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  • 特開-電力変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163709
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241115BHJP
【FI】
H02M3/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079552
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】爲永 陽樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恒平
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA20
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD03
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730XC01
5H730XX03
5H730XX15
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX35
(57)【要約】
【課題】双方向DC/DC変換器の起動時の出力電力を抑制すること。
【解決手段】制御回路は、第1位相シフト制御及び第2位相シフト制御の少なくとも1つを実行する。第1位相シフト制御は、双方向DC/DC変換器の起動時にコンデンサの電圧がバッテリ電圧一次側換算値よりも高い場合に1次側巻線に正の電圧が印加されるように1次側制御信号を出力した後に、2次側巻線に正の電圧が印加されるように2次側制御信号を出力する制御である。第2位相シフト制御は、2次側巻線に正の電圧が印加されるように2次側制御信号を出力した後に、1次側巻線に正の電圧が印加されるように1次側制御信号を出力する制御である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに接続される双方向DC/DC変換器と、
前記双方向DC/DC変換器の入力端に設けられたコンデンサと、を備え、
前記双方向DC/DC変換器は、
1次側巻線及び2次側巻線を有するトランスと、
前記1次側巻線に接続された回路であって、複数の1次側スイッチング素子を有する1次側フルブリッジ回路と、
前記2次側巻線に接続された回路であって、複数の2次側スイッチング素子を有する2次側フルブリッジ回路と、
前記1次側スイッチング素子のオンとオフとを切り替える1次側制御信号及び前記2次側スイッチング素子のオンとオフとを切り替える2次側制御信号を出力することにより、前記1次側フルブリッジ回路に入力される入力電圧を、前記2次側フルブリッジ回路から出力される出力電圧に変換して前記バッテリに出力する制御回路と、を備え、
前記バッテリの電圧に前記トランスの巻数比を乗算した値をバッテリ電圧一次側換算値とすると、
前記制御回路は、
前記双方向DC/DC変換器の起動時に前記コンデンサの電圧が前記バッテリ電圧一次側換算値よりも高い場合に前記1次側巻線に正の電圧が印加されるように前記1次側制御信号を出力した後に、前記2次側巻線に正の電圧が印加されるように前記2次側制御信号を出力する第1位相シフト制御、及び前記2次側巻線に正の電圧が印加されるように前記2次側制御信号を出力した後に、前記1次側巻線に正の電圧が印加されるように前記1次側制御信号を出力する第2位相シフト制御の少なくとも1つを実行する、電力変換装置。
【請求項2】
交流電力を直流電力に変換して前記双方向DC/DC変換器に出力するAC/DC変換器を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の電力変換装置は、双方向DC/DC変換器と、双方向DC/DC変換器の入力端に設けられたコンデンサと、を備える。双方向DC/DC変換器は、トランスと、1次側フルブリッジ回路と、2次側フルブリッジ回路と、を備える。電力変換装置は、例えば、バッテリを充電するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-92592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
