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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163691
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】放熱構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20241115BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241115BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241115BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20241115BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20241115BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L23/40 E
H01M10/613
H01M10/6555
H01M10/6556
H01M10/647
H01M10/625
H05K7/20 F
H05K7/20 Q
H02M3/00 Y
H02M7/48 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079522
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】森本 充晃
(72)【発明者】
【氏名】地田 知明
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5H031
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AB01
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA01
5F136CB06
5F136DA27
5F136EA02
5F136EA35
5H031AA09
5H031KK08
5H730ZZ01
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H770AA24
5H770PA15
5H770PA42
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】放熱対象に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした放熱構造を得ること
【解決手段】放熱構造1は、板状の発熱体10と、発熱体10の板厚方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され発熱体10を板厚方向に挟持する板状の冷却プレート20と、発熱体10を挟持した冷却プレート20同士の間に設けられる規定突起26と、冷却プレート20に接続される配管40と、を備えている。冷却プレート20には、発熱体10の板厚方向に直交する幅方向に貫通する冷媒流路24が設けられ、配管40は、冷媒流路24に連通可能に設けられ、発熱体10を挟持した状態の冷却プレート20に対して幅方向に着脱される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の発熱体と、
前記発熱体の板厚方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され、前記発熱体を前記板厚方向に挟持する冷却部材と、
前記発熱体を挟持した冷却部材同士の間に設けられ、一方の前記冷却部材から他方の前記冷却部材までの前記板厚方向の距離を規定する規定部と、
前記冷却部材に接続される配管と、を備え、
前記冷却部材には、前記板厚方向に直交する幅方向に貫通する冷媒流路が設けられ、
前記配管は、前記冷媒流路に連通可能に設けられ、前記発熱体を挟持した状態の前記冷却部材に対して、前記幅方向に着脱されることを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
前記規定部は、前記冷却部材の各々に設けられ、前記板厚方向のうち互いに近づく方向に突出し、その突出端部が互いに当接する規定突起で構成され、
前記規定突起同士が当接した状態で、一方の前記冷却部材と他方の前記冷却部材との間に、前記発熱体を保持するための保持空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の放熱構造。
【請求項3】
前記発熱体と前記冷却部材との間には、弾性を有するシート状の放熱部材が配置され、
