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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163707
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】嫌気処理システム及び嫌気処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/28 20230101AFI20241115BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241115BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
C02F3/28 A
B01D53/14 210
C02F1/72 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079549
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】須田 祐一
【テーマコード(参考)】
4D020
4D040
4D050
【Fターム(参考)】
4D020AA04
4D020BA01
4D020BA08
4D020BB03
4D040AA02
4D040AA26
4D040AA32
4D040AA42
4D050AA15
4D050AB41
4D050BB01
4D050BD06
4D050BD08
4D050CA16
4D050CA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、硫黄成分を含む排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減の両立が可能な嫌気処理システム及び嫌気処理方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、硫黄成分を含む排水を嫌気処理する嫌気処理槽と、嫌気処理槽で発生したバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去する硫化水素除去部と、を備え、硫化水素除去部から排出された脱硫ガスを、嫌気処理槽に導入する嫌気処理システム及びこのシステムに基づく嫌気処理方法を提供する。本発明によれば、嫌気処理で発生するバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去することで、薬剤の使用が大幅に低減できる。また、脱硫ガスを嫌気処理槽に導入して、槽内の撹拌と併せ、硫化水素のストリッピングを行い、嫌気処理に対する硫化水素の影響を抑制する。これにより、安定した処理と薬剤使用量削減の両立が可能となる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄成分を含む排水を嫌気処理する嫌気処理システムであって、
嫌気処理槽と、
前記嫌気処理槽で発生したバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去する硫化水素除去部と、を備え、
前記硫化水素除去部から排出された脱硫ガスを、前記嫌気処理槽に導入することを特徴とする、嫌気処理システム。
【請求項2】
前記嫌気処理槽は、酸生成槽とメタン発酵槽を備え、
前記硫化水素除去部から排出された脱硫ガスを、前記酸生成槽に導入することを特徴とする、請求項1に記載の嫌気処理システム。
【請求項3】
前記硫化水素除去部は、吸収液に硫化水素を吸収させる湿式吸収部と、前記吸収液中の硫化水素を硫黄に酸化する酸化部と、を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の嫌気処理システム。
【請求項4】
硫黄成分を含む排水を嫌気処理する嫌気処理方法であって、
嫌気処理工程と、
前記嫌気処理工程で発生したバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去する硫化水素除去工程と、を備え、
前記硫化水素除去工程から排出された脱硫ガスを、前記嫌気処理工程に導入することを特徴とする、嫌気処理方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嫌気処理システム及び嫌気処理方法に関するものである。より詳細には、本発明は、硫黄成分を含む排水を処理するための嫌気処理システム及び嫌気処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機物を含む排水を処理する方法として、種々の微生物を利用した生物処理が知られている。特に、嫌気的な環境下での生物処理(以下、「嫌気処理」と呼ぶ)は、曝気動力が不要で、余剰汚泥がほとんど発生しないことなど、導入に係るメリットが高いことが挙げられる。
【0003】
