IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士重工業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163692
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】エンジン試験設備
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/10 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
G01M15/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079523
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【テーマコード(参考)】
2G087
【Fターム(参考)】
2G087AA02
2G087AA15
2G087BB01
2G087BB17
2G087BB28
2G087CC23
2G087EE02
2G087EE14
2G087EE29
(57)【要約】
【課題】エンジンを保護する。
【解決手段】エンジン試験設備は、下流排気管に接続可能な接続端部を備え、前記エンジンの排気ガスを排出する排気ファンを有する。前記エンジン試験設備は、上流排気管に接続可能な接続配管を備え、前記エンジンの排気ガスを取り込む貯蔵タンクを有する。前記エンジン試験設備は、前記接続配管に取り付けられ、オープン状態とクローズ状態とに作動するタンクバルブを有する。前記エンジン試験設備は、前記タンクバルブを制御する制御システムを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン本体の排気ポートに接続される上流排気管と、前記上流排気管に接続される触媒コンバータと、前記触媒コンバータに接続される下流排気管と、を備えたエンジンの試験運転に用いられるエンジン試験設備であって、
前記下流排気管に接続可能な接続端部を備え、前記エンジンの排気ガスを排出する排気ファンと、
前記上流排気管に接続可能な接続配管を備え、前記エンジンの排気ガスを取り込む貯蔵タンクと、
前記接続配管に取り付けられ、前記接続配管を連通させるオープン状態と遮断するクローズ状態とに作動するタンクバルブと、
互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記タンクバルブを制御する制御システムと、
を有する、エンジン試験設備。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジン試験設備において、
前記制御システムは、
前記エンジンの運転中に、前記タンクバルブをオープン状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに取り込む第1ステップと、
前記第1ステップを実行した後に、前記タンクバルブをクローズ状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに保持する第2ステップと、
前記第2ステップを実行した後において前記エンジンが緊急停止する場合に、前記タンクバルブをオープン状態に制御し、前記貯蔵タンクから前記触媒コンバータに向けて排気ガスを放出する第3ステップと、を実行する、
エンジン試験設備。
【請求項3】
請求項1に記載のエンジン試験設備において、
前記貯蔵タンクは、前記接続配管としての第1配管と、前記下流排気管に接続可能な第2配管と、を有し、
前記エンジン試験設備は、前記タンクバルブとしての第1バルブと、前記第2配管に取り付けられてオープン状態とクローズ状態とに作動する第2バルブと、を有し、
前記制御システムは、
前記エンジンの運転中に、前記第1バルブをオープン状態に制御し、かつ前記第2バルブをオープン状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに取り込む第1ステップと、
前記第1ステップを実行した後に、前記第1バルブをクローズ状態に制御し、かつ前記第2バルブをクローズ状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに保持する第2ステップと、
前記第2ステップを実行した後において前記エンジンが緊急停止する場合に、前記第1バルブをオープン状態に制御し、かつ前記第2バルブをクローズ状態に保持し、前記貯蔵タンクから前記触媒コンバータに向けて排気ガスを放出する第3ステップと、を実行する、
エンジン試験設備。
【請求項4】
請求項1に記載のエンジン試験設備において、
前記接続配管に取り付けられ、前記タンクバルブに並列に配置される圧送機を有し、
前記制御システムは、
前記エンジンの運転中に、前記タンクバルブをオープン状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに取り込む第1ステップと、
前記第1ステップを実行した後に、前記タンクバルブをクローズ状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに保持する第2ステップと、
前記第2ステップを実行した後において前記エンジンが緊急停止する場合に、前記タンクバルブをクローズ状態に保持したまま前記圧送機を駆動し、前記貯蔵タンクから前記触媒コンバータに向けて排気ガスを放出する第3ステップと、を実行する、
エンジン試験設備。
【請求項5】
請求項1に記載のエンジン試験設備において、
前記貯蔵タンクは、前記接続配管としての第1配管と、前記下流排気管に接続可能な第2配管と、を有し、
前記エンジン試験設備は、前記タンクバルブとしての第1バルブと、前記第2配管に取り付けられてオープン状態とクローズ状態とに作動する第2バルブと、前記第2配管に取り付けられて前記第2バルブに直列に配置される圧送機と、を有し、
前記制御システムは、
前記エンジンの運転中に、前記第1バルブをオープン状態に制御し、かつ前記第2バルブをオープン状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに取り込む第1ステップと、
前記第1ステップを実行した後に、前記第1バルブをクローズ状態に制御し、かつ前記第2バルブをクローズ状態に制御し、前記エンジンの排気ガスを前記貯蔵タンクに保持する第2ステップと、
前記第2ステップを実行した後において前記エンジンが緊急停止する場合に、前記第1バルブをオープン状態に制御し、前記第2バルブをオープン状態に制御し、かつ前記圧送機を駆動して前記下流排気管から前記貯蔵タンクに排気ガスを取り込み、前記貯蔵タンクと前記触媒コンバータとの間で排気ガスを循環させる第3ステップと、を実行する、
エンジン試験設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジン試験設備に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの試験運転を実施するため、ダイナモメータ等を備えたエンジン試験設備が開発されている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-303897号公報
【特許文献2】特開2004-117259号公報
【特許文献3】特開2011-242194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、試験運転中のエンジンに異常燃焼等が認められた場合には、エンジンおよびエンジン試験設備を保護する観点から、エンジンを緊急停止させることが一般的である。しかしながら、空燃比がリッチである等のエンジン運転状況によっては、エンジンが緊急停止されると触媒コンバータの温度が過度に上昇し、触媒コンバータを劣化させてしまう虞がある。このため、試験運転中のエンジンが緊急停止した場合であっても、触媒コンバータの温度上昇を抑制してエンジンを保護することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示によれば、エンジン試験設備は、エンジン本体の排気ポートに接続される上流排気管と、前記上流排気管に接続される触媒コンバータと、前記触媒コンバータに接続される下流排気管と、を備えたエンジンの試験運転に用いられるエンジン試験設備であって、前記下流排気管に接続可能な接続端部を備え、前記エンジンの排気ガスを排出する排気ファンと、前記上流排気管に接続可能な接続配管を備え、前記エンジンの排気ガスを取り込む貯蔵タンクと、前記接続配管に取り付けられ、前記接続配管を連通させるオープン状態と遮断するクローズ状態とに作動するタンクバルブと、互いに通信可能に接続されるプロセッサおよびメモリを備え、前記タンクバルブを制御する制御システムと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、エンジンを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図2】一実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図3】制御ユニットの基本構造の一例を示す図である。