前記保持空間の前記板厚方向の寸法をAとし、前記発熱体の前記板厚方向の寸法をtとし、前記放熱部材の前記板厚方向の寸法をt1とした場合、
t<A<(t1+t+t1)が成り立つことを特徴とする請求項2に記載の放熱構造。
【請求項4】
前記規定突起は、前記板厚方向に交差する交差方向の両端部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の放熱構造。
【請求項5】
請求項1に記載の放熱構造を備える電源装置であって、
前記発熱体は、変換器もしくは電子部品で構成され、所定方向に積層されるように複数設けられていることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1に記載の放熱構造を備える電源装置であって、
前記発熱体は、変換器もしくは電子部品で構成され、所定方向に積層されるように複数設けられ、
前記変換器もしくは電子部品と、前記冷却部材と、には、前記所定方向に貫通するそれぞれ同軸の位置決め孔が設けられ、
前記位置決め孔には、前記発熱体及び前記冷却部材の位置を固定する位置決め軸が挿入されていることを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両を含む電動自動車には、電源としてのバッテリ、モータを制御するインバータ、DC/DCコンバータ等の装置が搭載されている。これらの装置は、使用時に温度が上がりやすい一方、高温になると機能が低下することから放熱構造を備えることが多い(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。特許文献1に記載の電源装置は、板状に形成され、積層状態に配置されてなる複数の角型電池と、隣接する角型電池の対向面に挟まれて接触する厚板状の絶縁冷却スペーサと、を備えている。絶縁冷却スペーサの内部には、角型電池の積層方向に交差する幅方向に貫通する冷却通路が形成されており、この冷却通路の幅方向両端部には、外部の循環ポンプに繋がる配管が接続され、当該配管を介して冷却液が出入りすることとなっている。
【0003】
特許文献2に記載の積層型冷却器は、扁平な直方体形状に形成され板厚方向に積層される複数の電子部品と、電子部品の各々を板厚方向から挟持するように配置される複数の冷却管と、を備えている。冷却管は、電子部品と接する扁平部分と、扁平部分の幅方向外方に連続する部分と、で構成され、扁平部分の幅方向外方に連続する部分の各々には、電子部品が積層される積層方向の一方側及び他方側に突出する筒状の突出管部が形成されている。そして、一の冷却管の突出管部に、他の冷却管の突出管部が連結されることで、冷媒を供給又は排出するための流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-9853号公報
【特許文献2】特開2006-5014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電源装置では、角型電池と絶縁冷却スペーサとを交互に積層することになるため、角型電池及び絶縁冷却スペーサの積層方向の寸法誤差や、積層方向に生じる押圧力のばらつき等によって、冷却通路の位置がずれやすくなる。この構成により、積層する角型電池の数が増えるほど上記誤差やばらつき等が増え、循環ポンプに繋がる配管の接続が難しく、電源装置の組み立てが容易ではない。一方、特許文献2に記載の積層型冷却器では、電子部品を挟持した一の冷却管の突出管部を、他の冷却管の突出管部に対して電子部品の積層方向に挿入し、連結しながら冷媒流路を構成していく。このような構成では、一の突出管部を他の突出管部に挿入した状態でろう付けを行い、水密管理をしながら組み立てをする必要があり、積層型冷却器の組み立てが容易ではない。また、積層型冷却器の組み立て時には、冷却管の間に電子部品を配置した状態で、その積層方向に押圧力を加えて挟圧する必要がある。この挟圧により、冷却対象の電子部品に意図せず過度の押圧力及びその反発力が加わるおそれがある。また、突出管部の挿入量によっては、この押圧力及び反発力が変化することとなる。したがって、放熱構造の放熱性能が低下することや、突出管部も上記圧力及び反発力を受けることでその水密管理及び組み立てが容易でなくなること、等の問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、放熱対象に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした放熱構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、放熱構造は、板状の発熱体と、前記発熱体の板厚方向の一方側及び他方側にそれぞれ配置され、前記発熱体を前記板厚方向に挟持する冷却部材と、前記発熱体を挟持した冷却部材同士の間に設けられ、一