IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -袖仕切りおよび鉄道車両 図1
  • -袖仕切りおよび鉄道車両 図2
  • -袖仕切りおよび鉄道車両 図3
  • -袖仕切りおよび鉄道車両 図4
  • -袖仕切りおよび鉄道車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163690
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】袖仕切りおよび鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20241115BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
B61D33/00 Z
B61D37/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079521
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡山 孝史
(72)【発明者】
【氏名】北村 猛哲
(57)【要約】
【課題】腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易な袖仕切り、およびそのような袖仕切りを備える鉄道車両を提供すること。
【解決手段】鉄道車両1の客室28で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体24に固定されるロングシート4用の腰掛フレーム41の、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切り5において、腰掛フレーム41に面する側端面51aに、腰掛フレーム41の軌道方向の端部を結合するための結合部6を備えること、結合部6は、袖仕切り5に固定されるケース部材61と、ケース部材61に、側端面51aと平行な方向において遊動可能に保持され、かつ、腰掛フレーム41の側からボルト50を螺合することが可能なねじ座62と、を備えること。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の車内空間で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体に固定されるロングシート用の腰掛フレームの、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切りにおいて、
前記腰掛フレームに面する側端面に、前記腰掛フレームの軌道方向の端部を結合するための結合部を備えること、
前記結合部は、
前記袖仕切りに固定されるケース部材と、
前記ケース部材に、前記側端面と平行な方向において遊動可能に保持され、かつ、前記腰掛フレームの側からねじを螺合することが可能なねじ座と、
を備えること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項2】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記ねじ座の前記ねじが螺合される側とは反対側の端面と、前記ケース部材と、の間には、前記ねじ座と前記ケース部材とに所定量だけ圧縮された弾性部材が収納されていること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項3】
請求項2に記載の袖仕切りにおいて、
前記弾性部材は、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であること、
前記所定量は、前記弾性部材の厚みの40%以上、50%以下であること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項4】
請求項1に記載の袖仕切りにおいて、
前記腰掛フレームは、
前記ロングシートの背ずりを支持するための背ずり支持部と、
前記背ずり支持部に対し略直角に接続され、前記ロングシートの座面を支持するための座面支持部と、
を備え、
前記背ずり支持部が前記側構体に結合され、
前記座面支持部の、前記背ずり支持部とは反対側の端部が、前記結合部に結合されること、
を特徴とする袖仕切り。
【請求項5】
車内空間で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体に固定されるロングシート用の腰掛フレームの、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切りを備える鉄道車両において、
