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特開2024-163705監視装置、プログラムおよび報知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163705
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】監視装置、プログラムおよび報知方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/70 20170101AFI20241115BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20241115BHJP
【FI】
G06T7/70 A
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079546
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】514274487
【氏名又は名称】リコーインダストリアルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】岸和田 潤
(72)【発明者】
【氏名】佃 友介
【テーマコード(参考)】
2D015
5L096
【Fターム(参考)】
2D015GA03
2D015GB06
2D015GB07
5L096AA06
5L096AA09
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA01
5L096DA02
5L096DA03
5L096FA16
5L096FA32
5L096FA62
5L096FA64
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA34
5L096GA51
5L096HA05
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】設定している実空間上の閾値(例えば、危険エリア)を撮影画像上に正確表現する。
【解決手段】作業機械の作業状態を監視する監視装置において、撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する物体検出部と、前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、前記作業機械による作業について安全か否かを判定する作業内容判定部と、前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する二次元変換部と、前記二次元座標に従って前記実空間上の閾値を前記撮影画像に重畳するとともに、前記作業内容判定部で判定した結果を報知する報知部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の作業状態を監視する監視装置において、
撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する物体検出部と、
前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、前記作業機械による作業について安全か否かを判定する作業内容判定部と、
前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する二次元変換部と、
前記二次元座標に従って前記実空間上の閾値を前記撮影画像に重畳するとともに、前記作業内容判定部で判定した結果を報知する報知部と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記対象物の三次元位置情報の検出に用いる前記撮影画像および前記距離情報を受信するデータ受信部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記作業機械は、クレーンであって、
前記対象物は、作業者、前記クレーンのフック、前記クレーンのフックに吊り下げる荷物であり、
前記物体検出部は、前記対象物の三次元位置情報を、前記フックまたは前記荷物の位置(X,Y)を中心としたとき、XY平面上の所定範囲に存在する前記作業者の高さから算出し、
前記二次元変換部は、前記作業者または前記フックを中心とした所定範囲内での前記作業者の高さ情報を用いることで、前記作業者の作業位置を基準とした実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項4】
前記作業機械は、クレーンであって、
前記対象物は、作業者、前記クレーンのフック、前記クレーンのフックに吊り下げる荷物であり、
前記物体検出部は、前記対象物の三次元位置情報を、前記フックまたは前記荷物の位置(X,Y)を中心としたとき、XY平面上の所定範囲に存在する前記作業者、前記フック、前記荷物以外の距離情報から算出し、
