッタ速度が遅くなるほど、センサ温度が高くなるほど大きくなる。そのため、ダーク補正は、例えば、夜景や星空などの暗所で、4秒~60秒にもわたるような長時間露光を行って撮影した画像の画質改善に有効である。
【0035】
本開示によるデジタルカメラ100では、ユーザは、ダーク補正の実行タイミングをメニューにより設定可能である。例えば図2は、デジタルカメラ100の表示モニタ130に表示されるメニュー設定画面の例を示している。図2の例では、ダーク補正は「長秒ノイズ除去」として示されている。
【0036】
ユーザが操作部150を操作して、長秒ノイズ除去の「OFF」を示す項目2aから「ON 後から実行」を示す項目2bを選択する。ここで「後から実行」とは、デジタルカメラ100が通常撮像動作を終了した後、例えば撮影モード終了後、の非撮影動作時に、ダーク補正動作を行うことを意味している。例えば、ダーク補正動作は、複数回の通常撮像動作が終了した後の電源がオフされたタイミングで実行される。本実施形態では、デジタルカメラ100は、通常撮像動作を1回行う度に同じ時間をかけてダーク画像を取得しない。これにより、ユーザはシャッタチャンスを逃すことはなくなり、デジタルカメラ100の利便性を高めることができる。
【0037】
デジタルカメラ100のコントローラ135は、通常撮像動作の終了後に、通常撮像動作によって取得された各画像データの撮像条件と同じ条件または十分近い条件でダーク画像データを取得してダーク補正動作を行う。条件によってダーク補正動作が行われたり行われなかったりすることはないため、ユーザは、ダーク補正動作によって画質が改善された画像データを得ることができる。
【0038】
次に、図3図5を参照しながら、デジタルカメラ100の動作を詳細に説明する。説明の前提として、ユーザが操作部150を操作して、長秒ノイズ除去の「ON 後から実行」を示す項目2bが選択されているとする。
【0039】
図3は、本実施形態のデジタルカメラ100におけるダーク補正動作の手順を例示するフローチャートである。本フローチャートの各処理は、コントローラ135により、および、コントローラ135からの指示を受けた画像エンジン等によって実行される。図4は、ダーク補正動作を実行するタイミングを説明するための図である。
【0040】
まず、コントローラ135は、操作部150を介して受け付けたシャッタボタン押下等のユーザの操作により、通常撮像動作を実行する(S1)。これにより、画像処理エンジン120は画像データを生成する。コントローラ135は、画像データおよび撮影条件データを紐付けてメモリカード142に保存する(S2)。コントローラ135は、通常撮像動作を終了するまでステップS1及びS2を繰り返す(S3)。
【0041】
図4では、時刻Tまでの期間が通常撮像動作を示している。例えば最初の撮影において通常露光が行われて、撮影条件データ10及び画像データ11を含む画像ファイルFが取得される。
【0042】
図5は、画像ファイルFのデータ構造の一例を示している。本実施形態では、撮影条件データ10は、通常撮像動作時のISO感度、シャッタ速度、温度センサ116によって計測されたイメージセンサ115の温度が記述されている。シャッタ速度は、シャッタが閉じる速度を表しており、換言すると露光時間である。撮影条件データ10は、さらに撮影日時、デジタルカメラ100のメーカ名、画像全体の解像度、水平・垂直方向の単位あたり解像度、絞り(F値)、焦点距離等の撮影条件を含んでいてもよい。
【0043】
撮影条件データ10は、例えばExif(Exchangeable image file format)規格に準拠して記述されている。画像データ11は、例えばJPEG、TIFF、PNG等の周知の画像フォーマットに準拠するデータである。本実施形態では、撮影条件データ10をExif規格に準拠して画像データ11に埋め込むことを、画像データおよび撮影条件データの紐付けと呼ぶ。なお、画像データおよび撮影条件データが1対1で関連付けられるのであれば、Exif規格を用いることは必須ではなく、また撮影条件データ10を画像データ11に埋め込むことも必須ではない。
【0044】
図4に示すように、通常撮像動作によって取得された画像ファイルFはメモリカード142に保存される。同様に、その後の通常撮像動作によって取得された画像ファイルGも同様に、例えば撮影の都度、メモリカード142に保存される。通常撮像動作を続けて行うことが可能であるから、ユーザはシャッタチャンスを逃すことはない。