前記袖仕切りは、請求項1乃至4のいずれか1つに記載の袖仕切りであること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の車内空間で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体に固定されるロングシート用の腰掛フレームの、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切りおよびそのような袖仕切りを備える鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両(例えば、在来線等の通勤車両)において、車両の軌道方向に沿って乗客が座るように構成されたロングシートが用いられている。ロングシートは、ロングシートに座る乗客の体重を支持するための骨組み(以下、腰掛フレームという)に、クッションを取り付けて構成することが一般的である。
【0003】
また、鉄道車両には、ロングシートの軌道方向の端部に隣接して袖仕切りが設けられている。袖仕切りが設けられている目的は、側扉から乗り降りする乗客とロングシートに座る乗客とが接触することや、側扉から吹き込む風に乗客が晒されることを防止するためである。また、側扉に通じる通路空間は、乗車空間としても用いられるため、袖仕切りを設けることで、該通路空間の立客とロングシートに座る乗客との接触を防止することができる。なお、袖仕切りとしては、特許文献1に示すように、軽量化のために薄肉化された樹脂製の表皮部を二枚合わせ、その内部に袖仕切りの面剛性を高めるための内装材を備えるものや、特許文献2や特許文献3に示すように、袖仕切りにガラス等の透過部を設けることで、防犯性やデザイン性を高めたものが知られている。
【0004】
ところで、袖仕切りは、鉄道車両を構成する側構体に結合され、側構体に対して垂直に固定されることが一般的である。しかし、袖仕切りを側構体にのみ結合することとすると、ロングシートに座る乗客が袖仕切りに寄り掛かったときに、袖仕切りが、側構体との結合部分を支点としてぐらついてしまうおそれがある。このぐらつきを防止するために、袖仕切りを、側構体のみでなく、腰掛フレームに結合することが行われる場合がある。具体的には、側構体に袖仕切りが固定された状態で、腰掛フレームを側構体に仮固定し、腰掛フレームの軌道方向の端部と、袖仕切りの当該端部に面する端面を結合する。この結合は、例えば、腰掛フレームに設けられた通し孔に、ねじ(ボルト等)を挿通し、当該ねじを袖仕切りに設けられたねじ座に螺合することで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-156229号公報
【特許文献2】特開2013-82290号公報
【特許文献3】特開2012-11962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腰掛フレームや袖仕切りは、製造誤差により、仕上がり寸法にばらつきが生じる。このため、袖仕切りに設けられたねじ座と腰掛フレームに設けられた通し孔の位置を合わせるために、腰掛フレームの位置調整が必要である。具体的には、腰掛フレームを側構体に固定する際に、腰掛フレームと側構体の間にライナを挟むことで、腰掛フレームの枕木方向の位置を調整するのであるが、ねじ座と通し孔の位置が合うまで、ライナの厚みの調整作業が必要であり、このために、腰掛フレームを側構体に仮固定したり取り外したりを繰り返さなければならない場合がある。腰掛フレームは、一般的な約3mのロングシート用のもので約20kgと重量物であるため、位置調整の作業が容易でなく、作業に時間を要する。また、重量物であるために、1つの腰掛フレームの作業を行うために、多くの作業員が必要である。このように、作業時間、作業員の人数がかさむことで、鉄道車両の製造コストが増大するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易な袖仕切り、およびそのような袖仕切りを備える鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の袖仕切りは次のような構成を有している。
【0009】
(1)鉄道車両の車内空間で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体に固定されるロングシート用の腰掛フレームの、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切りにおいて、前記腰掛フレームに面する側端面に、前記腰掛フレームの軌道方向の端部を結合するための結合部を備えること、前記結合部は、前記袖仕切りに固定されるケース部材と、前記ケース部材に、前記側端面と平行な方向において遊動可能に保持され、かつ、前記腰掛フレームの側からねじを螺合することが可能なねじ座と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
