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  • 特開-舗装体および舗装体の補修方法 図1
  • 特開-舗装体および舗装体の補修方法 図2
  • 特開-舗装体および舗装体の補修方法 図3
  • 特開-舗装体および舗装体の補修方法 図4
  • 特開-舗装体および舗装体の補修方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163700
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】舗装体および舗装体の補修方法
(51)【国際特許分類】
   E01F 11/00 20060101AFI20241115BHJP
   E01C 7/35 20060101ALI20241115BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241115BHJP
【FI】
E01F11/00
E01C7/35
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079532
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 泰丈
【テーマコード(参考)】
2D051
2D064
5H301
【Fターム(参考)】
2D051AC01
2D051AC05
2D051AD05
2D051AG01
2D051AH02
2D064AA02
2D064AA09
2D064EA15
2D064FA01
2D064JA02
5H301AA01
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301EE06
5H301GG07
(57)【要約】
【課題】正確な位置に磁気マーカを埋設できる舗装体および舗装体の補修方法を提供する。
【解決手段】表面に敷設された表層2と、表層2の下方に敷設された基層3と、表層2から基層3まで穿設された収容穴5の内部に設置された磁気マーカ7と、収容穴5の内部で磁気マーカ7の上方に充填された充填材8と、を備える。磁気マーカ7は、基層3に対応する深さ位置5aに配置され、充填材8は、磁気マーカ7の磁力で帯磁する磁性材料を含むCAモルタルで構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舗装体の表面に敷設された表層と、
前記表層の下方に敷設された基層と、
前記表層から前記基層まで穿設された収容穴の内部に設置された磁気マーカと、
前記収容穴の内部で前記磁気マーカの上方に充填された充填材と、を備え、
前記磁気マーカは、前記基層に対応する深さ位置に配置され、
前記充填材は、前記磁気マーカの磁力で帯磁する材料を含んでいる、
ことを特徴とする舗装体。
【請求項2】
前記充填材は、磁性材料を含有する、ことを特徴とする請求項1記載の舗装体。
【請求項3】
前記充填材は、磁性材料を含むCAモルタルである、ことを特徴とする請求項1記載の舗装体。
【請求項4】
前記充填材は、着色顔料を含むことを特徴とする請求項1記載の舗装体。
【請求項5】
前回施工された舗装体の表層を除去して基層の上に補修表層を施工する補修方法であって、
前回施工で磁気マーカを設置した位置情報に基づいて、前記補修表層に補修収容穴を形成して、前記補修収容穴に補修充填材を充填する、ことを特徴とする請求項1に記載された舗装体を補修する補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装体および舗装体の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から磁気マーカを敷設した道路などの舗装体が知られている(特許文献1参照)。このようなものでは、道路の車線に沿って複数の磁気マーカが埋設されている。磁気マーカは、磁力の到達距離を考慮して比較的浅い表層に配置されている。そして、道路上の車両は、磁気マーカからの磁力を利用して自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援、または自動運転を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7151192号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路の表層は、車両の通行によって摩耗する。また、経時劣化により補修する必要が生じる。このため、従来の補修方法では、補修が必要な表層を除去する際、磁気マーカを撤去している。