前記二次元変換部は、前記作業者または前記フックを中心とした所定範囲内での前記作業者、前記フック、前記荷物以外の距離情報を用いることで、実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項5】
前記二次元変換部は、実空間上のサイズを前記撮影画像上の二次元サイズに下記式で変換する、
I=(S*f)/(Z*P)
I:対象物のピクセルサイズ[pix]
S:対象物の実サイズ[mm]
P:撮影画像の画素ピッチ[mm]
Z:撮影画像を撮影する撮影装置と作業位置の距離[mm]
f:撮影画像を撮影する撮影装置の焦点距離[mm]
ことを特徴とする請求項1に記載の監視装置。
【請求項6】
作業機械の作業状態を監視する監視装置を制御するコンピュータを、
撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する物体検出部と、
前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、前記作業機械による作業について安全か否かを判定する作業内容判定部と、
前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する二次元変換部と、
前記二次元座標に従って前記実空間上の閾値を前記撮影画像に重畳するとともに、前記作業内容判定部で判定した結果を報知する報知部と、
として機能させるためのプログラム。
【請求項7】
作業機械の作業状態を監視する監視装置における報知方法であって、
撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する物体検出工程と、
前記物体検出工程で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、前記作業機械による作業について安全か否かを判定する作業内容判定工程と、
前記物体検出工程で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する二次元変換工程と、
前記二次元座標に従って前記実空間上の閾値を前記撮影画像に重畳するとともに、前記作業内容判定工程で判定した結果を報知する報知工程と、
を含むことを特徴とする報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、プログラムおよび報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業機械のブーム先端に下方に向けて設けられた撮像装置が撮影した作業領域の画像データを解析して作業者と吊り荷とを検出し、またアンテナにより取得された位置情報により高さ情報を取得し、三次元空間における位置関係から警報を出力する施工支援システムが開示されている。特許文献1の施工支援システムによれば、作業者および吊り荷の検出結果が、設定している実空間上の閾値(例えば、危険エリア)とともに画像に重畳された形で表示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術によれば、作業者および吊り荷の検出結果を、設定している実空間上の閾値(例えば、危険エリア)とともに画像に重畳された形で表示する際において、実空間上の情報を反映していないため、閾値(例えば、危険エリア)の把握が正確にできない問題があった。
【0004】
例えば、作業機械のブーム先端に下方に向けて設けられた撮像装置で撮影した場合、吊り荷や作業者はシーンによって撮像装置までの距離が変わることになる。この場合、画像上ではサイズが変更されるため、実空間上の位置を閾値(例えば、危険エリア)として設けた場合、二次元で表現される画像ではうまく表現できなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設定している実空間上の閾値(例えば、危険エリア)を撮影画像上に正確表現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、作業機械の作業状態を監視する監視装置において、撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する物体検出部と、前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、前記作業機械による作業について安全か否かを判定する作業内容判定部と、前記物体検出部で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値の前記撮影画像内の二次元座標を算出する二次元変換部と、前記二次元座標に従って前記実空間上の閾値を前記撮影画像に重畳するとともに、前記作業内容判定部で判定した結果を報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設定している実空間上の閾値(例えば、危険エリア)を撮影画像上に正確表現することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態にかかるクレーンシステムの全体構成図である。