方の前記冷却部材から他方の前記冷却部材までの前記板厚方向の距離を規定する規定部と、前記冷却部材に接続される配管と、を備え、前記冷却部材には、前記板厚方向に直交する幅方向に貫通する冷媒流路が設けられ、前記配管は、前記冷媒流路に連通可能に設けられ、前記発熱体を挟持した状態の前記冷却部材に対して、前記幅方向に着脱されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、放熱対象に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした放熱構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施の形態にかかる放熱構造を備えた電源装置の分解斜視図。
図2】組み立てが完了した電源装置の斜視図。
図3】(A)は、放熱構造を構成する冷却プレートの左側面図であり、(B)は、冷却プレートの背面図であり、(C)は、冷却プレートの右側面図。
図4】(A)は、冷却プレート間に生じる保持空間を示す図であり、(B)及び(C)は、組み立て中の電源装置の一部を示す図。
図5】第一変形例に係る電源装置の一部を示す分解斜視図。
図6】第二変形例に係る電源装置の一部を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、放熱構造1を備えた電源装置100の一実施の形態を、図1図4(C)に基づいて説明する。なお、本実施の形態では、図面において、矢印X、矢印Y、矢印Zは、互いに直交する方向である。そして、本実施形態では、後述する発熱体10の板厚方向であって、この発熱体10が積層される方向を矢印Xで示し、「積層方向X」と記す。そして、積層方向Xの一方側を「前側X1」、他方側を「後側X2」とする。また、発熱体10の幅方向にあたる方向を矢印Yで示し、「左右方向Y」と記す。そして、左右方向Yの一方側を「左側Y1」、他方側を「右側Y2」とする。また、発熱体10の高さ方向を矢印Zで示し、「上下方向Z」と記す。そして、上下方向Zの一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」とする。
【0011】
電源装置100は、例えば、ハイブリッド車両を含む電動自動車等に搭載される装置であり、発熱体10としての変換器もしくは電子部品を、複数積層して構成されている。変換器としては、例えば直流電力の電圧を変圧するDC/DCコンバータ等が挙げられ、電子部品としては、例えば半導体素子を内蔵する半導体モジュール等が挙げられるが、本実施形態では、発熱体10を、DC/DCコンバータとして説明する。電源装置100では、大電流が流れた際に発熱体10が高温になることから、温度を下げるための構造として、放熱構造1を備えている。図1に示すように、放熱構造1は、上述した発熱体10と、冷却プレート20(冷却部材)と、放熱シート30(放熱部材)と、配管40と、を備えている。発熱体10は、DC/DCコンバータであり、矩形板状に形成され、不図示のスイッチング素子、入力端子、出力端子等を備えて構成されている。発熱体10の積層方向Xを向く面には、放熱シート30を配置するための配置領域11が形成されている。配置領域11の外形は、放熱シート30の外形に合わせて形成され、矩形の四隅がR状に切り欠かれた形状を有している。配置領域11の上側Z1の端部と、下側Z2の端部と、には、積層方向Xに貫通する位置決め孔12が左右方向Yに間隔をあけて一対ずつ形成されている。
【0012】
冷却プレート20は、発熱体10の前側X1(板厚方向の一方側)に配置される第一冷却プレート21と、発熱体10の後側X2(板厚方向の他方側)に配置される第二冷却プレート22と、で構成されている。すなわち、冷却プレート20は、発熱体10の積層方向Xの一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。なお、第一冷却プレート21と第二冷却プレート22の構造は、同じになっていることから、ここでは、第一冷却プレート21の構造について説明し、第二冷却プレート22の説明を省略又は簡略する。第一冷却プレート21は、積層方向Xに厚みを有する厚板部材で構成され、図3(B)に示すように、矩形状の四隅をR状に切り欠いた形状を有している。第一冷却プレート21の板面の上側Z1の端部と、下側Z2の端部と、には、積層方向Xに貫通する位置決め孔23が左右方向Yに間隔をあけて一対ずつ形成されている。この位置決め孔23は、上述した発熱体10の位置決め孔12と同軸となっている。
【0013】