(1)に記載の袖仕切りによれば、例えば、腰掛フレームに設けられた通し孔に、ねじ(ボルト等)を挿通し、当該ねじを、袖仕切りの結合部が備えるねじ座に螺合することで、腰掛フレームと、袖仕切りと、を結合することができる。このとき、ねじ座は、ケース部材によって、袖仕切りの側端面と平行な方向において遊動可能に保持されているため、腰掛フレームの、製造誤差による枕木方向や高さ方向における位置ずれに応じて、ねじ座の位置を調整することが可能である。つまり、ねじ座の位置を調整することで、腰掛フレームの位置ずれを吸収することが可能である。したがって、腰掛フレームと袖仕切りの結合部との位置合わせのために要した、側構体と腰掛フレームの間にかませるライナの厚みの調整作業が削減される。よって、腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易になる。
【0011】
(2)(1)に記載の袖仕切りにおいて、前記ねじ座の前記ねじが螺合される側とは反対側の端面と、前記ケース部材と、の間には、前記ねじ座と前記ケース部材とに所定量だけ圧縮された弾性部材が収納されていること、が好ましい。
【0012】
(3)(2)に記載の袖仕切りにおいて、前記弾性部材は、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であること、前記所定量は、前記弾性部材の厚みの40%以上、50%以下であること、が好ましい。
【0013】
(2)に記載の袖仕切りによれば、ねじ座とケース部材とに所定量だけ圧縮された弾性部材が、滑り止めの役割を果たすため、ねじ座の位置を遊動量の範囲内で調整したとき、その調整後の位置からねじ座が自重で遊動してしまうことを防ぐことができる。ねじ座が自重により遊動してしまっては、ねじ座の位置調整が容易でないが、ねじ座が自重で遊動することを防ぐことで、ねじ座の位置調整が容易となり、ひいては腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易になる。
【0014】
なお、上記の所定量とは、ねじ座が外部から力を受ければ遊動可能で、かつ、自重では遊動しない程度の圧力を、ねじ座に対して負荷することができる程度の、弾性部材の圧縮量である。この圧縮量(所定量)は、弾性部材の材質や物性に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、弾性部材の、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であるとき、弾性部材の厚みの40%以上、50%以下であることが好ましい。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の袖仕切りにおいて、前記腰掛フレームは、前記ロングシートの背ずりを支持するための背ずり支持部と、前記背ずり支持部に対し略直角に接続され、前記ロングシートの座面を支持するための座面支持部と、を備え、前記背ずり支持部が前記側構体に結合され、前記座面支持部の、前記背ずり支持部とは反対側の端部が、前記結合部に結合されること、が好ましい。
【0016】
ロングシートに座る乗客が袖仕切りに寄り掛かったときに、袖仕切りは、側構体との結合部分を支点としてぐらついてしまうおそれがあるため、このぐらつきを確実に防止するためには、可能な限り側構体から離れた箇所で腰掛フレームと袖仕切りを結合することが好ましい。上記(4)に記載の袖仕切りによれば、腰掛フレームの座面支持部の背ずり支持部とは反対側の端部が、結合部に結合されるため、可能な限り側構体から離れた箇所で腰掛フレームと袖仕切りを結合することができ、袖仕切りのぐらつきを確実に防止することができる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は次のような構成を有している。
【0018】
(5)車内空間で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体に固定されるロングシート用の腰掛フレームの、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切りを備える鉄道車両において、前記袖仕切りは、(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の袖仕切りであること、を特徴とする。
【0019】
(5)に記載の鉄道車両によれば、例えば、腰掛フレームに設けられた通し孔に、ねじ(ボルト等)を挿通し、当該ねじを、袖仕切りの結合部が備えるねじ座に螺合することで、腰掛フレームと、袖仕切りと、を結合することができる。このとき、ねじ座は、ケース部材によって、袖仕切りの側端面と平行な方向において遊動可能に保持されているため、腰掛フレームの、製造誤差による枕木方向や高さ方向における位置ずれに応じて、ねじ座の位置を調整することが可能である。つまり、ねじ座の位置を調整することで、腰掛フレームの位置ずれを吸収することが可能である。したがって、腰掛フレームと袖仕切りの結合部との位置合わせのために要した、側構体と腰掛フレームの間にかませるライナの厚みの調整作業が削減される。よって、腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の袖仕切りおよび袖仕切りを備える鉄道車両によれば、腰掛フレームと袖仕切りとの結合が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る鉄道車両の側面図である。