図2図2は、監視装置のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。
図3図3は、監視装置が実現する機能を示す機能ブロック図である。
図4図4は、撮影画像における荷物と実空間上の閾値である危険エリアとの関係を示す図である。
図5図5は、監視装置における処理作業内容の判定処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図6図6は、作業内容判定部による作業内容の具体的な判定例を示す、作業を真上から俯瞰して見た図である。
図7図7は、図6の判定例の対象箇所を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、監視装置、プログラムおよび報知方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、実施の形態にかかるクレーンシステム1の全体構成図である。本実施形態のクレーンシステム1は、監視装置9、通信端末10、クレーン制御装置30、及び管理サーバ50によって構築されている。
【0011】
監視装置9、通信端末10、クレーン制御装置30、及び管理サーバ50は、通信ネットワーク100を介して通信することができる。通信ネットワーク100は、インターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)等によって構築されている。通信ネットワーク100には、有線通信だけでなく、3G(3rd Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信によるネットワークが含まれてもよい。
【0012】
監視装置9とクレーン制御装置30は、クレーン210の作業現場に設けられている。監視装置9とクレーン制御装置30は、それぞれクレーン210と一体で構成されていてもよい。現場のオペレータは、クレーン制御装置30により、現場の作業内容を確認することができる。また、遠隔地の管理者は、通信端末10により、現場の作業内容を確認することができる。
【0013】
監視装置9は、カメラ等の撮影装置7、および距離センサ8を備える。撮影装置7は、クレーン210に設けられる。撮影装置7は、クレーン210のフック221、荷物P、およびその周辺の物体や作業者W等の被写体を撮影して、画像データ、色、輝度情報などの撮影画像(二次元データ)を取得する。距離センサ8は、クレーン210に設けられる。距離センサ8は、撮影装置7によって撮影された被写体との距離を計測して、点群データなどの距離情報(三次元データ)を取得する。
【0014】
撮影装置7は、タイムラプス画像や動画を取得してもよく、その場合、距離センサ8は、撮影装置7のフレームレートに同期して、距離情報を取得する。
【0015】
距離センサ8は、ToFセンサ(Time of Flight)である。距離センサ8は、光源から物体にレーザ光を照射し、その散乱や反射光を計測することにより、光源から物体までの距離を測定する。
【0016】
具体的には、距離センサ8は、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサである。LiDARとは、パルスを用いて光飛行時間を測定する方式であるが、ToFセンサのその他の方式として、位相差検出方式で距離を計測してもよい。位相差検出方式では、基本周波数で振幅変調したレーザ光を計測範囲に照射した照射光と反射光との位相差を測定することで求めた時間に対し、光速をかけて距離を算出する。
【0017】
なお、本実施形態においては、監視装置9は、撮影装置7と距離センサ8を備えるようにしたが、これに限るものではない。例えば、監視装置9は、撮影装置7と距離センサ8に代えて、2つ以上のカメラを用いて三次元測定可能なステレオカメラを備え、ステレオカメラにより撮影画像および距離情報を取得しても良い。
【0018】
監視装置9は、撮影画像および距離情報に基づいて、対象物(例えば、作業者W、クレーン210のフック221、クレーン210のフック221に吊り下げる荷物(吊り荷)P)を検出するとともに、対象物の三次元位置情報を取得する。より詳細には、監視装置9は、検出した対象物の三次元位置情報から基準となる位置を設定する。監視装置9は、対象物、および対象物の三次元位置情報に基づき、クレーン210の作業状況を判定する。監視装置9は、判定したクレーン210の作業状況を、クレーン制御装置30に伝える。
【0019】
加えて、監視装置9は、作業者Wの三次元位置情報から、作業者Wに対する環境での危険エリアを決め、撮影画像における座標を逆算し、表示装置925(図2参照)に描画することで、表示装置925上で設定している実空間上の閾値を画像上に正確に表現する。
【0020】
クレーン制御装置30は、監視装置9から伝達された作業状況に合わせて、クレーン210を制御する装置である。例えば、クレーン制御装置30は、作業者Wが吊り荷に近づき過ぎる危険な状態であれば、クレーン210の動作を停止するなどの安全制御を行う。