さらに従来の道路は、磁気マーカを新たな補修表層を敷設する際、磁気マーカを元の同じ位置に再配置しなければならない。したがって、磁気マーカの配置位置を特定する作業などが煩雑となりさらなる改善が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、正確な位置に磁気マーカを配置したまま補修を行える舗装体および舗装体の補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の舗装体は、舗装体の表面に敷設された表層と、表層の下方に敷設された基層と、表層から基層まで穿設された収容穴の内部に設置された磁気マーカと、を備える。舗装体は、さらに収容穴の内部で磁気マーカの上方に充填された充填材と、を備える。磁気マーカは、基層に対応する深さ位置に配置され、充填材は、磁気マーカの磁力で帯磁する材料を含んでいる、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正確な位置に磁気マーカを配置したまま補修を行える舗装体および舗装体の補修方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の舗装体で内部の構造を説明する要部の縦断面図である。
図2】舗装体の補修で表層を除去する様子を説明する要部の縦断面図である。
図3】基層の上に補修表層を施工した様子を示す舗装体の縦断面図である。
図4】施工された補修表層に補修収容穴を形成する様子を説明する舗装体の縦断面図である。
図5】補修収容穴に補修充填材を充填する様子を説明する舗装体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の道路について適宜図面を参照しながら説明する。また、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態の舗装体としての道路1の構成を示すものである。道路1は、土等が固められた路床に砕石などを敷設した路盤4と、表面に敷設された表層2と、表層2の下方で路盤4の上に敷設された基層3と、を備えている。
【0011】
このうち、表層2は、例えば密粒度アスファルト混合物を用いて構成されている。また、基層3は、例えば粗粒度アスファルト混合物を用いて構成されている。表層2の密粒度アスファルト混合物は、基層3の粗粒度アスファルト混合物に比して骨材(石など)が高い密度となるように構成されている。すなわち、表層2および基層3は、それぞれの目的に合わせて骨材を適宜のバランスで分布させて、改質材などが配合された一般的なアスファルト混合物である。
そして、実施形態の道路1は、骨材の密度を相違させた表層2及び基層が境界面を挟んで上下方向に同程度の厚さ寸法で積層されている。これにより、後述する補修施工の際、表層2を基層3との境界面から除去することができる(図2参照)。
【0012】
さらに、道路1は、円柱形状の磁気マーカ7と、充填材8と、を備えている。実施形態の道路1は、表層2から基層3まで垂直方向に円柱形の収容穴5を穿設している。収容穴5は、径方向の寸法が磁気マーカ7の外径寸法とほぼ同じ寸法に形成されていて、磁気マーカ7が中心軸を上下方向に向けて収容されている。また、収容穴5のうち基層3に対応する深さ位置5bは、磁気マーカ7と同等もしくは大きな上下寸法を有している。これにより、実施形態の磁気マーカ7の上面部は、境界面よりも下方に位置している。
【0013】
磁気マーカ7は、磁気発生源である磁石本体を備えている。磁気マーカ7の磁力は、表層2の下方で基層3に対応する深さ位置から表層2の上方に到達する必要がある。実施形態の磁石本体は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を円柱形状に固めたフェライト磁石により構成されて電気伝導率が低い電気的特性を備えているものが好ましい。
なお、磁石本体は、フェライト磁石に限らずさらに磁力の強いネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石等、どのような種類の磁石であってもよい。さらに磁石本体は、ベース材を用いて磁分を固めたものであってもよい。磁石本体は、磁粉を分散させた等方性フェライトプラスチックマグネット又はフェライトラバーマグネットなどべース材として高分子材料(非導電性材料)を用いたものであってもよい。
【0014】
さらに、磁気マーカ7は、磁石本体の周囲を覆う保護材としてカバー部材(図示せず)を備えていてもよい。カバー部材は、所望の強度を有して樹脂製の容器あるいは樹脂被膜部材により構成されていて磁石本体の磁力を妨げない。カバー部材は、磁石本体の錆びなどによる劣化を防止して耐候性をさらに向上させることができる。