双方向DC/DC変換器の起動時には、コンデンサの電圧とバッテリ電圧一次側換算値との差によって出力電力が生じる場合がある。バッテリ電圧一次側換算値は、バッテリの電圧にトランスの巻数比を乗算した値である。双方向DC/DC変換器の起動時に出力電力が生じると、コンデンサの電圧が変動することによって過電圧や過電流の原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する電力変換装置は、バッテリに接続される双方向DC/DC変換器と、前記双方向DC/DC変換器の入力端に設けられたコンデンサと、を備え、前記双方向DC/DC変換器は、1次側巻線及び2次側巻線を有するトランスと、前記1次側巻線に接続された回路であって、複数の1次側スイッチング素子を有する1次側フルブリッジ回路と、前記2次側巻線に接続された回路であって、複数の2次側スイッチング素子を有する2次側フルブリッジ回路と、前記1次側スイッチング素子のオンとオフとを切り替える1次側制御信号及び前記2次側スイッチング素子のオンとオフとを切り替える2次側制御信号を出力することにより、前記1次側フルブリッジ回路に入力される入力電圧を、前記2次側フルブリッジ回路から出力される出力電圧に変換して前記バッテリに出力する制御回路と、を備え、前記バッテリの電圧に前記トランスの巻数比を乗算した値をバッテリ電圧一次側換算値とすると、前記制御回路は、前記双方向DC/DC変換器の起動時に前記コンデンサの電圧が前記バッテリ電圧一次側換算値よりも高い場合に前記1次側巻線に正の電圧が印加されるように前記1次側制御信号を出力した後に、前記2次側巻線に正の電圧が印加されるように前記2次側制御信号を出力する第1位相シフト制御、及び前記2次側巻線に正の電圧が印加されるように前記2次側制御信号を出力した後に、前記1次側巻線に正の電圧が印加されるように前記1次側制御信号を出力する第2位相シフト制御の少なくとも1つを実行する。
【0006】
第1位相シフト制御、及び第2位相シフト制御の少なくとも1つを実行することで、双方向DC/DC変換器の起動時の出力電力を抑制することができる。
上記電力変換装置について、交流電力を直流電力に変換して前記双方向DC/DC変換器に出力するAC/DC変換器を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、双方向DC/DC変換器の起動時の出力電力を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は電力変換装置の回路図である。
図2図2は起動制御を示すフローチャートである。
図3図3は位相シフト量と出力電力との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電力変換装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、電源システム100は、系統電源101と、バッテリ120と、電力変換装置10と、を備える。バッテリ120は、例えば、直流電力を充放電可能な二次電池である。二次電池、例えば、リチウムイオン蓄電池、又は鉛蓄電池である。
【0010】
<電力変換装置>
電力変換装置10は、AC/DC変換器13と、双方向DC/DC変換器14と、を備える。
【0011】
AC/DC変換器13には系統電源101が電気的に接続されている。AC/DC変換器13は、系統電源101から入力された交流電力を直流電力に変換して双方向DC/DC変換器14に出力する。
【0012】
双方向DC/DC変換器14は、デュアルアクティブブリッジ方式のDC/DCコンバータである。双方向DC/DC変換器14は、AC/DC変換器13とバッテリ120との間に設けられている。双方向DC/DC変換器14は、AC/DC変換器13から入力される直流電力を電力変換してバッテリ120に出力可能である。双方向DC/DC変換器14は、バッテリ120から入力される直流電力を電力変換してAC/DC変換器13に出力可能である。
【0013】
双方向DC/DC変換器14は、トランス20を備える。トランス20は、絶縁型である。トランス20は、磁性体のコア21と、1次側巻線22と、2次側巻線23と、を備える。1次側巻線22及び2次側巻線23は、コア21に巻かれている。トランス20は、リアクトルL1を有する。リアクトルL1は、チョークコイルなどの素子であってもよいし、1次側巻線22及び2次側巻線23の漏れインダクタンスであってもよい。
【0014】
双方向DC/DC変換器14は、1次側フルブリッジ回路30を備える。1次側フルブリッジ回路30は、第1レグ31と、第2レグ32と、を備える。第1レグ31と第2レグ32とは、互いに並列接続されている。第1レグ31は、第1スイッチング素子Q1と、第2スイッチング素子Q2と、ダイオードD1,D2と、を備える。第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とは、互いに直列接続されている。第2レグ32は、第3スイッチング素子Q3と、第4スイッチング素子Q4と、ダイオードD3,D4と、を備える。第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とは、互いに直列接続されている。第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3は、上アームを構成している。第2スイッチング素子Q2及び第4スイッチング素子Q4は、下アームを構成している。