【0021】
続いて、監視装置9のハードウエア構成について説明する。
【0022】
ここで、図2は監視装置9のハードウエア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、監視装置9は、図1に示されているような撮影装置7および距離センサ8とともに、監視装置9の処理または動作を制御するコントローラ900を備える。
【0023】
コントローラ900は、撮影装置I/F(Interface)901、センサ装置I/F902、バスライン910、CPU(Central Processing Unit)911、ROM(Read Only Memory)912、RAM(Random Access Memory)913、HD(Hard Disk)915、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ914、ネットワークI/F916、DVD-RW(Digital Versatile Disc Rewritable)ドライブ918、メディアI/F922、外部機器接続I/F923、タイマ924および表示装置925を備えている。
【0024】
これらのうち、撮影装置I/F901は、撮影装置7との間で各種データまたは情報の送受信を行うためのインターフェースである。センサ装置I/F902は、距離センサ8との間で各種データまたは情報の送受信を行うためのインターフェースである。バスライン910は、図2に示されているCPU911等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0025】
また、CPU911は、監視装置9全体の動作を制御する。ROM912は、IPL等のCPU911の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM913は、CPU911のワークエリアとして使用される。HD915は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ914は、CPU911の制御にしたがってHD915に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。ネットワークI/F916は、通信ネットワーク100を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。
【0026】
DVD-RWドライブ918は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW917に対する各種データの読み出しまたは書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-RやBlu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等であってもよい。メディアI/F922は、フラッシュメモリ等の記録メディア921に対するデータの読み出しまたは書き込み(記憶)を制御する。外部機器接続I/F923は、外部PC930等の外部機器を接続するためのインターフェースである。タイマ924は、時間計測機能を有する計測装置である。タイマ924は、コンピュータによるソフトタイマでもよい。
【0027】
本実施形態の監視装置9で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0028】
また、本実施形態の監視装置9で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の監視装置9で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態の監視装置9で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0029】
表示装置925は、監視装置9からの描画内容(例えば、後述する図6など参照)を表示するデバイスである。なお、表示装置925は、モニタ装置であってもよいし、タブレット端末またはPC(Personal Computer)などの外部PC930であってもよい。
【0030】
続いて、監視装置9が実現する機能について説明する。
【0031】
ここで、図3は監視装置9が実現する機能を示す機能ブロック図である。図3に示すように、監視装置9は、データ受信部91と、物体検出部92と、作業内容判定部93と、二次元変換部94と、報知部として機能する表示制御部95と、を有している。これら各部は、図2に示されている各構成要素のいずれかが、HD915からRAM913上に展開されたプログラムに従ったCPU911からの命令によって動作することで実現される機能、又は機能する手段である。監視装置9は、各機能が次のような役割を果たすことで、クレーン制御装置30への作業状況の通知と表示装置925への描画を行う。
【0032】
