IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -半導体装置及びその製造方法 図1
  • -半導体装置及びその製造方法 図2
  • -半導体装置及びその製造方法 図3
  • -半導体装置及びその製造方法 図4
  • -半導体装置及びその製造方法 図5
  • -半導体装置及びその製造方法 図6
  • -半導体装置及びその製造方法 図7
  • -半導体装置及びその製造方法 図8
  • -半導体装置及びその製造方法 図9
  • -半導体装置及びその製造方法 図10
  • -半導体装置及びその製造方法 図11
  • -半導体装置及びその製造方法 図12
  • -半導体装置及びその製造方法 図13
  • -半導体装置及びその製造方法 図14
  • -半導体装置及びその製造方法 図15
  • -半導体装置及びその製造方法 図16
  • -半導体装置及びその製造方法 図17
  • -半導体装置及びその製造方法 図18
  • -半導体装置及びその製造方法 図19
  • -半導体装置及びその製造方法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024163719
(43)【公開日】2024-11-22
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20241115BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20241115BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241115BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20241115BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241115BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241115BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241115BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20241115BHJP
【FI】
H01L29/78 618C
H01L29/78 618A
H01L29/78 616U
H01L29/78 616V
H01L29/78 616K
H01L21/306 F
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
G02F1/1368
G09F9/30 338
G09F9/00 338
H10K59/12
H10K71/60
H01L29/78 618B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079566
(22)【出願日】2023-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】渡壁 創
(72)【発明者】
【氏名】津吹 将志
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊成
(72)【発明者】
【氏名】田丸 尊也
(72)【発明者】
【氏名】望月 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 涼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 将弘
【テーマコード(参考)】
2H192
3K107
4M104
5C094
5F043
5F110
5G435
【Fターム(参考)】
2H192AA24
2H192BC31
2H192CB05
2H192CB08
2H192CB34
2H192CB37
2H192CB83
2H192DA12
2H192DA52
2H192FA73
2H192FB03
2H192FB05
2H192FB33
2H192FB46
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD39
3K107DD44Z
3K107DD90
3K107EE04
3K107FF00
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG12
3K107GG28
4M104AA03
4M104AA08
4M104AA09
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB08
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104BB36
4M104CC01
4M104CC05
4M104DD37
4M104DD64
4M104EE06
4M104EE16
4M104FF17
4M104GG09
4M104GG14
5C094AA43
5C094AA55
5C094BA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA15
5C094FB02
5C094FB04
5C094FB12
5C094FB14
5C094GB10
5C094JA08
5F043AA24
5F043AA26
5F043BB16
5F043BB18
5F043GG04
5F110BB01
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD03
5F110DD04
5F110EE03
5F110EE04
5F110EE14
5F110EE44
5F110FF02
5F110FF03
5F110FF04
5F110FF09
5F110FF28
5F110FF29
5F110GG01
5F110GG13
5F110GG25
5F110GG43
5F110GG58
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK21
5F110HK22
5F110HK33
5F110NN02
5F110NN05
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN34
5F110NN35
5F110NN72
5F110NN73
5F110NN78
5F110QQ05
5G435AA16
5G435AA17
5G435BB05
5G435BB12
5G435CC09
5G435HH12
5G435HH13
5G435HH20
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】酸化物半導体膜の形状のばらつきが小さく、安定した電気特性を有する半導体装置を提供すること。
【解決手段】半導体装置は、ゲート電極と、ゲート電極の上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、1nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極と、
前記ゲート電極の上のゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極及びドレイン電極を覆い、前記酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、
前記酸化物半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、前記層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、
前記第1領域の膜厚と前記第2領域の膜厚との差は、1nm以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記ソース電極及びドレイン電極は、第1金属層を含み、
前記第1金属層の形成で用いられるエッチング液に対する前記第1金属層のエッチングレートは、0.1nm/sec以上であり、
前記エッチング液に対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.01nm未満である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ソース電極及びドレイン電極は、さらに、前記第1金属層の上の銅を含む第2金属層を含み、
前記エッチング液に対する前記第2金属層のエッチングレートは、0.5nm/sec以上である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1金属層は、モリブデンを含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記エッチング液は、キレート剤を含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1金属層の前記エッチングレートは、0.5nm/sec以上である、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記ソース電極及びドレイン電極は、さらに、前記第1金属層の上の銅を含む第2金属層を含み、