第一冷却プレート21の左右方向Y両側壁の中央部には、図3(A)、(C)に示すように左右方向Yに貫通する冷媒流路24が上下方向Zに並んで複数形成されている。冷媒流路24は、第一冷却プレート21内に液体又は気体で構成された冷媒を通過させるための流路である。本実施形態では、冷媒流路24は、4個形成したが、これに限られず、4個以上形成してもよいし、4個以下としてもよい。第一冷却プレート21の左右方向Y両側壁の上側Z1の端部及び下側Z2の端部には、後述する孔44と同軸の固定孔25が左右方向Y外方に開口して形成されている。固定孔25の内周面には、不図示の雌ねじが形成されている。第一冷却プレート21の上縁部と、下縁部とに、は、前側X1及び後側X2にそれぞれ突出する、規定部としての規定突起26が形成されている。
【0014】
規定突起26は、図4に示すように、第一冷却プレート21(一方の冷却部材)と第二冷却プレート22(他方の冷却部材)との間に、発熱体10を保持するための保持空間Sを区画するための突起である。第一冷却プレート21の規定突起26と、第二冷却プレートの規定突起26とは、互いに近づく方向に向かって突出し、その突出端部が互いに当接するようになっている。図4(A)に示すように、規定突起26の突出量は、当接対象となる規定突起26と当接した際に、保持空間Sの積層方向Xの寸法がAとなるように設定されている。なお、Aは、図4(B)に示すように、発熱体10の積層方向Xの寸法をtとし、放熱シート30の積層方向Xの寸法をt1とした場合、t<A<(t1+t+t1)となるように設定することが好ましい。この設定により、発熱体10が、冷却プレート20及び放熱シート30によって、積層方向Xから一定の押圧力で挟持されることとなる。この構成のように、規定部としての規定突起26は、発熱体10を挟持した冷却プレート20同士の間に設けられ、第一冷却プレート21から第二冷却プレート22までの積層方向Xの距離を規定している。なお、本実施形態では、上述したように、冷却プレート20の上縁部と下縁部とに規定突起26が形成されていたが、これに限られず、規定突起26は、冷却プレート20の左縁部と右縁部とに形成されていてもよい。すなわち、規定突起26は、冷却プレート20において、積層方向Xに交差する交差方向の両端部に形成される。
【0015】
放熱シート30は、発熱体10の前側X1(板厚方向の一方側)に配置される第一放熱シート31と、発熱体10の後側X2(板厚方向の他方側)に配置される第二放熱シート32と、で構成されている。すなわち、放熱シート30は、発熱体10の積層方向Xの一方側及び他方側にそれぞれ配置されている。なお、第一放熱シート31と第二放熱シート32の構造は、同じになっていることから、ここでは、第一放熱シート31の構造について説明し、第二放熱シート32の説明を省略又は簡略する。第一放熱シート31は、発熱体10と冷却プレート20との間に配置される部材であり、弾性を有する樹脂等の材料を用いてシート状に形成されている。第一放熱シート31は、矩形状の四隅をそれぞれ上下方向Zに二段になるように切り欠いた形状を有している。
【0016】
配管40は、冷却プレート20の冷媒流路24に冷媒を供給するための構造であり、発熱体10、冷却プレート20、及び放熱シート30の左右方向Y両側に配置される。配管40は、パイプ41と、分岐部42と、を備えている。パイプ41は、不図示のポンプに接続される管であり、積層方向Xに延びている。分岐部42は、冷却プレート20の側壁のある位置に合わせて配置される部分であり、上下方向Zに延びる直方体状に形成されている。分岐部42のそれぞれには、パイプ41及び冷媒流路24に連通する連通孔43と、上述した固定孔25に連通する孔44と、が形成されている。連通孔43の左右方向Y内側の開口縁部は、複数の冷媒流路24をまとめて覆うように上下方向Zに長い長円形状に形成されている。孔44は、左右方向Yに貫通形成されている。このように構成された配管40は、発熱体10を挟持した状態の冷却プレート20に対し、連通孔43と冷媒流路24との位置を合わせた状態で、左右方向Yに着脱される。この構成により、配管40が冷却プレート20に接続された状態では、配管40が連通孔43を介して冷媒流路24に連通することとなる。
【0017】
次に、電源装置100(放熱構造1)の組み立てについて説明する。まず、図4(B)に示すように、発熱体10の積層方向X両側に放熱シート30を配置する。その状態で、さらに積層方向X両側に冷却プレート20を配置し、図4(C)に示すように、放熱シート30及び冷却プレート20で発熱体10を挟持する。そして、放熱シート30及び冷却プレート20に挟持された発熱体10を、積層方向Xに所定個数積層していく。なお、この積層の際、冷却プレート20が積層方向Xに連続しないようにすることもできる。具体的には、図1に示すように、後側X2から順に、冷却プレート20(第二冷却プレート22)、放熱シート30(第二放熱シート32)、発熱体10、放熱シート30(第一放熱シート31)、冷却プレート20(第一冷却プレート21、第二冷却プレート22)、放熱シート30(第二放熱シート32)…と並ぶようにすることができる。すなわち、積層方向Xの両端部にある冷却プレート20以外の冷却プレート20は、第一冷却プレート21として機能するとともに第二冷却プレート22としても機能することがある。