データ受信部91は、撮影装置7が撮像した撮影画像を受信し、距離センサ8が計測した距離情報を受信する。
【0033】
物体検出部92は、データ受信部91から撮影画像および距離情報を受け取る。物体検出部92は、撮影画像および距離情報を用いて、監視のターゲットとなる画像上の対象物(例えば、作業者W、クレーン210のフック221、クレーン210のフック221に吊り下げる荷物(吊り荷)P)を検出する。物体検出部92は、対象物の検出方法として、対象物の持つ画像上の特徴量を用いて演繹的に設計された検出アルゴリズムを用いてもよいし、あらかじめ作成されたモデルとの類似性に基づき、検出することを特徴とする学習アルゴリズムを用いてもよい。
【0034】
また、物体検出部92は、検出した範囲内の三次元位置情報の中央値や平均値から、監視のターゲットとなる対象物の三次元位置情報を検出する。対象物の三次元位置情報を検出することで、実空間上で安全監視が可能となる。例えば、吊り荷作業で最も危ないシーンは、クレーン210のフック221で荷物Pを吊っている状況である。クレーン210のフック221で荷物Pを吊っているときに荷物Pが動き、最悪の場合に落下する危険性がある。
【0035】
作業内容判定部93は、物体検出部92で取得した対象物の三次元位置情報に基づき、今現在、クレーン210による作業について、安全か否か(安全な状態か、あるいは危険な状態か)を、判定する。具体的には、作業内容判定部93は、クレーン210のフック221と荷物Pとの相対的な三次元位置情報(例えば、フック221と荷物Pとがx、y、zそれぞれ2m以内にあるとき)を把握することで、荷物Pが吊られているかどうかを判定する。作業内容判定部93は、吊られている荷物(吊り荷)Pの所定の範囲(例えば、吊られている荷物Pを中心として半径3mの範囲)内に作業者Wが存在する場合に、危険と判定することで、本当に危険な作業を検出することができる。
【0036】
二次元変換部94は、物体検出部92で取得した対象物の中から検出した荷物Pの三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値である危険エリアの撮影画像内の二次元座標を算出する。
【0037】
二次元変換部94は、例えば理想的なピンホール画像へ補正がされている撮影装置7の場合、下記式(式1)で実空間上のサイズ[mm]を撮影画像上の二次元サイズ[pix]に変換する。
I=(S*f)/(Z*P)…(式1)
I:対象物の撮影画像上の二次元のピクセルサイズ[pix]
S:対象物の実空間上のサイズ[mm]
P:撮影画像の画素ピッチ[mm]
Z:撮影画像を撮影する撮影装置と作業位置の距離[mm]
f:撮影画像を撮影する撮影装置の焦点距離[mm]
【0038】
例えば、下記の条件において、対象物の実空間上のサイズが2,000mmの場合、対象物の撮影画像上の二次元のピクセルサイズは、以下のようになる。
二次元のピクセルサイズ[pix]=2,000/(0.006*10,000/2)=約66.7[pix]
撮影装置7の焦点距離:2mm
撮影装置7の画素ピッチ:0.006mm
撮影装置7と作業位置の距離:10,000mm
【0039】
つまり、上記の条件では、作業位置に実空間上で2,000mm(=2m)の長さの描画をしたければ、66.7pixが、撮影画像上の二次元サイズに該当することを示している。
【0040】
ここで、図4は撮影画像における荷物Pと実空間上の閾値である危険エリアとの関係を示す図である。物体検出部92によって吊られている荷物Pの撮影画像内の位置と三次元座標は分かっているので、二次元変換部94は、三次元上の座標を(x,y,z)=(real_x,real_y,real_z)とし、撮影画像上の荷物Pの横幅をbbox.width[pix]、荷物Pの縦幅をbbox.height[pix]とすると、下記の式で荷物Pの実サイズを求めることができる。
(荷物の横幅[mm])=bbox.width*0.006*real_z/2
(荷物の縦幅[mm])=bbox.height*0.006*real_z/2
【0041】
二次元変換部94は、荷物Pの実サイズが分かれば、上述した(式1)から作業位置での荷物Pの二次元のピクセルサイズを求めることができる。
【0042】
また、荷物Pの中心座標を(x,y)=(bbox.x,bbox.y)とする。bbox.xとbbox.yは画像中心位置からのズレ量と捉えることができるので、二次元変換部94は、このズレ量をreal_zから作業位置での二次元のピクセルサイズに変換する必要がある。この時の変換式は下記になる。
(中心からの横ズレ量[mm])=bbox.x*0.006*real_z/2
(中心からの縦ズレ量[mm])=bbox.y*0.006*real_z/2
【0043】
二次元変換部94は、上述のズレ量をもとに、作業位置でのx,y座標を求める。
(作業位置でのx座標)=(中心からの横ズレ量[mm])/(0.006*10,000/2)
(作業位置でのy座標)=(中心からの縦ズレ量[mm])/(0.006*10,000/2)
【0044】