前記エッチング液に対する前記第2金属層のエッチングレートは、1.0nm/sec以上である、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1金属層は、チタンを含む、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記エッチング液は、リン酸を含む、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記酸化物半導体層は、インジウム元素及び少なくとも1つ以上の金属元素を含み、
前記インジウム元素及び前記少なくとも1つ以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
ゲート電極を形成し、
前記ゲート電極の上に、ゲート絶縁層を形成し、
前記ゲート絶縁層の上に、多結晶構造を有する酸化物半導体層を形成し、
前記酸化物半導体層の上に、ソース電極及びドレイン電極を形成し、
前記ソース電極及びドレイン電極を覆い、前記酸化物半導体層と接する層間絶縁層を形成する、ことを含み、
前記酸化物半導体層は、前記ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、前記層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、
前記第1領域の膜厚と前記第2領域の膜厚との差は、1nm以下である、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ソース電極及びドレイン電極の形成は、
第1金属膜を成膜し、
前記第1金属膜の上に、第2金属膜を成膜し、
エッチング液を用いて、前記第1金属膜および前記第1金属膜をエッチングし、第1金属層および前記第1金属層の上の第2金属層を形成する、ことを含み、
前記エッチング液に対する前記第1金属膜のエッチングレートは、0.1nm/sec以上であり、
前記エッチング液に対する前記酸化物半導体層のエッチングレートは、0.01未満である、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2金属膜は、銅を含み、
前記エッチング液に対する前記第2金属膜のエッチングレートは、0.5nm/sec以上である、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第1金属膜は、モリブデンを含む、請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記エッチング液は、キレート剤を含む請求項13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
前記第1金属膜の前記エッチングレートは、0.5nm/sec以上である、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2金属膜は、銅を含み、
前記エッチング液に対する前記第2金属膜のエッチングレートは、1.0nm/sec以上である、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1金属膜は、チタンを含む、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
前記エッチング液は、リン酸を含む、請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
前記酸化物半導体層は、インジウム元素及び少なくとも1つ以上の金属元素を含み、
前記インジウム元素及び前記少なくとも1つ以上の金属元素に対する前記インジウム元素の比率は、50%以上である、請求項11乃至請求項19のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、半導体装置に関する。特に、本発明の一実施形態は、酸化物半導体膜をチャネルとして用いた半導体装置に関する。また、本発明の一実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アモルファスシリコン、低温ポリシリコン、及び単結晶シリコンなどのシリコン半導体膜に替わり、酸化物半導体膜をチャネルとして用いた半導体装置の開発が進められている(例えば、特許文献1~6参照)。このような酸化物半導体膜を含む半導体装置は、アモルファスシリコン膜を含む半導体装置と同様に、単純な構造を有し、低温プロセスによりガラス基板上に製造することができる。また、酸化物半導体膜を含む半導体装置は、アモルファスシリコン膜を含む半導体装置より、高い電界効果移動度を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-141338号公報
【特許文献2】特開2014-099601号公報
【特許文献3】特開2021-153196号公報
【特許文献4】特開2018-006730号公報
【特許文献5】特開2016-184771号公報
【特許文献6】特開2021-108405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の酸化物半導体膜を含む半導体装置では、酸化物半導体膜のエッチング耐性が小さく、酸化物半導体膜の形状の制御が困難であった。特に、ガラス基板のような大面積基板を用いて製造される半導体装置では、酸化物半導体膜の形状のばらつきが、半導体装置の電気特性のばらつきを引き起こし、歩留まりが低下する要因となっていた。
【0005】
本発明の一実施形態は、酸化物半導体膜の形状のばらつきが抑制され、安定した電気特性を有する半導体装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、酸化物半導体膜の形状のばらつきを抑制し、歩留まりが向上する半導体装置の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る半導体装置は、ゲート電極と、ゲート電極の上のゲート絶縁層と、ゲート絶縁層の上の多結晶構造を有する酸化物半導体層と、酸化物半導体層の上のソース電極及びドレイン電極と、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層と、を含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、1nm以下である。
【0007】
本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法は、ゲート電極を形成し、ゲート電極の上に、ゲート絶縁層を形成し、ゲート絶縁層の上に、多結晶構造を有する酸化物半導体層を形成し、酸化物半導体層の上に、ソース電極及びドレイン電極を形成し、ソース電極及びドレイン電極を覆い、酸化物半導体層と接する層間絶縁層を形成する、ことを含み、酸化物半導体層は、ソース電極及びドレイン電極の1つと重畳する第1領域と、層間絶縁層と接する第2領域と、を含み、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、1nm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明するフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す模式的な断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る表示装置の概要を示す模式的な平面図である。
図13】本発明の一実施形態に係る表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図14】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図15】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な断面図である。
図16】本発明の一実施形態に係る表示装置の画素回路を示す回路図である。
図17】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す模式的な断面図である。
図18】実施例における各サンプルの電気特性を示すグラフである。
図19】実施例における各サンプルの電気特性から算出されたしきい値を示すグラフである。
図20】実施例における各サンプルの電気特性から算出された電界効果移動度(飽和領域における電界効果移動度)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下の開示はあくまで一例にすぎない。当業者が、発明の主旨を保ちつつ、実施形態の構成を適宜変更することによって容易に想到し得る構成は、当然に本発明の範囲に含有される。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、膜厚、形状等について模式的に表される場合がある。しかし、図示された形状はあくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
「半導体装置」とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。トランジスタ、半導体回路は半導体装置の一形態に含まれる。以下に示す実施形態の半導体装置は、例えば、表示装置、マイクロプロセッサ(Micro-Processing Unit:MPU)などの集積回路(Integrated Circuit:IC)、又はメモリ回路に用いられるトランジスタであってもよい。
【0011】