【0015】
第1スイッチング素子Q1、第2スイッチング素子Q2、第3スイッチング素子Q3、及び第4スイッチング素子Q4は、複数の1次側スイッチング素子Q1~Q4である。1次側スイッチング素子Q1~Q4は、例えば、n型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。1次側スイッチング素子Q1~Q4は、p型のMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、又はGaN-HEMTであってもよい。
【0016】
ダイオードD1~D4は、それぞれ1次側スイッチング素子Q1~Q4に並列接続されている。ダイオードD1~D4は、寄生ダイオードであってもよいし、素子であってもよい。
【0017】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2との接続点、及び第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4との接続点は、それぞれ1次側巻線22に接続されている。これにより、1次側フルブリッジ回路30は、1次側巻線22に接続されている。
【0018】
双方向DC/DC変換器14は、2次側フルブリッジ回路40を備える。2次側フルブリッジ回路40は、第3レグ41と、第4レグ42と、を備える。第3レグ41は、第5スイッチング素子Q5と、第6スイッチング素子Q6と、ダイオードD5,D6と、を備える。第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6とは、互いに直列接続されている。第4レグ42は、第7スイッチング素子Q7と、第8スイッチング素子Q8と、ダイオードD7,D8と、を備える。第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8とは、互いに直列接続されている。第5スイッチング素子Q5及び第7スイッチング素子Q7は、上アームを構成している。第6スイッチング素子Q6及び第8スイッチング素子Q8は、下アームを構成している。
【0019】
第5スイッチング素子Q5、第6スイッチング素子Q6、第7スイッチング素子Q7、及び第8スイッチング素子Q8は、複数の2次側スイッチング素子Q5~Q8である。2次側スイッチング素子Q5~Q8は、例えば、n型のMOSFETである。2次側スイッチング素子Q5~Q8は、p型のMOSFET、IGBT、又はGaN-HEMTであってもよい。
【0020】
ダイオードD5~D8は、それぞれ2次側スイッチング素子Q5~Q8に並列接続されている。ダイオードD5~D8は、寄生ダイオードであってもよいし、素子であってもよい。
【0021】
第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6との接続点、及び第7スイッチング素子Q7と第8スイッチング素子Q8との接続点は、それぞれ2次側巻線23に接続されている。これにより、2次側フルブリッジ回路40は、2次側巻線23に接続されている。
【0022】
第3レグ41と第4レグ42とは、互いに並列接続されるようにバッテリ120に接続されている。2次側フルブリッジ回路40は、バッテリ120に電気的に接続されている。2次側フルブリッジ回路40の出力電力は、バッテリ120に供給される。これにより、電力変換装置10は、バッテリ120を充電する。
【0023】
電力変換装置10は、中間コンデンサ50を備える。中間コンデンサ50は、リンクコンデンサ、又は平滑コンデンサである。中間コンデンサ50は、第1レグ31及び第2レグ32と並列接続されている。中間コンデンサ50は、AC/DC変換器13と双方向DC/DC変換器14との間に設けられている。中間コンデンサ50は、双方向DC/DC変換器14の入力端に設けられたコンデンサである。
【0024】
電力変換装置10は、第1電圧センサ61を備える。第1電圧センサ61は、中間コンデンサ50の電圧VHを検出する。
電力変換装置10は、第2電圧センサ62を備える。第2電圧センサ62は、バッテリ120の電圧を検出する。
【0025】
電力変換装置10は、制御回路71を備える。制御回路71は、プロセッサと、記憶部と、を備える。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はDSP(Digital Signal Processor)である。記憶部は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御回路71は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御回路71は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0026】