二次元変換部94におけるこれらの計算によって、設定している実空間上の閾値(危険エリア)は荷物Pの撮影画像上の中心を起点に、下記に示す描画内容(例えば、後述する図6など参照)のように描画できる。この算出を行うことで、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を正確に撮影画像上に表現できる。
【0045】
表示制御部95は、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を撮影画像に重畳して表示装置925に表示するとともに、作業内容判定部93で判定した結果を表示装置925に表示する。すなわち、表示制御部95は、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を撮影画像に重畳するとともに、作業内容判定部93で判定した結果を報知する報知部である。
【0046】
続いて、監視装置9における処理作業内容の判定処理について説明する。
【0047】
ここで、図5は監視装置9における処理作業内容の判定処理の流れを概略的に示すフローチャートである。図5に示すように、まず、物体検出部92は、撮影装置7が撮影した撮影画像(二次元データ)および距離センサ8が取得した距離情報(三次元データ)をデータ受信部91から受け取り、撮影画像上の対象物(例えば、作業者W、クレーン210のフック221、クレーン210のフック221に吊り下げる荷物(吊り荷)P)を検出する(ステップS1)。より詳細には、物体検出部92は、撮影装置7で撮影した撮影画像の色、輝度情報をもとにフック221、荷物P、作業者Wなどの被写体を検出する。検出方法は、被写体の持つ画像上の特徴量を用いて演繹的に設計された検出アルゴリズムを用いてもよいし、あらかじめ作成されたモデルとの類似性に基づき、検出することを特徴とする学習アルゴリズムを用いてもよい。
【0048】
次に、物体検出部92は、検出した範囲内の三次元位置情報の中央値や平均値から、対象物の三次元位置情報を検出する(ステップS2)。
【0049】
続いて、作業内容判定部93は、過去に検出した過去の検出オブジェクトD3を用いて追跡処理を実行する(ステップS3)。より詳細には、作業内容判定部93は、過去の検出オブジェクトD3と、ステップS1で検出した画像上の対象物およびステップS2で検出した対象物の三次元位置情報と、の対応付けを行う。作業内容判定部93は、対応付けされた情報に対し、速度や加速度といった時間情報を付与して、追跡処理を実行した結果として検出オブジェクトD4を生成する。
【0050】
続いて、作業内容判定部93は、クレーン210による作業について、安全な状態か、あるいは危険な状態かを、判定する(ステップS4~S11)。
【0051】
より詳細には、作業内容判定部93は、検出オブジェクトD4に基づいて、フック221と荷物Pとの間の三次元位置情報の距離を算出し、当該距離があらかじめ設定していた閾値範囲内かどうかを判定する(ステップS4)。
【0052】
作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っていない場合(ステップS4のNo)、作業前と判定する(ステップS7)。
【0053】
一方、作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っている場合(ステップS4のYes)、検出オブジェクトD4に基づいて、フレーム間の同一対象物の三次元位置情報の移動量からあらかじめ設定していた閾値範囲内かどうかを判定する(ステップS5)。
【0054】
作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っていない場合(ステップS5のNo)、荷物Pが揺れていると判定する(ステップS8)。
【0055】
一方、作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っている場合(ステップS5のYes)、作業中であるとして、検出オブジェクトD4に基づいて、検出した対象物の位置から作業内容を判定する(ステップS6)。より詳細には、作業内容判定部93は、検出した対象物の位置が地面に対して30cm以内である場合には、「地切り作業」であるとの作業内容D5を生成する。また、作業内容判定部93は、検出した対象物の位置が地面に対して30cm以上である場合には、「吊り荷作業」であるとの作業内容D5を生成する。
【0056】
次いで、作業内容判定部93は、作業者Wと荷物Pとの間の三次元位置情報の距離を算出し、当該距離があらかじめ設定していた閾値範囲内かどうかを判定する(ステップS9)。
【0057】
作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っていない場合(ステップS9のNo)、作業中であって、作業状態として安全と判定する(ステップS11)。
【0058】