図4】エンジン保護制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図5】エンジン保護制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。
図6A】エンジン保護制御の実行状況の一例を示す図である。
図6B】エンジン保護制御の実行状況の一例を示す図である。
図6C】エンジン保護制御の実行状況の一例を示す図である。
図7A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図7B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図8A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図8B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図9A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図9B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図9C】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図10A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図10B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図11A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図11B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図12A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図12B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図12C】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図13A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図13B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図13C】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図14A】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
図14B】他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の構成や要素については、同一の符号を付して繰り返しの説明を省略する。
【0009】
<第1実施形態>
<エンジン試験設備>
図1および図2は一実施形態であるエンジン試験設備10を示す図である。図1にはエンジン20が取り外された状態のエンジン試験設備10が示されており、図2にはエンジン20が取り付けられた状態のエンジン試験設備10が示されている。
【0010】
図1に示すように、エンジン試験設備10は、貯蔵タンク11を備えたタンクユニット12と、ダイナモメータ13を備えたダイナモユニット14と、を有している。また、エンジン試験設備10は、排気ファン15を備えた排気ユニット16と、制御ユニット17および制御盤18を備えた制御システム19と、を有している。図2に示すように、ダイナモユニット14は、エンジン20のクランク軸21に連結されており、タンクユニット12および排気ユニット16は、エンジン20の排気系22に取り付けられている。また、制御システム19は、タンクユニット12、ダイナモユニット14および排気ユニット16に対して通信可能に接続されている。
【0011】
試験運転用のエンジン20は、エンジン本体23の吸気ポート24に接続される吸気系25と、エンジン本体23の排気ポート26に接続される排気系22と、を有している。吸気系25は、吸気ポート24に接続される吸気マニホールド27と、吸気マニホールド27に取り付けられるスロットルバルブ28と、を有している。また、排気系22は、排気ポート26に接続される排気マニホールド(上流排気管)29と、排気マニホールド29に接続される触媒コンバータ30と、触媒コンバータ30に接続される下流排気管31と、を有している。排気系22の触媒コンバータ30には、Oセンサ32および温度センサ33が取り付けられている。また、エンジン20は、インジェクタ34等からなる燃料系35と、イグナイタ36等からなる点火系37と、を有している。
【0012】
タンクユニット12は、上流配管(接続配管,第1配管)41、下流配管(第2配管)42およびOセンサ43を備えた貯蔵タンク11を有している。上流配管41は、排気マニホールド29の分岐開口部29aに接続可能なフランジ部41aを有しており、下流配管42は、下流排気管31の分岐開口部31aに接続可能なフランジ部42aを有している。つまり、上流配管41は排気マニホールド29に接続可能であり、下流配管42は下流排気管31に接続可能である。
【0013】
タンクユニット12は、上流配管41に取り付けられる上流バルブ(タンクバルブ,第1バルブ)51と、下流配管42に取り付けられる下流バルブ(第2バルブ)52と、を有している。ソレノイドバルブである上流バルブ51は、上流配管41を連通させるオープン状態と、上流配管41を遮断するクローズ状態と、に作動する。また、ソレノイドバルブである下流バルブ52は、下流配管42を連通させるオープン状態と、下流配管42を遮断するクローズ状態と、に作動する。
【0014】
ダイナモユニット14は、クラッチ53、ギヤボックス54、プロペラ軸55、およびダイナモメータ13を有している。ダイナモユニット14のクラッチ53は、エンジン20のクランク軸21に連結可能な構造を有している。つまり、エンジン20のクランク軸21は、クラッチ53、ギヤボックス54およびプロペラ軸55を介してダイナモメータ13に連結される。また、ダイナモユニット14は、プロペラ軸55に取り付けられるトルクセンサ56と、ダイナモメータ13に取り付けられる回転センサ57と、を有している。
【0015】
排気ユニット16は、エンジン20からの排気ガスを屋外に排出するため、吸入ダクト58および排出ダクト59を備えた排気ファン15を有している。また、吸入ダクト58は、下流排気管31の開口端部31bに接続可能なフランジ部(接続端部)58aを有している。つまり、排気ファン15は、下流排気管31に接続可能な吸入ダクト58を有している。なお、排気ファン15として、軸流ファンまたは遠心ファン等を用いることが可能である。また、制御システム19は、ダイナモメータ13に接続される制御盤18と、作業者によって操作される操作端末60と、制御盤18および操作端末60に接続される制御ユニット17と、を有している。
【0016】
<制御システム>
図2に示すように、エンジン試験設備10は、制御ユニット17からなる制御システム19を有している。電子制御ユニットである制御ユニット17は、操作端末60および各種センサからの入力情報に基づき、エンジン試験設備10のダイナモユニット14、排気ユニット16およびタンクユニット12を制御するとともに、エンジン20の吸気系25、燃料系35および点火系37を制御する。このため、制御ユニット17は、各種センサに通信可能に接続されるとともに、制御盤18、排気ファン15、上流バルブ51、下流バルブ52、スロットルバルブ28、インジェクタ34およびイグナイタ36等に通信可能に接続されている。
【0017】
図3は制御ユニット17の基本構造の一例を示す図である。図3に示すように、制御ユニット17は、プロセッサ70およびメインメモリ(メモリ)71等が組み込まれたマイクロコントローラ72を有している。メインメモリ71には所定のプログラムが格納されており、プロセッサ70によってプログラムが実行される。プロセッサ70とメインメモリ71とは、互いに通信可能に接続されている。なお、マイクロコントローラ72に複数のプロセッサ70を組み込んでも良く、マイクロコントローラ72に複数のメインメモリ71を組み込んでも良い。
【0018】
制御ユニット17は、入力回路73、駆動回路74、通信回路75、外部メモリ76および電源回路77を有している。入力回路73は、各種センサ等から入力される信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。駆動回路74は、マイクロコントローラ72から出力される信号に基づき、前述したスロットルバルブ28およびインジェクタ34等のデバイスに対する駆動信号を生成する。通信回路75は、マイクロコントローラ72から出力される信号を、操作端末60および制御盤18等に向けた通信信号に変換する。また、通信回路75は、操作端末60および制御盤18等から受信した通信信号を、マイクロコントローラ72に入力可能な信号に変換する。さらに、電源回路77は、マイクロコントローラ72、入力回路73、駆動回路74、通信回路75および外部メモリ76等に対し、安定した電源電圧を供給する。また、不揮発性メモリ等からなる外部メモリ76には、プログラムおよび各種データ等が記憶される。