「表示装置」とは、電気光学層を用いて映像を表示する構造体を指す。例えば、表示装置という用語は、電気光学層を含む表示パネルを指す場合もあり、又は表示セルに対して他の光学部材(例えば、偏光部材、バックライト、タッチパネル等)を装着した構造体を指す場合もある。「電気光学層」には、技術的な矛盾が生じない限り、液晶層、エレクトロルミネセンス(EL)層、エレクトロクロミック(EC)層、電気泳動層が含まれ得る。したがって、実施形態において、表示装置として、液晶層を含む液晶表示装置、及び有機EL層を含む有機EL表示装置を例示して説明する。但し、実施形態で説明される構造体は、上述した他の電気光学層を含む表示装置へ適用することができる。
【0012】
本明細書等において、基板から酸化物半導体層に向かう方向を「上」又は「上方」という。逆に、酸化物半導体層から基板に向かう方向を「下」又は「下方」という。このように、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明するが、基板と酸化物半導体層との上下関係が図示と逆になるように配置されてもよい。また、「基板上の酸化物半導体層」という表現は、基板と酸化物半導体層との上下関係を説明しているに過ぎず、基板と酸化物半導体層との間に他の部材が配置されていてもよい。上方又は下方は、複数の層が積層された構造における積層順を意味するものであり、半導体装置の上方の画素電極と表現する場合、平面視において、半導体装置と画素電極とが重畳しない位置関係であってもよい。一方、半導体装置の鉛直上方の画素電極と表現する場合は、平面視において、半導体装置と画素電極とが重畳する位置関係を意味する。なお、平面視とは、基板の表面に対して、垂直な方向から見ることをいう。
【0013】
本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、場合により、互いに入れ替えることができる。
【0014】
本明細書等において「αはA、B又はCを含む」、「αはA、B及びCのいずれかを含む」、又は「αはA,B及びCからなる群から選択される一つを含む」という表現は、特に明示が無い限り、αがA~Cの複数の組み合わせを含む場合を排除しない。さらに、これらの表現は、αが他の要素を含む場合も排除しない。
【0015】
なお、以下の各実施形態は、技術的な矛盾を生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0016】
<第1実施形態>
図1図11を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10について説明する。
【0017】
[半導体装置10の構成]
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の模式的な構成を示す断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の構成を示す模式的な平面図である。図1に示す断面図は、図2に示すA1-A2線で切断したときの断面に対応する。
【0018】
図1に示すように、半導体装置10は基板11の上に設けられている。半導体装置10は、ゲート電極12GE、ゲート絶縁層14、16、酸化物半導体層26、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び層間絶縁層34、38を含む。ソース電極32S及びドレイン電極32Dを特に区別しない場合、これらを併せてソース電極及びドレイン電極32という場合がある。また、ゲート電極12GE、ゲート絶縁層14、16、及び酸化物半導体層26を指して、トランジスタと呼ぶ場合がある。半導体装置10は、酸化物半導体層26の下方にゲート電極12GEが設けられる、いわゆるボトムゲート型トランジスタである。
【0019】
本実施形態では、ボトムゲート型トランジスタを例として半導体装置10を説明するが、半導体装置10はボトムゲート型トランジスタに限られない。例えば、半導体装置10は、ゲート電極が酸化物半導体層26の上方及び下方に設けられたデュアルゲート型トランジスタであってもよい。
【0020】
ゲート電極12GEは基板11の上に設けられている。ゲート絶縁層14、16は基板11及びゲート電極12GEの上に設けられている。ゲート絶縁層14、16は積層構造を有し、ゲート絶縁層16がゲート絶縁層14の上に設けられている。酸化物半導体層26はゲート絶縁層14、16の上に設けられている。酸化物半導体層26の上に、ソース電極32S及びドレイン電極32Dが設けられている。層間絶縁層34、38は、酸化物半導体層26並びにソース電極32S及びドレイン電極32Dの上に設けられている。層間絶縁層34、38は積層構造を有し、層間絶縁層38が層間絶縁層34の上に設けられている。すなわち、層間絶縁層34、38は、ソース電極32S及びドレイン電極32Dを覆い、層間絶縁層34が酸化物半導体層26と接している。
【0021】
なお、図示しないが、ゲート絶縁層16と酸化物半導体層26との間に、金属酸化物層が設けられてもよい。金属酸化物層は、酸化物半導体層26と同じパターンを有していてもよい。例えば、金属酸化物層として、アルミニウムを含む酸化物(例えば、酸化アルミニウムなど)を用いることができる。金属酸化物層の膜厚は、1nm以上10nm以下、好ましくは1nm以上5nm以下である。
【0022】
図2に示すように、平面視において、酸化物半導体層26は、ゲート電極12GEと重畳している。D1方向は、ソース電極32Sとドレイン電極32Dとを結ぶ方向であり、D2方向は、D1方向と直交する方向である。半導体装置10において、チャネル長Lは、D1方向におけるソース電極32Sとドレイン電極32Dとの間の酸化物半導体層26の領域(チャネル領域)の長さに対応し、チャネル幅Wは、D2方向におけるチャネル領域の幅に対応する。平面視において、ソース電極32Sと重畳する酸化物半導体層26の領域はソース領域であり、ドレイン電極32Dと重畳する酸化物半導体層26の領域はドレイン領域である。すなわち、チャネル領域は、ソース領域とドレイン領域との間に位置する。
【0023】
配線12W及び配線32Wは、ゲート配線として機能する。配線32Wはコンタクトホール15を介して、配線12Wと電気的に接続されている。詳細は後述するが、配線12Wは、ゲート電極12GEと同一の層として形成される。また、配線32Wは、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと同一の層として形成される。なお、配線32Wは、配線12Wの上に設けられない場合がある。
【0024】
酸化物半導体層26は、透光性を有し、複数の結晶粒を含む多結晶構造を有する。詳細は後述するが、Poly-OS(Poly-crystalline Oxide Semiconductor)技術を用いることにより、多結晶構造を有する酸化物半導体層26を形成することができる。そのため、以下では、酸化物半導体層26に含まれる酸化物半導体をPoly-OSとして説明する場合がある。
【0025】
Poly-OSは、インジウム元素を含む2つ以上の金属元素(すなわち、インジウム元素及びインジウム元素以外の少なくとも1つ以上の金属元素)を含み、2つ以上の金属元素に対するインジウム元素の比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、又はランタノイド系元素が用いられる。酸化物半導体層26として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0026】
Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は、0.1μm以上であり、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。結晶粒の結晶粒径は、例えば、酸化物半導体層26のSEM観察、TEM観察、または電子線後方散乱回折(Electron Back Scattered Diffraction:EBSD)法などを用いて取得することができる。
【0027】
上述したように、Poly-OSに含まれる結晶粒の結晶粒径は0.1μm以上であるため、10nm以上30nm以下の膜厚を有する酸化物半導体層26では、膜厚方向に沿って1つの結晶粒のみが含まれる領域が存在する。
【0028】
Poly-OSは、エッチング耐性に優れる。詳細は後述するが、Poly-OSは、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液に対して優れたエッチング耐性を有する。具体的には、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、酸化物半導体層26はエッチング液によってほとんどエッチングされない。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの1つと重畳する酸化物半導体層26の第1領域(すなわち、ソース領域又はドレイン領域)の膜厚と、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと重畳しない酸化物半導体層26の第2領域(すなわち、チャネル領域)の膜厚とは、実質的に同一である。換言すると、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、1.0nm以下であり、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以下である。