一方、作業内容判定部93は、閾値範囲内に入っている場合(ステップS9のYes)、作業中であって、作業状態として危険と判定して、表示制御部95にワーニング表示させる(ステップS10)。
【0059】
ここで、作業内容判定部93による作業内容の具体的な判定例について説明する。
【0060】
図6は、作業内容判定部93による作業内容の具体的な判定例を示す、作業を真上から俯瞰して見た図である。図6全体が撮影装置7によって撮像される撮影画像(二次元データ)に対し、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を重畳した例である。
【0061】
物体検出部92では、ステップS1で検出した撮影画像上の対象物およびステップS2で検出した対象物の三次元位置情報を用いて、撮影画像内の位置と三次元空間上の位置とを求める。画像内の位置は「荷物」や「作業者」、「フック」と言うラベルの付いた枠で囲われた部分を指しており、三次元空間の位置はラベル上部に描かれた“x、y、z”を指している。図6に示す例では、撮影画像の中心がx=0mであり、左側がマイナス、右側がプラスで表記している。y座標については、画像の中心がy=0mで上側がマイナスで下側がプラスで表記している。z座標については、撮影装置7からの距離に対してすべてプラスで表記している。
【0062】
なお、対象物の検出については対象物の持つ撮影画像上の特徴量を用いて演繹的に設計された検出アルゴリズムやあらかじめ作成されたモデルとの類似性に基づき、検出することを特徴とする学習アルゴリズムだけでは精度が悪い。そのため、作業内容判定部93は、過去の検出オブジェクトD3を用いて、連続的な時間で捉えた検出を行う(図5におけるステップS3)。これは、一般的にトラッキングと呼ばれる追跡処理である。
【0063】
作業内容判定部93は、図5におけるステップS3で検出された検出オブジェクトD4をもとに、フック221と荷物(吊り荷)Pの位置が範囲内かを判定する(図5におけるステップS4)。図6に示す例では、フック221の三次元位置情報は(x,y,z)=(0.5m,0.7m,1.0m)、荷物Pの三次元位置情報は(x,y,z)=(0.7m,0.8m,7.0m)である。この情報をもとに、2点間の距離を計算すると、
SQRT((0.5-0.7)+(0.7-0.8)+(1-7.0))=約6.0m
であることが分かる。例えば、今回のケースであらかじめ設定していた閾値範囲が7mとすると、作業内容判定部93は、「作業中」と判定する。
【0064】
図5におけるステップS5は荷揺れを判定するもので、作業内容判定部93は、例えば、荷物Pやフック221が異なるフレーム間であらかじめ設定していた閾値範囲以上の移動をしていた場合、荷揺れしていると見なす。なお、図6に示す例では、荷揺れがないものとして説明を続ける。
【0065】
作業内容判定部93は、検出した対象物の位置から作業内容を判定する(図5におけるステップS6)。例えば、図6に示す例では、作業内容判定部93は、検出した作業者Wのz座標(9.0m、9.1m)と荷物Pのz座標(7.0m)の差分から地面に対して30cm以上吊り荷が浮いていると判定できるため、“吊り荷作業”中であると作業内容を判定する。
【0066】
次いで、作業内容判定部93は、作業者Wと荷物Pの位置が範囲内かどうかの判定を行う(図5におけるステップS9)。図6に示す例では、作業内容判定部93は、荷物Pを中心として荷物Pの検出範囲からさらに6m外側に囲ったエリアを、設定している実空間上の閾値(危険エリア)としている。危険エリアは、作業者Wが侵入すると“危険”と判定されるエリアである。
【0067】
図6に示す危険エリアの枠については、前述の二次元変換部94の処理に従って描画される。まず、二次元変換部94は、上述した(式1)に従い、下記条件から対象物の二次元のピクセルサイズを計算する。
撮影装置7の焦点距離:2mm
撮影装置7の画素ピッチ:0.006mm
撮影装置7と作業位置の距離:10,000mm
対象物の実サイズ:6,000mm
【0068】
なお、撮影装置7と作業位置の距離は予め設定されたものを使用してもよいし、マーキングなどをしておくことで検出された距離を使用しても、作業中の作業者Wや吊り荷Pの情報から算出してもよい。上記の式(式1)を計算すると、対象物のピクセルサイズは200[pix]である。
【0069】
ここで、図7図6の判定例の対象箇所を拡大して示す図である。図7に示すように、物体検出部92から検出された撮影画像上の荷物Pの中心座標を(x,y)=(-265,128)とし、横幅を96[pix]、縦幅を55[pix]とする。さらに検出された三次元上のz座標は7,000[mm]なので、二次元変換部94は、荷物Pの実空間上のサイズを下記式により求める。
対象物の実サイズ[mm]=(対象物のピクセルサイズ[pix])*(画素ピッチ[mm]*(撮影装置7の設置高さ[mm]/焦点距離[mm]))
すなわち、
荷物の横幅[mm]=96*0.006*7,000/2=2,016[mm]
荷物の縦幅[mm]=55*0.006*7,000/2=1,155[mm]
となる。また、このサイズは、作業位置では下記のピクセルサイズとなる。