このような嫌気処理としては、メタン発酵処理が知られている。メタン発酵処理は、嫌気的な環境下における嫌気性微生物の働きにより、排水中の有機物をメタンと二酸化炭素に分解する嫌気処理であり、処理コストや生成ガスの有用性の観点から、嫌気処理として広く用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、反応槽内に非生物担体を充填し、該反応槽内に原水を供給し、該非生物担体の表面に生物膜を形成させて嫌気条件下で原水を処理する方法として、原水又は反応槽内に非酸化性ガスを溶解させた加圧水を導入することで、反応槽内部で非酸化性ガスの気泡を発生させ、反応槽内部を撹拌しながら嫌気処理を行うこと、また、このとき用いる非酸化性ガスとして嫌気処理で発生したバイオガスや不活性ガスを利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-149494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、嫌気処理を行う反応槽(以下、「嫌気処理槽」と呼ぶ)内部の撹拌にガスを用いること、併せてこのとき使用するガスとして嫌気処理で発生したガスを利用することは知られている。
一方、嫌気処理を行う被処理対象である排水中に硫黄成分が含まれる場合、硫黄成分が還元されることで硫化水素が発生する。そして、嫌気処理を継続する中で、処理液中には硫化水素が蓄積することになる。ここで、一定程度の硫化水素の存在は、嫌気処理(メタン発酵)を促進させるが、一般に100ppmを超えると微生物に阻害作用を及ぼすことが知られている。また、メタン発酵に関わる嫌気性微生物(メタン生成菌)と、硫黄成分(硫黄化合物)を硫化水素に還元する硫酸塩還元菌とで有機物を奪い合う形となるため、バイオガス(主にメタン)の生成量が低下するという影響が生じる。
【0007】
このため、被処理対象である排水中に硫黄成分が含まれる場合、特許文献1に記載されるように、嫌気処理で発生したガスを嫌気処理槽内の撹拌のために導入すると、導入するガスにも硫化水素が含まれる状態であるため、嫌気処理槽内の硫化水素がガス側に移動する量が制限される。すなわち、嫌気処理槽内に硫化水素が蓄積しやすくなり、安定した処理を継続することが困難になるという状態に陥ることになる。
【0008】
ここで、ガス中に硫化水素が含まれる場合、脱硫設備により硫化水素を除去することが行われている。このときの脱硫設備としては、アルカリ性溶液とガスを接触させて硫化水素を吸収除去するものや、好気性微生物を利用しガス中の硫化水素を酸化させるものが知られている。
しかしながら、アルカリ性溶液を用いる場合については、アルカリ性溶液の調製に多量の薬剤(主に水酸化ナトリウム等)を必要とするとともに、脱硫処理後の処理液を中和するために、多量の薬剤(主に塩酸等の酸)が必要となる。また、好気性微生物を利用した場合、硫化水素が酸化されて硫酸イオンとなるため、処理液のpHが低下し、中和のための薬剤(主に水酸化ナトリウム等のアルカリ)が多量に必要になる。
【0009】
したがって、嫌気処理において硫黄成分が含まれる排水を安定して処理するには、嫌気処理に伴い発生する硫化水素を除去する必要がある一方で、ランニングコストの観点からは、脱硫処理に係る薬剤使用量を低減させることが求められる。
【0010】
本発明の課題は、硫黄成分を含む排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減の両立が可能な嫌気処理システム及び嫌気処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討した結果、硫黄成分を含む排水の嫌気処理において、バイオガス中の硫化水素を硫黄として除去した脱硫ガスを用い、嫌気処理槽内の撹拌を行うことで、安定した処理と薬剤使用量の削減が可能となることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の嫌気処理システム及び嫌気処理方法である。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の嫌気処理システムは、硫黄成分を含む排水を嫌気処理する嫌気処理システムであって、嫌気処理槽と、嫌気処理槽で発生したバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去する硫化水素除去部と、を備え、硫化水素除去部から排出された脱硫ガスを、嫌気処理槽に導入するという特徴を有する。
本発明の嫌気処理システムは、嫌気処理に伴い発生するバイオガス中の硫化水素の除去において、硫化水素イオンや硫酸イオンの形態ではなく、硫黄(分子状硫黄)として除去することで、薬剤(特にアルカリ)の使用を大幅に低減させることが可能となる。また、脱硫処理後の脱硫ガスを嫌気処理槽に導入することで、槽内の撹拌を行うとともに、嫌気処理槽内の硫化水素が脱硫ガスにストリッピングされるため、嫌気処理槽内の硫化水素濃度を低減させ、嫌気処理への影響を抑制することが可能となる。すなわち、硫黄成分が含まれる排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減を両立させることが可能となる。