【0029】
酸化物半導体層の形状のばらつきは、半導体装置の電気特性を不安定化させる要因となる。特に、酸化物半導体層のチャネル領域の膜厚のばらつきは、半導体装置の電気特性のばらつきとして顕著に現れる。例えば、チャネル領域の膜厚が設定された値よりも小さいと、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流が減少する。そのため、半導体装置のオン電流が減少し、電界効果移動度が低下する。また、ソース電極及びドレイン電極の形成において酸化物半導体層がエッチングされると、チャネル領域の膜厚が減少するだけでなく、ソース電極とドレイン電極との間において酸化物半導体層の上面に凹部が形成される。層間絶縁層は、酸化物半導体層の上面に形成された凹部を覆うように成膜されるが、層間絶縁層が凹部を十分に覆うことができないと、酸化物半導体層と層間絶縁層との間、又ソース電極及びドレイン電極と層間絶縁層との間に間隙が生じる。このような状態における半導体装置では、安定した電気特性が得られない。すなわち、酸化物半導体層の形状のばらつきによって、半導体装置の歩留まりが低下してしまう。
【0030】
これに対し、半導体装置10では、酸化物半導体層26がPoly-OSを含み、高いエッチング耐性を有する。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、チャネル領域の膜厚の減少がほとんどなく、酸化物半導体層26の上面に凹部が形成されない。したがって、半導体装置10では、酸化物半導体層26の形状のばらつきが小さく、安定した電気特性が得られる。例えば、半導体装置10では、耐圧を向上させるために400nm以上の膜厚を有するゲート絶縁層14、16が形成された場合であっても、電界効果移動度のばらつきが小さく、15cm/Vs以上、さらには20cm/Vs以上の電界効果移動度(線形領域における電界効果移動度)を得ることができる。
【0031】
[半導体装置10の製造方法]
図3図11を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を説明するフローチャートである。図4図11は、本発明の一実施形態に係る半導体装置10の製造方法を示す模式的な断面図である。以下では、図3に示すフローチャートの各ステップを順に説明する。
【0032】
図3のステップS1001(「GE形成」)では、基板11の上にゲート電極12GEが形成される(図4参照)。
【0033】
基板11として、ガラス基板、石英基板、及びサファイア基板など、透光性を有する剛性基板が用いられる。基板11が可撓性を備える必要がある場合、基板11として、ポリイミド基板、アクリル基板、シロキサン基板、フッ素樹脂基板など、又は樹脂を含む基板が用いられる。基板11として樹脂を含む基板が用いられる場合、基板11の耐熱性を向上させるために、上記の樹脂に不純物元素が導入されてもよい。また、集積回路に半導体装置10が用いられる場合は、基板11としてシリコン基板、炭化シリコン基板、化合物半導体基板などの半導体基板、又はステンレス基板などの導電性基板など、透光性を有しない基板が用いられてもよい。
【0034】
ゲート電極12GEは、スパッタリング法によって成膜された導電膜を加工して形成される。ゲート電極12GEとして金属材料が用いられる。例えば、ゲート電極12GEの金属材料として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又はこれらの化合物が用いられる。ゲート電極12GEとして、上記の金属材料が単層で用いられてもよく、積層で用いられてもよい。
【0035】
図3のステップS1002(「GI形成」)では、ゲート電極12GEの上にゲート絶縁層14、16が形成される(図4参照)。ゲート絶縁層14、16はCVD(Chemical Vapor Deposition)法、又はスパッタリング法によって成膜される。ゲート絶縁層14、16として絶縁性材料が用いられる。例えば、ゲート絶縁層14、16の絶縁性材料として、酸化シリコン(SiO)、酸化窒化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、窒化酸化シリコン(SiN)などの無機絶縁材料が用いられる。上記のSiOは、酸素(O)よりも少ない比率(x>y)の窒素(N)を含有するシリコン化合物である。SiNは、窒素よりも少ない比率(x>y)の酸素を含有するシリコン化合物である。
【0036】
基板11の上には、窒素を含む絶縁材料が用いられたゲート絶縁層14、酸素を含む絶縁材料が用いられたゲート絶縁層16が順に形成されることが好ましい。ゲート絶縁層14として、窒素を含む絶縁材料を用いることにより、基板11から酸化物半導体層26に向かって拡散する不純物をブロックすることができる。また、ゲート絶縁層16として、酸素を含む絶縁材料を用いることにより、加熱処理によって酸素を放出させることができる。酸素を含む絶縁材料が酸素を放出する加熱処理の温度は、例えば、500℃以下、450℃以下、又は400℃以下である。なお、酸素を含む絶縁材料は、半導体装置10の製造工程のいずれかのステップにおいて加熱されるときに、酸素を放出してもよい。
【0037】
ゲート絶縁層14の膜厚は、ゲート絶縁層16の膜厚よりも大きいことが好ましい。例えば、ゲート絶縁層14の膜厚は、200nm以上、300nm以上、又は400nm以上である。また、例えば、ゲート絶縁層16の膜厚は、50nm以上、100nm以上、又は150nm以上である。ゲート絶縁層14、16の膜厚(すなわち、ゲート絶縁層14およびゲート絶縁層16の総膜厚)は、300nm以上であることが好ましいが、これに限られない。
【0038】
図3のステップS1004(「OS成膜」)では、ゲート絶縁層14、16の上に酸化物半導体膜22を成膜する(図5参照)。酸化物半導体膜22は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。酸化物半導体膜22の膜厚は、10nm以上50nm以下であり、好ましくは10nm以上40nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。
【0039】
酸化物半導体膜22として、半導体の特性を有する金属酸化物を用いることができる。例えば、酸化物半導体膜22として、インジウム(In)元素を含む2つ以上の金属元素(すなわち、インジウム元素及びインジウム元素以外の少なくとも1つ以上の金属元素)を含む酸化物半導体が用いられる。また、2つ以上の金属元素に対するインジウム元素の比率は50%以上である。インジウム元素以外の金属元素として、ガリウム(Ga)元素、亜鉛(Zn)元素、アルミニウム(Al)元素、ハフニウム(Hf)元素、イットリウム(Y)元素、ジルコニウム(Zr)元素、又はランタノイド系元素が用いられる。酸化物半導体膜22として、13族元素を含むことが好ましい。なお、酸化物半導体膜22として、上記以外の元素が用いられてもよい。
【0040】
後述するOSアニールによって、酸化物半導体膜22を結晶化させる場合、成膜後かつOSアニール前の酸化物半導体膜22はアモルファス構造(例えば、XRD法においてアモルファスと判定されるような酸化物半導体の結晶成分が少ない構造)を有することが好ましい。つまり、酸化物半導体膜22の成膜は、成膜直後の酸化物半導体膜22ができるだけ結晶化しない条件の下で行われることが好ましい。例えば、スパッタリング法によって酸化物半導体膜22が成膜される場合、被成膜対象物(基板11及びその上に形成された構造物)の温度を制御しながら酸化物半導体膜22が成膜される。
【0041】
スパッタリング法によって被成膜対象物に対して成膜を行うと、プラズマ中で発生したイオン及びスパッタリングターゲットによって反跳した原子が被成膜対象物に衝突するため、成膜処理に伴い被成膜対象物の温度が上昇する。成膜処理中の被成膜対象物の温度が上昇すると、成膜直後の状態で酸化物半導体膜22に微結晶が含まれる。酸化物半導体膜22に微結晶が含まれると、その後のOSアニールによって結晶粒径を大きくすることができない。被成膜対象物の温度を制御するために、例えば、被成膜対象物を冷却しながら成膜を行うことができる。例えば、被成膜対象物の被成膜面の温度(以下、「成膜温度」という。)が100℃以下、70℃以下、50℃以下、又は30℃以下になるように、被成膜対象物を当該被成膜面の反対側の面から冷却することができる。特に、酸化物半導体膜22の成膜温度は、50℃以下であることが好ましい。基板11を冷却しながら酸化物半導体膜22を成膜することで、成膜直後において結晶成分が少ない酸化物半導体膜22を得ることができる。
【0042】
スパッタリングプロセスでは、酸素分圧10%以下の条件の下でアモルファス構造を有する酸化物半導体膜22が成膜される。酸素分圧が高いと、酸化物半導体膜22に含まれる過剰な酸素によって成膜直後の酸化物半導体膜22に微結晶が含まれてしまう。そのため、酸素分圧が低い条件の下で酸化物半導体膜22の成膜が行われることが好ましい。酸素分圧は、例えば、1%以上5%以下であり、好ましくは2%以上4%以下である。酸素分圧が1%未満の条件では、成膜装置内の酸素の分布が不均一となりやすい。その結果、酸化物半導体膜中の酸素の組成も不均一となり、微結晶が多く含まれる酸化物半導体膜が成膜されるか、又は後にOSアニール処理を行っても結晶化しない酸化物半導体膜が成膜される。
【0043】