【0045】
再び図3を参照する。コントローラ135は、通常撮像動作の終了を検出すると次の処理(S4)に移行する。例えばコントローラ135は、ユーザによるデジタルカメラ100の電源OFFの操作、動作モードを再生モードに変更する等の非撮影モードへの遷移により、通常撮像動作の終了を検出する。
【0046】
コントローラ135は、紐付けられた画像データおよび撮影条件データをメモリカード142から読み出し(S4)、撮影条件データ中の撮影条件を参照して、ダーク補正が必要な画像を抽出する(S5)。
【0047】
例えばデジタルカメラ100のフラッシュメモリ145は、ダーク補正動作を行うISO感度、シャッタ速度および/またはイメージセンサ115の温度の閾値条件を予め保持している。コントローラ135は、フラッシュメモリ145内の閾値条件を参照して、撮影条件データ10の撮影条件の少なくとも1つが閾値条件を満たしていると判断した場合には、その撮影条件で撮影された画像を、ダーク補正が必要な画像として抽出する。コントローラ135は、抽出された画像ファイルに、ダーク補正動作の対象であることを示す未補正フラグを付与する。なお、コントローラ135は、閾値条件に基づく画像の抽出に加えて、または当該抽出に代えて、ダーク補正が必要な画像をユーザから受け付けて、未補正フラグを付与してもよい。
【0048】
次にコントローラ135は、ダーク補正を実行する画像の撮影条件に基づいてダーク画像を取得する(S6)。例えばコントローラ135は、未補正フラグが付与された画像ファイルの撮影条件データを参照して、その撮影条件と同じISO感度及びシャッタ速度に相当する露光時間だけシャッタを閉じた状態で撮像動作を実行する。これにより、その画像を補正するためのダーク画像が取得される。
【0049】
その後、コントローラ135は、ダーク画像を用いて画像にダーク補正動作を実行する(S7)。具体的には、コントローラ135は、画像を構成する各画素の輝度値から、ダーク画像を構成する各画素の輝度値を減算する。減算によって得られた画像及びその画像データを、以下「修復画像」及び「修復画像データ」と呼ぶ。
【0050】
コントローラ135は、ダーク補正動作によって得られた修復画像データを記録媒体に保存する(S8)。
【0051】
図4を参照しながら、上述のステップS4~S8を説明する。ダーク補正動作の対象は画像ファイルF及びGとする。なお画像ファイルGでは、撮影条件データ12及び画像データ13が紐付けられている。
【0052】
時刻Tにおいて、コントローラ135が通常撮像動作の終了を検出する。コントローラ135は、撮影条件データ10及び12をそれぞれ参照して、ダーク画像を取得するための撮影、すなわちダーク撮影を行う。
【0053】
時刻T以降のダーク撮影動作時、デジタルカメラ100は通常撮影動作が終了した後の非撮影状態にある。例えばデジタルカメラ100の電源がオフされた状態、または画像の再生モードの状態である。そのため、ユーザには撮影する意思はないと言える。よって、ダーク撮影によるシャッタチャンス喪失を想定する必要はない。
【0054】
なお、上述の例では、撮影条件データ10等を参照して、その撮影条件と同じISO感度及びシャッタ速度に相当する露光時間だけシャッタを閉じた状態で撮像動作を行うと説明した。しかしながら、より多くの撮影条件を一致させてダーク撮影を行うと、より顕著にダーク補正による画質の向上が実現される。例えば、撮影条件データ10等にイメージセンサ115の温度の値が記述されている場合には、その温度と同一または十分近い条件でダーク撮影を行うことが好ましい。十分近い条件とは、例えば撮影時のイメージセンサ115の温度の値±1度の範囲内である。
【0055】
コントローラ135は、デジタルカメラ100を動作させることによって上昇するコントローラ135の温度が上昇し、例えば撮影条件データ10に記述されているイメージセンサ115の温度の値になるまでダーク撮影動作を保留する。コントローラ135の温度が撮影条件データ10に一致すると、その次点でダーク補正動作を実行する。これにより、高い補正精度を実現することができる。
【0056】