【0013】
また、本発明の嫌気処理システムの一実施態様は、嫌気処理槽は、酸生成槽とメタン発酵槽を備え、硫化水素除去部から排出された脱硫ガスを、酸生成槽に導入するという特徴を有する。
一般に、嫌気処理の一つであるメタン発酵処理には、排水中の有機物に酸生成菌を接触させて酸を生成させる酸生成工程と、酸が生成した処理液にメタン生成菌を接触させてメタンを生成させるメタン生成工程が含まれる。
この特徴によれば、嫌気処理槽を酸生成槽とメタン発酵槽を備える二槽式とし、メタン発酵処理に伴う工程(酸生成工程及びメタン生成工程)ごとに好適な処理環境を形成することができる。また、酸生成槽内はpHが低く、硫化水素が発生しやすい条件ともなるが、脱硫ガスを導入することによるストリッピングも促進される。このため、特に硫化水素による影響を受けやすいメタン生成菌による処理を行うメタン発酵槽では、硫化水素濃度を低減させた状態を維持しながら処理を継続させることが可能となる。また、メタン発酵槽における処理では嫌気性雰囲気の維持が重要となるが、酸生成槽側のみに脱硫ガスを導入することにより、メタン発酵槽側では槽外部からの給気がなく、酸素(空気)が混入する可能性を極力低減させることが可能となる。
すなわち、硫黄成分が含まれる排水の嫌気処理において、硫化水素の除去効率をより一層高めることができ、安定した処理と薬剤使用量削減の両立がより一層容易となる。
【0014】
また、本発明の嫌気処理システムの一実施態様は、吸収液に硫化水素を吸収させる湿式吸収部と、吸収液中の硫化水素を硫黄に酸化する酸化部と、を備えるという特徴を有する。
この特徴によれば、嫌気処理槽で発生した硫化水素を含むバイオガスについて、湿式吸収部において得られた吸収液を、酸化部において酸化させることで、硫化水素除去部における処理工程上、硫化水素イオンや硫酸イオンを生成させることなく、硫化水素から硫黄(分子状硫黄)を生成させることができる。また、このとき湿式吸収部と酸化部を分けることで、酸化部では硫黄生成における副生成物としてアルカリ(水酸化ナトリウム)を回収することも可能となる。したがって、酸化部で回収したアルカリを湿式吸収部で使用することができ、薬剤使用量の一層の低減が可能となる。
【0015】
また、上記課題を解決するための本発明の嫌気処理方法としては、硫黄成分を含む排水を嫌気処理する嫌気処理方法であって、嫌気処理工程と、嫌気処理工程で発生したバイオガス中の硫化水素を硫黄として除去する硫化水素除去工程と、を備え、硫化水素除去工程から排出された脱硫ガスを、嫌気処理工程に導入するという特徴を有する。
本発明の嫌気処理方法は、嫌気処理に伴い発生するバイオガス中の硫化水素の除去において、硫化水素イオンや硫酸イオンの形態ではなく、硫黄(分子状硫黄)として除去することで、薬剤(特にアルカリ)の使用を大幅に低減させることが可能となる。また、脱硫処理後の脱硫ガスを嫌気処理工程に導入することで、嫌気処理工程における撹拌を行うとともに、嫌気処理工程で発生した硫化水素が脱硫ガスにストリッピングされるため、嫌気処理工程における硫化水素濃度を低減させ、嫌気処理への影響を抑制することが可能となる。すなわち、硫黄成分が含まれる排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減を両立させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硫黄成分を含む排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減の両立が可能な嫌気処理システム及び嫌気処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施態様に係る嫌気処理システムの概略説明図である。
図2】本発明の第2の実施態様に係る嫌気処理システムの概略説明図である。
図3】本発明の第2の実施態様に係る嫌気処理システムの別態様を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る嫌気処理システム及び嫌気処理方法の実施態様を詳細に説明する。また、本発明の嫌気処理方法については、以下の嫌気処理システムの構造及び作動の説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する嫌気処理システムについては、本発明に係る嫌気処理システムを説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。また、本実施態様に記載する嫌気処理方法についても、本発明に係る嫌気処理システムを用いた嫌気処理方法を説明するために例示したにすぎず、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の処理対象である排水としては、硫黄成分を含むものであればよく、特に限定されない。また、本発明の処理対象である排水中には、嫌気処理が可能な物質(有機物)が一定程度含まれることが好ましい。このような排水としては、例えば、食品工場、化学工場等の各種工場から排出される工場排水のほか、下水などの生活排水が挙げられる。