なお、磁気マーカ7の上方に充填される充填材8は、磁気マーカ7の磁力を透過させる組成であることが好ましい。る。実施形態の充填材8は、磁性材料を含むCAモルタル(セメントアスファルトモルタル)を基材としている。CAモルタルは、アスファルト乳剤に環境負荷の小さいセメントと砂とを混合した複合材料で構成されていてセメント性(接着性)とアスファルトのたわみ性とを兼ね備えている。
【0015】
また、充填材8は、磁気マーカ7の磁力で帯磁する材料としての磁性材料を含有している。そして、磁気マーカ7の磁力で表層2に対応する深さ位置5aに配置された状態で磁性材料は、自らが帯磁することにより磁石として機能する。
実施形態の磁性材料は、粉体のフェライトまたは、フェライトにカーボンブラックや黒鉛などがコーティングされたものである。また、磁性体は、フェライトを不純物として含むカーボンブラックであってもよい。
【0016】
充填材8のCAモルタルは、磁性材料をほぼ均等に含んでいる。CAモルタルは、収容穴5の表層2に対応する深さ位置5bに充填されると、磁性材料を分散させた状態で硬化する。そして、磁気マーカ7の上方にて磁性材料が磁気マーカ7の磁力で帯磁する。これにより、円柱状に硬化した充填材8は、表層2に対応する深さ位置5bで磁気マーカ7と同じ方向の磁界を発生させることができる。なお、CAモルタルなどの基材自体は、帯磁する性質を有していなくてもよい。
そして、実施形態の道路1は、表層2に対応する深さ位置5bに磁気マーカ7が配置されている場合と同等の大きさの磁界を表層2の上方へ形成することができる。
また、基層3に対応する深さ位置5aの磁気マーカ7の磁力は、上方に連なる充填材8の磁力とともに、表層2の上方に所望の磁界を安定的に発生させる。
【0017】
さらに、実施形態の充填材8は、基層3に対応する深さ位置5aまで流下して、路盤4と磁気マーカ7との隙間、磁気マーカ7の周囲と収容穴5のうち対応する深さ位置5aの内壁面との隙間に自己充填し、硬化後は周辺の表層や基層と同程度の強度を有し、供用中に舗装を破壊させることがない。
これにより、磁気マーカ7は、周囲の基層3とさらに強固に一体化されるとともに充填材8が緩衝材の役割を果たすことができる。また、収容穴5内で硬化した充填材8の上面は、表層2の上面と面一となり道路1の走行面が平坦化される。よって施工が完了した状態では、磁気マーカ7および充填材8によって車両の通行が妨げられることがない。
【0018】
そして、実施形態の充填材8は、CAモルタル内にほぼ均等に混合される着色顔料を含んでいる。着色顔料は、例えばカーボンブラックによる黒色あるいは路面標示の白色塗料などの顔料であってもよく、表層2の上面と異なる色彩、濃淡度もしくは反射率を有していることが好ましい。
収容穴5の内部で磁気マーカ7の上方に充填された充填材8の上面は、硬化により収容穴5の周囲に位置する表層2の上面と面一となるように硬化する。このため、磁気マーカ7を配置している箇所は、周囲にと異なる色彩、濃淡度もしくは反射率で区別されて磁気マーカ7が埋設されている位置を容易に特定することができる。
【0019】
次に、実施形態の道路1の補修方法について図2図5を用いて説明する。
実施形態の補修方法は、まず、図2に示すように前回施工された道路1のうち補修が必要な部分の表層2を例えば切削または剥がすなどにより除去する。表層2は、基層3との間の境界面から取り除かれる。
【0020】
磁気マーカ7は、前回施工により基層3に対応する深さ位置5bの収容穴5内に配置されている。このため、重機を用いて直上の表層2が除去されても境界面より下方に位置する磁気マーカ7は爪部などに当接せず破損する虞がない。よって短時間で効率良く表層2を除去することができる。
また、表層2が除去されても前回施工で磁気マーカ7が正確な位置に配置された状態で移動しない。したがって、磁気マーカ7をそのまま埋め戻して再使用することができ、今回の施工で配置場所を新たに特定する作業が不要となる。
【0021】
図3に示すように、基層3の上に補修表層12が敷設される。補修表層12は、前回施工された表層2と同じ密粒度アスファルト混合物を用いて同等の性能を補修後の道路1に与えることができる。また、磁気マーカ7の直上の表層2を含む領域が除去され、例えば、切削され、または剥がされる。これにより平坦状となった基層3の上面に不陸の少ない補修表層12を敷設できる。
【0022】