図2】本実施形態に係る鉄道車両の客室内の一部を示す図である。
図3図2の部分Aを上方から覗き込んだ様子を表す図である。
図4】本実施形態に係る袖仕切りをロングシートの側から見た図である。
図5図4のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の袖仕切りおよび袖仕切りを備える鉄道車両の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る鉄道車両1の側面図である。なお、図1中の左右方向が軌道方向であり、図1中の上下方向が垂直方向(鉄道車両1の高さ方向)である。図2は、本実施形態に係る鉄道車両1の客室28内の一部を示す図である。図3は、図2の部分Aを上方から覗き込んだ様子を表す図である。図4は、本実施形態に係る袖仕切り5をロングシート4の側から見た図である。図5は、図4のB-B断面図である。
【0023】
(鉄道車両について)
まず、本実施形態に係る鉄道車両1の概略構成について説明する。鉄道車両1は、例えば通勤車両として用いられるステンレス車両であり、図1に示すように、車両構体2と、車両構体2を支持する台車3と、を有している。
【0024】
車両構体2は、鉄道車両1の床部をなす台枠21と、台枠21の軌道方向の一方の端部(図1中の左端部)に立設されることで車両構体2の先頭部をなす前面妻構体22と、台枠21の軌道方向の他方の端部(図1中の右端部)に立設されることで車両構体2の連結部を形成する連妻構体23と、台枠21の枕木方向の両端部に立設されることで車両構体2の側面部を形成する一対の側構体24と、前面妻構体22の上端部と連妻構体23の上端部と一対の側構体24の上端部に結合されることで車両構体2の屋根部を形成する屋根構体25と、により6面体をなすように構成されている。また、車両構体2の側面には、客室28(車内空間の一例)に通じる乗客乗降口26および窓27A,27B,27C,27Dが設けられている。
【0025】
客室28には、図2に示すように、軌道方向に沿って配置された片持ち式のロングシート4が壁面29(側構体24の、客室28側の内面に相当)に固定されている。さらに、客室28には、袖仕切り5が、ロングシート4の軌道方向の端部に位置された状態で、壁面29に固定されている。
【0026】
(ロングシートについて)
次にロングシート4について説明する。ロングシート4は、図2に示すように、腰掛フレーム41およびクッション42を主要な構成要素としており、腰掛フレーム41にクッション42が取り付けられることで、乗客が背中をもたれることが可能な背ずり421および乗客が腰を下ろすことが可能な座面422が形成されている。なお、ロングシート4は、クッション42が取り付けられていると、ロングシート4の外部から腰掛フレーム41は視認できない状態になるが、図2中のロングシート4は、腰掛フレーム41が見えるように、クッション42を一部取り外した状態で図示している。
【0027】
腰掛フレーム41は、ロングシート4にかかる荷重を支えるための骨組みである。腰掛フレーム41は、複数本の縦骨43と、第1横骨44と、第2横骨45と、第3横骨46と、を備えている。
【0028】
縦骨43は、鋼材等の板材により形成されており、略コの字状の断面を備えている(図5参照)。また、縦骨43は、図2中において、壁面29の垂直方向に沿って延在する第1片431と、第1片431の床面30の側の端部に、第1片431に対して略垂直に延在するように接続された第2片432と、により略L字状に形成されている。
【0029】
第1片431は、腰掛フレーム41にクッション42が取り付けられたときに、背ずり421を支持する部分になるため、背ずり421の傾斜に合わせ、客室28の天井(不図示)の側に向かって先細り形状となるように傾斜面431aを備えている。また、第2片432は、腰掛フレーム41にクッション42が取り付けられたときに、座面422を支持する部分になるため、座面422に合わせて、客室28の天井の側を向く上面432aが、凹状に湾曲されている。
【0030】
第1横骨44、第2横骨45、第3横骨46は、鋼材等から成形された筒状体である。より具体的には、第1横骨44および第2横骨45は、ともに円筒形状であり、第3横骨46は角筒形状である。
【0031】