また、本発明の排水に含まれる硫黄成分とは、嫌気処理によって硫化水素を発生するものであればよく、具体的には、硫酸イオンのほか、硫黄を含有するアミノ酸や、これらアミノ酸を構成成分とするタンパク質が挙げられる。
【0020】
〔第1の実施態様〕
図1は、本発明の第1の実施態様における嫌気処理システムを示す概略説明図である。
本実施態様に係る嫌気処理システム1Aは、図1に示すように、硫黄成分を含む排水(以下、「被処理水W0」と呼ぶ)を嫌気処理する嫌気処理槽2Aと、嫌気処理槽2Aで発生したバイオガスG1中の硫化水素を除去する硫化水素除去部3と、硫化水素除去部3から排出された脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入する脱硫ガス導入手段4を備えるものである。
さらに、本実施態様に係る嫌気処理システム1Aは、嫌気処理槽2Aに対して被処理水W0を導入するための導入配管であるラインL1と、嫌気処理槽2Aと硫化水素除去部3を接続する接続配管であるラインL2と、嫌気処理槽2Aからの処理水W1を系外に排出するための排出配管であるラインL3を備えている。ここで、ラインL1及びラインL3は液体を移送する配管であり、ラインL2は気体を移送する配管である。
なお、図1中、実線の矢印は液体(被処理水W0や処理水W1等)の流れを示すものであり、破線の矢印は気体(バイオガスG1や脱硫ガスG2)の流れを示すものである。
【0021】
本実施態様に係る嫌気処理システム1Aは、ラインL1を介して被処理水W0が導入される嫌気処理槽2Aにおける嫌気処理を行うとともに、嫌気処理槽2Aで発生したバイオガスG1を硫化水素除去部3に導入し、さらにバイオガスG1中の硫化水素を硫黄として除去して得られた脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入することで、嫌気処理槽2A内の撹拌及び嫌気処理槽2A内に存在する硫化水素のストリッピングを行うものである。
【0022】
嫌気処理槽2Aは、被処理水W0に対して嫌気処理を行うための槽である。
嫌気処理槽2Aで行う処理は、被処理水W0中に含まれる処理対象に合った嫌気処理であればよく、特に制限されない。例えば、発生したバイオガスG1の有用性に係る観点から、処理後のバイオガスG1中にメタンを比較的多く含むものが好ましい。このような嫌気処理としては、メタン発酵が挙げられる。
以下、嫌気処理槽2A内における嫌気処理としては、主にメタン発酵に係るものについて説明するが、これに限定されるものではない。
【0023】
嫌気処理槽2Aとしては、メタン発酵を進行させることができるものであればよく、具体的な構造については特に限定されない。例えば、処理対象である被処理水W0の性質に応じて適宜選択することができる。例えば、被処理水W0が硫黄成分を含むこと以外に、液体成分を多く含む場合や、固体成分を多く含む場合などに応じ、好適な嫌気処理槽2Aの構造を選択することができる。
また、嫌気処理槽2Aとしては、単槽あるいは2槽以上の複数槽からなるものとすることができる。例えば、図1に示すように、嫌気処理槽2Aを単槽とする場合、いわゆる消化槽として知られる構造を用いることができる。なお、嫌気処理槽を複数槽とする場合については、別の実施態様として後述する。
【0024】
嫌気処理槽2A内には、被処理水W0以外に、嫌気処理を効果的に進行させるために必要な内容物を導入・収容するものとしてもよい。このような内容物としては、例えば、グラニュール汚泥のほか、微生物(嫌気性微生物)を保持するための微生物保持担体等を収容することが挙げられる。
【0025】
図1に示すように、嫌気処理槽2Aを単槽とする場合、嫌気的な環境の維持のために密閉容器とした槽に対し、後述する脱硫ガス導入手段4が接続され、脱硫ガス導入手段4を介して導入される脱硫ガスG2によって槽内部が撹拌されるものが挙げられる。このとき、脱硫ガス導入手段4以外に、嫌気処理槽2A内に撹拌機構を別途設け、嫌気処理槽2A内の撹拌効率を高めるものとしてもよい。
そして、ラインL1により嫌気処理槽2A内に導入された被処理水W0と嫌気性微生物とが反応し、嫌気処理槽2A内でメタン及び二酸化炭素を主成分とするバイオガスG1が発生するとともに、処理水W1が生成する。
【0026】
このとき、嫌気処理槽2A内では、被処理水W0に含まれる硫黄成分が、嫌気性微生物の一種である硫酸塩還元菌により、硫化水素に還元される。
例えば、被処理水W0に硫酸塩(硫酸イオン)の形態で硫黄成分が含まれる場合、以下の式1に基づき、硫化水素が発生する。
【数1】
【0027】
したがって、嫌気処理槽2Aで発生したバイオガスG1は、メタンや二酸化炭素に加え、硫化水素を含むガスとしてラインL2を介して硫化水素除去部3に導入される。
【0028】
また、嫌気処理槽2内で生成された処理水W1は排出配管であるラインL3を介して、系外に排出される。
【0029】