ダーク撮影によって、ダーク画像データD1及びD2が順次得られる。コントローラ135は、画像データ11からダーク画像D1の画像データ14を減算することにより、修復画像データ16を取得する。コントローラ135は、修復画像データ16をメモリカード142に保存する。同様に、コントローラ135は、画像データ13からダーク画像D2の画像データ15を減算することによって修復画像データ17を取得し、メモリカード142に保存する。
【0057】
なお、画像データ11はメモリカード142に保存されたままでもよいし、削除されてもよい。また、修復画像データ16に撮影条件データ10を埋め込み、修復画像データ17に撮影条件データ12を埋め込むことで、それぞれ1つの画像ファイルがメモリカード142に保存されてもよい。
【0058】
1-2-2.ダーク画像を共通化する例
図4に示す例では、通常露光ごとに、時刻T以降にダーク撮影を行ってダーク画像を生成した。しかしながら、複数の通常露光の撮影条件が一致している、または十分近い場合には、1回のダーク撮影で済ませてもよい。
【0059】
図6は、撮影条件が一致する複数回の通常撮像動作が行われた場合のダーク補正動作の手順を説明するための図である。撮影条件が一致する複数回の通常撮像動作とは、例えば、ISO感度及びシャッタ速度を固定して星空を複数回撮像することが考えられる。
【0060】
複数回の撮像によって、画像Pa3~Pa5が取得され、その各々には撮影条件データがそれぞれ紐付けられてメモリカード142に保存される。その後、時刻Tにおいてコントローラ135が通常撮像動作の終了を検出する。
【0061】
次に、コントローラ135は、撮影時刻を除く他の撮影条件、例えばISO感度及びシャッタ速度がいずれも一致するかどうかを判定する。図6には、撮影条件データ20が画像Pa3~Pa5間で共通することが示されている。撮影時刻を除く他の撮影条件が一致すると判定した場合、コントローラ135は、時刻T以降にダーク撮影を1回行い、ダーク画像D3を取得する。その後、コントローラ135は、取得したダーク画像D3を用いて画像Pa3~Pa5のダーク補正を行い、修復画像Pb3~Pb5を取得する。
【0062】
複数の撮影条件が完全に一致していないが十分近い場合にも、1回のダーク撮影で済ませることができる。例えばシャッタ速度に相当する露光時間が中央値の±10%以内に収まっている場合には、コントローラ135は、中央値の露光時間で1回のダーク撮影を行ってダーク画像D3を取得すればよい。
【0063】
本例によれば、1回のダーク撮影によって取得したダーク画像D3を共用してダーク補正を行う。これにより、ダーク撮影に要する時間を短縮化でき、それにより、動作に起因する発熱及びバッテリ(図示せず)の消耗を防ぐことができる。
【0064】
1-2-3.個々の撮影条件に応じてダーク画像を取得する例と、ダーク画像を共用する例の混合
デジタルカメラ100のコントローラ135は、上記項目1-2-1及び1-2-2の例を組み合わせて動作することも可能である。
【0065】
図7は、撮影条件が一致しない場合及び一致する場合のダーク撮影の実行方法を説明するための図である。通常撮像動作中、3種類の撮影条件C1、C2及びC3で通常露光が行われて被写体像が撮像された例を挙げる。このうち、撮影条件C1及びC2ではそれぞれ1回の通常露光が行われ、撮影条件C3では4回の通常露光が行われたとする。各通常露光の後、画像データ及び撮影条件データが互いに紐付けられてメモリカード142に保存される。
【0066】
図7の破線内に、ダーク補正動作の概要を示している。説明の便宜上、図4及び図6の記載とは異なることに留意されたい。
【0067】
はじめの2回の通常撮像動作で得られた画像については、コントローラ135は、各撮影条件C1及びC2でダーク撮影を行って別個のダーク画像を取得し、各ダーク画像を用いてダーク補正を行う。一方、3回目以降の通常撮像動作で得られた4枚の画像については、コントローラ135は、撮像条件C3でダーク撮影を行って1枚のダーク画像を取得し、そのダーク画像を用いてダーク補正を行う。コントローラ135は、各ダーク補正後の修復画像データをメモリカード142に保存する。
【0068】
上述の項目1-2-1~1-2-3の例のように、撮影条件に応じて、ダーク撮影を複数回行ってもよいし、一回行ってもよいし、それらを組み合わせてもよい。これにより、通常撮像動作によって得られた画像に適したダーク補正を行いつつも、ダーク撮影に要する時間、利用する処理能力、発熱、バッテリの消耗を抑制できる。