図3のステップS1005(「OSパターン形成」)では、酸化物半導体層24のパターンを形成する(図6参照)。酸化物半導体層24のパターンの形成は、フォトリソグラフィを用いて行われる。例えば、酸化物半導体膜22の上にレジストマスク(図示しない)を形成し、当該レジストマスクを用いて酸化物半導体膜22をエッチングする。酸化物半導体膜22のエッチングとして、ウェットエッチングが用いられてもよく、ドライエッチングが用いられてもよい。ウェットエッチングでは、酸性のエッチング液を用いることができる。エッチング液として、例えば、シュウ酸、PAN、硫酸、過酸化水素水、またはフッ酸を用いることができる。エッチングにより、所定のパターンを有する酸化物半導体層24を形成することができる。その後、レジストマスクを除去する。
【0044】
所定のパターンを有する酸化物半導体層24の形成(すなわち、酸化物半導体膜22のパターニング加工)は、OSアニール前に行われることが好ましい。OSアニール後のPoly-OSは、エッチング耐性が高く、エッチングによるパターニング加工が困難となる。また、酸化物半導体層24の形成後にOSアニールを行うことによって、酸化物半導体層24の形成において生じたダメージ(例えば、酸化物半導体層24の中の酸素欠陥等)を修復することができる。
【0045】
図3のステップS1006(「OSアニール」)では、酸化物半導体層24の形成後に、酸化物半導体層24に対して加熱処理(OSアニール)を行うことにより、酸化物半導体層26を形成する(図7参照)。OSアニールでは、酸化物半導体層24が、所定の到達温度で所定の時間保持される。所定の到達温度は、300℃以上500℃以下であり、好ましくは350℃以上450℃以下である。また、到達温度での保持時間は、15分以上120分以下であり、好ましくは30分以上60分以下である。OSアニールを行うことにより、アモルファス構造を有する酸化物半導体層24が結晶化され、多結晶構造を有する酸化物半導体層26が形成される。すなわち、OSアニールにより、Poly-OSを含む酸化物半導体層26が形成される。
【0046】
図3のステップS1008(「コンタクトホール形成」)では、ゲート絶縁層14、16にコンタクトホールを形成する(図8参照)。これにより、配線12Wの上面を露出させる。なお、配線32Wと配線12Wとを接続する必要がない場合には、ステップS1008の工程が行われなくてもよい。
【0047】
図3のステップS1009(「SD形成」)では、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wを形成する(図9参照)。ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wは、スパッタリング法によって成膜された導電膜を、ウェットエッチングによるパターニング加工を行い、形成される。
【0048】
ソース電極32S及びドレイン電極32Dとして、ゲート電極12GEと同様の金属材料が用いられる。すなわち、パターニング加工される導電膜の金属材料として、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ビスマス(Bi)、銀(Ag)、銅(Cu)、及びこれらの合金又はこれらの化合物が用いられる。導電膜として、上記の金属材料が単層で用いられてもよく、積層で用いられてもよい。金属材料が単層で用いられる場合、例えば、導電膜は、MoW合金、Ti、又はCuなどの単層構造を有する。また、金属材料が積層で用いられる場合、例えば、導電膜は、Ti、Al、及びTiの積層構造(Ti/Al/Ti構造)、Cu及びTiの積層構造(Cu/Ti構造)、又はTi、Cu、及びTiの積層構造(Ti/Cu/Ti構造)を有する。ソース電極32S及びドレイン電極32Dも、導電膜と同様の構成を有する。また、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成と同時に、配線32Wが形成される。なお、配線32Wの低抵抗化のため、導電膜は、AlまたはCuのような低抵抗な金属材料を含むことが好ましい。また、導電膜がCuのような金属材料を含む場合、酸化物半導体層26とCuを含む金属膜との間に、Ti、Mo、又はMoW合金を含むバリア金属膜が設けられることが好ましい。
【0049】
ここで、積層構造を有するソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成について、Cu/Ti構造を例として説明する。酸化物半導体層26の上に、酸化物半導体層26と接する第1金属膜としてTiを成膜し、その後、第1金属膜の上に第2金属膜としてCuを成膜する。続いて、第2金属膜の上に所定のレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして第2金属膜および第1金属膜のウェットエッチングを行う。これにより、第2金属膜および第1金属膜から、それぞれ、Tiを含む第2金属層およびCuを含む第1金属層が形成される。
【0050】
ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成では、ウェットエッチングのエッチング液として、過酸化水素水ベースのエッチング液が用いられる。過酸化水素水ベースのエッチング液は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤又はリン酸を含む。
【0051】
Poly-OSは、優れたエッチング耐性を有する。具体的には、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液に対するエッチングレートが非常に小さい。これは、Poly-OSが、当該エッチング液によってほとんどエッチングされないことを意味する。換言すると、半導体装置10では、酸化物半導体層26上に直接導電膜を成膜し、導電膜をパターニング加工してソース電極32S及びドレイン電極32Dを形成しても、酸化物半導体層26のチャネル領域はほとんどエッチングされない。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの1つと重畳する酸化物半導体層26の第1領域(すなわち、ソース領域又はドレイン領域)の膜厚と、ソース電極32S及びドレイン電極32Dと重畳しない酸化物半導体層26の第2領域(すなわち、チャネル領域)の膜厚とは、実質的に同一である。換言すると、第1領域の膜厚と第2領域の膜厚との差は、1.0nm以下であり、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.2nm以下であるように、酸化物半導体層26の膜厚を制御することができる。
【0052】
例えば、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成で用いられるエッチング液(液温:30℃)に対する酸化物半導体層26のエッチングレートは、0.01nm/sec未満であり、又は0.20nm/min未満である。すなわち、エッチング時間が60secであっても、酸化物半導体層26の膜厚の減少は0.20nm未満である。
【0053】
IGZOのような多結晶構造を有しない酸化物半導体層を含む半導体装置において、酸化物半導体層の上に直接成膜された導電膜をパターニング加工してソース電極及びドレイン電極を形成する場合、導電膜のパターニング加工におけるウェットエッチングによって酸化物半導体層もエッチングされてしまう。そのため、酸化物半導体層のチャネル領域の膜厚が40nm以下である半導体装置を製造する場合、90nm程度の膜厚を有する酸化物半導体膜を成膜しておき、ソース電極及びドレイン電極の形成において、チャネル領域の膜厚が40nm以下となるようにエッチング時間を調整する必要がある。しかしながら、エッチングレートが大きい場合には、エッチング時間によるチャネル領域の膜厚の精密な制御は困難である。この場合、チャネル領域の膜厚のばらつきが大きくなる。
【0054】
また、チャネル領域の膜厚を大きく減少させると、酸化物半導体層の上面に凹部が形成される。層間絶縁層は、酸化物半導体層の上面に形成された凹部を覆うように成膜されるが、凹部の深さが大きいと、層間絶縁層が凹部を十分に覆うことができない。すなわち、酸化物半導体層と層間絶縁層との間、又はソース電極及びドレイン電極と層間絶縁層との間に間隙が生じる場合がある。これは、半導体装置の電気特性の不安定化を生じるだけでなく、信頼性の低下の要因となり得る。
【0055】
これに対し、酸化物半導体層26はPoly-OSを含み、高いエッチング耐性を有する。そのため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成に用いられるエッチング液による酸化物半導体層26の膜厚の減少を考慮することなく、酸化物半導体膜22の成膜のみによって、酸化物半導体層26のチャネル領域の膜厚を制御することができる。したがって、酸化物半導体膜22は、10nm以上50nm以下であり、好ましくは10nm以上40nm以下であり、さらに好ましくは10nm以上30nm以下の膜厚で成膜することができる。また、酸化物半導体層26は高いエッチング耐性を有するため、ソース電極32S、ドレイン電極32D、及び配線32Wとして用いることができる金属材料の選択性が向上する。
【0056】