図4に示すように、補修表層12のうち磁気マーカ7が設けられている部分の上方に補修収容穴12bが形成される。補修収容穴12bは、垂直に基層3の磁気マーカ7の手前まで下方に向けて垂直に穿設されて形成される。このため、円柱状の補修収容穴12bは、補修表層12に対応する深さ位置で磁気マーカ7の直上で開口する。また、穿設された補修収容穴12bの表層部分については、再利用可能である。このため、後述する補修収容穴12bに充填される補修充填材18(図5参照)として用いてもよい。
【0023】
補修表層12に補修収容穴12bを穿設する際、前回施工で磁気マーカ7を設置した位置情報に基づいて道路1の上方から穿設が行われれる。このため、埋設されている磁気マーカ7が補修表層12により施工者から見えなくても補修収容穴12bを磁気マーカ7の直上に形成できる。
たとえば、前回施工の際に蓄積されたCIM情報(Construction Information Modeling)を利用することにより磁気マーカ7が配置されている位置が容易に特定される。このため、補修収容穴12bを磁気マーカ7と同じ位置に正確に形成できる。
また、従来の補修方法のように前回施工によって正確な位置に配置されている磁気マーカ7の撤去作業を行なう必要がない。これにより、補修作業の煩雑さが解消されて保守効率を向上させることができる。
【0024】
図5に示すように実施形態では、モルタルガンなどの充填器20を用いて補修収容穴12bに補修充填材18を充填する。補修収容穴12bに充填される補修充填材18には、磁性体となるフェライトが帯磁していない流動状態で均質に混合されている。このため、すでに帯磁している磁粉のように相互に吸着して塊状となる虞がない。したがって、補修充填材18が硬化すると均質に分散したフェライトが効率よく帯磁して所望の磁力を発生させることができる。
【0025】
実施形態では、補修収容穴12bに充填された補修充填材18が上面の開口を塞ぐとともに円柱形状に硬化する。
このため、補修された後の道路1は、前回施工された充填材8(図1参照)と同様に補修充填材18が磁気マーカ7からの磁力によって帯磁して、前回施工と同等の磁界を道路1上に発生させることができる。
【0026】
このように実施形態の道路1は、磁気マーカ7の配置されている箇所から継続して所望の磁界を発生させ続けることができる。よって、補修による影響が減少して道路1上を走行する車両は、安定した磁界を用いて車両の自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援、または自動運転を行える、といった実用上有益な作用効果が発揮される。
【0027】
上述してきたように、本実施形態の道路1は、表面に敷設された表層2と、表層2の下方に敷設された基層3と、を備える。また、道路1は、表層2から基層3まで穿設された収容穴5の内部に設置された磁気マーカ7と、収容穴5の内部で磁気マーカ7の上方に充填された充填材8と、を備えている。
磁気マーカ7は、基層3に対応する深さ位置5aに配置され、充填材8は、磁気マーカ7の磁力で帯磁する材料で構成されている。
【0028】
このように構成された実施形態の舗装体は、正確な位置に磁気マーカを配置したまま補修を行える。詳しくは、基層3に対応する深さ位置に配置された磁気マーカ7は、浅い表層に配置されている場合に比べて車両の通行などによる影響を受けにくい。
また、磁気マーカ7の上方に充填された充填材8は、磁気マーカ7の磁力で帯磁する。このため、磁気マーカ7が基層3に対応する深さ位置に配置されていても、道路1上の車両に充填材8の磁力が到達して自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援、または自動運転を行なえる。
【0029】
また、充填材8は、磁性材料を含有している。このため、道路1に穿設された収容穴5に充填材8を流し込んで硬化させることにより施工が終了する。したがって、容易に施工出来て短時間で高さ形状等の条件の異なる道路1の表面と上面を合わせて平坦とすることができる。
【0030】
さらに、実施形態の充填材8は、磁性材料を含むCAモルタルである。このため、磁性材料を均質に分布させることができる。したがって、施工された状態では、磁気マーカ7の磁力で均等に帯磁して、表層2に磁気マーカ7を配置した場合と同様に利用可能な磁界を生じさせることができる。
例えば、収容穴5を円筒状に穿設することにより円筒状の磁気マーカ7と同様の形状の磁界を生じさせることができる。
【0031】
また、実施形態の充填材8は、着色顔料を含んでいる。
このため、道路1の表層2と異なる色彩、濃淡度もしくは反射率の着色顔料が収容穴5に充填された充填材8とともにすることができる。これにより、磁気マーカ7の設置位置を道路1の外部から知ることができる。
【0032】