作業位置での荷物Pの横幅のピクセルサイズ[pix]=2,016/(0.006*10,000/2)=約67[pix]
作業位置での荷物Pの縦幅のピクセルサイズ[pix]=1,155/(0.006*10,000/2)=約39[pix]
【0070】
つまり、図4に示すように、危険エリアの横幅は(危険エリアのピクセルサイズ×2)+(作業位置での吊り荷Pの横幅のピクセルサイズ)=200×2+67=467[pix]となる。同様にして、図4に示すように、危険エリアの縦幅(危険エリアのピクセルサイズ×2)+(作業位置での吊り荷Pの縦幅のピクセルサイズ)は、439[pix]である。
【0071】
また、二次元変換部94は、荷物Pの中心座標の画像中心からのズレ量を、下記式から求める。
中心からの横ズレ量[mm]=-265*0.006*7,000/2=-5,565[mm]
中心からの縦ズレ量[mm]=128*0.006*7,000/2=2,688[mm]
【0072】
二次元変換部94は、下記のように、このズレ量をもとに作業位置でのx,y座標を求める。
(作業位置でのx座標)=-5,565/(0.006*10,000/2)=約-186[pix]
(作業位置でのy座標)=2,688/(0.006*10,000/2)=約90[pix]
【0073】
これより、図7に示すように、表示制御部95は、危険エリアの枠を、(x,y)=(-186,90)を中心とした縦横439×467[pix]の四角形として描画できる。
【0074】
作業内容判定部93における作業内容の判定について、図6に示す例では、(x,y,z)=(10.3m,5.2m,9.0m)と(x,y,z)=(-0.6m,4.7m,9.1m)の位置にそれぞれ作業者W(W1,W2)がいる。(x,y,z)=(10.3m,5.2m,9.0m)にいる作業者W(W2)は危険エリアの外側であるため安全な位置にいるが、(x,y,z)=(-0.6m,4.7m,9.1m)の作業者W(W1)は危険エリアの内側にいるため危険な位置である。作業内容判定部93は、危険な位置に1人以上の作業者W(W1)がいるため、本作業状態は危険と判定する。作業内容判定部93は、判定した結果を、クレーン制御装置30に通知する。
【0075】
以上のような処理を実行することで、表示制御部95は、作業位置基準での危険エリアの描画が可能になるため、クレーン210のオペレータに作業者Wが危険位置にいるかどうかをモニタなどで正確に把握してもらうことができる。
【0076】
このように本実施形態によれば、対象物の三次元位置情報に基づき、設定している実空間上の閾値(危険エリア)の撮影画像内の二次元座標を算出することで、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を撮影画像上に正確表現することができる。例えば、吊り荷を検出した際に、吊り荷を中心とした半径3mのエリアを危険と設定した場合、吊り荷の下で作業している作業者環境でどこのエリアが危険領域かを画像上に表現することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、一度危険エリアを撮影画像上に表現することができれば、その後の危険判定については、画像ベース(2次元)で実施することもできる。
【0078】
なお、本実施形態においては、報知部として機能する表示制御部95は、設定している実空間上の閾値(危険エリア)を撮影画像に重畳して表示装置925に表示するとともに、作業内容判定部93で判定した結果を表示装置925に表示するようにしたが、これに限るものではない。例えば、表示制御部95は、表示装置925などのハードウェアに対する表示ではなく、生成した画像をクラウド上に記憶してブラウザ上で確認させて報知する形態としてもよい。
【0079】
なお、本実施形態においては、二次元変換部94は、作業者Wまたはフック221を中心とした所定範囲内での作業者Wの高さ情報を用いることで、作業者Wの作業位置を基準とした実空間上の閾値(危険エリア)の撮影画像内の二次元座標を算出するようにしたが、これに限るものではない。例えば、二次元変換部94は、作業者Wまたはフック221を中心とした所定範囲内での作業者W、フック221、荷物P以外の距離情報(例えば、地面までの距離情報)を用いることで、実空間上の閾値(危険エリア)の撮影画像内の二次元座標を算出するようにしてもよい。
【0080】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0081】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
9 監視装置
91 データ受信部
92 物体検出部
93 作業内容判定部
94 二次元変換部
95 報知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開2022-175364号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7