【0018】
次に、発熱体10の位置決め孔12及び冷却プレート20の位置決め孔23に対して長軸状のボルト50(位置決め軸、図2にのみ図視)を締結し、複数の発熱体10、冷却プレート20、及び放熱シート30を1個にまとめて固定する。そして、冷却プレート20の左右方向Y両側に、配管40を接続する。この接続の際、分岐部42に形成された連通孔43と冷媒流路24とを連通させた状態で、孔44にビス60(図2にのみ図視)を挿入し、当該ビス60を冷却プレート20の固定孔25に締結する。なお、配管40を接続する際には、分岐部42の連通孔43と冷媒流路24との接続部分を密封するシール処理をすることが好ましい。このシール処理の際、使用予定の冷媒が液体の冷媒の場合には、シール処理は水密性を高めるために厳密に行うことが好ましい。一方、使用予定の冷媒が気体の冷媒の場合には、液体の冷媒を用いる場合程の密封性は求めなくてもよい。これにより、電源装置100の組み立てが完了する。
【0019】
上述した実施の形態によれば、冷却プレート20(冷却部材)によって発熱体10を積層方向X(板厚方向)に挟持することで、発熱体10から発生した熱を効率よく放熱することができる。また、第一冷却プレート21(一方の冷却部材)から第二冷却プレート22(他方の冷却部材)までの積層方向Xの距離を、規定突起26(規定部)によって規定することができる。すなわち、規定突起26によって冷却プレート20間の距離を一定に保つことができる。冷却プレート20間の距離を一定に保つことで、発熱体10を挟持する際の押圧力を一定に保つことができ、過度な押圧力やその反発力が、発熱体10に加わることを抑制することができる。また、冷却プレート20間の距離を一定に保つことができることから、冷却プレート20に設けられた冷媒流路24が、積層方向Xに一定間隔で並ぶこととなる。すなわち、冷媒流路24の両端部の位置が、予め設定した位置からずれ難い。このように冷媒流路24の両端部の位置がずれ難いことで、配管40を冷却プレート20に接続する際に、発熱体10の寸法誤差等によって、その接続が困難になることを防ぐことができる。
【0020】
また、配管40は、冷却プレート20を左右方向Y(幅方向)に貫通する冷媒流路24に連通可能に設けられ、発熱体10を挟持した状態の冷却プレート20に対して左右方向Yに着脱される。すなわち、配管40は、冷却プレート20が発熱体10を押圧する際の押圧力やその反発力が加わる方向と直交する方向に着脱される。この構成により、冷却プレート20が発熱体10を挟持する際の押圧力や、その押圧力に対する反発力は、配管40と冷却プレート20との接続部分に加わり難くなる。このような力が当該接続部分に加わり難いことで、上記押圧力又は反発力の影響を受けて、配管40の接続が困難になることを防ぐことができ、電源装置100の組み立てや、水密管理などを容易に行うことができる。また、配管40と冷却プレート20の接続部分に上記押圧力又は反発力が加わり難いことで、冷却プレート20の放熱性能が変化し難く、冷却プレート20の信頼性を安定して維持することができる。また、配管40は冷却プレート20に対して着脱できるので、冷却プレート20と一体の配管を形成する必要がなく、その分冷却プレート20の構造を簡素化することができる。したがって、放熱対象に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした放熱構造1を得ることができる。
【0021】
また、上記構成によれば、規定突起26同士が当接することで冷却プレート20間に所定の大きさの保持空間Sが生じ、この保持空間Sに発熱体10を配置することができる。この配置により、発熱体10の積層方向Xの寸法誤差に関わらず、発熱体10を冷却プレート20で挟持した際の冷却プレート20間の距離を一定に保つことができる。この構成により、例えば、配管40の複数の分岐部42の位置を個別に調整しながら冷却プレート20に接続する必要が無く、分岐部42を予めまとめた状態で、冷却プレート20に接続することが可能となる。また、この接続のためには、分岐部42の孔44と冷却プレート20の固定孔25の製造誤差を考慮すればよく、発熱体10の製造誤差を考慮する必要がないため、電源装置100の設計が容易になる。したがって、電源装置100の製造を容易にすることができる。
【0022】