また、実施形態の道路1の施工方法は、前回施工された道路1の表層2を図2に示すように除去されて基層3の上に図4に示す補修表層12を敷設する。次に補修収容穴12bが補修表層12に穿設される。補修の際、補修収容穴12bの穿設は、前回施工で磁気マーカ7を設置した位置情報に基づいて行われる。そして、補修収容穴12bに充填材8が充填される。これにより、補修が行われても位置情報に基づいた正確な位置へ磁気マーカ7が埋設されて磁気マーカ7の上方に磁性材料を含むCAモルタルなどで構成された補修充填材18を再施工できる。
【0033】
たとえば、補修の際、前回施工の際に蓄積されたCIM情報(Construction Information Modeling)を利用することができる。これにより磁気マーカ7が設置されている位置が正確に特定される。よってGPS(Global Positioning System)の情報取得が困難な中山間地やトンネル内であっても容易に補修収容穴12bを穿設する位置を特定でき、煩雑な位置の特定作業を簡略化できる。したがって実施形態の施工方法では、磁気マーカ7の設置工事および道路1の修復工事における生産性を向上させて工期を短縮することができる。
【0034】
実施形態の道路1では、補修の際、前回施工された表層2のみを除去して、基層3の上に補修表層12を施工する。磁気マーカ7は、基層3に対応する深さ位置5bに配置されたまま動かず破損する虞もない。このため、磁気マーカ7の上方に補修充填材18が充填されると、磁気マーカ7は、前回施工された位置と同じ位置から同等の磁力を発生させて補修充填材18を帯磁させることができる。したがって、道路1の上の車両は、前回施工された状態の磁力と同等の磁力を利用できる。
【0035】
また、硬化した補修充填材18は、表層2に対応する深さ位置5bで収容穴5に沿って円筒形状に硬化する。これにより表層2から基層3まで同じ円筒形状の収容穴5内で磁気マーカ7および補修充填材18が軸方向で連なって配置される。
このため、磁気マーカ7および補修充填材18の磁力は、道路1の上方へ延長されて表層2に磁気マーカ7を配置した場合と同等の範囲に磁界を発生させることができる。
したがって、実施形態の装体および舗装体の補修方法では、補修施工後も車両の自動操舵制御や車線逸脱警報などの各種の運転支援、または自動運転を同様の精度で行なえる、といった実用上有益な作用効果が発揮される。
【0036】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、たとえば以下のようなものである。
【0037】
本実施形態では、本実施形態の舗装体および舗装体の補修方法では、磁性体として粉体のフェライトまたは、フェライトにカーボンブラックなどがコーティングされたものを用いて説明してきた。しかしながら、磁性体は特にこれに限らない。たとえば、帯磁する材料としての磁性体は、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト(酸化鉄を主成分とするセラミックス)、非酸化金属磁性体(オキサイド)などの磁粉あるいはこれらの混合物であってもよい。さらに磁性体自体の周囲を樹脂材料などでコーティングしてCAモルタルとの親和性を向上させてもよい。
【0038】
また、充填材8の基材は、実施形態のCAモルタルに限定されるものではない。たとえば、基材として充填を妨げない程度に他の組成物を有するアスファルト混合物であってもよい。たとえば、基材の間を埋める石灰粉などのフィラー(石粉)、を含んでいてもよい。また、基材間を結合させるアスファルトおよびアスファルト乳剤の種類や分量がどのように配合されていてもよい。
さらに、実施形態では、充填材8として着色顔料を含んでいるものを示して説明してきた。しかしながら、たとえば着色顔料が含まれていなくてもよく、充填材8に含まれる着色顔料の分量および材質が特に限定されるものではない。
すなわち、充填材8は、磁気マーカ7の磁力で帯磁する材料として磁性体を含有して収容穴5のうち磁気マーカ7の上方に充填された状態で硬化するものであればよい。
【0039】
さらに、収容穴5および補修収容穴12bの形状は、円柱形でなくてもよい。たとえば、三角柱形以上の多角柱形、楕円柱形、長円柱形等であってもよい。また、たとえば、収容穴5と補修収容穴12bとの形状や大きさが相違していてもよい。すなわち、収容穴5は、基層3に対応する深さ位置に磁気マーカ7を設置して上方に充填材8を充填できればよい。そして、どのような内径方向寸法や深さ方向寸法であってもよく、収容穴5および補修収容穴12bの形状が特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1 道路(舗装体)
2 表層
3 基層
5 収容穴
7 磁気マーカ
8 充填材
図1
図2
図3
図4
図5