酸化物半導体層26が優れたエッチング耐性を有するため、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成における導電膜のエッチングレートを大きくすることが可能である。例えば、酸化物半導体層26と接する第1金属膜のエッチングレートは、0.1nm/sec以上、好ましくは0.5nm/sec以上、さらに好ましくは0.9nm/sec以上である。また、第1金属膜の上に成膜される第2金属膜がCuを含む場合、第2金属膜のエッチングレートは、1.0nm/sec以上、好ましくは2.0nm/sec以上、さらに好ましくは3.0nm/sec以上である。
【0057】
なお、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、酸化物半導体層26はほとんどエッチングされないが、エッチング液の種類によってはゲート絶縁層16がエッチングされる場合がある。例えば、不要な導電膜が残らないようにするため、ジャストエッチングではなく、オーバーエッチングが行われる。この場合、導電膜から露出されたゲート絶縁層16がエッチングされる。ゲート絶縁層16において、酸化物半導体層26と重畳する領域の膜厚と酸化物半導体層26と重畳しない領域の膜厚との差は、5nm以上、10nm以上、又は15nm以上である。また、ゲート絶縁層16の膜厚が小さくなりすぎないようにオーバーエッチングの時間は制御されるため、ゲート絶縁層16において、酸化物半導体層26と重畳する領域の膜厚と酸化物半導体層26と重畳しない領域の膜厚との差は、50nm以下、好ましくは30nm以下であり、さらに好ましくは20nm以下である。
【0058】
図3のステップS1010(「SiOx形成」)では、酸化物半導体層26、ソース電極32S、及びドレイン電極32Dの上に層間絶縁層34を成膜する。層間絶縁層34として、酸素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層34として、酸化シリコン(SiO)又は酸化窒化シリコン(SiO)などが用いられる。また、層間絶縁層34として、欠陥が少ない絶縁膜を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層34における酸素の組成比と、層間絶縁層34と同様の組成の絶縁膜(以下、「他の絶縁膜」という)における酸素の組成比と、を比較した場合、層間絶縁層34における酸素の組成比の方が当該他の絶縁膜における酸素の組成比よりも当該絶縁膜に対する化学量論比に近い。例えば、層間絶縁層34及びゲート絶縁層14の各々に酸化シリコン(SiO)が用いられる場合、層間絶縁層34は、ゲート絶縁層14よりも酸化シリコン(SiO)の化学量論比に近い組成比を有する。層間絶縁層34として、電子スピン共鳴法(ESR)で評価したときに欠陥が観測されない層が用いられてもよい。
【0059】
層間絶縁層34は、ゲート絶縁層14、16と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。層間絶縁層34における酸素の組成比を増加させるためには、比較的低温(例えば、350℃未満の成膜温度)で成膜すればよい。また、層間絶縁層34として欠陥が少ない絶縁膜を形成するために、350℃以上の成膜温度で層間絶縁層34を成膜してもよい。さらに、層間絶縁層34を成膜した後に、層間絶縁層34の一部に酸素を打ち込む処理を行ってもよい。
【0060】
層間絶縁層34の膜厚は、50nm以上300nm以下、60nm以上200nm以下、又は70nm以上150nm以下である。
【0061】
図3のステップS1011(「MO成膜」)では、層間絶縁層34の上に金属酸化物膜36を成膜する(図10参照)。金属酸化物膜36は、スパッタリング法又は原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)によって成膜される。
【0062】
金属酸化物膜36として、アルミニウムを主成分とする金属酸化物が用いられる。例えば、金属酸化物膜36として、酸化アルミニウム(AlO)、酸化窒化アルミニウム(AlO)、窒化酸化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウム(AlN)などの無機絶縁層が用いられる。アルミニウムを主成分とする金属酸化物膜とは、金属酸化物膜36に含まれるアルミニウムの比率が、金属酸化物膜36全体の1%以上であることを意味する。金属酸化物膜36に含まれるアルミニウムの比率は、金属酸化物膜36全体の5%以上70%以下、10%以上60%以下、又は30%以上50%以下であってもよい。上記の比率は、質量比であってもよく、重量比であってもよい。
【0063】
金属酸化物膜36の膜厚は、1nm以上50nm以下、好ましくは1nm以上30nm以下である。金属酸化物膜36として、酸化アルミニウムが用いられることが好ましい。酸化アルミニウムは酸素又は水素などのガスに対する高いバリア性を備えている。ここで、バリア性とは、酸素又は水素などのガスが、酸化アルミニウムを透過することを抑制する機能をいう。つまり、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層に移動させないことを意味する。または、酸化アルミニウム膜の上に設けられる層の中の酸素又は水素などのガスを、酸化アルミニウム膜の下に設けられる層に移動させないことを意味する。
【0064】
図3のステップS1012(「酸化アニール」)では、酸化物半導体層26の上に層間絶縁層34及び金属酸化物膜36が成膜された状態で、加熱処理が行われる(図10参照)。これにより、層間絶縁層34から放出された酸素が酸化物半導体層26に供給される。金属酸化物膜36が基板11を覆うように設けられることで、層間絶縁層34から放出した酸素が金属酸化物膜36の外部に放出されてしまうことを抑制することができる。
【0065】
酸化物半導体層26が成膜されてから酸化物半導体層26の上に層間絶縁層34が成膜されるまでの間の工程で、酸化物半導体層26には多くの酸素欠陥が発生する。しかしながら、ステップS1012の酸化アニールによって、層間絶縁層34から放出された酸素が酸化物半導体層26に供給され、酸素欠陥が修復される。
【0066】
図3のステップS1013(「MO除去」)では、金属酸化物膜36を除去する(図11参照)。例えば、金属酸化物膜36は、希釈フッ酸(DHF)を用いて除去すればよい。
【0067】
図3のステップS1014(「SiNx成膜」)では、層間絶縁層34の上に層間絶縁層38を成膜する。層間絶縁層38として、窒素を含む絶縁材料を用いることが好ましい。例えば、層間絶縁層38として、窒化シリコン(SiN)又は窒化酸化シリコン(SiN)などが用いられる。層間絶縁層38は、ゲート絶縁層14、16と同様の成膜方法を用いて成膜することができる。
【0068】
以上のステップにより、図1に示す半導体装置10を製造することができる。
【0069】
以上説明したように、半導体装置10の製造工程において、高いエッチング耐性を有するPoly-OSを含む酸化物半導体層26を形成することにより、酸化物半導体層26の形状ばらつきが抑制される。特に、酸化物半導体層26のチャネル領域の膜厚のばらつきを低減することができる。その結果、半導体装置10は安定した電気特性を有し、歩留まりが向上する。
【0070】
<第2実施形態>
図12図15を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10を用いた表示装置20について説明する。以下に示す実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10が液晶表示装置の回路に適用された構成について説明する。
【0071】
[表示装置20の概要]
図12は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の概要を示す模式的な平面図である。図12に示すように、表示装置20は、アレイ基板300、シール部310、対向基板320、フレキシブルプリント回路基板330(FPC330)、及びICチップ340を有する。アレイ基板300及び対向基板320はシール部310によって貼り合わせられている。シール部310に囲まれた液晶領域220には、複数の画素回路301がマトリクス状に配置されている。液晶領域220は、後述する液晶素子311と平面視において重なる領域である。
【0072】
シール部310が設けられたシール領域240は、液晶領域220の周囲の領域である。FPC330は端子領域260に設けられている。端子領域260はアレイ基板300が対向基板320から露出された領域であり、シール領域240の外側に設けられている。シール領域240の外側とは、シール部310が設けられた領域及びシール部310によって囲まれた領域の外側を意味する。ICチップ340はFPC330上に設けられている。ICチップ340は各画素回路301を駆動させるための信号を供給する。
【0073】
[表示装置20の回路構成]
図13は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の回路構成を示すブロック図である。図13に示すように、画素回路301が配置された液晶領域220に対して第2方向D2(列方向)に隣接する位置にはソースドライバ回路302が設けられており、液晶領域220に対して第1方向D1(行方向)に隣接する位置にはゲートドライバ回路303が設けられている。ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303は、上記のシール領域240に設けられている。ただし、ソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303が設けられる領域はシール領域240に限定されず、画素回路301が設けられた領域の外側であれば、どの領域でもよい。