【0069】
なお、コントローラ135は、ダーク撮影によって取得されたダーク画像のデータを撮影条件データと紐付けて、例えばメモリカード142および/またはフラッシュメモリ145に蓄積してもよい。後に合致する撮影条件でダーク撮影を行う際には、保存していたダーク画像データを読み出してダーク補正を行うことができる。ダーク撮影を省略できるため、迅速にダーク補正動作を行うことができる。
【0070】
なお、上述のダーク撮影を行ってダーク画像を蓄積することに代えて、種々の撮影条件の下でデジタルカメラ100のメーカが予めダーク画像を蓄積しておいてもよい。ダーク撮影を行う必要がなくなるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0071】
ただし、デジタルカメラ100の使用を継続することにより、紫外線等によってイメージセンサ115の劣化が進行する可能性がある。例えば、イメージセンサ115には、1年で数10個の白キズが発生する可能性がある。事前にダーク画像を取得し保存しておく場合、経年変化で発生する白キズの影響を排除できない。そこで、例えば1年ごとに1回など、定期的にダーク撮影を行い、ダーク画像を更新してもよい。これにより、通常撮像動作で得られた画像にダーク補正を行って画質の改善を図ることが可能になる。
【0072】
1-2-4.計算によるダーク画像の生成
これまで説明した例では、原則としてデジタルカメラ100はダーク撮影を行ってダーク画像を取得していた。ダーク撮影には時間及び電力が必要とされるため、省略できることが好ましい。そこで本願発明者らはその方法を検討し、計算によりダーク画像を生成する方法を実現するに至った。
【0073】
図8は、イメージセンサ115の暗電流の温度特性を示すグラフである。横軸は温度を示し、縦軸は暗電流量を示している。図8に示されるように、フォトダイオードなどのイメージセンサ115の暗電流量は温度に対して指数関数的に増加する。例えば、8℃ごとに2倍に増加するとも、10℃ごとに2倍に増加するとも言われる。図8には、4種類の温度係数Tcの値に応じた4種類の曲線が示されている。具体的には各曲線は、温度係数Tcをパラメータとする下記の式によって表される。
【数1】
ここで、数式中の文字は以下のように定義される。
t:イメージセンサ115の温度
It:温度tにおける暗電流量。Iは、t=0(度)時の暗電流量を表す。
Tc:温度係数
【0074】
なお、イメージセンサ115の暗電流・温度特性は各デバイスの特性や、使用電圧等によって差異がある。より正確な温度係数が必要な場合は、実使用する環境での温度特性を測定することが好ましい。
【0075】
例として、図8の実線で示された曲線を例示して説明する。イメージセンサ115の温度が30度の場合の暗電流量がI30と表され、40度の場合の暗電流量がI40と表されている。
【0076】
イメージセンサ115の温度以外の撮影条件を一致させて2枚のダーク画像を取得した場合、それらの違い、つまりノイズの程度の違いは、暗電流量I30及びI40の違いと言える。そこで、例えば30度で取得したダーク画像(以下「基準ダーク画像」と記述する。)から、イメージセンサ115の40度でのダーク画像を求めるための規則を予め導出してくことができる。規則は、基準ダーク画像をベースとして、暗電流量の違いがノイズに与える影響(ゲイン)を加算する演算方法を規定する。30度よりも低い場合の規則は、基準ダーク画像をベースとして、暗電流量の違いがノイズに与える影響(ゲイン)を減算する演算方法を規定する。このような規則を予め設けることは容易であり、その演算方法は比較的簡単である。複雑な制御が不要であるから実装は容易である。
【0077】
または、イメージセンサ115の温度が30度及び40度の場合に実際に取得された各ダーク画像を用いて、30度のダーク画像から40度のダーク画像を算出するための1つまたは画素ごとの変換規則であってもよい。同様に、例えば温度センサ116の測定解像度に応じた温度ごとの規則を用意しておくことで、撮影条件として取得されたイメージセンサ115の温度から当該規則を参照して、基準ダーク画像からその温度のダーク画像を算出できる。さらに、温度係数ごとに、および/または、撮影条件のISO感度及びシャッタ速度の組み合わせごとに、温度に応じた規則を設けておくことが可能である。