【0019】
<エンジン保護制御>
エンジン試験設備10によって実行されるエンジン保護制御について説明する。このエンジン保護制御は、エンジン緊急停止時にエンジン20を保護する観点から実行される制御である。なお、エンジン20を緊急停止させるための緊急停止条件として、例えば、ノッキング等の異常燃焼が発生すること、混合気を燃焼させることが困難となる失火現象が発生すること、排気ガスの温度が基準上限値を超えて上昇することがある。
【0020】
図4および図5はエンジン保護制御の実行手順の一例を示すフローチャートである。なお、図4および図5に示したフローチャートは、符号Aの箇所で互いに接続されている。また、図4および図5に示したエンジン保護制御の各ステップは、制御システム19を構成するプロセッサ70によって実行されるステップである。また、図6A図6Bおよび図6Cは、エンジン保護制御の実行状況の一例を示す図である。なお、図6A以降の各図面においては、クロスハッチングを用いて貯蔵タンク11およびその近傍に存在する排気ガスを示している。
【0021】
図4に示すように、制御システム19は、ステップS10に進み、エンジン試験運転の前段階である準備モードが開始されているか否かを判定する。なお、準備モードは、エンジン20を始動して暖機運転を実施する制御モードであり、作業者が所定の開始操作を行うことで実行される制御モードである。制御システム19は、ステップS10において、準備モードが開始されていると判定した場合に、ステップS11に進み、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、ステップS12に進み、排気ファン15の駆動を開始する。
【0022】
続いて、制御システム19は、ステップS13に進み、エンジン20が始動されているか否かを判定する。制御システム19は、エンジン20が始動されていると判定すると、ステップS15に進み、エンジン20の暖機運転を実行する。また、制御システム19は、エンジン20の暖機運転を開始すると、ステップS16に進み、冷却水温等に基づきエンジン20の暖機運転が完了しているか否かを判定する。制御システム19は、エンジン20の暖機運転が完了していないと判定した場合に、ステップS14に戻り、エンジン20の暖機運転を継続する。一方、制御システム19は、エンジン20の暖機運転が完了していると判定した場合に、ステップS16に進み、所定の高負荷領域におけるエンジン運転を開始する。
【0023】
制御システム19は、高負荷領域でのエンジン運転を開始すると、ステップS17に進み、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御する。ここで、図6Aに示すように、上流バルブ51および下流バルブ52がオープン状態に制御されると、排気系22を流れる排気ガスの一部が貯蔵タンク11に流入する。つまり、矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク11に流れた後に、貯蔵タンク11から下流バルブ52および下流配管42を経て下流排気管31に流れる。これにより、貯蔵タンク11内の空気を排気ガスに置換することができ、貯蔵タンク11内を排気ガスで満たすことができる。すなわち、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御するステップS17が、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む第1ステップに相当する。
【0024】
続いて、図4に示すように、制御システム19は、ステップS18に進み、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了しているか否かを判定する。なお、制御システム19は、Oセンサ43によって検出される貯蔵タンク11内の酸素濃度が所定値を下回る場合に、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了していると判定する。制御システム19は、ステップS18において、排気ガス充填が完了していないと判定すると、ステップS16に戻り、高負荷領域でのエンジン運転を継続するとともに、ステップS17に進み、上流バルブ51および下流バルブ52のオープン状態を継続する。
【0025】
一方、制御システム19は、ステップS18において、排気ガス充填が完了していると判定すると、図5に示すように、ステップS19に進み、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御する。ここで、図6Bに示すように、上流バルブ51および下流バルブ52がクローズ状態に制御されると、排気系22から遮断される貯蔵タンク11内に排気ガスが溜められた状態となる。すなわち、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御するステップS19が、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する第2ステップに相当する。
【0026】
続いて、図5に示すように、制御システム19は、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御すると、ステップS20に進み、所定の試験運転モードに従ってエンジン20の試験運転を実行する。制御システム19は、試験運転モードに従ってエンジン20の試験運転を開始すると、ステップS21に進み、ノッキング発生等の緊急停止条件が成立しているか否かを判定する。そして、制御システム19は、緊急停止条件が成立していないと判定すると、ステップS20に戻り、エンジン20の試験運転を継続する。一方、制御システム19は、緊急停止条件の成立によってエンジン20が緊急停止される状況であると判定すると、ステップS22に進み、スロットルバルブ28を全閉状態に制御する。続いて、制御システム19は、ステップS23に進み、排気ファン15の駆動を継続するとともに、ステップS24に進み、上流バルブ51をクローズ状態からオープン状態に制御し、下流バルブ52をクローズ状態に保持する。
【0027】
ここで、図6Cに示すように、排気ファン15の駆動を継続したまま上流バルブ51がオープン状態に制御されると、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク11内の排気ガスが排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク11内の排気ガスが排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、上流バルブ51をクローズ状態からオープン状態に制御し、上流バルブ51をクローズ状態に保持するステップS24が、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップに相当する。
【0028】
前述したように、緊急停止条件の成立に伴ってエンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51がクローズ状態からオープン状態に切り替えられ、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0029】
しかも、エンジン緊急停止時に触媒コンバータ30に供給される排気ガスは、排気系22から遮断された貯蔵タンク11内において冷却された状態であるため、この点からも触媒コンバータ30の温度上昇を抑制することができる。なお、貯蔵タンク11の容量は、緊急停止中に十分な排気ガスを放出可能な大きさに設定される。さらに、エンジン20の緊急停止時においては、スロットルバルブ28が全閉状態に制御されるため、緊急停止直後から排気系22に供給される酸素を減少させることができ、この点からも触媒コンバータ30の温度上昇を抑制することができる。
【0030】
この触媒コンバータ30に対する排気ガスの供給は、触媒コンバータ30を適切に保護する観点から、触媒コンバータ30の温度(以下、触媒温度と記載する。)が所定値以下になるまで継続される。つまり、制御システム19は、ステップS25に進み、触媒温度が所定値以下であるか否かを判定する。制御システム19は、触媒温度が所定値を上回ると判定すると、ステップS22に戻り、ステップS22以降の各ステップを継続する。一方、制御システム19は、触媒温度が所定値以下であると判定すると、ステップS26に進み、上流バルブ51をクローズ状態に制御するとともに排気ファン15を停止させる。
【0031】
<第2実施形態>
図1に示した例では、上流配管41に対して上流バルブ51だけを取り付けているが、これに限られることはなく、上流配管41に対して上流バルブ51および圧送機を取り付けても良い。
【0032】