硫化水素除去部3は、バイオガスG1中の硫化水素を硫黄として除去するためのものである。
本実施態様における硫化水素除去部3は、単にバイオガスG1中から硫化水素を除去するのではなく、硫黄(分子状硫黄)の形態で除去するものである。
【0030】
ガス中の硫化水素を除去するに当たっては、様々な方法が知られており、乾式あるいは湿式で行うものに分けられる。
ここで、乾式による脱硫は、硫化水素の除去効率が高い一方で、イニシャルコスト及びランニングコストが高いことが知られている。嫌気処理槽2Aから発生する硫化水素の総量は、バイオガスG1中におけるメタンや二酸化炭素よりも少ないこと等を鑑みると、硫化水素除去部3として乾式脱硫を用いることはオーバースペックにつながり、コスト高に係る面の影響が大きくなるため、望ましくない。
【0031】
そして、湿式による脱硫としては、アルカリ性溶液を吸収液として用いるものや、好気性微生物を利用し硫化水素を酸化処理するものが知られている。
【0032】
例えば、アルカリ性溶液(水酸化ナトリウム水溶液)を吸収液として用いるものでは、以下の式2に基づき、ガス中の硫化水素は硫化水素イオンとして吸収液内に溶解する。
【数2】

ここで、式2は平衡反応であり、式2の反応を右側に推し進め、硫化水素(HS(g))を効果的に吸収(除去)するためには、水酸化物イオン(OH)濃度を高める必要があることが分かる。また、硫化水素の吸収が進むことで吸収液内の硫化水素イオン(HS)濃度が増加すると、式2の反応は右側に進行し難くなる。そのため、硫化水素の吸収を継続させる(式2の反応を継続的に右側に進行させる)には、吸収液の一部を排出して補給する必要がある。このとき排出される吸収液は当然に高pH排水となるため、この吸収液の処理には多量の酸を用いた中和処理が必須となる。また、補給する吸収液の調製にも薬剤(アルカリ)を必要とする。すなわち、吸収液を用いた硫化水素の吸収(除去)に当たっては、吸収液の調製に多量のアルカリ(NaOH)を使用する必要がある。併せて、吸収液内の硫化水素イオン濃度が飽和しないよう、吸収液の排出・補給が必要となり、排出された吸収液の処理に多量の酸を用いることになる。よって、硫化水素濃度が高くなるに従い、多量の薬剤を必要とすることになる。また、脱硫処理後の吸収液を中和処理した際に、再び硫化水素が発生することもある。
【0033】
また、好気性微生物を利用し硫化水素を酸化処理するものでは、硫化水素を吸収液(水酸化ナトリウム水溶液)に吸収させ、以下の式3に基づく反応を進行させた後、空気(酸素)を供給することで、以下の式4に基づく反応が進行するものとなる。なお、式3は、式2の平衡反応が右側に進行したものに相当する。
【数3】


【数4】
【0034】
このときの脱硫処理全体に係る反応は、式3と式4をまとめた式5で表される。
【数5】

ここで、式5より、硫化水素1molに対し、NaOHを2mol、酸素分子を2分子消費することが分かる。また、脱硫処理に伴い、処理液(吸収液)のpHが低下するため、この処理液の処理には多量のアルカリを用いた中和処理が必須となる。そして、この脱硫処理では、酸素を必要とするが、式5の反応が完全に進行するわけではないため、一部の酸素が残留することになる。
本実施態様における嫌気処理システム1Aでは、硫化水素除去部3から排出された脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入するため、脱硫ガスG2に酸素が残留することで、嫌気処理槽2A内の嫌気処理(特にメタン生成菌によるメタン発酵)の進行が阻害されることになる。
【0035】
以上のことから、本実施態様に係る硫化水素除去部3は、硫化水素イオンや硫酸イオンを生成して硫化水素を除去するものではなく、バイオガスG1中の硫化水素を硫黄として回収・除去するものを用いる。
具体的には、図1に示すように、硫化水素除去部3として、吸収液に硫化水素を吸収させる湿式吸収部31と、吸収液中の硫化水素を硫黄に酸化する酸化部32とを備えるものが挙げられる。
【0036】
湿式吸収部31は、吸収液を用いてバイオガスG1中の硫化水素を吸収させるものであり、上述した式3(式2)に基づく反応を進行させるものである。
湿式吸収部31としては、吸収液を用いて硫化水素の吸収を行うことができるものであればよく、例えば、いわゆる湿式スクラバーと呼ばれる公知の湿式脱硫塔(吸収塔)を用いることができる。
また、湿式吸収部31で用いる吸収液としては、硫化水素の吸収効率の面から、アルカリ(水酸化ナトリウム等)が溶解した水溶液を用いることが好ましい。また、後述する酸化部32で回収可能なアルカリ(水酸化ナトリウム等)を吸収液に用いることで、嫌気処理システム1A全体としての薬剤使用量をより一層低減させることが可能となる。
【0037】
酸化部32は、湿式吸収部31において吸収液に吸収された硫化水素(硫化水素イオン)を硫黄に酸化させるものである。
酸化部32では、上述した式4に基づく酸化処理とは異なり、硫化水素イオンを分子状硫黄(価数0)の形態まで酸化するものである。換言すれば、酸化部32では、硫化水素イオンの酸化を穏やかに進行させ、分子状硫黄の形態で酸化が停止するような条件下で処理を行うものである。