複数本の縦骨43同士が軌道方向に等間隔(およそ40cm間隔)に並べられた状態で、軌道方向に延在する第1横骨44と、第2横骨45と、第3横骨46と、により梯子状に連結されることで、腰掛フレーム41が形成される。具体的には、第1横骨44は、複数本の縦骨43の第1片431の先端部を連結し、第3横骨46は、複数本の縦骨43の第2片432の先端部を連結している。第2横骨45は、複数本の縦骨43の第1片431の第1片431と第2片432の接続部近傍を連結している。なお、これらの連結は、溶接により行われる。また、縦骨43の本数は、ロングシート4の軌道方向の長さに応じて定まるものであり、特に限定されない。例えば、一般的な7人掛けのロングシートであれば、8本の縦骨43を、第1横骨44、第2横骨45、第3横骨46により連結する。
【0032】
このように腰掛フレーム41が構成されることで、縦骨43の第1片431および第1横骨44により、ロングシート4の背ずり421を支持するための背ずり支持部47が形成されている。また、縦骨43の第2片432および第3横骨46により、ロングシート4の座面422を支持するための座面支持部48が形成されている。
【0033】
また、腰掛フレーム41は、腰掛フレーム41を壁面29に固定するための上部ブラケット433および下部ブラケット434を備えている。上部ブラケット433および下部ブラケット434は、ともに鋼材等からなる板材を曲げ加工することにより得られるもので、壁面29に結合される第1結合片433a,434aと、縦骨43に結合される第2結合片433b,434bとにより略L字状に形成されている。
【0034】
上部ブラケット433は、縦骨43の先端部に第2結合片433bが溶接されることで、縦骨43に固定されている。このとき、第1結合片433aが壁面29に平行となるように固定される。そして、第1結合片433aは、壁面29に設けられた上部固定台座31にボルトにより結合される。なお、第1結合片433aと上部固定台座31との間には、腰掛フレーム41の枕木方向の位置調整が可能なように、ライナ(不図示)が挟み込まれている。
【0035】
下部ブラケット434は、上部ブラケット433よりも床面30の側に位置するように、縦骨43の第1片431と第2片432とが接続されている箇所の近傍に第2結合片434bが溶接されることで、縦骨43に固定されている。このとき、第1結合片434aが壁面29に平行となるように固定される。そして、第1結合片434aは、壁面29に設けられた下部固定台座32にボルトにより結合される。なお、第1結合片434aと下部固定台座32との間には、腰掛フレーム41の枕木方向の位置調整が可能なように、ライナ(不図示)が挟み込まれている。
【0036】
以上のように、1本の縦骨43に対し、上部ブラケット433および下部ブラケット434が1つずつ設けられ、それぞれの第1結合片433a,434aが壁面29に結合されることで、腰掛フレーム41が壁面29に固定される。つまり、腰掛フレーム41が8本の縦骨43を備える場合は、合計で16個のブラケット433,434を備えることになるため、腰掛フレーム41は16か所で壁面29に固定されることになる。腰掛フレーム41は、壁面29に固定されることで、ロングシート4に座る乗客の体重を支えている。
【0037】
さらに、腰掛フレーム41は、図3に示すように、腰掛フレーム41と袖仕切り5とを結合するために用いる通し孔411を備えている。より具体的には、通し孔411は、腰掛フレーム41の軌道方向の両端部を形成する縦骨43の第2片432の客室28側(壁面29とは反対側)の先端部側に、縦骨43を軌道方向に貫通するように設けられている。通し孔411の径は、腰掛フレーム41と袖仕切り5とを結合するために用いるボルト50(図5参照)のねじ径に応じて定まるボルト50の直径より少し大きめのサイズであり、本実施形態においては、M10のボルト50に対応して、約11mmとされている。
【0038】
(袖仕切りについて)
次に袖仕切り5の構成について説明する。袖仕切り5は、ウレタン等の発泡材からなる芯材(不図示)を、ロングシート4に面する側の表板材51と、その反対側の表板材52と、により挟み込むことで形成されている。表板材51,52はともに樹脂製である。
【0039】
袖仕切り5の大きさは、袖仕切り5の上端部がロングシート4に座る乗客の頭の位置と略同一となる程度で、かつ、ロングシート4の袖仕切り5側の端面全体を覆い隠すことができる程度の大きさにされている。なお、袖仕切り5は、全体として丸みを帯びた略四角形状を備えているが、これに限定されない。また、袖仕切り5は、ガラス板からなる透光部53を備えているが、この透光部53を備えないものとしても良い。さらに、袖仕切り5には、手すりとして握り棒7が連結されているが、握り棒7が連結されていないものであっても良い。
【0040】
袖仕切り5は、腰掛フレーム41に面する側端面51aの、腰掛フレーム41の通し孔411に対応する位置に、腰掛フレーム41を結合するための結合部6(図4参照)を備えている。この結合部6は、図5に示すように、主に、側端面51aを形成する表板材51に設けられた通し孔511と、表板材51の裏面(側端面51aを形成する面とは反対側の面)に固定されたケース部材61と、ケース部材61内に保持されるねじ座62および弾性部材63から構成されている。