図7Aおよび図7Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備80を示す図である。図7Aには貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図7Bには貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図7Aおよび図7Bにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図7Aおよび図7Bに示したエンジン試験設備80は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0033】
図7Aに示すように、エンジン試験設備80は、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク11を有している。上流配管41には、上流バルブ51が取り付けられるとともに、上流バルブ51に直列に配置される圧送機としての軸流ファン81が取り付けられている。また、軸流ファン81は、排気ガスを双方向に圧送することが可能である。つまり、軸流ファン81は、排気マニホールド29から貯蔵タンク11に排気ガスを吸引する吸引状態と、貯蔵タンク11から排気マニホールド29に排気ガスを吐出する吐出状態と、に作動可能である。
【0034】
エンジン試験設備80は、貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、軸流ファン81を吸引状態に制御する。これにより、図7Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク11に流れた後に、貯蔵タンク11から下流バルブ52および下流配管42を経て下流排気管31に流れる。これにより、貯蔵タンク11内の空気を排気ガスに置換することができ、貯蔵タンク11内を排気ガスで満たすことができる。すなわち、エンジン試験設備80は、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ軸流ファン81を吸引状態に制御するステップを実行する。
【0035】
また、エンジン試験設備80は、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、軸流ファン81を停止させる。これにより、エンジン試験設備80は、貯蔵タンク11を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク11内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備80は、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する第2ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、かつ軸流ファン81を停止させるステップを実行する。
【0036】
そして、図7Bに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備80は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51をオープン状態に制御し、下流バルブ52をクローズ状態に保持し、軸流ファン81を吐出状態に制御する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク11内の排気ガスが、軸流ファン81によって圧送されるとともに排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク11内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備80は、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、下流バルブ52をクローズ状態に保持し、かつ軸流ファン81を吐出状態に制御するステップを実行する。
【0037】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をオープン状態に切り替え、軸流ファン81を吐出状態に制御することにより、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0038】
このように、上流配管41に軸流ファン81を設けることにより、エンジン緊急停止時には貯蔵タンク11から排気ガスを圧送することができる。これにより、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に多くの排気ガスを供給することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。なお、上流バルブ51に直列に配置される圧送機として、軸流送風機である軸流ファン81を用いているが、これに限られることはなく、排気ガスの圧力を高めて移動させることが可能な圧送機であれば良い。例えば、上流バルブ51に直列に配置される圧送機として、軸流ポンプ等の軸流圧縮機を用いることも可能である。
【0039】
<第3実施形態>
図7Aに示した例では、上流バルブ51に直列に配置される軸流ファン81を上流配管41に取り付けているが、これに限られることはなく、上流バルブ51に並列に配置される圧送機を上流配管41に取り付けても良い。
【0040】
図8Aおよび図8Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備90を示す図である。図8Aには貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図8Bには貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図8Aおよび図8Bにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図8Aおよび図8Bに示したエンジン試験設備90は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0041】
図8Aに示すように、エンジン試験設備90は、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク11を有している。上流配管41には、上流バルブ51が取り付けられるとともに、上流バルブ51に並列に配置される容積ポンプ(圧送機)91が取り付けられている。この容積ポンプ91を駆動することにより、貯蔵タンク11から排気マニホールド29に向けて排気ガスを圧送することができる。また、容積ポンプ91は、排気マニホールド29から貯蔵タンク11に向かう排気ガスを遮断する逆止弁92を備えている。つまり、容積ポンプ91を駆動した場合には、排気ガスの流れによって逆止弁92が開かれるとともに、貯蔵タンク11から排気マニホールド29に向けて排気ガスが圧送される。一方、容積ポンプ91を停止させた場合には、閉じられた逆止弁92によって排気マニホールド29から貯蔵タンク11に向かう排気ガスが遮断される。
【0042】
エンジン試験設備90は、貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、容積ポンプ91を停止状態に制御する。これにより、図8Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク11に流れた後に、貯蔵タンク11から下流バルブ52および下流配管42を経て下流排気管31に流れる。これにより、貯蔵タンク11内の空気を排気ガスに置換することができ、貯蔵タンク11内を排気ガスで満たすことができる。すなわち、エンジン試験設備90は、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ容積ポンプ91を停止状態に制御するステップを実行する。
【0043】
また、エンジン試験設備90は、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、容積ポンプ91を停止状態に保持したまま、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御する。これにより、エンジン試験設備90は、貯蔵タンク11を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク11内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備90は、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する第2ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、かつ容積ポンプ91を停止状態に保持するステップを実行する。
【0044】
そして、図8Bに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備90は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に保持し、容積ポンプ91を駆動状態に制御する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク11内の排気ガスが、容積ポンプ91によって圧送されるとともに排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク11内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備90は、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に保持し、かつ容積ポンプ91を駆動状態に制御するステップを実行する。