【0038】
具体的には、湿式吸収部31で硫化水素を吸収した吸収液について、バイオガスG1の流入を遮断した状態でラインL4を介して反応槽32aに導入し、酸化処理を行う。このときの酸化処理としては、酸化剤として公知のものを添加するものとしてもよいが、薬剤コスト及び酸化力(穏やかな酸化を可能とするもの)に係る観点から、空気曝気によるものが好ましい。すなわち、反応槽32aとしては、曝気槽として公知の構造を有するものが挙げられる。
このとき、反応槽32aにおける酸化還元電位の値を低く維持することと併せ、反応槽32a内に供給する曝気空気量の制御を行うことで、吸収液中では硫酸イオンを生成することなく、生物学的な酸化が進行する。このときの反応は、以下の式6で示すものとなる。
【数6】

式6に示すように、反応槽32aでは、硫黄と併せてアルカリ(水酸化ナトリウム)が副生成物として得られることになる。このアルカリは回収して湿式吸収部31に導入することで、湿式吸収部31で必要となる薬剤使用量を低減することが可能となる。
【0039】
本実施態様における酸化部32としては、図1に示すように、空気曝気を行う反応槽32aの後段に、固液分離槽32b(沈降槽)を設けることが好ましい。これにより、反応槽32aで生成した固体分(硫黄)を分離回収し、ラインL5を介して系外に排出することが可能となる。併せて、液体分についてはラインL6を介して湿式吸収部31に循環供給し、吸収液(アルカリ性溶液)として再利用することが好ましい。
【0040】
そして、湿式吸収部31及び酸化部32における脱硫処理全体に係る反応は、式3と式6をまとめた式7で表される。
【数7】

ここで、式7より、硫化水素1molに対し、酸素分子を0.5分子消費することが分かる。したがって、脱硫処理後の脱硫ガスG2中に酸素が残留する可能性は大幅に少なくなる。
また、式7に示すように、脱硫処理全体としてはpH変動に関わる物質生成(物質消費)が見かけ上起きていないこと、併せて、式6で生成したアルカリ(水酸化ナトリウム:NaOH)は式3におけるアルカリとして再利用可能となることから、本実施態様の硫化水素除去部3における脱硫処理では、反応進行に必要となる薬剤使用量を大幅に低減させることが可能となる。
【0041】
硫化水素除去部3から排出された脱硫ガスG2は、脱硫ガス導入手段4を介して嫌気処理槽2Aに導入される。なお、脱硫ガスG2とは、硫化水素除去部3を経てバイオガスG1中の硫化水素が除去されたものであればよいが、上述したように、脱硫ガスG2中に酸素が残留していると、嫌気処理槽2A内に脱硫ガスG2を導入した際に、嫌気処理(メタン発酵)を阻害する要因となり得る。そのため、図1に示すように、空気曝気を伴わない湿式吸収部31から排出されるガスを脱硫ガスG2とし、嫌気処理槽2Aに導入することが好ましい。
【0042】
脱硫ガス導入手段4は、脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入するためのものである。
脱硫ガス導入手段4としては、図1に示すように、硫化水素除去部3(湿式吸収部31)と嫌気処理槽2Aとを接続し、脱硫ガスG2を移送する配管41と、配管41上に設けられるブロワー42と、嫌気処理槽2A内に配置される散気手段43と、を備えるものが挙げられる。
【0043】
脱硫ガス導入手段4を介し、硫化水素が除去された脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入することで、嫌気処理槽2A内が撹拌される。これにより、嫌気処理槽2A内の嫌気性微生物と被処理水W0の接触効率が向上し、安定した処理を継続することが可能となる。
このとき、嫌気処理槽2A内に収容されている内容物(被処理水W0のほか、グラニュール汚泥や微生物保持担体などの充填物など)の流動性に応じ、散気手段43を選択するものとしてもよい。例えば、嫌気処理槽2A内にグラニュール汚泥が充填されている等、嫌気処理槽2A内の内容物の流動性が高い場合においては、散気手段43として散気管やディフューザーを用い、脱硫ガスG2による曝気を行うことが挙げられる。また、被処理水W0中の懸濁物質濃度(SS濃度)が高い等、嫌気処理槽2A内の内容物の流動性が低い場合においては、散気手段43としてドラフトチューブを用い、エアリフト効果による撹拌を可能とすることが挙げられる。さらに、脱硫ガスG2の導入による撹拌だけではなく、撹拌機構を併用するものとしてもよい。
併せて、嫌気処理槽2A内における嫌気処理によって発生する硫化水素は、脱硫ガスG2にストリッピングされ、嫌気処理槽2A内の硫化水素濃度を低減させることが可能となる。これにより、嫌気処理槽2A内における嫌気処理に対する硫化水素の影響を抑制することが可能となる。
【0044】