【0041】
ねじ座62は、正方形状の金属製の板材であり、ボルト50(例えばM10)を螺合可能な雌ねじ部621が厚み方向に貫通して設けられている。ねじ座62の、側端面51aに平行な方向の縦寸法および横寸法の大きさは、特に限定されないが、雌ねじ部621を貫通して設けても十分な強度をもつ大きさに設定される。なお、本実施形態においては38mm角である。また、ねじ座62の厚みは、特に限定されないが、ボルト50を雌ねじ部621に螺合したときに、十分なかかり代が得られる程度の厚みに設定される。なお、本実施形態においては、ねじ座62の厚みは約10mmである。
【0042】
ケース部材61は、軌道方向両端のうち、表板材51の側が開口し、他方は閉塞された箱型の金属部材である。開口している端部には、フランジ部611が側端面51aと平行に開口の外側に向って延伸されている。このフランジ部611に、表板材51に設けられた通し孔511と同径の通し孔641を有する固定金具64をリベット65により固定し、表板材51に設けられた通し孔511の位置に固定金具64に設けた通し孔641を合わせて、当該固定金具64を表板材51の裏面側に接着することで、ケース部材61が袖仕切り5の内部に固定されている。また、ケース部材61は、上記のように固定金具64に固定されることで、開口している端部が固定金具64によって閉塞される。そして、その閉塞されたケース部材61の収納空間612内に、ねじ座62が収納されている。
【0043】
収納空間612の、側端面51aに平行な方向の縦寸法および横寸法の大きさ(以下、単に寸法という)は、ねじ座62の大きさよりも大きく設定されているため、ねじ座62は、収納空間612内で、側端面51aと平行な方向において遊動可能である。この遊動量は、ねじ座62の大きさとケース部材61の大きさの差で定まるところ、収納空間612の寸法は、ねじ座62に対して約10mm大きくされているため、ねじ座62が収納空間612の中央位置に位置した状態から半径5mmの円を描くようにして遊動することが可能である。
【0044】
表板材51に設けられた通し孔511は、ねじ座62が収納空間612の中央位置にあるときに、雌ねじ部621と同軸上に位置するように設けられている。通し孔511の直径は、特に限定されないが、ねじ座62が中央位置から最大量(本実施形態においては5mm)遊動したときでも、雌ねじ部621が通し孔511の内周側に位置する程度の大きさである必要がある。なお、本実施形態においては、通し孔511の直径は、約20mmとされている。
【0045】
弾性部材63は、収納空間612において、ねじ座62のボルト50が螺合される側とは反対側の端面62aと、ケース部材61と、の間に収納されている。弾性部材63の、側端面51aに平行な方向の縦寸法および横寸法は、弾性部材63を収納空間612に隙間なく収納できる程度の大きさである。また、弾性部材63の厚みは、収納空間612の軌道方向の寸法から、ねじ座62の厚み寸法を引いた値よりも大きく設定されている。このため、弾性部材63は、ねじ座62とケース部材61とにより圧縮された状態で収納空間612に収納されている。
【0046】
このときの圧縮量は、ねじ座62が外部から力を受ければ収納空間612内を遊動可能で、かつ、ねじ座62が自重では遊動しない程度の圧力を、ねじ座62に対して負荷することができる程度に設定される。例えば、弾性部材63の、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であるとき、圧縮量は、弾性部材63の厚みの40%以上、50%以下であることが好ましい。なお、本実施形態においては、弾性部材63として、日東電工株式会社製の難燃性エプトシーラー(登録商標)を用い、厚み約30mmのものを、約16mmにまで圧縮している。
【0047】
(ロングシートの設置工程について)
次に、ロングシート4を客室28に設置する工程について説明する。ロングシート4の設置を行う時、壁面29には既に袖仕切り5が固定された状態である。
【0048】
まず、壁面29に腰掛フレーム41を仮固定する。具体的には、腰掛フレーム41の上部ブラケット433を壁面29に設けられている上部固定台座31にあてがうとともに、下部ブラケット434を、壁面29に設けられている下部固定台座32にあてがい、それぞれボルト締めを行う。この段階では、仮固定であるため、ボルトは軽く締め付けた状態である。また、ブラケット433,434と固定台座31,32との間に挟まれるライナの厚みを調整することで、枕木方向の位置を調整する場合がある。具体的には、例えば、ロングシート4の座面422の先端部が、袖仕切り5から枕木方向にはみ出してしまうような場合に、ライナの厚みを薄くする、またはライナを取り外すことで、腰掛フレーム41の位置を調整する。
【0049】