【0045】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をクローズ状態に保持しつつ、容積ポンプ91を駆動状態に制御することにより、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0046】
このように、上流配管41に容積ポンプ91を設けることにより、エンジン緊急停止時には貯蔵タンク11から排気ガスを圧送することができる。これにより、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に多くの排気ガスを供給することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。なお、上流バルブ51に並列に配置される圧送機として、ギヤポンプ、ベーンポンプ、二葉ブロワ等の容積ポンプ91を用いているが、これに限られることはなく、排気ガスの圧力を高めて移動させることが可能な圧送機であれば良い。例えば、上流バルブ51に並列に配置される圧送機として、軸流ファンまたは遠心ファン等を用いることも可能である。
【0047】
<第4実施形態>
図1に示した例では、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク11を採用しているが、これに限られることはなく、配管として上流配管41のみを備えた貯蔵タンクを採用しても良い。
【0048】
図9A図9Bおよび図9Cは、他の実施形態であるエンジン試験設備100を示す図である。図9Aには貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図9Bには貯蔵タンク101内に排気ガスを保持する試験運転中の状況が示されており、図9Cには貯蔵タンク101から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図9A図9Cにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図9A図9Cに示したエンジン試験設備100は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0049】
図9Aに示すように、エンジン試験設備100は、上流配管41を備えた貯蔵タンク101を有している。貯蔵タンク101の上流配管41には、オープン状態とクローズ状態とに作動する上流バルブ51が取り付けられている。エンジン試験設備100は、貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51をオープン状態に制御する。これにより、図9Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク101に流れ込む。すなわち、エンジン試験設備100は、排気ガスを貯蔵タンク101に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御するステップを実行する。
【0050】
また、図9Bに示すように、エンジン試験設備100は、貯蔵タンク101に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、上流バルブ51をクローズ状態に制御する。これにより、エンジン試験設備100は、貯蔵タンク101を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク101内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備100は、排気ガスを貯蔵タンク101に保持する第2ステップとして、上流バルブ51をクローズ状態に制御するステップを実行する。
【0051】
そして、図9Cに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備100は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51をオープン状態に制御する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク101内の排気ガスが排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク101内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備100は、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御するステップを実行する。
【0052】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をオープン状態に切り替えることにより、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、上流配管41だけを備えた貯蔵タンク101を採用した場合であっても、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に排気ガスを供給することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0053】
<第5実施形態>
図9Aに示した例では、上流配管41に対して上流バルブ51だけを取り付けているが、これに限られることはなく、上流配管41に対して上流バルブ51および圧送機を取り付けても良い。
【0054】
図10Aおよび図10Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備110を示す図である。図10Aには貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図10Bには貯蔵タンク101ら排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図10Aおよび図10Bにおいて、図2および図9Aに示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図10Aおよび図10Bに示したエンジン試験設備110は、図1に示した制御システム19と同様の御システムを有している。
【0055】
図10Aに示すように、エンジン試験設備110は、上流配管41を備えた貯蔵タンク101を有している。上流配管41には、上流バルブ51が取り付けられるとともに、上流バルブ51に直列に配置される圧送機としての軸流ファン111が取り付けられている。また、軸流ファン111は、排気ガスを双方向に圧送することが可能である。つまり、軸流ファン111は、排気マニホールド29から貯蔵タンク101に排気ガスを吸引する吸引状態と、貯蔵タンク101から排気マニホールド29に排気ガスを吐出する吐出状態と、に作動可能である。
【0056】
エンジン試験設備110は、貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51をオープン状態に制御し、軸流ファン111を吸引状態に制御する。これにより、図10Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク101に流れる。すなわち、エンジン試験設備110は、排気ガスを貯蔵タンク101に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、かつ軸流ファン111を吸引状態に制御するステップを実行する。
【0057】
また、エンジン試験設備110は、貯蔵タンク101に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、上流バルブ51をクローズ状態に制御し、軸流ファン111を停止させる。これにより、エンジン試験設備110は、貯蔵タンク101を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク101内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備110は、排気ガスを貯蔵タンク101に保持する第2ステップとして、上流バルブ51をクローズ状態に制御し、かつ軸流ファン111を停止させるステップを実行する。
【0058】
そして、図10Bに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備110は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51をオープン状態に制御し、軸流ファン111を吐出状態に制御する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク101内の排気ガスが、軸流ファン111によって圧送されるとともに排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク101内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備110は、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、かつ軸流ファン111を吐出状態に制御するステップを実行する。