本実施態様における嫌気処理システム1Aは、脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Aに導入して利用するものであるが、脱硫ガスG2の一部を回収し、硫化水素含有量の少ない(メタン含有量の多い)バイオガスとして利用するための設備を設けるものとしてもよい。例えば、図1に示すように、配管41上に分岐配管44を接続し、この分岐配管44を介してガス精製装置5(乾式脱硫塔等)やガス貯留手段6(ガスホルダー)と接続し、脱硫ガスG2の一部をメタン含有量の多いガス源として活用することが挙げられる。
【0045】
以上のように、本実施態様における嫌気処理システム1A及びこの嫌気処理システム1Aを用いた嫌気処理方法では、嫌気処理に伴い発生するバイオガス中の硫化水素の除去において、硫化水素イオンや硫酸イオンの形態ではなく、硫黄(分子状硫黄)として除去することで、薬剤(特にアルカリ)の使用を大幅に低減させることが可能となる。また、脱硫処理後の脱硫ガスを嫌気処理槽に導入することで、槽内の撹拌を行うことと併せ、嫌気処理槽内の硫化水素が脱硫ガスにストリッピングされるため、嫌気処理槽内の硫化水素濃度を低減させ、嫌気処理への影響を抑制することが可能となる。すなわち、硫黄成分が含まれる排水の嫌気処理において、安定した処理と薬剤使用量削減を両立させることが可能となる。
【0046】
〔第2の実施態様〕
図2は、本発明の第2の実施態様における嫌気処理システムを示す概略説明図である。
第2の実施態様に係る嫌気処理システム1Bは、図2に示すように、第1の実施態様に係る嫌気処理システム1Aにおける嫌気処理槽2Aに代えて、複数槽を備える嫌気処理槽2Bとするものであり、より具体的には、嫌気処理槽2Bとして、酸生成槽21及びメタン発酵槽22を備え、酸生成槽21とメタン発酵槽22は接続配管であるラインL7により接続されている。また、嫌気性処理槽2Aと硫化水素除去部3を接続するラインL2に代えて、酸生成槽21と硫化水素除去部3を接続する接続配管であるラインL8と、メタン発酵槽22と硫化水素除去部3を接続する接続配管であるラインL9とを備える。
ここで、ラインL7は液体を移送する配管であり、ラインL8及びラインL9は、ラインL2と同様に、気体を移送する配管である。また、図2では、ラインL9はラインL8上に接続(合流)するものを示しているが、ラインL8とラインL9をそれぞれ独立して設けるものとしてもよい。
なお、第1の実施態様の構造と同じものについては、説明を省略する。
【0047】
一般に、嫌気処理の一つであるメタン発酵処理には、排水(被処理水W0)中の有機物に酸生成菌を接触させて酸を生成させる酸生成工程と、酸が生成した処理液にメタン生成菌を接触させてメタンを生成させるメタン生成工程が含まれる。
したがって、嫌気処理槽2Bとして、酸生成槽21とメタン発酵槽22を備える二槽式とすることで、メタン発酵処理に伴う工程(酸生成工程及びメタン生成工程)ごとに好適な処理環境を形成することができる。
【0048】
酸生成槽21は、ラインL1により導入される被処理水W0に対し、内部に収容する酸生成菌(主として嫌気性の酸生成菌)により、糖、蛋白質及び油分などの固体や高分子有機物を分解して、単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸を生成する酸生成処理を行うものである。
このとき、被処理水W0に含まれる硫黄成分は、嫌気性環境下において硫化水素に還元される(式1)。特に酸生成槽21内では、酸生成処理によってpHが低下しており、生成した硫化水素がガスとして放出(揮発)しやすい条件下にある。
酸生成槽21で処理された被処理水W0は、ラインL7を介してメタン発酵槽22へ供給される。一方、酸生成槽21で排出されたガス(バイオガスG1)は、ラインL8を介して硫化水素除去部3に導入される。
【0049】
なお、酸生成槽21は、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、微生物(菌)が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0050】
メタン発酵槽22は、ラインL7により供給される酸生成槽21で処理された被処理水W0に含まれる単糖類、アミノ酸、低級脂肪酸及び酢酸等からメタンを生成するメタン発酵処理を行うものである。メタン発酵処理は、浮遊法、固定床法、流動床法、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket)法、EGSB(Expanded Granular Sludge Bed)法等によって保持されたメタン生成菌により、溶存酸素のない嫌気性雰囲気下で行うものである。
【0051】
メタン発酵槽22には、嫌気処理に適した嫌気性微生物が存在するグラニュール層が形成される。そして、ラインL7を介して酸生成槽21から被処理水W0がメタン発酵槽22内に導入されると、グラニュール層に含まれる嫌気性微生物によってメタン発酵が行われる。その結果、メタン発酵槽22内では、メタン及び二酸化炭素を主成分とするガス(バイオガスG1)が発生するとともに、処理水W1が生成する。そして、メタン発酵槽22で発生したバイオガスG1は、ラインL9を介して硫化水素除去部3に導入され、処理水W1はラインL3を介して系外に排出される。
【0052】