制御回路71は、電力変換装置10の制御を行う。制御回路71は、1次側スイッチング素子Q1~Q4のオンとオフとを切り替える際には、1次側スイッチング素子Q1~Q4に1次側制御信号を出力する。制御回路71は、2次側スイッチング素子Q5~Q8のオンとオフとを切り替える際には、2次側スイッチング素子Q5~Q8に2次側制御信号を出力する。
【0027】
制御回路71は、AC/DC変換器13に系統電源101が電気的に接続されている場合、系統電源101から電力変換装置10に入力された交流電力を直流電力に変換してバッテリ120に出力する。詳細にいえば、制御回路71は、AC/DC変換器13を動作させることで双方向DC/DC変換器14に直流電力を入力する。制御回路71は、1次側制御信号を1次側スイッチング素子Q1~Q4に出力することで1次側スイッチング素子Q1~Q4をスイッチング動作させる。制御回路71は、2次側制御信号を2次側スイッチング素子Q5~Q8の出力することで2次側スイッチング素子Q5~Q8をスイッチング動作させる。これによって1次側フルブリッジ回路30に入力される入力電圧を、2次側フルブリッジ回路40から出力される出力電圧に変換してバッテリ120に出力する。
【0028】
1次側フルブリッジ回路30では、第1スイッチング素子Q1と第4スイッチング素子Q4とを同時オンする第1動作と、第2スイッチング素子Q2と第3スイッチング素子Q3とを同時オンする第2動作と、を切り替える。従って、1次側制御信号は、第1動作と第2動作とを切り替える際に出力される。
【0029】
2次側フルブリッジ回路40では、第5スイッチング素子Q5と第8スイッチング素子Q8とを同時オンする第3動作と、第6スイッチング素子Q6と第7スイッチング素子Q7とを同時オンする第4動作と、を切り替える。従って、2次側制御信号は、第3動作と第4動作とを切り替える際に出力される。
【0030】
1次側フルブリッジ回路30で第1動作が行われている際には2次側フルブリッジ回路40で第3動作が行われる。1次側フルブリッジ回路30で第2動作が行われている際には2次側フルブリッジ回路40で第4動作が行われる。
【0031】
双方向DC/DC変換器14の起動時に制御回路71が行う起動制御について説明する。
<起動制御>
図2に示すように、ステップS1において、制御回路71は、双方向DC/DC変換器14の起動時に中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより高いか否かを判定する。中間コンデンサ50の電圧VHは、第1電圧センサ61から取得可能である。バッテリ電圧一次側換算値VCHGは、バッテリ120の電圧にトランス20の巻数比を乗算した値である。バッテリ120の電圧は、第2電圧センサ62から取得可能である。トランス20の巻数比は、1次側巻線22の巻数/2次側巻線23の巻数である。トランス20の巻数比は、予め把握することができる。ステップS1の判定結果が肯定の場合、制御回路71は、ステップS2の処理を行う。
【0032】
ステップS2において、制御回路71は、第1位相シフト制御を行う。第1位相シフト制御は、1次側巻線22に正の電圧が印加されるように1次側制御信号を出力した後に、2次側巻線23に正の電圧が印加されるように2次側制御信号を出力する制御である。
【0033】
第1位相シフト制御は、1次側制御信号に対して2次側制御信号の位相を遅らせる制御である。即ち、1次側フルブリッジ回路30で第1動作が行われた後に、2次側フルブリッジ回路40で第3動作が行われる。1次側フルブリッジ回路30で第2動作が行われた後に、2次側フルブリッジ回路40で第4動作が行われる。
【0034】
第1位相シフト制御を行う場合の位相シフト量θini[°]は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。一例として、位相シフト量θiniは、(1)式から算出することができる。第1位相シフト制御を行う場合の位相シフト量θiniは、1次側制御信号が送信されてから2次側制御信号が送信されるまでの時間といえる。(1)式は、回路解析によって導出している。
【0035】
【数1】
(1)式のDTは、デッドタイムである。Cは、スイッチング素子Q1~Q8の寄生容量である。Lは、トランス20の漏れインダクタンスである。Tswは、スイッチング周期である。
【0036】
ステップS1の判定結果が否定の場合、制御回路71は、ステップS3の判定を行う。
ステップS3において、制御回路71は、双方向DC/DC変換器14の起動時に中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより低いか否かを判定する。ステップS3の判定結果が肯定の場合、制御回路71は、ステップS4の処理を行う。
【0037】
ステップS4において、制御回路71は、第2位相シフト制御を行う。第2位相シフト制御は、2次側巻線23に正の電圧が印加されるように2次側制御信号を出力した後に、1次側巻線22に正の電圧が印加されるように1次側制御信号を出力する制御である。