【0059】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をオープン状態に切り替え、軸流ファン111を吐出状態に制御することにより、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0060】
このように、上流配管41に軸流ファン111を設けることにより、エンジン緊急停止時には貯蔵タンク101から排気ガスを圧送することができる。これにより、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に多くの排気ガスを供給することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。なお、上流バルブ51に直列に配置される圧送機として、軸流送風機である軸流ファン111を用いているが、これに限られることはなく、排気ガスの圧力を高めて移動させることが可能な圧送機であれば良い。例えば、上流バルブ51に直列に配置される圧送機として、軸流ポンプ等の軸流圧縮機を用いることも可能である。
【0061】
<第6実施形態>
図10Aに示した例では、上流バルブ51に直列に配置される軸流ファン111を上流配管41に取り付けているが、これに限られることはなく、上流バルブ51に並列に配置される圧送機を上流配管41に取り付けても良い。
【0062】
図11Aおよび図11Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備120を示す図である。図11Aには貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図11Bには貯蔵タンク101から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図11Aおよび図11Bにおいて、図2および図9Aに示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図11Aおよび図11Bに示したエンジン試験設備120は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0063】
図11Aに示すように、エンジン試験設備120は、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク101を有している。上流配管41には、上流バルブ51が取り付けられるとともに、上流バルブ51に並列に配置される容積ポンプ(圧送機)121が取り付けられている。この容積ポンプ121を駆動することにより、貯蔵タンク101から排気マニホールド29に向けて排気ガスを圧送することができる。また、容積ポンプ121は、排気マニホールド29から貯蔵タンク101に向かう排気ガスを遮断する逆止弁122を備えている。つまり、容積ポンプ121を駆動した場合には、排気ガスの流れによって逆止弁122が開かれるとともに、貯蔵タンク101から排気マニホールド29に向けて排気ガスが圧送される。一方、容積ポンプ121を停止させた場合には、閉じられた逆止弁122によって排気マニホールド29から貯蔵タンク101に向かう排気ガスが遮断される。
【0064】
エンジン試験設備120は、貯蔵タンク101に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51をオープン状態に制御し、容積ポンプ121を停止状態に制御する。これにより、図11Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク101に流れる。すなわち、エンジン試験設備120は、排気ガスを貯蔵タンク101に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、かつ容積ポンプ121を停止状態に制御するステップを実行する。
【0065】
また、エンジン試験設備120は、貯蔵タンク101に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、容積ポンプ121を停止状態に保持したまま、上流バルブ51をクローズ状態に制御する。これにより、エンジン試験設備120は、貯蔵タンク101を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク101内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備120は、排気ガスを貯蔵タンク101に保持する第2ステップとして、上流バルブ51をクローズ状態に制御し、かつ容積ポンプ121を停止状態に保持するステップを実行する。
【0066】
そして、図11Bに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備120は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51をクローズ状態に保持し、容積ポンプ121を駆動状態に制御する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク101内の排気ガスが、容積ポンプ121によって圧送されるとともに排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク101内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備120は、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51をクローズ状態に保持し、かつ容積ポンプ121を駆動状態に制御するステップを実行する。
【0067】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をクローズ状態に保持しつつ、容積ポンプ121を駆動状態に制御することにより、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0068】
このように、上流配管41に容積ポンプ121を設けることにより、エンジン緊急停止時には貯蔵タンク101から排気ガスを圧送することができる。これにより、貯蔵タンク101から触媒コンバータ30に多くの排気ガスを供給することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。なお、上流バルブ51に並列に配置される圧送機として、ギヤポンプ、ベーンポンプ、二葉ブロワ等の容積ポンプ121を用いているが、これに限られることはなく、排気ガスの圧力を高めて移動させることが可能な圧送機であれば良い。例えば、上流バルブ51に並列に配置される圧送機として、軸流ファンまたは遠心ファン等を用いることも可能である。
【0069】
<第7実施形態>
図9Aに示した例では、容積が固定される貯蔵タンク101を用いているが、これに限られることはなく、容積を可変させることが可能な貯蔵タンクを用いても良い。
【0070】
図12Aおよび図12Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備を示す図である。図12Aには貯蔵タンク131に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図12Bには貯蔵タンク131内に排気ガスを保持する試験運転中の状況が示されており、図12Cには貯蔵タンク131から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図12A図12Cにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図12A図12Cに示したエンジン試験設備130は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0071】
図12Aに示すように、エンジン試験設備130は、上流配管41を備えた容積可変型の貯蔵タンク131を有している。貯蔵タンク131の上流配管41には、オープン状態とクローズ状態とに作動する上流バルブ51が取り付けられている。また、貯蔵タンク131は、シリンダ本体132と、シリンダ本体132に移動可能に収容されるピストン133と、ピストン133に連結されるロッド134を備えたアクチュエータ135と、を有している。アクチュエータ135のロッド134を縮めることにより、貯蔵タンク131の容積を拡大することができる一方、アクチュエータ135のロッド134を伸ばすことにより、貯蔵タンク131の容積を縮小することができる。
【0072】