【0074】
ソースドライバ回路302からソース配線304が第2方向D2に延びており、第2方向D2に配列された複数の画素回路301に接続されている。ゲートドライバ回路303からゲート電極12GEが第1方向D1に延びており、第1方向D1に配列された複数の画素回路301に接続されている。
【0075】
端子領域260には端子部306が設けられている。端子部306とソースドライバ回路302とは接続配線307で接続されている。同様に、端子部306とゲートドライバ回路303とは接続配線307で接続されている。FPC330が端子部306に接続されることで、FPC330が接続された外部機器と表示装置20とが接続され、外部機器からの信号によって表示装置20に設けられた各画素回路301が駆動する。
【0076】
第1実施形態に示す半導体装置10は、画素回路301、ソースドライバ回路302、及びゲートドライバ回路303に含まれるトランジスタとして用いられる。
【0077】
[表示装置20の画素回路301]
図14は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の画素回路301を示す回路図である。図14に示すように、画素回路301は半導体装置10、保持容量350、及び液晶素子311などの素子を含む。半導体装置10はゲート電極12GE、酸化物半導体層26、ソース電極32S、及びドレイン電極32Dを有する。ゲート電極12GEはゲート配線305に接続されている。ソース電極32Sはソース配線304に接続されている。ドレイン電極32Dは保持容量350及び液晶素子311に接続されている。
【0078】
[表示装置20の構成]
図15は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の模式的な断面図である。図15に示す表示装置20は、半導体装置10が適用されている。
【0079】
図15に示すように、基板11の上にゲート電極12GEが設けられている。ゲート電極12GEの上に、ゲート絶縁層14、16が設けられている。ゲート絶縁層14、16の上に酸化物半導体層26が設けられている。酸化物半導体層26の上に、ソース電極32S及びドレイン電極32Dが設けられている。
【0080】
ソース電極32S及びドレイン電極32Dの上に層間絶縁層34、38が設けられている。層間絶縁層34、38の上に、絶縁層39が設けられている。絶縁層39は、半導体装置10による凹凸を緩和するために設けられている。層間絶縁層34、38、及び絶縁層39には、ソース電極32Sの上面を露出するようにコンタクトホールが形成されている。絶縁層39の上には、複数の画素に共通して設けられる共通電極42Cが設けられている。共通電極42Cの上に絶縁層44が設けられている。コンタクトホールの内部には、絶縁層44が設けられている。絶縁層44を窒化シリコン膜で形成することで、コンタクホールから絶縁層44を介して水分が侵入することを抑制することができる。絶縁層44の上及びコンタクトホールの内部に画素電極46Pが設けられている。画素電極46Pはドレイン電極32Dに接続されている。
【0081】
また、基板11の上に配線12Cが設けられており、ゲート絶縁層14、16に設けられたコンタクトホールを介して、配線32Cと接続されている。配線12C及び配線32Cは、容量配線として機能する。また、絶縁層39の上及び開口の内部に電極46Cが設けられている。共通電極42C、絶縁層44、及び電極46Cにより保持容量350が形成される。
【0082】
本実施形態では、半導体装置10が画素回路301に用いられた構成を例示するが、半導体装置10がソースドライバ回路302及びゲートドライバ回路303を含む周辺回路に用いられてもよい。
【0083】
<第3実施形態>
図16及び図17を参照して、本発明の一実施形態に係る半導体装置10を用いた表示装置20について説明する。本実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10が有機EL表示装置の回路に適用された構成について説明する。表示装置20の概要及び回路構成は、図12及び図13に示すものと同様なので、説明を省略する。
【0084】
[表示装置20の画素回路301]
図16は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の画素回路を示す回路図である。図16に示すように、画素回路301は駆動トランジスタ110、選択トランジスタ120、保持容量210、及び発光素子DOなどの素子を含む。駆動トランジスタ110及び選択トランジスタ120は半導体装置10と同様の構成を備えている。選択トランジスタ120のソース電極は信号線211に接続され、選択トランジスタ120のゲート電極はゲート線212に接続されている。駆動トランジスタ110のソース電極はアノード電源線213に接続され、駆動トランジスタ110のドレイン電極は発光素子DOの一端に接続されている。発光素子DOの他端はカソード電源線214に接続されている。駆動トランジスタ110のゲート電極は選択トランジスタ120のドレイン電極に接続されている。保持容量210は駆動トランジスタ110のゲート電極及びドレイン電極に接続されている。信号線211には、発光素子DOの発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線212には、上記の階調信号を書き込む画素行を選択する信号が供給される。
【0085】
[表示装置20の断面構造]
図17は、本発明の一実施形態に係る表示装置20の構成を示す模式的な断面図である。図17に示す表示装置20の構成は、図15に示す表示装置20と類似しているが、図17に示す表示装置20の絶縁層39よりも上方の構造が図14に示す表示装置20の絶縁層39よりも上方の構造と相違する。以下、図17に示す表示装置20の構成のうち、図15に示す表示装置20と同様の構成については説明を省略し、両者の相違点について説明する。
【0086】
図17に示すように、表示装置20は、絶縁層39の上方に画素電極390、発光層392、及び共通電極394(発光素子DO)を有する。画素電極390は絶縁層39の上、並びに層間絶縁層34、38及び絶縁層39に形成されたコンタクトホールの内部に設けられている。画素電極390の上に絶縁層362が設けられている。絶縁層362には開口363が設けられている。開口363は発光領域に対応する。つまり、絶縁層362は画素を画定する。開口363によって露出した画素電極390の上に発光層392及び共通電極394が設けられている。画素電極390及び発光層392は、各画素に対して個別に設けられている。一方、共通電極394は、複数の画素に共通して設けられている。発光層392は、画素の表示色に応じて異なる材料が用いられる。
【0087】
第2実施形態及び第3実施形態では、第1実施形態で説明した半導体装置10を液晶表示装置及び有機EL表示装置に適用した構成について例示したが、これらの表示装置以外の表示装置(例えば、有機EL表示装置以外の自発光型表示装置又は電子ペーパ型表示装置)に半導体装置10を適用してもよい。また、中小型の表示装置から大型の表示装置まで、特に限定することなく半導体装置10の適用が可能である。また、大面積基板を用いて製造する場合であっても、半導体装置10における酸化物半導体層26の形状のばらつきが小さい。そのため、半導体装置10を表示装置20に適用した場合、表示ムラを低減することができる。また、表示装置20を製造する際の歩留まりを向上させることができる。
【実施例0088】
さらに、実施例に基づき、本発明の一実施形態に係る半導体装置10について詳細に説明する。但し、半導体装置10は、以下で説明する実施例に限定されるものではない。
【0089】
[エッチングレート]
ソース電極及びドレイン電極の形成で用いられるエッチング液を用いて、酸化物半導体層に含まれるPoly-OS、ソース電極及びドレイン電極として用いられるMoW、Ti、Al、及びCu、並びにゲート絶縁層として用いられる酸化シリコン(SiO)及び窒化シリコン(SiN)の各材料のエッチングレートを算出した。
【0090】
エッチングレートを測定したサンプルについて説明する。シリコンウエハ上に各材料の単膜を成膜し、各材料のサンプルを得た。なお、Poly-OSのサンプルにおいては、アモルファス構造を有する酸化物半導体膜の成膜後にOSアニール処理を行い、多結晶構造を有する酸化物半導体層を形成した。
【0091】
エッチング液としてキレート剤を含むGHP-3(関東化学株式会社製)及びリン酸を含むBTF-3(関東化学株式会社製)のそれぞれを用いて、各材料のウェットエッチング(室温)を行った。ウェットエッチング後、各材料の膜厚を測定した。各材料において、エッチング時間の異なる条件でウェットエッチを行い、エッチング時間の異なる複数の膜厚のデータを得た。エッチング時間及び膜厚のデータに基づいて検量線を作成し、各材料のエッチングレートを算出した。各材料の算出されたエッチングレートを表1に示す。なお、表1の中の「0.01nm/sec未満」は、ウェットエッチング前後における膜厚が概ね一致しており、ウェットエッチングによってほとんどエッチングされないことを意味する。
【0092】
【表1】
【0093】