また、上記構成によれば、発熱体10から発生した熱を放熱シート30によって効率よく冷却プレート20に伝熱することができるので、放熱構造1における放熱性能を向上させることができる。また、発熱体10の積層方向Xの寸法t<保持空間Sの積層方向Xの寸法Aとなっていることで、発熱体10を確実に保持空間Sに収めて、発熱体10の寸法誤差を吸収することができる。また、この構成により、上述したように発熱体10及び冷却プレート20に生じる積層方向Xの押圧力及び反発力を変動し難くすることができる。また、A<(放熱シート30の積層方向Xの寸法t1+t+t1)と設定されている。この設定により、放熱シート30は発熱体10と冷却プレート20との間で積層方向Xに圧縮されて密着し、この状態で冷却プレート20が発熱体10を保持することになる。したがって、放熱シート30及び冷却プレート20による熱の吸収効率を向上させるとともに、冷却プレート20による発熱体10の保持力を、一定の圧力に保ちながら向上させることができる。
【0023】
また、上記構成によれば、冷却プレート20の上側Z1と下側Z2とにそれぞれ設けた規定突起26によって保持空間Sを区画することができる。この構成により、上側Z1の冷却プレート20及び下側Z2の冷却プレート20のうち、一方側が他方側に対して積層方向Xに傾くことを抑制することができる。したがって、保持空間Sが積層方向Xに歪むことを抑制することができる。
【0024】
また、上記構成によれば、発熱体10(放熱対象)に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした放熱構造1を用いて、電源装置100を構成することができる。なお、この構成の場合、発熱体10が積層方向Xに積層されるように複数設けられたとしても、上述したように冷却プレート22間の距離は一定に保たれる。したがって、発熱体10に対して意図しない圧力が加わることを抑制し、放熱性能を向上させ、組み立てを容易にした状態を、安定して維持することができる。
【0025】
また、上記構成によれば、位置決め孔12及び位置決め孔23に挿入されるボルト50(位置決め軸)によって、所定方向に積層された発熱体10及び冷却プレート20の位置を固定することができる。この位置の固定により、発熱体10及び冷却プレート20の位置ずれが生じ難い電源装置100を得ることができる。
【0026】
以上、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構造はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。図5は、第一変形例に係る電源装置101の一部を示す分解斜視図である。第一変形例では、放熱シート30の積層方向Xを向く面の上側Z1の端部と、下側Z2の端部とに、積層方向Xに貫通する位置決め孔33が左右方向Yに間隔をあけて一対ずつ形成されている。位置決め孔33は、発熱体10の位置決め孔12と、冷却プレート20の位置決め孔23と、同軸になっている。そして、これらの位置決め孔12、23、33には、長軸状の位置決め軸51が挿通している。
【0027】
位置決め軸51は、積層された複数の発熱体10、冷却プレート20、及び放熱シート30が、左右方向Y及び上下方向Zに位置ずれすることを抑制するための部材である。位置決め軸51の後側X2の端部外周面には、雄ねじ51aが形成され、雄ねじ51aには、ナット52が締結されることとなっている。このような構成によれば、電源装置101を組み立てる際に、発熱体10、冷却プレート20、放熱シート30の位置ずれを防ぎながら作業を行うことができる。また、ナット52の締め付け量で発熱体10に加わる積層方向Xの押圧力を調整することができるので、発熱体10に加わる押圧力を容易かつ適切に管理することができる。
【0028】
図6は、第二変形例に係る電源装置102の一部を示す分解斜視図である。第二変形例では、冷却プレート20の位置決め孔23が、積層方向Xを向く板面の左側Y1の端部と、右側Y2の端部と、に上下方向Zに間隔をあけて一対ずつ形成されている。そして、冷却プレート20の積層方向Xを向く板面には、積層方向Xに凹む位置決め凹部27が形成されている。位置決め凹部27は、放熱シート30を収容することで放熱シート30の位置を固定する部分であり、放熱シート30の外形に合わせて矩形状に形成されている。放熱シート30は、位置決め凹部27に対して積層方向Xに向かって嵌め込まれる。なお、この嵌め込みの際、位置決め凹部27内に放熱グリス34を充填し、放熱シート30と位置決め凹部27の間に放熱グリス34を介在させてもよいし、放熱シート30に代えて放熱グリス34を直接発熱体10と冷却プレート20の間に介在させてもよい。このような構成によれば、上述した一実施の形態や第一変形例と同様の作用、効果を奏するとともに、放熱構造1に用いることが可能な放熱部材のバリエーションを増やすことができる。
【符号の説明】
【0029】
S 保持空間
X 積層方向(板厚方向)
X1 前側(一方側)
X2 後側(他方側)
1 放熱構造
10 発熱体
20 冷却プレート(冷却部材)
26 規定突起(規定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6