【0078】
規則の一例として、複数のダーク画像を利用する例も考えられる。例えば、事前にコントローラ135の温度が30度のダーク画像、及び40度のダーク画像が用意されており、撮影条件データに撮影時のコントローラ135の温度が37度であることが記述されているとする。コントローラ135は、30度のダーク画像、及び40度のダーク画像を重みづけした上で平均化して、37度のダーク画像を算出してもよい。この方法によっても、ダーク撮像を行う場合よりもダーク補正に要する時間を短くでき、かつ高い補正精度を実現できる。
【0079】
デジタルカメラ100のメーカは、基準ダーク画像と当該規則とを、例えばフラッシュメモリ145に格納しておく。コントローラ135は、ダーク補正動作の実行タイミングが到来すると、通常撮像動作によって生成された少なくとも1枚の画像データの撮影条件と、予め格納されている規則とに基づいて基準ダーク画像からダーク画像を生成することができる。これにより、デジタルカメラ100は、種々の撮影条件ごとにダーク画像を撮影したり、保存したりする必要が無くなる。ダーク撮影を行う必要がなくなるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0080】
1-3.効果等
以上のように、本実施形態において、撮像装置の一例であるデジタルカメラ100は、被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能である。デジタルカメラ100は、所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成するイメージセンサ115(撮像部の一例)と、画像データ及び撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体の一例であるメモリカード142に記録するカードスロット140(記録部の一例)と、撮像部を制御するコントローラ135(制御部の一例)とを備えている。コントローラ135は、通常撮像動作を複数回行った後、各撮影条件に対応するダーク画像を用いて各画像データにダーク補正動作を行う。
【0081】
この構成により、デジタルカメラ100のユーザはシャッタチャンスを逃すことがなくなる。デジタルカメラ100はダーク補正を行うため、撮影された画像の画質の劣化を解消することができる。
【0082】
本実施形態において、デジタルカメラ100は、ユーザから、ダーク補正動作の実行タイミングの指定を受け付ける操作部150(ユーザインタフェースの一例)をさらに備えている。実行タイミングは、通常撮像動作の終了直後のタイミングとは異なるタイミングを含んでいる。通常撮像動作の終了直後にダーク補正動作を行わないため、ダーク撮影が行われることはなく、それによりユーザはシャッタチャンスを逃すことがなくなる。
【0083】
本実施形態において、デジタルカメラ100のコントローラ135は、実行タイミングが到来すると、複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と同じ条件でダーク画像を撮像し、撮像したダーク画像を用いて、少なくとも1枚の画像データにダーク補正動作を行う。
【0084】
フラッシュメモリ145(記録部の一例)は、基準ダーク画像と、基準ダーク画像からダーク画像を生成するための規則を保持している。コントローラ135は、ダーク補正動作の実行タイミングが到来すると、複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と、当該規則とに基づいて基準ダーク画像からダーク画像を生成する。そしてコントローラ135は、生成したダーク画像を用いて、少なくとも1枚の画像データにダーク補正動作を行う。ダーク撮影を行う必要がなくなるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0085】
本実施形態において、フラッシュメモリ145は、複数の撮影条件ごとに撮像された複数のダーク画像の画像データを保持している。コントローラ135は、ダーク補正動作の実行タイミングが到来すると、複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件に基づいて、複数のダーク画像のうちから1枚のダーク画像を選択し、選択したダーク画像を用いて、少なくとも1枚の画像データにダーク補正動作を行う。ダーク撮影を行う必要がなくなるため、ユーザの利便性を高めることができる。