次に、腰掛フレーム41と袖仕切り5の結合を行う。具体的には、以下のようにして行う。ボルト50を、腰掛フレーム41の通し孔411に対し、袖仕切り5とは反対側から挿通させる。さらに、通し孔411に挿通したボルト50を、袖仕切り5の通し孔511に挿通した上、ねじ座62の雌ねじ部621に螺合する。このとき、ねじ座62は側端面51aと平行な方向において遊動可能であるため、腰掛フレーム41の、製造誤差による枕木方向や高さ方向における位置ずれに応じて(ただし、ねじ座62の遊動量の範囲内で)、ねじ座62の位置を調整した上で螺合することができる。つまり、ねじ座62の位置を調整することで、製造誤差による腰掛フレーム41の枕木方向や垂直方向における位置ずれを吸収することが可能である。
【0050】
ねじ座62の位置の調整は、目視により行われる。具体的には以下の通りである。腰掛フレーム41は梯子状に形成されているため、例えば、腰掛フレーム41の軌道方向の端部に位置する縦骨43と、当該縦骨43に隣接する縦骨43の間から、例えば図3に示すように、通し孔411の箇所を上方から覗き込むことができる。そして、その縦骨43と縦骨43の間を通して、上方からドライバ等の工具を通し孔411および通し孔511に挿し込み、工具でねじ座62に力を加えることで、ねじ座62の位置を調整する。ねじ座62は、弾性部材63から圧力を負荷されているため、調整後の位置から自重で遊動してしまうことがない。なお、ねじ座62の位置調整は、必ずしも工具を用いる必要はなく、例えばボルト50を用いて行うこととしても良い。
【0051】
また、ボルト50をねじ座62に螺合する際、ねじ座62の回り止めは、正方形状のねじ座62の角部が収納空間612の内壁に干渉することでなされる。さらに、ねじ座62に螺合されたボルト50の先端部は、弾性部材63が受けており、先端部が弾性部材63に食い込むようにされている。
【0052】
なお、腰掛フレーム41と袖仕切り5を結合する際には、腰掛フレーム41と袖仕切り5との間にライナ60が挟み込まれる。したがって、ライナ60の厚みを調整することで、腰掛フレーム41の軌道方向の位置を調整する場合がある。
【0053】
腰掛フレーム41と袖仕切り5の結合が完了した後は、壁面29に仮固定されていた腰掛フレーム41を完全に固定する。さらにその後、腰掛フレーム41にクッション42を取り付けることで、ロングシート4の設置が完了する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る袖仕切り5は、
(1)鉄道車両1の車内空間(客室28)で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体24に固定されるロングシート4用の腰掛フレーム41の、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切り5において、腰掛フレーム41に面する側端面51aに、腰掛フレーム41の軌道方向の端部を結合するための結合部6を備えること、結合部6は、袖仕切り5に固定されるケース部材61と、ケース部材61に、側端面51aと平行な方向において遊動可能に保持され、かつ、腰掛フレーム41の側からねじ(ボルト50)を螺合することが可能なねじ座62と、を備えること、を特徴とする。
【0055】
(1)に記載の袖仕切り5によれば、例えば、腰掛フレーム41に設けられた通し孔411に、ボルト50を挿通し、当該ボルト50を、袖仕切り5の結合部6が備えるねじ座62に螺合することで、腰掛フレーム41と、袖仕切り5と、を結合することができる。このとき、ねじ座62は、ケース部材61によって、袖仕切り5の側端面51aと平行な方向において遊動可能に保持されているため、腰掛フレーム41の、製造誤差による枕木方向や高さ方向における位置ずれに応じて、ねじ座62の位置を調整することが可能である。つまり、ねじ座62の位置を調整することで、腰掛フレーム41の位置ずれを吸収することが可能である。したがって、腰掛フレーム41と袖仕切り5の結合部6との位置合わせのために要した、側構体24(上部固定台座31,下部固定台座32)と腰掛フレーム41の間にかませるライナの厚みの調整作業が削減される。よって、腰掛フレーム41と袖仕切り5との結合が容易になる。
【0056】
具体的には、例えば、鉄道車両1両当たり7つのロングシートを設置する場合、約6人の作業者による作業で、鉄道車両1両当たり約43時間の時間を要していた。それが、本実施形態に係る袖仕切り5によれば、4人の作業者による作業で、鉄道車両1両当たり約30時間でロングシート4を設置することができた。
【0057】
(2)(1)に記載の袖仕切り5において、ねじ座62のねじ(ボルト50)が螺合される側とは反対側の端面62aと、ケース部材61と、の間には、ねじ座62とケース部材61とに所定量だけ圧縮された弾性部材63が収納されていること、が好ましい。
【0058】
(3)(2)に記載の袖仕切り5において、弾性部材63は、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であること、前記所定量は、弾性部材63の厚みの40%以上、50%以下であること、が好ましい。