このとき、既に酸生成槽21において被処理水W0中の硫黄成分が硫化水素に還元され、かつ還元された硫化水素はバイオガスG1の一部としてラインL8を介して硫化水素除去部3に導入されている。したがって、メタン発酵槽22内においては、硫黄成分や硫化水素の存在量は少なくなる。これにより、硫化水素の存在による影響を受けやすいメタン生成菌による嫌気処理(メタン発酵)を安定して継続させることが可能となる。
【0053】
メタン発酵槽22の内部には、気固液分離手段であるセトラーが設けられていてもよい(不図示)。また、メタン発酵槽22には、さらに付帯する各種設備を設けることができる。例えば、内部の水温調整手段、pH調整剤の投入手段、微生物(菌)が必要とする栄養源である窒素、リン、コバルト及びニッケル等の金属類を添加する手段を備えたものとしてもよい(不図示)。
【0054】
本実施態様における嫌気処理システム1Bでは、硫化水素除去部3から排出される脱硫ガスG2は、脱硫ガス導入手段4を介して酸生成槽21側に導入される。これにより、酸生成槽21内が撹拌されるとともに、酸生成槽21内の硫化水素が脱硫ガスG2にストリッピングされ、酸生成槽21内及び後段のメタン発酵槽22内における硫化水素濃度を低減させることが可能となる。
【0055】
特に、酸生成槽21内は酸生成反応によりpHが低下しているため、脱硫ガスG2による硫化水素のストリッピングが促進されるという効果も奏する。なお、メタン発酵を行うメタン生成菌の至適pHは中性付近であるため、メタン発酵槽22内のpHは中性付近とする必要があるが、酸生成槽21内ではpHを低くすることが可能である。したがって、脱硫ガスG2による硫化水素のストリッピング促進のために、酸生成槽21内に薬剤(酸)を添加するものとしてもよい。
【0056】
また、メタン生成菌が絶対嫌気性微生物であることから、メタン発酵槽22における処理では嫌気性雰囲気を維持することが重要となる。そのため、酸生成槽21側のみに脱硫ガスG2を導入することにより、メタン発酵槽22側では槽外部からの給気がなく、酸素(空気)が混入する可能性を極力低減させることが可能となる。これにより、脱硫ガスG2を嫌気処理槽2Bに導入して活用するに当たり、嫌気処理自体を阻害することなく、安定した嫌気処理を継続させることが容易となる。
【0057】
したがって、本実施態様における嫌気処理システム1Bでは、嫌気処理槽を二槽式とし、かつ脱硫ガスを酸生成槽のみに導入することで、硫化水素の除去効率をより一層高めることができ、併せて、安定した処理と薬剤使用量削減の両立がより一層容易となる。
【0058】
なお、図2には、本実施態様における嫌気処理システム1Bとして、酸生成槽21及びメタン発酵槽22で発生したガスを全てバイオガスG1として硫化水素除去部3に導入するものを示しているが、これに限定されるものではない。
【0059】
図3は、本実施態様における嫌気処理システム1Bの別態様を示すものである。
本実施態様における嫌気処理システム1Bの別態様としては、図3に示すように、酸生成槽21から排出されるガス(バイオガスG1)は、ラインL8を介して硫化水素除去部3に導入する。一方、メタン発酵槽22から排出するガス(バイオガスG3)は、硫化水素除去部3ではなく、バイオガスとして活用するための設備(ガス精製装置5やガス貯留手段6)に対し、ラインL10を介して直接導入するものが挙げられる。
【0060】
上述したように、被処理水W0中の硫黄成分に由来して発生する硫化水素の多くは、酸生成槽21においてバイオガスG1の一部として排出されるものとなる。したがって、酸生成槽21から排出されるガス(バイオガスG1)については、硫化水素除去部3による脱硫処理を行うものとし、メタン発酵槽22から排出されるガス(バイオガスG3)については、硫化水素含有量の少ない(メタン含有量の多い)ガス源として活用することが挙げられる。
【0061】
なお、上述した実施態様は嫌気処理システム及び嫌気処理方法の一例を示すものである。本発明に係る嫌気処理システム及び嫌気処理方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る嫌気処理システム及び嫌気処理方法を変形してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の嫌気処理システム及び嫌気処理方法は、硫黄成分が含まれる排水に対する嫌気処理において好適に利用されるものである。また、本発明の嫌気処理システム及び嫌気処理方法は、硫黄成分を高濃度に含む排水に対する嫌気処理に対し、特に好適に利用されるものである。
【符号の説明】
【0063】
1A,1B 嫌気処理システム、2A,2B 嫌気処理槽、21 酸生成槽、22 メタン発酵槽、3 硫化水素除去部、31 湿式吸収部、32 酸化部、32a 反応槽(曝気槽)、32b 固液分離槽、4 脱硫ガス導入手段、41 配管、42 ブロワー、43 散気手段、44 分岐配管、5 ガス精製装置、6 ガス貯留手段、G1,G3 バイオガス、G2 脱硫ガス、L1~L10 ライン、W0 被処理水、W1 処理水
図1
図2
図3