【0086】
本実施形態において、コントローラ135は、少なくとも1枚の画像データの撮影条件が、ダーク補正が必要な条件に該当するか否かを判定し、ダーク補正が必要な条件に該当すると判断した場合、ダーク補正動作を行う。
【0087】
本実施形態において、コントローラ135は、複数の画像データの各々の撮影条件が同じである場合、共通のダーク画像を用いて複数の画像データにダーク補正動作を行う。撮影された全ての画像についてダーク撮影を行う必要がなくなるため、処理が高速化され、ユーザの利便性を高めることができる。
【0088】
(実施形態2)
実施形態1では、デジタルカメラが、通常撮影動作及びダーク補正動作を行った。本実施形態では、デジタルカメラ及びサーバ装置を含む撮像システムを説明する。なお、本実施形態にかかるデジタルカメラの構成は、実施形態1にかかるデジタルカメラ100の構成と同じである。そこで、同じ参照符号100を利用して、本実施形態にかかるデジタルカメラを説明する。
【0089】
図9は、本実施形態にかかる撮像システム200の構成例を示している。撮像システム200は、デジタルカメラ100と、サーバ装置220とを含む。デジタルカメラ100は通信モジュール160を利用して外部の機器と通信する。例えばデジタルカメラ100は、5G通信の基地局212及びインターネット等の電気通信回線214を介してサーバ装置220と互いに通信可能である。
【0090】
実施形態1と同様、本実施形態のデジタルカメラ100もまた、所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する。そして撮影条件データ及び画像データを紐付けてメモリカード142に記録する。
【0091】
本実施形態では、デジタルカメラ100は、ユーザから、操作部150を介してサーバ装置220と連携してダーク補正動作を行う指定を受け付ける。これにより、通信モジュール160は、撮影条件および当該指定をサーバ装置220に送信する。
【0092】
図10は、本実施形態にかかるデジタルカメラ100の表示モニタ130に表示されるメニュー設定画面の例を示している。ユーザが「ON 後から実行」を示す項目2bを選択すると、さらに2つのサブメニュー、「カメラで実行」及び「サーバで実行」が表示される。
【0093】
「カメラで実行」は実施形態1にかかるデジタルカメラ100の動作と同じである。
「サーバで実行」が、本実施形態にかかるデジタルカメラ100において新たに導入された項目である。「サーバで実行」を示す項目2cが選択されると、本実施形態では、サーバ装置220がダーク補正を実行する。デジタルカメラ100は、1回の撮像動作が終わる度に、撮影条件データ及び画像データをサーバ装置220に送信する。これにより、サーバ装置220において、大きなタイムラグなくサーバ装置220にダーク補正を実行させることができる。あるいはデジタルカメラ100は、複数回の通常撮像動作が終わると、複数組の撮影条件データ及び画像データをまとめてサーバ装置220に送信する。
【0094】
サーバ装置220は、受け取った撮影条件データを参照してダーク画像を決定する。ダーク画像は、予め用意されていてもよいし、計算によって算出されてもよい。以下では、ダーク画像を計算によって算出する例を説明する。
【0095】
図11は、サーバ装置220のハードウェア構成図である。
【0096】
サーバ装置220は、処理回路222と、記憶装置224と、通信回路226とを有している。
【0097】
処理回路222はCPU等を含み、CPUがプログラム(ソフトウェア)を実行することで本実施形態にかかるサーバ装置220の処理、機能を実現する。処理回路222は、CPUに代えて、所定の機能を実現するように設計された専用の電子回路で構成されるプロセッサを含んでもよい。すなわち、処理回路222は、CPU、MPU、GPU、DSU、FPGA、ASIC等の種々のプロセッサで実現できる。処理回路222は1つまたは複数のプロセッサで構成してもよい。
【0098】