エンジン試験設備130は、貯蔵タンク131に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51をオープン状態に制御し、アクチュエータ135を制御して貯蔵タンク131の容積を拡大する。これにより、図12Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク131に吸引される。すなわち、エンジン試験設備130は、排気ガスを貯蔵タンク131に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、かつアクチュエータ135を制御して貯蔵タンク131の容積を拡大させるステップを実行する。
【0073】
また、図12Bに示すように、エンジン試験設備130は、貯蔵タンク131に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、上流バルブ51をクローズ状態に制御する。これにより、エンジン試験設備130は、貯蔵タンク131を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク131内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備130は、排気ガスを貯蔵タンク131に保持する第2ステップとして、上流バルブ51をクローズ状態に制御し、アクチュエータ135を停止させるステップを実行する。
【0074】
そして、図12Cに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備130は、排気ファン15の駆動を継続し、上流バルブ51をオープン状態に制御し、アクチュエータ135を制御して貯蔵タンク131の容積を縮小する。これにより、矢印FL2で示すように、貯蔵タンク131内の排気ガスが、貯蔵タンク131から圧送されるとともに排気ファン15に向けて吸引されるため、貯蔵タンク131内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。すなわち、エンジン試験設備130は、貯蔵タンク131から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51をオープン状態に制御し、かつアクチュエータ135を制御して貯蔵タンク131の容積を縮小するステップを実行する。
【0075】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51をオープン状態に制御しつつ、貯蔵タンク131の容積を縮小することにより、貯蔵タンク131から触媒コンバータ30に向けて排気ガスが供給される。このように、不活性ガスである排気ガスが触媒コンバータ30に供給されると、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0076】
このように、容積可変型の貯蔵タンク131を設けることにより、エンジン緊急停止時には貯蔵タンク131から排気ガスを圧送することができる。これにより、貯蔵タンク131から触媒コンバータ30に多くの排気ガスを供給することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。なお、容積可変型の貯蔵タンクとして、シリンダ本体132およびピストン133からなる貯蔵タンク131を用いているが、これに限られることはない。例えば、容積可変型の貯蔵タンクとして、ベローズ構造の貯蔵タンクを用いることも可能である。
【0077】
<第8実施形態>
図1に示した例では、貯蔵タンク11から放出された排気ガスを触媒コンバータ30から排気ファン15に流しているが、これに限られることはなく、貯蔵タンク11から放出された排気ガスを、触媒コンバータ30から再び貯蔵タンク11に戻しても良い。
【0078】
図13A図13Bおよび図13Cは、他の実施形態であるエンジン試験設備140を示す図である。図13Aには貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図13Bには貯蔵タンク11内に排気ガスを保持する試験運転中の状況が示されており、図13Cには貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図13A図13Cにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図13A図13Cに示したエンジン試験設備140は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0079】
図13Aに示すように、エンジン試験設備140は、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク11を有している。下流配管42には、下流バルブ52が取り付けられるとともに、下流バルブ52に直列に配置される軸流ファン(圧送機)141が取り付けられている。また、軸流ファン141は、排気ガスを双方向に圧送することが可能である。つまり、軸流ファン141は、下流排気管31から貯蔵タンク11に排気ガスを吸引する吸引状態と、貯蔵タンク11から下流排気管31に排気ガスを吐出する吐出状態と、に作動可能である。
【0080】
エンジン試験設備140は、貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、軸流ファン141を吐出状態に制御する。これにより、図13Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク11に流れた後に、貯蔵タンク11から下流バルブ52および下流配管42を経て下流排気管31に流れる。これにより、貯蔵タンク11内の空気を排気ガスに置換することができ、貯蔵タンク11内を排気ガスで満たすことができる。すなわち、エンジン試験設備140は、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ軸流ファン141を吐出状態に制御するステップを実行する。
【0081】
また、図13Bに示すように、エンジン試験設備140は、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、軸流ファン141を停止させる。これにより、エンジン試験設備140は、貯蔵タンク11を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク11内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備140は、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する第2ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、かつ軸流ファン141を停止させるステップを実行する。
【0082】
そして、図13Cに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備140は、排気ファン15を停止状態に制御し、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、軸流ファン141を吸引状態に制御する。これにより、矢印FL3で示すように、貯蔵タンク11内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。しかも、軸流ファン141が吸引状態に制御されることから、触媒コンバータ30を流れる排気ガスは、触媒コンバータ30から下流側配管を経て貯蔵タンク11に吸引される。これにより、貯蔵タンク11と触媒コンバータ30との間で、排気ガスを循環させることができる。すなわち、エンジン試験設備140は、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ軸流ファン141を吸引状態に制御するステップを実行する。
【0083】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51および下流バルブ52゛をオープン状態に切り替え、軸流ファン141を吸引状態に制御することにより、貯蔵タンク11と触媒コンバータ30との間で排気ガスを循環させることができる。このように、不活性ガスである排気ガスを循環させることにより、排気ガスを触媒コンバータ30に対して継続的に供給することができ、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0084】
図13Aに示した例では、下流配管42に軸流ファン141を取り付けているが、これに限られることはなく、例えば、下流配管42および上流配管41の双方に軸流ファン等の圧送機を取り付けても良い。また、下流排気管31にシャッターバルブを取り付けることにより、貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止時に、シャッターバルブを作動させて下流排気管31を遮断しても良い。このように、シャッターバルブを用いて下流排気管31を遮断することにより、触媒コンバータ30を通過した排気ガスの全てを貯蔵タンク11に戻すことができ、触媒コンバータ30と貯蔵タンク11との間で排気ガスを効率良く循環させることができる。
【0085】
<第9実施形態>