エッチング液としてGHP-3を用いた場合、MoWのエッチングレートが0.14nm/secであるのに対し、Poly-OSのエッチングレートは0.01nm/sec未満である。これは、例えば、半導体装置10のソース電極32S及びドレイン電極32Dの導電膜(より具体的には、酸化物半導体層26に接する第1金属膜)としてMoWを用いたとき、GHP-3を用いたウェットエッチングによるソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において酸化物半導体層26がほとんどエッチングされないことを意味する。具体的には、ソース電極32S及びドレイン電極32DがMoW合金単層構造又はCu/MoW構造であるとき、GHP-3によって酸化物半導体層26はほとんどエッチングされない。
【0094】
また、エッチング液としてBTF-3を用いた場合、Ti及びAlのエッチングレートが、それぞれ、0.93nm/sec及び0.92nm/secであるのに対し、Poly-OSのエッチングレートは0.01nm/sec未満である。これは、例えば、半導体装置10のソース電極32S及びドレイン電極32Dの導電膜(より具体的には、酸化物半導体層26に接する第1金属膜)としてTiを用いたとき、BTF-3を用いたウェットエッチングによるソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において酸化物半導体層26がほとんどエッチングされないことを意味する。具体的には、ソース電極32S及びドレイン電極32DがTi単層構造、Cu/Ti構造、又はTi/Al/Ti構造であるとき、BTF-3によって酸化物半導体層26はほとんどエッチングされない。
【0095】
なお、エッチング液としてBTF-3を用いた場合では、SiO及びSiNがエッチングされる。これは、BTF-3にフッ酸が含まれているためである。それに対し、Poly-OSは、フッ酸に対しても高いエッチング耐性を有するため、Poly-OSは、フッ酸を含むBTF-3によってほとんどエッチングされない。したがって、BTF-3を用いたウェットエッチングによるソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成では、酸化物半導体層26よりもゲート絶縁層16がエッチングされる場合がある。この場合、ゲート絶縁層16において、酸化物半導体層26と重畳しない領域の膜厚は、酸化物半導体層26と重畳する領域の膜厚よりも小さくなる。
【0096】
表1に示されるように、Poly-OSは、GHP-3及びBTF-3によってほとんどエッチングされない。そこで、各材料の上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとして各材料のウェットエッチング(室温)を行った。ウェットエッチング後、各材料の膜厚を測定した。エッチング時間及び膜厚に基づき、各材料のエッチングレートを算出した。各材料の算出されたエッチングレートを表2に示す。なお、表2の中の「0.01nm/min未満」は、エッチング時間5minのウェットエッチングによってほとんどエッチングされないことを意味する。
【0097】
【表2】
【0098】
表2に示されるように、エッチング時間を長くしたことによりGHP-3に対するPoly-OSのエッチングレートを算出することができた。これにより、BTF-3を用いたウェットエッチングによるソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、1minのオーバーエッチングを行った場合であっても、酸化物半導体層26において、ソース領域又はドレイン領域の膜厚とチャネル領域の膜厚との差は1nm以下である。一方、BTF-3に対するPoly-OSのエッチングレートを算出することはできなかった。これは、Poly-OSがBTF-3に対して非常に高いエッチング耐性を有することを意味する。そのため、BTF-3を用いたウェットエッチングによるソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成において、1minのオーバーエッチングを行った場合、Poly-OSを含む酸化物半導体層26はほとんどエッチングされず、SiOを含むゲート絶縁層16が約13nmエッチングされる。換言すると、酸化物半導体層26において、ソース領域又はドレイン領域の膜厚とチャネル領域の膜厚との差は1nm以下であり、ゲート絶縁層16において、酸化物半導体層26と重畳する領域の膜厚と酸化物半導体層26と重畳しない領域の膜厚との差は10nm以上である。
【0099】
[電気特性]
第1実施形態の図3に示すフローチャートにしたがって、半導体装置10を作製し、半導体装置10の電気特性を測定した。半導体装置10の作製において、ソース電極32S及びドレイン電極32DとしてTi単層構造を用いた。なお、半導体装置10の作製において、図3に示すフローチャートのステップS1008の工程は行わなかった。また、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成におけるオーバーエッチングの影響を調べるため、Ti単層構造をアンモニア水及び過酸化水素水の混合液(NH/H液)でジャストエッチングした後、オーバーエッチングの条件の異なる複数のサンプルを作製した。各サンプルの条件を表3に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
図18は、実施例における各サンプルの電気特性を示すグラフである。図18のグラフの横軸は、ゲート電圧(Vg)であり、縦軸は、ドレイン電流(Id)である。図19は、実施例における各サンプルの電気特性から算出されたしきい値(Vth)を示すグラフである。図20は、実施例における各サンプルの電気特性から算出された電界効果移動度(線形領域における電界効果移動度)を示すグラフである。電気特性の測定条件を表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
図18に示す各サンプルの電気特性のグラフは、9個の半導体装置10の測定結果が重ねて示されている。図18から理解されるように、各サンプルのいずれにおいても電気特性のばらつきが小さい。また、図19及び図20に示されるように、各サンプルのいずれにおいても、しきい値及び電界効果移動度のばらつきが小さい。これは、ソース電極32S及びドレイン電極32Dの形成のときに酸化物半導体層26がエッチングされず、酸化物半導体層26の形状のばらつきが抑制され、電気特性が安定したと考えられる。
【0104】
図19には、各サンプルにおけるしきい値の平均値も示されている。図19から理解されるように、各サンプルのしきい値の平均値はいずれも正の値であり、半導体装置10がエンハンスメント型であることを示す。また、図20には、各サンプルにおける電界効果移動度の平均値も示されている。図20から理解されるように、各サンプルの電界効果移動度の平均値は約25.5cm/Vsであり、半導体装置10が20cm/Vs以上の電界効果移動度を有することを示す。
【0105】
サンプルB-1とサンプルB-2とは、GHP-3を用いたウェットエッチングにおけるオーバーエッチングの時間が異なるが、オーバーエッチングの時間による影響は見られない。また、サンプルC-1とサンプルC-2とは、BTF-3を用いたウェットエッチングにおけるオーバーエッチングの時間が異なるが、オーバーエッチングによる影響は見られない。さらに、サンプルB-1、B-2とサンプルC-1、C-2とは、ウェットエッチングにおけるエッチング液が異なるが、エッチング液の違いによる影響は見られない。Poly-OSを含む酸化物半導体層26は優れたエッチング耐性を有し、酸化物半導体層26を用いた半導体装置10の製造では、プロセスマージンを広げることができる。その結果、半導体装置10の製造において、歩留まりが向上する。
【0106】
本発明の実施形態として上述した各実施形態及び変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態及び変形例の半導体装置及び表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0107】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0108】
10:半導体装置、 20:表示装置、
11:基板、 12C:配線、 12GE:ゲート電極、 12W:配線、 14:ゲート絶縁層、 15:コンタクトホール、 16:ゲート絶縁層、 22:酸化物半導体膜、 24:酸化物半導体層、 26:酸化物半導体層、 32C:配線、 32D:ドレイン電極、 32S:ソース電極、 32W:配線、 34:層間絶縁層、 36:金属酸化物膜、 38:層間絶縁層、 39:絶縁層、 42C:共通電極、 44:絶縁層、 46C:電極、 46P:画素電極、
110:駆動トランジスタ、 120:選択トランジスタ、 210:保持容量、 211:信号線、 212:ゲート線、 213:アノード電源線、 214:カソード電源線、 220:液晶領域、 240:シール領域、 260:端子領域、 300:アレイ基板、 301:画素回路、 302:ソースドライバ回路、 303:ゲートドライバ回路、 304:ソース配線、 305:ゲート配線、 306:端子部、 307:接続配線、 310:シール部、 311:液晶素子、 320:対向基板、 330:フレキシブルプリント回路基板、 340:チップ、 350:保持容量、 362:絶縁層、 363:開口、 390:画素電極、 392:発光層、 394:共通電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20