記憶装置224は、サーバ装置220のワークメモリとして機能する記録媒体である。記憶装置224は、DRAMおよび/またはフラッシュROMを含み得る。本実施形態において、記憶装置224は、ダーク補正データベース(DB)224aを予め格納している。ダーク補正DB224aは、基準ダーク画像群と、ダーク画像の生成規則を含む。基準ダーク画像群は、種々の撮影条件ごとに用意された基準ダーク画像の集合である。より具体例を挙げると、シャッタ速度、ISO感度およびイメージセンサ115の温度の種々の組み合わせごとに1つのダーク画像が用意される。ダーク画像の数が多くなるほど、ダーク補正の精度は高くなると考えられる。しかしながら、トレードオフとしてダーク画像の総データサイズが増加する。当業者であれば、ダーク画像の総データサイズ等の要件を考慮して、シャッタ速度、ISO感度およびイメージセンサ115の温度の各段数を、適切に設定可能である。ダーク画像の生成規則は、所与の撮影条件と基準ダーク画像とからダーク画像を生成するための規則である。規則の例は実施形態1において説明した内容と同じである。
【0099】
通信回路226は、例えばイーサネット(登録商標)の通信端子、USB(登録商標)端子などの通信インタフェースである。通信回路226は、IEEE802.11、4G、または5G等の規格に準拠して通信を行ってもよい。通信回路226は、デジタルカメラ100から撮影条件およびデジタルカメラ100とサーバ装置220とが連携して動作することを指定する指示を受信する。
【0100】
図12は、撮像システム200を構成するデジタルカメラ100及びサーバ装置220の動作を説明する図である。
【0101】
デジタルカメラ100が通常撮像動作を実行した後、1組または複数組の撮影条件データ及び画像データをサーバ装置220に送信する。
【0102】
サーバ装置220の処理回路222は、撮影条件に基づいてダーク補正DB224aを参照し、デジタルカメラ100が撮影した画像データに用いられるダーク画像を決定する。具体的には、処理回路222は、デジタルカメラ100から受信した撮影条件に基づいてダーク補正DB224aを参照し、ダーク補正に使用するダーク画像を決定する。処理回路222は、ダーク画像の画像データを利用して、デジタルカメラ100から受信した画像にダーク補正動作を行う。処理回路222は、ダーク補正動作によって得られた修復画像データを、通信回路226を介してデジタルカメラ100に送信する。
【0103】
デジタルカメラ100はサーバ装置220から修復画像データを受信し、例えばメモリカード142に格納する。デジタルカメラ100はダーク撮影のみならずダーク補正動作を行う必要も無くなり、処理負荷が大幅に軽減される。そのため、ダーク補正動作のための処理プログラム及びバッファメモリの確保が不要になり、製造コストの削減及びユーザの利便性の向上を実現できる。
【0104】
なお、上述の例ではサーバ装置220がダーク補正動作を行ったが、デジタルカメラ100がダーク補正を行ってもよい。この場合、デジタルカメラ100は、撮影条件データをサーバ装置220に送信するが、画像データは送信しなくてよい。一方のサーバ装置220は、撮影条件に応じたダーク画像の決定及びデジタルカメラ100への送信を行う。そしてデジタルカメラ100が、受信したダーク画像データを利用してダーク補正を行う。デジタルカメラ100は依然としてダーク撮影を行う必要はないため、処理が高速化され、ユーザの利便性を高めることができる。
【0105】
(本開示の態様)
以上説明したように、本開示は、以下の態様を含む。
【0106】
<態様1>
被写体像を撮像して画像データを生成する通常撮像動作、および、前記画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行うことが可能な撮像装置であって、
所定の撮影条件でシャッタを開いて前記通常撮像動作を行い、画像データを生成する撮像部と、
前記画像データ及び前記撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する記録部と、
前記撮像部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記通常撮像動作を複数回行った後、各撮影条件に対応するダーク画像を用いて各画像データにダーク補正動作を行う、撮像装置。
【0107】
<態様2>
ユーザから、前記ダーク補正動作を行う実行タイミングの指定を受け付けるユーザインタフェースをさらに備え、