【0038】
第2位相シフト制御は、1次側制御信号に対して2次側制御信号の位相を進ませる制御である。即ち、2次側フルブリッジ回路40で第3動作が行われた後に、1次側フルブリッジ回路30で第1動作が行われる。2次側フルブリッジ回路40で第4動作が行われた後に、1次側フルブリッジ回路30で第2動作が行われる。
【0039】
第2位相シフト制御を行う場合の位相シフト量θini[°]は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。一例として、位相シフト量θiniは、(2)式から算出することができる。第2位相シフト制御を行う場合の位相シフト量θiniは、1次側制御信号が送信されてから2次側制御信号が送信されるまでの時間といえる。(2)式は、回路解析によって導出している。
【0040】
【数2】
ステップS3の判定結果が否定の場合、制御回路71は、第1位相シフト制御、及び第2位相シフト制御のいずれも行わない。この場合、例えば、制御回路71は、1次側巻線22に正の電圧が印加されるのと同時に2次側巻線23に正の電圧が印加されるように1次側制御信号及び2次側制御信号を出力する。
【0041】
[本実施形態の作用]
双方向DC/DC変換器14の出力電力Pの理想値は、(3)式で表すことができる。
【0042】
【数3】
(3)式のωは、2π×スイッチング周波数である。θは、位相シフト量である。
【0043】
しかしながら、デッドタイムや入出力電圧の影響によって双方向DC/DC変換器14の出力電力Pは、理想通りにならない場合がある。このため、1次側巻線22に正の電圧が印加されるのと同時に2次側巻線23に正の電圧が印加されるように1次側制御信号及び2次側制御信号を出力した場合、出力電力Pが0にならない場合がある。
【0044】
出力電力Pが0にならない場合であって中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより高い場合、過電流を引き起こす場合がある。出力電力Pが0にならない場合であって中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより低い場合、過電圧を引き起こす場合がある。
【0045】
図3には、位相シフト量と出力電力Pとの関係を示す。線L11は、理想的な出力電力Pの特性を示す。線L12は、実際の出力電力Pの特性を示す。なお、位相シフト量と出力電力Pとの関係は、デッドタイム、入出力電力、バッテリ電圧一次側換算値VCHGなどの種々の要素によって異なり得る。図3に線L12で示す位相シフト量と出力電力Pとの関係は、これらの要素を特定の値にした場合の一例である。
【0046】
図3から把握できるように、位相シフト量が0の場合、実際の出力電力Pは0にならない。図3の例の場合、位相シフト量が、θini以上から0未満であれば、位相シフト量が0の場合に比べて出力電力Pを抑制することができる。
【0047】
[本実施形態の効果]
(1)制御回路71は、中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより高い場合、第1位相シフト制御を実行する。制御回路71は、中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGより低い場合、第2位相シフト制御を実行する。これにより、双方向DC/DC変換器14の起動時の出力電力Pを抑制することができる。
【0048】
(2)電力変換装置10は、AC/DC変換器13と双方向DC/DC変換器14との間に中間コンデンサ50を備える。この場合、双方向DC/DC変換器14の起動時に大きな出力電力Pが発生すると、中間コンデンサ50の電圧が変動し、過電圧や過電流が発生するが、本実施形態によれば、双方向DC/DC変換器14の起動時の出力電力Pを抑制することができるため、中間コンデンサ50の電圧変動を抑制することができる。
【0049】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0050】
○制御回路71は、第1位相シフト制御、及び第2位相シフト制御の一方のみを行ってもよい。例えば、中間コンデンサ50の電圧VHがバッテリ電圧一次側換算値VCHGよりも常に高い場合、制御回路71は、第1位相シフト制御のみを実行してもよい。
【0051】
○電力変換装置は、AC/DC変換器13を備えていなくてもよい。この場合、双方向DC/DC変換器14の入力端に接続されるコンデンサは、入力コンデンサである。
【符号の説明】
【0052】
10…電力変換装置、13…AC/DC変換器、14…双方向DC/DC変換器、20…トランス、22…1次側巻線、23…2次側巻線、30…1次側フルブリッジ回路、40…2次側フルブリッジ回路、50…コンデンサである中間コンデンサ、71…制御回路、120…バッテリ。
図1
図2
図3