【0059】
(2)に記載の袖仕切り5によれば、ねじ座62とケース部材61とに所定量だけ圧縮された弾性部材63が、滑り止めの役割を果たすため、ねじ座62の位置を遊動量の範囲内で調整したとき、その調整後の位置からねじ座62が自重で遊動してしまうことを防ぐことができる。ねじ座62が自重により遊動してしまっては、ねじ座62の位置調整が容易でないが、ねじ座62が自重で遊動することを防ぐことで、ねじ座62の位置調整が容易となり、ひいては腰掛フレーム41と袖仕切り5との結合が容易になる。
【0060】
なお、上記の所定量とは、ねじ座62が外部から力を受ければ遊動可能で、かつ、自重では遊動しない程度の圧力を、ねじ座62に対して負荷することができる程度の、弾性部材63の圧縮量である。この圧縮量(所定量)は、弾性部材63の材質や物性に応じて適宜設定されるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、弾性部材63の、JIS K6767に準拠して測定した25%圧縮硬さが0.1N/cm以上0.4N/cm以下であるとき、弾性部材63の厚みの40%以上、50%以下であることが好ましい。
【0061】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の袖仕切り5において、腰掛フレーム41は、ロングシート4の背ずり421を支持するための背ずり支持部47と、背ずり支持部47に対し略直角に接続され、ロングシート4の座面422を支持するための座面支持部48と、を備え、背ずり支持部47が側構体27に結合され、座面支持部48の、背ずり支持部47とは反対側の端部が、結合部6に結合されること、が好ましい。
【0062】
ロングシート4に座る乗客が袖仕切り5に寄り掛かったときに、袖仕切り5は、側構体24との結合部分を支点としてぐらついてしまうおそれがあるため、このぐらつきを確実に防止するためには、可能な限り側構体24から離れた箇所で腰掛フレーム41と袖仕切り5を結合することが好ましい。上記(4)に記載の袖仕切り5によれば、腰掛フレーム41の座面支持部48の背ずり支持部47とは反対側の端部が、結合部6に結合されるため、可能な限り側構体24から離れた箇所で腰掛フレーム41と袖仕切り5を結合することができ、袖仕切り5のぐらつきを確実に防止することができる。
【0063】
また、上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両1は次のような構成を有している。
(5)車内空間(客室28)で、軌道方向に沿って配置されるとともに、側構体24に固定されるロングシート4用の腰掛フレーム41の、軌道方向の端部に隣接して位置する袖仕切り5を備える鉄道車両において、袖仕切り5は、(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の袖仕切り5であること、を特徴とする。
【0064】
(5)に記載の鉄道車両1によれば、例えば、腰掛フレーム41に設けられた通し孔411に、ボルト50を挿通し、当該ボルト50を、袖仕切り5の結合部6が備えるねじ座62に螺合することで、腰掛フレーム41と、袖仕切り5と、を結合することができる。このとき、ねじ座62は、ケース部材61によって、袖仕切り5の側端面51aと平行な方向において遊動可能に保持されているため、腰掛フレーム41の、製造誤差による枕木方向や高さ方向における位置ずれに応じて、ねじ座62の位置を調整することが可能である。つまり、ねじ座62の位置を調整することで、腰掛フレーム41の位置ずれを吸収することが可能である。したがって、腰掛フレーム41と袖仕切り5の結合部6との位置合わせのために要した、側構体24(上部固定台座31,下部固定台座32)と腰掛フレーム41の間にかませるライナの厚みの調整作業が削減される。よって、腰掛フレーム41と袖仕切り5との結合が容易になる。
【0065】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、ねじ座62の遊動量を5mmとして説明しているが、遊動量は、これに限定されるものではなく、製造誤差による、腰掛フレーム41の枕木方向や垂直方向における位置ずれを考慮して定められる。また、ねじ座62の形状を正方形状として説明しているが、矩形や六角形などの多角形状でも良く、楕円形状や円形状であっても良い。また、本実施形態では腰掛フレーム41を鋼材等で形成する場合を説明したが、これに限定されるものではなく、ステンレス鋼材やアルミ合金等であっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 鉄道車両
5 袖仕切り
6 結合部
24 側構体
28 客室(車内空間の一例)
41 腰掛フレーム
50 ボルト(ねじの一例)
51a 側端面
61 ケース部材
62 ねじ座
図1
図2
図3
図4
図5