前記実行タイミングは、前記通常撮像動作の終了直後のタイミングとは異なるタイミングを含む、態様1に記載の撮像装置。
【0108】
<態様3>
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と同じ条件で前記ダーク画像を撮像し、撮像した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、態様2に記載の撮像装置。
【0109】
<態様4>
前記記録部は、基準ダーク画像と、前記基準ダーク画像から前記ダーク画像を生成するための規則を保持しており、
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件と、前記規則とに基づいて前記基準ダーク画像から前記ダーク画像を生成し、生成した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、態様2に記載の撮像装置。
【0110】
<態様5>
前記記録部は、複数の撮影条件ごとに撮像された複数のダーク画像の画像データを保持しており、
前記制御部は、前記実行タイミングが到来すると、前記複数回の通常撮像動作によって生成された複数の画像データのうち、少なくとも1枚の画像データの撮影条件に基づいて、前記複数のダーク画像のうちから1枚のダーク画像を選択し、選択した前記ダーク画像を用いて、前記少なくとも1枚の画像データに前記ダーク補正動作を行う、態様2に記載の撮像装置。
【0111】
<態様6>
前記制御部は、前記少なくとも1枚の画像データの撮影条件が、前記ダーク補正が必要な条件に該当するか否かを判定し、前記ダーク補正が必要な条件に該当すると判断した場合、前記ダーク補正動作を行う、態様3から5のいずれかに記載の撮像装置。
【0112】
<態様7>
前記制御部は、前記複数の画像データの各々の撮影条件が同じである場合、共通の前記ダーク画像を用いて前記複数の画像データにダーク補正動作を行う、態様3から5のいずれかに記載の撮像装置。
【0113】
<態様8>
互いに通信可能な撮像装置とサーバ装置とによって構成された撮像システムであって、
前記撮像装置は、
所定の撮影条件でシャッタを開いて通常撮像動作を行い、画像データを生成する撮像部と、
前記画像データ及び前記撮影条件を示す撮影条件データを記録媒体に記録する記録部と、
前記撮像部を制御する制御部と、
ユーザから、前記サーバ装置と連携して前記ダーク補正動作を行う指定を受け付けるユーザインタフェースと、
前記撮影条件および前記指定を送信する第1通信回路と
を有し、
前記サーバ装置は、
前記撮影条件および前記指定を受信する第2通信回路と、
前記撮影条件に基づいて前記画像データに用いられるダーク画像を決定するサーバ制御部と
を備え、
前記サーバ制御部は、前記撮像装置からの前記撮影条件に基づいて前記ダーク画像を決定し、
前記撮像装置および前記サーバ装置の一方は、前記画像データにダーク補正を行って修復画像データを生成するダーク補正動作を行う、撮像システム。
【0114】
<態様9>
前記サーバ装置は、基準ダーク画像、および所与の撮影条件と前記基準ダーク画像とから前記ダーク画像を生成するための規則を記憶し、または、前記撮像装置の複数の撮影条件ごとの複数のダーク画像を記憶するサーバ記憶装置を備え、
前記サーバ制御部は、
前記撮像装置からの前記撮影条件に基づいて前記サーバ記憶装置に記憶される前記基準ダーク画像と前記規則とを用いて生成されるダーク画像、または前記サーバ記憶装置に記憶される前記複数のダーク画像から選択されるダーク画像を、前記ダーク画像として決定する、態様8に記載の撮像システム。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本開示は、撮像装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0116】
100 デジタルカメラ
115 イメージセンサ
116 温度センサ
130 表示モニタ
135 コントローラ
140 カードスロット
142 メモリカード
145 フラッシュメモリ
150 操作部
160 通信モジュール
200 撮像システム
220 サーバ装置
222 処理回路
224 記憶装置
226 通信回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12