図13Aに示した例では、下流バルブ52に直列に配置される軸流ファン141を下流配管42に取り付けているが、これに限られることはなく、下流バルブ52に並列に配置される圧送機を下流配管42に取り付けても良い。
【0086】
図14Aおよび図14Bは、他の実施形態であるエンジン試験設備150を示す図である。図14Aには貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むガス充填中の状況が示されており、図14Bには貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止中の状況が示されている。なお、図14Aおよび図14Bにおいて、図2に示した部品と同様の部品については、同一の符号を付してその説明を省略する。また、図14Aおよび図14Bに示したエンジン試験設備150は、図1に示した制御システム19と同様の制御システムを有している。
【0087】
図14Aに示すように、エンジン試験設備150は、上流配管41および下流配管42を備えた貯蔵タンク11を有している。下流配管42には、下流バルブ52が取り付けられるとともに、下流バルブ52に並列に配置される圧送機としての容積ポンプ151が取り付けられている。この容積ポンプ151を駆動することにより、下流排気管31から貯蔵タンク11に向けて排気ガスを圧送することができる。また、容積ポンプ151は、貯蔵タンク11から下流排気管31に向かう排気ガスを遮断する逆止弁152を備えている。つまり、容積ポンプ151を駆動した場合には、排気ガスの流れによって逆止弁152が開かれるとともに、下流排気管31から貯蔵タンク11に向けて排気ガスが圧送される。一方、容積ポンプ151を停止させた場合には、閉じられた逆止弁152によって貯蔵タンク11から下流排気管31に向かう排気ガスが遮断される。
【0088】
エンジン試験設備150は、貯蔵タンク11に排気ガスを取り込むため、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、容積ポンプ151を停止状態に制御する。これにより、図14Aに矢印FL1で示すように、排気マニホールド29を流れる排気ガスの一部は、上流配管41および上流バルブ51を経て貯蔵タンク11に流れた後に、貯蔵タンク11から下流バルブ52および下流配管42を経て下流排気管31に流れる。これにより、貯蔵タンク11内の空気を排気ガスに置換することができ、貯蔵タンク11内を排気ガスで満たすことができる。すなわち、エンジン試験設備150は、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む第1ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ容積ポンプ151を停止状態に制御するステップを実行する。
【0089】
また、エンジン試験設備150は、貯蔵タンク11に対する排気ガスの充填が完了したと判定すると、容積ポンプ151を停止状態に保持したまま、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御する。これにより、エンジン試験設備150は、貯蔵タンク11を排気系22から遮断することができ、貯蔵タンク11内に排気ガスを溜めておくことができる。すなわち、エンジン試験設備150は、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する第2ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御し、かつ容積ポンプ151を停止状態に保持するステップを実行する。
【0090】
そして、図14Bに示すように、試験運転中のエンジン20が緊急停止されると、エンジン試験設備150は、排気ファン15を停止状態に制御し、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、容積ポンプ151を駆動状態に制御する。これにより、矢印FL3で示すように、貯蔵タンク11内の排気ガスは、排気マニホールド29を経て触媒コンバータ30に供給される。しかも、容積ポンプ151を駆動状態に制御されることから、触媒コンバータ30を流れる排気ガスは、触媒コンバータ30から下流側配管を経て貯蔵タンク11に圧送される。これにより、貯蔵タンク11と触媒コンバータ30との間では、排気ガスを循環させることができる。すなわち、エンジン試験設備150は、貯蔵タンク11から触媒コンバータ30に向けて排気ガスを放出する第3ステップとして、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御し、かつ容積ポンプ151を駆動状態に制御するステップを実行する。
【0091】
前述したように、エンジン20が緊急停止した場合には、上流バルブ51および下流バルブ52゛をオープン状態に切り替え、容積ポンプ151を駆動状態に制御することにより、貯蔵タンク11と触媒コンバータ30との間で排気ガスを循環させることができる。このように、不活性ガスである排気ガスを循環させることにより、排気ガスを触媒コンバータ30に対して継続的に供給することができ、触媒コンバータ30に残存する燃料成分の燃焼を抑制することができる。これにより、試験運転中のエンジン20が緊急停止された場合であっても、触媒コンバータ30における過度な温度上昇を回避することができ、エンジン20の触媒コンバータ30を過度な温度上昇から保護することができる。
【0092】
図14Aに示した例では、下流配管42に容積ポンプ151を取り付けているが、これに限られることはなく、例えば、下流配管42および上流配管41の双方に容積ポンプ等の圧送機を取り付けても良い。また、下流排気管31にシャッターバルブを取り付けることにより、貯蔵タンク11から排気ガスを放出する緊急停止時に、シャッターバルブを作動させて下流排気管31を遮断しても良い。このように、シャッターバルブを用いて下流排気管31を遮断することにより、触媒コンバータ30を通過した排気ガスの全てを貯蔵タンク11に戻すことができ、触媒コンバータ30と貯蔵タンク11との間で排気ガスを効率良く循環させることができる。
【0093】
なお、下流バルブ52に並列に配置される圧送機として、ギヤポンプ、ベーンポンプ、二葉ブロワ等の容積ポンプ151を用いているが、これに限られることはなく、排気ガスの圧力を高めて移動させることが可能な圧送機であれば良い。例えば、下流バルブ52に並列に配置される圧送機として、軸流ファンまたは遠心ファン等を用いることも可能である。
【0094】
<他の実施形態>
本開示は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。図示する例では、エンジン試験設備10に対して試験運転用のエンジン単体を取り付けているが、これに限られることはない。例えば、エンジン20およびトランスミッションからなるパワーユニットを、エンジン試験設備10に対して取り付けても良い。また、図示する例では、排気マニホールド29に上流配管41を介して貯蔵タンク11を接続しているが、これに限られることはなく、触媒コンバータ30の上流側に接続される排気管であれば、排気マニホールド29以外の排気管に上流配管41を介して貯蔵タンク11を接続しても良い。
【0095】
前述の説明では、排気ガスを貯蔵タンク11に取り込む際に、上流バルブ51および下流バルブ52をオープン状態に制御しているが、各バルブ51,52をオープン状態に制御するタイミングについては、如何なるタイミングであっても良い。つまり、上流バルブ51および下流バルブ52を同じタイミングでオープン状態に制御しても良く、下流バルブ52よりも先に上流バルブ51をオープン状態に制御しても良く、上流バルブ51よりも先に下流バルブ52をオープン状態に制御しても良い。
【0096】
前述の説明では、排気ガスを貯蔵タンク11に保持する際に、上流バルブ51および下流バルブ52をクローズ状態に制御しているが、各バルブ51,52をクローズ状態に制御するタイミングについては、如何なるタイミングであっても良い。つまり、上流バルブ51および下流バルブ52を同じタイミングでクローズ状態に制御しても良く、下流バルブ52よりも先に上流バルブ51をクローズ状態に制御しても良く、上流バルブ51よりも先に下流バルブ52をクローズ状態に制御しても良い。
【符号の説明】
【0097】
10…エンジン試験設備、11…貯蔵タンク、15…排気ファン、19…制御システム、20…エンジン、23…エンジン本体、26…排気ポート、29…排気マニホールド(上流排気管)、30…触媒コンバータ、31…下流排気管、41…上流配管(接続配管,第1配管)、42…下流配管(第2配管)、51…上流バルブ(タンクバルブ,第1バルブ)、52…下流バルブ(第2バルブ)、58a…フランジ部(接続端部)、70…プロセッサ、71…メインメモリ(メモリ)、80…エンジン試験設備、90…エンジン試験設備、91…容積ポンプ(圧送機)、100…エンジン試験設備、101…貯蔵タンク、110…エンジン試験設備、120…エンジン試験設備、121…容積ポンプ(圧送機)、130…エンジン試験設備、131…貯蔵タンク、140…エンジン試験設備、141…軸流ファン(圧送機)、150…エンジン試験設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B